(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054363
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ワーク加工装置及びワーク加工方法
(51)【国際特許分類】
B24B 27/06 20060101AFI20240409BHJP
B24B 45/00 20060101ALI20240409BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20240409BHJP
B23Q 3/157 20060101ALI20240409BHJP
B23Q 3/155 20060101ALI20240409BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20240409BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B24B27/06 M
B24B45/00 A
B24B49/10
B23Q3/157 A
B23Q3/155 F
B23Q17/24 Z
H01L21/78 F
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024022495
(22)【出願日】2024-02-19
(62)【分割の表示】P 2019209603の分割
【原出願日】2019-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(72)【発明者】
【氏名】金城 裕介
(57)【要約】
【課題】フランジの端面の修正に伴うスループットの低下を抑えることができるワーク加工装置及びワーク加工方法を提供する。
【解決手段】フランジの端面の状態を検出する検出手段と、フランジの端面に砥石を当接して端面を研削する端面修正手段と、スピンドルに対してブレードを着脱するブレード着脱手段と、を有するブレード自動交換装置と、ブレード自動交換装置を制御する制御手段と、を有し、制御手段は、端面修正手段による端面の研削に先立って検出手段を端面に対向させて端面の状態を検出し、検出手段による端面の状態の検出直後に検出手段の検出結果に基づいて端面に端面修正手段又はブレード着脱手段を対向させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドルの先端に設けられたフランジの端面にブレードを支持し、前記スピンドルにより前記ブレードを回転させてワークに当接させることにより前記ワークを切削加工するワーク加工装置において、
前記フランジの前記端面の状態を検出する検出手段と、前記フランジの前記端面に砥石を当接して前記端面を研削する端面修正手段と、前記スピンドルに対して前記ブレードを着脱するブレード着脱手段と、を有するブレード自動交換装置と、
前記ブレード自動交換装置を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記端面修正手段による前記端面の研削に先立って前記検出手段を前記端面に対向させて前記端面の状態を検出し、前記検出手段による前記端面の状態の検出直後に前記検出手段の検出結果に基づいて前記端面に前記端面修正手段又は前記ブレード着脱手段を対向させる、ワーク加工装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記端面修正手段を前記端面に対向させて前記端面の研削した直後に前記検出手段を前記端面に対向させて前記端面の状態を再検出できる、
請求項1に記載のワーク加工装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記スピンドルの軸線と前記端面とのなす角度、及び前記端面に発生した疵の状態のうち少なくとも1つの前記端面の状態を検出し、
前記制御手段は、前記検出手段によって検出された前記端面の状態に基づいて前記端面修正手段を制御する、
請求項1又は2に記載のワーク加工装置。
【請求項4】
前記検出手段が前記端面の状態として前記角度を検出する場合には、前記制御手段は、前記砥石によって前記角度が直角となるように前記端面修正手段を制御する、
請求項3に記載のワーク加工装置。
【請求項5】
前記検出手段が前記端面の状態として前記疵の状態を検出する場合には、前記制御手段は、前記砥石によって前記疵を除去するように前記端面修正手段を制御する、
請求項3に記載のワーク加工装置。
【請求項6】
スピンドルの先端に設けられたフランジの端面にブレードを支持し、前記スピンドルにより前記ブレードを回転させてワークに当接させることにより前記ワークを切削加工するワーク加工装置において、前記フランジの前記端面の状態を検出する検出手段と、前記フランジの前記端面に砥石を当接して前記端面を研削する端面修正手段と、前記スピンドルに対して前記ブレードを着脱するブレード着脱手段と、を有するブレード自動交換装置と、前記ブレード自動交換装置を制御する制御手段と、を備えるワーク加工装置に適用されるワーク加工方法であって、
