IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社荏原製作所の特許一覧

<>
  • 特開-排ガス処理装置 図1
  • 特開-排ガス処理装置 図2
  • 特開-排ガス処理装置 図3
  • 特開-排ガス処理装置 図4
  • 特開-排ガス処理装置 図5
  • 特開-排ガス処理装置 図6
  • 特開-排ガス処理装置 図7
  • 特開-排ガス処理装置 図8
  • 特開-排ガス処理装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053878
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】排ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/68 20060101AFI20240409BHJP
   B01D 53/56 20060101ALI20240409BHJP
   B01D 53/46 20060101ALI20240409BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20240409BHJP
   H05H 1/30 20060101ALI20240409BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B01D53/68 200
B01D53/56 400
B01D53/46
B01D53/78
H05H1/30
H05H1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160359
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】社本 光弘
(72)【発明者】
【氏名】京谷 敬史
【テーマコード(参考)】
2G084
4D002
【Fターム(参考)】
2G084AA18
2G084AA19
2G084BB11
2G084BB23
2G084BB35
2G084BB37
2G084CC02
2G084CC03
2G084CC08
2G084CC14
2G084CC21
2G084CC33
2G084CC34
2G084CC35
2G084DD01
2G084DD04
2G084DD12
2G084DD19
2G084DD22
2G084DD25
2G084DD32
2G084DD44
2G084DD51
2G084FF14
2G084FF15
2G084FF39
2G084GG23
4D002AA12
4D002AA13
4D002AA17
4D002AA18
4D002AA22
4D002AA23
4D002AA24
4D002AA26
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA07
4D002CA03
4D002CA13
4D002DA35
4D002DA70
4D002FA10
(57)【要約】
【課題】装置を大型化することなく、排ガスに含まれる有毒ガスを効率よく除害することが可能な排ガス処理装置を提供する。
【解決手段】排ガス処理装置100は、液体が流れる流路1aが形成された本体1と、本体1に連結され、液体が流れる流路1aに排ガスを供給する排ガス供給ライン2と、排ガス供給ライン2から流路1aに排ガスを吸引する吸引装置3と、流路1aに低温プラズマを発生させて、有害ガスを分解する低温プラズマ発生装置5と、本体1から低温プラズマ発生装置5を通過した排ガスを排出する排出ライン7と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスに含まれる有害ガスを無害化する排ガス処理装置であって、
液体が流れる流路が形成された本体と、
前記本体に連結され、前記液体が流れる流路に前記排ガスを供給する排ガス供給ラインと、
前記排ガス供給ラインから前記流路に前記排ガスを吸引する吸引装置と、
前記流路に低温プラズマを発生させて、前記有害ガスを分解する低温プラズマ発生装置と、
前記本体から前記低温プラズマ発生装置を通過した排ガスを排出する排出ラインと、を備える、排ガス処理装置。
【請求項2】
排ガスに含まれる有害ガスを無害化する排ガス処理装置であって、
液体が流れる流路が形成された本体と、
前記本体に連結され、前記液体が流れる流路に前記排ガスを供給する排ガス供給ラインと、
前記排ガス供給ラインから前記流路に前記排ガスを吸引する吸引装置と、
前記排ガス供給ラインに低温プラズマを発生させて、前記有害ガスを分解する低温プラズマ発生装置と、
前記本体から前記低温プラズマによって分解された有害ガスを含む排ガスを排出する排出ラインと、を備える、排ガス処理装置。
【請求項3】
前記吸引装置は、前記液体の流れ方向で見て前記低温プラズマ発生装置よりも上流側で前記流路に配置されたエゼクタを含み、
前記エゼクタの駆動流体は、前記液体である、請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
前記吸引装置は、前記排出ラインに配置されたエゼクタを含み、
