(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054724
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】冷凍ブロッコリー、冷凍ブロッコリーパック、冷凍野菜パック、冷凍食品、およびそれらの製造方法、ならびに冷凍ブロッコリーパック、冷凍野菜パックまたは冷凍食品における冷凍ブロッコリーの食感向上方法
(51)【国際特許分類】
A23B 7/04 20060101AFI20240410BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20240410BHJP
【FI】
A23B7/04
A23L19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161144
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004189
【氏名又は名称】株式会社ニッスイ
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ビリヤラッタナサク チョテイカ
(72)【発明者】
【氏名】橋本 朋子
(72)【発明者】
【氏名】竹村 裕二
【テーマコード(参考)】
4B016
4B169
【Fターム(参考)】
4B016LC06
4B016LE03
4B016LG10
4B016LP03
4B016LP06
4B016LP11
4B169AA01
4B169AA04
4B169AB04
4B169CA01
4B169HA09
(57)【要約】
【課題】食感の向上したブロッコリー、それを含む冷凍ブロッコリーパック等、それらの製造方法、および冷凍ブロッコリーパック等における冷凍ブロッコリーの食感向上方法を提供すること。
【解決手段】自然解凍後の最大荷重が450kPa以上であるか、茎100gに含まれる水溶性ペクチンの量が85mg以下である冷凍ブロッコリー;含まれる冷凍ブロッコリーのうち、50質量%以上が前記冷凍ブロッコリーである、冷凍ブロッコリーパック、冷凍野菜パックまたは冷凍食品;冷凍工程後の冷凍ブロッコリーの茎100gあたりに含まれる水溶性ペクチンの量が85mg以下である、冷凍ブロッコリーの製造方法;茎100gに含まれる水溶性ペクチンの量が85mg以下である冷凍ブロッコリーをパッケージングする工程を有する、冷凍ブロッコリーパック、冷凍野菜パック、もしくは冷凍食品の製造方法、またはこれらにおける冷凍ブロッコリーの食感向上方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然解凍後の最大荷重が450N以上、および/または、
茎に含まれる水溶性ペクチンの量が、茎100gあたり85mg以下である、
冷凍ブロッコリー。
【請求項2】
前記最大荷重は、一辺が3~5mmの範囲内となるようにダイスカットした自然解凍後の茎を、外形直径42mm、外形高さ13.5mmの円柱状のシャーレに9g投入し、直径36mmのパンクチャープローブ(フラット型)で圧縮速度1mm/s、圧縮率40%で圧縮して測定される最大荷重である、請求項1に記載の冷凍ブロッコリー。
【請求項3】
茎に含まれる水溶性ペクチンの量が、茎に含まれる総ペクチン量の22.5質量%以下である、請求項1または2に記載の冷凍ブロッコリー。
【請求項4】
茎に含まれる水溶性ペクチンの量が、茎におけるアルコール不溶性固形分(AIS)含量の1.6質量%以下である、請求項1または2に記載の冷凍ブロッコリー。
【請求項5】
自然解凍後の茎から分離されるドリップ量が20質量%以下である、請求項1または2に記載の冷凍ブロッコリー。
【請求項6】
茎に含まれるカルシウムイオンの量が50ppm以上である、請求項1または2に記載の冷凍ブロッコリー。
【請求項7】
請求項1または2に記載の冷凍ブロッコリーを50質量%以上含む、冷凍ブロッコリーパック。
【請求項8】
含まれる冷凍ブロッコリーのうち、50質量%以上が請求項1または2に記載の冷凍ブロッコリーである、冷凍野菜パック。
【請求項9】
冷凍ブロッコリーを含む冷凍食品であって、
含まれる冷凍ブロッコリーのうち、50質量%以上が請求項1または2に記載の冷凍ブロッコリーである、冷凍食品。
【請求項10】
ブランチング工程と、
冷凍工程と、
を含む冷凍ブロッコリーの製造方法であって、
前記冷凍工程後の冷凍ブロッコリーの、
- 自然解凍後の最大荷重が450N以上、および/または、
- 茎に含まれる水溶性ペクチンの量が、茎100gあたり85mg以下である、
冷凍ブロッコリーの製造方法。
【請求項11】
前記ブランチング工程が、80~100℃の水で0.5~6分間加熱する工程である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記冷凍工程後の冷凍ブロッコリーの茎に含まれる水溶性ペクチンの量が、茎に含まれる総ペクチン量の22.5質量%以下である、請求項10または11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記冷凍工程後の冷凍ブロッコリーの茎に含まれる水溶性ペクチンの量が、茎におけるアルコール不溶性固形分(AIS)含量の1.6質量%以下である、請求項10または11に記載の製造方法。
【請求項14】
前記冷凍工程後の冷凍ブロッコリーの茎に含まれるカルシウムイオンの量が50ppm以上である、請求項10または11に記載の製造方法。
【請求項15】
自然解凍後の最大荷重が450N以上、および/または、茎に含まれる水溶性ペクチンの量が、茎100gあたり85mg以下である冷凍ブロッコリーをパッケージングする工程を有する、冷凍ブロッコリーパック、冷凍野菜パックまたは冷凍食品の製造方法。