前記端面修正手段による前記端面の研削に先立って前記検出手段を前記端面に対向させて前記端面の状態を検出し、
前記検出手段による前記端面の状態の検出直後に前記検出手段の検出結果に基づいて前記端面に前記端面修正手段又は前記ブレード着脱手段を対向させる、ワーク加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワーク加工装置に係り、特にスピンドルによってブレードを回転させて半導体ウェーハ等のワークを切削加工するワーク加工装置及びワーク加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェーハ等のワークをブレードによって切削加工する装置としてダイシング装置(例えば、特許文献1参照)が知られている。このダイシング装置は、スピンドルの先端に設けられたフランジの端面にブレードを支持し、スピンドルによりブレードを回転させてワークに当接させることによりワークを切削加工する。
【0003】
ダイシング装置では、ブレードはフランジの端面に接触した状態でワークの切削が行われるため、ブレードに接触するフランジの端面が平坦ではない場合、及びスピンドルの軸線とフランジの端面とのなす角度が直角ではない場合には、ブレードの回転時にブレードがばたついて精密な加工ができなくなるという問題がある。
【0004】
そこで、特許文献2には、フランジの端面を研削砥石によって研削することにより端面修正を行う切削装置が開示されている。この切削装置は、フランジと研削砥石とのY方向の相対的移動によるフランジの端面と研削砥石との接触を検出する検出部と、フランジの端面と研削砥石との少なくともX方向及びZ方向の位置関係を調整した後に、フランジの端面と研削砥石とを互いにY方向に接近させてフランジの端面と研削砥石とが接触したことを検出部が検出することによってY方向の端面修正開始位置を決定する制御部と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-22936号公報
【特許文献2】特開2011-224666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に開示された切削装置では、フランジの端面の状態によっては端面修正が不要であるにもかかわらず端面修正が行われてしまう場合があるので、その場合にはワーク加工装置のスループットを低下させる原因になるという問題がある。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みて成されたものであり、フランジの端面の修正に伴うスループットの低下を抑えることができるワーク加工装置及びワーク加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のワーク加工装置は、本発明の目的を達成するために、スピンドルの先端に設けられたフランジの端面にブレードを支持し、スピンドルによりブレードを回転させてワークに当接させることによりワークを切削加工するワーク加工装置において、フランジの端面の状態を検出する検出手段と、フランジの端面に砥石を当接して端面を研削する端面修正手段と、検出手段の検出結果に基づいて端面修正手段を制御する制御手段と、を有する。
【0009】
本発明のワーク加工装置の一形態は、検出手段は、スピンドルの軸線と端面とのなす角度、及び端面に発生した疵の状態のうち少なくとも1つの端面の状態を検出し、制御手段は、検出手段によって検出された端面の状態に基づいて端面修正手段を制御することが好ましい。
【0010】
本発明のワーク加工装置の一形態は、検出手段が端面の状態として角度を検出する場合には、制御手段は、砥石によって角度が直角となるように端面修正手段を制御することが好ましい。
【0011】
本発明のワーク加工装置の一形態は、検出手段が端面の状態として疵の状態を検出する場合には、制御手段は、砥石によって疵を除去するように端面修正手段を制御することが好ましい。
【0012】
本発明のワーク加工装置の一形態は、端面修正手段は、フランジの端面と砥石とを相対的に近づく方向及び離れる方向に移動させる移動手段と、移動手段による端面と砥石との相対移動によって端面と砥石とが接触したことを検知する検知手段と、を有し、制御手段は、検知手段が接触を検知したときの方向における位置を端面研削開始位置として移動手段を制御することが好ましい。
【0013】
本発明のワーク加工装置の一形態は、ブレードの摩耗量を検出する摩耗量検出手段と、スピンドルに対してブレードを着脱するブレード着脱手段と、を有し、制御手段は、摩耗量が許容値を超えた場合のみ、スピンドルに対してブレードを取り外すようにブレード着脱手段を制御し、ブレード着脱手段によるブレードの取り外しが実行された後に、検出手段を制御して端面の状態を検出し、検出結果が許容値を超えない場合には、端面の研削を行うことなくスピンドルに新たなブレードを装着するようにブレード着脱手段を制御し、検出結果が許容値を超えた場合には、端面の研削を行うように端面修正手段を制御することが好ましい。
