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▶ 旭化成エレクトロニクス株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054070
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
G01R15/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128201
(22)【出願日】2023-08-04
(62)【分割の表示】P 2022160191の分割
【原出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻本 真規
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA02
2G025AA04
2G025AA05
2G025AA17
2G025AB01
2G025AC01
(57)【要約】
【解決手段】電流センサは、少なくとも1つの磁電変換素子、導体、信号処理IC、IC支持部、及び素子支持部とが封止部で封止されることで構成される。電流センサは、封止部の外部に一部が露出し、導体と電気的に接続され、計測電流を前記導体に入力し、導体からの計測電流を出力する一対の第1リード端子と、封止部の外部に一部が露出し、導体と離間する金属製部材とを備える。素子支持部は、IC支持部が信号処理ICを支持する第1面と同じ側の面で、金属製部材をさらに支持する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの磁電変換素子と、
前記少なくとも1つの磁電変換素子を平面視で少なくとも部分的に取り囲み、前記少なくとも1つの磁電変換素子で計測される計測電流が流れる導体と、
前記少なくとも1つの磁電変換素子から出力される信号を処理する信号処理ICと、
前記信号処理ICを第1面で支持するIC支持部と、
前記少なくとも1つの磁電変換素子を前記第1面と同じ側の面で支持し、前記IC支持部及び前記導体と離間する絶縁性の素子支持部と、
前記少なくとも1つの磁電変換素子、前記導体、前記信号処理IC、前記IC支持部、及び前記素子支持部とを封止する封止部と、
前記封止部の第1側面から一部が露出し、前記導体と電気的に接続され、前記計測電流を前記導体に入力し、前記導体からの前記計測電流を出力する一対の第1リード端子と、
前記封止部の前記第1側面から一部が露出し、前記導体及び前記IC支持部と離間する金属製部材と、
前記封止部の前記一対の第1リード端子が露出する前記第1側面とは反対側の第2側面から露出する複数の第2リード端子と
を備え、
前記素子支持部は、前記第1面と同じ側の前記面で、前記金属製部材をさらに支持し、
前記IC支持部は、前記複数の第2リード端子のうちの少なくとも1つの第2リード端子と一体的に構成され、
前記金属製部材の少なくとも一部は、前記複数の第2リード端子のうちの前記少なくとも1つの第2リード端子とは異なる第2リード端子であり、
前記複数の第2リード端子のうち少なくとも一部は、前記信号処理ICと電気的に接続され、
前記金属製部材は、前記複数の第2リード端子のうちの前記少なくとも1つの第2リード端子とは異なる2つの第2リード端子である第1金属製部材及び第2金属製部材を含み、
前記導体及び前記IC支持部は、前記第1金属製部材と前記第2金属製部材との間に配置される、電流センサ。
【請求項2】
前記導体は、前記素子支持部の厚さ方向において前記素子支持部の前記第1面と前記導体の前記第1面と対向する面とが離間するように段差部を有する、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記素子支持部は、高分子テープである、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記一対の第1リード端子と、前記複数の第2リード端子とは、前記信号処理ICの厚さ方向と交差する第1方向において、前記信号処理ICを介して対向して配置され、
前記IC支持部は、平面視で、前記導体の前記第1方向における前記信号処理IC側の端部より、前記信号処理IC側のみにある、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項5】
