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特開2024-53644新規な(メタ)アクリル酸エステルモノマー、樹脂及びそれを含むフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053644
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】新規な(メタ)アクリル酸エステルモノマー、樹脂及びそれを含むフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/26 20060101AFI20240409BHJP
   C08F 20/30 20060101ALI20240409BHJP
   C08F 20/36 20060101ALI20240409BHJP
   C07C 69/80 20060101ALI20240409BHJP
   C07D 249/20 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C08F20/26
C08F20/30
C08F20/36
C07C69/80 B
C07D249/20 503
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159977
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉村 飛鳥
(72)【発明者】
【氏名】小峯 拓也
(72)【発明者】
【氏名】坂下 竜一
(72)【発明者】
【氏名】一條 洋樹
【テーマコード(参考)】
4H006
4J100
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AB46
4H006BP30
4H006KA30
4H006KC14
4H006KE10
4J100AL08P
4J100AL34Q
4J100AL36Q
4J100AL39Q
4J100AL41Q
4J100AL83Q
4J100BA02P
4J100BA04P
4J100BA15P
4J100BA20P
4J100BC02Q
4J100BC04Q
4J100BC43P
4J100BC44P
4J100BC73P
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA23
4J100DA49
4J100DA63
4J100JA32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】加熱時の樹脂の耐熱性低下を抑制できるモノマー、樹脂及びそれを含むフィルムを提供する。
【解決手段】下記式(I)または(II)で表される構造単位をエステル部分に有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー。

(R~Rは、それぞれ、独立して、水素原子または、炭素数1~6のアルキル基を表す。*は、結合位置を示す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルモノマー。
【化1】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。環Aは下記構造式(I)または(II)で表される。環Aが下記構造式(I)のとき、Sは下記構造式(1-2-1)から(1-2-12)、(1-2-65)から(1-2-68)で表され、環Aが下記構造式(II)のとき、Sは下記構造式(1-1-1)から(1-1-6)、(1-2-1)から(1-2-12)、(1-2-65)から(1-2-68)で表される。)
【化2】
(R~Rは、それぞれ、独立して、水素原子または、炭素数1~6のアルキル基を表す。*は、結合位置を示す。)
【化3】
【請求項2】
環Aが下記構造式(III)または(IV)である請求項1に記載の(メタ)アクリル酸エステルモノマー。
【化4】
(*は、結合位置を示す。)
【請求項3】
環Aが前記式(I)または(III)のときSは前記式(1-2-7)から(1-2-12)、(1-2-65)から(1-2-68)、環Aが前記式(II)または(IV)のときSは(1-1-1)から(1-1-6)である請求項1に記載の(メタ)アクリル酸エステルモノマー。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する下記構造式(2)で示される残基単位と、下記構造式(3)で示される残基単位を含む樹脂。
【化5】
(R、S、環Aは、式(1)のR、S、環Aと同義である。)
【化6】
(式中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1~12である直鎖状アルキル基、炭素数3~12の分岐状アルキル基、又は炭素数3~6である環状アルキル基からなる群の1種を示す)
【請求項5】
前記式(2)で示される残基単位を1~20モル%、前記式(3)で示される残基単位を80~99モル%含む請求項4に記載の樹脂。
【請求項6】
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフにより測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が100,000~450,000である請求項4に記載の樹脂。
【請求項7】
請求項4に記載の樹脂を含むフィルム。
【請求項8】
フィルムの動的粘弾性を測定した時の貯蔵弾性率E‘=1×10となる温度が、120~180℃である請求項7に記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な(メタ)アクリル酸エステルモノマー、樹脂及びそれを含むフィルムに関するものであり、より詳しくは、樹脂の耐熱性を向上させることができる新規な(メタ)アクリル酸エステルモノマーに関する。
【背景技術】
【0002】