【請求項16】
自然解凍後の最大荷重が450N以上、および/または、茎に含まれる水溶性ペクチンの量が、茎100gあたり85mg以下である冷凍ブロッコリーをパッケージングする工程を有する、冷凍ブロッコリーパック、冷凍野菜パックまたは冷凍食品における冷凍ブロッコリーの食感向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍ブロッコリー、冷凍ブロッコリーパック、冷凍野菜パック、冷凍食品、およびそれらの製造方法、ならびに冷凍ブロッコリーパック、冷凍野菜パックまたは冷凍食品における冷凍ブロッコリーの食感向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍野菜の多くは、ブランチング工程および冷凍工程を経て製造される。ブランチング工程は、冷凍工程の前に野菜を加熱する工程である。ブランチング工程により、野菜の冷凍耐性が向上する、酵素が失活し野菜の変色が抑制される、野菜が殺菌される、等の効果が得られる。
【0003】
冷凍野菜は、生鮮野菜と比較して食感が軟化していることがある。その原因としては、ブランチング工程中の加熱によるペクチンの変化、冷凍工程中の氷結晶の生成による細胞破壊等が考えられている。冷凍野菜の中でも、冷凍ブロッコリーは、様々なメニューへの汎用性が高く、栄養価も高いことから、人気のある野菜である。ブロッコリーについては、凍結方法について検討した報告(非特許文献1)や、ブランチング方法について検討した報告(非特許文献2)がある。しかしながら、冷凍ブロッコリーの食感については、未だに改善の余地がある。
【0004】
ブロッコリーは、地中海原産の栽培植物で、蕾状態の花序と茎を食用にする。日本において一般的に流通しているブロッコリーとしては、春に播種して夏に収穫するものと、夏に播種して冬に収穫するものがあり、冷涼地、一般地、暖地等の気候条件に合わせて様々な品種が栽培されている。
【0005】
ブロッコリー中の水溶性ペクチンの量は加熱によって増加することが報告されている(非特許文献3)。また、水溶性ペクチンの量は、冷凍によっても変化し得る。しかし、ブロッコリー中の水溶性ペクチンの量が、ブロッコリーの品種、栽培条件、産地、収穫時期等の収穫までの条件によってどの程度変化するのか、また、加熱や冷凍等の収穫後の加工条件によってどの程度変化するのかについては知見に乏しい。
【0006】
食品の食感を調べる際に、最大荷重を測定することが有用である。特に、歯応えとシャキシャキ感にとって最大荷重は重要な指標となり得る。しかし、冷凍ブロッコリーの最大荷重についての知見は乏しい。
【0007】
冷凍食品にとってドリップは大敵である。ドリップは、水分だけではなく、糖分、アミノ酸等の味覚に関わる成分を含むため、ドリップ量が多いと味覚が損なわれ、水っぽい食感となる。しかし、冷凍ブロッコリーのドリップ量を抑制する方法については知見に乏しい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】"Ultrasound assisted immersion freezing of broccoli (Brassica oleracea L. var. botrytis L.)", Ultrasonics Sonochemistry, 2014年9月, Volume 21, Issue 5, p.1728 - 1735
【非特許文献2】"The effect of thermal processing on sensory properties, texture attributes, and pectic changes in broccoli", Czech Journal of Food Sciences, 2015年, Volume 33, Issue 3, p.254 - 260
【非特許文献3】"Texture of broccoli and carrots cooked by microwave energy", Journal of Food Sciences, 1975年, Volume 40, p.1025
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、食感の向上したブロッコリー、食感の向上したブロッコリーを含む冷凍ブロッコリーパック、冷凍野菜パックまたは冷凍食品、それらの製造方法、および冷凍ブロッコリーパック、冷凍野菜パックまたは冷凍食品における冷凍ブロッコリーの食感向上方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の要旨構成は以下の通りである。
[1]自然解凍後の最大荷重が450N以上、および/または、茎に含まれる水溶性ペクチンの量が、茎100gあたり85mg以下である、冷凍ブロッコリー。
[2]前記最大荷重は、一辺が3~5mmの範囲内となるようにダイスカットした自然解凍後の茎を、外形直径42mm、外形高さ13.5mmの円柱状のシャーレに9g投入し、直径36mmのパンクチャープローブ(フラット型)で圧縮速度1mm/s、圧縮率40%で圧縮して測定される最大荷重である、[1]の冷凍ブロッコリー。
[3]茎に含まれる水溶性ペクチンの量が、茎に含まれる総ペクチン量の22.5質量%以下である、[1]または[2]の冷凍ブロッコリー。
[4]茎に含まれる水溶性ペクチンの量が、茎におけるアルコール不溶性固形分(AIS)含量の1.6質量%以下である、[1]~[3]のいずれかの冷凍ブロッコリー。
[5]自然解凍後の茎から分離されるドリップ量が20質量%以下である、[1]~[4]のいずれかの冷凍ブロッコリー。
[6]茎に含まれるカルシウムイオンの量が50ppm以上である、[1]~[5]のいずれかの冷凍ブロッコリー。
[7][1]~[6]のいずれかの冷凍ブロッコリーを50質量%以上含む、冷凍ブロッコリーパック。