前記金属製部材の前記素子支持部を支持する部分の幅は、0.4mm以上である、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項6】
前記導体と、前記第1金属製部材及び前記第2金属製部材のそれぞれとの間の平面視における距離は、前記第1金属製部材及び前記第2金属製部材の厚みの0.5倍以上である、請求項1に記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、磁電変換素子を有する電流センサが開示されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特許第6415148号
[特許文献2] 特許第6017182号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
磁電変換素子を有する電流センサにおいて、計測対象の計測電流が大きい場合でも電流センサに不具合が発生することをより確実に抑制することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様に係る電流センサは、少なくとも1つの磁電変換素子を備えてよい。前記電流センサは、前記少なくとも1つの磁電変換素子を平面視で少なくとも部分的に取り囲み、前記少なくとも1つの磁電変換素子で計測される計測電流が流れる導体を備えてよい。前記電流センサは、前記少なくとも1つの磁電変換素子から出力される信号を処理する信号処理ICを備えてよい。前記電流センサは、前記信号処理ICを第1面で支持するIC支持部を備えてよい。前記電流センサは、前記少なくとも1つの磁電変換素子を前記第1面と同じ側の面で支持し、前記IC支持部及び前記導体と離間する絶縁性の素子支持部を備えてよい。前記電流センサは、前記少なくとも1つの磁電変換素子、前記導体、前記信号処理IC、前記IC支持部、及び前記素子支持部とを封止する封止部を備えてよい。前記電流センサは、前記封止部の外部に一部が露出し、前記導体と電気的に接続され、前記計測電流を前記導体に入力し、前記導体からの前記計測電流を出力する一対の第1リード端子を備えてよい。前記電流センサは、前記封止部の外部に一部が露出し、前記導体及び前記IC支持部と離間する金属製部材を備えてよい。前記素子支持部は、前記第1面と同じ側の前記面で、前記金属製部材をさらに支持してよい。
【0005】
前記電流センサは、前記封止部の外部に一部が露出し、前記信号処理ICと電気的に接続される複数の第2リード端子をさらに備えてよい。前記金属製部材は、前記複数の第2リード端子とは別個であり、前記信号処理ICと電気的に接続されていなくてよい。
【0006】
いずれかの前記電流センサにおいて、前記IC支持部は、前記複数の第2リード端子の少なくとも1つのリード端子と一体的に構成されてよい。
【0007】
いずれかの前記電流センサにおいて、前記複数の第2リード端子は、前記封止部の前記一対の第1リード端子が露出する面とは反対側の面から露出してよい。前記金属製部材は、前記封止部の前記一対の第1リード端子及び前記複数の第2リード端子が露出する前記面のそれぞれとは異なる面から露出してよい。
【0008】
いずれかの前記電流センサにおいて、前記金属製部材は、第1金属製部材と第2金属製部材とを含んでよい。前記導体は、前記第1金属製部材と前記第2金属製部材との間に配置されてよい。
【0009】
いずれかの前記電流センサは、前記封止部の外部に一部が露出し、前記信号処理ICと電気的に接続される複数の第2リード端子をさらに備えてよい。前記IC支持部は、複数の第2リード端子のうちの少なくとも1つの第2リード端子と一体的に構成されてよい。前記金属製部材は、前記複数の第2リード端子のうちの前記少なくとも1つの第2リード端子とは異なる少なくとも1つの第2リード端子でよい。
【0010】
いずれかの前記電流センサにおいて、記複数の第2リード端子は、前記封止部の前記一対の第1リード端子が露出する面とは反対側の面から露出してよい。
【0011】
いずれかの前記電流センサにおいて、前記金属製部材は、前記複数の第2リード端子のうちの前記少なくとも1つの第2リード端子とは異なる2つの第2リード端子である第1金属製部材及び第2金属製部材を含んでよい。前記導体及び前記IC支持部は、前記第1金属製部材と前記第2金属製部材との間に配置されてよい。
【0012】
いずれかの前記電流センサにおいて、前記素子支持部は、高分子テープでよい。
【0013】
