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特開2024-54489虚像表示装置用光学系、虚像表示装置及びヘッドマウントディスプレイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054489
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】虚像表示装置用光学系、虚像表示装置及びヘッドマウントディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20240410BHJP
   G02B 17/08 20060101ALI20240410BHJP
   G02B 13/00 20060101ALI20240410BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20240410BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B17/08
G02B13/00
G02B13/18
H04N5/64 511A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160726
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(72)【発明者】
【氏名】須藤 芳文
(72)【発明者】
【氏名】筒井 猛壮
【テーマコード(参考)】
2H087
2H199
【Fターム(参考)】
2H087KA14
2H087LA28
2H087PA04
2H087PA07
2H087PA18
2H087PB05
2H087PB08
2H087QA02
2H087QA03
2H087QA06
2H087QA17
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA38
2H087QA41
2H087QA46
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA06
2H087RA37
2H087TA04
2H199CA04
2H199CA12
2H199CA25
2H199CA27
2H199CA29
2H199CA30
2H199CA32
2H199CA42
2H199CA45
2H199CA47
2H199CA53
2H199CA56
2H199CA57
2H199CA64
(57)【要約】
【課題】適切な虚像距離を設定するのに好適な虚像表示装置用光学系を提供すること。
【解決手段】虚像表示装置用光学系は、画像を表示する画像表示素子からの画像光を導光する導光部材と、第1の側から導光部材内を導光される第1方向の画像光を透過させ、かつ第1の側とは異なる第2の側から導光部材内を導光される第2方向の画像光を反射させることにより、画像光を導光部材の射出面から外部へ射出させる、部分反射部と、部分反射部を挟んで第1の側とは異なる第2の側に位置し、部分反射部を透過した第1方向の画像光を第2方向の画像光として部分反射部に向けて反射する反射部と、を含む。画像光が導光部材内を全反射することなく導光されるように、導光部材の寸法が導光部材内を導光される画像光の光束幅よりも大きくなっている。導光部材の射出面は、負のパワーを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する画像表示素子からの画像光を導光する導光部材と、
第1の側から前記導光部材内を導光される第1方向の前記画像光を透過させ、かつ前記第1の側とは異なる第2の側から前記導光部材内を導光される第2方向の前記画像光を反射させることにより、前記画像光を前記導光部材の射出面から外部へ射出させる、部分反射部と、
前記部分反射部を挟んで前記第1の側とは異なる前記第2の側に位置し、前記部分反射部を透過した前記第1方向の画像光を前記第2方向の画像光として前記部分反射部に向けて反射する反射部と、を含み、
前記画像光が前記導光部材内を全反射することなく導光されるように、前記導光部材の寸法が前記導光部材内を導光される画像光の光束幅よりも大きくなっており、
前記導光部材の射出面は、負のパワーを有する、
虚像表示装置用光学系。
【請求項2】
前記導光部材の射出面は、凹面状に形成された、
請求項1に記載の虚像表示装置用光学系。
【請求項3】
前記反射部は、前記第1方向の画像光をコリメート光に変換して、前記第2方向の画像光として、前記部分反射部に向けて反射する、
請求項1に記載の虚像表示装置用光学系。
【請求項4】
前記画像表示素子からの画像光を前記導光部材に伝搬する伝搬光学系を更に含み、
前記伝搬光学系は、前記画像光の中間像を前記導光部材内に形成する、
請求項1に記載の虚像表示装置用光学系。
【請求項5】
前記画像表示素子と前記部分反射部との間の光路上に配置された開口絞りを更に含む、
請求項4に記載の虚像表示装置用光学系。
【請求項6】
前記伝搬光学系は、
第3方向の倍率と前記第3方向と異なる第4方向の倍率とが異なるアナモフィック面を含み、
前記画像光の中間像を、前記第3方向に第1の倍率で且つ前記第4方向に第2の倍率で前記導光部材内に形成する、
請求項4に記載の虚像表示装置用光学系。
【請求項7】
前記射出面の近軸曲率半径(単位:mm)をRAとしたとき、次式
100<|RA|<2000
を満たす、
請求項1に記載の虚像表示装置用光学系。
【請求項8】
前記導光部材は、前記射出面と対向する面が正のパワーを有する、
請求項1に記載の虚像表示装置用光学系。
【請求項9】
前記射出面の近軸曲率半径(単位:mm)をRAとし、前記射出面と対向する面の近軸曲率半径(単位:mm)をRBとしたとき、次式
0.0<|RA/RB|<1.1
を満たす、
請求項8に記載の虚像表示装置用光学系。
【請求項10】
前記部分反射部は、前記虚像表示装置用光学系の光軸方向に間隔を空けて複数配置される、
請求項1に記載の虚像表示装置用光学系。
【請求項11】
前記画像表示素子と、
請求項1から請求項10の何れか一項に記載の虚像表示装置用光学系と、を備える、
虚像表示装置。
【請求項12】
請求項11に記載の虚像表示装置を備える、
ヘッドマウントディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虚像表示装置用光学系、虚像表示装置及びヘッドマウントディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
2次元の画像を拡大し、拡大された虚像を観察者に観察させるように表示する虚像表示装置が知られている。例えば特許文献1に、この種の虚像表示装置の具体的構成が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の虚像表示装置は、グラスデバイスであり、画像表示素子の各画素から発せられた光(以下「画像光」と記す。)をグラスレンズ内で導光し、導光された画像光を観察者に向けて射出し、射出された画像光を観察者が拡大された虚像として観察できるように構成される。
【0004】
特許文献1に記載の虚像表示装置には、適切な虚像距離を設定するための部材として、観察者の眼前に位置するグラスレンズ部分に凹面レンズが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第10,739,598号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、グラスレンズ内で画像光を全反射で導光させる際、全反射条件を充足するため、グラスレンズと凹面レンズとの間にクリアランスを設ける必要がある。凹面レンズをグラスレンズに直接貼り付けることができないため、凹面レンズを支持する部材が別途必要になるといったデメリットがある。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、適切な虚像距離を設定するのに好適な虚像表示装置用光学系、このような虚像表示装置用光学系を備える虚像表示装置及びヘッドマウントディスプレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る虚像表示装置用光学系は、画像を表示する画像表示素子からの画像光を導光する導光部材と、第1の側から導光部材内を導光される第1方向の画像光を透過させ、かつ第1の側とは異なる第2の側から導光部材内を導光される第2方向の画像光を反射させることにより、画像光を導光部材の射出面から外部へ射出させる、部分反射部と、部分反射部を挟んで第1の側とは異なる第2の側に位置し、部分反射部を透過した第1方向の画像光を第2方向の画像光として部分反射部に向けて反射する反射部と、を含む。画像光が導光部材内を全反射することなく導光されるように、導光部材の寸法が導光部材内を導光される画像光の光束幅よりも大きくなっている。導光部材の射出面は、負のパワーを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、適切な虚像距離を設定するのに好適な虚像表示装置用光学系、このような虚像表示装置用光学系を備える虚像表示装置及びヘッドマウントディスプレイが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る虚像表示装置を備えるヘッドマウントディスプレイの概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る虚像表示装置の基本的な構成を示す概略構成図である。
図3】本発明の一実施形態において、画像表示素子の画像光の中間像を導光部材内に形成した場合に導光部材を薄型化させられる理由を説明する図である。
図4A】開口絞りの結像位置を装用者の眼付近に配置することが広いアイボックスを確保することにつながる理由を説明するための図である。
図4B】開口絞りの結像位置を装用者の眼付近に配置することが広いアイボックスを確保することにつながる理由を説明するための図である。
図5】開口絞りの結像関係を示す模式図である。
図6】本発明の変形例1に係る虚像表示装置の概略構成図である。
図7】本発明の変形例2に係る虚像表示装置の概略構成図である。
図8A】本発明の数値実施例1に係る虚像表示装置の光学構成を示す図である。
図8B】本発明の数値実施例1に係る虚像表示装置の光学構成を示す図である。
図9A】本発明の数値実施例1において、画像光が虚像表示装置用光学系を通過したときの横収差図である。
図9B】本発明の数値実施例1において、画像光が虚像表示装置用光学系を通過したときの横収差図である。
