(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054063
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
G01R15/20 C
G01R15/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071132
(22)【出願日】2023-04-24
(62)【分割の表示】P 2022160194の分割
【原出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 健
(72)【発明者】
【氏名】辻本 真規
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA02
2G025AA04
2G025AA17
2G025AB01
2G025AB02
2G025AC01
(57)【要約】
【解決手段】電流センサは、封止部により少なくとも1つの磁電変換素子、導体、及び信号処理ICが封止されることで構成される。電流センサは、封止部の側面に一部が露出し、導体と電気的に接続され、計測電流を導体に入力し、導体からの計測電流を出力する一対の第1リード端子と、封止部の側面に一部が露出し、導体と離間する金属製部材と、金属板または半導体基板で構成され、少なくとも1つの磁電変換素子、及び金属製部材とを第1面と同じ側の面で支持し、導体とは離間する素子支持部とを備える。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの磁電変換素子と、
前記少なくとも1つの磁電変換素子を平面視で少なくとも部分的に取り囲み、前記少なくとも1つの磁電変換素子で計測される計測電流が流れる導体と、
前記少なくとも1つの磁電変換素子から出力される信号を処理する信号処理ICと、
前記導体と電気的に絶縁するための間隙を有し、第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有し、前記信号処理ICを前記第1面で支持するIC支持部と、
金属板または半導体基板で構成され、前記第1面と同じ側の面で、前記少なくとも1つの磁電変換素子を支持する素子支持部と、
前記少なくとも1つの磁電変換素子、前記導体、及び前記信号処理ICを封止する封止部と、
前記封止部の側面に一部が露出し、前記導体と電気的に接続され、前記計測電流を前記導体に入力し、前記導体からの前記計測電流を出力する一対の第1リード端子と、
前記封止部の側面に一部が露出し、前記信号処理ICと電気的に接続される複数の第2リード端子と
を備え、
前記素子支持部は、前記導体の前記第2面と同じ側の面に対向して配置され、前記素子支持部の厚さ方向から見て前記導体と重なり、前記厚さ方向と交差する方向から見て前記導体と重ならず、
前記複数の第2リード端子の少なくとも1つのリード端子と、前記素子支持部と、前記IC支持部とは、平面視でそれぞれが連結されて一体的に構成される、電流センサ。
【請求項2】
前記導体は、前記厚さ方向において前記素子支持部の前記第1面と同じ側の前記面と前記導体の前記第2面と同じ側の前記面とが離間するように段差部を有する、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記封止部の側面に一部が露出し、前記導体と離間する金属製部材をさらに備え、
前記金属製部材は、前記複数の第2リード端子とは別体であり、前記信号処理ICと電気的に接続されていない、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記IC支持部と前記素子支持部、または前記複数の第2リード端子の少なくとも1つと前記IC支持部とは、前記厚さ方向において前記素子支持部の前記第1面と同じ側の面と前記導体の前記第2面と同じ側の前記面とが離間するように屈曲する屈曲部を介して連結している、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項5】
前記複数の第2リード端子、前記IC支持部、前記素子支持部、及び前記金属製部材は、第1リードフレームにより一体的に構成され、
前記一対の第1リード端子、及び前記導体は、第2リードフレームにより一体的に構成される、請求項3に記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、磁電変換素子を有する電流センサが開示されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特許第6415148号
[特許文献2] 特許第6017182号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
磁電変換素子を有する電流センサにおいて、磁電変換素子の位置が個体間でばらつくことで、磁電変換素子により計測される計測電流の感度が個体間でばらつきが生じて、電流センサの品質を損なう可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様に係る電流センサは、少なくとも1つの磁電変換素子を備えてよい。前記電流センサは、前記少なくとも1つの磁電変換素子を平面視で少なくとも部分的に取り囲み、前記少なくとも1つの磁電変換素子で計測される計測電流が流れる導体を備えてよい。前記電流センサは、前記少なくとも1つの磁電変換素子から出力される信号を処理する信号処理ICを備えてよい。前記電流センサは、前記導体と電気的に絶縁するための間隙を有し、第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有し、前記信号処理ICを前記第1面で支持するIC支持部を備えてよい。前記電流センサは、金属板または半導体基板で構成され、前記第1面と同じ側の面で、前記少なくとも1つの磁電変換素子を支持する素子支持部を備えてよい。前記素子支持部は、前記導体の前記第2面と同じ側の面に対向して配置され、前記素子支持部の厚さ方向から見て前記導体と重なり、前記厚さ方向と交差する方向から見て前記導体と重ならなくてよい。
【0005】
前記電流センサにおいて、前記導体は、前記厚さ方向において前記素子支持部の前記第1面と同じ側の前記面と前記導体の前記第2面と同じ側の前記面とが離間するように段差部を有してよい。
