(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053649
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】オレフィンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 6/04 20060101AFI20240409BHJP
C07C 11/04 20060101ALI20240409BHJP
C07C 11/06 20060101ALI20240409BHJP
C07C 7/04 20060101ALI20240409BHJP
B01J 23/36 20060101ALI20240409BHJP
B01J 29/16 20060101ALI20240409BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240409BHJP
【FI】
C07C6/04
C07C11/04
C07C11/06
C07C7/04
B01J23/36 Z
B01J29/16 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159983
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柴田 祐
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01B
4G169BA07B
4G169BC59A
4G169BC60A
4G169BC60B
4G169BC64A
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4G169BC70A
4G169CB44
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169EB18Y
4G169EE09
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4G169FB14
4G169FB30
4G169FB64
4G169ZA04B
4G169ZD06
4G169ZF05B
4G169ZF09B
4H006AA02
4H006AC29
4H006AD11
4H006BA14
4H006BA16
4H006BA55
4H006BC10
4H006BD81
4H006BD82
4H006DA15
4H039CA99
4H039CL60
(57)【要約】
【課題】 オレフィンメタセシス反応蒸留装置によりエチレン及び/又はプロピレンを製造する際に、高効率かつ長期安定的な運転を可能とするエチレン及び/又はプロピレンの製造方法を提供する。
【解決手段】 少なくとも2種類のオレフィンメタセシス触媒をそれぞれ独立して少なくとも2相に分離充填した蒸留装置を有する反応蒸留装置に、炭素数3以上のオレフィンを含む原材料を供給し、蒸留装置底部と蒸留装置頂部の温度差100℃以上の反応条件でオレフィンメタセシス反応を行い、エチレン及び/又はプロピレンの製造を行うことを特徴とするオレフィンの製造方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類のオレフィンメタセシス触媒をそれぞれ独立して少なくとも2相に分離充填した蒸留装置を有する反応蒸留装置に、炭素数3以上のオレフィンを含む原材料を供給し、蒸留装置底部と蒸留装置頂部の温度差100℃以上の反応条件でオレフィンメタセシス反応を行い、エチレン及び/又はプロピレンの製造を行うことを特徴とするオレフィンの製造方法。
【請求項2】
オレフィンメタセシス触媒が、レニウム、モリブデン、タングステン、ルテニウムからなる群より選択される少なくとも1種類の金属を含むオレフィンメタセシス触媒であることを特徴とする請求項1に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項3】
炭素数3以上のオレフィンが、炭素数3以上6以下のオレフィンであることを特徴とする請求項1に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項4】