[8]含まれる冷凍ブロッコリーのうち、50質量%以上が[1]~[6]のいずれかの冷凍ブロッコリーである、冷凍野菜パック。
[9]冷凍ブロッコリーを含む冷凍食品であって、含まれる冷凍ブロッコリーのうち、50質量%以上が[1]~[6]のいずれかの冷凍ブロッコリーである、冷凍食品。
[10]ブランチング工程と、冷凍工程と、を含む冷凍ブロッコリーの製造方法であって、前記冷凍工程後の冷凍ブロッコリーの、自然解凍後の最大荷重が450N以上、および/または、茎に含まれる水溶性ペクチンの量が、茎100gあたり85mg以下である、冷凍ブロッコリーの製造方法。
[11]前記ブランチング工程が、80~100℃の水で0.5~6分間加熱する工程である、[10]の製造方法。
[12]前記冷凍工程後の冷凍ブロッコリーの茎に含まれる水溶性ペクチンの量が、茎に含まれる総ペクチン量の22.5質量%以下である、[10]または[11]の製造方法。
[13]前記冷凍工程後の冷凍ブロッコリーの茎に含まれる水溶性ペクチンの量が、茎におけるアルコール不溶性固形分(AIS)含量の1.6質量%以下である、[10]~[12]のいずれかの製造方法。
[14]前記冷凍工程後の冷凍ブロッコリーの茎に含まれるカルシウムイオンの量が50ppm以上である、[10]~[13]のいずれかの製造方法。
[15]自然解凍後の最大荷重が450N以上、および/または、茎に含まれる水溶性ペクチンの量が、茎100gあたり85mg以下である冷凍ブロッコリーをパッケージングする工程を有する、冷凍ブロッコリーパック、冷凍野菜パックまたは冷凍食品の製造方法。
[16]自然解凍後の最大荷重が450N以上、および/または、茎に含まれる水溶性ペクチンの量が、茎100gあたり85mg以下である冷凍ブロッコリーをパッケージングする工程を有する、冷凍ブロッコリーパック、冷凍野菜パックまたは冷凍食品における冷凍ブロッコリーの食感向上方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[冷凍ブロッコリー]
本開示において、「冷凍ブロッコリー」とは、ブロッコリー中に含まれる水分の少なくとも一部が凍結したブロッコリーを示す。冷凍ブロッコリーの温度は、典型的には0℃以下、-3℃以下、-5℃以下、-10℃以下、または-20℃以下であってよい。本開示の範囲内であれば、使用するブロッコリーの品種、栽培条件、産地、収穫時期その他の条件は限定されない。
【0012】
本開示において、冷凍ブロッコリーは、以下の(A)~(E)から選択される1つ以上の特性を有する。特に、本開示において、冷凍ブロッコリーは、以下の(A)および(B)のうちの少なくとも1つの特性を有する。
(A)自然解凍後の最大荷重が450N以上である。
(B)茎に含まれる水溶性ペクチンの量が、茎100gあたり85mg以下である。
(C)茎に含まれる水溶性ペクチンの量が、茎に含まれる総ペクチン量の22.5質量%以下である。
(D)茎に含まれる水溶性ペクチンの量が、茎におけるアルコール不溶性固形分(AIS)含量の1.6質量%以下である。
(E)自然解凍後の茎から分離されるドリップ量が20質量%以下である。
【0013】
上記(A)において、「最大荷重」とは、一辺が3~5mmの範囲内となるように包丁でダイスカットした自然解凍後の茎を、外形(外寸)の直径42mm、高さ13.5mm(内側(内寸)の直径39mm、高さ12mm(いずれも実測値))の円柱状のシャーレ(有限会社タケトモ電機製)に9g投入し、直径36mmのパンクチャープローブ(フラット型)(有限会社タケトモ電機製)で圧縮速度1mm/s、圧縮率40%で圧縮して測定される最大荷重である。最大荷重は、例えば有限会社タケトモ電機製「テンシプレッサー TTP-50BXII」を用いて測定することができる。なお、装置によっては最大荷重が「gw(またはgf)/cm2」の単位で得られることがあるが、例えば1000gw(gf)/cm2と測定された場合、最大荷重は1000gw(gf)/cm2×10.1788cm2×0.0098N/gw(gf)=99.7522Nとして換算して判定することができる。なお、ここで計算に用いた10.1788cm2は直径36mmのプローブの測定エリアであり、0.0098N/gw(gf)はgw(gf)からNへの換算率である。
【0014】
冷凍ブロッコリーの自然解凍後の最大荷重は、450N以上であってもよく、600N以上であってもよく、700N以上であってもよく、800N以上であってもよく、900N以上であってもよい。典型的には、冷凍ブロッコリーの自然解凍後の最大荷重が大きいほど、歯応えおよびシャキシャキ感が得られやすい。
【0015】
冷凍ブロッコリーの自然解凍後の最大荷重は、2000N以下であってもよく、1800N以下であってもよく、1600N以下であってもよく、1400N以下であってもよく、1200N以下であってもよい。典型的には、冷凍ブロッコリーの自然解凍後の最大荷重が小さいほど、過度に硬い食感となることを防止しやすい。
【0016】
冷凍ブロッコリーの自然解凍後の最大荷重の上限値および下限値は、本開示の範囲で任意に組み合わせることができる。例えば、冷凍ブロッコリーの自然解凍後の最大荷重は、450~2000Nの範囲内であってもよく、600~1800Nの範囲内であってもよく、700~1600Nの範囲内であってもよく、800~1400Nの範囲内であってもよく、900~1200Nの範囲内であってもよい。冷凍ブロッコリーの自然解凍後の最大荷重が適切な範囲内であることにより、適切な歯応えおよびシャキシャキ感が得られ、良好な食感となりやすい。
【0017】