前記エゼクタに駆動流体を供給することで、前記本体の内部空間を減圧して、前記排ガスを前記排ガス供給ラインから前記本体に吸引する、請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項5】
前記流路を流れる液体と排ガスの一部を逆流させて、前記液体と前記排ガスが前記低温プラズマ発生装置に留まる時間を増加させるための環流機構をさらに備え、
前記環流機構は、
前記流路の壁面に連結され、前記液体の流れ方向の上流側に向かって縮径する第1テーパ管と、
前記液体の流れ方向で見て、前記第1テーパ管よりも上流側で前記流路と隙間を開けて配置され、前記液体と前記排ガスを、前記流路の壁面に向かう第1流と、前記流路の中央を流れる第2流とに分割する第2テーパ管と、を含み、
前記第1テーパ管によって、前記第1流が前記第2流に向かって前記流路を逆流する、請求項3に記載の排ガス処理装置。
【請求項6】
前記プラズマ発生装置は、
高圧電源装置と、
前記流路に配置された少なくとも一対の第1電極および第2電極と、を含み、
前記高圧電源によって、前記第1電極と前記第2電極との間に低温プラズマを発生させる、請求項3または4に記載の排ガス処理装置。
【請求項7】
前記プラズマ発生装置は、
マイクロ波を放射可能なマイクロ波発生装置と、
前記マイクロ波を伝搬するための導波部と、
導波部内に配置された前記マイクロ波のインピーダンスを調整する整合部と、
前記マイクロ波による電界を集中させるスロットアンテナと、を含み、
前記スロットアンテナの表面で、前記液体中の排ガスを低温プラズマ化する、請求項3または4に記載の排ガス処理装置。
【請求項8】
前記第1電極および/または前記第2電極の外表面の一部または全部が誘電体で被覆されている、請求項6に記載の排ガス処理装置。
【請求項9】
前記有害ガスは、フッ素化合物、窒素化合物、またはシラン系化合物であり、
前記液体は、純水、超純水、イオン交換水、または電解液である、請求項1または2に記載の排ガス処理装置。
【請求項10】
前記排ガスを処理している間、本体の内部空間の雰囲気は、大気圧または準大気圧に維持される、請求項1または2に記載の排ガス処理装置。
【請求項11】
前記排ガス供給ラインは、半導体製造装置のプロセスチャンバーに連結された真空ポンプから前記本体に延びるか、または前記真空ポンプに連結された排ガス処理装置から前記本体に延びる、請求項1または2に記載の排ガス処理装置。
【請求項12】
前記排ガス供給ラインは、半導体製造装置のプロセスチャンバーに連結された真空ポンプに内蔵されるか、または一体化され、
前記本体は、前記真空ポンプに直結される、請求項1または2に記載の排ガス処理装置。
【請求項13】
前記排出ラインは、前記本体から、湿式排ガス処理装置、燃焼式排ガス処理装置、または乾式排ガス処理装置まで延びる、請求項11に記載の排ガス処理装置。
【請求項14】
前記第2電極には、前記液体に前記排ガスを導入する少なくとも1つの排ガス導入口が形成されており、
前記排ガス供給ラインは、前記排ガス導入口が形成された前記第2電極に連結される、請求項6に記載の排ガス処理装置。
【請求項15】
前記プラズマ発生装置は、
複数対の第1電極および第2電極を備えるか、または
複数の電極棒を有する第1電極、および第2電極を備える、請求項6に記載の排ガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に有害なガス(例えば、シランガス(SiH))および/または環境に有害なガス(例えば、地球温暖化ガス、およびオゾン層破壊ガス)を含む排ガスを分解処理する排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業分野において、人体に有害なガスおよび/または環境に有害なガス(以下、単に「有害ガス」と総称する)が使用されている。例えば、半導体製造装置からはシランガス(SiH)などの可燃性を有する有害ガス、またはNF,ClF,SF,CHF,C,CFなどハロゲン系の有害ガスが含まれる排ガスが排出される。
【0003】
このような排ガスは、そのままでは大気に放出することはできない。そこで、有害ガスを含む排ガスを排ガス処理装置に導いて、有害ガスを無害化することが一般的に行われている。排ガス中の有害ガスを無害化処理する方法としては、例えば、バーナーにより発生させた火炎を用いて有害ガスを燃焼させる燃焼処理(例えば、特許文献1参照)が広く用いられている。さらに、プラズマ発生部に熱プラズマを発生させ、この熱プラズマによって有害ガスを分解するプラズマ処理も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-161861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃焼処理およびプラズマ処理のいずれの場合も、排ガスの処理部が高温となる。より具体的には、燃焼処理では、火炎が形成されるバーナー自体、およびその周辺が高温となり、バーナー自体およびバーナー周辺の機器の消耗が著しくなる。プラズマ処理では、熱プラズマを発生させるプラズマ発生部、およびその周辺が高温となり、プラズマ電極などのプラズマ発生部自体、およびプラズマ発生部の周辺の機器の消耗が著しくなる。
【0006】