蒸留装置底部の温度を150℃以上とする反応条件でオレフィンメタセシス反応を行うことを特徴とする請求項1に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項5】
蒸留装置が、下記(1)に示す第1相としてレニウムを含有したオレフィンメタセシス触媒にて充填した相と、下記(2)に示す第2相としてタングステンを含有したオレフィンメタセシス触媒にて充填した相とを有する蒸留装置であることを特徴とする請求項1に記載のオレフィンの製造方法。
(1)第1相とは、蒸留装置の高さに対して蒸留装置頂部から0%~30%以上70%未満の範囲を占める蒸留装置の頂部に位置する相である。
(2)第2相とは、蒸留装置の高さに対して蒸留装置頂部から30%を越えて70%~100%の範囲を占める蒸留装置の底部に位置する相である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭素数3以上のオレフィンを含むものを原材料とする、蒸留装置中でのオレフィンメタセシス反応によるオレフィンの製造方法に関するものであり、さらに詳細には、蒸留装置底部と蒸留装置頂部の運転温度の差が100℃以上となる運転条件に付し、かつ、蒸留装置中の触媒として少なくとも2種類のオレフィンメタセシス触媒を少なくとも2相に分離して充填することにより、高効率かつ安定的にエチレン及び/又はプロピレンを製造することを可能とするものである。
【背景技術】
【0002】
オレフィンメタセシス反応は、二分子のオレフィンの二重結合の組み換え反応である。その触媒は一般に均一又は不均一の遷移金属化合物、特に、5~8族の遷移金属の化合物である。不均一触媒の代表的な例として、シリカ上の酸化タングステン、アルミナ上の酸化モリブデン、アルミナ上の酸化レニウムが挙げられる。また、シリカ上の酸化タングステンは300℃以上の高温でのみ動作するが、ゼオライト上の酸化タングステンが100℃程度の中温領域でも動作することが示されている(例えば非特許文献1参照。)。
【0003】
本反応は工業的には、エチレン及び2-ブテンを原料とするプロピレンの製造に用いられている。エチレンを原料として用いずに、ブテン類のみからプロピレンを製造する方法も提案されている(例えば特許文献1,2参照。)。この際のオレフィンメタセシス反応はプロピレンのみでなく、エチレン及び炭素数が5以上のオレフィンも併産する。所望の生成物がプロピレンである場合には、エチレンはリサイクルに付される。このように、エチレン及び/又はプロピレンの製造方法として、3以上の炭素数をもつオレフィンを原料とするオレフィンメタセシス反応は工業上有用である。
【0004】
しかしながら、オレフィンメタセシス反応は平衡反応であるため、炭素数が3以上のオレフィンを原料としたときのエチレン及び/又はプロピレンの収率は低いものに留まり、未反応の原料オレフィンをリサイクルするため、運転コストは増加する。とくに、オレフィンメタセシス反応の原理上、原料オレフィンの炭素数が大きいほど、この傾向は顕著となる。
【0005】
これに対し、反応蒸留装置を用いて生成したエチレン及び/又はプロピレンを系外へと排出することで、平衡を生成系に移動させ、効率よくエチレン及び/又はプロピレンを製造する技術として、例えば、レニウム触媒を充填した蒸留塔中にブテン類を導入することで、高収率でのエチレン及び/又はプロピレンを製造する方法が提案され(例えば特許文献3参照。)、コンデンサー温度に代表される運転条件を簡単に調整するだけで、生成するオレフィン流のエチレン/プロピレン比を変更することが可能であることも示されている。
【0006】
また、蒸留塔頂部区間中にオレフィンメタセシス触媒を、蒸留塔底部区間中にメタセシス触媒及びオレフィン二重結合異性化触媒を導入することによるエチレン及びプロピレンの製造方法、また、併せて失活した触媒の再生方法が提案されている(例えば特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-72612号公報
【特許文献2】特表2015-528500号公報
【特許文献3】米国特許第4709115号
