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特開2024-54993熱硬化性樹脂組成物、バルクモールディングコンパウンド及びその成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054993
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、バルクモールディングコンパウンド及びその成形品
(51)【国際特許分類】
   C08F 299/04 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
C08F299/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161521
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】蒋 建業
【テーマコード(参考)】
4J127
【Fターム(参考)】
4J127AA03
4J127BA01
4J127BB032
4J127BB041
4J127BB071
4J127BB092
4J127BB181
4J127BB222
4J127BC022
4J127BC031
4J127BC131
4J127BD131
4J127BD182
4J127BE342
4J127BE34Y
4J127BE381
4J127BE38Y
4J127BF302
4J127BF30Y
4J127BF361
4J127BF36Y
4J127BF401
4J127BF40Y
4J127BG051
4J127BG052
4J127BG102
4J127BG172
4J127BG181
4J127CA01
4J127DA06
4J127DA12
4J127DA43
4J127DA46
4J127DA62
4J127DA63
4J127DA66
4J127DA68
4J127EA05
4J127FA01
(57)【要約】
【課題】流動性、射出成形性、圧縮成形性に優れ、熱伝導性に優れる成形品を得ることのできる熱硬化性樹脂組成物、バルクモールディングコンパウンド及びその成形品を提供することである。
【解決手段】熱硬化性樹脂(A)、低収縮化剤(B)、増粘剤(C)、熱伝導性フィラー(D)、及び補強材(E)を含有する熱硬化性樹脂組成物であって、前記熱硬化性樹脂(A)が、不飽和ポリエステル樹脂(a1)及びビニルエステル樹脂(a2)を含有するものであり、前記増粘剤(C)が、アクリル樹脂粒子(c1)及び酸化マグネシウム(c2)を含有するものであることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂(A)、低収縮化剤(B)、増粘剤(C)、熱伝導性フィラー(D)、及び補強材(E)を含有する熱硬化性樹脂組成物であって、前記熱硬化性樹脂(A)が、不飽和ポリエステル樹脂(a1)及びビニルエステル樹脂(a2)を含有するものであり、前記増粘剤(C)が、アクリル樹脂粒子(c1)及び酸化マグネシウム(c2)を含有するものであることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂(A)及び前記低収縮化剤(B)の合計100質量部に対して、前記アクリル樹脂粒子(c1)が、1~20質量部であり、前記酸化マグネシウム(c2)が0.05~5質量部である請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂(A)及び前記低収縮化剤(B)の合計100質量部に対して、前記熱伝導性フィラー(D)が、100~500質量部である請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂(A)及び前記低収縮化剤(B)の合計100質量部に対して、前記補強材(E)が、10~80質量部である請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物からなることを特徴とするバルクモールディングコンパウンド。
【請求項6】
請求項5記載のバルクモールディングコンパウンドを用いて得られた成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、バルクモールディングコンパウンド及びその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等の熱硬化性樹脂に、低収縮剤、禁止剤、硬化剤、充填材、離型剤、強化材等を加えて、混練機で混練した熱硬化性樹脂組成物は、電気絶縁性、耐熱性、難燃性、高剛性、寸法安定性等の利点があるため、家電、自動車やエネルギー分野等に関連する電子部品へ広く応用されている。前記熱硬化性樹脂組成物の中でも、バルク状にしたバルクモールディングコンパウンド(以下、「BMC」と略記することがある。)は、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形等の成形方法により、成形品にすることができる。