フマル酸ジエステルから得られる単独重合体または共重合体は、一般的な熱可塑性ビニル重合体と比べて高い耐熱性を示し、さらに透明性に優れた樹脂となることが知られている。例えば、フマル酸ジイソプロピルやフマル酸ジシクロヘキシルから得られる単独重合体は、200℃以上でも軟化点およびガラス転移温度を示さず、光学分野において様々な用途に使用可能な透明樹脂として有望な材料である。そして、フマル酸ジエステル系樹脂よりなるフィルムは優れた耐熱性、透明性を有することが知られている(例えば、特許文献1~3)。
【0003】
特許文献1~3に示されたフマル酸ジエステル系樹脂よりなるフィルムは優れた耐熱性を有するもののより靭性の向上が求められている。特許文献4では、靭性は大きく改善されるものの、長鎖アルキル鎖を有するアクリレートと共重合することで耐熱性(ここで、耐熱性は樹脂の貯蔵弾性率(E‘)が1×10Paの時の温度を指す。)に課題がある。
【0004】
したがって、重合した際に樹脂の耐熱性低下を抑制できるアクリレートモノマーが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平5-40281号公報
【特許文献2】特開2006-193616号公報
【特許文献3】特開2008-120851号公報
【特許文献4】特開2017-149932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は加熱時の樹脂の耐熱性低下を抑制できる(メタ)アクリル酸エステルモノマー、樹脂及びそれを含むフィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の(メタ)アクリル酸エステルを重合させ、それを含むフィルムが、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルモノマー、樹脂及びそれを含むフィルムである。
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。環Aは下記構造式(I)または(II)で表される。環Aが下記構造式(I)のとき、Sは下記構造式(1-2-1)から(1-2-12)、(1-2-65)から(1-2-68)で表され、環Aが下記構造式(II)のとき、Sは下記構造式(1-1-1)から(1-1-6)、(1-2-1)から(1-2-12)、(1-2-65)から(1-2-68)で表される。)
【0011】
【化2】
【0012】
(R~Rは、それぞれ、独立して、水素原子または、炭素数1~6のアルキル基を表す。*は、結合位置を示す。)
【0013】
【化3】
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、樹脂の耐熱性低下を抑制できる(メタ)アクリル酸エステルモノマー、特にフマル酸ジエステルのコモノマーとして有用な(メタ)アクリル酸エステルモノマーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の一態様である(メタ)アクリル酸エステルモノマーについて、詳細に説明する。
【0016】
本発明は、前記式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルモノマー(以下、「本発明のモノマー」という。)である。
【0017】
式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。
【0018】
式(1)中、環Aは下記構造式(I)または(II)で表され、剛直な環Aが導入されているため、樹脂の耐熱性低下を抑制する事が可能となる。
【0019】
環Aが下記構造式(I)のとき、Sは下記構造式(1-2-1)から(1-2-12)、(1-2-65)から(1-2-68)で表される。
【0020】
【化4】
【0021】
(R~Rは、それぞれ、独立して、水素原子または、炭素数1~6のアルキル基を表す。*は、結合位置を示す。)
得られる樹脂が良好な耐熱性を有することから、(1-2-7)から(1-2-12)、(1-2-65)から(1-2-68)が好ましく、なかでも(1-2-7)から(1-2-9)、(1-2-67)から(1-2-68)がさらに好ましく、(1-2-8)、(1-2-68)が特に好ましい。
【0022】
また、環Aが下記構造式(II)のとき、Sは式(1-1-1)から(1-1-6)、(1-2-1)から(1-2-12)、(1-2-65)から(1-2-68)で表され、得られる樹脂が良好な耐熱性を有することから(1-1-1)から(1-1-6)が好ましく、(1-1-3)から(1-1-5)がさらに好ましく、(1-1-4)が特に好ましい。
【0023】
式(I)、(II)中、R~Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基からなる群の1種を表す。炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。本発明のモノマーを重合して得られる樹脂の耐熱性低下を抑制できることから、環Aは下記構造(III)、(IV)が好ましい。
【0024】
【化5】
【0025】
(*は、結合位置を示す。)
本発明において、式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、下記式の(2-2-6)~(2-4-77)いずれかからなる(メタ)アクリル酸エステルモノマーであることが好ましい。
【0026】
【化6】
【0027】
【化7】
【0028】
【化8】
【0029】
【化9】
【0030】
【化10】
【0031】
【化11】
【0032】
【化12】
【0033】
【化13】
【0034】
【化14】
【0035】
【化15】
【0036】
【化16】
【0037】
【化17】
【0038】
これらの中でも、式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、(2-2-6)から(2-2-20)、(2-3-11)から(2-3-20)、(2-4-1)から(2-4-38)等からなる群の1種に由来する構造が好ましく、(2-2-6)から(2-2-10)、(2-3-11)から(2-3-15)、(2-4-8)から(2-4-18)等からなる群の1種に由来する構造がさらに好ましく、(2-2-7)から(2-2-9)、(2-3-11)から(2-3-12)、(2-4-16)から(2-4-18)が特に好ましい。