【0014】
本発明のワーク加工装置の一形態は、制御手段は、端面修正手段による端面の研削が実行された後に、検出手段を制御して端面の状態を再検出し、再検出した検出結果が許容値を超えない場合には、スピンドルに新たなブレードを装着するようにブレード着脱手段を制御し、再検出した検出結果が許容値を超えた場合には、ブレードによる切削加工を停止するようにスピンドルを制御することが好ましい。
【0015】
本発明のワーク加工方法は、本発明の目的を達成するために、スピンドルの先端に設けられたフランジの端面にブレードを支持し、スピンドルによりブレードを回転させてワークに当接させることによりワークを切削加工するワーク加工方法において、ブレードの摩耗量を検出する摩耗量検出工程と、摩耗量が許容値を超えた場合のみ、スピンドルに対してブレードを取り外すブレード取り外し工程と、ブレードの取り外しが実行された後に、端面の状態を検出する端面状態検出工程と、端面状態検出工程での検出結果が許容値を超えない場合には、端面の研削を行うことなくスピンドルに新たなブレードを装着するブレード交換工程と、端面状態検出工程での検出結果が許容値を超えた場合には、端面の研削を行う端面修正工程と、を有する。
【0016】
本発明のワーク加工方法の一形態によれば、端面修正工程による端面の研削が実行された後に、端面の状態を再検出する端面状態再検出工程と、再検出した検出結果が許容値を超えた場合には、ブレードによる切削加工を停止する加工停止工程と、を有し、再検出した検出結果が許容値を超えない場合には、ブレード交換工程に移行することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フランジの端面の修正に伴うスループットの低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態のダイシング装置の外観を示した斜視図
【
図2】
図1に示したダイシング装置の加工部の構成を示した斜視図
【
図4】ブレード自動交換装置の全体構成を示す斜視図
【
図7】センサから出力される波形信号の一例を示した説明図
【
図10】制御部による端面修正制御に関する制御ブロック図
【
図11】制御部による端面修正制御に関するフローチャート
【
図12】端面修正装置の変形例の外観を示した斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に従って本発明に係るワーク加工装置及びワーク加工方法の実施形態について説明する。なお、実施形態では、ワーク加工装置の一例であるダイシング装置を例示して説明する。
【0020】
図1は、実施形態のダイシング装置10の外観を示した斜視図である。
【0021】
図1に示すように、ダイシング装置10は、半導体ウェーハ等のワークWを切削加工する加工部12と、加工済みのワークWをスピン洗浄する洗浄部14と、多数枚のワークWを収納したカセットが載置されるロードポート16と、ワークWを搬送する搬送装置18とを備える。
【0022】
なお、本明細書では、3軸方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)の三次元直交座標系を用いて説明する。
図1に示すX軸方向は水平方向であって、後述するXテーブル20(
図2参照)による切削送り方向を指している。また、Y軸方向は、水平方向のうちX軸方向に直交する方向であって、後述するブレード22のインデックス送り方向を指している。更に、Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向に直交する鉛直方向であって、ブレード22の切り込み送り方向を指している。
【0023】
【0024】
図2に示すように加工部12は、Xベース24上の一対のXガイドレール26、26にガイドされたXテーブル20であって、リニアモータ28によってX軸方向に移動されるXテーブル20を有する。このXテーブル20上には、Z軸を回転中心としてθ方向に回転する回転テーブル30が設けられ、この回転テーブル30上にワークテーブル32が設けられている。
【0025】
ワークテーブル32は、一例として円盤状に構成されており、その上面には水平方向に平坦な吸着面34を備え、この吸着面34にワークW(
図1参照)が真空吸着されて固定される。
【0026】
Xベース24の上方には、Xベース24を跨ぐようにYベース36が立設される。Yベース36の正面には、一対のYガイドレール38、38にガイドされた一対のYテーブル40、40であって、Y軸方向に移動自在な一対のYテーブル40、40が設けられる。このYテーブル40、40は、Yベース36に設けられた不図示のリニアモータによってY軸方向に移動される。
【0027】
