(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054641
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】包装容器
(51)【国際特許分類】
B65D 33/02 20060101AFI20240410BHJP
B65D 33/38 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
B65D33/02 BSF
B65D33/38 BRH
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160999
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】桑原 弘嗣
【テーマコード(参考)】
3E064
【Fターム(参考)】
3E064AB23
3E064BA26
3E064BC01
3E064BC18
3E064BC20
3E064EA02
3E064EA30
3E064HM01
(57)【要約】
【課題】包装袋にスパウトまたは注出口開口部材をシールするときに包装袋の収縮を抑制することが可能な包装容器を提供する。
【解決手段】最内層にシーラント21を有する包装フィルム23から形成された包装袋20と、包装袋20にシールされたスパウト10または注出口開口部材とを有する包装容器であって、包装袋20は、少なくともシーラント21を介して、スパウト10または注出口開口部材と重なり合う領域を含み、かつ包装フィルム23の面積に対して部分的に形成された耐熱コート層30を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最内層にシーラントを有する包装フィルムから形成された包装袋と、前記包装袋にシールされたスパウトまたは注出口開口部材とを有する包装容器であって、
前記包装袋は、少なくとも前記シーラントを介して、前記スパウトまたは前記注出口開口部材と重なり合う領域を含み、かつ前記包装フィルムの面積に対して部分的に形成された耐熱コート層を有することを特徴とする包装容器。
【請求項2】
前記耐熱コート層は、前記包装フィルムの厚さ方向において、前記シーラントとは反対側の最外層に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の包装容器。
【請求項3】
前記包装フィルムの基材、前記シーラント、および前記スパウトまたは前記注出口開口部材は、いずれも、ポリエチレン系樹脂から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の包装容器。
【請求項4】
前記耐熱コート層は、硬化性の樹脂から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の包装容器。
【請求項5】
前記耐熱コート層は、前記包装フィルムの基材より高融点の樹脂から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の包装容器。
【請求項6】
前記包装袋がスタンディングパウチであることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の包装容器。
【請求項7】
前記包装袋が液体を内封する用途であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の包装袋として、例えば、特許文献1の段落0010には、ポリエチレン(PE)等のシーラントを最内層とし、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(Ny)、ポリプロピレン(PP)等の延伸フィルムを基材としたラミネートフィルムを用いたスタンディングパウチが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の包装袋に使用される複合フィルムは、内面にシーラントを有し、外面にシーラントよりも耐熱性の高い基材を有する。複合フィルムをシールする際には、シーラントを溶融させて複合フィルムの内面が接合される。しかし、異種の樹脂を含む包装袋は、プラスチック製容器包装としてのリサイクルが難しいという問題がある。
【0005】
近年、リサイクルを容易にするため、単一または同種の樹脂を用いるモノマテリアルの容器包装が提唱されている。しかし、包装袋のスパウトをポリエチレン系樹脂の積層フィルムにシールすると、シール箇所の周囲で積層フィルムが収縮して強度が低下し、落下に対する耐性が低くなるという問題がある。また、収縮により外観が悪くなるという問題もある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、包装袋にスパウトまたは注出口開口部材をシールするときに包装袋の収縮を抑制することが可能な包装容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の態様を含む。