【特許文献4】特表平08-502955号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Journal of the American Chemical Society 第140巻、6661頁(2018年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、高いエチレン及び/又はプロピレン収率を達成することは、カラム底部流のオレフィン成分の平均炭素数と原料オレフィン成分の平均炭素数の差を大きくすることと理論上同義である。そのためにはカラム底部の運転温度を高温にする必要がある。したがって、それに伴う触媒の劣化により、長時間にわたっての連続運転が困難であるという課題を有しており、特許文献1~4においても、反応蒸留装置の安定的な連続運転に関する技術については何ら提案されていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、蒸留装置底部と蒸留装置頂部の運転温度の差が100℃以上となる運転条件かつ、蒸留装置中に少なくとも2種類の触媒を運転温度域に応じて充填することで、高収率かつ長期安定的にエチレン及び/又はプロピレンを製造することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、少なくとも2種類のオレフィンメタセシス触媒をそれぞれ独立して少なくとも2相に分離充填した蒸留装置を有する反応蒸留装置に、炭素数3以上のオレフィンを含む原材料を供給し、蒸留装置底部と蒸留装置頂部の温度差100℃以上の反応条件でオレフィンメタセシス反応を行い、エチレン及び/又はプロピレンの製造を行うことを特徴とするオレフィンの製造方法に関するものである。
【0012】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明のオレフィンの製造方法は、炭素数3以上のオレフィンを含む原材料のオレフィンメタセシス反応により、エチレン及び/又はプロピレンを製造するものであり、その際に少なくとも2種類のオレフィンメタセシス触媒を少なくとも2相に分離充填した蒸留装置を有する反応蒸留装置を用い、蒸留装置底部と蒸留装置頂部の温度差を100℃以上の反応条件で製造を行うものである。
【0014】
本発明の製造方法における原材料は、炭素数3以上のオレフィンを含むものであり、炭素数3以上のオレフィンとしては、例えばプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、ノネン、更にはこれらの異性体を挙げることができ、特にエチレン及び/又はプロピレンの製造効率に優れることから、炭素数3以上6以下のオレフィンを含むものであることが好ましい。なお、炭素数3以上のオレフィンを含むものとは、これ以外のものは含まないことを意味するものではなく、本発明の効果に影響のない範囲においてこれ以外の成分を含むものであってもよい。その際にエチレンは0.1重量%以下であることが好ましく、オレフィンメタセシス触媒の触媒毒として作用する場合のあるブタジエン等のジエン類は0.1重量%以下であることが好ましい。
【0015】
本発明の製造方法において、原材料を導入する際の導入位置として、反応蒸留装置の蒸留装置頂部から蒸留装置底部の任意の箇所に導入することができる。中でも、製造したエチレン及び/又はプロピレンが副反応により消費される可能性が低く、効率に優れるものとなることから蒸留装置中部~底部の間への導入することが好ましい。
【0016】
本発明の製造方法においては、原材料のオレフィンメタセシス反応によりエチレン及び/又はプロピレンを製造するものであり、その際に用いるオレフィンメタセシス触媒は、オレフィンメタセシス触媒の範疇に属するものであれば制限はなく、中でも高い活性を有する第5~8族金属を含有する不均一系触媒であることが好ましく、特に金属としてモリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含有するオレフィンメタセシス触媒であることが好ましい。そして、金属を含有する担体について、特に制限はなく、例えばアルミナ、シリカアルミナ、ゼオライト、ジルコニア等の金属酸化物を挙げることができる。また、オレフィンメタセシス触媒の形状について、制限はなく、成形体であってもよく、規則性構造体であってもよい。
【0017】
該オレフィンメタセシス触媒を調製する際に、金属の含有方法に制限はなく、例えば含浸担持法、イオン交換法、物理混合法、骨格置換法、固相法、蒸着法等のいずれの方法でも調製することが可能である。
【0018】