図10】本発明の各数値実施例における横収差の測定位置を示す図である。
図11】本発明の数値実施例1において、無限遠物体からの光が導光部材を通過したときの横収差図である。
図12】本発明の数値実施例2に係る虚像表示装置の光学構成を示す図である。
図13】本発明の数値実施例2において、無限遠物体からの光が導光部材を通過したときの横収差図である。
図14A】本発明の数値実施例3に係る虚像表示装置の光学構成を示す図である。
図14B】本発明の数値実施例3に係る虚像表示装置の光学構成を示す図である。
図15A】本発明の数値実施例3において、画像光が虚像表示装置用光学系を通過したときの横収差図である。
図15B】本発明の数値実施例3において、画像光が虚像表示装置用光学系を通過したときの横収差図である。
図16】本発明の数値実施例3において、無限遠物体からの光が導光部材を通過したときの横収差図である。
図17】本発明の数値実施例4に係る虚像表示装置の光学構成を示す図である。
図18】本発明の数値実施例4において、無限遠物体からの光が導光部材を通過したときの横収差図である。
図19】本発明の数値実施例5に係る虚像表示装置の光学構成を示す図である。
図20A】本発明の数値実施例5において、画像光が虚像表示装置用光学系を通過したときの横収差図である。
図20B】本発明の数値実施例5において、画像光が虚像表示装置用光学系を通過したときの横収差図である。
図21】本発明の数値実施例5において、無限遠物体からの光が導光部材を通過したときの横収差図である。
図22】外科手術コンテキストにおいて頭部搭載型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)をミュートにする実施例を示す図である。
図23】外科手術コンテキストにおいて頭部搭載型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)をミュートにする実施例を示す図である。
図24】半透過ディスプレイの表示の一例を示す模式図である。
図25】調理用ヘッドマウントディスプレイの制御ユニットの動作の一例を示すフローチャートである。
図26】調理用ヘッドマウントディスプレイの制御ユニットの動作の一例を示すフローチャートである。
図27】調理用ヘッドマウントディスプレイの制御ユニットの動作の一例を示すフローチャートである。
図28】制御ユニットが具材で調理できる料理のリストの一例を示す模式図である。
図29】半透過ディスプレイの表示の一例を示す模式図である。
図30】半透過ディスプレイの表示の一例を示す模式図である。
図31】半透過ディスプレイの表示の一例を示す模式図である。
図32】半透過ディスプレイの表示の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る虚像表示装置用光学系、虚像表示装置及びヘッドマウントディスプレイについて図面を参照しながら説明する。以下の説明において、共通の又は対応する要素については、同一又は類似の符号を付して、重複する説明を適宜簡略又は省略する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る虚像表示装置を備えるヘッドマウントディスプレイ1の概略図である。本実施形態において、ヘッドマウントディスプレイ1は、例えばメガネ型ウェアラブル端末であるスマートグラスである。スマートグラスは、グラスデバイスやグラスディスプレイと呼ばれてもよい。
【0013】
ヘッドマウントディスプレイ1は、VR(Virtual Reality)グラス、AR(Augmented Reality)グラス、MR(Mixed Reality)グラス、XR(eXtended Reality)グラス等と呼称されるウェアラブル端末であってもよい。
【0014】
図1の例では、ヘッドマウントディスプレイ1は、両眼タイプのヘッドマウントディスプレイである。別の実施形態では、ヘッドマウントディスプレイ1は、左右一方の眼に対応する単眼タイプのヘッドマウントディスプレイであってもよい。
【0015】
図1に示されるように、ヘッドマウントディスプレイ1は、フレーム部2及びレンズ部3を備える。レンズ部3は、フレーム部2に嵌め込まれている。レンズ部3は、装用者の左右の眼に対応して一対備えられる。
【0016】
画像を表示する画像表示素子10がフレーム部2に内蔵されている。図1の例では、フレーム部2内の、レンズ部3の上側縁を覆う部分に、画像表示素子10が埋設されている。なお、画像表示素子10の設置位置は、図1に例示される位置に限らない。例えば、フレーム部2内の、レンズ部3の下側縁を覆う部分に、画像表示素子10が埋設されてもよい。
【0017】
画像表示素子10は、虚像として観察すべき画像を表示する素子であり、例示的には、OLED(Organic Light Emitting Diode)アレイ、LD(laser diode)アレイ、LED(Light Emitting Diode)アレイ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、DMD(Digital Micromirror Device)等である。
【0018】
以下の説明において、図1中、レンズ部3から装用者の眼に向かう第1の水平方向をz方向とし、z方向と直交する第2の水平方向をx方向とし、x方向とz方向の双方に直交する鉛直方向をy方向とする。互いに直交するx方向、y方向及びz方向は、左手系をなす。
【0019】
なお、方向の呼称は、構成要素の相対的な位置関係を説明するために便宜上用いる呼称であり、絶対的な方向を示すものではない。ヘッドマウントディスプレイ1を装用する装用者の姿勢によっては、例えば、z方向が必ずしも水平方向とは限らず、鉛直方向になることもある。
【0020】
画像表示素子10の各画素から発せられた光(すなわち画像光)は、画像表示素子10からy方向負側に射出されてレンズ部3内に入射され、レンズ部3内を導光されて、z方向正側に向かって(言い換えると、装用者の各眼に向かって)虚像表示のために射出される。すなわち、左右一対のレンズ部3は、それぞれ、対応する眼を含む領域にアイボックスを形成する。
【0021】
図2は、本発明の一実施形態に係る虚像表示装置1Aの基本的な構成を示す概略構成図である。図2の概略構成図は、画像表示素子10及びレンズ部3のyz断面(光軸AXを含む断面)を示す。
【0022】
本実施形態では、画像表示素子10の有効画素領域の中心から画素配列面に対して垂直方向に射出された光線が通る光路を「光軸AX」と定義する。光軸AXは、虚像表示装置1Aの光軸でもあり、また、虚像表示装置用光学系に含まれる各光学素子(例えば後述する導光部材30)の光軸でもある。
【0023】
虚像表示装置1Aは、一例として、ヘッドマウントディスプレイ1に搭載される。
【0024】
なお、本実施形態に係る虚像表示装置1Aは、ヘッドマウントディスプレイに限らず、他の形態の装置にも搭載可能である。一例として、ヘッドアップディスプレイにも搭載することができる。
【0025】
虚像表示装置1Aは、画像表示素子10と虚像表示装置用光学系を備える。図2の概略構成図において、虚像表示装置1Aは、画像表示素子10及び導光部材30を備える。なお、図2中、符号EYは装用者の左右一方の眼を示す。
【0026】
詳しくは後述するが、導光部材30内に中間像Iが形成される。中間像Iより前段に位置する光学部分(便宜上「前段光学部分」と記す。)は、第3方向の倍率と、第3方向と異なる第4方向の倍率と、が異なるアナモフィック面を含む。
【0027】
導光部材30は、画像表示素子10からの画像光を導光する光学部材である。虚像表示装置1Aをヘッドマウントディスプレイ1に搭載した場合、レンズ部3が導光部材30に相当する。
【0028】
導光部材30は、画像表示素子10からの画像光が入射される第1面310(入射面)を有する。図2の例では、第1面310は、前段光学部分に含まれるアナモフィック面でもある。
【0029】
前段光学部分に含まれるアナモフィックなパワーを有する第1面310より、導光部材30内に、画像光の中間像Iが第3方向(本実施形態では、z方向)に第1の倍率で且つ第4方向(本実施形態では、x方向)に第2の倍率で形成される。
【0030】
中間像Iの倍率の絶対値のうち、z方向(第3方向)における第1の倍率の絶対値が最小となり、x方向(第4方向)における第2の倍率の絶対値が最大となる。すなわち、導光部材30内に形成される中間像Iの大きさは、z方向に最も小さく、x方向に最も大きい。
【0031】
虚像表示装置1Aをヘッドマウントディスプレイ1に搭載した場合、レンズ部3をなす導光部材30は、z方向(第3方向)が厚さ方向となる。そのため、導光部材30は、第3方向に最も薄く形成される。本実施形態では、導光部材30内に形成される中間像Iの大きさをz方向で小さくすることにより、導光部材30を薄型化させることができる。
【0032】
導光部材30の内部に、第1面310より入射された画像光を反射光と透過光に分岐する部分反射部320が配置される。部分反射部320は、例えば、反射率、透過率がそれぞれ少なくとも5%以上の部分反射面で構成される。
【0033】
部分反射部320は、導光部材30内をy方向負側に導光される画像光(言い換えると、画像表示素子10が位置する第1の側から導光部材30内を導光される、第1方向の画像光)の一部を透過させ、かつ導光部材30内をy方向正側に導光される画像光(言い換えると、第1の側とは異なる第2の側から導光部材30内を導光される、第2方向の画像光)の一部をz方向正側に反射させることにより、画像光を、導光部材30の第3面340(射出面)から外部へ射出させる。
【0034】
部分反射部320は、例えば、導光部材30内に光軸AX方向に所定間隔を空けて複数配置される。
【0035】
複数の部分反射部320により画像光が複数の光束に分岐されることにより、薄型化された導光部材30を用いた場合にも、広いアイボックスを確保することができ、また、広い画角を確保することもできる。これにより、例えば装用者が虚像表示装置1Aに対して眼EYを動かした場合にも装用者に虚像を視認させやすくなり、また、広い画角をもつ虚像を装用者に視認させることができる。
【0036】
部分反射部320の配置間隔が狭すぎると、例えば、ある部分反射部320で反射された画像光が隣接する部分反射部320でも反射されることに起因する光量ムラ(虚像の輝度ムラ)が発生しやすくなる。また、多数の部分反射部320が装用者の視界に入りやすくなり、例えば装用者が外界の景色を見る際の妨げとなり得る。部分反射部320の配置間隔が広すぎると、例えば、アイボックス内の場所によって、虚像が欠けて見えることがある。そのため、部分反射部320の配置間隔は適正な値に設定することが望ましい。
