(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053741
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ウレタン樹脂組成物、及び、硬化物
(51)【国際特許分類】
C08L 75/04 20060101AFI20240409BHJP
C08K 7/16 20060101ALI20240409BHJP
C08L 33/06 20060101ALI20240409BHJP
C08L 27/08 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C08L75/04
C08K7/16
C08L33/06
C08L27/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160128
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】竹中 雅美
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BD10Y
4J002BG04Y
4J002BG05Y
4J002CK02W
4J002CK02Y
4J002CK03W
4J002CK04W
4J002FA08Y
4J002GL00
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、動倍率が低く、かつ、損失係数が高く、優れた減衰性を有するウレタン樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】本発明は、ウレタンプレポリマー(A)を含む主剤(i)、硬化剤(ii)、及び、平均粒子径が5~100μmであるマイクロカプセル又はマイクロビーズ(iii)を含有するウレタン樹脂組成物であり、前記(iii)成分として、前記マイクロカプセルを用いた場合における使用量が、前記主剤(i)及び硬化剤(ii)の合計100質量部に対して、0.3~3質量部であり、前記(iii)成分として、前記マイクロビーズを用いた場合における使用量が、前記主剤(i)及び硬化剤(ii)の合計100質量部に対して、0.3~10質量部であることを特徴とするウレタン樹脂組成物を提供するものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンプレポリマー(A)を含む主剤(i)、硬化剤(ii)、及び、平均粒子径が5~100μmであるマイクロカプセル又はマイクロビーズ(iii)を含有するウレタン樹脂組成物であり、前記(iii)成分として、前記マイクロカプセルを用いた場合における使用量が、前記主剤(i)及び硬化剤(ii)の合計100質量部に対して、0.3~3質量部であり、前記(iii)成分として、前記マイクロビーズを用いた場合における使用量が、前記主剤(i)及び硬化剤(ii)の合計100質量部に対して、0.3~10質量部であることを特徴とするウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記マイクロカプセル又はマイクロビーズ(iii)を構成する樹脂が、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、及び、ポリ塩化ビニリデン樹脂からなる群より選ばれる1種以上である請求項1記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
ウレタンプレポリマー(A)が、ポリエステルポリオール、及び/又は、ポリエーテルポリエステルポリオールを原料とするものである請求項1記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記硬化剤(ii)が、水酸基を3つ有する化合物を含むものである請求項1記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載のウレタン樹脂組成物により形成されたことを特徴とする硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン樹脂組成物、及び、硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
高い減衰性(揺れや振動に対し、振幅を減少・制御する性能)を求められる、例えば、住空間の防音壁や防音材などの構造材には、これまで発泡ウレタンエラストマーやゲル状ウレタンエラストマーが広く利用されている(例えば、特許文献1を参照。)。しかしながら、前記ゲル状ウレタンエラストマーでは、衝撃吸収には効果があるものの静的バネ定数が低すぎて硬さがなく、重量物を支えることができなかったり、耐久性に劣るとの指摘があったり、前記発泡ウレタンエラストマーとしては、主流の水発泡システムを使用すると、動倍率が高く、かつ損失係数が低くなり、減衰性が低いとの指摘があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、動倍率が低く、かつ、損失係数が高く、優れた減衰性を有するウレタン樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ウレタンプレポリマー(A)を含む主剤(i)、硬化剤(ii)、及び、平均粒子径が5~100μmであるマイクロカプセル又はマイクロビーズ(iii)を含有するウレタン樹脂組成物であり、前記(iii)成分として、前記マイクロカプセルを用いた場合における使用量が、前記主剤(i)及び硬化剤(ii)の合計100質量部に対して、0.3~3質量部であり、前記(iii)成分として、前記マイクロビーズを用いた場合における使用量が、前記主剤(i)及び硬化剤(ii)の合計100質量部に対して、0.3~10質量部であることを特徴とするウレタン樹脂組成物を提供するものである。
