(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055016
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】パターン基板の製造方法、パターン基板、およびパターン基板中間体
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20240411BHJP
H01L 21/312 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/312 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161573
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508129090
【氏名又は名称】ジェレスト, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】福井 浩
【テーマコード(参考)】
5F004
5F058
【Fターム(参考)】
5F004CA02
5F004CA04
5F004DA04
5F004DA11
5F004DA29
5F004DB02
5F004DB13
5F058AC10
5F058AD02
5F058AD10
5F058AE10
5F058AF01
5F058AG09
5F058AH01
(57)【要約】
【課題】難エッチング性素材を絶縁層として用いる場合であっても、上記絶縁層を容易にパターニングしてパターン基板を得ることのできる、優れたパターン基板の製法と、それによって得られるパターン基板と、そのパターン基板中間体を提供する。
【解決手段】基板10上に、絶縁層11と電極層12がこの順で積層されたパターン基板を製造する方法において、有機レジスト材料層13を形成し、前記有機レジスト材料層13にEUVを照射してEUV照射部13aとEUV非照射部13bとを得る。そして、その上に、絶縁層11と電極層12と第2の有機レジスト材料層14をこの順で形成する。前記第2の有機レジスト材料層14にEUVを照射し、現像してパターニング層14aを得た後、電極層12の部分を除去する。そして、絶縁層11の部分と、その下の、前記有機レジスト材料層13のEUV非照射部13bとを除去し、前記パターニング層14aを除去する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、絶縁層と電極層がこの順で積層されたパターン基板を製造する方法において、
有機レジスト材料層を形成する工程と、
前記有機レジスト材料層にEUVをパターン照射してEUV照射部とEUV非照射部とを得る工程と、
前記EUVのパターン照射がなされた有機レジスト材料層を有する基板上に、絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層上に、電極層を形成する工程と、
前記電極層上に、第2の有機レジスト材料層を形成する工程と、
前記第2の有機レジスト材料層にEUVをパターン照射してEUV照射部とEUV非照射部とを得た後、前記EUV非照射部を除去しEUV照射部を現像してパターニング層を得る工程と、
前記EUV非照射部が除去された部分から露出する電極層を除去する工程と、
前記電極層が除去された部分から露出する絶縁層と、その絶縁層の下の、前記有機レジスト材料層のEUV非照射部とを除去する工程と、
前記パターニング層を除去する工程と、
を有するパターン基板の製造方法。
【請求項2】
前記有機レジスト材料層および第2の有機レジスト材料層が、それぞれ有機ヒドロキシオキソスズ層からなる層である、請求項1記載のパターン基板の製法。
【請求項3】
前記有機ヒドロキシオキソスズ層が、下記の一般式(1)で示される有機ヒドロキシオキソスズ前駆体を用いて形成される、請求項2記載のパターン基板の製法。
[化1]
RSnX3 …(1)
[Rは炭素数1~30の炭化水素基、Xは加水分解性置換基を示す。]
【請求項4】
前記EUV非照射部が、酸によって除去される、請求項1または2記載のパターン基板の製造方法。
【請求項5】
前記EUV非照射部の除去が、酸性ガスを用いた気相処理によってなされる、請求項4記載のパターン基板の製造方法。
【請求項6】
前記絶縁層が、難エッチング性素材によって形成される、請求項1または2記載のパターン基板の製造方法。
【請求項7】
前記難エッチング性素材が、比誘電率κが9以上のhigh-κ材料である、請求項6記載のパターン基板の製造方法。
【請求項8】
前記比誘電率κが9以上のhigh-κ材料が、酸化ハフニウム、窒化ハフニウムシリケート、ハフニウムアルミネート、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化アルミニウムジルコニウム、酸化アルミニウム、ランタン系酸化物、およびこれらとシリカアルミニウムとの化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物である、請求項7記載のパターン基板の製造方法。
【請求項9】
請求項1または2記載のパターン基板の製造方法によって得られるパターン基板であって、有機レジスト材料層のEUV照射部を有する基板上に、絶縁層と、電極層とが、この順で形成されているパターン基板。