【0037】
複数の部分反射部320が配置される間隔は等間隔であってもよく、また、等間隔でなくてもよい。
【0038】
部分反射部320は、画像光がy方向に所定の角度(例えば45度)をなす向きで配置される。部分反射部320は、例えばハーフミラーである。部分反射部320は、PBS(Polarizing Beam Splitter)であってもよい。
【0039】
部分反射部320は、例えば、平面に形成された部分反射面よりなる。部分反射部320を平面で形成することにより、例えば、製造容易性が向上する。
【0040】
非平面(曲率をもつ面等)の部分反射部320を複数有する場合を考える。この場合、適切に収差が補正された高画質の虚像を表示するためには、隣接する部分反射部320同士を異なる形状に形成する必要がある。更に、収差を適切に補正するためには、画像光の光路上における、部分反射部320よりも画像表示素子10側に位置する光学系と、それぞれの部分反射部320とで、収差補正を分担する必要がある。その結果、複数の部分反射部320は、それぞれが異なる自由曲面を有する形状とすることが必要となる。そのため、製造容易性を確保することが難しく、また、収差を補正することが難しくなる。
【0041】
図2の例では、導光部材30は、複数の光学ブロックよりなる。光学ブロックの傾斜面に、部分反射部320をなす部分反射面が成膜される。部分反射面が成膜された光学ブロックの傾斜面と他方の(部分反射面が成膜されていない)光学ブロックの傾斜面とを接着剤で接着することにより、導光部材30が完成する。
【0042】
部分反射面は、例えば金属材を蒸着することによって形成された蒸着膜よりなる。光学ブロック同士の密着性を向上させるため、光学ブロックの傾斜面にプライマー層を成膜したうえで部分反射面を成膜してもよい。
【0043】
導光部材30の各光学ブロックは、例えばプラスチック等の合成樹脂製の成形品である。これにより、導光部材30を軽量化させることができる。導光部材30を軽量化させることにより装用者の鼻にかかる荷重が低減するため、例えばヘッドマウントディスプレイ1を装用者が長時間装用したときの疲労感が軽減される。
【0044】
なお、導光部材30は、ガラス製であってもよい。
【0045】
後述する数値実施例1~5で示されるように、虚像表示装置1Aは、開口絞りを含む構成としてもよい。開口絞りは、画像表示素子10と部分反射部320との間(例えば画像表示素子10と導光部材30との間)の光路上に配置される。開口絞りによって、画像表示素子10からの画像光を、収差補正された画像光に実質的に絞ることができる。別の観点では、収差補正されない不要光を開口絞りでカットすることができる。そのため、例えばフレアの発生が抑えられ、画質の向上につながる。
【0046】
また、開口絞りの大きさを適切に設定することにより、十分な被写界深度を確保できるとともに解像度が向上する。
【0047】
また、開口絞りの形状は円形や矩形でもよく、光軸AXに対して垂直方向に複数配置してもよい。複数の小さい絞りを配置することにより、アイボックスを確保しつつ、被写界深度が広い虚像を表示することが可能になる。
【0048】
本実施形態では、画像光が導光部材30内を全反射することなく導光されるように、導光部材30の寸法(x方向及びz方向の寸法)が導光部材30内を導光される画像光の光束幅よりも大きくなっている。言い換えると、光軸AX方向に導光される画像光の光束幅を導光部材30内に収める光学構成となっている。
【0049】
光軸AX方向に導光される画像光の光束幅を導光部材30内に収めるため、虚像表示装置1Aは、中間像形成部20を含む構成となっている。中間像形成部20は、画像表示素子10からの画像光の中間像Iを導光部材30内に形成する。
【0050】
画像表示素子10からの画像光は、中間像形成部20を通過すると、光束幅が小さくなりながら導光部材30内をy方向負側(光軸AX方向)に導光されて、部分反射部320付近で中間像Iを結び、後述の反射部40に到達する。すなわち、画像光は、導光部材30内に収まる光束幅で導光部材30内を導光されるため、全反射無しで反射部40に到達する。
【0051】
図2の例では、導光部材30の第1面310が球面又は非球面で形成されており、画像表示素子10からの画像光の中間像Iを導光部材30内(例えば部分反射部320付近)に形成する中間像形成部20をなしている。第1面310が中間像形成部20を兼ねることにより、虚像表示装置1Aを小型化することができ、また、製造コストを抑えることができる。
【0052】
なお、後述する数値実施例1~5で示されるように、虚像表示装置1Aは、画像表示素子10と導光部材30との間の画像光の光路上に、画像表示素子10からの画像光を導光部材30に伝搬する伝搬光学系を含む構成としてもよい。この場合、例えば、この伝搬光学系が中間像形成部20をなす。伝搬光学系20に収差補正を負担させることができるため、例えば各種収差を良好に補正することができる。
【0053】
伝搬光学系20は、第3方向の倍率(第1の倍率)と第4方向の倍率(第2の倍率)とが異なるアナモフィック面を含む構成としてもよい。この場合、伝搬光学系20は、画像光の中間像Iを、第3方向に第1の倍率で且つ第4方向に第2の倍率で導光部材30内に形成する。
【0054】
虚像表示装置1Aは、反射部40を含む。反射部40は、部分反射部320を挟んで第1の側(図2の例では、画像表示素子10が位置する側)とは異なる第2の側(図2の例では、第1の側とは反対側)に位置する。虚像表示装置1Aをヘッドマウントディスプレイ1に搭載した場合、反射部40は、レンズ部3の上部に配置された画像表示素子10と対向するレンズ部3の下部に位置する。
【0055】
第1面310より入射されて部分反射部320を透過した画像光は、反射部40まで導光される。反射部40は、反射面を含む。この反射面により、反射部40まで導光された画像光が反射され、部分反射部320に向けてz方向正側に導光される。
【0056】
すなわち、反射部40は、部分反射部320を透過した第1方向の画像光(y方向負側に導光される画像光)を第2方向の画像光(y方向正側に導光される画像光)として部分反射部320に向けて反射する。
【0057】
導光部材30は、部分反射部320を挟んで第1面310と対向して位置する第2面330を有する。図2の例では、第2面330が反射面となっており、反射部40をなしている。第2面330が反射部40を兼ねることにより、虚像表示装置1Aを小型化することができ、また、製造コストを抑えることができる。
【0058】
中間像Iより後段に位置する光学部分(便宜上「後段光学部分」と記す。)は、第3方向の倍率と第4方向の倍率とが異なるアナモフィック面を含む。図2の例では、反射部40の一例である導光部材30の第2面330がアナモフィック面となっている。アナモフィック面である第2面330は、第1面310のアナモフィックなパワーで変化した画像表示素子10による画像のアスペクト比を元のアスペクト比に戻すパワーを有する。これにより、装用者は、適正なアスペクト比の虚像を視認することができる。
【0059】
反射部40(図2の例では、反射面である導光部材30の第2面330)は、正のパワーを有する。反射部40は、部分反射部320を介して入射された画像光をコリメート光に変換して、部分反射部320に向けて反射する。これにより、コリメート光が、導光部材30内をy方向正側に導光されて、部分反射部320にてz方向正側に反射され、導光部材30の第3面340から外部に射出されて、装用者の眼EYに到達する。
【0060】
なお、コリメート光には、略コリメート光(極僅かに発散する光又は極僅かに収束する光)が含まれてもよい。
【0061】
後述する数値実施例3~5で示されるように、虚像表示装置1Aは、導光部材30の後段の光路上に、導光部材30とは別の光学部材を含む構成としてもよい。この場合、例えば、この別の光学部材が上記反射面を含む反射部40をなす。
【0062】
この場合、反射部40は、部分反射部320を透過して導光部材30の第2面330より射出された画像光が入射され、入射された画像光をコリメート光に変換して、部分反射部320に向けて反射する。これにより、コリメート光が、第2面330より導光部材30内に入射されてy方向正側に導光されて、部分反射部320にてz方向正側に反射され、導光部材30の第3面340から外部に射出されて、装用者の眼EYに到達する。
【0063】
上記構成では、別の光学部材よりなる反射部40に収差補正を負担させることができるため、例えば各種収差を良好に補正することができる。
【0064】
このように、反射部40によって画像光をコリメート光に変換することで、画像光は、導光部材30内に収まる光束幅を維持したままy方向正側(光軸AX方向)に導光されて、部分反射部320に到達する。すなわち、画像光は、全反射無しで部分反射部320に到達する。
【0065】
本実施形態に係る虚像表示装置1Aでは、上述したように、画像表示素子10からの画像光の中間像Iが中間像形成部20により導光部材30内に形成される。これにより、導光部材30を薄型化すること(言い換えると、導光部材30のz方向のサイズを小さく抑えること)ができる。導光部材30の薄型化により、導光部材30を軽量化させることができる。導光部材30を軽量化させることにより装用者の鼻にかかる荷重が低減するため、例えばヘッドマウントディスプレイ1を装用者が長時間装用したときの疲労感が軽減される。
【0066】
また、画像表示素子10からの画像光の中間像Iを導光部材30内に形成することにより、虚像表示装置用光学系の瞳を装用者の眼EYの付近に配置することができる。そのため、広い画角を確保しつつ広いアイボックスを確保することもできる。
【0067】
画像表示素子10からの画像光の中間像Iを導光部材30内に形成した場合に導光部材30を薄型化させられる理由を、図3を用いて説明する。
【0068】
図3のA図は、中間像Iの倍率を1倍としたときの、本実施形態に係る虚像表示装置1Aの概略構成図である。A図中、fは、中間像形成部20の焦点距離を示し、fは、反射部40の焦点距離を示す。
【0069】
図3のB図は、本実施形態に係る虚像表示装置1Aに対して中間像形成部20を省いた虚像表示装置の概略構成図である。B図中、fは、反射部40の焦点距離を示す。
【0070】
図3のC図は、本実施形態に係る虚像表示装置1Aに対し、中間像形成部20に代えて、伝搬光学系20’を備えた虚像表示装置の概略構成図である。伝搬光学系20’は、画像表示素子10からの画像光をコリメート光に変換し、このコリメート光を導光部材30に向けて射出する。C図の反射部40は、入射する画像光はコリメートされているので屈折力をもたない反射面(平面)等で構成される。C図では、画角がA図と同じである。