ペクチンは、野菜や果実等の植物中の細胞壁等に含まれる、ガラクツロン酸を主成分とする多糖類である。ペクチンはその分子量や構造の違いにより様々な種類に分類されるが、中でも水溶性のものを、本明細書中では「水溶性ペクチン」と称する。他のペクチンとしては、キレート可溶性ペクチンや炭酸ナトリウム可溶性ペクチンが存在する。ブロッコリーにおける各種ペクチン(水溶性ペクチン、キレート可溶性ペクチン及び炭酸ナトリウム可溶性ペクチン)の量、総ペクチン量、アルコール不溶性固形分(AIS)の量等は、例えばChristiaensらにより"Towards a better understanding of the pectin structure-function relationship in broccoli during processing: Part I - macroscopic and molecular analyses", Food Research International, 2011年7月, Volume 44, Issue 6, p.1604 - 1612に開示された方法を用いて抽出し、Meltonらにより"Determination of the uronic acid content of plant cell walls using a colorimetric assay", Current protocols in food analytical chemistry, 2001年8月, p.E3.3.1 - E3.3.4に開示された方法を用いて測定が可能である。
【0018】
冷凍ブロッコリーの茎に含まれる水溶性ペクチンの量は、茎100gあたり85mg以下であってもよく、茎100gあたり75mg以下であってもよく、茎100gあたり65mg以下であってもよく、茎100gあたり55mg以下であってもよく、茎100gあたり45mg以下であってもよい。典型的には、茎100gあたりに含まれる水溶性ペクチンの量が少ないほど、自然解凍後の最大荷重が大きくなりやすく、歯応えおよびシャキシャキ感が得られやすい。
【0019】
冷凍ブロッコリーの茎に含まれる水溶性ペクチンの量は、茎100gあたり10mg以上であってもよく、茎100gあたり15mg以上であってもよく、茎100gあたり20mg以上であってもよく、茎100gあたり25mg以上であってもよく、茎100gあたり30mg以上であってもよい。典型的には、茎100gあたりに含まれる水溶性ペクチンの量が多いほど、自然解凍後の最大荷重が小さくなりやすく、過度に硬い食感となることを防止しやすい。
【0020】
冷凍ブロッコリーの茎100gあたりに含まれる水溶性ペクチンの量の上限値および下限値は、本開示の範囲で任意に組み合わせることができる。例えば、冷凍ブロッコリーの茎100gあたりに含まれる水溶性ペクチンの量は、10~85mgの範囲内であってもよく、15~75mgの範囲内であってもよく、20~65mgの範囲内であってもよく、25~55mgの範囲内であってもよく、30~45mgの範囲内であってもよい。冷凍ブロッコリーの茎100gあたりに含まれる水溶性ペクチンの量が適切な範囲内であることにより、適切な歯応えおよびシャキシャキ感が得られ、良好な食感となりやすい。
【0021】
冷凍ブロッコリーの茎に含まれる水溶性ペクチンの量は、茎に含まれる総ペクチン量の22.5質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよく、15質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい。典型的には、総ペクチン量に対する水溶性ペクチンの量が少ないほど、歯応えおよびシャキシャキ感が得られやすい。
【0022】
冷凍ブロッコリーの茎に含まれる水溶性ペクチンの量は、茎に含まれる総ペクチン量の1質量%以上であってもよく、2質量%以上であってもよく、4質量%以上であってもよく、8質量%以上であってもよい。典型的には、総ペクチン量に対する水溶性ペクチンの量が多いほど、過度に硬い食感となることを防止しやすい。
【0023】
冷凍ブロッコリーの茎に含まれる水溶性ペクチンの量の、茎に含まれる総ペクチン量に対する割合の上限値および下限値は、本開示の範囲で任意に組み合わせることができる。例えば、当該割合は、1~22.5質量%の範囲内であってもよく、2~20質量%の範囲内であってもよく、4~15質量%の範囲内であってもよく、8~10質量%の範囲内であってもよい。冷凍ブロッコリーの茎に含まれる水溶性ペクチンの量の、茎に含まれる総ペクチン量に対する割合が適切な範囲内であることにより、適切な歯応えおよびシャキシャキ感が得られ、良好な食感となりやすい。
【0024】
冷凍ブロッコリーの茎に含まれる水溶性ペクチンの量は、茎におけるアルコール不溶性固形分(AIS)含量の1.6質量%以下であってもよく、1.4質量%以下であってもよく、1.2質量%以下であってもよく、1質量%以下であってもよい。典型的には、茎におけるアルコール不溶性固形分(AIS)含量に対する水溶性ペクチンの量が少ないほど、歯応えおよびシャキシャキ感が得られやすい。
【0025】
冷凍ブロッコリーの茎に含まれる水溶性ペクチンの量は、茎におけるアルコール不溶性固形分(AIS)含量の0.1質量%以上であってもよく、0.2質量%以上であってもよく、0.3質量%以上であってもよく、0.4質量%以上であってもよい。典型的には、茎におけるアルコール不溶性固形分(AIS)含量に対する水溶性ペクチンの量が多いほど、過度に硬い食感となることを防止しやすい。
【0026】
冷凍ブロッコリーの茎に含まれる水溶性ペクチンの量の、茎におけるアルコール不溶性固形分(AIS)含量に対する割合の上限値および下限値は、本開示の範囲で任意に組み合わせることができる。例えば、当該割合は、0.1~1.6質量%の範囲内であってもよく、0.2~1.4質量%の範囲内であってもよく、0.3~1.2質量%の範囲内であってもよく、0.4~1質量%の範囲内であってもよい。冷凍ブロッコリーの茎に含まれる水溶性ペクチンの量の、茎におけるアルコール不溶性固形分(AIS)含量に対する割合が適切な範囲内であることにより、適切な歯応えおよびシャキシャキ感が得られ、良好な食感となりやすい。
