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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054979
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】インク、印刷方法、及び、印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/00 20140101AFI20240411BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240411BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
C09D11/00
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41M5/00 112
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161485
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(72)【発明者】
【氏名】工藤 真樹
(72)【発明者】
【氏名】杉田 健人
(72)【発明者】
【氏名】大川 瑞季
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2C056FC06
2H186AB12
2H186BA08
2H186DA10
2H186FA07
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB18
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB30
2H186FB31
2H186FB48
2H186FB54
2H186FB57
4J039AD03
4J039AD09
4J039AE04
4J039AE11
4J039BA04
4J039BA13
4J039BA35
4J039BC07
4J039BC10
4J039BC13
4J039BC18
4J039BC36
4J039BC55
4J039BC60
4J039BE01
4J039BE19
4J039BE22
4J039CA06
4J039EA36
4J039EA41
4J039EA42
4J039EA44
4J039EA46
4J039FA02
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】本発明は、良好な抗菌性を有すると共に、安定性及び吐出性に優れ、高品質の印刷物を得ることができるインクを提供することを目的とする。
【解決手段】有機溶剤及び抗菌剤を含有するインクであって、前記抗菌剤が、下記の第1の抗菌剤、及び、下記の第2の抗菌剤を含有することを特徴とするインク。
第1の抗菌剤:水溶解度1g/L未満のイソチアゾリン系化合物
第2の抗菌剤:水溶解度20g/L以上のイソチアゾリン系化合物
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤及び抗菌剤を含有するインクであって、
前記抗菌剤が、下記の第1の抗菌剤、及び、下記の第2の抗菌剤を含有することを特徴とするインク。
第1の抗菌剤:水溶解度1g/L未満のイソチアゾリン系化合物
第2の抗菌剤:水溶解度20g/L以上のイソチアゾリン系化合物
【請求項2】
前記インクが、水を含有し、前記有機溶剤が下記一般式(1)で表されるアミド系溶剤を含有する、請求項1に記載のインク。
【化1】

(前記一般式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、炭素数1以上8以下の炭化水素基を表す。)
【請求項3】
前記第1の抗菌剤及び前記第2の抗菌剤の合計量が、インク全質量に対し、0.01質量%以上1.0質量%以下である、請求項1に記載のインク。
【請求項4】
前記第1の抗菌剤及び前記第2の抗菌剤の合計量が、インク全質量に対し、0.1質量%以上0.5質量%以下である、請求項1に記載のインク。
【請求項5】
基材上にインクを付与する印刷工程、及び、付与された前記インクを加熱する加熱工程を有する印刷方法であって、前記インクとして請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクを用いることを特徴とする印刷方法。
【請求項6】
前記基材がプラスチックである、請求項5に記載の印刷方法。
【請求項7】
基材上に印刷層を有する印刷物であって、前記印刷層は、第1の抗菌剤及び第2の抗菌剤を含有し、前記第1の抗菌剤が水溶解度1g/L未満のイソチアゾリン系化合物であり、前記第2の抗菌剤が水溶解度20g/L以上のイソチアゾリン系化合物であることを特徴とする印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク、印刷方法、及び、印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットプリンターは低騒音、低ランニングコストといった利点から急速に普及してきている。
インクジェット記録において、長期に亘って良好な印字記録を行うために、使用するインクに要求される特性は、長期保存安定性及び吐出安定性に優れること、また、印字記録された画像が滲みのない鮮明な画像であり、かつ、その耐水性、耐光性等、すなわち保存安定性に優れることなどが挙げられる。
【0003】
しかし、以上のような要求を満足するため、これまでインクジェット記録に用いられるインクに関して数多くの提案がなされているが、上記諸要求全てを満足するインクはまだ得られていないのが現状である。特にノズルの目詰まりを防止することは重要な課題であるが、その原因として、ノズル先端での水分蒸発によるインクの増粘、又は染料の析出、不溶性無機塩の生成、あるいはかび類、腐敗菌類等の微生物の発生による不溶性固形物の生成などが考えられる。