【0071】
A図~C図の各図中、実線の光束は軸上の光束を示し、破線の光束は軸外の光束を示す。A図~C図の各図中、画像表示素子10の位置にある矢印で示される、画像表示素子10による表示画像の大きさは同じである。
【0072】
外界の景色や映像を装用者に見せるためには、画像表示素子10又は中間像形成部20と反射部40(より詳細には、反射面)との間隔を十分に確保する必要がある。A図において、中間像形成部20と反射部40との間隔は、図1のレンズ部3の縦方向(y方向)の幅に対応する。レンズ部3の縦方向の幅は、装用者が外界の景色等を見ることができるように広く設定することが必要なためである。同様にB図において、画像表示素子10と反射部40との間隔が、レンズ部3の縦方向の幅に対応するので、広く設定することが必要である。同様にC図において、伝搬光学系20’と反射部40との間隔がレンズ部3の縦方向の幅に対応するため、同様に広く設定することが必要である。
【0073】
B図において虚像距離を無限遠とする場合、薄型の導光部材30に軸上及び軸外の光束を導光させるため、焦点距離fを長くする必要がある。具体的には、B図の例における焦点距離fは、前述の画像表示素子10と反射部40との間隔に対応するように設定される。それにより、画像光は反射部40でコリメートされて、装用者が虚像を視認することができるようになる。
【0074】
上述の通り、焦点距離fは、レンズ部3の幅に制約される。そのため、焦点距離fを短くすることができない。そのため、B図の構成では、広い画角を確保することができない。B図の構成において、画角をA図と同等に確保するためには、画像表示素子10を大型化することが必要であり、虚像表示装置そのものが大型化してしまう。
【0075】
C図において虚像距離を無限遠とする場合、A図と同じ画角を確保する必要上(言い換えると、広い画角を形成するために必要な軸外の光束も導光部材30が導光できるように)、導光部材30の厚さを厚くする必要がある。具体的には、C図における伝搬光学系20’は、画像表示素子10からの軸外光線(破線)を導光するために、光軸AX方向に垂直な方向に大きく(図中の上下方向に広く)する必要がある。それに伴い、伝搬光学系20’から射出される画像光を導光部材30が取り込むためには、導光部材30の厚さ(図中の上下方向)を厚くすることが必要である。
【0076】
これに対し、本実施形態に係る虚像表示装置1Aでは、A図に示されるように、反射部40(より詳細には、反射面)により近い導光部材30内に中間像Iを形成することにより、反射部40の焦点距離fを短くすることができるので、広い画角を確保しつつも導光部材30を薄型化することができる。言い換えると、導光部材30を薄型化した場合でも、導光部材30は、広い画角を形成するために必要な軸外の光束も導光できる。
【0077】
特に、導光部材30の厚さ方向(z方向)に対しては、上述したように、中間像Iの大きさが最小となる。そのため、例えば、各方向に同じ倍率で中間像Iを形成する場合と比べて、導光部材30をより一層薄型化させることができる。
【0078】
このように、導光部材30の厚さ方向(z方向)に対しては、導光部材30の薄型化のため、中間像Iが小さくなるように倍率を小さくすることが望ましい。これに対し、導光部材30の幅方向(x方向)は厚さ方向と比べてもかなり大きい。そのため、導光部材30の幅方向(x方向)に対しては、中間像Iの倍率を小さくする必要性が低い。それよりも、導光部材30の幅方向については、中間像Iの倍率を、広いアイボックスを確保するのに適した倍率に設定することが望ましい。
【0079】
具体的には、画像表示素子10と部分反射部320との間の光路上に配置された開口絞りの結像位置が装用者の眼EY(例えば眼EYの光軸と交差する角膜上の位置)付近に配置されるように、中間像Iの第4方向(x方向)の倍率を設定する。なお、開口絞りの結像位置は、開口絞りが後段の光学系(開口絞りよりも後段の光学系)により結像する位置(すなわち光学系の射出瞳位置に対応する位置)である。
【0080】
図4A及び図4Bを用いて、開口絞りの結像位置Pを装用者の眼EY付近に配置することが、広いアイボックスを確保すること、につながる理由を説明する。簡潔な説明の都合上、軸上の光(図4A及び図4B中、実線)と軸外の光(図4A及び図4B中、点線)が眼EYに入る範囲をアイボックスとする。
【0081】
図4Aに示されるように、開口絞りの結像位置Pが装用者の眼EYから離れている場合、軸外の光が眼EYに殆ど入らない。そのため、例えば、装用者が目線を少し動かすだけで軸外の光が眼EYに入らなくなる。すなわち、図4Aの場合、アイボックスが狭いといえる。光束径を拡げることによってアイボックスを拡げることができるが、この場合、各種収差の補正が難しくなるという弊害が生じる。
【0082】
図4Bに示されるように、開口絞りの結像位置Pが装用者の眼EY付近に配置される場合、軸上の光だけでなく軸外の光も眼EYに多く入る。そのため、例えば、装用者が目線を少し動かしても、軸外の光が眼EYに入る。すなわち、図4Bのように、結像位置Pを眼EY付近に配置した場合、広いアイボックスが確保される。
【0083】
図5は、開口絞りの結像関係を示す模式図である。図5の例では、前段光学部分の直後に開口絞りが配置されているものとする。図5に示されるように、開口絞りの結像位置は、後段光学部分の焦点距離fに応じて決まる。例えば、焦点距離fが長いほど開口絞りの結像位置が後段光学部分から遠ざかり、また、焦点距離fが短いほど開口絞りの結像位置が後段光学部分に近付く。
【0084】
ここで、導光部材30の厚さ方向(z方向)を含むyz断面(図2参照)においては、広い画角を確保しつつ中間像Iの大きさ(z方向の大きさ)を小さく抑えるため、後段光学部分の焦点距離fが短く設定される。そのため、開口絞りの結像位置Pが、装用者の眼EYから離れた、後段光学部分寄りに配置される。この結果、アイボックスが狭くなる。
【0085】
そこで、本実施形態では、上述したように、部分反射部320が複数配置されている。複数の部分反射部320により画像光が複数の光束に分岐されることにより、y方向において広いアイボックスが確保される。
【0086】
一方、導光部材30の幅方向(x方向)を含むxy断面において、後段光学部分の焦点距離fを短くしすぎると、開口絞りの結像位置Pが後段光学部分寄りに配置されて(例えば図4A参照)アイボックスが狭くなることを避けるのが難しい。そこで、xy断面に関しては、開口絞りの結像位置Pを眼EY付近に配置するため、焦点距離fを、yz断面での焦点距離fよりも長く設定することが望ましい。
【0087】
そこで、本実施形態に係る虚像表示装置1Aは、前段光学部分に対してアナモフィックなパワーを与えることにより、第3方向(z方向)と第4方向(x方向)とで中間像Iの倍率が変わる構成となっている。例示的には、第3方向(z方向)に関しては、導光部材30の薄型化のため、中間像Iの倍率が第1の倍率(例えば各方向の倍率のなかで最小の倍率)となり、第4方向(x方向)に関しては、開口絞りの結像位置Pを眼EY付近に配置するための適切な焦点距離fを得るため、中間像Iの倍率が第2の倍率(例えば各方向の倍率のなかで最大の倍率)となっている。
【0088】
導光部材30の第3面340(射出面)には、部分反射部320にてz方向正側に反射されたコリメート光が入射される。第3面340は、負のパワーを有する。例示的には、第3面340は、凹面状に形成される。そのため、コリメート光は、導光部材30の屈折率及び第3面340の曲率に応じて発散した画像光となって、装用者の眼EYに到達する。画像光の発散度に応じて虚像距離(虚像が形成される面と眼EYとの距離)が変わる。
【0089】
すなわち、本実施形態によれば、第3面340の曲率を適宜設定することにより、例えば、虚像表示装置1Aの用途に応じた適切な虚像距離を設定することができる。
【0090】
虚像表示装置1Aの用途によって大きく異なるが、適切な虚像距離の例示として、20cm~2mが挙げられる。
【0091】
補足すると、従来のように、画像光を全反射で導光させる構成では、導光部材の全反射面の影響を考慮して虚像距離を設定する必要がある。そのため、適切な虚像距離を得るにあたり、導光部材30の全体を設計変更する必要がある。
【0092】
これに対し、本実施形態では、上述したように、画像光が導光部材30内を全反射することなく導光される。そのため、適切な虚像距離を得るにあたり、第3面340の曲率を変更するだけでよい。
【0093】
本実施形態では、導光部材30の第3面340自体に負のパワーを持たせている。そのため、凹面レンズのような別部材が不要である。虚像表示装置1Aは、このような別部材を備える構成と比べて、小型化及び軽量化に有利であるとともに、画像光が通過する光学面(言い換えると、ゴーストやフレアの要因となる要素)が少ない点で有利である。
【0094】
部分反射部320で画像光を反射する前段側で虚像距離を有限距離にすると、虚像距離を適切に変更することが難しく、例えば、複数の部分反射部320が並ぶ方向に画像が分身して(何重にも)見える。本実施形態の如く、第3面340の曲率だけで虚像距離を変更できる構成では、画像が何重にも見えるといった不具合の発生を防ぐことができ、適切な虚像距離を得ることができる。
【0095】
本実施形態に係る虚像表示装置1Aの具体的構成について更に説明する。
【0096】
適切な虚像距離を得るため、虚像表示装置1Aは、射出面の一例である第3面340の近軸曲率半径(単位:mm)をRAとしたとき、次式(1)を満たす構成としてもよい。
【0097】
式(1)
100<|RA|<2000
【0098】
絶対値|RA|が100以下になると、虚像距離が近くなりすぎる。絶対値|RA|が2000以上になると、虚像距離が遠くなりすぎる。
【0099】
より好ましくは、虚像表示装置1Aは、次式(2)を満たす構成としてもよい。
【0100】
式(2)
150<|RA|<1000
【0101】
射出面の一例である第3面340は、画質向上のため、非球面で形成されてもよい。
【0102】
導光部材30は、装用者の外界の見え方を適切にするため、第3面340と対向する対向面350が正のパワーを有してもよい。
【0103】
図6に、本発明の変形例1に係る虚像表示装置1Aの概略構成図を示す。変形例1に係る虚像表示装置1Aは、対向面350の形状以外、図2の虚像表示装置1Aと同じである。
【0104】
変形例1に係る虚像表示装置1Aにおいて、対向面350は正のパワーを有する。例示的には、図6に示されるように、対向面350は、平面でなく凸面状に形成される。
【0105】