【0027】
本開示の冷凍ブロッコリーにおいては、自然解凍後の茎から分離されるドリップ量が20質量%以下であってもよく、18質量%以下であってもよく、16質量%以下であってもよく、14質量%以下であってもよい。なお、自然解凍後の茎から分離されるドリップ量は、実施例に記載の方法により測定が可能である。典型的には、自然解凍後の茎から分離されるドリップ量が少ないほど、食感の水っぽさが抑制される。
【0028】
本開示の冷凍ブロッコリーにおいては、自然解凍後の茎から分離されるドリップ量が5質量%以上であってもよく、8質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよく、12質量%以上であってもよい。典型的には、自然解凍後の茎から分離されるドリップ量が多いほど、ジューシー感が付与される。
【0029】
本開示の冷凍ブロッコリーにおける、自然解凍後の茎から分離されるドリップ量の上限値および下限値は、本開示の範囲で任意に組み合わせることができる。例えば、自然解凍後の茎から分離されるドリップ量は、5~20質量%の範囲内であってもよく、8~18質量%の範囲内であってもよく、10~16質量%の範囲内であってもよく、12~14質量%の範囲内であってもよい。自然解凍後の茎から分離されるドリップ量が適切な範囲内であることにより、水っぽさが抑制されつつ、適度なジューシー感が付与される。
【0030】
本開示の冷凍ブロッコリーは、茎に含まれるカルシウムイオンの量が50ppm以上であってもよく、55ppm以上であってもよく、60ppm以上であってもよく、65ppm以上であってもよく、70ppm以上であってもよく、80ppm以上であってもよく、90ppm以上であってもよい。典型的には、茎に含まれるカルシウムイオンの量が多いほど、食感が良好となりやすい。
【0031】
本開示の冷凍ブロッコリーは、茎に含まれるカルシウムイオンの量が200ppm以下であってもよく、180ppm以下であってもよく、160ppm以下であってもよく、140ppm以下であってもよく、120ppm以下であってもよく、110ppm以下であってもよく、100ppm以下であってもよい。典型的には、茎に含まれるカルシウムイオンの量が少ないほど、苦みが顕在化しにくい。
【0032】
茎に含まれるカルシウムイオンの量の上限値および下限値は、本開示の範囲で任意に組み合わせることができる。例えば、茎に含まれるカルシウムイオンの量は、50~200ppmの範囲内であってもよく、55~180ppmの範囲内であってもよく、60~160ppmの範囲内であってもよく、65~140ppmの範囲内であってもよく、70~120ppmの範囲内であってもよく、80~110ppmの範囲内であってもよく、90~100ppmの範囲内であってもよい。茎に含まれるカルシウムイオンの量が適切な範囲内であることにより、苦みを抑制しつつ、食感を向上させやすい。
【0033】
[冷凍ブロッコリーパック、冷凍野菜パックまたは冷凍食品]
本開示の冷凍ブロッコリーパックは、本開示の冷凍ブロッコリーが50質量%以上含まれるようにパッケージングされた冷凍ブロッコリーパックである。本開示の冷凍ブロッコリーパックは、本開示の冷凍ブロッコリーを60質量%以上含んでいてもよく、本開示の冷凍ブロッコリーを70質量%以上含んでいてもよく、本開示の冷凍ブロッコリーを80質量%以上含んでいてもよく、本開示の冷凍ブロッコリーを90質量%以上含んでいてもよく、本開示の冷凍ブロッコリーを100質量%含んでいてもよい。
【0034】
本開示の冷凍野菜パックは、含まれる冷凍ブロッコリーのうち、50質量%以上が本開示の冷凍ブロッコリーとなるようにパッケージングされた冷凍野菜パックである。本開示の冷凍野菜パックは、含まれる冷凍ブロッコリーのうち、60質量%以上が本開示の冷凍ブロッコリーであってもよく、70質量%以上が本開示の冷凍ブロッコリーであってもよく、80質量%以上が本開示の冷凍ブロッコリーであってもよく、90質量%以上が本開示の冷凍ブロッコリーであってもよく、100%が本開示の冷凍ブロッコリーであってもよい。本開示の冷凍野菜パックは、冷凍ブロッコリーではない冷凍野菜を含む。そのような冷凍野菜の種類は特に限定されない。本開示の冷凍野菜パックは、例えば、冷凍されたニンジン、タマネギ、ネギ、キャベツ、レタス、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、レンコン、ピーマン、ズッキーニ、ナス、トマト、キュウリ、トウモロコシ、エンドウマメ、もやし等から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。本開示の冷凍野菜パックに含まれる冷凍野菜における、冷凍ブロッコリーの含有割合は特に限定されない。
【0035】
本開示の冷凍食品は、含まれる冷凍ブロッコリーのうち、50質量%以上が本開示の冷凍ブロッコリーである冷凍食品である。本開示の冷凍食品は、含まれる冷凍ブロッコリーのうち、60質量%以上が本開示の冷凍ブロッコリーであってもよく、70質量%以上が本開示の冷凍ブロッコリーであってもよく、80質量%以上が本開示の冷凍ブロッコリーであってもよく、90質量%以上が本開示の冷凍ブロッコリーであってもよく、100%が本開示の冷凍ブロッコリーであってもよい。本開示の冷凍食品は、冷凍ブロッコリーの他、例えば冷凍された野菜、肉、卵、米、麺、調味料等を含んでいてもよい。
【0036】