【0039】
本発明において、式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合成方法は、下記式(c)または下記式(d)で示される。
【0040】
【化18】
【0041】
【化19】
【0042】
(式(4)のR、S、環Aは式(1)のR、S、環Aと同義である。)
式(c)は式中(4)を触媒により環Aを縮合反応させる方法である。触媒は縮合反応可能であれば特に制限はなく、モレキュラーシーブ等の脱水剤やジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物、N,N’-カルボニルジイミダゾール化合物、リン、亜リン酸、リン酸ハロゲン化物やアミド化合物等の縮合剤を用いることが好ましい。
【0043】
式(d)は式中(4)をトシル基等の脱離基を反応させたのち、環Aを置換反応させる方法である。脱離基は、置換反応が可能であれば特に制限はなく、トシル基等の脱離基を用いることが好ましい。置換反応は脱離基を置換可能であれば制限はなく、炭酸塩や無機塩、有機塩等の塩基性示す塩を用いることが好ましい。
【0044】
以下に本発明の一態様である樹脂について、詳細に説明する。
本発明の樹脂は、良好な耐熱性を有することから、式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する下記構造式(2)で示される残基単位と、下記構造式(3)で示される残基単位を含む樹脂である。
【0045】
【化20】
【0046】
(R、S、環Aは、式(1)のR、S、環Aと同義である。)
【0047】
【化21】
【0048】
(式中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1~12である直鎖状アルキル基、炭素数3~12の分岐状アルキル基、又は炭素数3~6である環状アルキル基からなる群の1種を示す)
式(2)中のR、S、環Aは、式(1)のR、S、環Aと同義であり、式(2)示される残基単位としては、式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルモノマーの(2-2-6)~(2-4-77)いずれかからなる(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する残基単位が好ましい。
【0049】
式(3)中、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1~12の直鎖状アルキル基、炭素数3~12の分岐状アルキル基または炭素数3~12の環状アルキル基からなる群の1種を表す。
【0050】
炭素数1~12の直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、炭素数3~12の分岐状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられ、炭素数3~12の環状アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、式(3)で示される残基単位との重合性が良好であることから、イソプロピル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基が好ましく、イソプロピル基がさらに好ましい。
【0051】
そして、具体的な式(3)で表されるフマル酸エステル残基単位としては、例えば、フマル酸モノメチル残基単位、フマル酸モノエチル残基単位、フマル酸モノイソプロピル残基単位、フマル酸モノペンチル残基単位、フマル酸モノへキシル残基単位、フマル酸モノn-ブチル残基単位、フマル酸モノイソブチル残基単位、フマル酸モノsec-ブチル残基単位、フマル酸モノtert-ブチル残基単位、フマル酸モノシクロプロピル残基単位、フマル酸モノシクロブチル残基単位、フマル酸モノシクロヘキシル残基単位、フマル酸ジメチル残基単位、フマル酸ジエチル残基単位、フマル酸ジプロピル残基単位、フマル酸ジペンチル残基単位、フマル酸ジヘキシル残基単位、フマル酸ジイソプロピル残基単位、フマル酸ジn-ブチル残基単位、フマル酸ジイソブチル残基単位、フマル酸ジsec-ブチル残基単位、フマル酸ジtert-ブチル残基単位、フマル酸ジシクロプロピル残基単位、フマル酸ジシクロブチル残基単位、フマル酸ジシクロヘキシル残基単位等が挙げられる。これらの中でも、式(2)で示される残基単位との重合性が良好であることから、フマル酸ジイソプロピル残基単位、フマル酸ジtert-ブチル残基単位、フマル酸ジシクロヘキシル残基単位が好ましく、フマル酸ジイソプロピル残基単位がさらに好ましい。
【0052】
本発明の樹脂は、式(2)と(3)で示される残基単位以外の残基単位を含んでいてもよく、該式(2)と(3)で示される残基単位以外の残基単位としては、例えばスチレン残基、α-メチルスチレン残基等のスチレン類残基;アクリル酸残基;アクリル酸メチル残基、アクリル酸エチル残基、アクリル酸ブチル残基等のアクリル酸エステル類残基;メタクリル酸残基;メタクリル酸メチル残基、メタクリル酸エチル残基、メタクリル酸ブチル残基等のメタクリル酸エステル類残基;酢酸ビニル残基、プロピオン酸ビニル残基等のビニルエステル類残基;アクリロニトリル残基;メタクリロニトリル残基;エチレン残基、プロピレン残基等のオレフィン類残基;等の1種又は2種以上を挙げることができる。
【0053】
本発明の樹脂としては、例えば、以下の(3-3-1)~(3-6-8)の構造が挙げられる。樹脂を得る際に良好な重合性を有することから(3-3-1)から(3-3-5)、(3-4-11)から(3-4-15)、(3-6-1)から(3-6-4)が好ましく、(3-3-2)から(3-3-4)、(3-4-11)から(3-4-12)、(3-6-3)から(3-6-4)が特に好ましい。
【0054】
【化22】
【0055】
【化23】
【0056】
【化24】
【0057】
【化25】
【0058】
【化26】
【0059】