さらに、燃焼処理およびプラズマ処理のいずれの場合も、処理後の排ガスが非常に高温となるため、処理後の排ガスを冷却する設備(例えば、スクラバー)が必要となる。なお、処理する排ガスに含まれる有害ガスの種類によっては、燃焼処理後またはプラズマ処理後の排ガスに、粉塵(例えば、二酸化ケイ素)および腐食性ガス(例えば、フッ化水素)などの副生成物が含まれる。これら副生成物を処理後の排ガスから除去するための設備も必要となる。そのため、従来の排ガス処理方法では、装置が大型化しやすく、排ガス処理装置が高額な設備となるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、装置を大型化することなく、排ガスに含まれる有毒ガスを効率よく除害することが可能な排ガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、排ガスに含まれる有害ガスを無害化する排ガス処理装置であって、液体が流れる流路が形成された本体と、前記本体に連結され、前記液体が流れる流路に前記排ガスを供給する排ガス供給ラインと、前記排ガス供給ラインから前記流路に前記排ガスを吸引する吸引装置と、前記流路に低温プラズマを発生させて、前記有害ガスを分解する低温プラズマ発生装置と、前記本体から前記低温プラズマ発生装置を通過した排ガスを排出する排出ラインと、を備える、排ガス処理装置が提供される。
【0009】
一態様では、排ガスに含まれる有害ガスを無害化する排ガス処理装置であって、液体が流れる流路が形成された本体と、前記本体に連結され、前記液体が流れる流路に前記排ガスを供給する排ガス供給ラインと、前記排ガス供給ラインから前記流路に前記排ガスを吸引する吸引装置と、前記排ガス供給ラインに低温プラズマを発生させて、前記有害ガスを分解する低温プラズマ発生装置と、前記本体から前記低温プラズマによって分解された有害ガスを含む排ガスを排出する排出ラインと、を備える、排ガス処理装置が提供される。
【0010】
一態様では、前記吸引装置は、前記液体の流れ方向で見て前記低温プラズマ発生装置よりも上流側で前記流路に配置されたエゼクタを含み、前記エゼクタの駆動流体は、前記液体である。
一態様では、前記吸引装置は、前記排出ラインに配置されたエゼクタを含み、前記エゼクタに駆動流体を供給することで、前記本体の内部空間を減圧して、前記排ガスを前記排ガス供給ラインから前記本体に吸引する。
一態様では、前記排ガス処理装置は、前記流路を流れる液体と排ガスの一部を逆流させて、前記液体と前記排ガスが前記低温プラズマ発生装置に留まる時間を増加させるための環流機構をさらに備え、前記環流機構は、前記流路の壁面に連結され、前記液体の流れ方向の上流側に向かって縮径する第1テーパ管と、前記液体の流れ方向で見て、前記第1テーパ管よりも上流側で前記流路と隙間を開けて配置され、前記液体と前記排ガスを、前記流路の壁面に向かう第1流と、前記流路の中央を流れる第2流とに分割する第2テーパ管と、を含み、前記第1テーパ管によって、前記第1流が前記第2流に向かって前記流路を逆流する。
【0011】
一態様では、前記プラズマ発生装置は、高圧電源装置と、前記流路に配置された少なくとも一対の第1電極および第2電極と、を含み、前記高圧電源によって、前記第1電極と前記第2電極との間に低温プラズマを発生させる。
一態様では、前記プラズマ発生装置は、マイクロ波を放射可能なマイクロ波発生装置と、前記マイクロ波を伝搬するための導波部と、導波部内に配置された前記マイクロ波のインピーダンスを調整する整合部と、前記マイクロ波による電界を集中させるスロットアンテナと、を含み、前記スロットアンテナの表面で、前記液体中の排ガスを低温プラズマ化する。
一態様では、前記第1電極および/または前記第2電極の外表面の一部または全部が誘電体で被覆されている。
【0012】
一態様では、前記有害ガスは、フッ素化合物、窒素化合物、またはシラン系化合物であり、前記液体は、純水、超純水、イオン交換水、または電解液である。
一態様では、前記排ガスを処理している間、本体の内部空間の雰囲気は、大気圧または準大気圧に維持される。
一態様では、前記排ガス供給ラインは、半導体製造装置のプロセスチャンバーに連結された真空ポンプから前記本体に延びるか、または前記真空ポンプに連結された排ガス処理装置から前記本体に延びる。
一態様では、前記排ガス供給ラインは、半導体製造装置のプロセスチャンバーに連結された真空ポンプに内蔵されるか、または一体化され、前記本体は、前記真空ポンプに直結される。
【0013】
一態様では、前記排出ラインは、前記本体から、湿式排ガス処理装置、燃焼式排ガス処理装置、または乾式排ガス処理装置まで延びる。
一態様では、前記第2電極には、前記液体に前記排ガスを導入する少なくとも1つの排ガス導入口が形成されており、前記排ガス供給ラインは、前記排ガス導入口が形成された前記第2電極に連結される。
一態様では、前記プラズマ発生装置は、複数対の第1電極および第2電極を備えるか、または複数の電極棒を有する第1電極、および第2電極を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低温プラズマによって有害ガスが分解されるため、従来の排ガス処理装置で必要である冷却設備(例えば、スクラバー)が不要であり、排ガス処理装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、一実施形態に係る排ガス処理装置を示す模式図である。
