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特開2024-53507非水系組成物、及び非水系組成物を用いた積層体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053507
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】非水系組成物、及び非水系組成物を用いた積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/18 20060101AFI20240408BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20240408BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20240408BHJP
   C08L 1/16 20060101ALI20240408BHJP
   C08L 51/02 20060101ALI20240408BHJP
   C08L 1/26 20060101ALI20240408BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20240408BHJP
   B32B 15/04 20060101ALN20240408BHJP
【FI】
C08L27/18
C08L1/00
C08L1/02
C08L1/16
C08L51/02
C08L1/26
B32B15/082 B
B32B15/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159852
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100176692
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 ▲廣▼志
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 蔵
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AB01A
4F100AB01C
4F100AB33A
4F100AB33C
4F100AJ06B
4F100AJ06G
4F100AK18B
4F100AK18G
4F100AK18H
4F100AL06B
4F100AT00
4F100BA03
4F100CB10B
4F100CB10G
4F100DE01B
4F100DE01H
4F100EJ422
4F100EJ42B
4F100GB43
4F100JG04B
4F100JG05B
4J002AB012
4J002AB022
4J002AB032
4J002BD151
4J002BN012
4J002FA042
4J002FD010
4J002FD012
4J002FD310
4J002GC00
4J002GF00
4J002GH00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
4J002GQ01
4J002HA08
(57)【要約】
【課題】耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率、低誘電正接及び低伝送損失)等の物性に優れ、またその表面外観や折曲耐性に優れた成形物を形成できる、テトラフルオロエチレン系ポリマーと所定の変性セルロース系ファイバーとを含む、分散安定性に優れる非水系組成物を提供する。
【解決手段】テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、繊維径が1~1000nmである変性セルロース系ファイバーと、非プロトン性極性溶媒とを含む、非水系組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、繊維径が1~1000nmである変性セルロース系ファイバーと、非プロトン性極性溶媒とを含む、非水系組成物。
【請求項2】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、熱溶融性であり、酸素含有極性基を含有するテトラフルオロエチレン系ポリマーである、請求項1に記載の非水系組成物。
【請求項3】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の平均粒子径が1μm以上10μm未満である、請求項1に記載の非水系組成物。
【請求項4】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量が25質量%以上である、請求項1に記載の非水系組成物。
【請求項5】
前記変性セルロース系ファイバーの含有量が10質量%以下である、請求項1に記載の非水系組成物。
【請求項6】
前記変性セルロース系ファイバーの含有量が、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子に対する質量比として0.01~0.15である、請求項1に記載の非水系組成物。
【請求項7】
前記変性セルロース系ファイバーが、化学修飾されたセルロース系ファイバーである、請求項1に記載の非水系組成物。
【請求項8】
前記変性セルロース系ファイバーが、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する重合性単量体がグラフト結合したセルロース系ファイバーである、請求項1に記載の非水系組成物。
【請求項9】
前記変性セルロース系ファイバーが、リン酸化変性セルロース系ファイバーである、請求項1に記載の非水系組成物。
【請求項10】
前記変性セルロース系ファイバーが、カルボキシメチル化セルロース系ファイバーである、請求項1に記載の非水系組成物。
【請求項11】
前記非プロトン性極性溶媒の表面張力が、20~50mN/mである、請求項1に記載の非水系組成物。
【請求項12】
さらに、ノニオン性界面活性剤を有する、請求項1に記載の非水系組成物。
【請求項13】
粘度が、3000mPa・s以下である、請求項1に記載の非水系組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の非水系組成物を基材の表面に配置し加熱して、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層を形成し、前記基材で構成される基材層と前記ポリマー層とをこの順で有する積層体を得る、積層体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む非水系の液状組成物、及び該液状組成物を用いた積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信機器における高速化、高周波化に対応するため、通信機器のプリント基板の絶縁層として低誘電率かつ低誘電正接であるテトラフルオロエチレン系ポリマーが注目されている。かかるポリマーを含む絶縁層を形成する材料として、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と液状分散媒とを含む液状組成物が知られている。
テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子は、液状分散媒中での分散性が概して低いため、かかる分散性を向上すべく、特許文献1及び2にはセルロース系材料とテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子とを含む水系分散液が、特許文献3にはTEMPO触媒酸化処理を経ていないセルロース系材料とテトラフルオロエチレン系ポリマーとを含む非水系分散液が、それぞれ提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-503283号公報
【特許文献2】特開2019-052221号公報
【特許文献3】特開2021-143314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セルロース系材料はテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の水系分散液の添加剤として有用である。その反面、非水系の分散媒に対するセルロース系材料の溶解性は乏しいため、非水系の液状分散媒中でのテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の分散性改善を目的に、セルロース系材料を用いることに関する知見は乏しい。
本発明者らは、テトラフルオロエチレン系ポリマーと、特定の変性セルロース系ファイバーと、液状分散媒として非プロトン性極性溶媒とを含む非水系組成物は、分散安定性に優れることを知見した。また、かかる非水系組成物から形成されるポリマー層等の成形物は、テトラフルオロエチレン系ポリマーに基づく耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率、低誘電正接及び低伝送損失)等の物性に優れ、かつその表面外観や折曲耐性等にも優れることを見出し、本発明に至った。
本発明の目的は、耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率、低誘電正接及び低伝送損失)等の物性に優れ、またその表面外観や折曲耐性に優れた成形物を形成できる、テトラフルオロエチレン系ポリマーと所定の変性セルロース系ファイバーとを含む、分散安定性に優れる、非水系組成物の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、繊維径が1~1000nmである変性セルロース系ファイバーと、非プロトン性極性溶媒とを含む、非水系組成物。
[2] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、熱溶融性であり、酸素含有極性基を含有するテトラフルオロエチレン系ポリマーである、[1]の非水系組成物。
[3] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の平均粒子径が1μm以上10μm未満である、[1]又は[2]の非水系組成物。
[4] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量が25質量%以上である、[1]~[3]のいずれかの非水系組成物。
[5] 前記変性セルロース系ファイバーの含有量が10質量%以下である、[1]~[4]のいずれかの非水系組成物。
[6] 前記変性セルロース系ファイバーの含有量が、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子に対する質量比として0.01~0.15である、[1]~[5]のいずれかの非水系組成物。
[7] 前記変性セルロース系ファイバーが、化学修飾されたセルロース系ファイバーである、[1]~[6]のいずれかの非水系組成物。
[8] 前記変性セルロース系ファイバーが、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する重合性単量体がグラフト結合したセルロース系ファイバーである、[1]~[7]のいずれかの非水系組成物。
[9] 前記変性セルロース系ファイバーが、リン酸化変性セルロース系ファイバーである、[1]~[8]のいずれかの非水系組成物。
[10] 前記変性セルロース系ファイバーが、カルボキシメチル化変性セルロース系ファイバーである、[1]~[9]のいずれかの非水系組成物。
[11] 前記非プロトン性極性溶媒の表面張力が、20~50mN/mである、[1]~[10]のいずれかの非水系組成物。
[12] さらに、ノニオン性界面活性剤を有する、[1]~[11]のいずれかの非水系組成物。
[13] 粘度が、3000mPa・s以下である、[1]~[12]のいずれかの非水系組成物。
[14] [1]~[13]のいずれかの非水系組成物を基材の表面に配置し加熱して、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層を形成し、前記基材で構成される基材層と前記ポリマー層とをこの順で有する積層体を得る、積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、分散安定性に優れた非水系組成物を提供できる。かかる非水系組成物からは、テトラフルオロエチレン系ポリマーに基づく耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率、低誘電正接及び低伝送損失)等の物性に優れ、またその表面外観や折曲耐性に優れる、塗膜(ポリマー層)等の成形物を形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の用語は、以下の意味を有する。
「平均粒子径(D50)」は、レーザー回折・散乱法によって求められる、粒子又はフィラーの体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
粒子又はフィラーのD50は、粒子を水中に分散させ、レーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA-920測定器)を用いたレーザー回折・散乱法により分析して求められる。
「平均粒子径(D90)」は、D50と同様にして求められる、粒子の体積基準累積90%径である。
粒子又はフィラーの比表面積は、ガス吸着(定容法)BET多点法で粒子を測定し算出される値であり、NOVA4200e(Quantachrome Instruments社製)を使用して求められる。
「溶融温度」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定したポリマーの融解ピークの最大値に対応する温度である。
「ガラス転移点(Tg)」は、動的粘弾性測定(DMA)法でポリマーを分析して測定される値である。
「粘度」は、B型粘度計を用いて、25℃で回転数が30rpmの条件下で液状組成物を測定して求められる。測定を3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
「チキソ比」とは、液状組成物の、回転数が30rpmの条件で測定される粘度ηを、回転数が60rpmの条件で測定される粘度ηで除して算出される値である。それぞれの粘度の測定は、3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
溶媒又は溶液の「表面張力」は、表面張力計を用い、25℃にてウィルヘルミー法で測定した値である。
ポリマーにおける「単位」とは、モノマーの重合により形成された前記モノマーに基づく原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。以下、モノマーaに基づく単位を、単に「モノマーa単位」とも記す。
【0008】