【0006】
いずれかの前記電流センサは、前記少なくとも1つの磁電変換素子、前記導体、及び前記信号処理ICを封止する封止部を備えてよい。前記電流センサは、前記封止部の側面に一部が露出し、前記導体と電気的に接続され、前記計測電流を前記導体に入力し、前記導体からの前記計測電流を出力する一対の第1リード端子を備えてよい。前記電流センサは、前記封止部の側面に一部が露出し、前記導体と離間する金属製部材を備えてよい。前記素子支持部は、前記少なくとも1つの磁電変換素子、及び前記金属製部材とを前記第1面と同じ側の前記面で支持してよい。
【0007】
いずれかの前記電流センサは、前記封止部の側面に一部が露出し、前記信号処理ICと電気的に接続される複数の第2リード端子を備えてよい。前記IC支持部は、前記複数の第2リード端子のうちの少なくとも1つの第2リード端子と一体的に構成されてよい。
【0008】
いずれかの前記電流センサは、前記素子支持部は、前記第1面と同じ側の前記面で、前記IC支持部の前記信号処理ICを支持する前記第1面と反対側の前記第2面を支持してよい。
【0009】
いずれかの前記電流センサにおいて、前記金属製部材は、前記複数の第2リード端子とは別体であり、前記信号処理ICと電気的に接続されていなくてよい。
【0010】
いずれかの前記電流センサにおいて、前記金属製部材は、前記複数の第2リード端子のうちの前記少なくとも1つの第2リード端子とは異なる少なくとも1つの第2リード端子でよい。
【0011】
いずれかの前記電流センサにおいて、前記一対の第1リード端子と、前記複数の第2リード端子とは、前記信号処理ICの厚さ方向と交差する第1方向において、前記信号処理ICを介して対向して配置されてよい。前記金属製部材は、前記第1方向と交差する第2方向において離間する第1部分と第2部分とを含んでよい。前記素子支持部は、前記第2方向の両端部分で前記第1部分及び前記第2部分を支持してよい。前記素子支持部の前記両端部分の間の前記第1部分及び前記第2部分を支持していない部分の前記第2方向における距離をL、前記素子支持部の厚さをhとした場合、L<8×106×h2を満たしてよい。
【0012】
いずれかの前記電流センサは、前記IC支持部の前記第2面に前記素子支持部を接着させる接着層を備えてよい。
【0013】
いずれかの前記電流センサにおいて、前記接着層は、ダイアタッチフィルムでよい。
【0014】
いずれかの前記電流センサは、前記封止部の側面に一部が露出し、前記信号処理ICと電気的に接続される複数の第2リード端子を備えてよい。前記複数の第2リード端子の少なくとも1つのリード端子と、前記素子支持部と、前記IC支持部とは、一体的に構成されてよい。
【0015】
いずれかの前記電流センサにおいて、前記導体は、前記厚さ方向において前記素子支持部の前記第1面と同じ側の面と前記導体の前記第2面と同じ側の前記面とが離間するように段差部を有してよい。
【0016】
いずれかの前記電流センサにおいて、前記IC支持部と前記素子支持部、または前記複数の第2リード端子の少なくとも1つと前記IC支持部とは、前記厚さ方向において前記素子支持部の前記第1面と同じ側の前記面と前記導体の前記第2面と同じ側の前記面とが離間するように屈曲する屈曲部を介して連結していてよい。
【0017】
いずれかの前記電流センサにおいて、前記複数の第2リード端子、前記IC支持部、前記素子支持部、及び前記金属製部材は、第1リードフレームにより一体的に構成されてよい。前記一対の第1リード端子、及び前記導体は、第2リードフレームにより一体的に構成されてよい。
【0018】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】第1実施形態に係る電流センサの天井面側から見た模式的な平面図である。
【
図2A】第2実施形態に係る電流センサの天井面側から見た模式的な平面図である。
【
図3A】第3実施形態に係る電流センサの天井面側から見た模式的な平面図である。
【
図4A】第4実施形態に係る電流センサの天井面側から見た模式的な平面図である。
【
図5】第1実施形態に係る電流センサの製造方法の手順を示すフローチャートである。
【
図6A】第1実施形態に係る電流センサの製造工程を模式的に示す図である。
【
図6B】第1実施形態に係る電流センサの製造工程を模式的に示す図である。
【
図6C】第1実施形態に係る電流センサの製造工程を模式的に示す図である。
【
図6D】第1実施形態に係る電流センサの製造工程を模式的に示す図である。
【
図7】第4実施形態に係る電流センサの製造方法の手順を示すフローチャートである。
【
図8A】第4実施形態に係る電流センサの製造工程を模式的に示す図である。
【
図8B】第4実施形態に係る電流センサの製造工程を模式的に示す図である。
【
図8C】第4実施形態に係る電流センサの製造工程を模式的に示す図である。
【
図8D】第4実施形態に係る電流センサの製造工程を模式的に示す図である。
【
図9】第1実施形態の変形例に係る電流センサの導体周辺の天井面側から見た模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
電流センサは、計測対象の計測電流が流れる1次導体と、計測電流に起因して発生する磁界を検出する磁電変換素子と、磁電変換素子の信号を増幅して外部に出力する信号処理ICとを備え、1次導体、磁電変換素子、及び信号処理ICをモールド樹脂で封止することで1つの半導体パッケージとして提供される。
【0022】
例えば、特許文献1には、U字形状の1次導体と、1次導体の開口部に配置される磁電変換素子と、信号処理ICとを備える電流センサが開示されている。磁電変換素子を支持する絶縁部材は、1次導体とは接触せずに、信号処理ICを支持する支持部の底面に接触するように配置されている。
【0023】
また、特許文献2には、同様にU字形状の1次導体と、1次導体の開口部に配置される磁電変換素子と、信号処理ICとを備える電流センサが開示されている。磁電変換素子を支持する絶縁部材は、1次導体の裏面に接触するように配置されている。
【0024】
特許文献1及び特許文献2に記載の電流センサでは、磁電変換素子を支持する絶縁部材が絶縁テープ、または絶縁シートで構成されている。しかしながら、絶縁部材は、剛性が低いため、組立工程における樹脂の封止時に、絶縁部材が変形してしまう可能性がある。絶縁部材が変形すると、1次導体の開口部に設けた磁電変換素子の位置が変わってしまい、磁電変換素子により計測される計測電流の感度が個体間でばらつきが生じて、電流センサの品質を損なう可能性がある。