【0006】
また、本発明は、前記ウレタン樹脂組成物により形成されたことを特徴とする硬化物を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のウレタン樹脂組成物は、動倍率が低く、かつ、損失係数が高く、優れた減衰性を有するものである。また、本発明のウレタン樹脂組成物は硬度にも優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のウレタン樹脂組成物は、主剤(i)、硬化剤(ii)、及び、特定のマイクロカプセル又はマイクロビーズ(iii)を含有するものである。
【0009】
前記主剤(i)は、ウレタンプレポリマー(A)を含むものである。前記ウレタンプレポリマー(A)は、例えば、ポリオール(a)とポリイソシアネート(b)との反応物であり、イソシアネート基を有するものである。
【0010】
前記ポリオール(a)としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。前記ポリオール(a)としては、前記した中でも、より一層優れた減衰性、及び、硬度が得られる点から、ポリエステルポリオール、及び/又は、ポリエーテルポリエステルポリオールが好ましく、ポリエステルポリオールがより好ましい。
【0011】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、水酸基を2つ以上有する化合物と多塩基酸との反応物を用いることができる。
【0012】
前記水酸基を2つ以上有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチルプロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、及びこれらの脂環式ポリオールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイド付加物などを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた減衰性、及び、硬度が得られる点から、エチレングリコール、及び/又は、1,4-ブタンジオールが好ましく、エチレングリコールと1,4-ブタンジオールとの併用がより好ましい。
【0013】
前記多塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、エイコサ二酸、シトラコン酸、イタコン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、水添無水フタル酸等を用いることができる。これらの多塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた減衰性、及び、硬度が得られる点から、アジピン酸がより好ましい。
【0014】
前記ポリエーテルポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオールとラクトン化合物との反応物を用いることができる。
【0015】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレンポリオール等を用いることができる。これらのポリエーテルポリオールは単独で用いて2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた減衰性、及び、硬度が得られる点から、ポリテトラメチレングリコールが好ましい。
【0016】
前記ラクトン化合物としては、例えば、δ-バレロラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、β-メチル-ε-カプロラクトン、γ-メチル-ε-カプロラクトン、β,δ-ジメチル-ε-カプロラクトン、3,3,5-トリメチル-ε-カプロラクトン、エナントラクトン、ドデカノラクトン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた減衰性、及び、硬度が得られる点から、ε-カプロラクトンが好ましい。
【0017】
前記ポリオール(a)の数平均分子量としては、より一層優れた減衰性、機械的強度、耐久性、及び、硬度が得られる点から、650~5,000が好ましく、800~4,000がより好ましく、1,000~3,000が更に好ましい。なお、前記ポリオール(a)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0018】
前記ポリイソシアネート(b)としては、例えば、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式構造を有するポリイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。これらの中でも、より一層優れた減衰性、機械的強度、耐久性、及び、硬度が得られる点から、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、及び、ジフェニルメタンジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のポリイソシアネートが好ましく、ナフタレンジイソシアネート、及び/又は、トリジンジイソシアネートがより好ましく、トリジンジイソシアネートが更に好ましい。