【0004】
水系のインク中で発生するかび等による問題については、これまでいくつかの提案がなされてきている。
例えば、特許文献1は、インク中に、2,4,6-ヘキサヒドロ-1,3,5-トリヒドロキシエチル-S-トリアジンを含有させることで防かび殺菌効果があるとしている。
また、特許文献2は、インク中に1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンを含有させることでカビ類、腐敗菌類、藻類などの微生物の繁殖を妨げ、不溶性の固形物生成によるノズル先端の目詰まりの発生を防止する効果があるとしている。また、特許文献3によれば、インク中に塩基性物質を含有させ、インクのpHを高くすることで防菌剤を添加しなくても細菌等の繁殖しにくいインクを提供できるとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来のインクでは、ユーザーがプリンタを使用する場合の安全性に問題がある。また水溶解性の高い抗菌剤は印刷物としたときに、その水溶性のため、表面の水拭きなどにより画像表面の抗菌性が担保しにくくなる傾向にあり、特に水性インクに関してはインク液、印刷物両方の抗菌性を得ることについて課題がある。
本発明は、良好な抗菌性を有し、インクの保存安定性及び吐出性に優れ、高品質の印刷物を得ることができるインクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することができる本発明のインクは下記(1)に記載する通りのものである。
(1)有機溶剤及び抗菌剤を含有するインクであって、
前記抗菌剤が、下記の第1の抗菌剤、及び、下記の第2の抗菌剤を含有することを特徴とするインク。
第1の抗菌剤:水溶解度1g/L未満のイソチアゾリン系化合物
第2の抗菌剤:水溶解度20g/L以上のイソチアゾリン系化合物
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、良好な抗菌性を有し、保存安定性及び吐出性に優れ、高品質の印刷物を得ることができるインクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明のインクを用いる記録装置の一例を示す斜視図である。
図2図2は、本発明のインクを収容するメインタンクの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の態様は、例えば、以下の通りである。
(1)有機溶剤及び抗菌剤を含有するインクであって、
前記抗菌剤が、下記の第1の抗菌剤、及び、下記の第2の抗菌剤を含有することを特徴とするインク。
第1の抗菌剤:水溶解度1g/L未満のイソチアゾリン系化合物
第2の抗菌剤:水溶解度20g/L以上のイソチアゾリン系化合物
(2)前記インクが、水を含有し、前記有機溶剤が下記一般式(1)で表されるアミド系溶剤を含有する、上記(1)に記載のインク。
【化1】
(前記一般式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、炭素数1以上8以下の炭化水素基を表す。)
(3)前記第1の抗菌剤及び前記第2の抗菌剤の合計量が、インク全質量に対し、0.01質量%以上1.0質量%以下である、上記(1)又は(2)に記載のインク。
(4)前記第1の抗菌剤及び前記第2の抗菌剤の合計量が、インク全質量に対し、0.1質量%以上0.5質量%以下である、上記(1)又は(2)に記載のインク。
(5)基材上にインクを付与する印刷工程、及び、付与された前記インクを加熱する加熱工程を有する印刷方法であって、前記インクとして上記(1)乃至(4)のいずれか一項に記載のインクを用いることを特徴とする印刷方法。
(6)前記基材がプラスチックである、上記(5)に記載の印刷方法。
(7)基材上に印刷層を有する印刷物であって、前記印刷層は、第1の抗菌剤及び第2の抗菌剤を含有し、前記第1の抗菌剤が水溶解度1g/L未満のイソチアゾリン系化合物であり、前記第2の抗菌剤が水溶解度20g/L以上のイソチアゾリン系化合物であることを特徴とする印刷物。
【0010】
<<インク>>
本発明のインクは、有機溶剤及び抗菌剤を含有するインクであって、前記抗菌剤が第1の抗菌剤及び第2の抗菌剤を含有し、前記第1の抗菌剤が水溶解度1g/L未満のイソチアゾリン系化合物であり、前記第2の抗菌剤が水溶解度20g/L以上のイソチアゾリン系化合物である。
なお、本発明における水溶解度は、物質が25℃で水1Lに溶ける質量を測定した値である。
【0011】
本発明のインクは、上記のように抗菌剤として水溶解度の低いイソチアゾリン系化合物と水溶解度の高い抗菌剤とを同時に含むことにより、長期保存安定性(防腐防かび効果)に優れると共に、印刷後も抗菌性に優れる印刷物を提供することができる。
【0012】
一般的に水性インク中への抗菌剤添加は水溶解性の高いものが用いられ、インク液での抗菌性を担保しているものであるが、印刷後にインクが乾燥し印刷物となった後の抗菌性の持続が難しい。従って更に水難溶性の抗菌剤を添加することにより、インク液と印刷物両方の抗菌性を維持することが可能となる。
【0013】
本発明のインクは、印刷物における抗菌性を担保するという観点から、第1の抗菌剤として水溶解度が1g/L未満のイソチアゾリン系化合物を含む。更にインク液に対する抗菌性を確保することができるという観点から、第2の抗菌剤として水溶解度が20g/L以上のイソチアゾリン系化合物を含む。
【0014】
第1の抗菌剤及び第2の抗菌剤を併せた添加量はインク全質量に対し、0.01質量%以上1.0質量%以下が好ましく、さらに好ましくは、0.1質量%以上0.5質量%以下%である。これら防腐防かび剤は、0.01質量%以上の添加量であることにより所期の効果が得られ、1.0質量%以下であることにより、湿潤剤との間に凝固成分を生じたり、インクの水分蒸発にともない結晶化を起こしたりして、目詰まりの原因となることがない。
【0015】