【請求項10】
請求項9記載のパターン基板を得るための中間体であって、EUV照射部とEUV非照射部が形成された有機レジスト材料層を有する基板上に、絶縁層が形成されているパターン基板中間体。
【請求項11】
前記絶縁層上に電極層を有する、請求項10記載のパターン基板中間体。
【請求項12】
前記電極層上にパターニング層を有する、請求項11記載のパターン基板中間体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の半導体デバイスに用いられるパターン基板の製造方法と、それによって得られるパターン基板、そして上記パターン基板を得るために用いられるパターン基板中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高度な情報化社会へのパラダイムシフトを背景に、より高速でより大量の情報を、より高い精度で取り扱うことが求められており、半導体を用いた集積回路等、半導体デバイスに関する技術は、日々めざましく進歩している。
【0003】
上記半導体デバイスの製造プロセスは、ごく簡単なMOSデバイスの模式図を例にとって説明すると、以下のとおりである。まず、
図3(a)に示すように、シリコン基板1上に、ゲート絶縁膜となるシリコン酸化膜2を、熱酸化等を用いて形成する。そして、
図3(b)に示すように、上記シリコン酸化膜2上に、CVD法(chemical vapor deposition)等を用いて、ゲート電極となるポリシリコン膜3を形成する。
【0004】
ついで、
図3(c)、(d)に示すように、上記ポリシリコン膜3をフォトレジスト膜4で覆い、リソグラフィーにより所望のマスクを用いて露光、現像することにより、ゲート電極のマクスパターニングを行う。そして、
図4(a)、(b)に示すように、パターニングされたフォトレジスト膜4をマスクとして、上記ポリシリコン膜3およびシリコン酸化膜2を、例えばRIE法(reactive ion etching)によりエッチングする。
【0005】
つぎに、
図4(c)に示すように、酸素ガスを用いたアッシング(ashing、灰化)によりフォトレジスト膜4を除去する。このようにして、
図4(d)に示すような、凹凸パターンを有するパターン基板を得た後、層間絶縁膜の形成、パターニング、金属の埋め込み、平坦化等を繰り返して所定の配線と素子を形成し、デバイスに必要な回路を形成していく。
【0006】
このようなパターン基板を用いた半導体デバイスに用いられるゲート絶縁膜としては、上記の例のように、シリコン酸化膜が多用されているが、近年、半導体デバイスのさらなる高集積化、高速化の要求に応えるために、より高い比誘電率を有する、いわゆる「high-κ」といわれる酸化ハフニウム、窒化ハフニウムシリケート、ハフニウムアルミネート等の金属酸化物をゲート絶縁膜として用いることが検討されている。
【0007】
すなわち、比誘電率の高いこれらの材料を用いると、ゲートリーク電流を抑制できることから、ゲート絶縁膜のさらなる薄膜化、パターンの微細化を可能にすることが期待されており、そのようなhigh-κ材料を用いた半導体装置がいくつか提案されている(特許文献1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記high-κ材料は、難エッチング性を示すため、high-κ材料からなる絶縁層を直接エッチング処理してパターン形成することは容易でなく、これを効率よくエッチングする方法の開発が強く求められている。
ちなみに、上記特許文献1では、第1の絶縁層としてhigh-κ膜を用い、第2の絶縁膜として酸化シリコン等の一般的な絶縁膜を用い、両者を組み合わせた積層構造にした上で、第2の絶縁膜のみをエッチングしてパターン化することにより、絶縁層全体の比誘電率を高めたことが特徴であり、high-κ膜からなる絶縁膜自体をパターン化することには成功していない。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、high-κ材料等の難エッチング性素材を絶縁層として用いる場合であっても、上記絶縁層を容易にパターニングしてパターン基板を得ることのできる、優れたパターン基板の製法と、それによって得られるパターン基板と、そのパターン基板中間体の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
しかるに、本発明者はかかる事情に鑑み、基板上に、絶縁層をパターニングする際に、有機レジスト材料層を利用して製造工程を工夫することにより、難エッチング性素材からなる絶縁層を効率よくパターニングすることができることを見いだし、本発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の態様を有する。
[1] 基板上に、絶縁層と電極層がこの順で積層されたパターン基板を製造する方法において、有機レジスト材料層を形成する工程と、前記有機レジスト材料層にEUVをパターン照射してEUV照射部とEUV非照射部とを得る工程と、前記EUVのパターン照射がなされた有機レジスト材料層を有する基板上に、絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層上に、電極層を形成する工程と、前記電極層上に、第2の有機レジスト材料層を形成する工程と、前記第2の有機レジスト材料層にEUVをパターン照射してEUV照射部とEUV非照射部とを得た後、前記EUV非照射部を除去しEUV照射部を現像してパターニング層を得る工程と、前記EUV非照射部が除去された部分から露出する電極層を除去する工程と、前記電極層が除去された部分から露出する絶縁層と、その絶縁層の下の、前記有機レジスト材料層のEUV非照射部とを除去する工程と、前記パターニング層を除去する工程と、を有するパターン基板の製造方法。