本発明の非水系組成物(以下、「本組成物」とも記す。)は、テトラフルオロエチレン系ポリマー(以下、「Fポリマー」とも記す。)の粒子(以下、「F粒子」とも記す。)と、繊維径が1~1000nmである変性セルロース系ファイバー(以下、「変性セルロース系ファイバー」とも記す。)と、非プロトン性極性溶媒とを含む。
本組成物は分散安定性に優れており、かかる組成物から形成される塗膜(ポリマー層)等の成形物は、テトラフルオロエチレン系ポリマーに基づく耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率、低誘電正接及び低伝送損失)等の物性に優れ、またその表面外観や折曲耐性に優れる。
なお、本明細書において「表面外観に優れる」とは、「表面の荒れが少ない」等の表面平滑性に優れること、又は「表面にスジ、クラックや欠点等がない」等の、視認又は分析機器で観察される外観に優れることのいずれをも包含する。
本組成物が分散安定性に優れる理由は必ずしも明確ではないが、以下の様に考えられる。
【0009】
本組成物が含有する変性セルロース系ファイバーは、その繊維径が特定範囲にあることに由来し、非プロトン性極性溶媒においても、F粒子に対する親和性が向上していると推測される。
また、変性セルロース系ファイバーが、後述する化学修飾されたセルロース系ファイバーの場合にはその修飾部位の存在により、非水系溶媒とF粒子のそれぞれに対する親和性を特に高めやすく、本組成物のレオロジーを向上させやすい。
そのため、本組成物はF粒子の分散安定性等の液物性に優れており、また、塗膜や層等の成形品において、その表面外観や折曲耐性等の層物性を向上させていると考えられる。
かかる作用機構は、本組成物を構成するF粒子が、酸素含有極性基を有するFポリマーからなる粒子である場合、また本組成物を構成する非プロトン性極性溶媒が特定範囲の表面張力を有する場合に、一層顕著となる。
【0010】
本発明におけるFポリマーは、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」とも記す。)に基づく単位(以下、「TFE単位」とも記す。)を含むポリマーである。
Fポリマーは、熱溶融性であってもよく、非熱溶融性であってもよい。ここで、熱溶融性のポリマーとは、荷重49Nの条件下、溶融流れ速度が1~1000g/10分となる温度が存在するポリマーを意味する。
熱溶融性であるFポリマーの溶融温度は、180℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。前記Fポリマーの溶融温度は、325℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましい。この場合、本組成物から形成される塗膜(ポリマー層)等の成形物が耐熱性に優れやすい。
【0011】
Fポリマーのガラス転移点は、50℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。Fポリマーのガラス転移点は、150℃以下が好ましく、125℃以下がより好ましい。
Fポリマーのフッ素含有量は、70質量%以上が好ましく、72~76質量%がより好ましい。
【0012】
Fポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、TFE単位とエチレンに基づく単位とを含むポリマー(ETFE)、TFE単位とプロピレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)に基づく単位(PAVE単位)とを含むポリマー(PFA)、TFE単位とヘキサフルオロプロピレンに基づく単位とを含むポリマー(FEP)が好ましく、PFA及びFEPがより好ましく、PFAがさらに好ましい。これらのポリマーは、さらに他のコモノマーに基づく単位を含んでいてもよい。
PTFEとしては、低分子量PTFE、変性PTFEが挙げられる。
PAVEは、CF=CFOCF、CF=CFOCFCF及びCF=CFOCFCFCF(以下、「PPVE」とも記す。)が好ましく、PPVEがより好ましい。
【0013】
Fポリマーは、酸素含有極性基を有するのが好ましく、水酸基含有基又はカルボニル基含有基を有するのがより好ましく、カルボニル基含有基を有するのがさらに好ましい。この場合、本組成物は、上述した作用機構がより発現されやすく、分散安定性及び取扱い性に優れやすい。また、本組成物から形成される塗膜(ポリマー層)等の成形物が、耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率、低誘電正接及び低伝送損失)等の物性や、その表面外観に優れやすい。
水酸基含有基は、アルコール性水酸基を含有する基が好ましく、-CFCHOH及び-C(CFOHがより好ましい。
カルボニル基含有基は、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、イソシアネート基、カルバメート基(-OC(O)NH)、酸無水物残基(-C(O)OC(O)-)、イミド残基(-C(O)NHC(O)-等)及びカーボネート基(-OC(O)O-)が好ましく、酸無水物残基がより好ましい。
Fポリマーが酸素含有極性基を有する場合、Fポリマーにおける酸素含有極性基の数は、主鎖の炭素数1×10個あたり、10~5000個が好ましく、100~3000個がより好ましい。なお、Fポリマーにおける酸素含有極性基の数は、ポリマーの組成又は国際公開第2020/145133号に記載の方法によって定量できる。
【0014】
酸素含有極性基は、Fポリマー中のモノマーに基づく単位に含まれていてもよく、Fポリマーの主鎖の末端基に含まれていてもよく、前者が好ましい。後者の態様としては、重合開始剤、連鎖移動剤等に由来する末端基として酸素含有極性基を有するFポリマー、Fポリマーをプラズマ処理や電離線処理して得られるFポリマーが挙げられる。
【0015】
Fポリマーは、TFE単位及びPAVE単位を含む、カルボニル基含有基を有するポリマーであるのが好ましく、TFE単位、PAVE単位及びカルボニル基含有基を有するモノマーに基づく単位を含み、全単位に対して、これらの単位をこの順に、90~99モル%、0.99~9.97モル%、0.01~3モル%含むポリマーであるのがさらに好ましい。かかるFポリマーの具体例としては、国際公開第2018/16644号に記載されるポリマーが挙げられる。
カルボニル基含有基を有するモノマーは、無水イタコン酸、無水シトラコン酸及び5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(以下、「NAH」とも記す。)が好ましく、NAHがより好ましい。
【0016】
本発明において、F粒子のD50は1μm以上10μm未満であるのが好ましい。F粒子は、中実状の粒子であってもよく、非中空状の粒子であってもよい。F粒子は、nmオーダーの微粒子から形成された二次粒子であってもよい。F粒子のD50は、1.0μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましい。F粒子のD50は、6μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。F粒子のD50が上記範囲以下であると、上述した作用機構がより発現しやすくなり、粗大粒子の数が少ない本組成物が得られやすい。
また、F粒子のD90は8μm以下が好ましく、6μm以下がより好ましい。