本発明の第1の態様は、最内層にシーラントを有する包装フィルムから形成された包装袋と、前記包装袋にシールされたスパウトまたは注出口開口部材とを有する包装容器であって、前記包装袋は、少なくとも前記シーラントを介して、前記スパウトまたは前記注出口開口部材と重なり合う領域を含み、かつ前記包装フィルムの面積に対して部分的に形成された耐熱コート層を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記耐熱コート層は、前記包装フィルムの厚さ方向において、前記シーラントとは反対側の最外層に形成されていることを特徴とする。
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、前記包装フィルムの基材、前記シーラント、および前記スパウトまたは前記注出口開口部材は、いずれも、ポリエチレン系樹脂から形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の第4の態様は、第1~3のいずれか1の態様において、前記耐熱コート層は、硬化性の樹脂から形成されていることを特徴とする。
本発明の第5の態様は、第1~3のいずれか1の態様において、前記耐熱コート層は、前記包装フィルムの基材より高融点の樹脂から形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の第6の態様は、第1~5のいずれか1の態様において、前記包装袋がスタンディングパウチであることを特徴とする。
本発明の第7の態様は、第1~6のいずれか1の態様において、前記包装袋が液体を内封する用途であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、包装袋にスパウトまたは注出口開口部材をシールするときに包装袋の収縮を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態による包装袋に対するスパウトのシール部を例示する断面図である。
【
図4】注出口に注出口開口部材を有する包装容器を例示する部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0014】
図1に、実施形態による包装袋20に対するスパウト10のシール部を例示する。このシール部は、スパウト10と包装袋20とを有する包装容器に用いられる。スパウト10は、包装袋20にシールされている。包装袋20は、スパウト10と重なり合う領域を含むように耐熱コート層30を有する。
【0015】
図示例のスパウト10は、先端に注出口となる開口部14を有する筒部11と、包装袋20と重なり合う領域を有する基部12とを有する。筒部11は、基部12から突出している。スパウト10の内部には、包装袋20に収容される内容物(図示せず)を注出可能な流路13が形成されている。流路13は、包装袋20の内部を開口部14と連通させている。
【0016】
包装袋20の内容物は、特に限定されないが、液体、粉体、粒体等の流動性を有することが好ましい。内容物が液体を含む場合は、溶液、分散液、乳濁液、懸濁液などの混合物であってもよい。
【0017】
筒部11の形状は特に限定されないが、例えば円筒状、楕円筒状、角筒状などであってもよい。基部12は筒部11より大きい断面形状を有してもよく、基部12が筒部11と同一の断面形状を有してもよい。基部12の断面形状は特に限定されないが、流路13の長さ方向に直交する面上において、例えば円形状、楕円形状、舟形状などが挙げられる。ここで、舟形状は、特に図示しないが、長軸2方向が略三角形状に突出し、短軸2方向は略円弧状に湾曲した形状である。
【0018】
スパウト10の内部に形成される流路13の断面形状は、特に限定されないが、長さ方向と直交する面上において、例えば円形状、楕円形状、多角形状等が挙げられる。流路13の内面は、筒部11の外面と同心状であってもよい。流路13の長さ方向の形状は、特に限定されないが、直線状、曲線状、湾曲状、屈曲状などであってもよい。特に図示しないが、同一の流路13から分岐して2以上の開口部14が開口してもよい。
【0019】
スパウト10は、包装袋20の注出口に取り付けられる部材の一例である。図示例のスパウト10は、包装袋20と重なり合う領域の外側に突出した筒部11を有する。詳しくは後述するが、包装袋20と重なり合う領域の範囲内に配置される注出口開口部材のシール部に耐熱コート層30を適用することも可能である。以下の説明では、スパウト10や注出口開口部材を含めた包装袋20の付属物となる部材を、「スパウト10等の付属物」という場合がある。
【0020】
包装袋20は、最内層にシーラント21を有する包装フィルム23から形成されている。シーラント21は、通常、包装フィルム23の全面に積層されている。複数の包装フィルム23を重ね合わせて包装袋20を形成するときに、シーラント21同士を対向して接着することができる。シーラント21は、溶着可能な樹脂から形成されることが好ましい。溶着可能な樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂が挙げられ、例えば、ポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0021】