いずれかの前記電流センサにおいて、前記一対の第1リード端子と、前記複数の第2リード端子とは、前記信号処理ICの厚さ方向と交差する第1方向において、前記信号処理ICを介して対向して配置されてよい。前記IC支持部は、平面視で、前記導体の前記第1方向における前記信号処理IC側の端部より、前記信号処理IC側のみにあってよい。
【0014】
いずれかの前記電流センサにおいて、前記素子支持部のうち、前記金属製部材と接する部分の幅は、0.4mm以上でよい。
【0015】
いずれかの前記電流センサにおいて、前記導体と、前記第1金属製部材及び前記第2金属製部材のそれぞれとの間の平面視における距離は、前記第1金属製部材及び前記第2金属製部材の厚みの0.5倍以上でよい。
【0016】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】第1実施形態に係る電流センサの天井面側から見た模式的な平面図である。
図1B図1Aに示す電流センサのA-A線断面図である。
図1C】第1実施形態の変形例に係る電流センサの導体周辺の天井面側から見た模式的な平面図である。
図2A】第2実施形態に係る電流センサの天井面側から見た模式的な平面図である。
図2B図2Aに示す電流センサのA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
電流センサは、計測対象の計測電流が流れる1次導体と、計測電流に起因して発生する磁界を検出する磁電変換素子と、磁電変換素子の信号を増幅して外部に出力する信号処理ICとを備え、1次導体、磁電変換素子、及び信号処理ICを樹脂で封止することで1つの半導体パッケージとして提供される。
【0020】
例えば、特許文献1には、U字形状の1次導体と、1次導体の開口部に配置される磁電変換素子と、信号処理ICとを備える電流センサが開示されている。磁電変換素子を支持する絶縁部材は、1次導体とは接触せずに、信号処理ICを支持する支持部の底面に接触するように配置されている。
【0021】
また、特許文献2には、特許文献1と同様にU字形状の1次導体と、1次導体の開口部に配置される磁電変換素子と、信号処理ICとを備える電流センサが開示されている。磁電変換素子を支持する絶縁部材は、1次導体の裏面に接触するように配置されている。
【0022】
特許文献2に記載の電流センサにおいて、磁電変換素子を支持する絶縁部材は、1次導体に接着されている。そのため、絶縁部材と封止部との間に導電性の不純物が存在した場合、1次導体に印加された高電圧により、磁電変換素子に不具合が生じる可能性がある。
【0023】
特許文献1に記載の電流センサにおいて、支持部が信号処理ICを支持し、絶縁部材が支持部及び磁電変換素子を支持している。絶縁部材が1次導体に囲まれた磁電変換素子を安定的に支持するため、支持部は1次導体を囲む形状にならざるを得ない。一方、1次導体は大電流が流れるため、パッケージ内で最もよく発熱する。1次導体で発生する熱は、絶縁部材及び支持部に伝わり、さらに信号処理ICまで伝わる。そのため、特許文献1に記載の電流センサでは、特許文献2に記載の電流センサよりも不具合が発生する可能性は高くないものの、信号処理ICの温度が高くなり、長期にわたって電流を印加した場合、不具合が発生する可能性がある。
【0024】
そこで、第1実施形態及び第2実施形態では、計測対象の計測電流が大きい場合でも不具合が発生する可能性をより低減でき、実効的により長時間にわたって計測電流を流せる電流センサを提供する。
【0025】
図1A及び図1Bは、第1実施形態に係る電流センサ10として機能する半導体パッケージの内部構成を示す。図1Aは、第1実施形態に係る電流センサ10の天井面側(Z軸方向)から見た模式的な平面図である。図1Bは、図1Aに示す電流センサ10のA-A線断面図である。
【0026】
座標は、図1Aにおいて、紙面に対して平行で下から上の向きをX軸方向、紙面に対して平行で右から左の向きをY軸方向、紙面に対して垂直で奥から手前の向きをZ軸方向と定義する。X軸、Y軸、及びZ軸の何れか1つの軸は、他の軸と直交する。
【0027】
電流センサ10は、信号処理IC100、磁電変換素子20、IC支持部112、素子支持部114、導体120、封止部130、一対のリード端子140、複数のリード端子150、及び吊りピン160を備える。磁電変換素子20は、ワイヤ30を介して信号処理IC100と電気的に接続される。信号処理IC100は、ワイヤ108を介して複数のリード端子150と電気的に接続される。