本発明のインクは、下記一般式(1)で表される化合物を含有することが好ましい。インクが下記一般式(1)で表される化合物を含むことで、被印刷物へのインク着弾時に表面溶解性を伴うことで定着性を向上させ、印刷物の品質向上を達成することが可能となる。
【化1】
(前記一般式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、炭素数1以上8以下の炭化水素基を表す。)
【0016】
以下、インクに用いる抗菌剤、有機溶剤、水、色材、樹脂、添加剤等について説明する。
【0017】
<抗菌剤>
(イソチアゾリン系化合物)
イソチアゾリン系化合物は、窒素原子及び硫黄原子を含む複素5員環を有する化合物である。その具体例としては、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(例示化合物 1)、5-クロロ-2-エチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(例示化合物2)、2-エチル-4-イソチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(例示化合物3)、5-クロロ-2-エチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-t-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(例示化合物4)、4,5-ジクロロ-2-シクロヘキシル-4-イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(例示化合物5)、2-ブチル-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(例示化合物6)等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例示化合物の構造式を以下に示す。
【0018】
【化2】
【0019】
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0020】
炭素数5以上のジオール化合物を含むと、インクの浸透性を向上させることができるため、好ましい。
炭素数5以上のジオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
さらに、アミド系溶剤、置換ブタノールからなる群のうち1つを有すると、PVC等のメディアの場合その表面を僅かに溶解することにより濡れ性、定着性を担保することができるためより好ましい。
【0021】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【化3】
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0023】
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【化4】
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
一般式(F-2)
2n+1-CHCH(OH)CH-O-(CHCHO)-Y
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はC2m+1でmは1~6の整数、又はCHCH(OH)CH-C2m+1でmは4~6の整数、又はC2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられる。
【0024】
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクトブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0025】
顔料を分散してインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
前記樹脂被覆顔料は、マイクロカプセルとしてはビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマーなどが挙げられるが、特に好ましいのは、ビニル系ポリマー及びポリエステル系ポリマーである。
その具体例としては、特開2000-53897号公報、特開2001-139849号公報に開示されたものが挙げられる。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明では、樹脂被覆顔料を用いることが好ましい。インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0027】
<顔料分散体>
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0028】
<樹脂>
インク中に含有する樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響を及ぼさずにpHを7~11に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
その例としては、アルコールアミン類、アルカリ金属元素の水酸化物、アンモニウムの水酸化物、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、などが挙げられる。
インクの品質担保や吐出安定性の観点から、pHは7以上11以下であることが好ましい。
【0030】
前記アルコールアミン類としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-アミノ-2-エチル-1,3プロパンジオール等が挙げられる。
前記アルカリ金属元素の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