シーラント21を形成する材料の具体例としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等が挙げられる。シーラント21を形成する材料が、1種のポリエチレン系樹脂でもよく、2種以上のポリエチレン系樹脂のブレンドでもよい。シーラント21の厚さは、特に限定されないが、例えば、60~180μm程度が挙げられる。
【0022】
包装フィルム23は、シーラント21とは異なるフィルムとして、少なくとも1層の基材22を有してもよい。基材22の材質は、特に限定されないが、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂が挙げられ、ポリエチレン系樹脂としてもよい。基材22は、シーラント21を溶着する温度条件で溶融しない、耐熱性を有することが好ましく、例えば、シーラント21より高融点の樹脂フィルムである。
【0023】
基材22をポリオレフィン系樹脂から形成する場合の材料の具体例としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。基材22は、延伸樹脂フィルムを含んでもよい。基材22の厚さは、特に限定されないが、例えば、各層厚または総厚として、10~50μm程度が挙げられる。
【0024】
包装フィルム23は、例えばシーラント21や基材22など、複数の樹脂フィルムを含んでもよい。モノマテリアルの包装袋20を形成するには、包装フィルム23に含まれる樹脂フィルムが、ポリオレフィン系樹脂のみであることが好ましく、ポリエチレン系樹脂のみであることがより好ましい。
【0025】
包装フィルム23を形成する複数の樹脂フィルムは、ドライラミネート等により、接着層を介して積層してもよく、共押出、熱ラミネート等により、接着層を省略しながら積層してもよい。ポリエチレン系樹脂等の樹脂フィルムが、他の樹脂フィルムに対して、押出ラミネート、サンドラミネート等により積層されてもよい。各樹脂フィルムの少なくとも片面には、印刷層、蒸着層等を形成してもよい。
【0026】
スパウト10等の付属物は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂から形成されることが好ましい。スパウト10等の付属物の形成方法は特に限定されないが、射出成形、押出成形などが挙げられる。二色成形でスパウト10等の付属物を形成することも可能であるが、コスト面では単一の樹脂を用いてスパウト10等の付属物を形成することが好ましい。
【0027】
スパウト10等の付属物を包装袋20に接着する方式は、シーラント21を用いたシールである。シール方法には特に制約はなく、熱板シール、超音波シール、高周波シール、インパルスシール等が挙げられる。溶融または軟化した樹脂が冷却して固化することで、接着が安定化するため、比較的短時間で接着を完了させることができる。スパウト10等の付属物をシールした箇所に冷却用の金型等を接触させて、余剰の熱を吸収させてもよい。
【0028】
包装袋20は、少なくともシーラント21を介して、スパウト10等の付属物と重なり合う領域を含むように耐熱コート層30を有する。これにより、包装袋20にスパウト10等の付属物をシールするときに包装フィルム23の収縮を抑制することができる。さらに、包装フィルム23の強度低下や外観の悪化、包装袋20の落下耐性の低下を抑制することができる。
【0029】
包装フィルム23の厚さ方向では、スパウト10等の付属物と包装袋20とのシールを妨げない位置に耐熱コート層30が配置される。耐熱コート層30の配置は、シーラント21と基材22との間でもよく、シーラント21とは反対側の最外層としてもよい。耐熱コート層30の厚さは特に限定されないが、例えば1μm~1mmの範囲内でもよい。シールに必要な熱をスパウト10等の付属物まで伝達させる点では適度に薄いことが好ましく、包装フィルム23の熱収縮を抑制する点では適度に厚いことが好ましい。
【0030】
耐熱コート層30は、包装フィルム23の面積に対して部分的に形成されている。耐熱コート層30を包装フィルム23の全面に形成することは可能であるが、包装フィルム23のシーラント21や基材22に対して融点、材質等が異なる耐熱コート層30の分量が多いと、モノマテリアルの包装袋20における異物の割合が多くなり、好ましくない。
【0031】
包装フィルム23の面積に対して耐熱コート層30が形成される範囲は、少なくとも、スパウト10等の付属物と重なり合う領域を含む。例えば、スパウト10の基部12が包装フィルム23間に挟み込まれている領域およびその周辺に耐熱コート層30を形成することが好ましい。
【0032】
耐熱コート層30は、包装フィルム23よりも耐熱性が高く、熱収縮性が低い材質であることが好ましい。スパウト10等の付属物を包装フィルム23にシールする場合は、包装フィルム23同士をシールする場合に比べて、温度をより高く、あるいは時間をより長くし、より多くの熱量がシール部に与えられる傾向がある。このため、スパウト10等の付属物をシールする条件において、包装フィルム23よりも熱収縮性が小さいことが好ましい。