【0028】
封止部130は、磁電変換素子20、導体120、信号処理IC100、IC支持部112、素子支持部114、ワイヤ30、及びワイヤ108を樹脂で封止する。樹脂は、例えば、シリカが添加されたエポキシ系の熱硬化型樹脂でよい。
【0029】
磁電変換素子20が、導体120に流れる計測電流に応じて変化する特定方向の磁場を検出して、信号処理IC100が、磁界の大きさに応じた信号を増幅して、増幅された信号をリード端子150を介して出力する。磁電変換素子20は、GaAs基板上に形成された化合物半導体からなり、Z軸方向からの平面視で正方形または長方形で切り出されたチップでよい。磁電変換素子20は、シリコン、または化合物半導体で構成された基板と、基板上に設けられる磁電変換部とを有してよい。基板の厚さは、Z軸方向負側の面を研磨することで調整される。基板は、50μmから600μmの範囲の所望の厚さを有してよい。Z軸方向の磁界を検出することになるので、ホール素子が、図示の磁電変換素子として適当である。また、磁電変換素子20がXY平面上の何れか1軸方向の磁界を検出する位置に配置されるのであれば、例えば、X軸方向の磁界を検出する位置に配置されるのであれば、磁気抵抗素子、またはフラックスゲート素子が、磁電変換素子として適当である。
【0030】
第1実施形態では、電流センサ10が、1つの磁電変換素子20を備える例について説明する。しかし、電流センサ10は、2つ以上の磁電変換素子20を備えてもよい。複数の磁電変換素子20のそれぞれの少なくとも一部は、平面視で導体120に取り囲まれてよい。複数の磁電変換素子20のそれぞれの間には、導体120の一部が配置されてよい。電流センサ10が2つの磁電変換素子20a及び20bを備える場合、導体120は、例えば、図1Cに示すように、側面130a側に開口するスリット140aを有し、側面130d側に開口するスリット140cを有する。磁電変換素子20aは、スリット140a内に配置され、磁電変換素子20bは、スリット140c内に配置されてよい。
【0031】
信号処理IC100は、磁電変換素子20から出力される信号を処理する。信号処理IC100は、大規模集積回路(LSI)である。信号処理IC100は、平面視で、長方形、または正方形に切り出される。信号処理IC100は、ワイヤ30を介して磁電変換素子20と電気的に接続される。さらに、信号処理IC100は、ワイヤ108を介して複数のリード端子150と電気的に接続される。ワイヤ30及びワイヤ108は、Au、Ag、Cu、またはAlを主成分とする導電体材料で形成されてよい。信号処理IC100は、Si基板上に形成されたSiモノリシック半導体からなる信号処理回路である。Si基板の代わりに化合物半導体基板でもよい。信号処理回路は、磁電変換素子20から出力される磁界の大きさに応じた出力信号を処理する。信号処理回路は、出力信号に基づいて導体120に流れる計測電流の電流値を示す出力信号をリード端子150を介して出力する。信号処理IC100は、平面視で、長方形、または正方形に切り出される。信号処理IC100の基板の厚さは、Z軸方向負側の面を研磨することで調整される。基板は、50μmから600μmの範囲の所望の厚さを有する。信号処理IC100の信号処理回路は、磁電変換素子の磁界の大きさに応じた微小な出力信号を入力して、少なくとも入力信号を増幅する回路が備えられる。
【0032】
導体120は、平面視でU字形状を成し、磁電変換素子20を平面視で少なくとも部分的に取り囲み、磁電変換素子20で計測される計測電流が流れる。導体120は、一対のリード端子140と電気的に接続される。導体120は、一対のリード端子140と物理的に一体的に構成されてよい。一対のリード端子140の一方のリード端子140から計測電流が入力され、導体120を介して他方のリード端子140から計測電流が出力される。一対のリード端子140及び導体120は、熱伝導率が100W/mKを超える銅を主成分とする導電体材料のリードフレームにより一体的に構成されてよい。一対のリード端子140及び導体120には、磁電変換素子20で計測される計測電流が流れる。導体120は、封止部130の側面130a側に開口するスリット140aを有する。磁電変換素子20は、スリット140a内に配置される。導体120を流れる計測電流は、U字形状の一方の端から他方の端に沿って流れる。これにより、導体120の周囲に、計測電流の大きさと、導体120からの距離とに応じた磁界が生成される。磁電変換素子20が配置された位置では、Z軸方向成分が最も大きくなるような磁界が発生する。磁電変換素子20は、スリット140aの中に配置されるので、計測電流に対して高い感度が得られる。