Yテーブル40、40には、不図示のリニアモータによってZ軸方向に移動されるZテーブル44、44が設けられている。Zテーブル44、44には高周波モータ内蔵型のスピンドルモータ46、46がY軸方向において対向した状態で固定され、スピンドルモータ46、46のスピンドル48、48の先端に円盤状のブレード22、22がY軸方向において互いに対向した姿勢で固定されている。これらのスピンドルモータ46、46は、Zテーブル44、44を介してYテーブル40、40に支持されており、スピンドル48、48は、その軸線方向がYテーブル40、40の移動方向であるY軸方向に沿うように配置されている。なお、スピンドル48は、導電性を有する金属、例えばステンレスによって構成されている。
【0028】
ブレード22は、一例として、ダイヤモンド砥粒又はCBN(cubic boron nitride)砥粒をニッケルで電着した電着ブレードによって構成される。なお、電着ブレードの他、金属粉末を混入した樹脂で結合したメタルレジンボンドのブレードも使用することができる。ブレード22は、スピンドル48によって、例えば、6000rpm~80000rpmで高速回転される。
【0029】
このように構成された加工部12によれば、ワークテーブル32はリニアモータ28によってX軸方向に切削送りされ、且つ回転テーブル30によってθ方向に回転される。そして、ブレード22、22は、Y軸のリニアモータによってY軸方向にインデックス送りされ、且つZ軸のリニアモータによってZ軸方向に切り込み送りされる。このような加工部12の動作によってワークWが碁盤目状に切削加工される。
【0030】
また、加工部12には、
図1に示すように、ブレード22の摩耗量を検出する摩耗量検出装置200が設けられている。摩耗量検出装置200は、例えば、ブレード22の刃部を挟むようにして一方側に投光素子を配置し、他方側に受光素子を配置して受光素子で受光した光量に基づきブレード22の摩耗量を検出するものであり、例えば、実開平4-13250号公報又は特開2016-186958号公報に開示されているように公知な構成である。このため、ここでは、その構成についての詳細な説明は省略する。ブレード22は、定期的又は突発的な問題が発生した場合(例えば、ブレード22に許容値を超えた震動が発生した場合)にワークWに対する加工が中断されて摩耗量検出装置200に向けて移動され、摩耗量検出装置200によって摩耗量が検出される。なお、摩耗量検出装置200によって検出された摩耗量が許容値を超えた場合には、後述するブレード自動交換装置60(
図4参照)によって新たなブレード22に交換される。
【0031】
次に、スピンドル48にブレード22を取り付けるための取り付け構造の一例について説明する。
【0032】
図3は、ブレード22をスピンドル48へ取り付けるためのブレード取り付け構造を示した説明図である。
図3の700A部分はスピンドル48にブレード22を取り付ける前の状態を示した斜視図であり、
図3の700B部分はスピンドル48にブレード22を取り付けた後の状態を示した斜視図である。
【0033】
図3に示すように、スピンドル48の先端部にはフランジ50が取り付けられている。フランジ50は、ブレード22の直径よりも小さな円盤状の本体部50Aと、本体部50Aの中心部から軸線方向に突出されて外周面に雄ネジが形成された円柱状の挿嵌部50Bと、本体部50Aに形成されてブレード22を支持する円環状の端面50Cとを備えている。このフランジ50をスピンドル48に固定する場合には、挿嵌部50Bの軸線方向に穿設された貫通孔(図示せず)にフランジ固定用のボルト52を挿入し、このボルト52をスピンドル48の先端面から軸線方向に穿設された雌ネジ(図示せず)に螺合する。これによって、フランジ50がスピンドル48に固定される。なお、フランジ50においてもスピンドル48と同様に、導電性を有する金属、例えばステンレスによって構成されている。
【0034】
ブレード22は、フランジ50の挿嵌部50Bに挿嵌される貫通孔(図示せず)が形成された円筒状の胴体部22Aと、胴体部22Aのスピンドルモータ46側の面に一体的に形成されてフランジ50の本体部50Aよりも大径な薄板状の刃部22Bとで構成される。
【0035】
刃部22Bの両面は平坦状に形成され、両面のうちスピンドルモータ46側の面がフランジ50の端面50Cに面接して支持される。
【0036】
スピンドル48に固定されたフランジ50にブレード22を固定するには、挿嵌部50Bにブレード22の貫通孔を挿嵌させて、刃部22Bのスピンドルモータ46側の面を端面50Cに面接した後、挿嵌部50Bにナット54を螺合する。これにより、刃部22Bが端面50Cとナット54とによって挟持される。これによって、ブレード22がフランジ50に固定される。以下、ブレード22をフランジ50に自動で交換可能なブレード自動交換装置60について説明する。
【0037】
図4はブレード自動交換装置60の全体構成を示す斜視図、