また、エチレン及び/又はプロピレンの生産効率を更に向上することが可能となることから、蒸留装置中でのオレフィン二重結合異性化反応を促進する触媒を混合していてもよく、該触媒としては、例えば酸化マグネシウム等の金属酸化物が挙げられる。なお、オレフィン二重結合異性化反応とは、1-ブテンと2-ブテン間の相互変換、1-ヘキセン/2-ヘキセン/3-ヘキセン間の相互変換等を指す。
【0019】
そして、該オレフィンメタセシス触媒は、少なくとも2種類を用いるものであり、蒸留装置中に、少なくとも2種類のオレフィンメタセシス触媒を少なくとも2相に分離充填するものである。その際の組み合わせは、所望の運転条件と各オレフィンメタセシス触媒の劣化挙動に基づき、任意に選択することができる。なお、ここでいう種類とは、金属が異なるオレフィンメタセシス触媒のみならず、同一の金属であっても担体の異なるオレフィンメタセシス触媒も含む概念である。ここで、オレフィンメタセシス触媒を単一とした場合、エチレン及び/またはプロピレンの製造効率もしくは安定的な運転のいずれかもしくはその両方に劣るものとなる。
【0020】
本発明の製造方法は、製造装置として反応蒸留装置を用いるものであり、該反応蒸留装置としては、反応蒸留装置に属するものであればよく、例えば少なくとも加熱装置、冷却装置、蒸留装置を有する反応装置を挙げることができ、加熱装置とは例えばリボイラー容器、加熱容器、加熱槽、加熱釜、ヒーター等を挙げることができ、冷却装置とは例えばコンデンサー、凝縮器、冷却塔等を挙げることができ、蒸留装置とは、例えば蒸留器、蒸留カラム、蒸留カラム塔、蒸留塔等を挙げることができ、これらはその製造スケールにおいて適宜選択可能である。そして、該蒸留装置は、少なくとも2種類のオレフィンメタセシス触媒を少なくとも2相に分離充填した蒸留装置である。その際の蒸留装置の形状についてとくに制限はなく、トレーで分割されているもの、単にオレフィンメタセシス触媒を充填したもの、規則性構造体で充填されたもののいずれも適用可能であり、十分にオレフィンメタセシス触媒を充填できる空間を有すれば、装置(カラム)径および高さに制限はない。
【0021】
そして、該蒸留装置としては、特にエチレン及び/又はプロピレンの製造効率に優れるものとなることから、蒸留装置の高さに対して蒸留装置頂部から0%~30%以上70%未満の範囲を占める蒸留装置の頂部に位置する第1相と、蒸留装置の高さに対して蒸留装置頂部から30%を越えて70%~100%の範囲を占める蒸留装置の底部に位置する第2相のそれぞれをオレフィンメタセシス触媒で充填、つまり満たすことが好ましい。この際の第1相としては少なくとも0%~30%の範囲内を、また、第2相としては少なくとも70%~100%の範囲内を満たしていればよく、30%を越えて70%未満の範囲に第1相と第2相との臨界面又は未充填部を有するものであってもよく、更には、異なるオレフィンメタセシス触媒、オレフィン二重結合異性化触媒等による第3相を有するものであってもよい。その際の第1相のオレフィンメタセシス触媒としては、低温でも高活性を示すことから、レニウムを含有するオレフィンメタセシス触媒であることが好ましい。また、第2相のオレフィンメタセシス触媒としては、高温でも高い安定性を有することから、タングステンを含有するオレフィンメタセシス触媒であることが好ましい。
【0022】
本発明の製造方法は、蒸留装置底部と蒸留装置頂部の温度差100℃以上の反応条件にて製造を行うものである。ここで、温度差が100℃未満である場合、蒸留装置底部から留出するオレフィンの平均炭素数が小さくなり、その物質収支に合わせてエチレン及び/又はプロピレンの収率が低下するため、エチレン及び/又はプロピレンの製造効率に劣るものとなる。なお、温度差の上限については効率的な製造が可能であればよく、安全・安定性の観点から上限としては温度差が350℃以下であることが好ましく、特に250℃以下であることが好ましい。その他、反応条件、反応蒸留装置の運転条件等については、原材料であるオレフィン、所望の生成物比率に応じて、適宜選択可能であり、製造効率、副反応の影響が小さいことから、反応圧力としては、0.2MPa~5.0MPaであることが好ましい。
【0023】