【0033】
一対のリード端子140と、複数のリード端子150とは、信号処理IC100の厚さ方向(Z軸方向)と交差する方向(Y軸方向)において、信号処理IC100を介して対向して配置される。一対のリード端子140の一部は、封止部130の側面130aから露出する。複数のリード端子150の一部は、封止部130の側面130aとは反対側の側面130bから露出する。吊りピン160の一部は、封止部130の側面130a及び側面130bとは異なるX軸方向において対向する側面130c及び側面130dから露出する。吊りピン160は、製造段階で半導体パッケージをリードフレームに支持するための金属製部材である。吊りピン160は、組立工程を通して、成型されたモールド樹脂である封止部130を支えるためのリードである。
【0034】
複数のリード端子150は、複数のリード端子150のうちの少なくとも2つのリード端子150が信号処理IC100と電気的に接続される金属製部材であり、吊りピン160は、信号処理IC100からの信号を外部に出力するために電気的に接続されることがない金属製部材である。吊りピン160は、複数の第2リード端子とは別個である。複数のリード端子150、及び吊りピン160は、一対のリード端子140及び導体120とともに熱伝導率が100W/mKを超える銅を主成分とする導電体材料のリードフレームにより構成されてよい。複数のリード端子150、及び吊りピン160は、導体120と隔離され、導体120と電気的に絶縁されている。
【0035】
2つの吊りピン160は、封止部130の側面130c及び側面130dから導体120に向かって、導体120に対向する位置まで延びる。吊りピン160は、導体120とは離間し、導体120と電気的に絶縁されている。導体120は、2つの吊りピン160の間に配置される。導体120が、2つの吊りピン160で取り囲まれる配置にしてもよい。2つの吊りピン160は、第1金属製部材及び第2金属製部材の一例である。
【0036】
2つの吊りピン160の露出部は、必ずしも封止部130の側面130c及び側面130dの中央に位置しなくても良い。導体120で発生する熱の放散の他、空間上の制約、またはリード端子140と磁電変換素子20との間の沿面距離等を鑑みて最適な位置で設計してよい。
【0037】
一対のリード端子140、導体120、複数のリード端子150、及び吊りピン160は、熱伝導率が100W/mKを超える銅を主成分とする導電体材料のリードフレームにより一体的に構成されてよい。一対のリード端子140は、一次側のリード端子であり、一対の第1リード端子の一例である。複数のリード端子150は、二次側のリード端子であり、複数の第2リード端子の一例である。リードフレームは、50μmから600μmの範囲の所望の厚さを有する。
【0038】
IC支持部112は、板状の部材であり、信号処理IC100を電流センサ10の天井面側の面112aで支持する。IC支持部112は、複数のリード端子150の少なくとも1つのリード端子と一体的に構成されてよい。第1実施形態では、IC支持部112は、複数のリード端子150のうちX軸方向において両端に位置するリード端子150a及びリード端子150bと一体的に構成されている。IC支持部112は、複数のリード端子150ともにリードフレームで構成されてよい。信号処理IC100は、接着層116を介してIC支持部112の面112aに接着されてよい。接着層116は、粘着テープでよい。粘着テープは、エポキシ系の樹脂で構成されるテープでよく、一般的な接着層を有するダイボンドテープ、もしくは接着層を有するダイジングテープを兼ねたダイボンドテープでよい。
【0039】
IC支持部112は、平面視で、導体120のY軸方向における信号処理IC100側の端部より、信号処理IC側のみにある。すなわち、IC支持部112は、導体120を取り囲むようには配置されていない。したがって、IC支持部112から信号処理IC100への熱の流入が少ない。さらにIC支持部112と導体120との間に樹脂を埋め込みやすくできる。
【0040】