【0025】
また、特許文献1及び特許文献2に記載されたような電流センサに用いられる絶縁部材を製造する装置は、一般的な後工程で用いられる汎用装置ではなく、専用装置である。専用の装置は、絶縁部材を所望の大きさに切り取り、リードフレームに貼り付けることを行っている。よって、このような電流センサを製造するためには、専用装置への投資が必要であり、製造工程が煩雑になることから、コストが増大する懸念がある。
【0026】
そこで、各実施形態では、個体間で計測電流の計測の感度のばらつきを抑制可能であり、高い品質の小型で高感度の電流センサを提供する。加えて、各実施形態では、効率的な生産により、量産効果によるコストの低減を実現可能な小型で高感度の電流センサを提供する。
【0027】
図1A及び
図1Bは、第1実施形態に係る電流センサ10として機能する半導体パッケージの内部構成を示す。
図1Aは、第1実施形態に係る電流センサ10の天井面側(Z軸方向)から見た模式的な平面図である。
図1Bは、
図1Aに示す電流センサ10のA-A線断面図である。
【0028】
座標は、
図1Aにおいて、紙面に対して平行で下から上の向きをX軸方向、紙面に対して平行で右から左の向きをY軸方向、紙面に対して垂直で奥から手前の向きをZ軸方向と定義する。X軸、Y軸、及びZ軸の何れか1つの軸は、他の軸と直交する。
【0029】
電流センサ10は、信号処理IC100、磁電変換素子20、IC支持部112、素子支持部114、導体120、封止部130、一対のリード端子140、複数のリード端子150、及び吊りピン160を備える。磁電変換素子20は、ワイヤ30を介して信号処理IC100と電気的に接続される。信号処理IC100は、ワイヤ108を介して複数のリード端子150と電気的に接続される。ワイヤ30及びワイヤ108は、Au、Ag、Cu、またはAlを主成分とする導電体材料で形成されてよい。
【0030】
封止部130は、磁電変換素子20、導体120、信号処理IC100、IC支持部112、素子支持部114、ワイヤ30、及びワイヤ108をモールド樹脂で封止する。モールド樹脂は、例えば、シリカが添加されたエポキシ系の熱硬化型樹脂で構成され、トランファーモールドで半導体パッケージに成形されてよい。半導体パッケージに成形されるので、小型の電流センサ10を実現できる。
【0031】
磁電変換素子20が、導体120に流れる計測電流に応じて変化する特定方向の磁場を検出して、信号処理IC100が、磁界の大きさに応じた信号を増幅して、増幅された信号をリード端子150を介して出力する。磁電変換素子20は、GaAs基板上に形成された化合物半導体からなり、Z軸方向からの平面視で正方形または長方形で切り出されたチップでよい。磁電変換素子20は、シリコン、または化合物半導体で構成された基板と、基板上に設けられる磁電変換部とを有してよい。基板の厚さは、Z軸方向負側の面を研磨することで調整される。基板は、50μmから600μmの範囲の所望の厚さを有してよい。Z軸方向の磁界を検出することになるので、ホール素子が、図示の磁電変換素子として適当である。また、磁電変換素子20がXY平面上の何れか1軸方向の磁界を検出する位置に配置されるのであれば、例えば、X軸方向の磁界を検出する位置に配置されるのであれば、磁気抵抗素子、またはフラックスゲート素子が、磁電変換素子として適当である。
【0032】
第1実施形態では、電流センサ10が、1つの磁電変換素子20を備える例について説明する。しかし、電流センサ10は、2つ以上の磁電変換素子20を備えてもよい。平面視で複数の磁電変換素子20のそれぞれの少なくとも一部は、導体120に取り囲まれてよい。複数の磁電変換素子20のそれぞれの間には、導体120の一部が配置されてよい。
【0033】
信号処理IC100は、磁電変換素子20から出力される信号を処理する。信号処理IC100は、大規模集積回路(LSI)である。信号処理IC100は、平面視で、長方形、または正方形に切り出される。信号処理IC100は、Si基板上に形成されたSiモノリシック半導体からなる信号処理回路である。Si基板の代わりに化合物半導体基板でもよい。信号処理回路は、磁電変換素子20から出力される磁界の大きさに応じた出力信号を処理する。信号処理回路は、出力信号に基づいて導体120に流れる計測電流の電流値を示す出力信号をリード端子150を介して出力する。信号処理IC100の基板の厚さは、Z軸方向負側の面を研磨することで調整される。基板は、50μmから600μmの範囲の所望の厚さを有する。信号処理IC100の信号処理回路は、磁電変換素子の磁界の大きさに応じた微小な出力信号を入力して、少なくとも入力信号を増幅する回路が備えられる。
【0034】
導体120は、平面視でU字形状を成し、磁電変換素子20を平面視で少なくとも部分的に取り囲み、磁電変換素子20で計測される計測電流が流れる。導体120は、一対のリード端子140と電気的に接続される。導体120は、一対のリード端子140と物理的に一体的に構成されてよい。一対のリード端子140の一方のリード端子140から計測電流が入力され、導体120を介して他方のリード端子140から計測電流が出力される。一対のリード端子140及び導体120は、銅を主成分とする導電体材料のリードフレームにより一体的に構成されてよい。一対のリード端子140及び導体120には、磁電変換素子20で計測される計測電流が流れる。導体120は、封止部130の側面130a側に開口するスリット140aを有する。磁電変換素子20は、スリット140a内に配置される。導体120を流れる計測電流は、U字形状の一方の端から他方の端に沿って流れる。これにより、導体120の周囲に、計測電流の大きさと、導体120からの距離とに応じた磁界が生成される。磁電変換素子20が配置された位置では、Z軸方向成分が最も大きくなるような磁界が発生する。磁電変換素子20は、スリット140aの中に配置されるので、計測電流に対して高い感度が得られる。
【0035】