【0003】
近年、電子部品は、高出力(高密度化)、小型化(軽量化)が進んでいるため、電子部品内部に発生した熱が蓄積され、この熱による電子部品出力低下、寿命短縮等の課題を抱えている。
【0004】
このような中、BMC成形品には優れた放熱性が求められており、熱伝導性フィラーを用いた熱硬化性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この樹脂組成物から得られる成形材料は、フィラーの高充填化により熱伝導性は向上する一方、流動性が不十分である場合があり、射出成形性に劣る問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-132737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、流動性、射出成形性、圧縮成形性に優れ、熱伝導性に優れる成形品を得ることのできる熱硬化性樹脂組成物、バルクモールディングコンパウンド及びその成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記の課題を解決するため鋭意研究した結果、特定の熱硬化性樹脂、低収縮化剤、特定の増粘剤、熱伝導性フィラー、及び補強材を含有する熱硬化性樹脂組成物は、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、熱硬化性樹脂(A)、低収縮化剤(B)、増粘剤(C)、熱伝導性フィラー(D)、及び補強材(E)を含有する熱硬化性樹脂組成物であって、前記熱硬化性樹脂(A)が、不飽和ポリエステル樹脂(a1)及びビニルエステル樹脂(a2)を含有するものであり、前記増粘剤(C)が、アクリル樹脂粒子(c1)及び酸化マグネシウム(c2)を含有するものであることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、流動性、射出成形性、圧縮成形性に優れ、また、熱伝導性に優れる成形品を得られることから、家電、自動車等に用いられる電気・電子部品の支持体、電気自動車用モーター封止材、PC・スマートフォン等通信機器の筐体、各種センサー部品、電気自動車バッテリー保持体、LEDランプのヒートシンク等に非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A)、低収縮化剤(B)、増粘剤(C)、熱伝導性フィラー(D)、及び補強材(E)を含有する熱硬化性樹脂組成物であって、前記熱硬化性樹脂(A)が、不飽和ポリエステル樹脂(a1)及びビニルエステル樹脂(a2)を含有するものであり、前記増粘剤(C)が、アクリル樹脂粒子(c1)及び酸化マグネシウム(c2)を含有するものである。
【0011】
前記熱硬化性樹脂(A)は、不飽和ポリエステル樹脂(a1)及びビニルエステル樹脂(a2)を含有するものであるが、流動性及び射出成形性がより向上することから、不飽和ポリエステル樹脂(a1)及びビニルエステル樹脂(a2)の質量比(a1/a2)は、90/10~30/70が好ましく、70/30~50/50がより好ましい。
【0012】
前記熱硬化性樹脂(A)には、不飽和ポリエステル樹脂(a1)、ビニルエステル樹脂(a2)以外の熱硬化性樹脂を含有することもできる。
【0013】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A)及び低収縮化剤(B)を必須成分とする樹脂成分を含有するものであるが、成形収縮率とその他の物性のバランスから、前記熱硬化性樹脂(A)及び前記低収縮化剤(B)の質量比(A/B)は、95/5~50/50が好ましく、90/10~70/30がより好ましい。
【0014】
前記低収縮化剤(B)は、熱硬化性樹脂組成物の硬化収縮を抑制するために配合するものであるが、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、飽和ポリエステル、スチレン-ブタジエン系ゴム、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。これらの低収縮化剤は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0015】
