(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005479
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】FZ炉の清浄度測定方法及びこれを用いた単結晶の製造方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20240110BHJP
C30B 13/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C30B29/06 501A
C30B13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105675
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】大城 善博
(72)【発明者】
【氏名】杉田 圭謙
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077CE03
4G077EG27
4G077EG28
4G077ND01
(57)【要約】
【課題】FZ炉内の清浄度を正確に測定して単結晶の有転位化を抑制することが可能なFZ炉の清浄度測定方法及びこれを用いた単結晶の製造方法及び単結晶装置を提供する。
【解決手段】本発明によるFZ炉の清浄度測定方法は、FZ炉20の内部と外部を連通する接続ポート13bにパーティクルカウンタ30を接続し、接続ポート13bより排出されたFZ炉20内の雰囲気ガス中のパーティクル数をパーティクルカウンタ30で測定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
FZ炉の内部と外部を連通する接続ポートにパーティクルカウンタを接続し、前記接続ポートより排出された前記FZ炉内の雰囲気ガス中のパーティクル数を前記パーティクルカウンタで測定することを特徴とするFZ炉の清浄度測定方法。
【請求項2】
前記FZ炉内のパーティクル数を常圧下で測定する、請求項1に記載のFZ炉の清浄度測定方法。
【請求項3】
前記FZ炉の前記接続ポートに減圧器を介して前記パーティクルカウンタを接続し、加圧下の前記FZ炉内のパーティクル数を測定する、請求項1に記載のFZ炉の清浄度測定方法。
【請求項4】
前記FZ炉内の雰囲気ガス中のパーティクル数を結晶育成工程中に測定する、請求項3に記載のFZ炉の清浄度測定方法。
【請求項5】
前記接続ポートの高さ位置は、前記FZ炉内に設けられた誘導加熱コイルの設置位置よりも低い、請求項1に記載のFZ炉の清浄度測定方法。
【請求項6】
前記FZ炉を解体清掃し、前記FZ炉を組み立てた後、前記FZ炉の前記接続ポートに前記パーティクルカウンタを接続し、前記FZ炉内の雰囲気ガス中のパーティクル数を測定する、請求項5に記載のFZ炉の清浄度測定方法。
【請求項7】
前記接続ポートから前記雰囲気ガスの排出を開始してから所定の待機時間経過後に前記パーティクル数のカウントを開始する、請求項1に記載のFZ炉の清浄度測定方法。
【請求項8】
FZ法による単結晶の製造方法であって、
FZ炉内で単結晶を育成する結晶育成工程と、
前記FZ炉を解体清掃する解体清掃工程と、
前記解体清掃工程後に前記FZ炉を組み立てた後、当該FZ炉内の清浄度を測定する清浄度測定工程とを備え、
前記清浄度測定工程は、前記FZ炉の内部と外部を連通する接続ポートにパーティクルカウンタを接続し、前記接続ポートより排出された前記FZ炉内の雰囲気ガス中のパーティクル数を前記パーティクルカウンタで測定することを特徴とする単結晶の製造方法。
【請求項9】
前記パーティクル数が管理値以下の場合に次の結晶育成工程に進み、
前記パーティクル数が前記管理値を超える場合に前記FZ炉の再清掃を行い、
前記再清掃は少なくとも一回の前記FZ炉内の雰囲気ガスの置換処理である、請求項8に記載の単結晶の製造方法。
【請求項10】
単結晶が育成されるFZ炉と、
前記FZ炉の内部と外部を連通する接続ポートより排出された前記FZ炉内の雰囲気ガス中のパーティクル数を測定するパーティクルカウンタとを備えることを特徴とする単結晶製造装置。
【請求項11】
前記接続ポートと前記パーティクルカウンタとの間に設けられた減圧器を備える、請求項10に記載の単結晶製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FZ(Floating Zone)法による単結晶の製造に用いられるFZ炉の清浄度測定方法及びこれを用いた単結晶の製造方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン単結晶の製造方法としてFZ法が知られている。FZ法は、多結晶シリコンからなる原料ロッドの一部を加熱して溶融帯を生成し、溶融帯の上方及び下方にそれぞれ位置する原料ロッド及び種結晶を徐々に降下させることにより、種結晶の上方に大きな単結晶を成長させる方法である。FZ法ではCZ(Czochralski)法のように石英ルツボを使用しないため、酸素濃度が非常に低い単結晶を製造することができる。