一対のリード端子140と、複数のリード端子150とは、信号処理IC100の厚さ方向(Z軸方向)と交差する方向(Y軸方向)において、信号処理IC100を介して対向して配置される。一対のリード端子140の一部は、封止部130の側面130aから露出する。複数のリード端子150の一部は、封止部130の側面130aとは反対側の側面130bから露出する。吊りピン160の一部は、封止部130の側面130a及び側面130bとは異なるX軸方向において対向する側面130c及び側面130dから露出する。吊りピン160は、製造段階で半導体パッケージをリードフレームに支持するための金属製部材である。吊りピン160は、組立工程を通して、成型されたモールド樹脂である封止部130を支えるためのリードである。
【0036】
複数のリード端子150は、信号処理IC100と電気的に接続される金属製部材であり、吊りピン160は、信号処理IC100と電気的に接続されない金属製部材である。吊りピン160は、複数のリード端子150とは別個である。複数のリード端子150、及び吊りピン160は、一対のリード端子140及び導体120とともに銅を主成分とする導電体材料のリードフレームにより構成されてよい。複数のリード端子150、及び吊りピン160は、導体120と隔離され、導体120と電気的に絶縁されている。
【0037】
一対のリード端子140、導体120、複数のリード端子150、及び吊りピン160は、銅を主成分とする導電体材料のリードフレームにより一体的に構成されてよい。一対のリード端子140は、1次側のリード端子であり、一対の第1リード端子の一例である。複数のリード端子150は、2次側のリード端子であり、複数の第2リード端子の一例である。リードフレームは、50μmから600μmの範囲の所望の厚さを有する。
【0038】
IC支持部112は、板状の部材であり、信号処理IC100を電流センサ10の天井面側の面112aで支持する。IC支持部112は、複数のリード端子150の少なくとも1つのリード端子と一体的に構成されてよい。第1実施形態では、IC支持部112は、複数のリード端子150のうちX軸方向において両端に位置するリード端子150a及びリード端子150bと一体的に構成されている。IC支持部112は、複数のリード端子150ともにリードフレームで構成されてよい。信号処理IC100は、接着層116を介してIC支持部112の面112aに接着されてよい。接着層116は、ダイアタッチフィルムでよい。
【0039】
IC支持部112は、導体120を取り囲むように、一対のリード端子140に向かって延びる延長部112c及び延長部112dを有する。延長部112cと延長部112dとの間に、導体120及び磁電変換素子20が配置される。延長部112cと延長部112dは、面112aに沿い、かつX軸方向において離間する第1部分と第2部分との一例である。
【0040】
素子支持部114は、金属板または半導体基板で構成され、磁電変換素子20、及びIC支持部112とを、電流センサ10の天井面側の面114aで支持する。素子支持部114は、導体120とは離間し、導体120とは電気的に絶縁されている。素子支持部114は、面114aで、IC支持部112の信号処理IC100を支持する面112aと反対側の面112bを支持する。素子支持部114は、磁電変換素子20の厚さ方向(Z軸方向)から見て導体120と重なっているが、物理的には導体120とは離間している。素子支持部114を構成する半導体基板は、シリコン基板、化合物半導体基板であってもよい。半導体基板の厚さは、100μmから700μmの範囲でよく、半導体基板のサイズにも依存するため、半導体基板は、割れない程度に適切な厚さでよい。素子支持部114を構成する金属板は、銅またはアルミなど、強磁性の特性をもたない金属が好ましい。金属板の厚さは、100μmから700μmの範囲で、剛性のとれる程度に適切に選択されてよい。
【0041】
素子支持部114は、接着層115を介して、IC支持部112に接着され、接着層115及び接着層21を介して磁電変換素子20に接着される。接着層115及び接着層21は、ダイアタッチフィルムでよい。
【0042】
接着層21、接着層115、及び接着層116は、平面視で、磁電変換素子20、素子支持部114、及び信号処理IC100と同じサイズでよい。接着層21、接着層115、及び接着層116は、非導電性の樹脂で構成されたダイアタッチフィルムでもよいし、導電性の樹脂で構成されたダイアタッチフィルムでもよい。非導電性の樹脂は、エポキシ系、または、シリコーン系の樹脂でよい。導電性の樹脂は、エポキシ系の樹脂にAgのフィラーを混合したものでよい。接着層21、接着層115、及び接着層116は、1μmから50μmの範囲の所望の厚さを有する。接着層21、接着層115、及び接着層116は、導電性、または非導電性で構成されたペーストでもよい。
【0043】
素子支持部114は、IC支持部112のZ軸方向負側の面112bの一部に接着して、磁電変換素子20の位置まで張り出すように配置される。導体120は、素子支持部114の厚さ方向(Z軸方向)において素子支持部114の面114aと導体120の面120aとが離間するように段差部140bを有する。導体120の素子支持部114に対向する部分が、封止部130の天井面側(Z軸方向正側)に突出するように段差部140bを有する。素子支持部114と導体120とが接触しないように、段差部140bは、半抜き加工により導体120に設けられてよい。段差部140bは、コイニング加工、またはハーフエッチング加工で導体120に設けられてもよい。
【0044】
第1実施形態では、素子支持部114は、IC支持部112の面112bに接着している。しかし、素子支持部114は、IC支持部112の延長部112c及び延長部112dのみに接着させ、磁電変換素子20の位置まで張り出すように配置されてもよい。
【0045】
導体120がリード端子140を介して接続する1次回路網の電圧は、信号処理IC100がリード端子150を介して接続する2次回路網の電圧より高いのが一般的である。よって、導体120は、ワイヤ30で電気的に接続する磁電変換素子20及び信号処理IC100と電気的に絶縁しなければならない。よって、導体120は、絶縁体であるモールド樹脂により覆われている。磁電変換素子20が搭載される素子支持部114は、導体120に設けられた段差部140bにより、導体120との間に距離dの間隙が設けられる。素子支持部114と導体120との間の間隙には、主にモールド樹脂が挿入される。一般的なモールド樹脂の絶縁破壊の電界強度は約20kV/mmであるので、間隙の距離dを50μm以上で設計すれば、間隙に挿入されるモールド樹脂は、約1kV以上の絶縁耐圧が得られることになる。1次回路網の電圧がAC240Vで、2次回路網の電圧がDC5Vであれば、十分な絶縁が確保できる。