素子支持部114は、IC支持部112の面112aと同じ側の面114aで磁電変換素子20を支持する。素子支持部114は、IC支持部112及び導体120と離間する。導体120は、素子支持部114の厚さ方向(Z軸方向)において素子支持部114の面114aと導体120の面120aとが離間するように段差部140bを有する。導体120の素子支持部114に対向する部分が、封止部130の天井面側(Z軸方向正側)に突出するように段差部140bを有する。素子支持部114と導体120とが接触しないように、段差部140bは、半抜き加工により導体120に設けられてよい。段差部140bは、コイニング加工で導体120に設けられてもよい。素子支持部114は、IC支持部112及び導体120と電気的に絶縁されている。素子支持部114は、面114aで、封止部130の側面130c及び側面130dからそれぞれ導体120に向かって延びる2つの吊りピン160をさらに支持する。素子支持部114は、絶縁性の部材で構成されてよい。これにより磁電変換素子20と導体120の沿面距離を延ばすことができる。素子支持部114は、ポリイミドテープなどの高分子テープでよい。
【0041】
磁電変換素子20は、接着層21を介して素子支持部114に接着されてよい。接着層21は、粘着テープでよい。粘着テープは、エポキシ系の樹脂で構成されるテープでよく、一般的な接着層を有するダイボンドテープ、もしくは接着層を有するダイジングテープを兼ねたダイボンドテープでよい。
【0042】
吊りピン160の素子支持部114を支持する部分の幅は、0.4mm以上でよい。吊りピン160と素子支持部114とが接着される接着領域のY軸方向における幅は、0.4mm以上でよい。
【0043】
また、導体120と、2つの吊りピン160のそれぞれとの間の平面視における距離k1は、2つの吊りピン160の厚さの0.5倍以上でよい。
【0044】
第1実施形態に係る電流センサ10によれば、特許文献1に記載の電流センサと同等の絶縁性を有しながら、IC支持部112が、高温になる導体120を取り囲む構成にする必要がないので、信号処理IC100の温度の上昇を抑制できる。また、導体120で発生した熱は、IC支持部112と物理的に離間している吊りピン160に伝わり、封止部130の外部に放出される。よって、信号処理IC100が、導体120で発生する熱の影響を受けにくくできる。
【0045】
吊りピン160は、IC支持部112と封止部130の側面130c及び130dの間に配置せず、導体120と封止部130の側面130c及び130dの間に配置してもよい。これにより、熱が吊りピン160から信号処理IC100へ流入せず、効率的に封止部130の外部へ排出できる。よって、信号処理IC100が、導体120で発生する熱の影響をより受けにくくできる。
【0046】
吊りピン160のうち少なくとも一部がIC支持部112と封止部130の側面130c及び130dの間に存在する場合、吊りピン160の幅k2は、IC支持部112と封止部130の側面130c及び130dの距離k3の10%以上にしてよい。これにより、吊りピン160を伝って熱を効率的に封止部130の外部へ排出できる。よって、信号処理IC100が、導体120で発生する熱の影響をより受けにくくできる。
【0047】
素子支持部114と吊りピン160とが接着する接着領域が小さすぎると、素子支持部114が変形しやすくなり、撓みまたは捻じれにより磁電変換素子20の位置がずれ、感度の個体間のばらつきが大きくなってしまう。また、接着領域が小さすぎると、製造工程で素子支持部114と吊りピン160とが剥がれやくすなり、磁電変換素子20の位置が変動したり、磁電変換素子20の姿勢が傾いたりする可能性がある。これにより、磁電変換素子20と信号処理IC100とを電気的に接続させるワイヤ30に応力がかかりやすくなる懸念がある。さらに、素子支持部114としてポリイミドテープなどの高分子テープを使うことが考えられるが、幅が狭すぎる加工が一般的に難しい。そのため、加工の実現性を考慮して、接着領域の少なくとも1辺は、0.4mm以上であることが好ましい。すなわち、素子支持部114のY軸方向における幅は、0.4mm以上であることが好ましい。
【0048】
また、上記のような放熱性の向上、及び素子支持部114の変形を抑える観点から、吊りピン160は、平面視においてできるだけ導体120に近づけることが望ましい。しかしながら、導体120と吊りピン160との間の平面視における距離がリードフレーム(導体120及び吊りピン160)の厚さの0.5倍よりも小さい距離になるように、1つのリードフレームで導体120及び吊りピン160を作成する加工は難しい。したがって、導体120と吊りピン160との間の平面視における距離は、リードフレームの厚さの0.5倍以上に設計することが好ましい。