F粒子の比表面積は、1~25m/gであるのが好ましく、6~15m/gがより好ましい。F粒子の比表面積が上記範囲であると、F粒子表面がより濡れやすく、上述した作用機構がより発現しやすく、本組成物が分散安定性に優れやすい。また、本組成物から形成される塗膜(ポリマー層)等の成形物が、耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率、低誘電正接及び低伝送損失)等の物性や、その表面外観に優れやすい。
【0017】
F粒子は、Fポリマーを含む粒子であり、Fポリマーからなるのが好ましい。
F粒子は、溶融温度が200~325℃である、酸素含有極性基を有する熱溶融性Fポリマーの粒子であるのがより好ましい。この場合、上述した作用機構がより発現されてF粒子の凝集も抑制されやすい。
F粒子は、Fポリマー以外の樹脂や無機化合物を含んでいてもよく、FポリマーをコアとしFポリマー以外の樹脂又は無機化合物をシェルとするコア-シェル構造を形成していてもよく、FポリマーをシェルとしFポリマー以外の樹脂又は無機化合物をコアとするコア-シェル構造を形成していてもよい。
ここで、Fポリマー以外の樹脂としては、芳香族ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、マレイミドが挙げられ、無機化合物としては、シリカ、窒化ホウ素が挙げられる。
F粒子は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0018】
本組成物を構成する変性セルロース系ファイバーの原料となる、セルロースの種類は特に限定されず、天然セルロース又は再生セルロースを使用できる。
天然セルロースとしては、マツ、モミ、トウヒ、ツガ、スギ等の針葉樹;ブナ、カバ、ポプラ、カエデ等の広葉樹;麻、亜麻、マニラ麻、ラミー、ワラ、バガス、コットンリンター、ボンバックス綿、カポック、竹、ジュート、ケナフ、サトウキビ等の植物由来のセルロース;ホヤ、キチン、キトサン等の動物由来のセルロース;微生物由来のセルロースから製造されたパルプ等が挙げられる。再生セルロースとしては、セルロースを銅アンモニア溶液等の溶媒に溶解し、改めて紡糸されたものが挙げられる。
これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。中でも、入手の容易さの観点から、針葉樹のパルプ、広葉樹のパルプ、コットンリンター由来のパルプ由来のセルロースが好ましい。なお、パルプの製造方法も特に限定されず、パルプ材を機械的に処理した砕木パルプ、サーモメカニカルパルプ等の機械パルプ;パルプ材を化学的に処理した広葉樹クラフトパルプ、針葉樹クラフトパルプ、サルファイトパルプ、ソーダパルプ、未晒しクラフトパルプ、酸素漂白クラフトパルプ、溶解パルプ等の化学パルプ;セミケミカルパルプ、ケミグラウンドウッドパルプ等の半化学パルプ;のいずれでもよい。
【0019】
本組成物を構成する変性セルロース系ファイバーは、例えば上記したセルロースを変性し、次いで叩解処理、ホモジナイズ処理等により微細化(解繊/ミクロフィブリル化)して製造できる。また、上記したセルロースを微細化したセルロース系ファイバーを、さらに変性して変性セルロース系ファイバーを製造してもよい。解繊に用いる装置は特に限定されず、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などの装置を適用できる。
変性セルロース系ファイバーの繊維径は1~1000nmである。変性セルロース系ファイバーの繊維径は、上述した作用機構の観点から、2nm以上であるのが好ましく、3nm以上がより好ましい。変性セルロース系ファイバーの繊維径は、700nm以下であるのが好ましく、500nm以下がより好ましい。
本明細書において、変性セルロース系ファイバーの繊維径とは、原子間力顕微鏡(AFM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて変性セルロース系ファイバーの繊維径を観察し、SEM写真の画像からランダムに50個の繊維を選択して加算平均して算出した、平均繊維径を意味する。
【0020】
変性セルロース系ファイバーの繊維長は、通常、0.01~500μmの範囲であるのが好ましい。変性セルロース系ファイバーの繊維長は、0.05μm以上であるのが好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.2μm以上がさらに好ましく、0.5μm以上が特に好ましい。変性セルロース系ファイバーの繊維長は、400μm以下であるのが好ましく、300μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましく、30μm以下が特に好ましい。
本明細書において、変性セルロース系ファイバーの繊維長とは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて変性セルロース系ファイバーの繊維長を観察し、SEM写真の画像からランダムに50個の繊維を選択して加算平均して算出した、平均繊維長を意味する。
【0021】
さらに、変性セルロース系ファイバーのアスペクト比(繊維径に対する繊維長の割合)は、通常、5~10000の範囲であるのが好ましい。変性セルロース系ファイバーのアスペクト比は、10以上であるのが好ましく、20以上がより好ましく、50以上がさらに好ましく、100以上が特に好ましい。変性セルロース系ファイバーのアスペクト比は、5000以下であるのが好ましく、3000以下がより好ましく、2000以下がさらに好ましく、1000以下が特に好ましい。アスペクト比が上記した範囲内であると、上述した作用機構がより発現され、本組成物の分散安定性が向上する傾向となる。また、本組成物から形成される成形物が、その表面外観や折曲耐性に優れやすくなる。
【0022】
変性セルロース系ファイバーの結晶化度は、通常、40%以上であるのが好ましく、60%以上がより好ましい。また、変性セルロース系ファイバーの結晶化度は、通常、100%以下であるのが好ましく、95%以下がより好ましい。変性セルロース系ファイバーの結晶構造としては、I型、II型、III型、IV型等が挙げられ、低線膨張特性及び弾性率等が高い観点から、I型の結晶構造が好ましい。変性セルロース系ファイバーの結晶化度は、X線回折測定装置を用いて求められる。
【0023】
変性セルロース系ファイバーは、化学修飾されたセルロース系ファイバーであることが好ましい。ここで、「化学修飾された」とは、未修飾のセルロース系ファイバーとラジカル反応し得る化合物を反応させて付加したセルロース系ファイバー、又はセルロース系ファイバーが有するヒドロキシ基を活用し、リン酸由来の基を有する化合物、カルボン酸由来の基を有する化合物、硫酸由来の基を有する化合物、スルホン酸由来の基を有する化合物等による置換反応により各種置換基を導入した変性セルロース系ファイバーのいずれをもを包含する。
中でも、化学修飾されたセルロース系ファイバーが、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する重合性単量体がグラフト結合したセルロース系ファイバー、リン酸化セルロース系ファイバー、カルボキシメチル化セルロース系ファイバーのいずれか1種以上であるのが好ましい。
【0024】
9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する重合性単量体(以下、「重合性フルオレン化合物」とも記す。)がグラフト結合したセルロース系ファイバー(以下、「フルオレン修飾セルロース系ファイバー」とも記す。)は、例えば、ラジカル活性剤の存在下、未修飾のセルロース系ファイバーと重合性フルオレン化合物とを反応させることで得られる。なお、本明細書において「グラフト結合した」とは、未修飾のセルロース系ファイバーに対し、重合性フルオレン化合物がグラフト結合又はグラフト重合していることを意味する。