【0046】
素子支持部114は、X軸方向の両端部分で延長部112c及び延長部112dを支持する。ここで、素子支持部114の両端部分の間の延長部112c及び延長部112dを支持していない部分の長手であるX軸方向における距離をL(m)、素子支持部114の短手であるY軸方向の幅をb(m)、素子支持部114の厚さをh(m)とする。素子支持部114の磁電変換素子20が配置される位置に、Z軸方向の負の方向に荷重P(N)を与えたとき、3点曲げ試験と同じようになり、素子支持部114に生じる応力σ(Pa)は、次式(1)で表される。
σ=(2/3)×(PL/bh2) ・・・(1)
【0047】
ここで、素子支持部114がシリコン基板であるとき、シリコン基板の破断応力σbは、実験的に約400MPaであることが分かっている。例えば、ホール素子をシリコン基板に100gf(≒100×10-4N)でダイボンドするとき、シリコン基板に生じる応力σは、破断応力よりも小さい範囲で行えば、シリコン基板が割れないで組立が実行できる。ここで、シリコン基板の短手の幅bが、最小となるホール素子の幅と同等の0.3mmとすると、Lとhとの間では、関係式(2)が得られる。
σ=(2/3)×((100×10-4)×L/(0.3×10-3)×h2)<(400×106)=σb
よって、L<8×106×h2 ・・・(2)
【0048】
関係式(2)が成立するLとhの範囲では、ホール素子の位置ずれを抑制して、安定した組立を実行できる。
【0049】
すなわち、素子支持部114の両端部分の間の延長部112c及び延長部112dを支持していない部分の長手であるX軸方向における距離をL、素子支持部114の厚さをhとした場合、
L<8×106×h2
【0050】
を満たすことが好ましい。
【0051】
第1実施形態に係る電流センサによれば、磁電変換素子20を支持する素子支持部材が、剛性のある半導体基板または金属板で構成されるので、素子支持部114が変形することを防止でき、磁電変換素子20の位置が安定する。これにより、磁電変換素子20により計測される計測電流の感度が個体間でばらつきが生じすることを抑制でき、電流センサ10の品質を向上させることができる。
【0052】
図2A及び
図2Bは、第2実施形態に係る電流センサ10として機能する半導体パッケージの内部構成を示す。
図2Aは、第2実施形態に係る電流センサ10の天井面側(Z軸方向)から見た模式的な平面図である。
図2Bは、
図2Aに示す電流センサ10のA-A線断面図である。
【0053】
第2実施形態に係る電流センサ10は、素子支持部114を支持する金属製部材が、リード端子150と一体的に構成された部材ではなく、吊りピン160である点で、第1実施形態に係る電流センサ10と異なる。
【0054】
第2実施形態に係る電流センサ10は、第1実施形態に係る電流センサ10と同様に、磁電変換素子20が、リード端子140に流れる電流により発生する特定方向の磁界を検出する。信号処理IC100が、電流の大きさに応じた信号を増幅して、増幅された信号が、リード端子150から出力される。
【0055】
第2実施形態において、2つの吊りピン160は、封止部130の側面130c及び側面130dから導体120に向かって、導体120に対向する位置まで延びる。吊りピン160は、導体120とは離間し、導体120と電気的に絶縁されている。導体120は、2つの吊りピン160の間に配置される。吊りピン160は、信号処理IC100と電気的に接続されない金属製部材である。吊りピン160は、複数のリード端子150とは別個である。
【0056】
ここで、素子支持部114の両端部分の間の2つの吊りピン160を支持していない部分の長手であるX軸方向における距離をL(m)、素子支持部114の短手であるY軸方向の幅をb(m)、素子支持部114の厚さをh(m)とする。素子支持部114の磁電変換素子20が配置される位置に、Z軸方向の負の方向に荷重P(N)を与えたとき、3点曲げ試験と同じようになり、素子支持部114に生じる応力σ(Pa)は、次式(1)で表される。
σ=(2/3)×(PL/bh2) ・・・(1)
【0057】
ここで、素子支持部114がシリコン基板であるとき、シリコン基板の破断応力σbは、実験的に約400MPaであることが分かっている。例えば、ホール素子をシリコン基板に100gf(≒100×10-4N)でダイボンドするとき、シリコン基板に生じる応力σは、破断応力よりも小さい範囲で行えば、シリコン基板が割れないで組立が実行できる。ここで、シリコン基板の短手の幅bが、最小となるホール素子の幅と同等の0.3mmmとすると、Lとhとの間では、関係式(2)が得られる。
σ=(2/3)×((100×10-4)×L/(0.3×10-3)×h2)<(400×106)=σb
よって、L<8×106×h2 ・・・(2)
【0058】
関係式(2)が成立するLとhの範囲では、ホール素子の位置ずれを抑制して、安定した組立を実行できる。
【0059】
すなわち、素子支持部114の両端部分の間の2つの吊りピン160を支持していない部分の長手であるX軸方向における距離をL、素子支持部114の厚さをhとした場合、L<8×106×h2を満たすことが好ましい。
【0060】
第2実施形態に係る電流センサ10によれば、磁電変換素子20を支持する素子支持部材が、剛性のある半導体基板または金属板で構成されるので、素子支持部114が変形することを防止でき、磁電変換素子20の位置が安定する。これにより、磁電変換素子20により計測される計測電流の感度が個体間でばらつきが生じすることを抑制でき、電流センサ10の品質を向上させることができる。
【0061】
図3A及び
図3Bは、第3実施形態に係る電流センサ10として機能する半導体パッケージの内部構成を示す。
図3Aは、第3実施形態に係る電流センサ10の天井面側(Z軸方向)から見た模式的な平面図である。
図3Bは、
図3Aに示す電流センサ10のA-A線断面図である。
【0062】