冷凍ブロッコリーパック、冷凍野菜パックまたは冷凍食品において、冷凍ブロッコリーの自然解凍後の最大荷重、茎に含まれる水溶性ペクチンの量、自然解凍後の茎から分離されるドリップ量、およびカルシウムイオンの量については、それぞれの可能な範囲も含め、冷凍ブロッコリーについて上記した内容をそのまま適用可能であるため、詳細な記載を省略する。
【0037】
[冷凍ブロッコリー、冷凍ブロッコリーパック、冷凍野菜パックおよび冷凍食品の製造方法]
本開示の冷凍ブロッコリーは、ブランチング工程および冷凍工程を含む製造方法により製造可能である。ここで、前記冷凍工程後の冷凍ブロッコリーの茎に含まれる水溶性ペクチンの量が、茎100gあたり85mg以下となるようなブロッコリーを選別して冷凍ブロッコリーを製造するか、前記冷凍工程後において、自然解凍後の最大荷重が450N以上となるようなブロッコリーを選別して冷凍ブロッコリーを製造する。または、同じ圃場で同じ時期に収穫された同じ品種のブロッコリーを、同ロットのブロッコリーと定義するとき、前記冷凍工程後の各ロットにおいてサンプリングおよび分析を行い、上記数値範囲に属するロットを採用することで本開示の冷凍ブロッコリーを製造してもよい。
【0038】
ブランチング工程は、冷凍工程の前にブロッコリーを加熱する工程である。ブランチング工程は、水蒸気を用いて行ってもよく、熱水中で加熱する方法で行ってもよい。熱水中で加熱する方法では、例えば、80~100℃の水で0.5~6分間加熱してもよい。熱水中で加熱する際の加熱時間は、2~5.5分間であってもよく、3~5分間であってもよい。
【0039】
冷凍工程は、ブランチング工程を経たブロッコリーを、冷凍庫または急速冷凍装置等を用いて冷凍する工程である。冷凍工程の際の温度は、例えば0℃以下、-3℃以下、-5℃以下、-10℃以下、または-20℃以下であってよい。
【0040】
本開示の冷凍ブロッコリーパック、冷凍野菜パックおよび冷凍食品は、本開示の上記各数値範囲に属する特性を有する冷凍ブロッコリーを、任意に他の材料と共にパッケージングすることで製造可能である。具体的には、例えば、茎に含まれる水溶性ペクチンの量が、茎100gあたり85mg以下であるような冷凍ブロッコリーを選別してパッケージングするか、自然解凍後の最大荷重が450kPa以上であるような冷凍ブロッコリーを選別してパッケージングしてもよい。なお、これらの値は解凍をしなければ分析が困難なものであるが、同ロットのブロッコリーであれば同程度の性質を有する傾向にあるため、一部をサンプリングして分析することにより、本開示の各数値範囲に属するブロッコリーのロットを選別することができるため、本開示の冷凍ブロッコリーパック、冷凍野菜パックおよび冷凍食品は問題なく実施可能である。
【0041】
各製造方法において、冷凍ブロッコリーの自然解凍後の最大荷重、茎に含まれる水溶性ペクチンの量、自然解凍後の茎から分離されるドリップ量、およびカルシウムイオンの量については、それぞれの可能な範囲も含め、冷凍ブロッコリーについて上記した内容をそのまま適用可能であるため、詳細な記載を省略する。なお、カルシウムイオンの量については、カルシウムイオンを含む溶液を用いてブランチングする方法によっても調節可能であるが、当該方法を採用した場合は苦味が出やすい傾向にある。カルシウムイオンを含む溶液を用いてブランチングしなくても、ブロッコリーが元から含有するカルシウムイオンが上記記載の範囲内であるブロッコリー(自然解凍後の茎に含まれるカルシウムイオンが上記記載の範囲内であるブロッコリー)を用いることにより、苦みが出にくくなる傾向がある。
【0042】
[冷凍ブロッコリーパック、冷凍野菜パックまたは冷凍食品における冷凍ブロッコリーの食感向上方法]
本開示の上記各数値範囲に属する特性を有する冷凍ブロッコリーを、任意に他の材料と共にパッケージングすることにより、冷凍ブロッコリーパック、冷凍野菜パックまたは冷凍食品において冷凍ブロッコリーの食感を向上させることができる。具体的には、例えば、茎に含まれる水溶性ペクチンの量が、茎100gあたり85mg以下であるような冷凍ブロッコリーを選別してパッケージングするか、自然解凍後の最大荷重が490kPa以上であるような冷凍ブロッコリーを選別してパッケージングしてもよい。なお、これらの値は解凍をしなければ分析が困難なものであるが、本開示で明らかになったとおり、同ロットのブロッコリーであれば同程度の性質を有する傾向にあるため、一部をサンプリングして分析することにより、本開示の各数値範囲に属するブロッコリーのロットを選別することができることから、本開示の食感向上方法は問題なく実施可能である。
【0043】
本開示の食感向上方法において、冷凍ブロッコリーの自然解凍後の最大荷重、茎に含まれる水溶性ペクチンの量、自然解凍後の茎から分離されるドリップ量、およびカルシウムイオンの量については、それぞれの可能な範囲も含め、冷凍ブロッコリーについて上記した内容をそのまま適用可能であるため、詳細な記載を省略する。
【0044】
本明細書において、本開示の各態様に関する一実施形態中で説明された各特定事項は、任意に組み合わせて新たな実施形態としてもよく、このような新たな実施形態も、本開示の各態様に包含され得るものとして理解されるべきである。
【実施例0045】
以下、本開示を実施例等によりさらに具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例等により何ら限定されない。
【0046】
[冷凍ブロッコリーの製造およびパッケージング]
一般的に日本で流通しているブロッコリーのうち、日本国内の圃場で栽培された12種(実施例1~7、比較例1~5)のブロッコリーを、同時期にそれぞれ6~10株収穫し、分析まで冷蔵庫において5℃で保管した。パッケージングまでの工程は、全て収穫から5日以内に行った。なお、同じ圃場では、同時期にそれぞれ同じ品種を栽培していた。
【0047】
(切り分け工程)
