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特開2024-55010混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法
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  • 特開-混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055010
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 49/09 20170101AFI20240411BHJP
【FI】
B01J49/09
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161567
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】小川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】宮地 みどり
(57)【要約】
【課題】 初期コストを増加させることなく、セプレックス法を利用して精度よくアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離が可能な混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法を提供する。
【解決手段】 本発明の混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法は、分離塔と、カチオン交換樹脂再生塔と、セプレックス塔の三塔構成からなる。分離塔における分離工程ではアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を分離する。分離したアニオン交換樹脂は、セプレックス塔に移送し、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の中間の比重の高濃度のNaOH水溶液で混入しているカチオン交換樹脂を分離除去するとともに再生処理を行う。また、分離塔における分離工程で分離されたカチオン交換樹脂は、カチオン交換塔に移送し、HCl溶液を注入してカチオン交換樹脂を再生する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂からニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを分離再生する方法であって、
混合イオン交換樹脂の投入部と、上下方向の途中に設けられたアニオン交換樹脂抜出部と、該アニオン交換樹脂抜出部よりも下方に設けられたカチオン交換樹脂抜出部と、底部に設けられたエア及び分離用水の注入部とを有する略筒状の混合イオン交換樹脂の分離塔に混合イオン交換樹脂投入し、前記分離塔内にエア及び分離用水の注入部から分離用水を上向流で通水し、前記混合イオン交換樹脂を比重差を利用して分離する分離工程と、
前記アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の分離界面より上側のアニオン交換樹脂を前記アニオン交換樹脂抜出部から抜き出してアニオン交換樹脂分離再生塔に移送するとともに、残余のカチオン交換樹脂をカチオン交換樹脂抜出部から抜き出してカチオン交換樹脂再生塔に移送する移送工程と、
前記アニオン交換樹脂分離再生塔で5重量%以上30重量%以下のNaOH水溶液に浸漬して、アニオン交換樹脂中に混入しているカチオン交換樹脂を分離し、該カチオン交換樹脂を排出するとともにアニオン交換樹脂を再生するアニオン交換樹脂分離再生工程と、
前記アニオン交換樹脂分離再生塔に残存したアニオン交換樹脂の水による洗浄を行うアニオン交換樹脂洗浄工程と、
前記カチオン交換樹脂再生塔内のカチオン交換樹脂を前記カチオン交換樹脂再生塔内で再生するカチオン交換樹脂再生工程と
前記カチオン交換樹脂再生塔に残存内のカチオン交換樹脂の水による洗浄を行うカチオン交換樹脂洗浄工程と、
を有する混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法。
【請求項2】
前記アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂が、ポーラス型イオン交換樹脂である、請求項1に記載の混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水製造装置などに用いられる非再生式イオン交換装置や混床式イオン交換装置などで使用したアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を分離して再生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