[2] 前記有機レジスト材料層および第2の有機レジスト材料層が、それぞれ有機ヒドロキシオキソスズ層からなる層である、[1]記載のパターン基板の製法。
[3] 前記有機ヒドロキシオキソスズ層が、下記の一般式(1)で示される有機ヒドロキシオキソスズ前駆体を用いて形成される、[2]記載のパターン基板の製法。
[化1]
RSnX3 …(1)
[Rは炭素数1~30の炭化水素基、Xは加水分解性置換基を示す。]
[4] 前記EUV非照射部が、酸によって除去される、[1]~[3]のいずれかに記載のパターン基板の製造方法。
[5] 前記EUV非照射部の除去が、酸性ガスを用いた気相処理によってなされる、[4]記載のパターン基板の製造方法。
[6] 前記絶縁層が、難エッチング性素材によって形成される、[1]~[5]のいずれかに記載のパターン基板の製造方法。
[7] 前記難エッチング性素材が、比誘電率κが9以上のhigh-κ材料である、[6]記載のパターン基板の製造方法。
[8] 前記比誘電率κが9以上のhigh-κ材料が、酸化ハフニウム、窒化ハフニウムシリケート、ハフニウムアルミネート、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化アルミニウムジルコニウム、酸化アルミニウム、ランタン系酸化物、およびこれらとシリカアルミニウムとの化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物である、[7]記載のパターン基板の製造方法。
[9] [1]~[8]のいずれかに記載のパターン基板の製造方法によって得られるパターン基板であって、有機レジスト材料層のEUV照射部を有する基板上に、絶縁層と、電極層とが、この順で形成されているパターン基板。
[10] [9]記載のパターン基板を得るための中間体であって、EUV照射部とEUV非照射部が形成された有機レジスト材料層を有する基板上に、絶縁層が形成されているパターン基板中間体。
[11] 前記絶縁層上に電極層を有する、[10]記載のパターン基板中間体。
[12] 前記電極層上にパターニング層を有する、[11]記載のパターン基板中間体。
【発明の効果】
【0013】
本発明のパターン基板の製造方法によれば、絶縁層のパターニングに際し、絶縁層の下に設けられた有機レジスト材料層のEUV非照射部を利用してパターニングを行うため、絶縁層が難エッチング性素材であっても、これを効率よくパターニングすることができる。また、基板と絶縁層の間に有機レジスト材料層のEUV照射部が挟み込まれた構成になるため、界面特性が不安定になりやすい材質の基板と絶縁層を組み合わせた場合であっても、上記EUV照射部を介して、両者を安定した状態で積層一体化することができる。しかも、絶縁層をエッチング除去する際、基板表面が有機レジスト材料層で被覆されているため、基板をオーバーエッチングから保護することができるという利点を有する。
【0014】
そして、本発明のパターン基板によれば、上記本発明の製造方法によって、high-κ材料等の難エッチング性素材を用いた絶縁層が効率よく形成されているため、優れた電気特性を示すという利点を有する。また、基板がオーバーエッチングから保護されている点においても、安定した品質を有している。
【0015】
さらに、本発明のパターン基板中間体によれば、上記パターン基板の製造を、効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)~(d)は、いずれも本発明の一実施形態における製造工程の説明図である。
【
図2】(a)~(d)は、いずれも本発明の一実施形態における製造工程の説明図である。
【
図3】(a)~(d)は、いずれも従来のパターン基板の製造工程の説明図である。
【
図4】(a)~(d)は、いずれも従来のパターン基板の製造工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されない。
なお、本発明において「Y~Z」(Y,Zは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「Y以上Z以下」の意と共に、「好ましくはYより大きい」または「好ましくはZより小さい」の意も包含する。
また、「Y以上」(Yは任意の数字)または「Z以下」(Zは任意の数字)と表現した場合、「Yより大きいことが好ましい」または「Z未満であることが好ましい」旨の意も包含する。
【0018】
本発明の一実施形態は、例えば
図2(d)に示すような、基板10上に、絶縁層11と電極層12がこの順で積層されたパターン基板を製造する方法に関するものであり、この実施形態を、
図1(a)~(d)、
図2(a)~(d)を用いて、順を追って説明する。
なお、