図5はブレード自動交換装置60の上面図である。なお、本例で説明するブレード自動交換装置60は、例えば特開2019-34408号公報に開示されているように公知な構成であるため、ここではその主要部の構造について説明し、細部の構造については説明を省略する。このブレード自動交換装置60は、ブレード着脱手段の一例である。
【0038】
図4及び
図5に示すように、ブレード自動交換装置60は、ブレード着脱部62と、ブレード仮置き部64、64と、ブレード挿嵌部66とを備えている。そして、ブレード着脱部62及びブレード挿嵌部66は、移動部68によってスピンドル48に対向する位置にそれぞれ移動される。
【0039】
移動部68は、基台70と、基台70上に旋回自在に支持された円板状のテーブル72と、基台70に設置されてテーブル72を旋回させるモータ74とを備えている。また、テーブル72と、モータ74の回転軸(図示せず)に設けられたプーリ(図示せず)との間にはタイミングベルト76が掛け渡されており、モータ74によるテーブル72の旋回角度及び旋回タイミングが制御部78によって制御されている。ここで、制御部78は制御手段の一例である。本例の制御部78は、ブレード自動交換装置60の各駆動部材を含むダイシング装置10全体を統括制御する制御手段として機能する。制御部78については後述する。
【0040】
テーブル72上には、テーブル72の直径方向に沿って直動ガイドレール(不図示)が配設され、この直動ガイドレールの一方端側にブレード着脱部62が不図示のリニアベアリングを介してスライド自在に設けられている。
【0041】
ブレード着脱部62は、ナット54(
図3参照)を締め付けてブレード22をフランジ50に固定したり、ナット54を緩めてブレード22をフランジ50から取り外したりする機構部を備えている。なお、ブレード着脱部62の詳細な構造については、特開2019-34408号公報に開示されているように公知な構成であるため、ここでは説明を省略する。
【0042】
ブレード仮置き部64は、基台70上であって、テーブル72の近傍に間隔を開けて2台配置されている。ブレード仮置き部64は、ブレード22の貫通孔が挿通される円柱状の軸65が水平方向に設けられる。これにより、ブレード着脱部62によってフランジ50から取り外されたブレード22は、テーブル72の旋回動作によってブレード仮置き部64の軸65に対向された後、軸65に対するブレード着脱部62の進出動作によってブレード22の貫通孔が軸65に挿通される。これにより、ブレード22がブレード仮置き部64に仮置きされる。
【0043】
ブレード挿嵌部66は、既述した直動ガイドレールの他方端側に不図示のリニアベアリングを介してスライド自在に設けられている。
【0044】
ブレード挿嵌部66は、交換するブレード22を保持し、交換先のスピンドル48におけるフランジ50のブレード挿嵌部52Bにブレード22の貫通孔を挿嵌する機構部を備えている。なお、ブレード挿嵌部66の詳細な構造については、特開2019-34408号公報に開示されているように公知な構成であるため、ここでは説明を省略する。
【0045】
一方、テーブル72上の所定の位置には、フランジ50の端面50Cの状態を検出するセンサ300と、砥石402を有する端面修正装置400とが設けられている。詳細は後述するが、制御部78は、センサ300によって検出された端面50Cの状態に基づき、砥石402によって端面50Cを修正するように端面修正装置400を制御する。ここで、センサ300は検出手段の一例であり、端面修正装置400は端面修正手段の一例である。
【0046】
センサ300は、スピンドル48の軸線と端面50Cとのなす角度を検出することにより端面50Cの状態を検出するものであり、一例として、端面50Cに接触される接触子302を有する変位センサ304によって構成される。変位センサ304は、センサ300の本体306に保持されており、この本体306がリニアモータを有する進退機構部308によってテーブル72の直径方向にスライド移動される。上記の進退機構部308は制御部78によって駆動制御されている。
【0047】
センサ300によって上記の角度を検出する場合には、
図6に示すセンサ300とフランジ50との位置関係を示す斜視図のように、テーブル72(
図4参照)の旋回動作によってセンサ300の接触子302をフランジ50の端面50Cに対向させる。その後、端面50Cに対するセンサ300の進出動作によって接触子302を端面50Cに当接させる。この位置を測定開始基準位置として設定し、その後、スピンドル48によってフランジ50を回転させる。これにより、上記の角度が直角である場合には、センサ300から出力される振れ幅を示す信号は一定のものとなるが、上記の角度が直角でない場合には、上記の信号は360度の周期を有する波形信号となる。ここで、
図7は、センサ300から出力される波形信号Aの一例であり、縦軸は振れ幅を示し、横軸はフランジ50の回転角度を示している。上記の信号は、制御部78に出力され、制御部78は上記の信号に基づいて端面修正装置400を制御する。
【0048】