前記アンモニウムの水酸化物としては、例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物などが挙げられる。
前記ホスホニウム水酸化物としては、例えば、第4級ホスホニウム水酸化物などが挙げられる。
前記アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
pH調整剤としては、強塩基性化合物を用いることが好ましい。
強塩基化合物としては特に限定は無いが、効果的に結晶化を抑制する点から、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを用いることが好ましい。
また、本発明では、インク中に、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを含有させることで、インクの濡れ性を向上させることができる。
【0031】
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましい。
インクには、必要に応じて、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤等を加えても良い。
【0032】
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0033】
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0034】
<インク物性>
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0035】
<液体吐出装置>
本発明のインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
本発明において、記録装置、記録方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この記録装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
記録装置、記録方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有しても良い。加熱手段、乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
また、記録装置、記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
記録装置の一例について図1乃至図2を参照して説明する。図1は同装置の斜視説明図である。図2はメインタンクの斜視説明図である。記録装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。例えば、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)等の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。インクの色は、上記にあげたものに限らず任意のインク色を用いることができ、メインタンクやインク収容部も同様である。
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
【0036】
この記録装置には、インクを吐出する部分だけでなく、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
前処理装置、後処理装置の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)などのインクの場合と同様に、前処理液や、後処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、前処理液や、後処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。
【0037】
さらに、前記記録装置には、インクを吐出する前記液体吐出ヘッドのノズル面に洗浄液を付与する付与と、洗浄液およびインクを払拭する払拭部材とを含むことができる。
【0038】
なお、本発明のインク中に含有されている抗菌剤、有機溶剤、樹脂、顔料、その他成分等の定性方法、定量方法としては、例えば、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)などが挙げられる。例えば、前記ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)による測定装置としては、例えば、GCMS-QP2020NX(株式会社島津製作所製)などが挙げられる。インクに含まれる水分量は、一般的な方法として、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)による揮発成分の定量や、熱重量・示差熱同時測定法(TG-DTA)による質量変動等により測定することができる。
【0039】
<記録媒体>
記録に用いる記録媒体としては、特に限定されないが、普通紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、汎用印刷紙等が挙げられる。
【実施例0040】
以下、調製例、製造例、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、例中の「部」及び「%」は、特に断りのない限り、「質量部」及び「質量%」である。
また、特に記載が無い場合、インクの調製、評価は、室温25℃、湿度60%の条件下で行った。
【0041】
[顔料分散体の調製]
(調製例1)
<ブラック顔料含有ポリマー微粒子分散体の調製>
<<ポリマー溶液の調製>>
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー4.0g、及びメルカプトエタノール0.4gを混合し、65℃に昇温した。