【0003】
FZ法によるシリコン単結晶の製造工程では、FZ炉(装置)を構成するチャンバー内で高温のシリコンと微量の酸素が反応してシリコン酸化物(SiO及び/又はSiO2)が発生したり、FZ炉の解体清掃時に除去しきれなかったシリコン粉、SiC粉などがチャンバーの内壁面等にパーティクルとして付着する。これらパーティクルが炉内を浮遊して溶融帯に付着すると、パーティクルが固液界面に取り込まれて単結晶の有転位化の原因となる。
【0004】
例えば、FZ炉内で発生するシリコン酸化物の問題を改善するため、特許文献1には、多結晶ホルダの上部に上部シリコン酸化物収集板を設け、かつ誘導加熱コイルの直上部に下部シリコン酸化物収集板を設けることにより、溶融帯に取り込まれるシリコン酸化物の量を低減させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
FZ炉内の清浄度を測定・評価する従来の方法としては、FZ炉内にテーブルを設置し、テーブル上にダミーシリコンウェーハを設置し、常圧下の炉内にArガスを導入し、一定時間経過後にウェーハの表面に付着したパーティクルをカウントする方法が採用されていた。
【0007】
しかしながら、従来の測定・評価方法では、パーティクル数と単結晶の転位発生率との関係性がはっきりせず、単結晶の有転位化を十分に抑制することができなかった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、FZ炉内の清浄度を正確に測定して単結晶の有転位化の抑制につなげることが可能な清浄度測定方法及びこれを用いた単結晶の製造方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明によるFZ炉の清浄度測定方法は、FZ炉の内部と外部を連通する接続ポートにパーティクルカウンタを接続し、前記接続ポートより排出された前記FZ炉内の雰囲気ガス中のパーティクル数を前記パーティクルカウンタで測定することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、目視で確認できない微小なパーティクルまでカウントすることができ、単結晶の転位発生率との相関性が高いパーティクル測定結果を得ることができる。したがって、パーティクル測定結果に基づいて炉内の再清掃を行うことにより、単結晶の有転位化を抑制する効果を高めることができる。
【0011】
本発明によるFZ炉の清浄度測定方法は、前記FZ炉内のパーティクル数を常圧下で測定することが好ましい。これにより、FZ炉内の清浄度を比較的簡単に測定することができる。
【0012】
本発明によるFZ炉の清浄度測定方法は、前記FZ炉の前記接続ポートに減圧器を介して前記パーティクルカウンタを接続し、加圧下の前記FZ炉内のパーティクル数を測定することもまた好ましい。これにより、実際の結晶育成工程に近い条件下でFZ炉内の清浄度を測定することができ、測定精度の信頼性を高めることができる。
【0013】
本発明によるFZ炉の清浄度測定方法は、前記FZ炉内の雰囲気ガス中のパーティクル数を結晶育成工程中に測定してもよい。パーティクルの発生状況をリアルタイムにモニタリングすることにより、単結晶の有転位化の兆候を結晶育成工程中に検知することが可能となり、炉内雰囲気のガス置換等の対策を施すことができる。これにより、パーティクル起因による単結晶の有転位化の発生を低減することができる。
【0014】
本発明において、前記接続ポートの高さ位置は、前記FZ炉内に設けられた誘導加熱コイルの設置位置よりも低いことが好ましい。これにより、FZ炉内に浮遊するパーティクルの効率よく収集して清浄度の測定精度を高めることができる。
【0015】
本発明によるFZ炉の清浄度測定方法は、前記FZ炉を解体清掃し、前記FZ炉を組み立てた後、前記FZ炉の前記接続ポートに前記パーティクルカウンタを接続し、前記FZ炉内の雰囲気ガス中のパーティクル数を測定することが好ましい。これにより、解体清掃の効果を正しく評価して単結晶の有転位化を防止することができる。
【0016】
本発明によるFZ炉の清浄度測定方法は、前記接続ポートから前記雰囲気ガスの排出を開始してから所定の待機時間経過後に前記パーティクル数のカウントを開始することが好ましい。これにより、パーティクル測定結果の信頼性を高めることができる。
【0017】