具体的に説明すると、制御部78は、波形信号Aの振れ幅Bが許容値を超えた場合に、端面修正装置400の砥石402による端面50Cの研削を実行させて上記の角度が直角となるように端面修正装置400を制御する。更に、振れ幅Bだけではなく、
図7に示すように、波形信号Aに微細な凹み疵に相当する信号Cが重畳されている場合には、信号Cに対しても許容値を設定し、その許容値を超えた場合には、砥石402によって凹み疵を除去するように端面修正装置400を制御してもよい。なお、実施形態のセンサ300は接触子302を有する接触型のセンサであるが、このセンサに代えてレーザ変位センサ、渦電流センサ又は超音波センサ等の非接触型のセンサを採用して上記の角度を検出してもよい。
【0049】
図8は、端面修正装置400の外観を示した斜視図である。
図8の800A部分は端面修正装置400の砥石402が端面50C(
図4参照)の研削位置に進出した状態を示した斜視図であり、
図8の800B部分は端面修正装置400の砥石402が端面50Cから退避した状態を示した斜視図である。
【0050】
図8に示すように、端面修正装置400の砥石402は、端面修正装置400の本体404に保持されており、この本体404がリニアモータを有する進退機構部406によってテーブル72の直径方向にスライド移動される。この進退機構部406は移動手段の一例であり、進退機構部406によってフランジ50の端面50Cと砥石402とが相対的に近づく方向及び離れる方向に移動される。この進退機構部406は制御部78によって駆動制御されている。
【0051】
また、端面修正装置400は、端面50Cに砥石402が接触したことを検知する検知部408(
図9参照)を有している。
【0052】
図9は、検知部408の構成を示したブロック図である。
【0053】
図9に示すように、検知部408は、フランジ50と、電流検出回路としてのコンパレータ410と、電源412と、砥石402とが直列に接続された回路部を有しており、この回路部は、フランジ50の端面50Cに砥石402が接触された場合に、閉回路が形成されるように構成されている。ここで、砥石402は、導電性を有するものであり、例えば、メタルボンド又は導通レジンボンドによって砥粒を固着した砥石、若しくは超硬チップ又は導電コーティングが施された砥石が採用されている。
【0054】
このように構成された検知部408によれば、端面50Cに砥石402が接触すると、コンパレータ410から制御部78に検出信号が出力される。この検出信号によって制御部78が、端面50Cに砥石402が接触したことを検知し、端面修正装置400の本体404の進出移動を停止させる。そして、制御部78は、このときの接触位置を本体404の移動方向(つまり、Y方向)における端面修正開始位置として記憶部に記憶させ、且つ端面修正開始位置に基づき進退機構部406による本体404の移動量を制御する。
【0055】
図10には、制御部78による端面修正制御に関する制御ブロック図が示されている。
【0056】
図10に示すように、制御部78は、CPU(Central Processing Unit)80を含む各種演算処理回路、プログラム格納用のROM(Read Only Memory)82、及び一時的にデータが格納されるRAM(Random access memory)84等の複数の回路によって構成されており、RAM84に記憶されたプログラムがCPU80によって実行されることにより、フランジ50の端面50Cを修正する端面修正動作が実現される。
【0057】
また、制御部78には、スピンドル48を含む加工部12の各駆動部と、摩耗量検出装置200と、ブレード自動交換装置60と、センサ300と、端面修正装置400とが接続されている。
【0058】
また、ROM82には、
図2に示した摩耗量検出装置200によって検出された摩耗量の許容値を示す許容摩耗量データと、
図6に示したセンサ300によって検出された波形信号A(
図7参照)の振れ幅Bの許容値を示す許容振れ幅データとが格納されている。上記の許容摩耗量データは、摩耗量検出装置200によって検出された摩耗量データと比較され、摩耗量データが許容摩耗量データを超えた場合に、CPU80はブレード自動交換装置60を制御してブレード22の交換動作を実行させる。また、上記の許容振れ幅データは、センサ300によって検出された振れ幅データと比較され、振れ幅データが許容振れ幅データを超えた場合に、CPU80は端面修正装置400を制御してフランジ50の端面50Cの端面修正動作を実行させる。
【0059】
次に、上記の如く構成されたダイシング装置10によるワーク加工方法の一例について、
図11に示すフローチャートに従って説明する。
【0060】
図11は、制御部78による端面修正制御に関するフローチャートである。
【0061】
まず、ダイシング装置10では、ブレード22によるワークWの切削工程が実行されており(ステップ500)、所定時間の経過後、又は設定された枚数分だけワークWを切削加工した後、摩耗量検出装置200によるブレード22の摩耗量検出工程を実行する(ステップ510)。摩耗量検出工程では、ブレード22は、加工位置から摩耗量検出装置200に向けて移動され、摩耗量検出装置200の所定の位置に位置決めされた後、摩耗量検出装置200によって摩耗量が検出される。