図2図2は、一実施形態に係る低温プラズマ発生部を示す模式図である。
図3図3は、他の実施形態に係る低温プラズマ発生装置を示す模式図である。
図4図4は、本体に配置される環流機構の一例を示す模式図である。
図5図5は、他の実施形態に係る排ガス処理装置の模式図である。
図6図6(a)は、第2電極の他の例を示す斜視図であり、図6(b)は、第2電極のさらに他の例を示す斜視図である。
図7図7(a)は、第1電極の他の例を示す斜視図であり、図7(b)は、第1電極のさらに他の例を示す斜視図である。
図8図8は、さらに他の実施形態に係る排ガス処理装置の模式図である。
図9図9は、排ガス処理装置が配置された排ガス処理プロセス系統の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る排ガス処理装置を示す模式図である。図1に示す排ガス処理装置は、排ガスに含まれる有害ガスを無害化するための装置である。排ガスは、例えば、半導体製造装置のプロセスチャンバーから排出され、排ガス処理装置に導入される。有害ガスは、例えば、CF,C,SF,NF,ClF,HFなどのフッ素化合物、HBr,Clなどのハロゲン化合物、NH、NOxなどの窒素化合物、またはSiH,DCS(dichlorosilane),TEOS(Tetraethyl orthosilicate)などのシラン系化合物である。
【0017】
図1に示す排ガス処理装置100は、液体が流れる流路1aが形成された本体1と、本体1に連結され、流路1aに液体を供給する液体供給ライン10と、本体1に連結され、液体が流れる流路1aに排ガスを供給する排ガス供給ライン2と、排ガス供給ライン2から流路1aに排ガスを吸引する吸引装置3と、流路1aに低温プラズマを発生させて、有害ガスを分解する低温プラズマ発生装置5と、本体1から低温プラズマ発生装置5を通過した排ガスを排出する排出ライン7と、を備える。液体は、液体供給ライン10を介して本体1の流路1aに供給される。流路1aに供給される液体の種類は、排ガス供給ライン2から流路1aに吸い込まれる排ガス中の有害ガスによって適宜選択される。液体の例としては、純水、超純水、およびイオン交換水が挙げられる。一実施形態では、液体は、電解液またはアルコールであってもよい。本実施形態では、排出ライン7は、処理後の排ガスだけでなく、液体も排出する。
【0018】
図1に示す本体1は、鉛直方向に延びる円筒形状を有しており、流路1aも本体1内で鉛直方向に延びている。本実施形態では、吸引装置3は、本体1に配置され、流路1aを流れる液体を駆動流体として用いるエゼクタである。排ガス供給ライン2は、吸引装置3を介して本体1に連結されている。エゼクタである吸引装置3において、排ガス供給ライン2を流れる排ガスが吸引装置3の吸引ガスとして扱われる。すなわち、吸引装置3に液体を流すことで、排ガスが排ガス供給ライン2を介して本体1の流路1aに吸い込まれ、吸引装置3で液体と混合される。この際、排ガスは、気泡となって液体に混合され、気泡となった排ガスを含む液体が吸引装置3から流路1aに吐出される。本実施形態では、本体1の内部空間である流路1aの雰囲気は、大気圧または準大気圧に維持される
【0019】
なお、図1では、2本の排ガス供給ライン2が描かれているが、排ガス供給ライン2の数は、吸引装置3による排ガスの吸引能力、および低温プラズマ発生装置5による有害ガスの処理能力(分解能力)に応じて適宜決定すればよい。言い換えれば、排ガス処理装置100は、少なくとも1つの排ガス供給ライン2を備える。
【0020】
低温プラズマ発生装置5は、流路1aを流れる液体の流れ方向で見て、吸引装置3の下流側の本体1に設けられており、流路1aを流れる液体中の排ガスに低温プラズマを発生させる。図2は、一実施形態に係る低温プラズマ発生部を示す模式図である。図2に示す低温プラズマ発生装置5は、高圧電源装置11と、流路1aを流れる液体内に配置された第1電極14および第2電極15と、を含んでいる。第1電極14と第2電極15は、それぞれ、高圧電源装置11に接続されている。高圧電源装置11を操作することによって、第1電極14と第2電極15との間を流れる液中の排ガスに低温プラズマを発生させる。
【0021】
低温プラズマは、一般に、プラズマ中における電子密度、または中性粒子の密度が低いことから、電子の平均自由工程が長く、電子は1から10eV(10000~100000K相当)の高エネルギを有する一方で、中性粒子は室温程度のままである、いわゆる「弱電離プラズマ」のことを言う。このような低温プラズマを液中で発生させるための高圧電源装置11によって第1電極14と第2電極15との間に発生される放電現象は、例えば、グロー放電である。
【0022】
第1電極14と第2電極15との間に放電現象を発生させるために、高圧電源装置11は、第1電極14と第2電極15にパルス波形を有する電圧を印加する高圧電源12を含んでいる。高圧電源12の例としては、直流電源、交流電源、バイポーラ電源、ユニポーラ電源、パルス電源、または高周波電源が挙げられる。高圧電源12の種類によっては、高圧電源装置11はパルスジェネレータ(図示しない)を含んでもよい。
【0023】