また本発明による単結晶の製造方法は、FZ炉内で単結晶を育成する結晶育成工程と、前記FZ炉を解体清掃する解体清掃工程と、前記解体清掃工程後に前記FZ炉を組み立てた後、当該FZ炉内の清浄度を測定する清浄度測定工程とを備え、前記清浄度測定工程は、前記FZ炉の内部と外部を連通する接続ポートにパーティクルカウンタを接続し、前記接続ポートより排出された前記FZ炉内の雰囲気ガス中のパーティクル数を前記パーティクルカウンタで測定することを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、目視で確認できない微小なパーティクルまでカウントすることができ、単結晶の転位発生率との相関性が高いパーティクル測定結果を得ることができる。したがって、パーティクル測定結果に基づいて炉内の再清掃を行うことにより、単結晶の有転位化を抑制する効果を高めることができる。
【0019】
本発明による単結晶の製造方法は、前記パーティクル数が管理値以下の場合に次の結晶育成工程に進み、前記パーティクル数が前記管理値を超える場合に前記FZ炉の再清掃を行い、前記再清掃は少なくとも一回の前記FZ炉内の雰囲気ガスの置換処理であることが好ましい。これにより、炉内の清浄度を高めることができ、単結晶の転位発生率を低減することができる。
【0020】
さらにまた、本発明による単結晶製造装置は、単結晶が育成されるFZ炉と、前記FZ炉の内部と外部を連通する接続ポートより排出された前記FZ炉内の雰囲気ガス中のパーティクル数を測定するパーティクルカウンタとを備えることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、目視で確認できない微小なパーティクルまでカウントすることができ、単結晶の転位発生率との相関性が高いパーティクル測定結果を得ることができる。したがって、パーティクル測定結果に基づいて炉内の再清掃を行うことにより、単結晶の有転位化を抑制する効果を高めることができる。
【0022】
本発明による単結晶製造装置は、前記接続ポートと前記パーティクルカウンタとの間に設けられた減圧器を備えることが好ましい。これにより、実際の結晶育成工程に近い加圧条件下でFZ炉内の清浄度を測定することができ、測定精度の信頼性を高めることができる。さらには、実際の結晶育成工程中にも清浄度測定が可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、FZ炉内の清浄度を正確に測定して単結晶の有転位化の抑制につなげることが可能な清浄度測定方法及びこれを用いた単結晶の製造方法及び装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態による単結晶製造装置の構成を示す略側面断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施の形態によるFZ炉内の清浄度測定方法であって、結晶育成工程が終了してから次の結晶育成工程を開始するまでに行われる一連の準備工程を説明するためのフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図2に示したFZ炉内の清浄度測定時における単結晶製造装置の構成の一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施の形態によるFZ炉内の清浄度測定方法であって、結晶育成工程が終了してから次の結晶育成工程を開始するまでに行われる一連の準備工程を説明するためのフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図4に示したFZ炉内の清浄度測定時における単結晶製造装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態による単結晶製造装置の構成を示す略側面断面図である。
【0027】
図1に示すように、この単結晶製造装置1は、シリコン単結晶をFZ法により育成するための装置であって、原料ロッド2及び種結晶3上に成長するシリコン単結晶4が収容される水冷式のチャンバー10と、原料ロッド2を回転可能及び昇降可能に支持する上軸11と、種結晶3及びシリコン単結晶4を回転可能及び昇降可能に支持する下軸12と、原料ロッド2の下端部を加熱する誘導加熱コイル15と、結晶成長が進んで大型化したシリコン単結晶4の重量を支える単結晶保持具17と、原料ロッド2とシリコン単結晶4との間の溶融帯5(シリコン融液)にドープガスを供給するガスドープ装置18とを備えている。
【0028】
チャンバー10は、誘導加熱コイル15が収容された水冷式のメインチャンバー10Aと、メインチャンバー10Aの上部に接続されたトップチャンバー10Bと、メインチャンバー10Aの下部に接続されたボトムチャンバー10Cとで構成されており、シリコン単結晶4の育成はメインチャンバー10A内で行われる。トップチャンバー10B内には原料ロッド2が収容されており、ボトムチャンバー10C内には成長後のシリコン単結晶4が収容される。チャンバー10は、誘導加熱コイル15等の炉内部品と共に、シリコン単結晶4をFZ法により育成するためのFZ炉20(結晶成長炉)を構成している。
【0029】