【0062】
摩耗量検出工程では、検出した摩耗量としての摩耗量データと、ROM82に記憶された許容摩耗量データとを比較して(ステップ520)、摩耗量データが許容摩耗量データを超えない場合(NO)には、継続使用可能なブレード22であると判断し、スピンドル48等の加工部12を制御してブレード22によるワークWの切削工程を継続する(ステップ530)。
【0063】
一方、摩耗量データが許容摩耗量データを超えた場合(YES)には、交換対象のブレード22であると判断し、スピンドル48に対してブレード22を取り外すブレード取り外し工程を実行する(ステップ540)。すなわち、ブレード自動交換装置60のテーブル72を旋回させてブレード着脱部62をブレード22に対向させた後、ブレード着脱部62によってナット54を緩めてブレード22をフランジ50から取り外す。
【0064】
次に、センサ300によるフランジ50の端面50Cの状態を検出する端面状態検出工程を実行する(ステップ550)。すなわち、テーブル72を旋回させてセンサ300の接触子302をフランジ50の端面50Cに対向させた後、センサ300を端面50Cに向けて進出させて接触子302を端面50Cに当接させる。この位置を測定開始基準位置として設定し、その後、スピンドル48によってフランジ50を回転させる。
【0065】
端面状態検出工程では、検出した振れ幅としての振れ幅データB(
図7参照)と、ROM82に記憶された許容振れ幅データとを比較して(S560)、振れ幅データBが許容振れ幅データを超えない場合(NO)には、端面50Cの状態が良好であると判断し、端面50Cの研削(端面修正)を行うことなく新たなブレード22をスピンドル48に装着するブレード交換工程を実行する(ステップ570)。すなわち、ブレード自動交換装置60のテーブル72を旋回させてブレード挿嵌部66をスピンドル48に対向させた後、ブレード挿嵌部66によって新たなブレード22をスピンドル48に装着する。この後、テーブル72を旋回させてブレード着脱部62をスピンドル48に対向させた後、ブレード着脱部62によってナット54を締め付けて新たなブレード22をフランジ50に固定する。この後、加工部12を制御してブレード22によるワークWの切削工程を実行する。
【0066】
一方、振れ幅データBが許容振れ幅データを超えた場合(YES)には、フランジ50の端面50Cの研削(端面修正)を行う端面修正工程を実行する(S580)。すなわち、ブレード自動交換装置60のテーブル72を旋回させて端面修正装置400の砥石402を端面50Cに対向させた後、進退機構部406によって端面修正装置400の本体404を端面50Cに向けて進出させる。そして、コンパレータ410(
図9参照)からの検知信号により端面50Cに砥石402が接触したことを検知すると、砥石402の進出移動を停止させる。そして、このときの接触位置を本体404の移動方向(つまり、Y方向)における端面修正開始位置としてRAM84(
図10参照)に記憶し、この端面修正開始位置に基づき進退機構部406による本体404の移動量を制御して端面50Cを研削する。具体的には、センサ300によって検出した振れ幅に基づいて、スピンドル48の軸線と端面50Cとのなす角度が直角となる本体404の移動量を算出し、その移動量分だけ本体404を所定の速度で移動させる。これにより、端面修正工程が終了する。
【0067】
この後、端面50Cの状態が確実に修正されたか否か確認するために、端面状態再検出工程を実行する(ステップ590)。この端面状態再検出工程は、ステップ550にて説明したセンサ300による端面状態検出工程と同一の手順で行うものなので、ここではその説明を省略する。
【0068】
端面状態再検出工程では、再検出した振れ幅としての振れ幅データBと、ROM82に記憶された許容振れ幅データとを比較して(S600)、振れ幅データBが許容振れ幅データを超えない場合(NO)には、端面50Cの状態が良好に修正されたと判断し、スピンドル48に新たなブレード22を装着するブレード交換工程を実行する(ステップ570)。
【0069】
一方、再検出した振れ幅としての振れ幅データBが許容振れ幅データを超えた場合(YES)には、端面修正工程を再度実行することなく、加工部12に別の要因による不具合が発生したと判断して加工を停止する加工停止工程を実行する(ステップ610)。以上が制御部78による端面修正制御の流れである。
【0070】
このように実施形態のダイシング装置10によれば、フランジ50の端面50Cの状態を検出するセンサ300と、端面50Cに砥石402を当接して端面50Cを研削する端面修正装置400と、センサ300の検出結果に基づいて端面修正装置400を制御する制御部78とを有しているので、端面50Cの修正が必要な場合のみ端面修正を行うことができる。
【0071】