【化27】
【0060】
本発明の樹脂の組成は式(2)で示される残基単位が1~20モル%、式(3)で示される残基単位が80~99モル%含むことが好ましく、式(2)で示される残基単位が1~15モル%、式(3)で示される残基単位が85~99モル%含むことがさらに好ましく、式(2)で示される残基単位が1~10モル%、式(3)で示される残基単位が90~99モル%含むことが特に好ましい。
【0061】
本発明の樹脂の重量平均分子量は、より良好な機械的強度を発現することから100,000~450,000が好ましい。さらに良好な機械的強度を発現させるためには、130,000~450,000がさらに好ましく、150,000~450,000が特に好ましい。これにより本発明の樹脂より得られるフィルムがより良好な機械的強度を発現する。ここで、重量平均分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフにより測定した標準ポリスチレン換算で表すことができる。
【0062】
本発明の樹脂の製造方法としては、該樹脂が得られる限りにおいて如何なる方法により製造してもよい。例えば、式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルモノマーおよび式(3)で示される残基単位にかかる単量体を、ラジカル重合を行うことにより樹脂を製造することができる。ラジカル重合の方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、乳化重合法等のいずれかの方法を採用することができる。
【0063】
ラジカル重合を行う際の重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン等の有機過酸化物;2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-ブチロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル-2’-アゾビスイソブチレート、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)等のアゾ系開始剤等が挙げられる。
【0064】
そして、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、乳化重合法を採用する場合において使用可能な溶媒として特に制限はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;シクロヘキサン;ジオキサン;テトラヒドロフラン;アセトン;メチルエチルケトン;N,N-ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド;酢酸イソプロピル;水等が挙げられ、これらの混合溶媒も挙げられる。
【0065】
また、ラジカル重合を行う際の重合温度は、重合開始剤の分解温度に応じて適宜設定することができ、反応の制御が容易であることから、一般的には30~150℃の範囲で行うことが好ましい。
【0066】
以下に本発明の一態様であるフィルムについて、詳細に説明する。
【0067】
本発明の樹脂は、光学部材向けのフィルムとして好適に使用することができる。特に、フィルム状に成形し、熱を加えた際のフィルムのE‘=1×10Paとなる温度が高いことから、耐熱性に優れたフィルムとして使用することができる。
【0068】
貯蔵弾性率E‘は動的粘弾性測定により測定することができ、フィルム弾性の指標であり、成形・加工する際の目安とされている。本発明の樹脂は、E‘=1.0×10Paの時の温度が、成型加工温度の1つの指標となる。
【0069】
一方で、E‘=1.0×10Paの時の温度が低い場合、高温下における環境安定性が低下するため、E‘=1.0×10Paの時の温度は120~180℃が好ましく、125~180℃がさらに好ましく、130~180℃が特に好ましい。
【0070】
本発明の樹脂より得られるフィルムは、下記式(a)で示される589nmで測定した面外位相差(Rth)は、ディスプレイ等の光学部材の面内の位相差を調節し光学補償できることから、面外位相差(Rth)が-200~50nmであることが好ましい。さらにディスプレイ等のコントラストを良好に調節させるためには、-160~30nmがさらに好ましく、-90~0nmが特に好ましい。
【0071】
Rth={(nx+ny)/2-nz}×d (a)
(式(a)中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率を示す。nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率を示す。nzはフィルム面外の屈折率を示す。dはフィルム厚み(nm)を示す。)
ここで、進相軸方向とは、最も屈折率の小さい方向を表し、遅相軸方向とは、最も屈折率の大きい方向を表す。
【0072】
本発明のフィルムの膜厚は、80μm以下が好ましく、50μm以下がさらに好ましく、30μm以下が特に好ましい。フィルムの膜厚が薄くなることでディスプレイ等の薄膜化を可能とする。
【0073】
本発明のフィルムは、フィルムとする際の熱安定性を向上させるために酸化防止剤を含有していても良い。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、ビタミンE系酸化防止剤、その他酸化防止剤等が挙げられ、これら酸化防止剤はそれぞれ単独でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0074】
本発明のフィルムは、いわゆる可塑剤として知られる化合物を、フィルムとする際の機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水蒸気透過率低減、位相差調整等の目的で添加してもよく、可塑剤としては、例えば、リン酸エステルやカルボン酸エステル等が挙げられる。また、アクリル系樹脂なども用いられる。リン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート等を挙げることが出来る。