また、蒸留装置頂部の温度は、所望のエチレン/プロピレン比及びそれらの所望の純度により運転圧力に応じて任意に設定され、一般的には-50~50℃であることが好ましい。特に蒸留装置底部から留出するオレフィンの平均炭素数が大きくなり、エチレン及び/又はプロピレンの製造効率に優れるものとなることから、蒸留装置底部の温度を150℃以上とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、反応蒸留装置を用いたオレフィンメタセシス反応によるエチレン及び/又はプロピレンの製造方法に関するものであり、少なくとも2種類の触媒をその運転温度域に応じて物理的に分離して充填することにより、安定的にエチレン及び/又はプロピレンを製造することを可能とするものであり、工業的にも非常に有用なものである。
【実施例0025】
以下、本発明の具体的例示を実施例として説明するが、反応器の装置条件および運転条件等は、本実施例記載の条件に限定されるものではなく、適宜選択可能である。
【0026】
調製例1
市販のγ-アルミナ(Strem製、Cat No. 13-2525)50gを、過レニウム酸アンモニウム6.8g、イオン交換水500mlからなる水溶液に30分間浸漬させた。その後、減圧下(20mmHg)、80℃で乾燥させた後、空気流通下550℃で5時間焼成を行い、粒径1~3mmに圧縮成形し、オレフィンメタセシス触媒Aを調製した。
【0027】
調製例2
市販のY型ゼオライト(東ソー製、商品名HSZ-330HUA)50gを、メタタングステン酸アンモニウム7.8g、イオン交換水500mlからなる水溶液に30分間浸漬させた。その後、減圧下(20mmHg)、80℃で乾燥させた後、空気流通下550℃で5時間焼成を行い、粒径1~3mmに圧縮成形し、オレフィンメタセシス触媒Bを調製した。
【0028】
実施例1
ステンレス製反応管(内径6.2mm、長さ300mm)の上部にオレフィンメタセシス触媒Aを3.0g(頂部より0%~50%の範囲を占める第1相)、下部にオレフィンメタセシス触媒Bを3.0g(頂部より50%~100%の範囲を占める第2相)充填した蒸留装置の上部に冷却器を、下部にリボイラー容器を装着し反応蒸留装置とした。
【0029】
そして、乾燥空気流通下での加熱前処理を行ったのち、原材料として2-ペンテンを0.15g/minで送液した。その際に、蒸留装置頂部の圧力を0.65MPaに設定し、冷却器には-10℃の冷媒を流通し蒸留装置頂部温度を-10℃とした。また、リボイラー容器を160℃に設定した電気炉を用いて加熱し、蒸留装置底部の温度を160℃とし、オレフィンメタセシス反応を行った。
【0030】
運転開始1時間後の頂部流の分析を行った結果、エチレンの収率は15.4%、プロピレンの収率は23.8%であった。また、リボイラー容器から抜き出したオレフィンの平均炭素数は6.7であった。
【0031】
さらに、運転開始24時間後の頂部流の分析を行った結果、エチレンの収率は12.1%、プロピレンの収率は23.9%であった。また、リボイラー容器から抜き出したオレフィンの平均炭素数は6.6であった。
【0032】
最終的に反応時間24時間のエチレンの平均収率は13.8%、プロピレンの平均収率は23.9%であり、オレフィンメタセシス反応の低下は見られず、長期にわたって安定かつ高い収率でエチレン及びプロピレンの製造が可能であった。
【0033】
比較例1
ステンレス製反応管にオレフィンメタセシス触媒Aを6.0g(頂部より0%~100%の範囲を占める充填相)充填し、蒸留装置とした以外は、実施例1と同様の反応蒸留装置とし、実施例1と同様にオレフィンメタセシス反応を行った。
【0034】
運転開始1時間後の頂部流の分析を行った結果、エチレンの収率は19.4%、プロピレンの収率は22.3%であった。また、リボイラー容器から抜き出したオレフィンの平均炭素数は6.9であった。
【0035】
さらに、運転開始24時間後の頂部流の分析を行った結果、エチレンの収率は2.8%、プロピレンの収率は16.9%であった。また、リボイラー容器から抜き出したオレフィンの平均炭素数は5.8であった。
【0036】
最終的に反応時間24時間のエチレンの平均収率は11.1%、プロピレンの平均収率は19.2%であり、オレフィンメタセシス反応の低下が見られ、安定の面で劣るエチレン及びプロピレンの製造方法であった。
【0037】
比較例2
ステンレス製反応管にオレフィンメタセシス触媒Bを6.0g(頂部より0%~100%の範囲を占める充填相)充填し蒸留装置とした以外は、実施例1と同様の反応蒸留装置とし、実施例1と同様にオレフィンメタセシス反応を行った。