図2(d)に示すように、絶縁層11は、基板10上に直接形成されているのではなく、有機レジスト材料層13に由来するEUV照射層13aを介して、基板10上に形成されている。したがって、本発明において、「基板上に、……層が形成される」、あるいは「基板上に、……層が積層される」という場合、基板上にその層が直接形成されていないか、直接積層されていない場合も含む趣旨である。
【0019】
<1:有機ヒドロキシオキソスズ層の形成>
本実施形態では、まず、
図1(a)に示すように、基板10上に、有機レジスト材料層として、有機ヒドロキシオキソスズ層13を形成する。
【0020】
上記基板10としては、特に制限されず、得られるパターン基板の用途や要求される特性に応じて、適宜の材質のものが用いられる。例えば、Si、SiO2、SiN、SiON、SiC、BN、GaN、TiN、BPSG、SOG、Cr、CrO、CrON、MoSi等によって形成された基板が挙げられる。
【0021】
なお、上記基板10の表面(その上に絶縁層11が形成される側の面)は、必ずしも平坦で均一な材質である必要はなく、基板10の表面の一部が、例えはエッチング等によって除去されて凹状領域を含むものであってもよい。また、逆に、基板10の表面の一部に、他の材料が堆積等によって追加されて凸状領域を含むものであってもよい。そして、基板10の厚みも、特に限定されず、パターン基板の用途や種類等に応じて適宜の厚みに設定される。
【0022】
また、上記基板10の表面が疎水性である場合、この上に形成される有機ヒドロキシオキソスズ層13のEUV照射部13aとの密着性を高めるために、上記基板10の表面に対して親水化処理を施すことができる。上記親水化処理としては、例えば、酸素、オゾン、アルコール等を用いて基板10の表面に水酸基等の親水基を付与する方法が挙げられる。
【0023】
上記基板10上に形成される有機ヒドロキシオキソスズ層13は、後述するように、この有機ヒドロキシオキソスズ層13よりも後から形成される絶縁層11のエッチングによるパターニングを補助するために用いられるもので、EUV照射によって容易にパターニングすることができるものである。
【0024】
上記有機ヒドロキシオキソスズ層13を形成するには、一般式「RpSnXm」で示される有機ヒドロキシオキソスズ前駆体が用いられる。
上記式において、「R」はベータ水素を有する炭化水素基であり、好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数1~15、より好ましくは1~10、さらに好ましくは炭素数2~6の炭化水素基である。例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、1-メチルシクロペンチル基等の飽和炭化水素基、ビニル基、2-プロぺニル基等の不飽和炭化水素基が挙げられる。
また、上記式において、「X」は加水分解性置換基を意味し、例えばハロゲン、アミノ基、アルコキシ基(-OR’)、アルキニド(R’C≡C)、アジド(N3-)、ジアルキルアミノ基(-NR’2)(-NR’R”)、アルキルカルボニルアミノ基(-N(R’)C(O)R’)(-N(R’)C(O)R”)(-N(R”)C(O)R’)、カルボニルオキシ基(-OCOR’)、カルボニルアミノ基(-N(H)C(O)R’)等が挙げられる。R’、R”はそれぞれ独立する、炭素数1~10の炭化水素基である。なかでも、Xはジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アルキルカルボニルアミノ基、ハロゲン、カルボニルオキシ基であることが好ましく、とりわけ、Xがジアルキルアミノ基、アルコキシ基であるものが好ましく、さらには、ジアルキルアミノ基(-NR’2)、アルコキシ基(-OR’)である。
そして、上記式において「p」は1~3の整数、「m」は1~4の整数である。
【0025】
かかる有機ヒドロキシオキソスズ前駆体の分子量は通常200~900、好ましくは240~700、特に好ましくは280~500である。
【0026】
本実施形態においては、上記有機ヒドロキシオキソスズ前駆体のなかでも、特に、下記の一般式(1)で示される有機ヒドロキシオキソスズ前駆体を用いることが、効果の上で好適である。そして、下記式のRは、前記一般式における「R」と同様、ベータ水素を有する炭化水素基であり、そのなかでも、炭素数が1~15、より好ましくは1~10、さらに好ましくは2~6のものが好ましい。また、下記式のXは、前記一般式における「X」と同様のものであり、なかでも、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アルキルカルボニルアミノ基、ハロゲン、カルボニルオキシ基が特に好ましく、とりわけ、Xがジアルキルアミノ基、アルコキシ基であるものが好ましく、さらには、ジアルキルアミノ基(-NR’2)、アルコキシ基(-OR’)である。
[化2]
RSnX3 …(1)
[Rは炭素数1~30の炭化水素基、Xは加水分解性置換基を示す。]
【0027】
このような有機ヒドロキシオキソスズ前駆体としては、t-ブチルトリス(ジメチルアミノ)スズ、n-ブチルトリス(ジメチルアミノ)スズ、t-ブチルトリス(ジエチルアミノ)スズ、ジ(t-ブチル)ジ(ジメチルアミノ)スズ、sec-ブチルトリス(ジメチルアミノ)スズ、n-ペンチルトリス(ジメチルアミノ)スズ、イソブチルトリス(ジメチルアミノ)スズ、イソプロピルトリス(ジメチルアミノ)スズ、t-ブチルトリス(t-ブトキシ)スズ、n-ブチル(トリス(t-ブトキシ)スズ、またはイソプロピルトリス(t-ブトキシ)スズ等が挙げられる。