フルオレン修飾セルロース系ファイバーは、重合性フルオレン化合物の結合割合(修飾量)が少量であっても、樹脂等の有機媒体に対する親和性、混和性及び分散性が高いため、樹脂との複合化に有用である。さらに、セルロース系ファイバーの分解を抑制でき、結晶性も維持できる。換言すれば、セルロース系ファイバーを重合性フルオレン化合物により修飾して疎水化したとも捉えられ、本組成物から得られる成形物に、Fポリマーに由来する物性に加えて、セルロース系ファイバーに由来する機械的特性(強度、弾性率、低線膨張特性)を付与できる。またその表面外観や折曲耐性に優れた成形物を形成できる。
フルオレン修飾セルロース系ファイバーの繊維径、繊維長、アスペクト比及び結晶化度の好適な範囲は、未修飾のセルロース系ファイバーの繊維径、繊維長、アスペクト比及び結晶化度の好適な範囲をそのまま適用できる。
【0025】
重合性フルオレン化合物は、9,9-ビスアリール骨格とともにラジカル重合性基を有し、例えば特開2017-222777号公報に記載される化合物が挙げられる。
【0026】
リン酸化セルロース系ファイバーは、上述したセルロースに、例えば、リン酸由来の基を有する化合物を反応させてリン酸化セルロースを得、これを解繊することで得られる。
リン酸化セルロース系ファイバーは、Fポリマーと非プロトン性極性溶媒に対する親和性がバランスしやすく、本組成物から得られる成形物に、Fポリマーに由来する物性に加えて、セルロース系ファイバーに由来する機械的特性(強度、弾性率、低線膨張特性)を付与できる。またその表面外観や折曲耐性に優れた成形物を形成できる。
リン酸化セルロース系ファイバーの繊維径、繊維長、アスペクト比及び結晶化度の好適な範囲は、未修飾のセルロース系ファイバーの繊維径、繊維長、アスペクト比及び結晶化度の好適な範囲と同様である。
リン酸由来の基を有する化合物としては、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸、これらの塩又はエステルが挙げられる。
【0027】
リン酸化セルロース系ファイバーにおけるリン酸基の量は、0.5mmol/g以上であることが好ましく、0.5~5.0mmol/gがより好ましく、0.5~2.0mmol/gがさらに好ましい。
なお、リン酸基の量は、リン酸化セルロース系ファイバーを含む水溶液を水酸化ナトリウム水溶液で滴定して電気伝導度の値の変化を測定し、その値が極小となる時の水酸化ナトリウム水溶液の滴下量より算出できる。
【0028】
カルボキシメチル化セルロース系ファイバーは、カルボキシメチル基を有する変性セルロース系ファイバーである。なお、本明細書において、カルボキシメチル基とは-CHCOOH(酸型)及び-CHCOOM(金属塩型;Mは金属イオンである)の両者を包含する。
カルボキシメチル化セルロース系ファイバーは、例えば、前述したセルロースと水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムをアルコール溶媒中で反応させ(マーセル化処理)、次いで、モノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウム等のカルボキシメチル化剤を添加しエーテル化反応を行ってカルボキシメチル化セルロースを得、これを解繊することにより得られる。
カルボキシメチル化セルロース系ファイバーは、Fポリマーと非プロトン性極性溶媒に対する親和性がバランスしやすく、本組成物から得られる成形物に、Fポリマーに由来する物性に加えて、変性セルロース系ファイバーに由来する機械的特性(強度、弾性率、低線膨張特性)を付与できる。またその表面外観や折曲耐性に優れた成形物を形成できる。
カルボキシメチル化セルロース系ファイバーの繊維径、繊維長及びアスペクト比の好適な範囲は、未修飾のセルロース系ファイバーの繊維径、繊維長及びアスペクト比の好適な範囲と同様である。
【0029】
カルボキシメチル化セルロース系ファイバーの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は0.50以下であるのが好ましく、0.40以下がより好ましい。
カルボキシメチル置換度の下限値は0.01以上が好ましく、0.02以上がより好ましい。カルボキシメチル化セルロースと、それを解繊して得たカルボキシメチル化セルロース系ファイバーのカルボキシメチル置換度は、通常、同じであり、カルボキシメチル化セルロースのカルボキシメチル置換度が上記の範囲内にあると、少ないエネルギー量で解繊を行えるため好ましい。
なお、無水グルコース単位とは、セルロースを構成する個々の無水グルコース(グルコース残基)を意味し、カルボキシメチル置換度とは、セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基(-OH)のうちカルボキシメチルエーテル基(-OCHCOOH又は-OCHCOOM)で置換されているものの割合(1つのグルコース残基当たりのカルボキシメチルエーテル基の数)を示す。グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は、カルボキシメチル化セルロース中の金属塩型のカルボキシメチル基を硝酸メタノールで酸型に変換後、水酸化ナトリウム水溶液を加え、硫酸水溶液で逆滴定することで算出できる。
【0030】
本組成物が含有する非プロトン性極性溶媒は、大気圧下、25℃にて液体である化合物であり、沸点が50~240℃である化合物が好ましい。非プロトン性極性溶媒は1種類を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種の非プロトン性極性溶媒を用いる場合、それらは互いに相溶するのが好ましい。
非プロトン性極性溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等が挙げられる。
本組成物における非プロトン性極性溶媒の含有量は、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましい。非プロトン性極性溶媒の含有量は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
【0031】
また、非プロトン性極性溶媒の表面張力は、20~50mN/mであるのが好ましい。例えばN-メチル-2-ピロリドンの表面張力は41mN/mである。表面張力が上記範囲内である非プロトン性極性溶媒を用いると、F粒子の分散安定性に優れ、上述した作用機構がより発現されやすいと考えられる。
【0032】
本組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上述した非プロトン性極性溶媒以外の他の非水系溶媒をさらに含んでいてもよい。かかる他の非水系溶媒は、大気圧下、25℃にて液体である化合物であり、沸点が50~240℃である化合物が好ましい。
他の非水系溶媒としては、炭化水素、ケトン、エステル、エーテル等が挙げられる。
炭化水素としては、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、エチルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレンが挙げられる。
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-へプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンが挙げられる。
エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンが挙げられる。
エーテルとしては、ジエチレングリコールジエチルエーテル、アニソール、エチルベンジルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ジフェニルエーテルが挙げられる。
【0033】
本組成物は、さらにノニオン性界面活性剤を含有していてもよい。この場合、非水系溶媒の表面張力を上記範囲に調整しやすくなる。
ノニオン性界面活性剤としては、グリコール系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、又はシリコーン系界面活性剤が挙げられる。中でも、グリコール系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤が好ましく、シリコーン系界面活性剤がより好ましい。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、「フタージェント(登録商標)」シリーズ(ネオス社製)、「サーフロン(登録商標)」シリーズ(AGCセイミケミカル社製)、「メガファック(登録商標)」シリーズ(DIC社製)、「ユニダイン(登録商標)」シリーズ(ダイキン工業社製)、「BYK-347」、「BYK-349」、「BYK-378」、「BYK-3450」、「BYK-3451」、「BYK-3455」、「BYK-3456」(ビックケミー・ジャパン社製);「KF-6011」、「KF-6043」、「KP-541」(以上、信越化学工業社製);「Tergitol(登録商標)」シリーズ(ダウケミカル社製、「Tergitol TMN-100X」等。)が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本組成物がノニオン系界面活性剤をさらに含有する場合、その含有量は、本組成物中のF粒子に対して、1~15質量%の範囲であるのが好ましく、3~10質量%の範囲がより好ましい。
【0034】
本組成物は、無機フィラーをさらに含有していてもよい。この場合、本組成物から形成される塗膜(ポリマー層)等の成形物が、電気特性と低線膨張性とに優れやすい。
無機フィラーの形状は、球状、針状(繊維状)、板状のいずれであってもよく、具体的には、球状、鱗片状、層状、葉片状、杏仁状、柱状、鶏冠状、等軸状、葉状、雲母状、ブロック状、平板状、楔状、ロゼット状、網目状、角柱状であってもよい。
無機フィラーとしては、例えば石英粉、シリカ、ウォラストナイト、タルク、窒化ケイ素、炭化ケイ素、雲母等のケイ素化合物;窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の窒素化合物;酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、酸化バナジウム、酸化銅、酸化鉄、酸化銀等の金属酸化物;炭素繊維;グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ等の炭素同素体;銀、銅等の金属;が挙げられる。
無機フィラーは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機フィラーのD50は、0.1~50μmが好ましい。
無機フィラーの表面は、シランカップリング剤で表面処理されていてもよい。
本組成物が無機フィラーを含む場合、本組成物における無機フィラーの含有量は、1~25質量%が好ましい。
【0035】
本組成物は、Fポリマーとは異なる他の樹脂をさらに含んでいてもよい。かかる他の樹脂は、本組成物に非中空状の粒子として含まれていてもよく、本組成物を構成する非プロトン性極性溶媒に溶解又は分散して含まれていてもよい。
他の樹脂としては、液晶性の芳香族ポリエステル等のポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂が挙げられる。
他の樹脂としては、芳香族系ポリマーが好ましく、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミック酸、芳香族ポリアミドイミド及び芳香族ポリアミドイミドの前駆体からなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族イミドポリマーがより好ましい。
本組成物が他の樹脂をさらに含む場合、F粒子に対する他の樹脂の含有量は、1~25質量%が好ましい。
【0036】
本組成物は、その粘度及びチキソ比を調整する観点から、粘度調節剤をさらに含んでいてもよい。
【0037】
本組成物は、さらに、消泡剤、脱水剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、難燃剤等の添加剤を含有してもよい。
【0038】
本組成物は、F粒子と変性セルロース系ファイバーと非プロトン性極性溶媒と、必要に応じて前記したノニオン性界面活性剤、無機フィラー、他の樹脂、添加剤等を混合することで得られる。
本組成物は、F粒子と変性セルロース系ファイバーと非プロトン性極性溶媒を一括で混合して得てもよいし、別々に順次混合してもよいし、これらのマスターバッチを予め作成し、それと残りの成分を混合してもよい。混合の順は特に制限はなく、また混合の方法も一括混合でも複数回に分割して混合してもよい。
【0039】
例えば、F粒子を非プロトン性極性溶媒の一部に予め分散し、次いで変性セルロース系ファイバーを添加して混合し、得られた混合物を残余の非プロトン性極性溶媒に添加して本組成物を得るのが、分散性を向上できる観点から好ましい。
前記した変性セルロース系ファイバーに混合する場合、そのまま又は非プロトン性極性溶媒の溶液として添加してもよい。また、前記したノニオン系界面活性剤、無機フィラー、他の樹脂、添加剤等を必要に応じてさらに混合する場合、F粒子と非プロトン性極性溶媒との混合に際して混合しても、前記混合物を非プロトン性極性溶媒に添加するに際して混合してもよい。
【0040】
本組成物を得るための混合の装置としては、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー及びプラネタリーミキサー等のブレードを備えた撹拌装置、ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル及びアジテーターミル等のメディアを備えた粉砕装置、マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザー、超音波ホモジナイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー、薄膜旋回型高速ミキサー、自転公転撹拌機及びV型ミキサー等の他の機構を備えた分散装置が挙げられる。
【0041】
本組成物におけるF粒子の含有量は、25質量%以上であるのが好ましく、30質量%以上であるのがより好ましい。F粒子の含有量は、75質量%以下であるのが好ましく、60質量%以下であるのがより好ましい。
【0042】
本組成物における変性セルロース系ファイバーの含有量は、本組成物の全体質量に対して10質量%以下であるのが好ましい。
また、変性セルロース系ファイバーの含有量は、本組成物が含有するF粒子に対する質量比として0.01~0.15であるのが好ましく、0.03~0.12がより好ましい。
【0043】