原料ロッド2はモノシラン等のシリコン原料を精製して得られた高純度多結晶シリコンからなり、原料ロッド2の上端部は上軸11の下端部に取り付けられている。種結晶3の下端部は下軸12の上端部に取り付けられている。上軸11及び下軸12は、図示しない駆動機構によってそれぞれ回転及び昇降駆動される。
【0030】
誘導加熱コイル15は、原料ロッド2又は溶融帯5を取り囲む扁平コイルであり、原料ロッド2の下端部を誘導加熱することにより、原料ロッド2とシリコン単結晶4との間に溶融帯5を発生させる。誘導加熱コイル16の出力は高周波発振器によって制御される。
【0031】
単結晶保持具17は、シリコン単結晶4のテーパー部4aに当接してシリコン単結晶4を保持することにより、種結晶3及び下軸12にシリコン単結晶4の大きな重量が掛からないようにシリコン単結晶4の重量の大部分を受け止める。FZ法では、結晶成長と共に結晶直径を徐々に増加させたテーパー部4aを形成した後、結晶直径が一定に維持された直胴部4bを成長させる。
【0032】
メインチャンバー10Aの壁面には内部にアクセス可能な開口ポートである第1接続ポート13a及び第2接続ポート13bが設けられている。第1接続ポート13a及び第2接続ポート13は、FZ炉20の内部と外部を連通する通路である。第1接続ポート13aは誘導加熱コイル15の設置位置よりも少し高い位置に設けられており、第1接続ポート13aにはガスドープ装置18(パージガス供給装置)のガス供給ノズル18aが設置されている。結晶育成中はドーパントを含むArガス6(パージガス)が溶融帯5に供給され、これによりシリコン単結晶4中のドーパント濃度が制御される。チャンバー10内に供給されたArガス6は、トップチャンバー10B及びボトムチャンバー10Cにそれぞれ設けられた排気口10p,10qから排気され、これによりメインチャンバー10A内にはArガス6の上昇流と降下流が発生している。炉内圧は圧力調整弁19によって一定の加圧下に制御される。
【0033】
第2接続ポート13bは、誘導加熱コイル15の設置位置よりも少し低い位置に設けられている。結晶育成工程中、第2接続ポート13bは塞がれているが、後述する清浄度測定時には第2接続ポート13bが開放され、パーティクルカウンタが接続される。第2接続ポート13bは、FZ炉20の内部と外部との間をガスが流通できるように構成されていればよく、開口サイズや形状は特に限定されない。
【0034】
図2は、本発明の第1の実施の形態によるFZ炉内の清浄度測定方法であって、結晶育成工程が終了してから次の結晶育成工程を開始するまでに行われる一連の準備工程を説明するためのフローチャートである。また、
図3は、
図2に示したFZ炉内の清浄度測定時における単結晶製造装置1の構成の一例を示す模式図である。
【0035】
図2に示すように、まず単結晶製造装置1を用いてシリコン単結晶4を育成する結晶育成工程が実施される(ステップS1)。そして結晶育成工程が終了すると、次の結晶育成工程を開始する前に、FZ炉20の解体清掃工程が行われる(ステップS2)。解体清掃では、チャンバー10の内壁面や炉内部品に付着しているパーティクルが丁寧に拭き取られる。
【0036】
次に、FZ炉20が組み立てられ(ステップS3)、FZ炉20内の清浄度測定工程(パーティクル測定工程)が行われる(ステップS4、S5)。この清浄度測定工程は、トップチャンバー10B内に原料ロッド2を設置する前に行われる。この場合、清浄度測定中に原料ロッド2の表面にパーティクルが付着することを防止することができる。また原料ロッド2の設置には時間がかかるが、清浄度測定結果が管理値を下回るため再清掃が必要となった場合、原料ロッド2を取り外して再設置する手間が無駄となる。このような事情を考慮して、清浄度測定は、原料ロッド2の設置前に行われることが好ましい。
【0037】
清浄度測定工程は、トップチャンバー10B内に原料ロッド2を設置した後に行ってもよい。清浄度測定後にトップチャンバー10Bを開放して原料ロッド2を設置する場合、トップチャンバー10B内にパーティクルが入り込んで汚れるおそれがある。しかし、トップチャンバー10B内に予め原料ロッド2を設置した状態で清浄度測定を行う場合には、結晶育成工程を開始する直前の状態で炉内の清浄度測定を実施することができ、パーティクル測定結果の信頼性を高めることができる。
【0038】
図3に示すように、FZ炉20内の清浄度測定時には、メインチャンバー10Aの第2接続ポート13bに吸気チューブ31を介してパーティクルカウンタ30が接続される(ステップS4)。吸気チューブ31としては、可撓性および高圧耐性に優れるウレタン系材質からなる吸気チューブを用いることが望ましい。パーティクルカウンタ30としては、測定器の流路を通過する微粒子にレーザー光を当て、微粒子からの光の散乱光の強度や電気信号から微粒子のサイズ・個数を判定する光学式粒子カウンタ(光散乱式気中粒子計測器)を用いることが望ましい。また、少なくとも0.3μmサイズ以上の微粒子が計測できることが好ましい。その後、FZ炉20内の清浄度測定が常圧下で行われ、炉内雰囲気中のパーティクル数がカウントされる(ステップS5)。