上述したように、第3面340に負のパワーを持たせることにより、適切な虚像距離を設定することができる。但し、第3面340に負のパワーを持たせたことにより、導光部材30を通して見える外界の物体距離も変化してしまう。そこで、対向面350に正のパワーを持たせる。これにより、第3面340に負のパワーを持たせたことで変化した外界の物体距離が補正される。
【0106】
なお、変形例1に係る虚像表示装置1Aにおいても、画像光は、全反射することなく導光部材30内を導光される。そのため、図2の例と同様に、適切な虚像距離を得るにあたり、第3面340の曲率を変更するだけでよい。
【0107】
また、対向面350を凸面状に形成することにより、眼鏡により近いデザインとなる。
【0108】
図2図6の例では、画像表示素子10からの画像光は、レンズ部3の上側縁や下側縁に相当する部分から導光部材30内に入射されるが、本発明の構成はこれに限らない。
【0109】
図7に、本発明の変形例2に係る虚像表示装置1Aの概略構成図を示す。図7に示されるように、画像表示素子10からの画像光は、眼EY側から導光部材30内に入射される。
【0110】
具体的には、変形例2では、中間像形成部20の一例であるレンズ50が導光部材30の眼EY側の面に貼り付けられている。また、導光部材30内にはミラー60が埋設されている。レンズ50を介して導光部材30内に入射された画像光は、ミラー60によってy方向負側に折り曲げられて、導光部材30内をy方向負側に導光される。
【0111】
このように、虚像表示装置1Aの態様には自由度があり、各種の設計変更が可能である。
【0112】
第3面340に負のパワーを持たせたことで変化した外界の物体距離を適切に補正するため、虚像表示装置1Aは、対向面350の近軸曲率半径(単位:mm)をRBとしたとき、次式(3)を満たす構成としてもよい。
【0113】
式(3)
0.0<|RA/RB|<1.1
【0114】
絶対値|RA/RB|が1に近いほど、外界の物体距離がヘッドマウントディスプレイ1を装用しないときの物体距離に近い。絶対値|RA/RB|が0.0以下になると、第3面340の近軸曲率半径RAに対して対向面350の近軸曲率半径RBが大きくなりすぎて、外界の物体距離が近くなりすぎる。絶対値|RA/RB|が1.1以上になると、近軸曲率半径RAに対して近軸曲率半径RBが小さくなりすぎて、外界の物体距離が遠くなりすぎる。
【0115】
なお、近軸曲率半径RAに対して近軸曲率半径RBを大きくすることで、近視の装用者への矯正に適した度数(例えば処方度数)を得ることができる。乱視の装用者に適した性能を得るため、乱視軸に応じて、対向面350の近軸曲率半径RBが方向によって異なっていてもよい。
【0116】
対向面350は、画質向上のため、非球面で形成されてもよい。
【0117】
次に、虚像表示装置1Aの具体的な数値実施例1~5を示す。なお、以下の数値実施例1~5では、便宜上、光軸AX方向をz方向とし、光軸AX方向と直交する2方向をx方向、y方向とする。例えば、虚像表示装置1Aをヘッドマウントディスプレイ1に搭載した場合、x方向は、レンズ部3の幅方向である。y方向は、光軸AX方向及びレンズ部3の幅方向と直交する。なお、部分反射部320により光路が90度折り曲げられると、光軸AX方向も90度変わるため、xyz座標系も90度回転する。
【0118】
数値実施例1、2において画像表示素子10の有効画素領域は、垂直方向に2.0mm、水平方向に6.0mmの矩形状となっており、対角方向の長さが6.32mmである。数値実施例3~5において画像表示素子10の有効画素領域は、垂直方向に3.3mm、水平方向に5.8mmの矩形状となっており、対角方向の長さが6.67mmである。最終面の間隔(15mm)がアイレリーフである。
【0119】
数値実施例1~5で示される収差図は、焦点距離17mmの理想レンズで結像する場合で計算されている。後述の各収差図に示されるように、数値実施例1~5において、収差は良好に補正される。
【0120】
[数値実施例1]
本発明の数値実施例1に係る虚像表示装置1Aの光学構成は図8A及び図8Bに示される。図8Aは、数値実施例1に係る虚像表示装置1Aのyz断面を示す。図8Bは、数値実施例1に係る虚像表示装置1Aのxy断面を示す。なお、図8Aのyz断面及び図8Bのxy断面は、装用者の眼EYに向かう光軸AX方向をz方向として固定したときの断面である。
【0121】
数値実施例1に係る虚像表示装置1Aは、画像表示素子10側から順に、画像表示素子10、伝搬光学系20、導光部材30を有する。数値実施例1では、平面形状で形成された1つの部分反射部320が導光部材30内に設けられる。
【0122】
数値実施例1において、虚像画像の垂直方向、水平方向、対角方向の画角は、それぞれ、13.6度、38.9度、41.8度である。導光部材30の厚さは、10mmである。虚像距離は、0.6mである。
【0123】
数値実施例1に係る虚像表示装置1Aの具体的数値構成は、表1に示される。表1中、R(単位:mm)は光学素子の各面の曲率半径(又は近軸曲率半径)を示し、D(単位:mm)は光軸AX上の光学素子の厚さ又は光学素子の間隔を示し、Ndはd線(波長587.562nm)の屈折率を示し、νdはd線のアッベ数を示す。アッベ数の右欄には、光学素子の材質の商品名及び製造者を記す。
【0124】
表1の番号は、画像表示素子10側から順に、虚像表示装置1Aの各面に付されたものである。補足すると、表の番号0は、画像表示素子10の画像表示面(画素配列面)を示す。表の番号1~2は、画像表示素子10に備えられるカバーガラスの各面を示す。カバーガラスは、画像表示素子10の画像表示面をカバーするガラス製部材である。
【0125】
表の番号3~8は、伝搬光学系20の各光学面を示す。表の番号9は、開口絞りを示す。表の番号10~13は、導光部材30の第1面310に入射されて第3面340から射出されるまでに画像光が通過する各光学面を示す。番号13の間隔Dは、第3面340から装用者の眼EYまでの距離、すなわちアイレリーフを示す。
【0126】
数値実施例1では、導光部材30の第2面330が、部分反射部320を透過した画像光を部分反射部320に向けて反射する反射面となっている。
【0127】
[表1]
【0128】
表1中、「*」印が付された番号の面は、非球面である。表2に、各非球面のデータを示す。表2中、標記Eは、10を基数、Eの右の数字を指数とする累乗を示す。非球面素子における曲率半径Rは、光軸AX上での曲率半径(近軸曲率半径)を示す。非球面形状は、サグ量をZとし、近軸曲率(1/R)をCとし、光軸AXからの高さをh(単位:mm)とし、円錐係数をKとし、4次以上の偶数次の非球面係数をA、A、・・・とした場合に、次式で示される。
【0129】
Z=Ch/{1+√(1-(1+K)Ch)}+A・h+A・h+A・h+A10・h10
【0130】
[表2]
【0131】
表3に、数値実施例1に係る導光部材30の対向面350の面形状のデータを示す。
【0132】
[表3]
【0133】
なお、表の記載形式は、以降の数値実施例2~5においても同じである。
【0134】
図9A及び図9Bは、数値実施例1において、画像表示素子10からの画像光が虚像表示装置用光学系(伝搬光学系20及び導光部材30)を通過したときの横収差図である。図9A及び図9Bに示される横収差図は、虚像画像内の座標1~7におけるd線、g線(波長435.834nm)での横収差を示す。座標1~7の位置は、図10に示される通りである。
【0135】
図9A及び図9Bの各図中、実線はd線における横収差を示し、破線はg線における横収差を示す。横収差は、x方向とy方向について測定される。図9A及び図9Bの各図中、左側の図(上欄に「Y-FAN」が付記された図)は、y方向における横収差を示し、右側の図(上欄に「X-FAN」が付記された図)は、x方向における横収差を示す。
【0136】
図11は、数値実施例1において、無限遠物体からの光が導光部材30を通過したときの横収差図である。図11では、画角0°、10°、20°、30°、40°のそれぞれについて、メリディオナル方向とサジタル方向の横収差を示す。
【0137】
数値実施例1では、伝搬光学系20によって導光部材30内に中間像Iを形成することで、導光部材30が薄型にされた構成でありながらも、画像光が導光部材30内を全反射することなく導光されるとともに、導光部材30の第3面340に負のパワーを持たせることにより、適切な虚像距離が得られる。また、下記の通り、数値実施例1では、上記式(1)~(3)が全て満たされる。
【0138】
絶対値|RA| :330.33(式(1)及び(2)参照)
絶対値|RA/RB| :0.99(式(3)参照)
【0139】
数値実施例1に係る虚像表示装置1Aでは、収差が良好に補正されるとともに(図9A及び図9B参照)、広い画角(例えば対角方向に40度を超える画角)が確保され、良好な像性能が達成される。また、第3面340に負のパワーを持たせたことで変化した外界の物体距離が良好に補正される(図11参照)。
【0140】
[数値実施例2]
図12は、本発明の数値実施例2に係る虚像表示装置1Aの光学構成を示す図である。図12は、数値実施例2に係る虚像表示装置1Aのyz断面を示す。
【0141】
なお、数値実施例2に係る虚像表示装置1Aは、対向面350の面形状が異なる点を除き、数値実施例1に係る虚像表示装置1Aと同じ構成となっている。そのため、数値実施例2では、虚像表示装置1Aのxy断面図を省略するなど、数値実施例1と重複する箇所の説明を省略する。
【0142】
表4に、数値実施例2に係る導光部材30の対向面350の面形状のデータを示す。
【0143】
[表4]
【0144】
図13は、数値実施例2において、無限遠物体からの光が導光部材30を通過したときの横収差図である。
【0145】
数値実施例2においても、伝搬光学系20によって導光部材30内に中間像Iを形成することで、導光部材30が薄型にされた構成でありながらも、画像光が導光部材30内を全反射することなく導光されるとともに、導光部材30の第3面340に負のパワーを持たせることにより、適切な虚像距離が得られる。また、下記の通り、数値実施例2においても、上記式(1)~(3)が全て満たされる。
【0146】
絶対値|RA| :330.33(式(1)及び(2)参照)
絶対値|RA/RB| :0.64(式(3)参照)
【0147】
数値実施例2に係る虚像表示装置1Aにおいても、収差が良好に補正されるとともに(図9A及び図9B参照)、広い画角(例えば対角方向に40度を超える画角)が確保され、良好な像性能が達成される。また、第3面340に負のパワーを持たせたことで変化した外界の物体距離が良好に補正される(図13参照)。
【0148】
[数値実施例3]