【0075】
カルボン酸エステルとしては、例えば、フタル酸エステル、クエン酸エステル、脂肪酸エステル、グリセロールエステル、アルキルフタリルアルキルグリコレート等を挙げることができる。フタル酸エステルとしては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート及びジエチルヘキシルフタレート等が挙げられ、またクエン酸エステルとしては、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等を挙げることが出来る。また、脂肪酸エステルとしては、例えば、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバチン酸ジブチル等が挙げられ、グリセロールエステルとしては、例えば、トリアセチン、トリメチロールプロパントリベンゾエート等が挙げられ、アルキルフタリルアルキルグリコレートとしては、例えば、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、プロピルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることが出来る。これら可塑剤は単独でもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0076】
本発明のフィルムは、発明の主旨を超えない範囲で、その他樹脂、界面活性剤、高分子電解質、導電性錯体、顔料、染料、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤等を含有していてもよい。
【0077】
本発明のフィルムの製造方法としては、特に制限はなく、例えば、溶融製膜法、溶液キャスト法等の方法が挙げられる。
【0078】
溶融製膜する方法は、具体的にはTダイを用いた溶融押出法、カレンダ-成形法、熱プレス法、共押出法、共溶融法、多層押出、インフレ-ション成形法等があり、特に限定されないが、中でも後の延伸処理のし易さから、Tダイを用いた溶融押出法が好ましい。
【0079】
溶融製膜法でフィルムを成形する場合、よりフィルム厚みを均一にするのに好適で、かつ、よりフィルムの欠陥や着色を防ぐのに好適な成形方法となるため、成形温度は好ましくは200~265℃、さらに好ましくは210~260℃、特に好ましくは220~258℃である。ここで、該成形温度とは、溶融製膜法における成形時の温度であって、通常、溶融樹脂を押出すダイス出口の温度を測定した値である。
【0080】
溶液キャスト法は、本発明の樹脂を溶媒に溶解した溶液(以下、「ド-プ」という。)を支持基盤上に流延した後、加熱等により溶媒を除去してフィルムを得る方法である。その際、ド-プを支持基盤上に流延する方法としては、Tダイ法、ドクタ-ブレ-ド法、バ-コ-タ-法、ロ-ルコ-タ-法、リップコ-タ-法等が用いられる。特に工業的にはダイからド-プをベルト状またはドラム状の支持基板に連続的に押し出す方法が最も一般的である。用いられる支持基板としては、例えば、ガラス基板、ステンレスやフェロタイプ等の金属基板、ポリエチレンテレフタレ-ト等のフィルム等がある。溶液キャスト法において、高い透明性を有し、かつ厚み精度、表面平滑性に優れたフィルムを製膜する際には、ド-プの溶液粘度は極めて重要な因子であり、10~20000cPsが好ましく、100~10000cPsであることがさらに好ましい。
【0081】
本発明のフィルムは延伸したフィルムとすることもできる。本発明のフィルムを延伸する事で、位相差を制御する事が可能である。延伸されたフィルムにおいては、下記式(b)で示される589nmで測定した面内位相差(Re)は、ディスプレイ等の光学部材の面内の位相差を調節し光学補償できることから、10~300nmであることが好ましい。さらにディスプレイ等のコントラストを良好に調節させるためには、50~280nmがさらに好ましく、70~200nmが特に好ましい。
【0082】
Re=(nx-ny)×d (b)
(式(b)中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率を示す。nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率を示す。dはフィルム厚み(nm)を示す。)
本発明のフィルムは、光学部材の光学補償を目的とした位相差を有したものとなることから延伸することが好ましい。
【0083】
延伸方法としては、位相差制御が可能であることから、例えば、一軸延伸方法又は二軸延伸方法を挙げることができる。一軸延伸方法としては、例えば、ロール間で延伸する縦一軸延伸方法、テンターにより延伸する横位置軸延伸方法などが挙げられ、二軸延伸方法としては、例えばテンターにより延伸する方法、チューブ状に膨らませて延伸する方法等が挙げられる。
【0084】
延伸する際の温度は、厚みむらが発生し難く、機械的特性、光学的特性に優れるフィルムとなることから、好ましくは90~300℃、特に好ましくは105~250℃である。
【0085】
フィルムの延伸の倍率(以下、「延伸倍率」という。)は、得られるフィルムが、薄膜かつ良好な位相差特性を発現することから、一軸で延伸した際に、好ましくは1.05~4.0倍、さらに好ましくは1.10~3.0倍、特に好ましくは1.2~2.0倍である。
【0086】
フィルムは、必要に応じて他樹脂を含むフィルムと更に積層することができる。他樹脂としては、例えば、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、マレイミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド等が挙げられる。また、液晶層やハードコート層、ガスバリア層、屈折率を制御した層(低反射層)を積層することも可能である。
【0087】
本発明のフィルムは、光学特性に優れることから光学部材向けのフィルムとして好適に使用することができる。特に、フィルム状に成形することで、光学補償フィルムとして使用することができ、所望の位相差を発現することでディスプレイ等における光学補償フィルムとして使用することができる。