第3実施形態に係る電流センサ10は、素子支持部114により支持される金属製部材が、複数のリード端子150のうちIC支持部112と一体的に構成されるリード端子150以外のX軸方向において両端のリード端子150a及びリード端子150bである点で、素子支持部114により支持される金属製部材がIC支持部112と一体的に構成されるリード端子150である第1実施形態に係る電流センサ10と異なる。さらに、第3実施形態に係る電流センサ10は、素子支持部114により支持される金属製部材が、複数のリード端子150のうちIC支持部112と一体的に構成されるリード端子150以外のX軸方向において両端のリード端子150a及びリード端子150bである点で、素子支持部114により支持される金属製部材がリード端子150ではなく、吊りピン160である第2実施形態に係る電流センサ10とも異なる。
【0063】
リード端子150a及びリード端子150bの一部は、他のリード端子150と同様に、封止部130の側面130bから露出する。リード端子150a及びリード端子150bは、一対のリード端子140に向かって、導体120に対向する位置まで延びる。リード端子150a及びリード端子150bの封止部130に埋め込まれている端部150c及び端部150dの間に、導体120及び磁電変換素子20が配置されている。素子支持部114は、端部150c及び端部150dを支持する。
【0064】
ここで、素子支持部114の両端部分の間の端部150c及び端部150dを支持していない部分の長手であるX軸方向における距離をL(m)、素子支持部114の短手であるY軸方向の幅をb(m)、素子支持部114の厚さをh(m)とする。素子支持部114の磁電変換素子20が配置される位置に、Z軸方向の負の方向に荷重P(N)を与えたとき、3点曲げ試験と同じようになり、素子支持部114に生じる応力σ(Pa)は、次式(1)で表される。
σ=(2/3)×(PL/bh2) ・・・(1)
【0065】
ここで、素子支持部114がシリコン基板であるとき、シリコン基板の破断応力σbは、実験的に約400MPaであることが分かっている。例えば、ホール素子をシリコン基板に100gf(≒100×10-4N)でダイボンドするとき、シリコン基板に生じる応力σは、破断応力よりも小さい範囲で行えば、シリコン基板が割れないで組立が実行できる。ここで、シリコン基板の短手の幅bが、最小となるホール素子の幅と同等の0.3mmとすると、Lとhとの間では、関係式(2)が得られる。
σ=(2/3)×((100×10-4)×L/(0.3×10-3)×h2)<(400×106)=σb
よって、L<8×106×h2 ・・・(2)
【0066】
関係式(2)が成立するLとhの範囲では、ホール素子の位置ずれを抑制して、安定した組立を実行できる。
【0067】
すなわち、素子支持部114の両端部分の間の端部150c及び端部150dを支持していない部分の長手であるX軸方向における距離をL、素子支持部114の厚さをhとした場合、L<8×106×h2を満たすことが好ましい。
【0068】
第3実施形態に係る電流センサ10によれば、磁電変換素子20を支持する素子支持部材が、剛性のある半導体基板または金属板で構成されるので、素子支持部114が変形することを防止でき、磁電変換素子20の位置が安定する。これにより、磁電変換素子20により計測される計測電流の感度が個体間でばらつきが生じすることを抑制でき、電流センサ10の品質を向上させることができる。
【0069】
図4A及び
図4Bは、第4実施形態に係る電流センサ10として機能する半導体パッケージの内部構成を示す。
図4Aは、第4実施形態に係る電流センサ10の天井面側(Z軸方向)から見た模式的な平面図である。
図4Bは、
図4Aに示す電流センサ10のA-A線断面図である。
【0070】
第4実施形態に係る電流センサ10は、導体120と離間する金属製部材で構成される素子支持部114が、IC支持部112と、複数のリード端子150のうち両端に位置するリード端子150a及びリード端子150bと一体的に構成されている点で、第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態に係る電流センサ10と異なる。
【0071】
第4実施形態に係る電流センサ10によれば、2つのリードフレームが用いられて、形成される。一方のリードフレームは、IC支持部112、素子支持部114、リード端子150、及び吊りピン160で構成され、他方のリードフレームは、導体120、及びリード端子140で構成される。2つのリードフレームは、Cuを主成分とする導電体材料とするのが好ましいが、異なる導電性材料であってもよい。また、第4実施形態では、2つのリードフレームの厚さは、同じであるが、異なっていてもよい。
【0072】
第4実施形態において、素子支持部114は、IC支持部112が延伸して屈曲部113で曲げて設けられたリードであり、導電性材料の金属板で形成される。素子支持部114は、平面視で、導体120と重なるように配置され、断面視で、導体120とは素子支持部114の厚さ方向において、距離dの間隙で接触しないように配置される。すなわち、IC支持部112と素子支持部114とは、厚さ方向(Z軸方向)において素子支持部114の面114aと導体120の素子支持部114に対向する面120aとが離間するように屈曲する屈曲部113を介して連結している。
【0073】
また、素子支持部114は、導体120のU字形状の開口部であるスリット140aに配置される磁電変換素子20を支持する。屈曲部113は、導体120寄りのIC支持部112と素子支持部114との間の連結部分のリードに設けられる。しかし、屈曲部113は、例えば、リード端子150とIC支持部112との間のリードに設けられてよい。屈曲部113が、リード端子150からIC支持部112までの間のリードに設ければ、素子支持部114は、素子支持部114の厚さ方向と交差する方向から見て、段差なく、IC支持部112と一体的に構成されてよい。
【0074】
第4実施形態に係る電流センサ10によれば、磁電変換素子20を支持する素子支持部材が、剛性のある金属板で構成されるので、素子支持部114が変形することを防止でき、磁電変換素子20の位置が安定する。これにより、磁電変換素子20により計測される計測電流の感度が個体間でばらつきが生じすることを抑制でき、電流センサ10の品質を向上させることができる。
【0075】
図5は、第1実施形態に係る電流センサ10の製造方法の手順を示すフローチャートである。
図6A、
図6B、
図6C、及び
図6Dは、第1実施形態に係る電流センサ10の製造工程を模式的に示す図である。