図2に仮想線(点線)で示すように、低温プラズマ発生装置5は、複数対(図2では3対の)の第1電極14と第2電極15を有していてもよい。図2に示した例では、高圧電源12は、全て、または任意の第1電極14と第2電極15の対にパルス電圧を供給する。図示はしないが、低温プラズマ発生装置5は、第1電極14と第2電極15の各対にパルス電圧を供給する複数の高圧電源12を備えていてもよい。
【0024】
低温プラズマ発生装置5によって、流路1aを流れる液体中の排ガスに低温プラズマが発生され、この低温プラズマによって排ガス中の有害ガスが分解される。本実施形態では、本体1は、その内部に形成された流路1aを流れる液体中の有害ガスを低温プラズマによって分解するためのリアクタとして機能する。液中に発生させた低温プラズマによって有害ガスが分解されるため、処理後の排ガスは液体によって直ちに冷却される。そのため、従来の排ガス処理装置で必要である冷却設備(例えば、水壁、またはスクラバー)が不要であり、排ガス処理装置を小型化することができる。さらに、有害ガスを分解することで生成される粉塵、および腐食性ガスなどの副生成物も、流路1aを流れる液体ともに本体1から直ちに排出される。例えば、有害ガスを分解することで発生したフッ酸などの酸性ガスは、液体に直ちに溶解し、希釈されて、排出ライン7に排出される。そのため、排ガス処理装置100の構成要素への腐食ダメージ、および粉塵の固着が抑制される。さらに、有害ガスを分解するためのプラズマ自体が低温であり、かつ流路1aを流れる流水によって第1電極14および第2電極15が冷却される。そのため、熱溶解および腐食による電極14,15の消耗が抑制され、排ガス処理装置100のランニングコストを低減できる。
【0025】
一実施形態では、第1電極14および/または第2電極15の外表面の一部または全部を誘電体で被覆してもよい。誘電体によって、排ガスに含まれる有害ガス、および有害ガスが分解されることで生成される副生成物から第1電極14および/または第2電極15を保護することができる。さらに、誘電体によって、第1電極14および/または第2電極15の導体部とプラズマが直接接触しないので、第1電極14および/または第2電極15の局所的な消耗を抑制することができる。
【0026】
図3は、他の実施形態に係る低温プラズマ発生装置を示す模式図である。図3に示す低温プラズマ発生装置5は、マイクロ波を放射可能なマイクロ波発生装置17と、マイクロ波発生装置17から放射されたマイクロ波を伝搬するための導波管(導波部)18と、導波管18内に配置され、マイクロ波のインピーダンスを調整するための整合部(アイソレータ)19と、導波管18内のマイクロ波による電界を集中させるスロットアンテナ20と、を含んでいる。スロットアンテナ20は、本体1の流路1a内に配置されている。本実施形態では、スロットアンテナ20の表面に集中させたマイクロ波で電子振動を発生させ、流路1aを流れる排ガス(の気泡)に低温プラズマを発生させる。排ガス中の有害ガスは、低温プラズマによって分解される。
【0027】
図3に示すように、低温プラズマ発生装置5は、本体1の流路1aに気泡を発生させる気泡発生機構40を備えていてもよい。図3に示す気泡発生機構40は、本体1の流路1aに連通し、気泡となったガスを流路1aに供給する気泡ライン41と、気泡ライン41に配置された気泡発生器42と、を含んでいる。気泡発生器42の例としては、マイクロバブル発生器、超音波振動器などが挙げられる。気泡ライン41には、排ガスが供給され、気泡ライン41を介して、本体1の流路1aに排ガスが供給される。
【0028】
図4は、本体に配置される環流機構の一例を示す模式図である。環流機構は、排ガスに含まれる有害ガスを効率よく分解するために、流路1aを流れる液体の一部を逆流させて、液体と排ガスが低温プラズマ発生装置5に留まる時間を増加させるための機構である。
【0029】
図4に示す環流機構25は、本体1の流路1aの壁面に連結される第1テーパ管26と、流路1aを流れる液体の流れ方向で見て、第1テーパ管26の上流側に配置される第2テーパ管27と、を備える。第1テーパ管26は、その中央部に開口を備えた円錐形状を有しており、第1テーパ管26の末端は、流路1aの壁面に隙間を開けずに連結されている。第1テーパ管26の末端とは、第1テーパ管26の最大直径を有する部分である。一方で、第2テーパ管27も、その中央部に開口を備えた円錐形状を有しており、第2テーパ管27の末端は、流路1aの壁面とは隙間を開けて配置されている。本実施形態では、第2テーパ管27は、図示しない支持具によって本体1に連結されており、流路1aの縦断面で見たときに、第1テーパ管26と第2テーパ管27とは、同心状に配置されている。
【0030】
液体と排ガスが第2テーパ管27を通過する際に、液体と排ガスは、第2テーパ管27の外面を通って流路1aの壁面に向かう第1流F1と、第2テーパ管27の中央部開口を通って流路1aの中央を流れる第2流F2とに分割される。第1流F1は、第1テーパ管26によって流路1aをそのまま流れることを阻害され、第1テーパ管26の外面(上面)に沿って、流路1aを逆流する。その結果、第1流F1は、流路1aの中央を流れる第2流F2に合流し、該第2流F2を阻害する。本実施形態では、プラズマ発生装置5は、第1流F1と第2流F2との合流部に低温プラズマを発生させるように構成されている。具体的には、第1電極14と第2電極15とは、第2テーパ管27の壁面を貫通して延びており、低温プラズマは第2テーパ管27の内側に発生される。このような環流機構25によれば、排ガスが、該排ガスを低温プラズマ化させる第1電極14と第2電極15周辺に留まる時間を増加させることができ、その結果、排ガス中の有害ガスを効率的に分解することができる。