【0019】
前記ポリイソシアネート(b)が有するイソシアネート基と、前記ポリオール(a)が有する水酸基との当量比(イソシアネート基/水酸基)は、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは10.0以下、より好ましくは8.0以下、特に好ましくは5.0以下である。
【0020】
前記ウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基含有率(以下、「NCO%」と略記する。)としては、より一層優れた減衰性、機械的強度、耐久性、及び、硬度が得られる点から、2~10質量%が好ましく、5~8質量%がより好ましい。なお、前記ウレタンプレポリマー(A)のNCO%は、JISK1603-1:2007に準拠し、電位差滴定法により測定した値を示す。
【0021】
前記硬化剤(ii)は、前記ウレタンプレポリマー(A)が有するイソシアネート基と反応する活性水素原子を含有する基([NH]基及び/又は[OH]基)を有する化合物を含有することが好ましい。前記活性水素原子を含有する基を有する化合物としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ヘキサンジアミン、イソホロンジアミン等の脂肪族又は脂環式ジアミン化合物;フェニレンジアミン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ポリアミノクロロフェニルメタン化合物等の芳香族アミン化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の水酸基を2つ以上有する化合物;トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミン等の水酸基を3つ有する化合物;前記ポリオール(a)と同様のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール等のポリオールなどを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、架橋構造が形成でき、より一層優れた減衰性(特に損失係数)、機械的強度、耐久性、及び、硬度が得られる点から、水酸基を3つ有する化合物が好ましく、水酸基を3つ有する化合物と、前記水酸基を2つ有する化合物、及び/又は、前記ポリオールとの併用がより好ましく、水酸基を3つ有する化合物と、前記水酸基を2つ有する化合物と、前記ポリオールとの併用が更に好ましい。また、前記水酸基を3つ有する化合物としては、トリメチロールプロパンが好ましく、前記水酸基を2つ有する化合物としては、1,4-ブタンジオールが好ましく、前記ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、及び/又は、ポリエーテルポリエステルポリオールが好ましい。
【0022】
前記硬化剤(ii)として、水酸基を3つ有する化合物と、前記水酸基を2つ有する化合物と、前記ポリオールとを併用する場合、前記水酸基を3つ有する化合物の使用量としては、前記主剤(i)及び硬化剤(ii)の合計質量中0.5~5質量%が好ましく、前記水酸基を2つ有する化合物の使用量としては、前記主剤(i)及び硬化剤(ii)の合計質量中0.5~5質量%が好ましく、前記ポリオールの使用量としては、前記主剤(i)及び硬化剤(ii)の合計質量中10~80質量%が好ましい。
【0023】
前記硬化剤(ii)に含まれるイソシアネート基と反応しうる基の合計モル数と、前記主剤(i)に含まれるイソシアネート基の合計モル数との比([前記硬化剤(ii)に含まれるイソシアネート基と反応しうる基の合計モル数]/[前記主剤(i)に含まれるイソシアネート基の合計モル数])としては、好ましくは0.7~1.3、より好ましくは0.8~1.2であり、さら好ましくは、0.9~1.1であり、最も好ましくは0.95である。
【0024】
前記平均粒子径が5~100μmであるマイクロカプセル又はマイクロビーズ(iii)は、優れた減衰性を得る上で必須の成分である。水発泡システムの代わりに、成分(iii)を配合することにより、これらが硬化物中に均一に分散し、高い静的バネ定数を保ったまま動的バネ定数を提言することができ、かつ損失係数を高くすることができるため、高減衰性を得ることができる。
【0025】
前記マイクロカプセル又はマイクロビーズ(iii)の平均粒子径は、優れた減衰性をえるうえで、平均粒子径が5~100μmであることが必須である。また、前記平均粒子径としては、より一層優れた減衰性が得られる点から、5~50μmが好ましい。なお、前記マイクロカプセル又はマイクロビーズ(iii)の平均粒子径は、株式会社島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置「SALD-7000」を用いて測定した、D50の値(μm)を示す。
【0026】
また、前記マイクロカプセル又はマイクロビーズ(iii)の使用量としては、前記マイクロカプセルを用いた場合においては、前記主剤(i)及び硬化剤(ii)の合計100質量部に対して、0.3~3質量部であることが必須であり、前記マイクロビーズを用いた場合においては、前記ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して、0.3~10質量部であることを必須である。前記成分(iii)の前記特定の使用量を超えると、動倍率が高くなり、かつ、損失係数が低くなるため、減衰性が劣ることとなる。
【0027】