純水製造装置では原水中の不純物を除去して水の清浄度を高めているが、イオン性の不純物、すなわちアニオン性の不純物とカチオン性の不純物を除去するためにアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを混合充填した混床式イオン交換装置が汎用的に用いられている。この混床式イオン交換装置では、イオン交換樹脂はイオン交換容量に相当する量のイオンを交換すると、それ以上のイオン性不純物は除去できずに破過する。そこで、ある程度の処理水を処理したら、この混床式イオン交換装置からイオン交換樹脂をそれぞれ回収して、カチオン交換樹脂再生塔、アニオン交換樹脂再生塔でそれぞれ塩酸や苛性ソーダなどにより再生して再利用している。この際、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とは、上向流で通水してアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の比重差による沈降速度の違いを利用して分離するのが一般的である。
【0003】
この混合イオン交換樹脂の分離塔の一例を図4に示す。図4において、混合イオン交換樹脂の分離塔21は、円筒形の分離塔本体21Aの底部に注排水口22が設けられているとともに、複数の吐出ノズル23Aを備えた吐水部としての給水管23が設けられていて、頂部には排水口24が形成されている。この分離塔本体21Aの吐出ノズル23Aの下側には集水板25が配置されている。そして、分離塔21内の上下方向の中間付近にはアニオン交換樹脂抜出部としてのアニオン交換樹脂抜出配管26が設けられているとともに、このアニオン交換樹脂抜出配管26の下側で給水管23よりわずかに上側にカチオン交換樹脂抜出配管27が設けられている。また、分離塔21の側面にはのぞき窓28が形成されている。なお、29は分離塔21の側面上側に設けられた使用済の混合イオン交換樹脂の投入口である。
【0004】
このような混合イオン交換樹脂の分離塔21において、分離塔21内に使用済の混合イオン交換樹脂を投入し、続いて4重量%程度のNaOH水溶液を通液し、所定時間放置したら、注排水口22から純水を注入して排水口24から分離塔内のNaOH水溶液を押し出し、洗浄を行う。そして、分離塔21内に所定量の分離用水(純水)が充填された状態とする。この際、分離用水の水面が混合イオン交換樹脂の上面より上位、特に500mm以下程度上位となるようにする。
【0005】
次に注排水口24からエアを分離塔内に注入し、混合イオン交換樹脂をバブリングしコロイド状に絡みついた樹脂粒子をほぐした後バブリングングを停止し、混合イオン交換樹脂を集水板25上に沈降させる。この際、比重の大きいカチオン交換樹脂が先に沈降し、比重の小さいアニオン交換樹脂が遅れて沈降する。続いて、逆洗に備えて、分離塔21内が満水となるように注排水口22から純水(分離用水)を導入する。
【0006】
この満水の状態で吐出ノズル23Aから純水を吐出して上向流にて通水して、分離界面がアニオン交換樹脂抜出配管26の吸込口の下端となるようにのぞき窓28から目視により確認しながら調整する。そして、アニオン交換樹脂抜出配管26から吸引してアニオン交換樹脂をアニオン交換樹脂・水混相流として流出させて取り出す。このアニオン交換樹脂・水混相流は、水切りをした後、アニオン交換樹脂再生塔に移送してアニオン交換樹脂の再生処理を行う。
【0007】
このようにしてアニオン交換樹脂を抜き出した後は、吐出ノズル23Aから純水の吐出を継続しながらカチオン交換樹脂抜出配管27から吸引し、カチオン交換樹脂・水混相流として流出させて取り出す。このカチオン交換樹脂・水混相流は、水切りをした後カオン交換樹脂再生塔に移送してカチオン交換樹脂の再生処理を行う。このときカチオン交換樹脂は全部取り出さず、ある程度残存させることでアニオン交換樹脂の混入を防止する。
【0008】
しかしながら、上述したようなアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の分離方法では、両者の分離が不十分である、という問題点があった。特にカチオン交換樹脂は界面部を分離塔21内に残存させることで良好に分離することができるが、最初に抜き出すアニオン交換樹脂にカチオン交換樹脂が混入しやすい、という問題点があった。
【0009】
そこで、セプレックス法という高濃度のNaOH水溶液を用いてアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を分離する方法が適用されている。このセプレックス法は、図5に示すようなプロセスで処理を行う。
【0010】
