(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055022
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】組成物及び硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/24 20060101AFI20240411BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
C08G59/24
C08L63/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161582
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 諒子
(72)【発明者】
【氏名】大野 泰延
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】松土 和彦
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4J002CD021
4J002CD022
4J002CD052
4J002CD072
4J002DJ019
4J002EH067
4J002EL056
4J002EV298
4J002EX069
4J002FD019
4J002FD158
4J002FD207
4J002GJ01
4J036AA05
4J036AC02
4J036AD08
4J036AJ09
4J036AJ10
4J036AJ11
4J036FA05
4J036FA10
4J036GA22
4J036GA26
4J036GA28
4J036JA06
4J036JA07
(57)【要約】
【課題】深部硬化性に優れ、鋼板やアルミニウム等との接着力が顕著な硬化物を形成することができる組成物を提供すること。
【解決手段】下記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含有する組成物である。
(A)成分:一般式(A-1)、(A-2)、(A-3)、(A-4)及び(A-5)で表される脂環式エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種
(B)成分:(A)成分以外のエポキシ化合物
(C)成分:オキセタン化合物
(D)成分:増感剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含有する組成物。
(A)成分:下記一般式(A-1)、(A-2)、(A-3)、(A-4)及び(A-5)で表される脂環式エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種
(B)成分:(A)成分以外のエポキシ化合物
(C)成分:オキセタン化合物
(D)成分:増感剤
【化1】
(一般式(A-1)中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。)
【化2】
(一般式(A-2)中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27及びR
28は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。)
【化3】
(一般式(A-3)中、R
31、R
32、R
33、R
34、R
35、R
36、R
37、R
38、R
39、R
40、R
41、R
42、R
43、R
44、R
45、R
46、R
47及びR
48は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。)
【化4】
(一般式(A-4)中、R
51、R
52、R
53、R
54、R
55、R
56、R
57、R
58、R
59、R
60、R
61、R
62、R
63、R
64、R
65、R
66、R
67及びR
68は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。)
【化5】
(一般式(A-5)中、R
71、R
72、R
73、R
74、R
75、R
76、R
77、R
78、R
79、R
80、R
81、R
82、R
83、R
84、R
85、R
86、R
87及びR
88は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表し、
Zは、単結合又は炭素原子数1以上4以下のアルキレン基を表す。)
【請求項2】
前記(C)成分が、芳香族オキセタン化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記(D)成分が、下記一般式(D1)及び(D2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の組成物。
【化6】
(一般式(D1)及び(D2)中、R
d1、R
d2、R
d3及びR
d4は、それぞれ独立に、炭素原子数1以上10以下のアルキル基を表す。)
【請求項4】
上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100質量部中、(A)成分の含有量が、5質量部以上80質量部以下、(B)成分の含有量が、5質量部以上60質量部以下、(C)成分の含有量が、10質量部以上90質量部以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
UV硬化型接着剤組成物として、密着力が高く、耐水性等に優れることからエポキシ樹脂を含む組成物の検討が進められている。例えば、特許文献1には、オキセタン化合物と、脂環式エポキシ化合物と、芳香族グリシジルエーテルエポキシ化合物と、光カチオン重合開始剤と、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物を含む熱カチオン重合開始剤とを含む接着剤組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成できる組成物は未だ得られていない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、深部硬化性に優れ、鋼板やアルミニウム等との接着力が顕著な硬化物を形成することができる組成物を提供することを目的とする。
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について鋭意検討した結果、特定のカチオン重合性化合物と増感剤を組み合わせた組成物によって上記課題を解決し得ることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含有する組成物を提供する。
(A)成分:下記一般式(A-1)、(A-2)、(A-3)、(A-4)及び(A-5)で表される脂環式エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種
(B)成分:(A)成分以外のエポキシ化合物
(C)成分:オキセタン化合物
(D)成分:増感剤
【0008】
【化1】
(一般式(A-1)中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。)
【0009】
【化2】
(一般式(A-2)中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27及びR
28は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。)
【0010】
【化3】
(一般式(A-3)中、R
31、R
32、R
33、R
34、R
35、R
36、R
37、R
38、R
39、R
40、R
41、R
42、R
43、R
44、R
45、R
46、R
47及びR
48は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。)
【0011】
【化4】
(一般式(A-4)中、R
51、R
52、R