【0033】
第1の形態として、耐熱コート層30は、硬化性の樹脂から形成されている。硬化性の樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等が挙げられる。化学反応により硬化する反応硬化性樹脂であることが好ましい。耐熱コート層30は、包装フィルム23または基材22の外面に塗布等により形成することができる。
【0034】
第1の形態の耐熱コート層30に用いられる硬化性の樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、環状オレフィン系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の1種または2種以上が挙げられる。耐熱コート層30が、ニス等のコーティング剤を塗布した後、乾燥、硬化により形成されてもよい。
【0035】
コーティング剤は、樹脂および溶剤を含有してもよく、無溶剤の樹脂を含有してもよい。コーティング剤は、基材22との間に接着層等を介せず、直接に耐熱コート層30を形成することができる。コーティング剤の塗布は、印刷、インクジェット等により行うこともできる。
【0036】
コーティング剤の種類は、特に限定されないが、組成物があらかじめ混合された状態で供給される1液タイプ、主剤と添加剤とが別々に供給されて使用時に混合される2液反応タイプなどが挙げられる。コーティング剤は、濃縮状態で供給されてもよく、適宜の濃度または粘度が得られるように使用時に希釈してもよい。コーティング剤の溶剤は、塗布する際の性能等を考慮して、適宜選択することができる。コーティング剤は、樹脂を硬化させる硬化剤、架橋剤等を含有してもよい。
【0037】
第2の形態として、耐熱コート層30は、包装フィルム23の基材22より高融点の樹脂から形成されている。耐熱コート層30に用いる高融点の樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(Ny)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。高融点の樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよい。耐熱コート層30は、基材22よりも低い熱収縮性を有することが好ましい。
【0038】
シーラント21の融点が、例えば100~115℃であってもよい。基材22の融点が、例えば約135℃であってもよい。スパウト10等の付属物の融点が、例えば127~130℃であってもよい。包装フィルム23に対するスパウト10等の付属物のヒートシール温度は、例えば140℃前後である。耐熱コート層30は、スパウト10等の付属物のヒートシール温度よりも高い融点を有することが好ましい。
【0039】
包装袋20の具体例としては、特に限定されないが、三方シール袋、四方シール袋、ピロー袋、平袋、ガセット袋、スタンディングパウチ等が挙げられる。
図2~3に、スタンディングパウチの包装袋20を用いた包装容器31,32の具体例を示す。包装容器31,32に使用される包装袋20は、胴部材24が一対の包装フィルム23からなり、その間に底部材26を挟み込んで形成されている。
【0040】
底部材26は、2つ折りにして胴部材24の下部に配置されている。底部材26より上側では、左右に側シール部25が形成されて、前後の胴部材24が互いに接合されている。底部材26と胴部材24は底シール部27により接合されている。2つ折りにした底部材26の片側は前側の胴部材24と接合され、底部材26のもう片側は後側の胴部材24と接合されている。底部材26を広げると、包装袋20を自立させることができる。
【0041】
胴部材24の上部には、上シール部28が形成されている。上シール部28の一部にスパウト10がシールされている。スパウト10以外の箇所では、上シール部28を介して前後の胴部材24が接合されている。
【0042】
耐熱コート層30は、スパウト10の基部12と重なり合う領域に形成されてもよく、さらにその周囲で、上シール部28の少なくとも一部等に形成されてもよい。また、包装フィルム23の間がシールされていない未シール部の上まで、耐熱コート層30が延長して形成されてもよい。
【0043】
図2に示すように、第1例の包装容器31の場合は、上シール部28が左右の側シール部25の間を接続し、上シール部28の中央部にスパウト10が上向きにシールされ、包装袋20の内部が密閉されている。スパウト10を通して内容物を包装袋20に充填してから、キャップ等の蓋(図示せず)を用いてスパウト10を閉鎖することにより、包装袋20を密封することができる。
【0044】
図3に示すように、第2例の包装容器32の場合は、左右の側シール部25のうち一方に接して胴部材24の上部に未シール部からなる開口部29が形成されている。上シール部28の一部は斜めに形成され、スパウト10が斜めにシールされている。開口部29を有する包装袋20の場合、スパウト10を開封することなく、開口部29から内容物を包装袋20に充填することができる。また、内容物を充填した後の包装袋20は、開口部29の未シール部を接合することにより、包装袋20を密封することができる。