【0028】
そして、上記有機ヒドロキシオキソスズ前駆体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。そして、上記有機ヒドロキシオキソスズ前駆体を用いた層の形成は、特に制限はなく、スピンコート法、CVD法、物理気相堆積法、原子層堆積法等、従来公知の各種の成膜方法から適宜選択することができる。
【0029】
本実施形態においては、とりわけCVD法を用いることが好適である。上記CVD法を用いる場合、上記有機ヒドロキシオキソスズ前駆体と、ヒドロキシ基を付与するための酸素含有カウンター反応物とを、別々の入口経由でCVD装置の堆積チャンバ内に導入し、両者を気相で混合し反応させることにより、基板10上に、有機ヒドロキシオキソスズ層13を形成することができる。
【0030】
なお、上記酸素含有カウンター反応物は、CVD法に限らず、他の堆積方法においても、有機ヒドロキシオキソスズ前駆体と組み合わせて用いられるもので、有機ヒドロキシオキソスズ前駆体を酸化してヒドロキシ基を多数生じさせる役割を果たすものである。上記酸素含有カウンター反応物としては、例えば、水、過酸化水素、ギ酸、アルコール、酸素、オゾン等が挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0031】
また、上記CVD法によって有機ヒドロキシオキソスズ層13を形成する場合、成膜時の圧力条件は、一般に、10~1500Paであり、なかでも、65~270Paであることが好ましい。そして、成膜時の基板10の温度は、一般に、0~250℃であり、なかでも、20~150℃であることが好ましい。
【0032】
上記有機ヒドロキシオキソスズ層13の厚みは、特に限定するものではないが、この厚みt1が、その後に形成する絶縁層11の厚みt2に比べてごく薄くなるように設定することが好適である。すなわち、上記有機ヒドロキシオキソスズ層13のEUV照射部13aは、最終的に、基板10と絶縁層11との間に残り、絶縁層の一部となることから、この部分が厚すぎると、パターン基板全体が厚くなる傾向がある。一方、この部分が薄すぎると、絶縁層11をエッチングしやすくする作用が小さくなる傾向がある。そこで、上記有機ヒドロキシオキソスズ層13のEUV照射後の厚みt1は、通常、0.5~20nmであり、好ましくは5~15nmである。そして、例えば上記絶縁層11が、比誘電率κが9以上のhigh-κ材料からなるものである場合、上記絶縁層11の厚みt2に対する有機ヒドロキシオキソスズ層13のEUV照射後の厚みt1の割合(t1/t2)は、0.04~0.7であることが好ましい(
図1[c]を参照)。
【0033】
<2:有機ヒドロキシオキソスズ層のパターン照射>
つぎに、上記有機ヒドロキシオキソスズ層13の特定領域のみにEUVを照射して硬化させることにより、
図1(b)に示すように、硬化されたEUV照射部13aと、未硬化のEUV非照射部13bとを形成する。
【0034】
上記EUVとは、波長が10~15nm前後の電磁波(Extreme Ultra-Violet)のことをいう。上記EUV照射により、前記有機ヒドロキシオキソスズ層13が有する多くの末端ヒドロキシ基同士が架橋して-O-結合を生成し、EUV照射部13aが硬化する。また、EUV非照射部13bは硬化しない。
【0035】
上記EUV照射を行うための光源としては、高温のプラズマ、特にレーザ励起プラズマ等が用いられる。そして、その照射量は、有機ヒドロキシオキソスズ層13の厚み等にもよるが、通常、15~80mJ/cm2であることが好適である。
【0036】
<3:絶縁層の形成>
つぎに、
図1(c)に示すように、上記EUVのパターン照射がなされた有機ヒドロキシオキソスズ層13の上に、絶縁層11を形成する。上記絶縁層11の厚みt2も、特に限定されるものではないが、すでに述べたように、例えば上記絶縁層11が、比誘電率κが9以上のhigh-κ材料からなるものである場合、上記有機ヒドロキシオキソスズ層13のEUV照射部13aの厚みt1との関係において、t1/t2=0.04~0.7になるように設定することが好適である。
【0037】
上記絶縁層11は、従来、ゲート絶縁層等に多用されている酸化シリコン(SiO2)等を用いて形成してもよいが、本発明では、高比誘電率でありながら難エッチング性であるために半導体デバイスへの使用が限定されていた、難エッチング性素材からなる絶縁材料に対して効率よくエッチング処理することができるという利点を有していることから、上記難エッチング性素材からなる絶縁材料を用いることが好適である。
【0038】
このような、高比誘電率を有する難エッチング性素材としては、例えば、比誘電率κが9以上のhigh-κ材料が挙げられる。具体的には、酸化ハフニウム、窒化ハフニウムシリケート、ハフニウムアルミネート、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化アルミニウムジルコニウム、酸化アルミニウム、ランタン系酸化物、およびこれらとシリカアルミニウムとの化合物等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0039】