【0076】
まず、半導体ウェハをダイジングして、素子支持部114となるシリコン基板を個片化する(S100)。後工程で用いられるバックグラインド装置で、シリコンウェハを所望の厚さとなるように研磨して、その後、後工程で用いられるダイシング装置で、所望のサイズとなるように切断することで、素子支持部114となるシリコン基板は、作成されてよい。ダイシング時に、ダイシングテープにダイアタッチフィルムが用いられると、素子支持部114及び接着層115であるダイアタッチフィルムは、同時に形成される。ここでは、シリコン基板を例に挙げているが、金属板であっても、ダイシング装置で、所望のサイズとなるように切断して作成することができる。
【0077】
さらに、信号処理IC100のウェハをダイジングして、信号処理IC100を個片化する(S102)。加えて、磁電変換素子20のウェハをダイジングして、磁電変換素子20を個片化する(S104)。信号処理IC100の個片化の工程において、バックグラインド装置で信号処理IC100のウェハを所望の厚さとなるように研磨して、その後、ダイシング装置で所望のサイズとなるように切断することで、信号処理IC100が、作成される。ダイシング時に、ダイシングテープにダイアタッチフィルムが用いられる場合、信号処理IC100及び接着層116であるダイアタッチフィルムは、同時に形成される。また、磁電変換素子20の個片化の工程において、バックグラインド装置で磁電変換素子20のウェハを所望の厚さとなるように研磨して、その後、ダイシング装置で所望のサイズとなるように切断することで、磁電変換素子20が、作成される。ダイシング時に、ダイシングテープにダイアタッチフィルムが用いられる場合、磁電変換素子20及び接着層21であるダイアタッチフィルムは、同時に形成される。
【0078】
図6Aに示すように、導体120、IC支持部112、リード端子140、リード端子150、及び吊りピン160を含むリードフレーム200は、導体120の部分に段差部140bが設けられて、形成される。ここで、リードフレーム200において、IC支持部112の信号処理IC100を支持する面112aを第1面とし、第1面とは反対側の面112bを第2面と定義する。素子支持部114であるシリコン基板は、リードフレーム200の第2面と同じ側の面のIC支持部112及び導体120の部分に、導体120と接触しないように、接着層115を介してダイボンディングして接着される(S106)。ダイボンド後は、接着層115は、素子支持部114に固着させるため、キュアすることが望ましい。
【0079】
次いで、
図6Bに示すように、信号処理IC100は、リードフレーム200のIC支持部112の第1面に、接着層116を介してダイボンディングして接着されるとともに、磁電変換素子20は、リードフレーム200の第1面と同じ側の面の素子支持部114の部分に、導体120により磁電変換素子20を平面視で少なくとも部分的に取り囲むように、接着層21を介してダイボンディングして接着される(S108)。ダイボンド後は、信号処理IC100の接着層116は、IC支持部112に固着させるため、キュアすることが望ましい。また、ダイボンド後は、磁電変換素子20の接着層21は、素子支持部114に固着させるため、キュアすることが望ましい。
【0080】
さらに、信号処理IC100と磁電変換素子20とは、ワイヤボンディングにより電気的に接続し、さらに信号処理IC100と2次側のリード端子150とは、ワイヤボンディングにより電気的に接続される(S110)。
【0081】
図6Cに示すように、樹脂封止の工程において、封止部130は、IC支持部112、リード端子140、リード端子150、及び吊りピン160を含むリードフレーム200と、磁電変換素子20と、素子支持部114と、信号処理IC100とをモールド樹脂で封止することで形成される(S112)。また、樹脂封止の工程において、素子支持部114と磁電変換素子20と信号処理IC100とが実装されて、ワイヤ30及びワイヤ108により電気的な接続されたリードフレーム200が、樹脂封止金型71と樹脂封止金型72との間に挟まれて、流し込まれたモールド樹脂により固められる。封止後は、モールド樹脂は、十分に硬化させるため、キュアすることが望ましい。
【0082】
図6Dに示すように、樹脂封止された電流センサは個片化されて(S114)、リード端子140及びリード端子150を所望の長さにカットし、所望の形状に成形すべくリードフォーミングが実施される(S116)。これにより、本件実施形態に係る電流センサ10が完成する。
【0083】
以上のとおり、電流センサ10の製造方法は、後工程の設備で全てを取り扱うことができるので、専用設備の投資が要らず、効率的に電流センサ10の生産ができて、量産効果によりコストを削減できる。
【0084】
図7は、第4実施形態に係る電流センサ10の製造方法の手順を示すフローチャートである。
図8A、
図8B、
図8C、及び
図8Dは、第4実施形態に係る電流センサ10の製造工程を模式的に示す図である。
【0085】
第4実施形態に係る電流センサ10は、リードフレーム200及びリードフレーム250が用いられて製造される。リードフレーム200は、複数のリード端子150、吊りピン160、IC支持部112、素子支持部114を構成する。リードフレーム250は、導体120、及びリード端子140を構成する。
【0086】
図8Aに示すように、リードフレーム200の両端部分のそれぞれのリードフレーム250と向き合う面に、凹部152が設けられる。また、リードフレーム250の両端部分のリードフレーム200と向き合う面に、凹部152に対応する凸部162が設けられる。リードフレーム200の凹部152及びリードフレーム250の凸部162は、半抜き加工、コイニング加工、エッチング加工により作製される。
【0087】
リードフレーム200は、屈曲部113で曲げられて、IC支持部112とリード端子150とが第1レベルの面に、素子支持部114と、凹部152が設けられるリードとが、第1レベルとリードフレーム200の厚み方向において高さが異なる第2レベルの面に設けられて、形成される。また、リードフレーム250は、導体120に相当する部分に段差部140bが設けられて、形成される。屈曲部113は、2つのリードフレーム200,250を接合したときに素子支持部114が導体120とは距離dの間隙で触れないように、第1レベルの面と第2レベルの面との間に段差ができるように屈曲させることで、形成される。屈曲部113は、曲げ加工または半抜き加工により作製される。ここで、リードフレーム200において、IC支持部112の信号処理IC100を支持する面112aを第1面とし、第1面とは反対側の面を第2面と定義する。