前記増粘剤(C)は、アクリル樹脂粒子(c1)及び酸化マグネシウム(c2)を含有するものであるが、これらを併用することにより、後述するBMCの流動性が良くなり、射出成形性(計量性)、射出成形性(充填性)の確保ができる。
【0016】
前記アクリル樹脂粒子(c1)は特に限定されないが、BMCの流動性が良くなり、射出成形性(計量性)、射出成形性(充填性)をより向上することから、平均粒子径が0.1~8μmが好ましく、0.1~3μmがより好ましい。なお、本発明において、アクリル樹脂粒子の平均粒子径は動的光散乱法で測定したものである。
【0017】
前記アクリル樹脂粒子(c1)は、前記熱硬化性樹脂(A)及び前記低収縮化剤(B)の合計100質量部に対して、1~20質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましい。
【0018】
前記酸化マグネシウム(c2)は、前記熱硬化性樹脂(A)及び前記低収縮化剤(B)の合計100質量部に対して、0.05~5質量部が好ましく、0.1~2質量部がより好ましい。
【0019】
前記熱伝導性フィラー(D)としては、例えば、銀、銅、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属系フィラー;アルミナ、マグネシア、ベリリア、シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン等の無機系フィラー;ダイヤモンド、黒鉛、グラファイト、炭素繊維等の炭素系フィラーなどが挙げられる。これらの中でも、熱伝導性向上と軽量化の観点から、炭素系フィラーが好ましく、黒鉛がより好ましい。これらの熱伝導性フィラーは、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0020】
前記熱伝導性フィラー(D)は、本発明の熱硬化性樹脂組成物の流動性及び成形品の熱伝導性向上の観点から、粒子状のものが好ましく、その平均粒径は、10~500μmが好ましく、30~400μmがより好ましい。
【0021】
前記熱伝導性フィラー(D)は、流動性及び射出成形性と熱伝導性のバランスがより向上することから、前記熱硬化性樹脂(A)及び前記低収縮化剤(B)の合計100質量部に対して、100~500質量部が好ましく、150~350質量部がより好ましい。
【0022】
前記補強材(E)としては、例えば、ガラス繊維、ビニロン繊維、フェノール繊維、炭素繊維、ポリエステル繊維等の繊維状の材料が挙げられる。これらの中でも、入手容易性、BMC低流動性、及びBMC成形品強度物性向上の観点からガラス繊維が好ましい。このガラス繊維は、ガラスチョップドストランド、ミルドガラス等のいずれのものも用いることができる。BMCの流動性が良くなり、射出成形性(計量性)、射出成形性(充填性)またBMC成形品の物性をより向上することから、繊維長1.5~12mmのものが用いられるが好ましく、1.5~9mmのものがより好ましい。
【0023】
前記補強材の配合量は、前記熱硬化性樹脂(A)及び前記低収縮化剤(B)の合計100質量部に対して、10~80質量部が好ましく、15~50質量部がより好ましい。
【0024】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、上記の成分(A)~(E)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、熱可塑性樹脂、重合禁止剤、硬化剤、硬化促進剤、分散剤、離型剤、、顔料、着色剤、消泡剤等を配合してもよい。
【0025】
前記重合禁止剤としては、例えば、トルハイドロキノン、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、1,4-ナフトキノン、パラベンゾキノン、p-t-ブチルカテコール、2,6-t-ブチル-4-メチルフェノール等が挙げられる。本発明の熱硬化性樹脂組成物に重合禁止剤を配合する際の配合量は、本発明の熱硬化性樹脂組成物中10~1500ppmの範囲が好ましい。
【0026】
前記硬化剤としては、有機過酸化物が好ましく、例えば、ジアシルパーオキサイド系有機過酸化物、パーオキシエステル系有機過酸化物、ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物、ジアルキルパーオキサイド系有機過酸化物、ケトンパーオキサイド系有機過酸化物、パーオキシケタール系有機過酸化物、アルキルパーエステル系有機過酸化物、パーカーボネート系有機過酸化物等が挙げられる。なお、これらの硬化剤は、単独で用いることも、2種以上併用することもできる。
【0027】
前記硬化剤の配合量は、前記熱硬化性樹脂(A)及び前記低収縮化剤(B)の合計100質量部に対して、0.5~5質量部が好ましく、1~3質量部がより好ましい。