したがって、実施形態のダイシング装置10によれば、フランジ50の端面50Cの修正を必要以上に行わないので、フランジ50の端面50Cの修正に伴うスループットの低下を抑えることができる。
【0072】
また、実施形態のダイシング装置10によれば、
図11に示したように、端面修正工程(ステップ580)の後に、端面状態再検出工程(ステップ590)と加工停止工程(ステップ610)とを有しているので、端面50Cの状態以外の要因によるブレード22の触れ問題を検出することができ、この場合には、加工を停止するのでワークWの加工不良を未然に阻止することができる。
【0073】
以上、本発明に係るワーク加工装置及びワーク加工方法につき、ダイシング装置10を例示して詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。以下、変形例について説明する。
【0074】
[第1変形例]
実施形態では、フランジ50の端面50Cと砥石402とを電気的に導通させることで端面修正開始位置を取得するようにしたが、この構成に代えて、例えば非接触型の変位センサ422(
図12参照)を採用して端面修正開始位置を取得するようにしもよい。
【0075】
図12は、端面修正装置420の変形例の構成を示した斜視図である。
図12の900A部分は端面修正装置420の砥石424が端面50C(
図3参照)の研削位置に進出した状態を示した斜視図であり、
図12の900B部分は端面修正装置420の砥石424が端面50Cから退避した状態を示した斜視図である。
【0076】
図12に示すように、端面修正装置420は、砥石424を保持する本体426と、本体426をテーブル72(
図4参照)の直径方向にスライドさせる進退機構部428とを有している。
【0077】
また、端面修正装置420は、進退機構部428による本体426の進出移動によって砥石424がフランジ50の端面50C(
図6参照)に接触したことを検知する検知部430を有している。この検知部430は、変位センサ422と測定板432とを有している。
【0078】
変位センサ422は、例えば、レーザ変位センサ、渦電流センサ又は超音波センサ等の非接触型のセンサであり、テーブル72(
図4参照)に固定されたマウント部434に、センサ面422Aを測定板432に向けて固定されている。また、測定板432は、本体426に固定され、本体426と一緒にスライドすることが可能となっている。
【0079】
このように構成された端面修正装置420によれば、進退機構部428によって本体426を端面50Cに向けて進出させて、端面50Cに砥石402が接触すると、その抵抗により本体426の移動が停止する。このときに変位センサ422によって検出されるセンサ面422Aと測定板432との間の距離Dを端面修正開始位置として取得することができる。
【0080】
なお、本発明における端面修正手段は、フランジの端面に砥石を当接して端面を研削する手段であればよいので、実施形態にて説明した端面修正装置400、420に限定されず、例えば手動で砥石をフランジの端面に当接して端面を研削するような端面修正手段を採用してもよい。
【0081】
[第2変形例]
実施形態では、端面50Cの状態として、スピンドル48の軸線と端面50Cとのなす角度を例示したが、端面50Cに発生した疵の状態を端面50Cの状態として検出し、検出した疵の状態(例えば疵の深さ)が許容値を超えている場合には、その端面50Cを砥石402で研削して修正するようにしてもよい。
【0082】
この場合、端面50Cの状態を検出する検出手段としては、例えば、AE(Acoustic Emission)波をモニタすることにより、端面50Cの疵の発生を検出可能な非接触型のAEセンサ、又は疵の深さを検出可能なレーザ変位センサを採用可能であり、また、これらのセンサを併用してもよい。
【符号の説明】
【0083】
10…ダイシング装置、12…加工部、14…洗浄部、16…ロードポート、18…搬送装置、20…Xテーブル、22…ブレード、24…Xベース、26…Xガイドレール、28…リニアモータ、30…回転テーブル、32…ワークテーブル、34…吸着面、36…Yベース、38…Yガイドレール、40…Yテーブル、44…Zテーブル、46…スピンドルモータ、48…スピンドル、50…フランジ、50C…端面、52…ボルト、54…ナット、60…ブレード自動交換装置、62…ブレード着脱部、64…ブレード仮置き部、65…軸、66…ブレード挿嵌部、68…移動部、70…基台、72…テーブル、74…モータ、76…タイミングベルト、78…制御部、80…CPU、82…ROM、84…RAM、200…摩耗量検出装置、300…センサ、302…接触子、304…変位センサ、306…本体、308…進退機構部、400…端面修正装置、402…砥石、404…本体、406…進退機構部、408…検知部、410…コンパレータ、412…電源、420…端面修正装置、422…変位センサ、424…砥石、426…本体、428…進退機構部、430…検知部、432…測定板、434…マウント部