本組成物の粘度は、3000mPa・s以下が好ましく、2000mPa・s以下がより好ましい。本組成部の粘度は、10mPa・s以上が好ましく、100mPa・s以上がより好ましい。この場合、本組成物は塗工性に優れ、任意の厚さを有する塗膜(ポリマー層)等の成形物を形成しやすい。また、かかる範囲の粘度範囲にある本組成物は、それから形成される成形物において、Fポリマーの物性が高度に発現しやすく、折曲耐性に優れやすい。
本組成物のチキソ比は、1.0~2.5が好ましい。この場合、本組成物は、塗工性及び均質性に優れ、より緻密な成形物を生成しやすい。
【0044】
本組成物から形成される成形物の誘電率は2.4以下であるのが好ましく、2.2以下であるのがより好ましい。また、誘電率は1.0超であるのが好ましい。成形物の誘電正接は、0.0022以下であるのが好ましく、0.0020以下であるのがより好ましい。また、誘電正接は、0.0010超であるのが好ましい。成形物の熱伝導率は、1W/m・K以上であるのが好ましく、3W/m・K以上がより好ましい。
【0045】
本組成物を例えばシート状に押出す等の成形方法に供すれば、Fポリマーを含む、シート等の成形物を形成できる。押出して得たシートは、さらにプレス成形、カレンダー成形等をして流延してもよい。シートは、さらに加熱して、非水系溶媒を除去し、Fポリマーを焼成するのが好ましい。
【0046】
本組成物から形成されるシートの厚さは、1~1000μmが好ましい。
シートの誘電率、誘電正接及び熱伝導率の好適な範囲は、それぞれ、上述した成形物の誘電率、誘電正接及び熱伝導率の範囲と同様である。なお、シートにおける熱伝導率とは、シートの面内方向における熱伝導率を意味する。
シートの線膨張係数は、250ppm/℃以下が好ましく、220ppm/℃以下がより好ましい。シートの線膨張係数の下限は、30ppm/℃である。なお、線膨張係数は、JIS C 6471:1995に規定される測定方法に従って、25℃以上260℃以下の範囲における、試験片の線膨張係数を測定した値を意味する。
【0047】
かかるシートを基材に積層すれば積層体を形成できる。積層体の製造方法としては、前記基材上に本組成物を押出成形する方法、シートと前記基材とを熱圧着する方法等が挙げられる。
基材としては、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン、それらの合金等の金属箔等の金属基板;ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶性ポリエステル、テトラフルオロエチレン系ポリマー等の耐熱性樹脂のフィルム;プリプレグ基板(繊維強化樹脂基板の前駆体)、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等のセラミックス基板;ガラス基板が挙げられる。
【0048】
基材の形状としては、平面状、曲面状、凹凸状が挙げられる。また、基材の形状は、箔状、板状、膜状、繊維状のいずれであってもよい。
基材の表面の十点平均粗さは、0.01~0.05μmが好ましい。
基材の表面は、シランカップリング剤により表面処理されていてもよく、プラズマ処理されていてもよい。かかるシランカップリング剤としては、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等の官能基を有するシランカップリング剤が好ましい。
シートと基材との剥離強度は、10~100N/cmが好ましい。
【0049】
また、本組成物を基材の表面に配置し加熱して、Fポリマーを含むポリマー層(以下、「F層」とも記す。)を形成すれば、基材で構成される基材層とF層とをこの順で有する積層体が得られる。
F層は、本組成物を基材の表面に配置し、加熱して非水系溶媒を除去し、さらに加熱してFポリマーを焼成して形成するのが好ましい。かかる積層体から基材を分離すれば、Fポリマーを含むシートを得られる。
基材としては、上述のシートと積層できる基材と同様のものが挙げられ、その好適態様も同様である。
【0050】
本組成物の配置の方法としては、塗布法、液滴吐出法、浸漬法が挙げられ、ロールコート法、ナイフコート法、バーコート法、ダイコート法又はスプレー法が好ましい。
非水系溶媒の除去に際する加熱は、100~200℃にて、0.1~30分間で行うのが好ましい。この際の加熱において非水系溶媒は、完全に除去する必要はなく、F粒子のパッキングにより形成される層が自立膜を維持できる程度まで除去すればよい。また、加熱に際しては、空気を吹き付け、風乾によって非水系溶媒の除去を促してもよい。
【0051】
Fポリマーの焼成に際する加熱は、Fポリマーの溶融温度以上の温度にて行うのが好ましく、360~400℃にて、0.1~30分間行うのがより好ましい。
それぞれの加熱における加熱装置としては、オーブン、通風乾燥炉が挙げられる。装置における熱源は、接触式の熱源(熱風、熱板等)であってもよく、非接触式の熱源(赤外線等)であってもよい。
また、それぞれの加熱は、常圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。
また、それぞれの加熱における雰囲気は、空気雰囲気、不活性ガス(ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス等)雰囲気のいずれであってもよい。
【0052】
F層は、本組成物の配置、加熱の工程を経て形成される。これら工程は1回ずつ行ってもよく、2回以上繰り返してもよい。例えば、基材の表面に本組成物を配置し加熱してF層を形成し、さらに前記F層の表面に本組成物を配置し加熱して2層目のF層を形成してもよい。また、基材の表面に本組成物を配置し加熱して非水系溶媒を除去した段階で、さらにその表面に本組成物を配置し加熱してF層を形成してもよい。
本組成物は、基材の一方の表面にのみ配置してもよく、基材の両面に配置してもよい。前者の場合、基材層と、かかる基材層の片方の表面にF層を有する積層体が得られ、後者の場合、基材層と、かかる基材層の両方の表面にF層を有する積層体が得られる。
F層の厚さは、積層体の用途によっても異なるが、1~1000μmの範囲が好ましい。
【0053】
積層体の好適な具体例としては、金属箔と、その金属箔の少なくとも一方の表面にF層を有する金属張積層体、ポリイミドフィルムと、そのポリイミドフィルムの両方の表面にF層を有する多層フィルムが挙げられる。
F層の厚さ、誘電率、誘電正接、熱伝導率、線膨張係数、F層と基材層との剥離強度の好適範囲は、上述の本組成物から形成されるシートにおける、厚さ、誘電率、誘電正接、熱伝導率、線膨張係数、シートと基材との剥離強度の好適範囲と同様である。
【0054】
本組成物は、絶縁性、耐熱性、対腐食性、耐薬品性、耐水性、耐衝撃性、熱伝導性を付与するための材料として有用である。
本組成物は、具体的には、プリント配線板、熱インターフェース材、パワーモジュール用基板、モーター等の動力装置で使用されるコイル、車載エンジン、熱交換器、バイアル瓶、注射筒(シリンジ)、アンプル、医療用ワイヤー、リチウムイオン電池等の二次電池、リチウム電池等の一次電池、ラジカル電池、太陽電池、燃料電池、リチウムイオンキャパシタ、ハイブリッドキャパシタ、キャパシタ、コンデンサ(アルミニウム電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ等)、エレクトロクロミック素子、電気化学スイッチング素子、電極のバインダー、電極のセパレーター、電極(正極、負極)に使用できる。
また、本組成物は部品を接着する接着剤としても有用である。具体的には、本組成物は、セラミックス部品の接着、金属部品の接着、半導体素子やモジュール部品の基板におけるICチップや抵抗、コンデンサ等の電子部品の接着、回路基板と放熱板の接着、LEDチップの基板への接着に使用できる。