【実施例0088】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例により示す諸物性は、以下の方法により測定した。
【0089】
<モノマー及び重合体の解析>
核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名JNM-ECZ400S/L1)を用い、プロトン核磁気共鳴分光(H-NMR)スペクトル分析より求めた。また、H-NMRスペクトル分析により求めることが困難であるものについては、元素分析装置(Perkin Elmer製、商品名2400II)を用い、CHN元素分析により求めた。
【0090】
<樹脂の動的粘弾性測定>
粘弾性測定装置(UBM社製、商品名Rheogel-E4000)を用い、温度40℃から180℃、昇温速度2℃/分、周波数10Hz、歪み0.1%引張モードにて測定し、貯蔵弾性率E‘を求めた。
【0091】
<平均分子量の測定>
ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー製、商品名HLC8320GPC(カラムGMHHR―Hを装着))を用い、テトラヒドロフランまたはN,N―ジメチルホルムアミドを溶媒として、40℃で測定し、標準ポリスチレン換算値として求めた。
<位相差特性(Rth、Re)の測定>
偏光位相差測定システム(Axometrics製、商品名:AxoScan)を用いて波長589nmの光を用いてフィルムの位相差特性、式(a)で示される波長589nmで測定した面外位相差Rth及び式(b)にて示される波長589nmで測定した面内位相差Reを測定した。
【0092】
実施例1
300mLの三口フラスコにビフェニル-4-カルボン酸(東京化成工業社製)9.45g(55.5mmol)とジアミノピリジン(東京化成工業社製)0.678g(5.55mmol)を脱水ジクロロメタン(富士フイルム和光純薬社製)100mLに窒素雰囲気下0℃にて溶解させた。これに1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(東京化成工業社製)10.6g(55.5mmol)加え、30分撹拌した。そこへアクリル酸-2-カルボキシエチル(東京化成工業社製)8.00g(55.5mmol)を加え室温に戻し一晩反応させた。水を加えて反応を停止させ、水層をジクロロメタンで3回、有機層を飽和食塩水で3回洗浄し有機層を取り出し無水硫酸ナトリウムで乾燥させたのち、溶媒を減圧留去した。得られたオイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/ヘキサン=80Vol%~20Vol%)(シリカゲル)にて精製し、溶媒を減圧留去して、単黄色液体として3-([1,1‘-ビフェニル]-4-イルオキシ)-3-オキソプロピルアクリレート(以下、「アクリレートA」という。)(2-3-11)を得た。(H-NMR(400MHz,CDCl):δ7.61-7.56(m,4H)、7.45-7.33(m,3H)、7.22-6.20(m,2H)、6.63(d,J=17.2Hz,1H)、6.38-6.31(m,2H)、1.30-1.27(m,2H)、0.90-0.87(m,2H))
【0093】
【化28】
【0094】

合成例1
500mL三口フラスコに2-(アクリロイルオキシ)エチル(2-ヒドロキシエチル)フタレート20.0g(共栄社化学社製)(64.9mmol)、脱水ジクロロメタン200mL、トリエチルアミン13.1g(130.0mmol)、DMAP1.59g(13.0mmol)、p-トルエンスルホニルクロリド14.8g(77.8mmol)を加え、0℃にて溶解させた。
【0095】
3時間反応し、2N塩酸200mLを加えて反応を停止した。
【0096】
反応液を分液漏斗に移し、クロロホルムで3回抽出し、有機層を蒸留水で1回洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層をエバポレーターで濃縮し、真空ポンプを用いて室温で真空乾燥し、2-(アクリロイルオキシ)エチル(2-(トシルオキシ)エチル)フタレート10.7gを得た。(H-NMR(400MHz,CDCl):δ7.92-7.64(m,4H)、7.59-7.53(m,2H)、7.41-7.25(m,2H)、6.47-6.34(m,1H)、6.18-6.00(m,1H)、5.88-5.82(m,1H)、4.61-4.18(m,8H)、2.34(s,3H))
【0097】
【化29】
【0098】
実施例2
300mLの三口フラスコに4-フェニルフェノール2.83g(16.6mmol)、炭酸カリウム4.60g(33.3mmol)、合成例1で得られたアクリレート10.0g(21.6mmol)、脱水DMF50mL加え、50℃にて溶解させた。5時間撹拌後、室温まで冷却し、イオン交換50mL加え反応を停止した。
【0099】
反応物をクロロホルムで抽出し、有機層をイオン交換水で3回、ブラインで3回洗浄して、硫酸ナトリウムで乾燥した。
【0100】
有機層をエバポレーターで濃縮し、中圧カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン=100Vol%)(シリカゲル)で精製して、2-([1,1‘-ビフェニル]-4-イルオキシ)エチル(2-(アクリロイルオキシ)エチル)フタレート0.89g(以下、「アクリレートC」という。)(2-4-16)を得た。(H-NMR(400MHz,CDCl):δ7.78-7.25(m,11H)、7.05-6.93(m,2H)、6.47-6.39(m,1H)、6.20-6.00(m,1H)、5.87-5.81(m,1H)、4.68-4.24(m,8H))
【0101】
【化30】
【0102】
合成例2
200mL三口フラスコにアクリル酸-4ヒドロキシブチル4.99g(34.6mmol)、脱水ジクロロメタン35mL、トリエチルアミン(富士フイルム和光純薬社製)7.0g(69mmol)、ジアミノピリジン0.85g(6.9mmol)(富士フイルム和光純薬社製,以下、「DMAP」という。)、p-トルエンスルホニルクロリド(東京化成工業社製)7.9g(41.5mmol)を加え、0℃にて溶解させた。