【0039】
パーティクル測定結果の評価は、パーティクルの測定開始から一定時間経過後に得られる測定値に基づいて行われることが好ましい。すなわち、実際のパーティクル数のカウントは、第2接続ポート13bからFZ炉20内の雰囲気ガスの排出を開始してから所定の待機時間経過後に開始されることが好ましい。例えば、パーティクルカウンタ30の測定レシピ設定により、5分間測定→1分間測定中止→5分間測定を実施した後、1回目の5分間測定で得られたパーティクル値は採用せず、2回目の5分間測定で得られたパーティクル値を清浄度の評価対象とする。パーティクル測定を開始してから最初の数分間のパーティクル測定値は、バッチ間のばらつきが大きく信頼性が低いことから、これを無視することでパーティクル測定結果の信頼性を高めることができる。2回目のパーティクル測定の開始時期は、パーティクル測定から少なくとも1分経過後であることが好ましく、5分経過後であることが特に好ましい。
【0040】
こうしてパーティクル数を測定した結果、パーティクル測定値が所定の管理値以下である場合には、炉内が清浄であると判断して、次の結晶育成工程に進む(ステップS6Y、S7)。一方、測定値が所定の管理値を超える場合には、炉内の再清掃が実施される(ステップS6N、S8)。
【0041】
炉内の再清掃は、FZ炉20内のAr雰囲気の置換処理であることが好ましい。すなわち、炉内にArガスを充満させた後、Arガスを廃棄して新しいArガスに置換する。これを複数回繰り返すことにより、炉内のパーティクルをArガスごと炉外に排出する。
【0042】
以上の再清掃及びパーティクル測定は、測定値が所定の管理値以下となるまで繰り返し行われる(ステップS5~S8)が、ほとんどの場合、1~2回の再清掃でパーティクル測定値を所定の管理値以下にすることができる。
【0043】
図4は、本発明の第2の実施の形態によるFZ炉内の清浄度測定方法であって、結晶育成工程が終了してから次の結晶育成工程を開始するまでに行われる一連の準備工程の他の例を説明するためのフローチャートである。また、
図5は、
図4に示したFZ炉内の清浄度測定時における単結晶製造装置1の構成を示す模式図である。
【0044】
図4及び
図5示すように、FZ炉20内の清浄度測定では、FZ炉20内を常圧ではなく加圧下に設定してもよい(ステップS5A)。この場合、メインチャンバー10Aの第2接続ポート13bには、パーティクルカウンタ30が減圧器32(高圧ディフューザ)を介して接続される(ステップS4A)。このように、清浄度測定中の炉内を加圧下に設定することにより、実際の結晶育成工程にできるだけ近い条件下で清浄度測定を行うことができる。
【0045】
パーティクルカウンタ30が減圧器32を介してメインチャンバー10Aに接続される場合、加圧下の炉内のパーティクル測定が可能なことから、結晶育成工程開始前のみならず、
図1に示した結晶育成工程中のパーティクル測定も可能である。このように、結晶育成工程中の炉内のパーティクル測定を行うことにより、炉内環境と単結晶の有転位化との関係を詳細に分析することが可能となる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によるFZ炉の清浄度測定方法は、メインチャンバー10Aの第2接続ポート13bに直接又は減圧器32を介してパーティクルカウンタ30を接続し、FZ炉20内を常圧下又は加圧下のAr雰囲気に設定した後、パーティクルカウンタ30によるパーティクル測定を行うので、炉内の清浄度を正確に測定することができ、単結晶の転位発生率との相関性が高い清浄度指標を取得することができる。したがって、当該清浄度指標に基づいて炉内の再清掃を行うことにより、パーティクル起因の単結晶の有転位化の発生率を低減することができる。
【0047】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0048】
例えば、上記実施形態においては、FZ法によるシリコン単結晶の製造方法を例に挙げたが、本発明はシリコン単結晶の製造に限定されず、FZ法による種々の単結晶の製造に適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 単結晶製造装置
2 原料ロッド
3 種結晶
4 シリコン単結晶
4a テーパー部
4b 直胴部
5 溶融帯
6 Arガス
10 チャンバー
10A メインチャンバー
10B トップチャンバー
10C ボトムチャンバー
10p,10q 排気口
11 上軸
12 下軸
13a 第1接続ポート
13b 第2接続ポート
15 誘導加熱コイル
16 誘導加熱コイル
17 単結晶保持具
18 ガスドープ装置
18a ガス供給ノズル
19 圧力調整弁
20 FZ炉
30 パーティクルカウンタ
31 吸気チューブ
32 減圧器