本発明の数値実施例3に係る虚像表示装置1Aの光学構成は図14A及び図14Bに示される。
【0149】
数値実施例3に係る虚像表示装置1Aは、画像表示素子10側から順に、画像表示素子10、伝搬光学系20、導光部材30、第2面330(導光部材30)とは独立して形成された反射部40を有する。数値実施例3では、平面形状で形成された7つの部分反射部320が導光部材30内に設けられる。
【0150】
数値実施例3において、虚像画像の垂直方向、水平方向、対角方向の画角は、それぞれ、20.7度、34.5度、39.4度である。導光部材30の厚さは、5mmである。虚像距離は、0.5mである。
【0151】
数値実施例3に係る虚像表示装置1Aの具体的数値構成は、表5に示される。表5中、Ry(単位:mm)は光学素子の各面の、y方向の軸(光軸AXと直交するy軸)での曲率半径(又は近軸曲率半径)を示し、Rx(単位:mm)は光学素子の各面の、x方向の軸(光軸AXと直交するx軸)での曲率半径(又は近軸曲率半径)を示す。
【0152】
表の番号0は、画像表示素子10の画像表示面(画素配列面)を示す。表の番号1~2は、画像表示素子10に備えられるカバーガラスの各面を示す。カバーガラスは、画像表示素子10の画像表示面をカバーするガラス製部材である。
【0153】
表の番号3~13は、伝搬光学系20の各光学面を示す。表の番号9は、開口絞りを示す。表の番号14~21は、導光部材30の第1面310に入射されて第3面340から射出されるまでに画像光が通過する各光学面を示す。番号21の間隔Dは、アイレリーフを示す。
【0154】
表の番号19の間隔Dの欄の標記Aは、第2面330から、各部分反射部320(部分反射面)までの、光軸AX方向の距離を示す。便宜上、この距離を距離Aと記す。距離Aは、7つの部分反射部320のうち、最も第2面330側の部分反射部320から順に、-21mm、-20mm、-19mm、-18mm、-17mm、-16mm、-15mmである。すなわち、7つの部分反射部320は、1mmの等間隔で配置される。
【0155】
数値実施例3では、反射部40をなすレンズの凸面が、部分反射部320を透過した画像光を部分反射部320に向けて反射する反射面となっている。
【0156】
[表5]
【0157】
表5中、「**」印が付された番号の面は、アナモフィックなパワーを有するアナモフィック非球面となっている。アナモフィック非球面形状は、x軸での近軸曲率(1/Rx)をCxとし、y軸での近軸曲率(1/Ry)をCyとし、光軸AXからの、x軸での高さをX(単位:mm)とし、光軸AXからの、y軸での高さをY(単位:mm)とし、x軸での円錐係数をKxとし、y軸での円錐係数をKyとし、4次以上の偶数次の、回転対称の係数をAR、AR、・・・とし、4次以上の偶数次の、回転非対称の係数をAP、AP、・・・とした場合に、次式で示される。
【0158】
Z=(CxX2 + CyY2)/{1+√(1-(1+Kx)Cx2X2-(1+Ky)Cy2Y2)} +AR4・((1-AP4)X2+(1+AP4)Y2)2+AR6・((1-AP6)X2+(1+AP6)Y2)3+AR8・((1-AP8)X2+(1+AP8)Y2)4+AR10・((1-AP10)X2+(1+AP10)Y2)5
【0159】
表6に、数値実施例3における各非球面のデータを示す。
【0160】
[表6]
【0161】
表7に、数値実施例3に係る導光部材30の対向面350の面形状のデータを示す。
【0162】
[表7]
【0163】
図15A及び図15Bは、数値実施例3において、画像表示素子10からの画像光が虚像表示装置用光学系(伝搬光学系20、導光部材30及び反射部40)を通過したときの横収差図である。
【0164】
図16は、数値実施例3において、無限遠物体からの光が導光部材30を通過したときの横収差図である。
【0165】
数値実施例3では、アナモフィックなパワーにより、中間像Iが導光部材30内に第3方向に第1の倍率で且つ第4方向に第2の倍率で形成される。これにより、数値実施例1及び2に対して、導光部材30を更に薄型化することができる。
【0166】
数値実施例3においても、伝搬光学系20によって導光部材30内に中間像Iを形成することで、導光部材30が薄型にされた構成でありながらも、画像光が導光部材30内を全反射することなく導光されるとともに、導光部材30の第3面340に負のパワーを持たせることにより、適切な虚像距離が得られる。また、下記の通り、数値実施例3においても、上記式(1)~(3)が全て満たされる。
【0167】
絶対値|RA| :275.06(式(1)及び(2)参照)
絶対値|RA/RB| :0.82(式(3)参照)
【0168】
数値実施例3に係る虚像表示装置1Aにおいても、収差が良好に補正されるとともに(図15A及び図15B参照)、広い画角(例えば対角方向に40度近い画角)が確保され、良好な像性能が達成される。また、第3面340に負のパワーを持たせたことで変化した外界の物体距離が良好に補正される(図16参照)。
【0169】
[数値実施例4]
図17は、本発明の数値実施例4に係る虚像表示装置1Aの光学構成を示す図である。図17は、数値実施例4に係る虚像表示装置1Aのyz断面を示す。
【0170】
なお、数値実施例4に係る虚像表示装置1Aは、対向面350の面形状が異なる点を除き、数値実施例3に係る虚像表示装置1Aと同じ構成となっている。そのため、数値実施例4では、虚像表示装置1Aのxy断面図を省略するなど、数値実施例3と重複する箇所の説明を省略する。
【0171】
表8に、数値実施例4に係る導光部材30の対向面350の面形状のデータを示す。
【0172】
[表8]
【0173】
図18は、数値実施例4において、無限遠物体からの光が導光部材30を通過したときの横収差図である。
【0174】
数値実施例4においても、アナモフィックなパワーにより、中間像Iが導光部材30内に第3方向に第1の倍率で且つ第4方向に第2の倍率で形成される。これにより、数値実施例1及び2に対して、導光部材30を更に薄型化することができる。
【0175】
数値実施例4においても、伝搬光学系20によって導光部材30内に中間像Iを形成することで、導光部材30が薄型にされた構成でありながらも、画像光が導光部材30内を全反射することなく導光されるとともに、導光部材30の第3面340に負のパワーを持たせることにより、適切な虚像距離が得られる。また、下記の通り、数値実施例4においても、上記式(1)~(3)が全て満たされる。
【0176】
絶対値|RA| :275.06(式(1)及び(2)参照)
絶対値|RA/RB| :0.15(式(3)参照)
【0177】
数値実施例4に係る虚像表示装置1Aにおいても、収差が良好に補正されるとともに(図15A及び図15B参照)、広い画角(例えば対角方向に40度近い画角)が確保され、良好な像性能が達成される。また、第3面340に負のパワーを持たせたことで変化した外界の物体距離が良好に補正される(図18参照)。
【0178】
[数値実施例5]
図19は、本発明の数値実施例5に係る虚像表示装置1Aの光学構成を示す図である。図19は、数値実施例5に係る虚像表示装置1Aのyz断面を示す。
【0179】
なお、数値実施例5に係る虚像表示装置1Aは、第3面340及び対向面350の面形状が異なる点を除き、数値実施例3に係る虚像表示装置1Aと同じ構成となっている。そのため、数値実施例5では、虚像表示装置1Aのxy断面図を省略するなど、数値実施例3と重複する箇所の説明を省略する。
【0180】
数値実施例5において、虚像画像の垂直方向、水平方向、対角方向の画角は、それぞれ、20.5度、35.1度、39.8度である。導光部材30の厚さは、5mmである。虚像距離は、1mである。
【0181】
数値実施例5に係る虚像表示装置1Aの具体的数値構成は、表9に示される。
【0182】
[表9]
【0183】
表10に、数値実施例5における各非球面のデータを示す。
【0184】
[表10]
【0185】
表11に、数値実施例5に係る導光部材30の対向面350の面形状のデータを示す。
【0186】
[表11]
【0187】
図20A及び図20Bは、数値実施例5において、画像表示素子10からの画像光が虚像表示装置用光学系(伝搬光学系20、導光部材30及び反射部40)を通過したときの横収差図である。
【0188】
図21は、数値実施例5において、無限遠物体からの光が導光部材30を通過したときの横収差図である。
【0189】
数値実施例5においても、アナモフィックなパワーにより、中間像Iが導光部材30内に第3方向に第1の倍率で且つ第4方向に第2の倍率で形成される。これにより、数値実施例1及び2に対して、導光部材30を更に薄型化することができる。
【0190】
数値実施例5においても、伝搬光学系20によって導光部材30内に中間像Iを形成することで、導光部材30が薄型にされた構成でありながらも、画像光が導光部材30内を全反射することなく導光されるとともに、導光部材30の第3面340に負のパワーを持たせることにより、適切な虚像距離が得られる。また、下記の通り、数値実施例5においても、上記式(1)~(3)が全て満たされる。
【0191】
絶対値|RA| :553.23(式(1)及び(2)参照)
絶対値|RA/RB| :0.62(式(3)参照)
【0192】
数値実施例5に係る虚像表示装置1Aにおいても、収差が良好に補正されるとともに(図20A及び図20B参照)、広い画角(例えば対角方向に40度近い画角)が確保され、良好な像性能が達成される。また、第3面340に負のパワーを持たせたことで変化した外界の物体距離が良好に補正される(図21参照)。
【0193】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施形態等又は自明な実施形態等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。
【0194】
以下に説明されるように、本実施形態に係る虚像表示装置1Aは、種々の用途に適用することができる。
【0195】
例示的には、虚像表示装置1Aは、教育環境で眼鏡として使用することができる。この眼鏡は、教科書等に見られるような電子学習コンテンツを表示することができる。眼鏡を使用して、ユーザは、試験する項目を見て、入手し、検討することができる。
【0196】
諸実施形態では、試験を行っている間ユーザを監視することができる。眼鏡は、ユーザが教材内を移動する間ユーザの時間を計測し、ユーザの応答を追跡してユーザの回答及び/又は試験の進捗に基づいて必要に応じて試験を調整することができる。
【0197】
更なる実施形態では、ユーザは、眼鏡を介して拡張現実(AR)のオーバーレイを見ることができる。
【0198】