すなわち、前述した図4に示す分離塔21で図5に示すような分離工程(第一の分離工程)でアニオン交換樹脂を抜き出したら、アニオン交換樹脂に混入したカチオン交換樹脂の分離専用の塔(セプレックス塔)に移送する。そして、このセプレックス塔にアニオン交換樹脂の比重とカチオン交換樹脂の比重の中間の比重のNaOH水溶液を注入した状態でバブリングにより樹脂をほぐして静置することで、混入したカチオン交換樹脂を下側に沈降させ、このカチオン交換樹脂をセプレックス塔の下部より抜き出して除去する。そして、塔内に純水を供給して、NaOH水溶液を押出洗浄した後、残ったアニオン交換樹脂を抜き出す(第二の分離工程)。この抜き出したアニオン交換樹脂は、アニオン交換樹脂再生塔に移送して定法によりアニオン交換樹脂の再生洗浄を行う。一方、第一の分離工程で分離したカチオン交換樹脂はカチオン交換樹脂再生塔に移送して定法によりカチオン交換樹脂の再生洗浄を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したようなセプレックス法により、アニオン交換樹脂とチオン交換樹脂とを他方の混入を極めて少なくして分離することができる。しかしながら、セプレックス法では、図5に示すように分離塔、アニオン交換樹脂再生塔、カチオン交換樹脂再生塔及びセプレックス塔と4個の塔数が必要となり、初期コストが増加するだけでなく、イオン交換樹脂の移送工程などの作業工程も増加する、という問題点があった。
【0012】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、初期コストを増加させることなく、セプレックス法を利用して精度よくアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離が可能な混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的に鑑み本発明は、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂からニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを分離再生する方法であって、混合イオン交換樹脂の投入部と、上下方向の途中に設けられたアニオン交換樹脂抜出部と、該アニオン交換樹脂抜出部よりも下方に設けられたカチオン交換樹脂抜出部と、底部に設けられたエア及び分離用水の注入部とを有する略筒状の混合イオン交換樹脂の分離塔に混合イオン交換樹脂投入し、前記分離塔内にエア及び分離用水の注入部から分離用水を上向流で通水し、前記混合イオン交換樹脂を比重差を利用して分離する分離工程と、前記アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の分離界面より上側のアニオン交換樹脂を前記アニオン交換樹脂抜出部から抜き出してアニオン交換樹脂分離再生塔に移送するとともに、残余のカチオン交換樹脂をカチオン交換樹脂抜出部から抜き出してカチオン交換樹脂再生塔に移送する移送工程と、前記アニオン交換樹脂分離再生塔で5重量%以上30重量%以下のNaOH水溶液に浸漬して、アニオン交換樹脂中に混入しているカチオン交換樹脂を分離し、該カチオン交換樹脂を排出するとともにアニオン交換樹脂を再生するアニオン交換樹脂分離再生工程と、前記アニオン交換樹脂分離再生塔に残存したアニオン交換樹脂の水による洗浄を行うアニオン交換樹脂洗浄工程と、前記カチオン交換樹脂再生塔内のカチオン交換樹脂を前記カチオン交換樹脂再生塔内で再生するカチオン交換樹脂再生工程と前記カチオン交換樹脂再生塔に残存内のカチオン交換樹脂の水による洗浄を行うカチオン交換樹脂洗浄工程と、を有する混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法を提供する(発明1)。
【0014】
かかる発明(発明1)によれば、分離塔で分離したアニオン交換樹脂に混入したカチオン交換樹脂をアニオン交換樹脂分離再生塔に投入して、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の中間の比重のNaOH水溶液を注入し、比重差を利用してアニオン交換樹脂中に混入しているカチオン交換樹脂を分離するとともにアニオン交換樹脂を再生することにより、カチオン交換樹脂を分離するためだけのセプレックス塔とアニオン交換樹脂の再生塔との二の塔の機能を一の塔で発揮させることができるので、従来のセプレックス塔のように4塔構成でなく3塔構成とることができる。これにより、初期コストを増加させることなく、セプレックス法を利用して精度よくアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離することができる。
【0015】
上記発明(発明1)においては、前記アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂が、ポーラス型イオン交換樹脂であることが好ましい(発明2)。
【0016】
かかる発明(発明2)によれば、5重量%以上30重量%以下のNaOH水溶液の比重は、ポーラス型アニオン交換樹脂の比重とポーラス型イオン交換樹脂の比重との両者の間とすることができるので、比重差を利用してアニオン交換樹脂中に混入しているカチオン交換樹脂を好適に分離することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法によれば、カチオン交換樹脂が混入しやすいアニオン交換樹脂をアニオン交換樹脂分離再生塔でアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の中間の比重のNaOH水溶液を注入し、比重差を利用してアニオン交換樹脂中に混入しているカチオン交換樹脂を分離するとともにアニオン交換樹脂を再生することにより、3塔構成で初期コストを増加させることなく、精度よくアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第一の実施形態による混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法を示す工程図である。