前記マイクロカプセルの使用量としては、より一層優れた減衰性が得られる点から、前記主剤(i)及び硬化剤(ii)の合計100質量部に対して、0.5~1.5質量部が好ましい。また、前記マイクロビーズの使用量としては、より一層優れた減衰性が得られる点から、前記主剤(i)及び硬化剤(ii)の合計100質量部に対して、1~8質量部が好ましい。
【0028】
前記マイクロカプセルとしては、より一層優れた減衰性が得られる点から、中空のものが好ましく、その外郭を構成する樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、及び、ポリ塩化ビニリデン樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂が好ましく、アクリル樹脂、及び/又は、ポリ塩化ビニリデン樹脂がより好ましい。
【0029】
前記マイクロビーズとしては、同一樹脂からなるマイクロビーズや、コアシェル構造のマイクロビーズなどを用いることができる。前記マイクロビーズを構成する樹脂としては、より一層優れた減衰性が得られる点から、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、及び、ポリ塩化ビニリデン樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂が好ましく、ウレタン樹脂、及び/又は、アクリル樹脂がより好ましい。
【0030】
前記マイクロカプセル及び前記マイクロビーズの真密度としては、20~2000kg/m3が好ましい。なお、前記マイクロカプセル及び前記マイクロビーズの真密度は、株式会社アントンパール・ジャパン 真密度測定装置 Ultrapyc5000により測定した値を示す。
【0031】
本発明のウレタン樹脂組成物は、前記主剤(i)、前記硬化剤(ii)、及び、前記成分(iii)を必須成分として含むものであり、必要に応じて、その他添加剤も含んでもよい。
【0032】
前記その他添加剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、触媒、可塑剤、酸化防止剤、脱泡剤、整泡剤、消泡剤、紫外線吸収剤、反応調節剤、補強剤、充填剤、着色剤(染料または顔料)、離型剤、安定剤、光安定剤、電気絶縁性向上剤、帯電防止剤、防かび剤、有機酸の金属塩、ワックス(アミド系他)、金属酸化物、金属水酸化物等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよく、前記主剤(i)、前記硬化剤(ii)、前記成分(iii)の中に予め添加されていてもよく、これらを混合する際に添加してもよい。
【0033】
本発明のウレタン樹脂組成物を硬化させる方法としては、例えば、前記主剤(i)、前記硬化剤(ii)、及び、前記成分(iii)を混合し、その後、この混合物を金型に注入して、例えば50~110℃で10分~1時間加熱硬化し、その後必要に応じて、例えば60~120℃で8~72時間アフタキュアし、硬化物を得る方法などが挙げられる。
【0034】
以上、本発明のウレタン樹脂組成物は、動倍率が低く、かつ、損失係数が高く、優れた減衰性を有するものである。また、本発明のウレタン樹脂組成物は硬度にも優れるものである。
【実施例0035】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0036】
(調製例1:ウレタンプレポリマー(A-1)の調製)
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1リットル4ツ口丸底フラスコに、ポリエステルポリオール(エチレングリコール、1,4-ブタンジオール及びアジピン酸を反応させて得られた数平均分子量2,000のポリエステルポリオール、以下PEs(1)と略記する。)を100質量部入れ、次いで、1,5-ナフタレンジイソシアネートを34.5質量部入れ混合し、窒素気流下125℃で1時間反応を行い、NCO%;6.95質量%のウレタンプレポリマー(A-1)を得た。
【0037】
(調製例2:ウレタンプレポリマー(A-2)の調製)
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1リットル4ツ口丸底フラスコに、PEs(1)を100質量部入れ、次いで、o-トリジンジソシアネートを46.0質量部入れ混合し、窒素気流下80℃で3時間反応を行い、NCO%;7.03質量%のウレタンプレポリマー(A-2)を得た。
【0038】
(調製例3:ウレタンプレポリマー(A-3)の調製)
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1リットル4ツ口丸底フスコに、ポリエーテルポリエステルポリオール(ポリテトラメチレングリコールにε-カプロラクトンを反応させて得られた数平均分子量2,000のポリエーテルポリエステルポリオール、以下PEtPEs(1)と略記する。)を100質量部入れ、次いで、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネートを43.4質量部入れ混合し、窒素気流下80℃で3時間反応を行い、NCO%;7.05質量%のウレタンプレポリマー(A-3)を得た。
【0039】
(調製例4:硬化剤(i-1)の調製)
PEs(1)100質量部、1,4-ブタンジオールを3質量部、1,1,1-トリメチロールプロパンを3質量部を混合し、硬化剤(ii-1)とした。
【0040】
(調製例5:硬化剤(i-2)の調製)
PEtPEs(1)100質量部、1,4-ブタンジオールを3質量部、1,1,1-トリメチロールプロパンを3質量部を混合し、硬化剤(ii-2)とした。