諸実施形態では、ARのオーバーレイは、実習課程、講義等の段階的な案内を含むことができる。
【0199】
諸実施形態では、仮想の教授を表示して、ビデオ、オーディオ、及びチャットを介して対話できるようにする。
【0200】
ユーザは、眼鏡を介して黒板/ホワイトボードを見ることができ、ボード上に更に項目を入力し、それを、ユーザインターフェース上で黒板/ホワイトボードを見ることができる他のユーザと共有することができ、又は表示として、ユーザが特定の黒板/ホワイトボードを見る時にARのメモ等の実際のボードを追加し、且つ/又は重ねることができる。
【0201】
諸実施形態では、眼鏡は、クラス又は教育部門のメンバ用のソーシャルネットワークプラットフォームを提供し、クラスのメンバ向け、又はメンバに関するソーシャルネットワークコンテンツを提供することができる。
【0202】
諸実施形態では、眼鏡を教育環境における商取引に使用することができる。
【0203】
例示的には、ユーザは眼鏡を使用してプログラムを購入するか、又は他の形でコンテンツの進行と教科の単位を追跡することができる。
【0204】
更に、ユーザは、試験や小テストの級及びこれから行われる試験並びに小テストの実施日を監視することができる。ユーザは、課程の単位/学位の情報をダウンロードすることができる。ユーザは、授業で議論される、又はシラバスに記載される等の学習課題を取り込んで予定表に追加することができる。ユーザは、眼鏡を介して友人又はクラスのメンバと連絡を取ることにより会うことができる。
【0205】
諸実施形態では、ユーザは、請求書と授業の明細書を検討のために見て、追跡することができる。
【0206】
諸実施形態では、ユーザは、プログラムを購入して行う、又はプログラムを使用することができる。プログラムは、そのプログラムとの関連で広告を提供する。
【0207】
更なる実施形態では、ユーザは、教育環境で眼鏡を用いることができる。
【0208】
ユーザは、試験/小テストの答案用紙をスキャンして眼鏡を介して見る、操作する、又はその他を行うことができる。ユーザは、教科書の内容、マニュアル、及び/又は問題用紙、黒板/ホワイトボードの内容に関連するデータをスキャン又は他の方法で取り込んで、ノートをとり、課題を追跡することができる。ユーザは、ポスター/標識に関連するデータを読み取る、又は取り込むことができる。そのため、ユーザは、これから行われる学生の会合、調査表構築の説明、会合の場所等を追跡することができる。
【0209】
諸実施形態では、ユーザは、クラスメート、友人、関係者等の顔を撮影することができる。
【0210】
諸実施形態では、眼鏡でユーザの目の動きを追跡して、コンテンツとの対話を検証することができる。
【0211】
諸実施形態では、眼鏡は、コンテンツの取り込み等のために「Lifestride」又は他のペン機能に対応することができる。ユーザが身振りでノートを示し、眼鏡と通信状態にあるペンを動かすと、眼鏡がユーザのノートを記憶することができる。
【0212】
他の実施形態では、ユーザが身振りをすると、その身振りに基づいて眼鏡がノートを記録することができ、更に他の実施形態では、ユーザの手に関連付けられた別のセンサで、ユーザがメモを書くと眼鏡でノートを記録できるようにすることができる。
【0213】
諸実施形態では、システムは、ユーザに装着される対話型の頭部装着接眼鏡を備えることができる。
【0214】
この種の接眼鏡は、接眼鏡が教育環境の近くにあることを判定するモジュールを含む。更に、システムは、ユーザがそれを通じて周囲の環境を見る光学アセンブリと、環境のフィーチャを認識し、その環境に関連する教育関連コンテンツを描画する処理モジュールと、頭部装着接眼鏡の装着者の環境の画像を取り込み、処理する画像処理モジュールであって、環境の認識されたフィーチャの上に表示要素を固定することが可能な画像処理モジュールと、コンテンツを光学アセンブリに導入する内蔵画像光源とを含む。
【0215】
内蔵画像光源は、環境上へのオーバーレイとして教育関連コンテンツを描画する。コンテンツは、認識されたフィーチャとの関係で表示内に提示することができる。
【0216】
諸実施形態では、内蔵画像光源は、輸送環境に関連する輸送コンテンツの表示を提供することができ、認識されたフィーチャとのそのような関係は存在しない場合もある。
【0217】
諸実施形態では、教育コンテンツの描画は、バーコード、QRコード(登録商標)等を読み取った結果、行われてもよく、また、接眼鏡内で教科書の画像を入力した結果、接眼鏡内で配布物の画像を入力した結果、環境内でマーカを認識した結果、及び教育環境内の位置に入った結果、行われてもよい。
【0218】
諸実施形態では、教育環境は、教室、運動スタジオ、自動車の修理所、ガレージ、屋外環境、体育館、研究室、工場、事業所、台所、病院等とすることができる。
【0219】
更に、教育コンテンツは、テキスト、教科書の抜粋、指示、ビデオ、オーディオ、実習計画、化学構造、3D画像、3Dオーバーレイ、テキストのオーバーレイ、教室、問題用紙、試験、レシピ、授業のノート、医療カルテ、顧客ファイル、安全に関する注意、練習の手順とすることもできる。
【0220】
諸実施形態では、教育コンテンツは、環境内の対象に関連付ける、又は対象の上に重ねることができる。
【0221】
諸実施形態では、対象は、ホワイトボード、黒板、機械、自動車、航空機、患者、教科書、プロジェクタ等である。
【0222】
諸実施形態では、システムをソーシャルネットワーキングに使用することができ、更に、環境内のクラスメート、教師等の少なくとも1人の顔認識を用いることができる。
【0223】
諸実施形態では、ユーザは、身体の一部で身振りをすることにより、友達の申請を送受信することができる。
【0224】
諸実施形態では、ユーザは、コンテンツと対話して、試験を受ける、課題を終える、シラバスを見る、授業の計画を見る、技術を練習する、課程の進行を追跡する、学生の単位を追跡する、ノートを取る、ノートを記録する、質問を提出する等ができる。
【0225】
諸実施形態では、オーバーレイで、認識されたフィーチャの上又はその近傍にコンテンツを提示することができる。
【0226】
更に、認識されるフィーチャは、ポスター、黒板、ホワイトボード、画面、機械、自動車、航空機、患者、教科書、プロジェクタ、モニタ、机、スマートボードの少なくとも1つとすることができる。
【0227】
例示的には、黒板で縁取られたディスプレイ上にノートが表示される、ディスプレイ上の画面がある箇所に動画が表示される、分子の表示が黒板に重ねて表示される等が可能である。
【0228】
諸実施形態では、フィーチャを認識することは、フィーチャを含んでいる画像の自動的な処理、信号でフィーチャを通知すること、フィーチャと通信すること、フィーチャの位置を処理することによってフィーチャを認識すること、フィーチャの位置を処理することによるフィーチャに関する情報の取得、データベースからフィーチャに関する情報を検索すること、ユーザによるフィーチャの指定等、の少なくとも1つを含むことができる
【0229】
更に、ユーザは、接眼鏡のユーザインターフェースと対話することにより、オーバーレイコンテンツを保持する機能を指定することができる。
【0230】
次に、虚像表示装置1Aを外科手術用のヘッドマウントディスプレイとして使用する使用例を示す。
【0231】
図22及び図23は、外科手術コンテキストにおいてヘッドマウントディスプレイをミュートにする実施例を示す。図22図23は、それぞれ、外科手術シーン1100a、1100bを示す。
【0232】
図22では、外科医が、外科手術を心臓1147上で実施している。外科医は、ヘッドマウントディスプレイを装着し得る。
【0233】
外科医は、心臓1147をそのFOV(Field of View)内で知覚することができる。また、外科医は、仮想オブジェクト1141、1142及び1145をそのFOV内で知覚することができる。
【0234】
仮想オブジェクト1141、1142及び1145は、心臓1147と関連付けられた種々のメトリック(例えば、心拍数、ECG等)及び診断(例えば、不整脈、心停止等)に関連してもよい。
【0235】
ヘッドマウントディスプレイは、ウェアラブルシステムの環境センサによって入手された情報に基づいて、若しくはウェアラブルシステムの別のデバイス又は遠隔処理モジュールと通信することによって、仮想オブジェクト1141、1142及び1145を提示することができる。
【0236】
外科手術の間、予期されない又は緊急状況が生じ得る。一例として、心臓1147からの血飛沫1149に示されるように、外科手術部位における突然の望ましくない血流が認められ得る(図23参照)。
【0237】
ウェアラブルシステムは、コンピュータビジョン技法を使用して、例えば、外科手術部位内、その近傍における特徴点又は特徴の急速に生じる変化を検出することによって(例えば外向きに面したカメラによって入手された画像内で)、本状況を検出してもよい。
【0238】
また、ウェアラブルシステムは、他のデバイス又は遠隔処理モジュールから受信されたデータに基づいて、上記の如き検出を行ってもよい。
【0239】
ウェアラブルシステムは、本状況が、外科医が注意を予期しない状況又は緊急状況に向け得るように、視覚的又は聴覚的仮想コンテンツの表示がミュートにされるべきである、トリガイベントに関する基準を満たすことを決定してもよい。故に、ウェアラブルシステムは、トリガイベント(例えば図23に示される血飛沫1149)の自動検出に応答して、仮想コンテンツを自動的にミュートにしてもよい。その結果、図23では、外科医は、ヘッドマウントディスプレイによって、仮想オブジェクト1141、1142及び1145を提示されず、外科医は、全てのその注意を血液の噴出を停止させることに向けることができる。
【0240】
ヘッドマウントディスプレイは、終了イベントに応答して、通常動作を再開し、外科医への仮想コンテンツの提示を復元することができる。
【0241】
終了イベントは、トリガイベントが終わる(例えば、血飛沫1149が停止する)ときに検出されてもよく、また、トリガイベントが存在しない別の環境にユーザが進入するとき(例えば、ユーザが救急処置室から出て行くとき)に検出されてもよい。
【0242】
また、終了イベントは、閾値時間周期に基づくことができる。
【0243】
例えば、ヘッドマウントディスプレイは、トリガイベントの検出に応じて、ある時間周期が経過した(例えば、5分、15分、1時間等)後、又はトリガイベントがその時間周期に亘って終わっていることの検出に応じて、通常動作を再開してもよい。例示的には、ウェアラブルシステムは、トリガイベントが終わる前に、ディスプレイ(又はウェアラブルシステムの他のコンポーネント)を再開することができる。