次に、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシルエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスメチルバレロニトリル2.4g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。滴下後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50質量%の[ポリマー溶液A]を800g得た。
【0042】
<<ブラック顔料含有ポリマー微粒子分散体の調製>>
[ポリマー溶液A]を28gと、カーボンブラック(デグサ社製、FW100)を42g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及びイオン交換水13.6gを十分に攪拌した後、ロールミルを用いて混練した。得られたペーストを純水200gに投入し、充分に攪拌した後、エバポレータ用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、更に粗大粒子を除くためにこの分散液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、顔料15質量%含有、固形分20質量%の[ブラック顔料含有ポリマー微粒子分散体]を得た。得られた[ブラック顔料含有ポリマー微粒子分散体]におけるポリマー微粒子のメジアン径(D50)を測定したところ127nmであった。なお、メジアン径(D50)の測定は、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)を用いた。
【0043】
(調製例2)
<シアン顔料含有ポリマー微粒子分散体の調製>
調製例1において、顔料としてのカーボンブラックをフタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)に変更した以外は、調製例1と同様にして、[シアン顔料含有ポリマー微粒子分散体]を調製した。
得られた[シアン顔料含有ポリマー微粒子分散体]におけるポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)で測定したメジアン径(D50)は93nmであった。
【0044】
(調製例3)
<マゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散体の調製>
調製例1において、顔料としてのカーボンブラックをマゼンタ顔料(C.I.ピグメントレッド122)に変更した以外は、調製例1と同様にして、[マゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散体]を調製した。
得られた[マゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散体]におけるポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)で測定したメジアン径(D50)は76nmであった。
【0045】
(調製例4)
<イエロー顔料含有ポリマー微粒子分散体の調製>
調製例1において、顔料としてのカーボンブラックをビスアゾイエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー155)に変更した以外は、調製例1と同様にして、[イエロー顔料含有ポリマー微粒子分散体]を調製した。
得られた[イエロー顔料含有ポリマー微粒子分散体]におけるポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)で測定したメジアン径(D50)は76nmであった。
【0046】
(調製例5)
<白色顔料分散体の調製>
酸化チタンSTR-100W(堺化学工業株式会社製)25g、顔料分散剤TEGO Dispers651(エボニック社製)5g、水70gを混合し、ビーズミル(リサーチラボ、株式会社シンマルエンタープライゼス製)にて、0.3mmΦのジルコニアビーズを充填率60%、8m/sにて5分間分散し、体積平均粒径285nmの[白色顔料分散体]を得た。
【0047】
<インクの製造例>
(実施例1)
攪拌機を備えた容器に、1,2プロパンジオール10.0部、グリセリン1.0部、エクアミドM-100(一般式(1)で表されるアミド系溶剤、出光興産株式会社製)5部、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール10.0部、ポリエーテル変性シロキサン化合物(日信化学工業製 シルフェイスSAG503A)2.0部入れ、30分間混合撹拌した。次いで、抗菌剤1-1(2-ブチル-1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、ロンザジャパン株式会社製 Densil DN)0.04部、抗菌剤2-1(1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、アビシア社製Proxel GXL)0.01部、2,4,7,9-テトラメチルデカン-4,7-ジオール0.50部、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール0.20部、ウレタン樹脂(第一工業製薬株式会社製 スーパーフレックス210)15.0部、調製例1の[ブラック顔料含有ポリマー微粒子分散体]を4.00部、及び全体が100部となる量の高純水を加え、60分間混合撹拌した。得られた混合物を、平均孔径1.2μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターで加圧濾過し、粗大粒子及びごみを除去して、実施例1のインクを得た。
【0048】
(実施例2~6、比較例1~4)