【0028】
前記離型剤は、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、金型を用いて成形した後、金型から得られた成形品の取り出しを容易にするためのものである。前記離型剤としては、例えば、不飽和脂肪酸アミド系離型剤、ポリエチレンワックス系離型剤、金属石鹸系離型剤、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤等が挙げられる。また、前記金属石鹸系離型剤としては、例えば、ラウリル酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、モンタン酸カルシウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸アルミニウム、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸マグネシウム、ベヘン酸亜鉛等が挙げられる。なお、これらの離型剤は、単独で用いることも、2種以上併用することもできる。
【0029】
前記離型剤の配合量は、前記熱硬化性樹脂(A)及び前記低収縮化剤(B)の合計100質量部に対して、1~10質量部が好ましく、3~8質量部がより好ましい。
【0030】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記の各成分をニーダー等の混練機を用いて混練することにより製造することができる。また、得られる樹脂組成物がバルク状になるように、配合組成を調整することで、バルクモールディングコンパウンド(BMC)とすることができる。
【0031】
本発明の熱硬化性樹脂組成物をBMCとすることで、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形等の成形方法により、容易に成形品にすることができる。
【実施例0032】
以下に実施例により本発明をより具体的に説明する。なお、樹脂の酸価は、JIS K6901に準拠し測定した。
【0033】
(製造例1:不飽和ポリエステル樹脂(a1)の合成)
窒素ガス導入管、温度計、還流コンデンサ、攪拌機を備えた2Lのガラス製フラスコに、ネオペンチルグリコール206質量部、プロピレングリコール53質量部、水素化ビスフェノールA 266質量部、イソフタル酸288質量部を仕込み窒素気流下、加熱を開始した。内温215℃、常法にて脱水縮合反応を行い、固形分酸価が6(mgKOH/g)になったところで、190℃まで冷却した。次いで、マレイン酸198質量部を添加し脱水縮合反応を継続し、固形分酸価28(mgKOH/g)になったところで、トルハイドロキノン0.4質量部を添加した。不飽和ポリエステル濃度が65質量%となるようスチレンモノマーに溶解させ、不飽和ポリエステル樹脂(a1)を得た。
【0034】
(製造例2:ビニルエステル樹脂(a2)の合成)
窒素導入管、温度計、撹拌機を設けた2Lフラスコに、エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン860-C」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量240)246質量部、エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン1050」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量470)730質量部、メタクリル酸215質量部、及びジブチルヒドロキシトルエン0.45質量部添加し、窒素と空気とを1対1で混合したガス流通下で、100℃まで昇温した。ここに2-メチルイミダゾール0.96質量部を添加し、110℃まで昇温し、反応を行った。固形分酸価が6(mgKOH/g)以下になったところで、トルハイドロキノン0.46質量部を添加し、ビニルエステル濃度が70質量%となるようスチレンモノマーに溶解させ、ビニルエステル樹脂(a2)を得た。
【0035】
(製造例3:低収縮化剤(B)の製造)
窒素導入管、温度計、撹拌機を設けた2Lフラスコに、スチレンモノマー900質量部、ポリスチレン(DIC株式会社製「ディックスチレンCR-3500」)600質量部、トルハイドロキノン0.25質量部を添加し、窒素ガスを流通下で、50℃まで昇温した。熱可塑性樹脂ポリスチレンを完全に溶融するまで撹拌、その後40℃以下に降温し、ポリスチレン濃度40質量%の低収縮化剤(B)を得た。
【0036】
(実施例1:熱硬化性樹脂組成物(1)の調製)