【0045】
図4に示すように、スパウト10等の付属物として、包装袋20の内部に封入される注出口開口部材42を用いることもできる。図示例の包装容器40は、包装袋20の胴部材24に形成されたフィルムタイプの注出口41を有する。注出口41は、包装袋20の上部または隅部で細く突出する形状に形成されてもよい。
【0046】
注出口41は、胴部材24を形成する一対の包装フィルム23から形成されている。注出口開口部材42は、包装フィルム23の間にシールされている。注出口41の外周部では、側シール部25から連続したシール部により、前後の胴部材24が互いに接合されている。注出口41の内部では、前後の胴部材24が未シールとされて流路が形成されている。注出口開口部材42は、注出口41の流路に設置されている。
【0047】
注出口開口部材42の形状は特に限定されないが、例えば、筒状、かご状、リング状などが挙げられる。図示例の注出口開口部材42は、注出口41の流路と同様に、右下から左上に向かって軸線を有する筒状のストローである。
【0048】
注出口開口部材42と胴部材24との間をシールして、注出口開口部材42の内部のみに内容物が流れるようにしてもよい。注出口開口部材42と胴部材24との間のシールを部分的にして、注出口開口部材42と胴部材24との間で内容物が流れるようにしてもよい。
【0049】
注出口開口部材42に対して耐熱コート層30が形成される範囲は、少なくとも、包装フィルム23が注出口開口部材42と重なり合う領域を含む。例えば、注出口開口部材42が包装フィルム23間に挟み込まれている領域およびその周辺に耐熱コート層30を形成することが好ましい。
【0050】
胴部材24から形成される注出口41は、胴部材24を引き裂いて開封される。開封を容易にするため、ミシン目、ノッチ、ハーフカット溝などのように包装フィルム23の厚さ方向に加工した構造を有してもよい。注出口41の開封を容易にするため、開封部の周縁にノッチ等の切れ目を形成してもよい。注出口41の外周部で胴部材24の間を接合したシール部に切れ目を形成すると、包装袋20の密封性を確保することができる。
【0051】
図4に示す包装容器40の下部は図示を省略しているが、
図2~3に示す包装容器31,32と同様に、胴部材24の間に底部材26を挟み込んで、包装袋20を自立させることができる。
【0052】
底部材26を下側としたとき、スパウト10または注出口41は、包装袋20に対して上向きまたは斜め上向きに設置することが好ましい。これにより、スパウト10または注出口41を開封した状態でも、内容物がスパウト10または注出口41から漏出することなく、包装袋20を自立させることができる。スパウト10または注出口41を横向き、下向き、あるいは斜め下向きにすると、包装袋20から内容物が注出される。
【0053】
図2に示す包装容器31では、スパウト10が上向きに設置されている。
図3に示す包装容器32では、スパウト10が斜め上向きに設置されている。
図4に示す包装容器40では、注出口41が斜め上向きに設置されている。特に図示しないが、フィルムタイプの注出口41を上向きに設置することも可能である。
【0054】
包装袋20の寸法は、特に限定されるものではないが、例えば詰め替え容器の用途では、上下方向の高さが100~500mm程度、左右方向の幅が70~300mm程度、充填量としては100cm3~5000cm3程度が挙げられる。内容物の状態としては、液体、粉体、粒体等の流動物が挙げられ、包装袋20が液体を内封する用途でもよい。内容物の種類としては、特に限定されないが、洗剤、薬剤、化粧品、医薬品、飲料、調味料、インキ、塗料、燃料等が挙げられる。
【0055】
長尺の包装フィルム23から包装袋20を作製し、スパウト10等の付属物をシールして、包装容器31,32,40を製造する場合、耐熱コート層30は、長尺の包装フィルム23の段階で形成される。例えばロール状の包装フィルム23を平たく展開し、耐熱コート層30を形成した後、スパウト10等の付属物のシール工程と、包装袋20のシール工程を行うことで、包装容器31,32,40が得られる。
【0056】
平たく展開した包装フィルム23の片面に耐熱コート層30を形成した後、再び包装フィルム23をロール状に巻回することも可能である。平たく展開した状態で耐熱コート層30を形成した包装フィルム23を巻回することなく、包装容器31,32,40の製造を行うことも可能である。
【0057】
スパウト10等の付属物のシール工程に先立って、包装フィルム23に凹凸等の成形部を形成してもよい。成形部の形成に先立って、包装フィルム23の成形部となる箇所を予熱してもよい。さらに搬送中の包装フィルム23を引っ張って、予熱した箇所を引き伸ばしてもよい。
【0058】