そして、本実施形態では、上記high-κ材料のなかでも、特に、酸化ハフニウム(κが13~18)、酸化ジルコニウム(κが13より大)が、とりわけ優れた高比誘電率を示すことから好適である。
【0040】
上記絶縁層11は、絶縁材料を、CVD法、ALD法(Atomic Layer Deposition)、スパッタ法等、従来公知の各種の成膜法を用いて成膜することによって得られる。
【0041】
<4:電極層の形成>
つぎに、上記絶縁層11の上に、
図1(d)に示すように、電極層12を形成する。上記電極層12は、半導電性材料、例えばポリシリコンを、CVD法やスパッタ法等の従来公知の成膜方法によって成膜することによって得ることができる。
【0042】
上記電極層12の厚みは、特に限定されるものではなく、得られるパターン基板の用途や要求される特性に応じて、適宜の厚みに設定される。
【0043】
<5:第2の有機ヒドロキシオキソスズ層の形成>
つぎに、上記電極層12の上に、
図2(a)に示すように、第2の有機ヒドロキシオキソスズ層14を形成する。上記第2の有機ヒドロキシオキソスズ層14は、前記有機ヒドロキシオキソスズ層13に用いられる有機ヒドロキシオキソスズ前駆体と同様のものを用いて形成される。上記第2の有機ヒドロキシオキソスズ層14と前記有機ヒドロキシオキソスズ層13とは、必ずしも同一の材料を用いる必要はなく、またその成膜方法も同一である必要はないが、両者とも、その好適な前駆体の種類や、好適な成膜方法は共通しており、その説明を省略する。
【0044】
<6:パターニング層の形成>
つぎに、上記第2の有機ヒドロキシオキソスズ層14に対して、EUVのパターン照射を行うことにより、硬化したEUV照射部と、未硬化のEUV非照射部を形成し、上記EUV非照射部を除去することにより硬化したEUV照射部を現像して、
図2(b)に示すように、パターニング層14aを得る。
なお、上記EUVのパターン照射は、前記有機ヒドロキシオキソスズ層13に対するEUVのパターン照射と同様に行うことができる。
【0045】
また、上記第2の有機ヒドロキシオキソスズ層14の、EUV非照射部を除去してEUV照射部を顕在化させる現像は、酸を用いた、通常エッチング工程でなされるウエットエッチングプロセスまたはドライエッチングプロセス(気相処理)を用いて行うことができる。
【0046】
現像において、上記ウエットエッチングプロセスを用いて行う場合は、上記第2の有機ヒドロキシオキソスズ層14の、EUV照射を受けていない未硬化部分を溶解除去するための溶媒として、例えば、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-ブチルアセテート、2-ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、酢酸ブチル等を用いることができる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0047】
また、現像において、上記ドライエッチングプロセス(気相処理)を用いて行う場合は、ハロゲン化水素、ハロゲン、ジボラン、三塩化ホウ素、他のルイス酸等の酸性物質やアルゴン、また、シリコンとの選択性を向上させるためにO2やH2を適宜混合し、第2の有機ヒドロキシオキソスズ層14のEUV照射部およびEUV非照射部に十分に接するようにガス状態で流しながら、穏やかなプラズマ処理(高圧、低電力)または熱処理を行う。上記酸性物質も、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0048】
本実施形態では、とりわけ、プラズマによるドライエッチングプロセスを用いることが好ましい。上記プラズマエッチングプロセスを用いる場合、プラズマプロセスは、従来公知の、トランス結合型プラズマ(TCP)、誘電結合型プラズマ(ICP)、容量結合型プラズマ(CCP)、電子サイクロトン共鳴プラズマ(ECR)等を含むが、CCPプラズマにおいてはイオンフラックスとイオンエネルギーを独立制御できないため、通常はCCPプラズマ以外の高密度プラズマを用いて、電子密度をおおよそ1010~1013/cm3程度に制御する。そして、上記プロセスは、好ましくは0.6Pa以上、より好ましくは2Pa以上の圧力で、好ましくは1kW以下、より好ましくは500W以下の電力レベルで行うことができる。流量は、好ましくは40~1000標準立方センチメートル/分(sccm)であり、より詳細には、好ましくは1~3000秒間、より好ましくは10~600秒間に、約500sccmの流量となるように設定することができる。温度は、好ましくは0~300℃、より好ましくは30~120℃に設定することができる。
【0049】
<7:電極層のパターニング>
つぎに、上記パターニング層14aをマスクとして、パターニング層14a形成のために除去されたEUV非照射部の、その除去部分から露出する電極層12を、例えばプラズマエッチングすることにより除去して、
図2(c)に示すように、電極層12をパターニングする。
【0050】
<8:絶縁層のパターニング>
そして、上記パターニングのために除去された電極層12の、その除去部分から露出する絶縁層11と、その下の、前記有機ヒドロキシオキソスズ層13のEUV非照射部13bとを除去して、絶縁層11のパターニングを行う。上記絶縁層11とEUV非照射部13bの除去は、例えばプラズマドライエッチングにより、同時もしくは連続的に行うことができる。すなわち、上記絶縁層11の下には、