実施例1と同様にして、表1に示すインク処方で、有機溶剤、界面活性剤、及び消泡剤を混合撹拌し、次いで、抗菌剤、pH調整剤、樹脂及び着色剤(顔料分散体)を混合撹拌した。得られた混合物を平均孔径1.2μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターで加圧濾過し、粗大粒子及びごみを除去して、実施例2~6、比較例1~4のインクを得た。
各インクの組成を下記表1に示す。
また、インクの成分の製品名及びメーカー名を表2に示し、抗菌剤種の水溶解性を表3に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
(評価)
上記で得られた実施例1~6、比較例1~4のインクについて、以下のように画像を形成し、評価を行った。
評価結果を表4に示す。
【0053】
<画像形成>
各インクをインクジェットプリンター(株式会社リコー製IPSiO GXe5500)に充填し、このプリンタを用いて、PVCフィルム(商品名:GIY11Z5、リンテック株式会社製)に対し、1200×1200dpiの解像度にてベタ印字を行った後、80℃ホットプレート上で3min放置乾燥させた画像サンプルを形成した。
【0054】
<インク液抗菌性>
各インクを室温(25℃)で1週間保管した後、サンアイバイオチェッカーTTC(総菌数測定用、三愛石油株式会社製)に、インクを1mL塗布し、37℃で24時間保持した後の培地上のコロニーの有無と、コロニーが検出された場合は、コロニーの密度から、添付の判定表に基づき、細菌汚染度合いを下記の評価基準で評価した。
なお、前記コロニーとは、菌の集落であり、菌には、好気性菌、真菌(カビ・酵母)が含まれる。例えば、大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑濃菌、カビなどがコロニーを形成しうる。コロニーが形成されている場合は、前記サンアイバイオチェッカーTTCを用い、目視で確認した。
[評価基準]
A:細菌の汚染なし
B:細菌の汚染度合いが低度
C:細菌の汚染度合いが中度
D:細菌の汚染度合いが高度
【0055】
<印字面抗菌性>
各インクを用いて上記画像形成方法で形成した画像サンプルを1cm角に切り出し培地に貼り付けた後、37℃で24時間保持した後、上記「インク液抗菌性」の評価と同様にして細菌汚染度合いを評価した。
[評価基準]
A:細菌の汚染なし
B:細菌の汚染度合いが低度
C:細菌の汚染度合いが中度
D:細菌の汚染度合いが高度
【0056】
<湿潤擦過後印字面抗菌性>
上記画像形成方法で形成した画像サンプルを2.5cm×20cmのサイズに切り出し、染色物摩擦堅ろう度試験機(型式:AR-2、インテック株式会社製)に設置し、純水にて100%湿潤とした白布(カナキン3号)を500gの荷重で往復速度30回/分で100回往復させた画像サンプルを実使用時の水拭き後のサンプルと仮定し、このサンプルを用いて、上記印字面抗菌性評価と同様にして抗菌性についての試験を行った。
[評価基準]
A:細菌の汚染なし
B:細菌の汚染度合いが低度
C:細菌の汚染度合いが中度
D:細菌の汚染度合いが高度
【0057】
<画像色ムラ>
上記画像形成方法で形成した画像サンプルについて、下記の評価基準で濃度ムラ(ビーディング)の目視判定を行った。
[評価基準]
A:全く無し。
B:15cm離れたところから濃度ムラが僅かに確認できる。
C:30cm離れたところから濃度ムラが僅かに確認できる。
D:50cm離れたところからでも濃度ムラが確認できる。
【0058】
<インク保存性>
各インクを密閉容器に入れて70℃の環境下に14日間保存した。
保存前後のインク粘度を測定して、下記計算式に基づいて粘度変化率を求め、以下の基準で評価した。
粘度変化率(%)=[(保存後粘度-保存前粘度)/保存前粘度]×100
なお、インク粘度はR型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて、25℃で測定した。
〔評価基準〕
A:保存前後の粘度変化率が5%未満
B:保存前後の粘度変化率が5%以上8%未満
C:保存前後の粘度変化率が8%以上10%未満
D:保存前後の粘度変化率が10%以上
【0059】
<インク吐出性>
インクジェットプリンター(IPSIO GXe3300株式会社リコー製)を用いて、インクを充填して初期充填動作を実施させた。その後ノズルチェックパターンを印字し、ノズルチェックパターンにて吐出不良(ノズルの不吐出や吐出曲がり)を確認した。吐出不良がないものについては、次にマイペーパー上に印字を行い、印刷パターンは画像領域中、印字面積が紙面全面積中、各色印字面積が5%であるチャートにおいて、本発明のイエロー・マゼンタ・シアン・ブラックの各インクを100%dutyで印字した。印字条件は、記録密度360dpiで、ワンパス印字とした。上記チャートを20枚連続で印写後、20分間吐出を実施しない給紙状態にし、これを50回繰り返して、累計1000枚印写後、ノズルチェックパターンを印字して、吐出不良(ノズルの不吐出や吐出曲がり)を確認した。各々のノズルチェックパターンにおいて、白抜け、噴射乱れの有無を目視で評価した。
【0060】
[評価基準]
A:吐出乱れなし
B:若干吐出乱れあり
C:吐出乱れあり、又は吐出しない部分あり
D:激しい吐出乱れあり、又は吐出しないノズルが多い
【0061】
【表4】
【符号の説明】
【0062】
400 画像形成装置
401 画像形成装置の外装
401c 装置本体のカバー
404 カートリッジホルダ
410 メインタンク
410k、410c、410m、410y ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク
411 インク収容部
413 インク排出口
414 収容容器ケース
420 機構部
434 吐出ヘッド
436 供給チューブ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特開昭55-16037号公報
【特許文献2】特開平6-234943号公報
【特許文献3】特開平1-213376号公報
図1
図2