成形部は、圧空成形、真空成形、プラグ成形などにより、包装フィルム23の内面が凹部となり、包装フィルム23の外面が凸部となるように変形させてもよい。スパウト10の場合は、少なくとも基部12を設置する箇所に成形部を形成することが好ましい。注出口開口部材42の場合は、注出口開口部材42の形状に沿って、全体を含むように成形部を形成することが好ましい。
【0059】
スパウト10等の付属物のシール工程は、ポイントシール等で仮止めする工程と、包装フィルム23に固定する工程とを含んでもよい。仮止め工程は、スパウト10等の付属物を設置する箇所の一部のみを加熱することで、包装フィルム23に対する位置ずれ等を抑制することができる。包装フィルム23に仮止めした状態で、スパウト10等の付属物の周囲を加熱することにより、包装フィルム23への固定をより確実に行うことができる。
【0060】
実施形態によれば、耐熱コート層30を設けることで、包装フィルム23の耐熱性を確保することができる。これにより、スパウト10等の付属物がシールされる箇所が、予熱、成形、仮止め、固定などの多段階にわたって加熱されても、包装フィルム23の収縮等を抑制することができる。
【0061】
耐熱コート層30は、包装フィルム23に凹凸を成形したり、スパウト10等の付属物を固定したりするときに、包装フィルム23が適度に引き伸ばされることが好ましく、過度な引き伸ばしを抑制することが好ましい。
【0062】
スパウト10等の付属物および/または包装袋20に用いられるポリエチレン系樹脂は、エチレンの単独重合体(ホモポリマー)でもよく、エチレンを主体とする共重合体(コポリマー)でもよい。エチレン以外のモノマー(コモノマー)としては、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン、ノルボルネン等の環状オレフィン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸等のビニル系モノマー等の1種または2種以上が挙げられる。ポリエチレン系樹脂が、酢酸ビニル等のエステル基を有するモノマーを共重合している場合は、エステル基の一部がケン化されて、ビニルアルコールを含む共重合体となっていてもよい。
【0063】
スパウト10等の付属物および/または包装袋20に用いられるポリエチレン系樹脂の構成モノマーにおけるエチレンの割合は、50重量%以上が好ましく、例えば、80~100重量%でもよい。エチレンまたはコモノマーは、石油等の化石資源に由来する化合物でもよく、植物等のバイオマスに由来する化合物でもよい。スパウト10等の付属物に使用される樹脂がポリエチレン系樹脂のみでもよく、包装フィルム23のポリエチレン系樹脂層に含まれる樹脂が、ポリエチレン系樹脂のみでもよい。ポリエチレン系樹脂の少なくとも一部が、リサイクルされたポリエチレン系樹脂を含んでもよい。
【0064】
スパウト10等の付属物および/または包装袋20に用いられるポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂)は、適宜の範囲で他の樹脂および/または添加剤を含有してもよい。添加剤としては、特に限定されないが、例えば、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、着色剤、架橋剤等が挙げられる。添加剤は、樹脂に相溶する成分でもよく、樹脂に相溶しない成分でもよい。
【0065】
包装袋20をポリエチレン系樹脂のモノマテリアルの容器包装とする場合、包装フィルム23の全重量に対し、ポリエチレン系樹脂の合計が80重量%以上であり、ポリエチレン系樹脂以外の材料の合計が20重量%以下であることが好ましく、ポリエチレン系樹脂の合計が90重量%以上であり、ポリエチレン系樹脂以外の材料の合計が10重量%以下であることがより好ましい。これにより、包装フィルム23に他の樹脂、添加剤、接着剤等が使用されていても、モノマテリアルの包装袋20を実現することができる。
【0066】
スパウト10等の付属物および包装袋20を備える包装容器31,32,40によるモノマテリアルの容器包装とする場合、スパウト10等の付属物および包装袋20を合計した包装容器31,32,40の全重量に対し、ポリエチレン系樹脂の合計が80重量%以上であり、ポリエチレン系樹脂以外の材料の合計が20重量%以下であることが好ましく、ポリエチレン系樹脂の合計が90重量%以上であり、ポリエチレン系樹脂以外の材料の合計が10重量%以下であることがより好ましい。これにより、スパウト10等の付属物と包装袋20とを分離しなくても、全体がモノマテリアルの包装容器31,32,40を実現することができる。
【0067】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。改変としては、構成要素の追加、置換、省略、その他の変更が挙げられる。
【符号の説明】
【0068】
10…スパウト、11…筒部、12…基部、13…流路、14…開口部、20…包装袋、21…シーラント、22…基材、23…包装フィルム、24…胴部材、25…側シール部、26…底部材、27…底シール部、28…上シール部、29…開口部、30…耐熱コート層、31,32,40…包装容器、41…注出口、42…注出口開口部材。