各ブロッコリーを小房(Floret)ごとに切り分け、全てのサンプルにおいて、茎の長さが30~40mm、茎の直径が10mm以下となるように調整した。切り分けたサンプルは、一部を以後の水溶性ペクチン量の測定に用い、残りの一部を以後のブランチング工程に供した。
【0048】
(ブランチング工程)
比較例1~4および実施例1~3、5~7では、切り分けたサンプルを200gずつ、約5Lの沸騰水浴中で4分間茹で、加熱後に直ちに4分間氷水で冷却した。
比較例5および実施例4では、切り分けたサンプルを200gずつ、約5L、90℃の水浴中で4分間茹で、加熱後に直ちに4分間氷水で冷却した。冷却後、一部のサンプルを以後の最大荷重及びドリップ量の測定に用い、残りの一部を以後の冷凍工程に供した。
【0049】
(冷凍工程およびパッケージング工程)
各サンプル表面の余分な水をキッチンペーパーで取り除き、急速凍結装置(株式会社前川製作所製)を用いて-25℃で1時間凍結した。凍結した各サンプルをポリエチレン製袋に入れて-25℃で保存した。
【0050】
[最大荷重およびドリップ量の分析]
以下の最大荷重およびドリップ量の分析は、室温(22±2℃)で行った。凍結したサンプルは3~4時間自然解凍した後に行った。
【0051】
(最大荷重)
最大荷重は食感測定機(有限会社タケトモ電機製 テンシプレッサー TTP-50BXII)を用いて測定した。各サンプルを花蕾と茎に分けて、茎のみを測定に用いた。一辺が3~5mmの範囲内となるように茎を包丁でダイスカット(略立方体状に切断)し、外形(外寸)の直径42mm、高さ13.5mm(内側(内寸)の直径39mm、高さ12mm(いずれも実測値))の円柱状のシャーレ(有限会社タケトモ電機製)に9g投入し、高さが均一になるように調整した。直径36mmのパンクチャープローブ(フラット型)(有限会社タケトモ電機製)を用い、シャーレに入ったダイス状のサンプルを、圧縮速度1mm/s、圧縮率40%で圧縮した時の最大荷重を測定した。各サンプルにつき3回測定した。
【0052】
(ドリップ量)
各サンプルを花蕾と茎に分けて、茎のみを測定に用いた。測定には遠心分離機(久保田商事株式会社製 ユニバーサル冷却遠心機 Model 5922)を用いた。一辺が3~5mmの範囲内となるように茎を包丁でダイスカット(略立方体状に切断)したサンプル2~3gを濾紙に乗せ、室温で、RCF=300(×g)の条件で6分間遠心分離を行った。濾紙に付着した水分および遠心管に残った水分をドリップ量とし、遠心分離前のサンプルの質量に対する割合を算出した。各サンプルにつき3回測定し、平均値を得た。
【0053】
[ペクチンの分析]
アルコール不溶性固形分(AIS)、水溶性ペクチン(WSP)、キレート可溶性ペクチン(CSP)、および炭酸ナトリウム可溶性ペクチン(NSP)を、それぞれ以下の方法で測定した。
【0054】
(アルコール不溶性固形分(AIS))
AISは、Christiaensらにより"Towards a better understanding of the pectin structure-function relationship in broccoli during processing: Part I - macroscopic and molecular analyses", Food Research International, 2011年7月, Volume 44, Issue 6, p.1604 - 1612に開示された方法に準じて抽出した。
具体的には、切り分け後のサンプルを測定する場合は、さらに切り分けて茎のみを測定に用いた。冷凍工程を経たサンプルを測定する場合は、各サンプルを流水解凍し、半解凍の状態で花蕾と茎とに分けて、茎のみを測定に用いた。細かくカットした茎を15g秤量し、99.5%エタノール96mLを加えてホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製 AM-3)を用いて10,000rpmで30秒間ホモジナイズした。破砕後、濾紙(アドバンテック東洋株式会社製 No.2)を用いて吸引濾過し、残渣を回収して再度99.5%エタノール48mLを加えて同様にホモジナイズした。再度吸引濾過して残渣を回収した後、48mLのアセトンを加えて同様にホモジナイズした。吸引濾過して回収した残渣を40℃の恒温乾燥機(ヤマト科学株式会社製 DX300)を用いて一晩乾燥し、最終的に得られた残渣をAISとした。乾燥後の質量からサンプル中のAIS量を算出した。なお、上記文献では95%エタノールと記載されていたが、本測定では99.5%エタノールを使用した。
【0055】
(水溶性ペクチン(WSP)、キレート可溶性ペクチン(CSP)、および炭酸ナトリウム可溶性ペクチン(NSP))
Christiaensらにより"Towards a better understanding of the pectin structure-function relationship in broccoli during processing: Part I - macroscopic and molecular analyses", Food Research International, 2011年7月, Volume 44, Issue 6, p.1604 - 1612に開示された方法に準じて、切り分け後のサンプルを測定する場合は、WSPの抽出を行い、冷凍工程を経たサンプルを測定する場合は、WSP、CSPおよびNSPの抽出を行った。