図2(c)に示すように、先に形成された有機ヒドロキシオキソスズ層13のEUV非照射部13bが配置されており、この部分は、未硬化の有機ヒドロキシオキソスズが不安定な状態で存在しており、分子同士の密度が低い。このため、エッチングガスが絶縁層11を厚み方向に通過しやすく、上記絶縁層11が、難エッチング性素材で形成されていても、この部分の絶縁層11を、効率よくエッチング除去することができる。その下の有機ヒドロキシオキソスズ層13のEUV非照射部13bも、アッシングに対応した反応気体を用いることにより、容易に除去することができる。
【0051】
より具体的に説明すると、上記プラズマドライエッチングの条件としては、絶縁層11と有機ヒドロキシオキソスズ層13のEUV非照射部13b(レジスト層)の両方を除去できるように、エッチングとアッシングに対応した反応気体に順次変更しながらプラズマエッチングすることが効果的である。その場合、例えば、三塩化ホウ素(BCl3)を用いたプラズマ処理によるエッチングで絶縁層11を除去し、つぎに、ハロゲン化水素(HX)または塩素ガス(Cl2)を用いたプラズマ処理によるアッシングを行うことができる。また、高濃度のBCl3によってもアッシング可能である。
なお、絶縁層11のエッチングとEUV非照射部13b(レジスト)のアッシングを同時に行う場合、例えば、ECRプラズマ装置を用い、BCl3とCl2の混合ガス(Cl2が60体積%以下)を用いることにより、エッチングとアッシングの同時処理が可能である。
【0052】
また、上記EUV非照射部13bがごく薄膜である場合は、反応気体を変更しながらエッチングとアッシングを段階的に進める必要がなく、一段階の処理で、二つの層11、13bの除去を行うことができる。
【0053】
<9:パターニング層の除去>
つぎに、上記絶縁層11の上のパターニング層14aを、酸を用いたアッシングによって除去する。上記アッシングは、前述の、有機ヒドロキシオキソスズ層13のEUV非照射部13bを除去する場合と同じく、プラズマドライエッチングに準じて、酸性ガスを用いて行うことができる。
【0054】
このようにして、
図2(d)に示すような、基板10上に、有機ヒドロキシオキソスズ層13のEUV照射部13aを介して、絶縁層11と電極層12がこの順で積層され、所定のパターンを有するパターン基板を得ることができる。
【0055】
上記のパターン基板の製造方法によれば、絶縁層11のパターニングに際し、絶縁層11の下に設けられた有機ヒドロキシオキソスズ層13のEUV非照射部13bを利用してパターニングを行うため、絶縁層11が難エッチング性素材であっても、これを効率よくパターニングすることができる。また、基板10と絶縁層11の間に有機ヒドロキシオキソスズ層13のEUV照射部13aが挟み込まれた構成になるため、界面特性が不安定になりやすい材質の基板10と絶縁層11とを組み合わせた場合であっても、上記EUV照射部13aを介して、両者を安定した状態で積層一体化することができる。しかも、絶縁層11をエッチング除去する際、基板10の表面が有機ヒドロキシオキソスズ層13のEUV非照射部13bで被覆されているため、基板11の表面をオーバーエッチングから保護することができるという利点を有する。なお、絶縁層11のエッチング除去が終わり次第、速やかに有機ヒドロキシオキソスズ層13のEUV非照射部13bが除去されるため、タイムラグもなく、効率がよいものと考えられる。
【0056】
そして、このようにして得られたパターン基板は、効率よく短時間で絶縁層11のパターニングがなされているため、基板10や電極層12に余分な負荷がかかっておらず、安定した電気特性を有するものとなる。特に、絶縁層11として、比誘電率κの高い難エッチング性素材を用いたパターン基板においても、効率よく製造されているため、とりわけ優れた電気特性を有するものとなる。
また、基板がオーバーエッチングから保護されている点においても、安定した品質を有している。
【0057】
なお、上記の実施形態では、絶縁層11のパターニング(前記第8の工程)と、第2の有機ヒドロキシオキソスズ層14に由来するパターニング層14aの除去(前記第9の工程)とを、順次、段階的に行うことを説明したが、エッチング条件によっては、前記第8工程の、絶縁層11およびその下の有機ヒドロキシオキソスズ層13に由来するEUV非照射部13bの除去と、前記第9工程の、パターニング層14aの除去とを、一気に同時に行うことができる。この場合、例えば、600W以上の高出力(前述の「穏やかなプラズマ処理」よりも高出力)、かつ高プラズマ密度下で、BCl3とCl2の混合ガスを用いたプラズマ処理を行うことが好適である。また、シリコンとの反応選択性を得るために、プラズマプロセスによっては、O2やH2を混在させる場合もある。
【0058】
また、上記の実施形態において、有機ヒドロキシオキソスズ層13と、第2の有機ヒドロキシオキソスズ層14は、必ずしも上記有機ヒドロキシオキソスズ層である必要はなく、上記の実施形態と同様にして取り扱うことのできる有機レジスト材料層であれば、どのような種類のものであっても差し支えない。例えば、公知のスズ以外の金属を用いた有機金属化合物レジスト材料、ポリマーレジスト材料、金属酸化物レジスト材料等が挙げられる。
【0059】
さらに、上記の実施形態では、