【0055】
本組成物から形成されるシート等の成形物、及び積層体は、アンテナ部品、プリント基板、航空機用部品、自動車用部品、スポーツ用具、食品工業用品、放熱部品等として有用である。
具体的には、電線被覆材(航空機用電線等)、電気自動車等のモーター等に使用されるエナメル線被覆材、電気絶縁性テープ、石油掘削用絶縁テープ、石油輸送ホース、水素タンク、プリント基板用材料、分離膜(精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜、イオン交換膜、透析膜、気体分離膜等)、電極バインダー又は電極被覆材(リチウム二次電池用、燃料電池用等)、コピーロール、家具、自動車ダッシュボート、家電製品等のカバー、摺動部材(荷重軸受、ヨー軸受、すべり軸、バルブ、ベアリング、ブッシュ、シール、スラストワッシャ、ウェアリング、ピストン、スライドスイッチ、歯車、カム、ベルトコンベア、食品搬送用ベルト等)、テンションロープ、ウェアパッド、ウェアストリップ、チューブランプ、試験ソケット、ウェハーガイド、遠心ポンプの摩耗部品、薬品及び水供給ポンプ、工具(シャベル、やすり、きり、のこぎり等)、ボイラー、ホッパー、パイプ、オーブン、焼き型、シュート、ラケットのガット、ダイス、便器、コンテナ被覆材、パワーデバイス用実装放熱基板、無線通信デバイスの放熱部材、トランジスタ、サイリスタ、整流器、トランス、パワーMOS FET、CPU、放熱フィン、金属放熱板、風車や風力発電設備や航空機等のブレード、パソコンやディスプレイの筐体、電子デバイス材料、自動車の内外装、低酸素下で加熱処理する加工機や真空オーブン、プラズマ処理装置などのシール材、スパッタや各種ドライエッチング装置等の処理ユニット内の放熱部品、電磁波シールドとして有用である。
【0056】
本組成物から形成されるシート等の成形物、及び積層体は、フレキシブルプリント配線基板、リジッドプリント配線基板等の電子基板材料、保護フィルムや放熱基板、特に自動車向けの放熱基板として有用である。
【0057】
以上、本組成物、及び本組成物から形成されるポリマー層を有する積層体の製造方法について説明したが、本発明は、前述した実施形態の構成に限定されない。例えば、本組成物は、上記実施形態の構成において、他の任意の構成を追加してもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてよい。また、本組成物から形成されるポリマー層を有する積層体の製造方法は、上記実施形態の構成において、他の任意の構成を追加で有してもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてよい。
【実施例0058】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
1.各成分の準備
[Fポリマーの粒子]
F粒子1:TFE単位、NAH単位及びPPVE単位を、この順に97.9モル%、0.1モル%、2.0モル%含み、カルボニル基含有基を主鎖炭素数1×10個あたり1000個有するテトラフルオロエチレン系ポリマー(溶融温度:300℃)の粒子(D50:2.0μm、比表面積:7m/g)
F粒子2:TFE単位及びPPVE単位を、この順に97.5モル%、2.5モル%含み、酸素含有極性基を有さないテトラフルオロエチレン系ポリマー(溶融温度:300℃)からなる粒子(D50:10.0μm、比表面積:6m/g)
F粒子3:非溶融加工性のPTFEからなる粒子(D50:0.3μm)
[変性セルロース系ファイバー]
剤1:9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する重合性単量体がグラフト結合した変性セルロース系ファイバー(繊維径:100nm)
剤2:リン酸化変性セルロース系ファイバー(王子ホールディングス製、繊維径:4nm)
剤3:カルボキシメチル化変性セルロース系ファイバー(繊維径:3~500nm)
剤4:未変性セルロース系ファイバー(繊維径:1500nm)
[ノニオン性界面活性剤]
界面活性剤1:フタージェント(登録商標)710FL(商品名、ネオス社製、フッ素系界面活性剤)
界面活性剤2:KP-541(商品名、信越化学工業社製、シリコーン系界面活性剤)
[非プロトン性極性溶媒]
NMP:N-メチルピロリドン
【0059】
2.非水系組成物の製造例
[例1]
ポットに、F粒子1と剤1と界面活性剤1とNMPとを投入し、ジルコニアボールを投入した。その後、150rpmにて1時間、ポットを転がして、F粒子1(47.2質量部)、剤1(0.5質量部)、界面活性剤1(2.4質量部)及びNMP(49.9質量部)を含む非水系組成物1(粘度:750mPa・s)を得た。
【0060】
[例2~7]
Fポリマーの粒子、変性セルロース系ファイバー、ノニオン性界面活性剤及び非プロトン性極性溶媒の種類と使用量を表1のとおり変更した以外は例1と同様にして、非水系組成物2~7を得た。
【0061】
【表1】
【0062】
3.非水系組成物の分散安定性
上記した例1~7で得られた各非水系組成物における分散安定性を目視で観察し、以下の基準で評価した。
[分散安定性]
A:当初、F粒子の凝集や沈降は見られず良好に分散しており、その状態が経時的に維持される。
B:当初、F粒子の凝集や沈降は見られず良好に分散しているが、経時的に粘稠かつ凝集傾向がある。
C:当初から、粘稠かつ凝集傾向になるが分散している
D:スラリー状となり、一部ゲル化も見られ分散しない
【0063】
4.積層体の製造及び層物性の評価
分散安定性を示した非水系組成物1~6をそれぞれ用いて積層体を製造し、形成されたポリマー層を評価した。
4-1.積層体の製造
ロール・ツー・ロールプロセスにより、銅箔の一方の表面に、各非水系組成物を塗工して塗工層を形成し、通風乾燥炉(炉温150℃)に3分間で通過させて、非水系溶媒を除去してドライ膜を形成した。次いで、ドライ膜が形成された基材を、遠赤外線炉(炉内入口、出口付近の炉温度300℃、中心付近の炉温度360℃)に5分間で通過させてF粒子1を溶融焼成し、銅箔の表面にポリマー層(厚さ25μm)を有する積層体を得た。
【0064】
4-2.外観
それぞれの積層体について、ポリマー層表面の外観を目視で確認し、以下の基準で評価した。
[評価基準]
A:表面は平滑で筋目等も観察されない
B:表面は平滑だがランダムな筋目が観察される
C:筋目が観察される
【0065】
4-3.折曲耐性
それぞれの積層体について、積層体の銅箔を塩化第二鉄水溶液でエッチングにより除去して単独のポリマー層であるシートを作製した。作成したシートから5mm角の四角い試験片を切り出し、曲率半径(300μm)の条件で180°折り曲げ、上から荷重(50mN、1分間)をかけた後に折り曲げを戻し、試験片の外観を以下の基準で評価した。
[評価基準]
A:折り目部分に外観異常は見られない。
B:折り目部分に白化が見られた。
C:折り目で破断した。
【0066】
4-4.誘電正接の測定
それぞれの積層体について、ファブリペロー共振器及びベクトルネットワークアナライザ(キーコム社製)を使用して、積層体のポリマー層について10GHzの誘電正接を測定し、以下の基準で伝送損失を評価した。
[評価基準]
A:0.0015以下
B:0.0015超0.0030以下
C:0.0030超
以上の評価結果を表2にまとめて示す。
【0067】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の非水系組成物は分散安定性に優れる。また、Fポリマーの物性を高度に発現し、その表面外観及び折曲耐性に優れる、塗膜(ポリマー層)等の成形物を形成できる。