具体的には、250mgのAISを三角フラスコに加え、蒸留水45mLを加えて90~95℃で5分間加熱した。加熱後、氷水で10分間冷却した。濾紙(アドバンテック東洋株式会社製 No.5A)を用いて試料を濾過し、上澄み液に蒸留水を加えて50mLに定容した(WSP抽出液の調製)。残渣に0.05Mのtrans-1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸(CDTA)の0.1M酢酸カリウム溶液(pH6.5)45mLを加え、スターラーで撹拌しながら28℃において5時間(なお、上記文献では6時間である)処理し、CSPを抽出した。その後、濾紙(アドバンテック東洋株式会社製 No.5A)を用いて試料を濾過し、上澄み液に0.05Mのtrans-1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸(CDTA)の0.1M酢酸カリウム溶液(pH6.5)を加えて50mLに定容した(CSP抽出液の調製)。残渣に0.02MのNaBH4を含む0.05MのNa2CO3溶液45mLを加え、スターラーで撹拌しながら4℃で16時間処理し、さらに28℃で6時間処理してNSPを抽出した。抽出後、濾紙(アドバンテック東洋株式会社製 No.5A)を用いて試料を濾過し、上澄み液に0.02MのNaBH4を含む0.05MのNa2CO3溶液を加えて50mLに定容した(NSP抽出液の調製)。
【0056】
Meltonらにより"Determination of the uronic acid content of plant cell walls using a colorimetric assay", Current protocols in food analytical chemistry, 2001年8月, p.E3.3.1 - E3.3.4に開示された方法に準じてWSP、CSP、NSPの量および総ペクチン量を測定した。
具体的には、各ペクチン抽出液400μLに4Mのスルファミン酸/スルファミン酸カリウム溶液(pH1.6)40μLを加えて混和した。75mMの四ホウ酸ナトリウム含有濃硫酸を2.4mL加えて更に混和した。沸騰水浴中で20分間加熱し、反応終了後に直ちに10分間氷水で冷却した。発色試薬として1.5g/Lのm-ヒドロキシジフェニルを80μL加え、10分間静置した後、525nmの吸光度を吸光マイクロプレートリーダー(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製 Multiskan SkyHigh)で測定した。ブランク試料として蒸留水を用いて同様の操作を行い、またコントロールサンプルとして発色試薬の代わりに0.5%(w/v)水酸化ナトリウム水溶液を加え、それぞれ得られた吸光度を差し引いた。濃度既知のガラクツロン酸を含む標準物質から検量線を引き、サンプル中の総ペクチン量をガラクツロン酸換算量で求めた。
【0057】
[カルシウムイオンの分析]
ポリエチレン袋に密閉した冷凍ブロッコリーを流水解凍し、半解凍の状態で花蕾と茎を分け、茎のみを測定に用いた。サンプルを細かくカットし、更にミルミキサー(株式会社山善製 MR-280(W))を用いて粉砕した。ストッキングタイプのネットを用いて試料を濾過し、更に遠心分離機(久保田商事株式会社製、ユニバーサル冷却遠心機 Model 5922)を用いて8,000rpm、室温(25℃)の条件で20分間遠心分離した。コンパクトカルシウムイオンメーター(株式会社堀場アドバンスドテクノ製 LAQUAtwin Ca-11)を用いて上澄み液のカルシウムイオン濃度を測定した。
【0058】
[分析結果]
各分析結果を表1~表4に示す。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
表1の結果からわかるように、同じ圃場で栽培され、同時期に収穫されたサンプル同士(すなわち、同一の実施例、比較例に属するサンプル同士)であれば、ブランチング工程、冷凍工程を経ても、最大荷重の値のばらつきが少なく、ほぼ同じ程度の値を示した。このことは、同じ圃場で栽培され、同時期に収穫された同じ品種のブロッコリーであれば、ブランチング工程、冷凍工程を経ても、一部のサンプルを測定することで、その圃場で栽培され、同時期に収穫された他のブロッコリーの値を推定することができることを意味する。
【0064】
表1~表4の結果からわかるように、ブランチング工程直後(冷凍工程前)のドリップ量と、冷凍工程後の品質(最大荷重、ドリップ量、水溶性ペクチンの量)との間に相関はみられなかった。また、意外なことに、生鮮状態の水溶性ペクチンの量と、冷凍工程後の品質(最大荷重、ドリップ量、水溶性ペクチンの量)の間にも相関はみられなかった。しかしながら、ブランチング工程および冷凍工程の両方を経たブロッコリーにおいては、最大荷重、ドリップ量、水溶性ペクチンの量の間に明らかに相関がみられた。
【0065】
特に、生鮮状態における水溶性ペクチンの量は冷凍ブロッコリーの品質に相関しないこと、ブランチング工程および冷凍工程後の水溶性ペクチンの増加量は、生鮮状態における水溶性ペクチンの量に依存しないこと、最終的な水溶性ペクチンの量のみが冷凍ブロッコリーの品質に相関することは、本発明者らの検討により初めて明らかとなった意外な事実である。
【0066】
また、喫食試験の結果、各実施例のブロッコリーは、各比較例のブロッコリーと比較して、食感の歯応え、シャキシャキ感が向上していた。また、各実施例のブロッコリーは、各比較例のブロッコリーと比較して、水っぽさが抑制されていた。
【0067】
上記結果から、冷凍ブロッコリーが本開示の範囲内のものであるか否かを評価することにより、食感の優れた冷凍ブロッコリーを選択できることがわかる。したがって、食感の優れた冷凍ブロッコリーを多く含む冷凍ブロッコリーパック、冷凍野菜パック、または冷凍食品の製造も可能となる。
本開示の冷凍ブロッコリー、冷凍ブロッコリーパック、冷凍野菜パック、冷凍食品、およびそれらの製造方法、ならびに冷凍ブロッコリーパック、冷凍野菜パックまたは冷凍食品における冷凍ブロッコリーの食感向上方法は、冷凍野菜の産業分野において好適に利用可能である。