図1(a)~(d)、および
図2(a)~(d)に示す一連の製造工程を、順を追って連続的に行うようにしたが、必ずしも一連の工程を連続的に行う必要はなく、別途作製された中間体を準備し、それに対して、処理を行ってパターン基板を得るようにしてもよい。上記中間体としては、例えば、EUVによるパターン照射によりEUV照射部13aとEUV非照射部13bが設けられた有機レジスト材料層13を有する基板10上に、絶縁層11が形成された構成のもの(
図1[c]の段階のもの)が挙げられる。
【0060】
また、他の中間体として、上記絶縁層11上に電極層12が形成された構成のもの(
図1[d]の段階のもの)が挙げられる。そして、さらに他の中間体として、上記電極層12の上にパターニング層14aが形成された構成のもの(
図2[b]の段階のもの)が挙げられる。
【0061】
これらのパターン基板中間体を利用することにより、工場規模や設備等に応じて、パターン基板の生産工程を分業化することができ、パターン基板を効率よく製造することができる。
【実施例0062】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0063】
[1.有機レジスト材料層の形成]
有機レジスト材料層として、有機ヒドロキシオキソスズ層を採用する。そして、基板として厚み50μmのシリコン基板を用意し、その上に、CVD法によって、有機ヒドロキシオキソスズ層の前駆体であるイソプロピルトリス(ジメチルアミノ)スズを用いて、厚み10nmの有機ヒドロキシオキソスズ層を形成する(
図1[a]を参照)。なお、CVD法の条件は下記のとおりである。
・成膜時圧力:133Pa(1トル)
・成膜時温度:120℃(ウエハステージ温度)
【0064】
[2:有機レジスト材料層のパターン照射]
上記有機レジスト材料層にEUVのパターン照射を行い、硬化したEUV照射部と未硬化のEUV非照射部とを得る(
図1[b]を参照)。EUV照射後の有機レジスト材料層の厚み(t1)は10nmである。なお、上記EUV照射条件は、下記のとおりである。
・光源:極端紫外線EUV)(波長13.5nm)
・照射量:50mJ/cm
2
【0065】
[3.絶縁層の形成]
つぎに、パターン照射がなされた有機レジスト材料層を有する基板上に、酸化ハフニウム(比誘電率κ=15)からなる絶縁層を、RFプラズマ(高周波)法によって形成する(
図1[c]を参照)。なお、絶縁層の厚み(t2)は15nmであり、前記有機レジスト材料層(EUV照射後)の厚み(t1)が10nmであることから、t1/t2=0.67である。
【0066】
[4:電極層の形成]
つぎに、上記絶縁層の上に、ポリシリコンからなる厚み20μmの電極層を、CVD法によって形成する(
図1[d]を参照)。
【0067】
[5:第2の有機レジスト材料層の形成]
第2の有機レジスト材料層として、有機ヒドロキシオキソスズ層を採用する。そして、上記電極層の上に、CVD法によって、有機ヒドロキシオキソスズ層の前駆体であるトリス(ジメチルアミノ)イソプロピルスズを用いて、厚み15nmの、第2の有機ヒドロキシオキソスズ層を形成する(
図2[a]を参照)。なお、CVD法の条件は下記のとおりである。
・成膜時圧力:133Pa(1トル)
・成膜時温度:120℃(ウエハステージ温度)
【0068】
[6:パターニング層の形成]
つぎに、前述の[2:有機レジスト材料層のパターン照射]の工程と同様にして、上記第2の有機レジスト材料層に対してEUVのパターン照射を行う。そして、EUV照射後の第2の有機レジスト材料層の未硬化部分(EUV非照射部)を、プラズマドライエッチングプロセスを用いて除去し、硬化部分を現像して、パターニング層を得る(
図2[b]を参照)。エッチング条件は、下記のとおりである。
・エッチングガス:HCl
・圧力:2.6Pa(20ミリトル)
・ガス流量:200sccm
・温度:80℃
・出力:400W
【0069】
[7.電極層のパターニング]
つぎに、上記パターニング層形成のために除去されたEUV非照射部の、その除去部分から露出する電極層の部分を、プラズマドライエッチングにより除去して、電極層をパターニングする(
図2[c]を参照)。
【0070】
[8.9.10:パターニング層、絶縁層、基板上の有機レジスト材料層のEUV非照射部の除去]
パターニング層と、絶縁層と、基板上の有機レジスト材料層のEUV非照射部、の三層を、ECRプラズマ装置を用いたドライエッチングにより一気に除去する(
図2[d]を参照)。エッチング条件は、下記のとおりである。
・エッチングガス:BCl
3とCl
2の混合ガス(Cl
2が60体積%)
・圧力:40Pa(300ミリトル)
・ガス流量:600sccm
・出力:800W
・処理時間:1~10分
・温度:30~80℃
【0071】
上記実施例によれば、絶縁層が難エッチング性の酸化ハフニウムであるにもかかわらず、これをスムーズにエッチング除去することができる。したがって、この方法によれば、上記酸化ハフニウムに限らず、各種の難エッチング性素材を絶縁層として用いたパターン基板を効率よく提供することができる。
本発明のパターン基板の製造方法によれば、絶縁層として難エッチング性素材を用いた、電気特性に優れたパターン基板を製造することができ、有用である。そして、上記パターン基板は、トランジスタ等、多種多様な半導体デバイスに広く利用することができる。