【0103】
3時間反応し、2N塩酸100mLを加えて反応を停止した。
【0104】
反応液を分液漏斗に移し、クロロホルムで3回抽出し、有機層を蒸留水で1回洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層をエバポレーターで濃縮し、真空ポンプを用いて室温で真空乾燥し、4-トシルオキシブチルアクリレート10.7gを得た。(H-NMR(400MHz,CDCl):δ7.80-7.78(m,2H)、7.36-7.34(m,2H)、6.40-6.35(m,1H)、6.12-6.05(m,1H)、5.84-5.81(m,1H)、4.13-4.05(m,4H)、2.45(s,3H)、1.75-1.70(m,4H))
【0105】
【化31】
【0106】
実施例3
300mLの三口フラスコに2-(2-ベンゾトリアゾリル)-p-クレゾール7.55g(33.5mmol)、炭酸カリウム9.26g(67.0mmol)、合成例2で得られたアクリレート15.0g(50.3mmol)、脱水DMF100mL加え、50℃にて溶解させた。5時間撹拌後、室温まで冷却し、イオン交換50mL加え反応を停止した。
【0107】
反応物をクロロホルムで抽出し、有機層をイオン交換水で3回、ブラインで3回洗浄して、硫酸ナトリウムで乾燥した。
【0108】
有機層をエバポレーターで濃縮し、中圧カラムクロマトグラフィー(クロロホルム/ヘキサン=80Vol%/20Vol%)(シリカゲル)で精製して、2-(2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾル-2-イル)-4-メチルフェノール10.7g(以下、「アクリレートE」という。)(2-2-8)を得た。(H-NMR(400MHz,CDCl):δ7.96-7.94(m,2H)、7.49-7.49(m,1H)、7.43-7.41(m,2H)、7.28-7.25(m,1H)、7.03-7.01(m,1H)、6.32(d,J=18.8Hz,1H)、6.07-6.00(m,1H)、5.77(d,J=11.2Hz,1H)、4.09-4.03(m,4H)、2.37(s、3H)、1.77-1.67(m,4H))
【0109】
【化32】
【0110】
実施例4
容量75mLのガラスアンプルにフマル酸ジイソプロピル9.36g(46.7mmol)、実施例1で得られたアクリレートA0.66g(2.2mmol)、パーブチルPV(日本油脂社製)0.11g(0.43mmol)を入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを50℃の恒温槽に入れ、24時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、アンプルから重合物を取り出し、テトラヒドロラン90gで溶解させた。この樹脂溶液を0.5Lのメタノール中に滴下して析出させたのち、80℃で10時間真空乾燥することにより樹脂(以下「樹脂1」という。)を得た(3-4-11)。得られた樹脂1の重量平均分子量は158,000であった。また、H-NMR測定により、樹脂1の組成はフマル酸ジイソプロピル残基単位/アクリレートA残基単位=94/6(mol%)であることを確認した。
【0111】
【化33】
【0112】
実施例5
容量75mLのガラスアンプルにフマル酸ジイソプロピル2.14g(10.7mmol)、実施例2で得られたアクリレートC0.27g(0.6mmol)、パーブチルPV0.02g(0.09mmol)を入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを50℃の恒温槽に入れ、24時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、アンプルから重合物を取り出し、テトラヒドロフラン20gで溶解させた。この樹脂溶液を0.3Lのメタノール中に滴下して析出させたのち、80℃で10時間真空乾燥することにより樹脂(以下「樹脂2」という)を得た(3-6-4)。得られた樹脂2の重量平均分子量は219,000であった。また、H-NMR測定により、樹脂2の組成はフマル酸ジイソプロピル残基単位/アクリレートC残基単位=97/3(mol%)であることを確認した。
【0113】
【化34】
【0114】
実施例6
容量75mLのガラスアンプルにフマル酸ジイソプロピル1.11g(5.5mmol)、実施例2で得られたアクリレートC0.22g(0.5mmol)、パーブチルPV0.02g(0.07mmol)を入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを50℃の恒温槽に入れ、24時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、アンプルから重合物を取り出し、テトラヒドロフラン10gで溶解させた。この樹脂溶液を0.3Lのメタノール中に滴下して析出させたのち、80℃で10時間真空乾燥することにより樹脂(以下「樹脂3」という)を得た(3-6-4)。得られた樹脂3の重量平均分子量は170,000であった。また、H-NMR測定により、樹脂3の組成はフマル酸ジイソプロピル残基単位/アクリレートC残基単位=93/7(mol%)であることを確認した。
【0115】
【化35】
【0116】
実施例7
容量75mLのガラスアンプルにフマル酸ジイソプロピル6.87g(34.3mmol)、実施例3で得られたアクリレートE0.37g(1.1mmol)、パーブチルPV0.07g(0.27mmol)を入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを50℃の恒温槽に入れ、24時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、アンプルから重合物を取り出し、テトラヒドロフラン90gで溶解させた。この樹脂溶液を0.5Lのメタノール中に滴下して析出させたのち、80℃で10時間真空乾燥することにより樹脂(以下「樹脂4」という)を得た(3-3-3)。得られた樹脂4の重量平均分子量は396,000であった。また、H-NMR測定により、樹脂4の組成はフマル酸ジイソプロピル残基単位/アクリレートE残基単位=97/3(mol%)であることを確認した。