【0031】
図4に示すように、低温プラズマ発生装置5が備える第1電極14と第2電極15の対の数に応じて、環流機構25を設けてもよい。
【0032】
図5は、他の実施形態に係る排ガス処理装置の模式図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0033】
図5に示す排ガス処理装置200は、越流堰1bを備えた槽として構成される本体1を有する。本体1の内部空間は、越流堰1bによって、低温プラズマ発生装置5が配置される処理部1cと、排出ライン7が連結される排出部1dに区画されている。本実施形態では、越流堰1bは、本体1の底壁の上面から上方に延びる板体であり、越流堰1bの上端と、本体1の上壁の下面との間には隙間が形成されている。本体1に形成される液体の流路1aは、処理部1cと排出部1dとを含む本体1の内部空間全体である。
【0034】
液体供給ライン10は、本体1の上部(本実施形態では、上壁)を貫通して、処理部1cまで延びている。液体が吐出される液体供給ライン10の先端は、越流堰1bの上端よりも低い位置にある。液体は、本体1の上部から本体1の処理部1cに供給される。本体1の処理部1cに供給された液体は、その液面が越流堰1bを越えるまで、処理部1cに貯留され、その後、越流堰1bを越えて排出部1dに流出する。排出部1dに流出した液体は、排出ライン7を介して本体1から排出される。したがって、本体1の越流堰1bよりも上方の空間には、気体(大気)で満たされている。
【0035】
図5に示す排ガス処理装置200では、低温プラズマ発生装置5は、処理部1cを満たす液中の気体内に低温プラズマを発生させる。より具体的には、低温プラズマ発生装置5の第1電極14は、第1電極ホルダ14aと、第1電極ホルダ14aに取り付けられた少なくとも1つの電極棒14bと、で構成され、第2電極15は、第2電極本体15aと、第2電極本体15aに配置されたノズル部15bと、を有している。ノズル部15bには、流路1aを流れる液体に排ガスを供給するための少なくとも1つの排ガス導入口15cが形成されている。さらに、第1電極14の電極棒14bの先端は、越流堰1bの上端よりも低い位置で、処理部1c内に配置されており、第2電極15のノズル部15bに形成された排ガス導入口15cは、第1電極14の電極棒14bの先端よりも低い位置で、処理部1cに開口している。
【0036】
さらに、排ガス供給ライン2は、第2電極15に連結されていて、第2電極15の第2電極本体15aを介して第2電極15のノズル部15bに形成された排ガス導入口15cに連通している。
【0037】
本実施形態の吸引装置3は、本体1の上部(本実施形態では、上壁)に連結され、本体1内の気体を吸引するための吸引ライン3aと、吸引ライン3aに配置されたエゼクタ3bと、エゼクタ3bに駆動流体を供給するための駆動流体ライン3cと、を備えている。エゼクタ3bに駆動流体ライン3cを介して駆動流体を供給すると、吸引ライン3aを介して本体1の内部空間、すなわち、流路1aの雰囲気が負圧となる。その結果、排ガス供給ライン2を介して、排ガスが本体1に形成された流路1aに吸引される。図示はしないが、吸引装置3は、エゼクタ3bの代わりに、吸引ポンプを有していてもよい。この場合、駆動流体ライン3cは省略される。
【0038】
吸引装置3を起動すると、排ガスが排ガス供給ライン2を介して、第2電極15の排ガス導入口15cから流路1aに吸い込まれ、これと同時に、低温プラズマ発生装置5によって排ガス中に発生された低温プラズマによって排ガス中の有害ガスが分解される。処理後の排ガスは、液体とともに越流堰1bを越えて排出部1dに流出し、吸引ライン3aを通って本体1から排出される。本実施形態では、排ガスを流路1aに導入する排ガス導入口15cが第2電極15と一体化している。そのため、流路1aを流れる液体に吸引される排ガスの全てが第2電極15と接触し、その結果、低温プラズマ化される排ガスの割合が増加する。したがって、排ガスに含まれる有害ガスの分解率(処理効率)を向上させることができる。
【0039】
本実施形態でも、流路1aを流れる液体中の排ガスに低温プラズマが発生され、この低温プラズマによって排ガス中の有害ガスが分解される。液中に発生させた低温プラズマによって有害ガスが分解されるため、処理後の排ガスは液体によって直ちに冷却される。そのため、従来の排ガス処理装置で必要である冷却設備(例えば、スクラバー)が不要であり、排ガス処理装置を小型化することができる。さらに、有害ガスを分解することで生成される粉塵、および腐食性ガスなどの副生成物も、流路1aを流れる液体ともに本体1から直ちに排出される。さらに、有害ガスを分解するためのプラズマ自体が低温であり、かつ流路1aを流れる流水によって第1電極14および第2電極15が冷却される。そのため、熱溶解および腐食による電極14,15の消耗が抑制され、排ガス処理装置200のランニングコストを低減できる。
【0040】