図2】本発明の第二の実施形態による混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法を示す工程図である。
図3】比較例1の混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法を示す工程図である。
図4】混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離塔の一例を示す概略図である。
図5】従来のセプレックス法による混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法について、添付図面を参照にして詳細に説明する。
【0020】
第一の実施形態
〔混合イオン交換樹脂の分離再生システム構成〕
本発明の混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法は、例えば、前述した図4に示すような分離塔と、カチオン交換樹脂再生塔と、セプレックス塔(アニオン交換樹脂分離・再生塔)の三塔構成からなる。
【0021】
(混合イオン交換樹脂)
本実施形態において混合イオン交換樹脂は、アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の混合樹脂である。この混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の割合(容積比)は、特に制限はないがアニオン交樹脂:カチオン交換樹脂=30:70~70:30程度である。
【0022】
このアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂は、いずれもポーラス型イオン交換樹脂であることが好ましい。ポーラス型のアニオン交換樹脂は、例えば約1.03~1.09g/mL程度の比重(湿潤時)を有し、ポーラス型のアニオン交換樹脂は、例えば約1.22~1.30g/mL程度の比重(湿潤時)を有する。
【0023】
〔混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法〕
次に前述したような構成を有する装置構成による本実施形態の混合イオン交換樹脂の分離再生方法について図1のフロー図に基づいて説明する。
【0024】
(分離工程)
分離工程については、前述した図5における分離工程と同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0025】
(アニオン交換樹脂の分離再生工程)
分離工程において取り出されたアニオン交換樹脂には、わずかにカチオン交換樹脂が混入している。そこで、セプレックス塔では以下のような操作を行う。
【0026】
まず、セプレックス塔にアニオン交換樹脂を投入したら、NaOH水溶液を薬注する。このNaOH水溶液は、5~30重量%の濃度でアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の中間の比重となるように設定する。例えば、アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂がポーラス型の場合には、NaOH水溶液は9~25重量%の濃度とする。このNaOH水溶液は、約1.10~1.27g/mL程度の比重を有する。
【0027】
次に注排水口からエアをセプレックス塔内に注入し、アニオン交換樹脂を所定時間バブリングしたら停止して静置することでアニオン交換樹脂を沈降させる。この沈降において、NaOH水溶液がアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の中間の比重となるように設定されているので、比重の大きいカチオン交換樹脂のみが沈降する。
【0028】
この状態でセプレックス塔の底部に設けられたカチオン交換樹脂抜出配管から吸引してカチオン交換樹脂をカチオン交換樹脂・水混相流として流出させて抜き出す。このカチオン交換樹脂・水混相流は、水切りをした後、次回の混合イオン交換樹脂の分離再生時に一緒に投入すればよい。
【0029】
続いて、セプレックス塔内に純水を供給して、塔内のNaOH水溶液を押し出して排出するとともに、アニオン交換樹脂を洗浄する。そして、セプレックス塔内から純水を排出した後、再度NaOH水溶液(濃度約4重量%程度)を通液してアニオン交換樹脂の再生を行い、続いてセプレックス塔内に純水を供給して、塔内のNaOH水溶液を押し出して排出するとともにアニオン交換樹脂を洗浄する。このようにしてアニオン交換樹脂を再生することができる。この再生後のアニオン交換樹脂は塔から取り出して再利用すればよい。