【0049】
図2A及び図2Bは、第2実施形態に係る電流センサ10として機能する半導体パッケージの内部構成を示す。図2Aは、第2実施形態に係る電流センサ10の天井面側(Z軸方向)から見た模式的な平面図である。図2Bは、図2Aに示す電流センサ10のA-A線断面図である。
【0050】
第2実施形態に係る電流センサ10は、素子支持部114が支持される金属製部材が、吊りピン160ではなく、2次側のリード端子150である点で、第1実施形態に係る電流センサ10と異なる。
【0051】
素子支持部114は、複数のリード端子150のうち、X軸方向において例えば両端に位置するリード端子150a及びリード端子150bに支持される。複数のリード端子150のうち、リード端子150a及びリード端子150bのそれぞれより内側で、リード端子150a及びリード端子150bのそれぞれの隣に位置するリード端子150c及びリード端子150dが、IC支持部112と一体的に構成される。
【0052】
導体120及びIC支持部112は、リード端子150a及びリード端子150bの間に配置される。
【0053】
導体120とリード端子150a及びリード端子150bのそれぞれとの間の平面視における距離がリードフレーム(導体120及びリード端子150)の厚さの0.5倍よりも小さい距離になるように、1つのリードフレームで導体120及びリード端子150を作成する加工は難しい。したがって、導体120と、リード端子150a及びリード端子150bのそれぞれとの間の平面視における距離k1は、リード端子150a及びリード端子150bの厚さの0.5倍以上に設計することが好ましい。
【0054】
リード端子150a及びリード端子150bの幅k2は、IC支持部112と封止部130の側面130c及び130dの距離k3の10%以上にしてよい。これにより、リード端子150a及びリード端子150bを伝って熱を効率的に封止部130の外部へ排出できる。よって、信号処理IC100が、導体120で発生する熱の影響をより受けにくくできる。
【0055】
IC支持部112は、素子支持部114が支持されるリード端子150a及びリード端子150b以外のリード端子150であれば、他の少なくとも1つのリード端子150と一体的に構成されてもよい。
【0056】
第2実施形態に係る電流センサ10によれば、特許文献1に記載の電流センサと同等の絶縁性を有しながら、IC支持部112が、高温になる導体120を取り囲む構成にする必要がないので、信号処理IC100の温度の上昇を抑制できる。また、導体120で発生した熱は、IC支持部112と物理的に離間しているリード端子150a及びリード端子150bに伝わり、封止部130の外部に放出される。よって、信号処理IC100が、導体120で発生する熱の影響を受けにくくできる。
【0057】
素子支持部114とリード端子150a及びリード端子150bのそれぞれとが接着する接着領域が小さすぎると、素子支持部114が変形しやすくなり、撓みまたは捻じれにより磁電変換素子20の位置がずれ、感度の個体間のばらつきが大きくなってしまう。また、接着領域が小さすぎると、製造工程で素子支持部114とリード端子150a及びリード端子150bのそれぞれとが剥がれてしまう可能性が高まる。さらに、素子支持部114としてポリイミドテープなどの高分子テープを使うことが考えられるが、幅が狭すぎる加工が一般的に難しい。そのため、加工の実現性を考慮して、接着領域の少なくとも1辺は、0.4mm以上であることが好ましい。すなわち、素子支持部114のY軸方向における幅は、0.4mm以上であることが好ましい。
【0058】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0059】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0060】
10 電流センサ
20,20a,20b 磁電変換素子
21,116 接着層
30,108ワイヤ
100 信号処理IC
112 IC支持部
114 素子支持部
120 導体
130 封止部
140,150 リード端子
160 吊りピン
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B