図5に示すように、排ガス導入口15cに対向して、排ガスの流れを抑制する制御板9を設けてもよい。制御板9は、排ガス導入口15cから吸い込まれた排ガスが処理部1cから越流堰1bを越えるまでの流速を低減して、排ガスが、該排ガスを低温プラズマ化させる第1電極14と第2電極15との間に留まる時間を増加させる。したがって、制御板9によって、排ガスの処理効率を増加させることができる。図5に示す制御板9は、第2電極15に向かって開口するアーチ形状を有しているが、制御板9の形状はこの例に限定されない。例えば、制御板9は、お椀形状、または、漏斗形状を有していてもよい。第1電極14の電極棒14bが単一の場合、第1電極14の電極棒14bは、制御板9の中心を貫通しているのが好ましい。
【0041】
図6(a)は、第2電極の他の例を示す斜視図であり、図6(b)は、第2電極のさらに他の例を示す斜視図である。図7(a)は、第1電極の他の例を示す斜視図であり、図7(b)は、第1電極のさらに他の例を示す斜視図である。図6(a)および図6(b)に示すように、第2電極15は、複数の排ガス導入口15cを有していてもよい。図6(a)に示す第2電極15は、2つの排ガス導入口15cを有している。図6(b)に示す第2電極15は、3つの排ガス導入口15cを有しており、全体として三角形状に配置されている。なお、図示はしないが、第2電極15の排ガス導入口15cの数は、3つ以上であってもよい。例えば、多数の排ガス導入口15cを、第2電極15に全体として楕円状または三角形状に配置してもよい。
【0042】
図6(a)に示す第2電極15は、図7(a)に示す2本の電極棒14bを有する第1電極14に対応している。このように、第2電極15は、第1電極14の電極棒14bの数と同数の排ガス導入口15cを有しているのが好ましい。この場合、電極棒14bの先端は、排ガス導入口15cの中心軸線上に位置しているのが好ましい。図6(a)では、各排ガス導入口15cは、ノズル部15bの上面から延びる筒状体として構成されている。高圧電源装置11(図5参照)は、2本の電極棒14bに同時にパルス電圧を印加して、2つの低温プラズマを同時に発生させてもよいし、2本の電極棒14bに交互にパルス電圧を印加して、2つの低温プラズマを異なる位置に交互に発生させてもよい。
【0043】
同様に、図6(b)に示す第2電極15は、図7(b)に示す3本の電極棒14bを有する第1電極14に対応している。すなわち、第2電極15は、第1電極14の電極棒14bの数と同数の排ガス導入口15cを有しており、各電極棒14bの先端は、各排ガス導入口15cの中心軸線上に位置している。図6(b)では、各排ガス導入口15cは、ノズル部15bの上面に形成されている。高圧電源装置11(図5参照)は、3本の電極棒14bに同時にパルス電圧を印加して、3つの低温プラズマを同時に発生させてもよいし、3本の電極棒14bに代わる代わるパルス電圧を印加して、3つの低温プラズマを異なる位置に代わる代わる発生させてもよい。
【0044】
このように、低温プラズマ発生装置5が複数の電極棒14bを有する第1電極14と、電極棒14bと同数の排ガス導入口15cを有する第2電極15を備えることで、低温プラズマとなる排ガスの量を増やすことができ、その結果、排ガスに含まれる有害ガスの分解率(処理効率)を向上させることができる。
【0045】
図8は、さらに他の実施形態に係る排ガス処理装置の模式図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。図8に示す排ガス処理装置300は、排ガスを分解する低温プラズマが液中ではなく、気体雰囲気中に発生される点で上述した実施形態と異なる。
【0046】
図8に示す排ガス処理装置300は、本体1に形成された流路1aに配置されたリアクタ6を備える。排ガス供給ライン2は、リアクタ6に連結されており、該リアクタ6内に排ガスを供給する。本実施形態では、排ガス供給ライン2は、リアクタ6の壁面を貫通して延びており、排ガス供給ライン2の先端は、リアクタ6の内部に開口している。
【0047】
リアクタ6の上壁には、排ガスを流路1aに放出するための少なくとも1つの放出口6aが形成されている。排ガス供給ライン2からリアクタ6の内部空間に供給された排ガスは、放出口6aを通って流路1aに放出される。
【0048】
図8に示す低温プラズマ発生装置5は、図3を参照して説明された低温プラズマ発生装置5と同様の構成を有している。マイクロ波発生装置17から放射されたマイクロ波を伝搬するための導波管(導波部)18の先端は、本体1およびリアクタ6を貫通して、リアクタ6の内部に位置している。
【0049】
図8に示す例では、低温プラズマ発生装置5は、マイクロ波発生装置17から発生したマイクロ波を利用して低温プラズマを排ガスに発生させる装置であるが、本実施形態は、この例に限定されない。例えば、低温プラズマ発生装置5は、少なくとも一対の第1電極14と第2電極15を有する装置であってもよい。この場合、第1電極14および/または第2電極15の外表面の一部または全部を誘電体で被覆してもよい。
【0050】
液体供給ライン10および排出ライン7は、本体1の側壁を貫通して、本体1の内部にまで延びている。液体供給ライン10から本体1の流路1aに供給される液体の流量、および/または排出ライン7から排出される液体の流量は、流路1aが完全に液体で満たされないように調整されている。すなわち、流路1aの上部の空間には、気体(大気)が存在する。