【0041】
(比較調製例1:硬化剤(iR-1)の調製)
PEs(1)100質量部、1,4-ブタンジオールを15質量部、ラインケミージャパン株式会社製発泡剤(「アドベードSV」;水、スルホン化ひまし油のナトリウム塩、及び、高スルホン化脂肪酸のナトリウム塩の混合物(水の含有率:50質量%))を15質量部を混合し、硬化剤(iR-1)とした。
【0042】
(比較調製例2:硬化剤(iR-2)の調製)
PEs(1)100質量部、1,4-ブタンジオールを15質量部、イオン交換水を
1.5質量部、トリエチレンジアミンを1.5質量部を混合し、硬化剤(iR-2)とした。
【0043】
(比較調製例3:硬化剤(iR-3)の調製)
PEtPEs(1)100質量部、1,4-ブタンジオールを15質量部、イオン交換水を1.5質量部、トリエチレンジアミンを1.5質量部を混合し、硬化剤(iR-3)とした。
【0044】
実施例・比較例にて使用するマイクロカプセル又はマイクロビーズは以下のものである。
・(c-1);外殻成分がアクリル樹脂で形成され、中空である、平均粒子径が35~55μm、真密度が27~33kg/m3であるマイクロカプセル。
・(c-2);外殻成分がポリ塩化ビニリデンとアクリル樹脂で形成され、中空である、平均粒子径が20~40μm、真密度が55~65kg/m3であるマイクロカプセル。
・(c-3);ウレタン樹脂で形成され、平均粒子径が20~30μm、真密度が1,160kg/m3であるマイクロビーズ。
・(c-4);外殻成分がウレタン樹脂、内核成分がアクリル樹脂で形成されたコアシェル構造である、平均粒子径が5~15μm、真密度が1,200kg/m3であるマイクロビーズ。
【0045】
[実施例1]
90℃に加熱したウレタンプレポリマー(A-1)100質量部に対して90℃に加熱した硬化剤(i-1)71.4質量部、(c-1)1.7質量部を添加して、2,000rpmで攪拌し、90℃に加熱した金型に注入した後、90℃の加熱装置で30分熟成させた。その後、金型から硬化物を取り出し、90℃で48時間アフタキュアすることで硬化物を得た。
【0046】
[実施例2~6、比較例1~6]
用いるウレタンプレポリマー(A)、硬化剤(ii)、マイクロカプセル又はマイクロビーズ(iii)を表1~3に示す通り変更した以外は、実施例1と同様にしてウレタン樹脂組成物の硬化物を得た。
【0047】
[数平均分子量の測定方法]
実施例および比較例において用いたポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0048】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0049】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0050】
[機械物性の評価方法]
・試験片形状
・Φ29mm 高さ12.5mmの円柱試験片
・長さ75mm×幅125mm×厚み2mmの板角試験片
・硬化物の密度の測定方法
実施例及び比較例で得られた硬化物の質量(kg)及び体積(m3)を測定し、得られた値から密度を算出した。
・硬化物の硬度の測定方法
実施例及び比較例で得られた硬化物に対して、JIS K6253:2012(硬さ試験)に準拠したデュロメータAタイプで評価した。
【0051】
[減衰性の評価方法]
(1)動倍率の評価方法
・静的バネ定数(Ks)
円柱試験片に初期高さの85%の高さになるよう荷重をかけた状態から、常温にてJISK6385:2012に準拠して、静的特性試験の両方向負荷方式において、高さ±10%、変位速度5mm/minを3回繰り返し、3回目の負荷過程での荷重-たわみの関係から、静的バネ定数(Ks)を算出した。
・動的バネ定数(Kd)
円柱試験片に初期高さの85%の高さになるよう荷重をかけた状態から、常温にてJISK6385:2012に準拠して動的性質測定試験の非共振方法において、周波数100Hz、振幅±0.05mmでたわみを加えて荷重-たわみの関係から、動的バネ定数(Kd)を算出した。
・動倍率の測定方法
前記静的バネ定数(Ks)及び動的バネ定数(Kd)の比[Kd/Ks]を動倍率とした。
【0052】
(2)損失正接の評価方法
板角試片から20mm×10mm×2mm試験片を切り出し、セイコーインスツル株式会社動的粘弾性測定装置「DMS6100」を使用し、実施例及び比較例で得られた硬化物を温度範囲-50~150℃、昇温速度5℃/分、周波数10Hz、引張モードで測定し、20℃での損失正接(tanδ)を求めた。
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
本発明のウレタン樹脂組成物である実施例1~6は、優れた硬度など機械物性にも優れ、動倍率が低く、かつ、損失係数が高く、優れた減衰性を有することが分かった。
【0057】
一方、比較例1は、マイクロカプセルの使用量が本発明で規定する範囲を下回る態様であるが、動倍率が高かった。
【0058】
比較例2は、マイクロカプセルの使用量が本発明で規定する範囲を超える態様であるが、動倍率が高く、損失係数が低く、減衰性が劣ることが分かった。
【0059】
比較例3は、マイクロビーズの使用量が本発明で規定する範囲を超える態様であるが、動倍率が高く、損失係数が低く、減衰性が劣ることが分かった。
【0060】
比較例4~6は、マイクロカプセル、マイクロビーズ(iii)の代わりに、水を含有する硬化剤を使用して水発泡によりウレタン樹脂組成物の硬化物を得た態様であるが、動倍率が高く、損失係数が低く、減衰性が劣ることが分かった。