【0038】
運転開始1時間後の頂部流の分析の結果、エチレンの収率は0.2%、プロピレンの収率は27.7%であった。また、リボイラー容器から抜き出したオレフィンの平均炭素数は5.9であった。
【0039】
エチレンの収率が低いために製造を1時間で停止した。
【0040】
比較例3
リボイラー容器を80℃に設定した電気炉を用いて加熱した以外は、実施例1と同様にオレフィンメタセシス反応を行った。その際の頂部温度は-10℃のままであった。
【0041】
運転開始1時間後の頂部流の分析の結果、エチレンの収率は1.4%、プロピレンの収率は2.1%であった。また、リボイラー容器から抜き出したオレフィンの平均炭素数は5.1であった。
【0042】
エチレン及びプロピレンの収率が共に低いことから製造を1時間で停止した。
【0043】
【0044】
実施例2
ステンレス製反応管の上部にオレフィンメタセシス触媒Aを2.4g(頂部より0%~40%の範囲を占める第1相)、下部にオレフィンメタセシス触媒Bを3.6g(頂部より40~100%の範囲を占める第2相)充填した蒸留装置を用い、蒸留装置頂部の圧力を1.2MPaに設定し、冷却器には-20℃の冷媒を流通し頂部温度を-20℃とし、リボイラー容器を180℃に設定した電気炉を用いて加熱し、底部の温度を180℃とした以外は、実施例1と同様にオレフィンメタセシス反応を行った。
【0045】
運転開始1時間後の頂部流の分析を行った結果、エチレンの収率は25.4%、プロピレンの収率は9.7%であった。また、リボイラー容器から抜き出したオレフィンの平均炭素数は6.5であった
さらに、運転開始24時間後の頂部流の分析を行った結果、エチレンの収率は25.4%、プロピレンの収率は9.5%であった。また、リボイラー容器から抜き出したオレフィンの平均炭素数は6.5であった。
【0046】
最終的に反応時間24時間のエチレンの平均収率は25.4%、プロピレンの平均収率は9.6%であり、オレフィンメタセシス反応の低下は見られず、長期にわたって安定かつ高い収率でエチレンを主成分とするエチレン及びプロピレンの製造が可能であった。
【0047】
実施例3
冷却器に10℃の冷媒を流通し頂部温度を10℃としとした以外は、実施例1と同様の反応蒸留装置とし、実施例1と同様にオレフィンメタセシス反応を行った。その際の底部温度は160℃のままであった。
【0048】
運転開始1時間後の頂部流の分析を行った結果、エチレンの収率は9.8%、プロピレンの収率は28.2%であった。また、リボイラー容器から抜き出したオレフィンの平均炭素数は6.9であった。
【0049】
さらに、運転開始24時間後の頂部流の分析を行った結果、エチレンの収率は8.8%、プロピレンの収率は28.0%であった。また、リボイラー容器から抜き出したオレフィンの平均炭素数は6.8であった。
【0050】
最終的に反応時間24時間のエチレンの平均収率は9.3%、プロピレンの平均収率は28.1%であり、オレフィンメタセシス反応の低下は見られず、長期にわたって安定かつ高い収率でプロピレンを主成分とするエチレン及びプロピレンの製造が可能であった。
【0051】
実施例4
原材料としてモル比で0.25:0.25:0.5の1-ブテン、2-ブテン、2-ペンテンからなる混合物を合計0.15g/minで送液した以外は、実施例1と同様の反応蒸留装置とし、実施例1と同様にオレフィンメタセシス反応を行った。
【0052】
運転開始1時間後の頂部流の分析を行った結果、エチレンの収率は24.5%、プロピレンの収率は43.2%であった。また、リボイラー容器から抜き出したオレフィンの平均炭素数は6.8であった。
【0053】
さらに、運転開始24時間後の頂部流の分析を行った結果、エチレンの収率は20.6%、プロピレンの収率は28.0%であった。また、リボイラー容器から抜き出したオレフィンの平均炭素数は6.6であった。
【0054】
最終的に反応時間24時間のエチレンの平均収率は22.6%、プロピレンの平均収率は43.7%であり、オレフィンメタセシス反応の低下は見られず、長期にわたって安定かつ高い収率でエチレン及びプロピレンの製造が可能であった。
【0055】
本発明のオレフィンの製造方法は、エチレン及び/又はプロピレンのそれぞれの生産性に優れると共に安定した製造方法とすることが可能となり、その産業的価値は極めて高いものである。