【0030】
(カチオン交換樹脂の再生工程)
カチオン交換樹脂再生塔では、常法と同じ操作を行う。まず、カチオン交換樹脂再生塔にカチオン交換樹脂を投入したら、無機酸としてのHCl溶液を注入してカチオン交換樹脂を再生する。
【0031】
続いて、カチオン交換樹脂再生塔内に純水を供給して、塔内のHCl溶液を押し出して排出するとともに、カチオン交換樹脂を洗浄する。このようにしてカチオン交換樹脂を再生することができる。この再生後のカチオン交換樹脂はカチオン交換樹脂再生塔取り出して再利用すればよい。
【0032】
上述したような本実施形態においては、セプレックス塔においてアニオン交換樹脂に混入したカチオン交換樹脂の分離とアニオン交換樹脂の再生とを行うので、三塔構成のシステムでアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生を行うことができる。また、三塔での操作になるので、作業工程も削減することができる。
【0033】
第二の実施形態
第二の実施形態の混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法は、図2に示すフローで行う。
【0034】
本実施形態は、前述した第一の実施形態において、第一の分離工程で分離したアニオン交換樹脂を高濃度NaOH水溶液に浸漬して混入しているカチオン交換樹脂を分離し、抜き出す工程を終了したら、その後のNaOH水溶液による再生は、高濃度NaOH水溶液の浸漬で終わっているものとし、純水によるNaOH水溶液の押出洗浄のみを行うものである。
【0035】
本実施形態のようにアニオン交換樹脂の分離再生工程において、アニオン交換樹脂と混入しているカチオン交換樹脂との分離と、アニオン交換樹脂の再生とを一の工程で行うことにより、前述した第一の実施形態よりもさらに作業性を向上させることができる。また、NaOH水溶液の使用量の削減を図ることができる。
【0036】
以下の具体的実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0037】
[実施例1]
混合イオン交換樹脂の分離塔、カチオン交換樹脂再生塔及びセプレックス塔により装置を構成し、図1に示すプロセスでアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の分離精製と再生を行った。アニオン交換樹脂としては比重1.05g/mL(湿潤時)のポーラス型アニオン交換樹脂を、カチオン交換樹脂としては比重1.28g/mL(湿潤時)のポーラス型カチオン交換樹脂をそれぞれ用い、セプレックス塔での分離用のNaOH水溶液としては、16重量%のNaOH水溶液(比重1.18)を用いた。
【0038】
この実施例1の分離精製により、アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂のそれぞれの混入率は、いずれも0.005%と極めて高精度に分離することができた。また、アニオン交換樹脂のOHの転換率は99%以上であった。そして、この装置のイニシャルコストは約6千万円であった。
【0039】
[実施例2]
混合イオン交換樹脂の分離塔、カチオン交換樹脂再生塔及びセプレックス塔により装置を構成し、図2に示すプロセスを実施した以外、実施例1と同様にアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の分離精製と再生を行った。
【0040】
この実施例2の分離精製により、アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂のそれぞれの混入率は、いずれも0.005%と極めて高精度に分離することができた。また、アニオン交換樹脂のOHの転換率は99%以上であった。そして、この装置のイニシャルコストは約6千万円であった。
【0041】
[比較例1]
混合イオン交換樹脂の分離塔、カチオン交換樹脂再生塔及びアニオン交換樹脂再生塔により装置を構成し、図3に示すようにアニオン交換樹脂に混入したカチオン交換樹脂の分離を行うことなく、再生用のNaOH水溶液による再生処理のみを行うプロセスを実施してアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の分離精製と再生を行った。
【0042】
この比較例1の分離精製により、アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂のそれぞれの混入率は、いずれも0.02%と実施例1、2に比べて高く、高純度の再生樹脂を必要とする用途には不適であった。また、アニオン交換樹脂のOHの転換率は99%以上であった。そして、この装置のイニシャルコストは約6千万円であった。
【0043】
[比較例2]
混合イオン交換樹脂の分離塔、カチオン交換樹脂再生塔、アニオン交換樹脂再生塔及びセプレックス塔により装置を構成し、図5に示すプロセスを実施してアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の分離精製と再生を行った。
【0044】