【0117】
【化36】
【0118】
実施例8
実施例4で得られた樹脂1 4.0gをテトラヒドロフラン16.0gに溶解させて20重量%の樹脂溶液を得た。その樹脂溶液をコーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度50℃、4分の後130℃、4分にて2段乾燥し、フィルムを得た。得られたフィルムに対し動的粘弾性を測定した。結果を表1に示す。貯蔵弾性率(E‘)=1.0×10Paの温度は148℃と高い温度を有していた。
【0119】
得られたフィルムを50mm角に切り出し、148℃で1.2倍に一軸延伸した。得られたフィルムは膜厚=21.3μm、位相差Re=57.2nm、Rth=-57.2nmを有していた。
【0120】
【表1】
【0121】
実施例9
実施例5で得られた樹脂2 4.0gをテトラヒドロフラン16.0gに溶解させて20重量%の樹脂溶液を得た。その樹脂溶液をコーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度50℃、4分の後130℃、4分にて2段乾燥し、フィルムを得た。得られたフィルムに対し動的粘弾性を測定した。結果を表1に示す。貯蔵弾性率(E‘)=1.0×10Paの温度は147℃と高い温度を有していた。
【0122】
得られたフィルムを50mm角に切り出し、147℃で1.2倍に一軸延伸した。得られたフィルムは膜厚=20.8μm、位相差Re=79.1nm、Rth=-79.3nmを有していた。
【0123】
実施例10
実施例6で得られた樹脂3 4.0gをテトラヒドロフラン16.0gに溶解させて20重量%の樹脂溶液を得た。その樹脂溶液をコーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度50℃、4分の後130℃、4分にて2段乾燥し、フィルムを得た。得られたフィルムに対し動的粘弾性を測定した。結果を表1に示す。貯蔵弾性率(E‘)=1.0×10Paの温度は132℃と高い温度を有していた。
【0124】
得られたフィルムを50mm角に切り出し、132℃で1.2倍に一軸延伸した。得られたフィルムは膜厚=21.9μm位相差Re=58.7nm、Rth=-63.2nmを有していた。
【0125】
実施例11
実施例7で得られた樹脂4 4.0gをテトラヒドロフラン16.0gに溶解させて20重量%の樹脂溶液を得た。その樹脂溶液をコーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度50℃、4分の後130℃、4分にて2段乾燥し、フィルムを得た。得られたフィルムに対し動的粘弾性を測定した。結果を表1に示す。貯蔵弾性率(E‘)=1.0×10Paの温度は144℃と高い温度を有していた。
【0126】
得られたフィルムを50mm角に切り出し、144℃で1.2倍に一軸延伸した。得られたフィルムは膜厚=23.3μm、位相差Re=72.7nm、Rth=-86.2nmを有していた。
【0127】
比較例1
容量75mLのガラスアンプルにフマル酸ジイソプロピル39.04g(195mmol)、n-オクチルアクリレート3.89g(21.1mmol)、パーブチルPV(日本油脂社製)0.43g(1.74mmol)を入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを50℃の恒温槽に入れ、24時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、アンプルから重合物を取り出し、テトラヒドロフラン400gで溶解させた。この樹脂溶液を3Lのメタノール中に滴下して析出させたのち、80℃で10時間真空乾燥することにより共重合体Bを得た。得られた共重合体の重量平均分子量は371,000であった。また、H-NMR測定により、共重合体組成はフマル酸ジイソプロピル残基単位/n-オクチルアクリレート残基単位=91/9(mol%)であることを確認した。
【0128】
【化37】
【0129】
得られた樹脂4.0gをテトラヒドロフラン16.0gに溶解させて20重量%の樹脂溶液を得た。その樹脂溶液をコーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度50℃、4分の後130℃、4分にて2段乾燥し、フィルムを得た。得られたフィルムに対し動的粘弾性を測定した。結果を表1に示す。
【0130】
比較例2
容量75mLのガラスアンプルにフマル酸ジイソプロピル40.00g(199.8mmol)、2-エチルヘキシルアクリレート(東京化成工業社製)4.10g(22.2mmol)、パーブチルPV(日本油脂社製)0.44g(1.78mmol)を入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを50℃の恒温槽に入れ、24時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、アンプルから重合物を取り出し、テトラヒドロフラン400gで溶解させた。この樹脂溶液を3Lのメタノール中に滴下して析出させたのち、80℃で10時間真空乾燥することにより共重合体Bを得た。得られた共重合体の重量平均分子量は377,000であった。また、H-NMR測定により、共重合体組成はフマル酸ジイソプロピル残基単位/2-エチルヘキシルアクリレート残基単位=92/8(mol%)であることを確認した。
【0131】
【化38】
【0132】
得られた樹脂4.0gをテトラヒドロフラン16.0gに溶解させて20重量%の樹脂溶液を得た。その樹脂溶液をコーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度50℃、4分の後130℃、4分にて2段乾燥し、フィルムを得た。得られたフィルムに対し動的粘弾性を測定した。結果を表1に示す。