製造例1で得られた不飽和ポリエステル樹脂(a1)50質量部、製造例2で得られたビニルエステル樹脂(a2)30質量部、製造例3で得られたポリスチレン低収縮化剤(B)20質量部、アクリル樹脂粒子(c1)(アイカ工業株式会社製「ゼフィアックF303」;平均粒径2μm)5質量部、酸化マグネシウム(c2)(協和化学工業株式会社製「キョーワマグ40」)0.5質量部、硬化剤(1)(日油株式会社製「パーブチルO」;パーオキシエステル系有機過酸化物)0.6質量部、硬化剤(2)(日油株式会社製「パーブチルZ」;パーオキシエステル系有機過酸化物)1.2質量部、離型剤(1)(堺化学工業株式会社製「ステアリン酸亜鉛」)4質量部、離型剤(2)(日油株式会社製「カルシウムステアレート」)1.2質量部、黒鉛粉末(D1)(伊藤黒鉛工業株式会社製「AGB-32」;平均粒径200~300μm)100質量部、及び黒鉛粉末(D2)(伊藤黒鉛工業株式会社製「AGB-100」;平均粒径110μm)160質量部を、プラネタリーミキサーを用いて9分間混練した後、補強材(E)(ガラス繊維/チョップドストランド;重慶国際複合材料有限公司製「ECS404-6」;繊維長6mm)33質量部を加えて、さらに6分間混練することで、バルク状物を得た。得られたバルク状物をアルミ蒸着フィルムで梱包し、40℃恒温槽中に12時間放置し、BMCとして、熱硬化性樹脂組成物(1)を得た。
【0037】
(実施例2~5)
表1に示した配合組成に変更した以外は実施例1と同様にして、BMCとして、熱硬化性樹脂組成物(2)~(5)を得た。
【0038】
(比較例1~2)
表1に示した配合組成に変更した以外は実施例1と同様にして、BMCとして、熱硬化性樹脂組成物(R1)~(R2)を得た。
【0039】
上記の実施例1~5及び比較例1~2で得られた熱硬化性樹脂組成物(1)~(5)及び(R1)~(R2)を用いて、それぞれ下記の評価を行った。
【0040】
[流動性の評価]
上記で得られた熱硬化性樹脂組成物の初期粘度を測定した。粘度測定は、キャピラリー粘度計(細管型レオメータ)により以下の条件で行った。樹脂組成物投入量(サンプル量):75g、測定温度条件:50℃、押出速度:50mm/分、ノズル径:6mm、ノズル長さ:10mm
なお、高粘度のため測定できないものは、測定不可とした。
【0041】
[射出成形性(計量性)の評価]
上記で得られた熱硬化性樹脂組成物の所定量(75cm)について、所定時間(30秒間)で、スクリューにより材料庫(押込みホッパー)からシリンダーへの移動が可能な量を測定し、下記の基準により射出成形性(計量性)を評価した。
測定条件:押込め圧力5MPa、スクリュー回転数20rpm、押込みホッパーとシリンダー温度35℃
○:30秒未満で、75cm
△:30秒間で、40~75cm
×:30秒間で、40cm未満
【0042】
[射出成形性(充填性)の評価]
上記計量評価結果が○となった熱硬化性樹脂組成物について、流動性評価用金型を用い、射出成形を行い、成形品の外観を目視観察し、下記の基準により射出成形性(充填性)を評価した。
成形条件:金型温度160℃、型締力750kN、射出速度70mm/秒、硬化時間55秒
○:ショートなし、成形品表面にボイドなし
△:ショートなし、成形品表面にボイドあり
×:ショートあり、成形品表面にボイドあり
【0043】
[圧縮成形性の評価]
上記で得られた熱硬化性樹脂組成物について、圧縮成形を行い、下記の基準により圧縮成形性を評価した。
成形条件:成形温度145℃、圧力10MPa、加圧時間300秒、金型220mm×220mm
○:厚み3mm、4mm、10mmの成形品全てでショートなし
△:厚み3mmの成形品でショートあり、4mm及び10mmの成形品でショートなし
×:厚み3mm及び4mmの成形品でショートあり、10mmの成形品でショートなし
【0044】
[熱伝導性の評価]
成形温度145℃、成形圧力10MPa、成形保圧時間300秒の条件で圧縮成形して、220mm×220mm×厚さ10mmの平板を作製し、熱線法(JIS R2616)に準拠し熱伝導率を測定し、熱伝導性を評価した。
【0045】
上記で得られた熱硬化性樹脂組成物の組成及び評価結果を表1及び2に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
表中の「黒鉛粉末(D3)」は、伊藤黒鉛工業株式会社製「AGB-604」(平均粒径55μm)である。
【0049】
実施例1~5の本発明の熱硬化性樹脂組成物は、流動性、射出成形性、圧縮成形性に優れ、熱伝導性に優れる成形品を得られることが確認された。
【0050】
一方、比較例1は、不飽和ポリエステルを含有しない例であるが、流動性、射出成形性が不十分であることが確認された。
【0051】
比較例2は、ビニルエステルを含有しない例であるが、流動性、射出成形性が不十分であることが確認された。