この比較例2の分離精製により、アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂のそれぞれの混入率は、いずれも0.005%と極めて高精度に分離することができた。また、アニオン交換樹脂のOHの転換率は99%以上であった。しかしながら、この装置のイニシャルコストは約8千万円であった。
【符号の説明】
【0045】
21 混合イオン交換樹脂の分離塔
21A 分離塔本体
22 注排水口
23 給水管
23A 吐出ノズル
24 排水口
25 集水板
26 アニオン交換樹脂抜出配管
27 カチオン交換樹脂抜出配管
28 のぞき窓
29 使用済の混合イオン交換樹脂の投入口
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-01-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂からニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを分離再生する方法であって、
混合イオン交換樹脂の投入部と、上下方向の途中に設けられたアニオン交換樹脂抜出部と、該アニオン交換樹脂抜出部よりも下方に設けられたカチオン交換樹脂抜出部と、底部に設けられたエア及び分離用水の注入部とを有する略筒状の混合イオン交換樹脂の分離塔に混合イオン交換樹脂投入し、前記分離塔内にエア及び分離用水の注入部から分離用水を上向流で通水し、前記混合イオン交換樹脂を比重差を利用して分離する分離工程と、
前記アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の分離界面より上側のアニオン交換樹脂を前記アニオン交換樹脂抜出部から抜き出してアニオン交換樹脂分離再生塔に移送するとともに、残余のカチオン交換樹脂をカチオン交換樹脂抜出部から抜き出してカチオン交換樹脂再生塔に移送する移送工程と、
前記アニオン交換樹脂分離再生塔で5重量%以上30重量%以下のNaOH水溶液に浸漬して、アニオン交換樹脂中に混入しているカチオン交換樹脂を分離し、該カチオン交換樹脂を排出するとともにアニオン交換樹脂を再生するアニオン交換樹脂分離再生工程と、
前記アニオン交換樹脂分離再生塔に残存したアニオン交換樹脂の水による洗浄を行うアニオン交換樹脂洗浄工程と、
前記カチオン交換樹脂再生塔内のカチオン交換樹脂を前記カチオン交換樹脂再生塔内で再生するカチオン交換樹脂再生工程と
前記カチオン交換樹脂再生塔に残存内のカチオン交換樹脂の水による洗浄を行うカチオン交換樹脂洗浄工程と、
を有し、
前記アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂が、ポーラス型イオン交換樹脂であり、
前記NaOH水溶液が、1.10~1.27g/mLの比重を有する、混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法。
【請求項2】
前記NaOH水溶液が、9~25重量%の濃度を有する、請求項1に記載の混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
上記目的に鑑み本発明は、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂からニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを分離再生する方法であって、混合イオン交換樹脂の投入部と、上下方向の途中に設けられたアニオン交換樹脂抜出部と、該アニオン交換樹脂抜出部よりも下方に設けられたカチオン交換樹脂抜出部と、底部に設けられたエア及び分離用水の注入部とを有する略筒状の混合イオン交換樹脂の分離塔に混合イオン交換樹脂投入し、前記分離塔内にエア及び分離用水の注入部から分離用水を上向流で通水し、前記混合イオン交換樹脂を比重差を利用して分離する分離工程と、前記アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の分離界面より上側のアニオン交換樹脂を前記アニオン交換樹脂抜出部から抜き出してアニオン交換樹脂分離再生塔に移送するとともに、残余のカチオン交換樹脂をカチオン交換樹脂抜出部から抜き出してカチオン交換樹脂再生塔に移送する移送工程と、前記アニオン交換樹脂分離再生塔で5重量%以上30重量%以下のNaOH水溶液に浸漬して、アニオン交換樹脂中に混入しているカチオン交換樹脂を分離し、該カチオン交換樹脂を排出するとともにアニオン交換樹脂を再生するアニオン交換樹脂分離再生工程と、前記アニオン交換樹脂分離再生塔に残存したアニオン交換樹脂の水による洗浄を行うアニオン交換樹脂洗浄工程と、前記カチオン交換樹脂再生塔内のカチオン交換樹脂を前記カチオン交換樹脂再生塔内で再生するカチオン交換樹脂再生工程と前記カチオン交換樹脂再生塔に残存内のカチオン交換樹脂の水による洗浄を行うカチオン交換樹脂洗浄工程と、を有する混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法を提供する(発明1)。