【0088】
リードフレーム接合の工程(S200)において、リードフレーム200の両端部分の凹部152とリードフレーム250の両端部分の凸部162とが篏合され、リードフレーム200とリードフレーム250とは、予め定められた位置関係で重なるように固定される。これにより、リードフレーム同士を接合することで、IC支持部112に加えて素子支持部114も含む1つのリードフレームを作成できる。
【0089】
リードフレームの接合と平行して、信号処理IC100のウェハをダイジングして、信号処理IC100を個片化する(S202)。加えて、磁電変換素子20のウェハをダイジングして、磁電変換素子20を個片化する(S204)。
【0090】
次いで、
図8Bに示すように、信号処理IC100は、リードフレーム200のIC支持部112の第1面に、接着層116を介してダイボンディングして接着されるとともに、磁電変換素子20は、リードフレーム200の第1面と同じ側の面の素子支持部114の部分に、導体120により磁電変換素子20を平面視で少なくとも部分的に取り囲むように、接着層21を介してダイボンディングして接着される(S206)。
【0091】
信号処理IC100及び磁電変換素子20のダイボンドの工程(S206)において、信号処理IC100は、ダイボンド装置を用いて、リードフレーム200の第1面の側のIC支持部112の部分に実装され、磁電変換素子20は、リードフレーム200の信号処理IC100がダイボンディングされる第1面の側の素子支持部114の部分に実装される。ダイボンド後は、信号処理IC100の接着層116は、IC支持部112に固着させるため、キュアすることが望ましい。また、ダイボンド後は、磁電変換素子20の接着層21は、素子支持部114に固着させるため、キュアすることが望ましい。
【0092】
さらに、信号処理IC100と磁電変換素子20とは、ワイヤボンディングにより電気的に接続し、さらに信号処理IC100と2次側のリード端子150とは、ワイヤボンディングにより電気的に接続される(S208)。
【0093】
図8Cに示すように、樹脂封止の工程において、封止部130は、IC支持部112、素子支持部114、リード端子140、リード端子150、及び吊りピン160を含むリードフレーム200,250と、磁電変換素子20と、信号処理IC100とをモールド樹脂で形成される(S210)。
【0094】
樹脂封止の工程において、素子支持部114と磁電変換素子20と信号処理IC100とが実装されて、ワイヤ30及びワイヤ108により電気的な接続されたリードフレーム200,250が、樹脂封止金型71と樹脂封止金型72との間に挟まれて、流し込まれたモールド樹脂により固められる。封止後は、モールド樹脂は、十分に硬化させるため、キュアすることが望ましい。
【0095】
図8Dに示すように、樹脂封止された電流センサは個片化されて(S212)、リード端子140及びリード端子150を所望の長さにカットし、所望の形状に成形すべくリードフォーミングが実施される(S214)。これにより、本件実施形態に係る電流センサ10が完成する。
【0096】
第4実施形態に係る電流センサ10の製造方法によれば、リードフレームメーカーで実施されるリードフレーム接合工程を除けば、後工程の設備で全てを取り扱うことができるので、専用設備の投資が要らず、効率的に生産ができて、量産効果によるコストが低減できる。
【0097】
図9は、第1実施形態の変形例であり、導体120の周辺のみを表示した電流センサ10として機能する半導体パッケージの内部構成を示す。
図9は、第1実施形態の変形例に係る電流センサ10の天井面側(Z軸方向)から見た模式的な平面図である。
【0098】
図9に示すように、第1実施形態の変形例の電流センサ10は、2つの磁電変換素子20及び40が導体120の近傍に配置されるように、形成される。磁電変換素子20及び40は、それぞれワイヤ30及びワイヤ50を介して信号処理IC100に電気的に接続される。磁電変換素子20は、スリット140a内にあり、素子支持部114の天井面側の面114aの上に配置される。また、磁電変換素子40は、導体120に対してX軸方向に磁電変換素子20とは対向する位置にあり、素子支持部114の天井面側の面114aの上に配置される。
【0099】
こうすることで、導体120を流れる計測電流が図示の矢印の向きに供給されると、磁電変換素子20の位置では、Z軸方向正側の向きに磁界が発生し、磁電変換素子40の位置では、Z軸方向負側の向きに磁界が発生する。磁電変換素子20及び40の出力電圧は、正及び負の電圧、又は負及び正の電圧が得られる。したがって、信号処理回路は、磁電変換素子20及び40の出力電圧の差分を演算すると、電流の大きさに応じた信号が得られる。一方で、外来の磁界、例えば、地磁気に対しては、磁電変換素子20及び40の出力電圧は、同じ正の電圧、又は同じ負の電圧が得られるので、差分を演算することで、相殺される。電流センサ10は、計測電流に対してより高い感度が得られて、尚且つ、外来ノイズに対して強い耐性が得られる。
【0100】
ここでは、第1実施形態の変形例として説明したが、導体120の近傍に2つの磁電変換素子20及び40を配置する例は、第2実施形態、第3実施形態、及び第4実施形態に適用されてもよい。
【0101】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0102】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0103】
10 電流センサ
20,40 磁電変換素子
30,50,108 ワイヤ
71,72 樹脂封止金型
100 信号処理IC
112 IC支持部
112c 延長部
112d 延長部
113 屈曲部
114 素子支持部
21,115,116 接着層
120 導体
130 封止部
140 リード端子
140a スリット
140b 段差部
150,150a,150b リード端子
152 凹部
162 凸部
160 吊りピン
200,250 リードフレーム