【0051】
本実施形態の吸引装置3は、図5を参照して説明された吸引装置3と同様の構成を有する。すなわち、吸引装置3は、本体1の上部(本実施形態では、上壁)に連結され、本体1内の気体を吸引するための吸引ライン3aと、吸引ライン3aに配置されたエゼクタ3bと、エゼクタ3bに駆動流体を供給するための駆動流体ライン3cと、を備えている。エゼクタ3bに駆動流体ライン3cを介して駆動流体を供給すると、吸引ライン3aを介して本体1の内部空間、すなわち、流路1aの雰囲気が負圧となる。その結果、排ガス供給ライン2を介して、排ガスがリアクタ6を介して本体1に形成された流路1aに吸引される。なお、吸引装置3によって排ガス供給ライン2から供給される排ガスの流量は、流路1aを流れる液体がリアクタ6に浸入しないように調整される。図示はしないが、吸引装置3は、エゼクタ3bの代わりに、吸引ポンプを有していてもよい。この場合、駆動流体ライン3cは省略される。
【0052】
吸引装置3を起動すると、排ガスが排ガス供給ライン2を介して、リアクタ6に吸い込まれ、これと同時に、低温プラズマ発生装置5によって発生された低温プラズマによって分解される。処理後の排ガスは、リアクタ6の放出口6aを介して流路1aに直ちに放出され、流路1aを流れる液体によって直ちに冷却される。そのため、従来の排ガス処理装置で必要である冷却設備(例えば、スクラバー)が不要であり、排ガス処理装置を小型化することができる。さらに、有害ガスを分解することで生成される粉塵、および腐食性ガスなどの副生成物も、流路1aを流れる液体ともに本体1から直ちに排出される。さらに、有害ガスを分解するためのプラズマ自体が低温であるため、リアクタ6の消耗が抑制され、排ガス処理装置300のランニングコストを低減できる。
【0053】
図9は、排ガス処理装置が配置された排ガス処理プロセス系統の一例を示す図である。図9に示す排ガス処理プロセス系統では、排ガスは、真空ポンプ51によって半導体製造装置のプロセスチャンバー50から排出される。排ガス供給ライン2は、真空ポンプ51から排ガス処理装置100(または200または300)の本体1に延びている。図9に示す例では、1つのプロセスチャンバー50に複数の(4つの)排ガス処理装置100(または200または300)が連結されているが、排ガス処理プロセス系統が有するプロセスチャンバー50の数、および排ガス処理装置100(または200または300)の数は、この例に限定されない。例えば、1つのプロセスチャンバー50に、1つの排ガス処理装置100(または200または300)が連結されていてもよいし、複数のプロセスチャンバー50に、1つの排ガス処理装置100(または200または300)が連結されていてもよい。
【0054】
さらに、図9に示す例では、4つの排ガス処理装置100(または200または300)に、1つの高圧電源装置11が連結されているが、排ガス処理プロセス系統が有する高圧電源装置11の数は、この例に限定されない。例えば、1つの排ガス処理装置100(または200または300)に1つの高圧電源装置11が連結されていてもよい。
【0055】
さらに、図9に示すように、排ガス処理装置100(または200または300)の排ガスライン7は、他の排ガス処理装置400に連結されていてもよい。他の排ガス処理装置400の例としては、湿式排ガス処理装置、燃焼式排ガス処理装置、または乾式排ガス処理装置である。湿式排ガス処理装置は、例えば、スクラバーであり、乾式排ガス処理装置は、例えば、有害ガスを吸着する吸着剤が充填された処理槽を備える排ガス処理装置である。
【0056】
図示はしないが、真空ポンプ51を、湿式排ガス処理装置、燃焼式排ガス処理装置、または乾式排ガス処理装置などの排ガス処理装置400に連結し、該排ガス処理装置400に排ガス処理装置100(または200または300)を連結してもよい。この場合、排ガス供給ライン2は、排ガス処理装置400から排ガス処理装置100(または200または300)の本体1に延び、排ガス処理装置400で処理された排ガスを、排ガス処理装置100(または、200または300)が処理する。
【0057】
さらに、図示はしないが、排ガス供給ライン2を真空ポンプ51に内蔵するか、または真空ポンプ51と一体化してもよい。これらの場合、排ガス処理装置100(または200または300)の本体1は、真空ポンプ51に直結される。
【0058】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0059】
1 本体
1a 流路
2 排ガス供給ライン
3 吸引装置
5 低温プラズマ発生装置
6 リアクタ
7 排出ライン
9 制御板
10 液体供給ライン
11 高圧電源装置
12 高圧電源
14 第1電極
14a 第1電極ホルダ
14b 電極棒
15 第2電極
15a 第2電極本体
15b ノズル部
15c 排ガス導入口
17 マイクロ波発生装置
18 導波管(導波部)
25 環流機構
26 第1テーパ管
27 第2テーパ管
50 プロセスチャンバー
51 真空ポンプ
100,200,300,400 排ガス処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9