【0244】
次に、虚像表示装置1Aを調理用のヘッドマウントディスプレイとして使用する使用例を示す。この使用例で示すヘッドマウントディスプレイは、カメラユニットを搭載する。
【0245】
図24は、ヘッドマウントディスプレイを介して見える視界220の一例を示す模式図である。図25図27は、ヘッドマウントディスプレイの動作の一例を示すフローチャートである。
【0246】
図25に示されるように、ヘッドマウントディスプレイは、視界220に具材を撮像するように表示する(ステップS71)。具材を撮像するにあたり、ユーザは、カメラユニットのシャッタを押す必要がない。カメラユニットは、具材を、形状、色等で自動的に認識する。
【0247】
ここでは具材をカメラユニットで撮像することとしている。別の実施形態では、具材についているバーコード表示を読み取るようにしてもよく、また、買い物後のレシートで具材を読み取るようにしてもよい。冷蔵庫自身又は収納庫自身が収容物の情報を持っている場合、ヘッドマウントディスプレイは、通信システムを用いて当該情報を取得してもよい。
【0248】
具材が撮像されると、ヘッドマウントディスプレイは、具材の認識を行う(ステップS72)。
【0249】
図26に示されるように、ヘッドマウントディスプレイは、通信システムを用いて、インターネットに接続を行う(ステップS81)。
【0250】
次いで、ユーザが、視界220に表示される料理アプリケーションソフトを手H1による手認識を用いて選択する。その結果、ヘッドマウントディスプレイは、料理アプリケーションを起動する(ステップS82)。
【0251】
続いて、ヘッドマウントディスプレイは、具材で調理できる料理のリストを表示する(ステップS83)。
【0252】
図28は、具材で調理できる料理のリストの一例を示す模式図である。図28に示されるように、視界220に、「和食」、「洋食」、「中華」、「おせち」、「吸い物」、「スープ」等、大分類が表示される。例えば「和食」が選択されると、「ぶり照り焼き」、「茶わん蒸し」、「肉じゃが」等の中分類が表示される。例えば、更に「肉じゃが」が選択されると、「話題レシピ」、「プロ調理法」、「レポートランキング」、「味付け薄濃」、「低カロリー」、「辛め又は甘め」等の小分類が表示される。なお、子供用のリストが表示されてもよい。
【0253】
続いて、図26に示されるように、ヘッドマウントディスプレイは、選択された料理を認識して(ステップS84)、当該料理の調理手順を取得する(ステップS85)。
【0254】
ヘッドマウントディスプレイは、調理手順を、通信システムを用いてインターネット上から取得してもよく、また、ヘッドマウントディスプレイ内部の記録部から読み出すことによって取得してもよい。
【0255】
図27に示されるように、ヘッドマウントディスプレイは、調理手順の情報に基づいて、視界220に調理手順を表示させて、具材の調理指示を行う(ステップS86)。
【0256】
図29は、視界220の表示の一例を示す模式図である。
【0257】
図29に示されるように、例えば、ニンジンの切り方、具体的には、ニンジンの外形が認識されて包丁カット位置が指示される。ユーザは、この指示に従うことにより、ニンジンを最適な大きさにカットすることができる。
【0258】
続いて、ヘッドマウントディスプレイは、視界220に調理機器の指示を表示させる(ステップS87)とともに、加熱調理機の火力指示を行う(ステップS88)。
【0259】
図30は、視界220の表示の一例を示す模式図である。図30に示されるように、視界220に、鍋に具材を投入し、水を投入し、IH調理器の火力を「強火」、「中火」又は「弱火」にするよう指示が出される。
【0260】
次いで、ヘッドマウントディスプレイは、内部時計により、加熱が開始された時間からカウントをスタートする(ステップS89)。これは、例えば次の具材を投入する場合に、調味料を投入する場合等のタイミングを判定するためである。
【0261】
続いて、ヘッドマウントディスプレイは、調理手順に従って調味料のタイミングの場合、視界220に調味料の種類及び量の指示を表示する(ステップS90)。
【0262】
図31及び図32は、視界220の表示の一例を示す模式図である。
【0263】
まず、図31に示されるように、視界220に、砂糖、塩の順番で投入するよう指示が出される。ユーザは、この順番に従って調味料を入れる。
【0264】
ヘッドマウントディスプレイは、砂糖瓶から投入される量をカメラユニットにより認識して、例えば、図31に示されるように、砂糖を小さじ一杯入れるまで、あと残量がどれだけか、視界220に表示する。ユーザは、視界220の表示を確認して、砂糖を投入することができる。
【0265】
次いで、ヘッドマウントディスプレイは、砂糖が所定量投入されたと判定した場合、図32に示されるように、視界220から砂糖の表示を消去し、塩瓶の表示を行う。また、図32に示されるように、例えば、手H1のジェスチャで火力操作を行うと、通信システムから火力装置へ指示が与えられ、火力を弱めることができる等、火力の操作ができるようにしてもよい。この場合、例えば、冷蔵庫の前から火力装置へ走って移動する等の手間を省くことができる。なお、安全性のため、火力は下げることしかできないこととしてもよい。
【0266】
最後に、ヘッドマウントディスプレイは、調理手順が終了したか否かを判定する(ステップS91)。調理手順が終了していないと判定した場合(ステップS91:No)、例えば他の具材の調理が残っている場合、ヘッドマウントディスプレイは、ステップS86に戻って、処理を繰り返す。調理手順が終了したと判定した場合(ステップS91:Yes)、ヘッドマウントディスプレイは、IH調理器等の火力が「消す」に操作されたかを確認して(ステップS92)、処理を終了する。
【0267】
なお、本例では調理完了時点で処理が終了するが、別の実施形態では、それ以降の工程(例えば盛り付け)までの指示が行われてもよい。また、ヘッドマウントディスプレイを使用した調理は、1種類の料理に対してだけでなく、例えば複数種類の料理に対して並行して行えるようにしてもよい。カット、焼き、煮る、等の調理の種類によって並べ替えてもよい。煮物に時間がかかるので、最初に煮物関係を並べてもよい。
【0268】
このように、ヘッドマウントディスプレイを用いることにより、視界220に複数の料理情報が表示される。ユーザは、表示された複数の料理情報から1個の料理情報を手H1で選択することができる。
【0269】
料理情報には、例えば、料理手順情報、料理の具材情報、料理の調味料情報、料理の火加減情報が少なくとも含まれる。ユーザは、料理本を見ながら調理を行わなくてもよくなり、円滑に調理を行うことができる。ユーザは、例えば手が濡れていても手が粉まみれであっても、容易に料理情報を確認することができる。なお、料理の具材情報は、料理の大きさ、量、調理器具内への投入タイミングを少なくとも含む。料理の調味料情報は、調味料の量、調理器具内への投入タイミングを少なくとも含む。
【0270】
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
画像を表示する画像表示素子からの画像光を導光する導光部材と、
第1の側から前記導光部材内を導光される第1方向の前記画像光を透過させ、かつ前記第1の側とは異なる第2の側から前記導光部材内を導光される第2方向の前記画像光を反射させることにより、前記画像光を前記導光部材の射出面から外部へ射出させる、部分反射部と、
前記部分反射部を挟んで前記第1の側とは異なる前記第2の側に位置し、前記部分反射部を透過した前記第1方向の画像光を前記第2方向の画像光として前記部分反射部に向けて反射する反射部と、を含み、
前記画像光が前記導光部材内を全反射することなく導光されるように、前記導光部材の寸法が前記導光部材内を導光される画像光の光束幅よりも大きくなっており、
前記導光部材の射出面は、負のパワーを有する、
虚像表示装置用光学系。
[付記2]
前記導光部材の射出面は、凹面状に形成された、
付記1に記載の虚像表示装置用光学系。
[付記3]
前記反射部は、前記第1方向の画像光をコリメート光に変換して、前記第2方向の画像光として、前記部分反射部に向けて反射する、
付記1又は付記2に記載の虚像表示装置用光学系。
[付記4]
前記画像表示素子からの画像光を前記導光部材に伝搬する伝搬光学系を更に含み、
前記伝搬光学系は、前記画像光の中間像を前記導光部材内に形成する、
付記1から付記3の何れか1つに記載の虚像表示装置用光学系。
[付記5]
前記画像表示素子と前記部分反射部との間の光路上に配置された開口絞りを更に含む、
付記4に記載の虚像表示装置用光学系。
[付記6]
前記伝搬光学系は、
第3方向の倍率と前記第3方向と異なる第4方向の倍率とが異なるアナモフィック面を含み、
前記画像光の中間像を、前記第3方向に第1の倍率で且つ前記第4方向に第2の倍率で前記導光部材内に形成する、
付記4又は付記5に記載の虚像表示装置用光学系。
[付記7]
前記射出面の近軸曲率半径(単位:mm)をRAとしたとき、次式
100<|RA|<2000
を満たす、
付記1から付記6の何れか1つに記載の虚像表示装置用光学系。
[付記8]
前記導光部材は、前記射出面と対向する面が正のパワーを有する、
付記1から付記7の何れか1つに記載の虚像表示装置用光学系。
[付記9]
前記射出面の近軸曲率半径(単位:mm)をRAとし、前記射出面と対向する面の近軸曲率半径(単位:mm)をRBとしたとき、次式
0.0<|RA/RB|<1.1
を満たす、
付記1から付記8の何れか1つに記載の虚像表示装置用光学系。
[付記10]
前記部分反射部は、前記虚像表示装置用光学系の光軸方向に間隔を空けて複数配置される、
付記1から付記9の何れか1つに記載の虚像表示装置用光学系。
[付記11]
前記画像表示素子と、
付記1から付記10の何れか一項に記載の虚像表示装置用光学系と、を備える、
虚像表示装置。
[付記12]
付記11に記載の虚像表示装置を備える、
ヘッドマウントディスプレイ。
【符号の説明】
【0271】
1 :ヘッドマウントディスプレイ
1A :虚像表示装置
2 :フレーム部
3 :レンズ部
10 :画像表示素子
20 :中間像形成部
30 :導光部材
40 :反射部
50 :レンズ
60 :ミラー
320 :部分反射部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
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図20A
図20B
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図30
図31
図32