53、R
54、R
55、R
56、R
57、R
58、R
59、R
60、R
61、R
62、R
63、R
64、R
65、R
66、R
67及びR
68は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。)
【0012】
【化5】
(一般式(A-5)中、R
71、R
72、R
73、R
74、R
75、R
76、R
77、R
78、R
79、R
80、R
81、R
82、R
83、R
84、R
85、R
86、R
87及びR
88は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表し、
Zは、単結合又は炭素原子数1以上4以下のアルキレン基を表す。)
【0013】
本発明は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成できる組成物を提供する。
【0014】
本発明においては、上記(C)成分が、芳香族オキセタン化合物を含むことが好ましい。
上記組成物は、深部硬化性に優れ、寸法安定性、耐熱性及び温度変化に対する耐久性のバランスに優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0015】
本発明においては、上記(D)成分が、下記一般式(D1)及び(D2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0016】
【化6】
(一般式(D1)及び(D2)中、R
d1、R
d2、R
d3及びR
d4は、それぞれ独立に、炭素原子数1以上10以下のアルキル基を表す。)
【0017】
本発明においては、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100質量部中、(A)成分の含有量が、5質量部以上80質量部以下、(B)成分の含有量が、5質量部以上60質量部以下、(C)成分の含有量が、10質量部以上90質量部以下、であることが好ましい。
上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0018】
本発明は、上述の組成物の硬化物を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することができる組成物を提供するという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、組成物及びその硬化物に関するものである。
以下、本発明の組成物及び硬化物について詳細に説明する。
【0021】
本明細書において、基の炭素原子数は、基中の水素原子が置換基で置換されている場合、その置換後の基の炭素原子数を規定する。例えば、炭素原子数1以上20以下のアルキル基の水素原子が置換されている場合、炭素原子数1以上20以下とは、水素原子が置換された後の炭素原子数を指し、水素原子が置換される前の炭素原子数を指すのではない。また、本明細書において所定の炭素原子数の基中のメチレン基が二価の基で置き換えられた基に係る炭素原子数の規定は、その置換後の基の炭素原子数を規定するものとする。
【0022】
本明細書において、「組成物の固形分」とは、組成物中の溶剤を除く全成分の含有量を指す。
【0023】
A.組成物
まず、本発明の組成物について説明する。
本発明の組成物は、下記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含むものである。
(A)成分:下記一般式(A-1)、(A-2)、(A-3)、(A-4)及び(A-5)で表される脂環式エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種
(B)成分:(A)成分以外のエポキシ化合物
(C)成分:オキセタン化合物
(D)成分:増感剤
【0024】
【化7】
(一般式(A-1)中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。)
【0025】
【化8】
(一般式(A-2)中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27及びR
28は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。)
【0026】
【化9】
(一般式(A-3)中、R
31、R
32、R
33、R
34、R
35、R
36、R
37、R
38、R
39、R
40、R
41、R
42、R
43、R
44、R
45、R
46、R
47及びR
48は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。)
【0027】
【化10】
(一般式(A-4)中、R
51、R
52、R
53、R
54、R
55、R
56、R
57、R
58、R
59、R
60、R
61、R
62、R
63、R
64、R
65、R
66、R
67及びR
68は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。)
【0028】
【化11】
(一般式(A-5)中、R
71、R
72、R
73、R
74、R
75、R
76、R
77、R
78、R
79、R
80、R
81、R
82、R
83、R
84、R
85、R
86、R
87及びR
88は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表し、
Zは、単結合又は炭素原子数1以上4以下のアルキレン基を表す。)
【0029】
以下、本発明の組成物を構成する各成分について説明する。
【0030】
A1.(A)成分
本発明の組成物に含まれる(A)成分は、下記一般式(A-1)、(A-2)、(A-3)、(A-4)及び(A-5)で表される脂環式エポキシ化合物(以下、(A-1)~(A-5)で表される脂環式エポキシ化合物をまとめて、「脂環式エポキシ化合物A」と称する場合がある。)から選ばれる少なくとも1種である。
上記脂環式エポキシ化合物Aは、分子中に少なくとも1つの脂環式エポキシ基を有する化合物、すなわちシクロアルケンオキサイド構造を有する化合物であり、1分子中に複数の脂環式エポキシ基を有していてもよく、脂環式エポキシ基以外のエポキシ基を有していてもよい。
上記(A)成分は、2種以上の脂環式エポキシ化合物Aを組み合わせたものであってもよい。
【0031】
【0032】
一般式(A-1)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。
【0033】
【0034】
一般式(A-2)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。
【0035】
【0036】
一般式(A-3)中、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47及びR48は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。
【0037】
【0038】
一般式(A-4)中、R51、R52、R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R60、R61、R62、R63、R64、R65、R66、R67及びR68は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。
【0039】
【0040】
一般式(A-5)中、R71、R72、R73、R74、R75、R76、R77、R78、R79、R80、R81、R82、R83、R84、R85、R86、R87及びR88は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表し、
Zは、単結合又は炭素原子数1以上4以下のアルキレン基を表す。
【0041】
上記一般式(A-1)中のR1~R10、上記一般式(A-2)中のR11~R28、上記一般式(A-3)中のR31~R48、上記一般式(A-4)中のR51~R68及び上記一般式(A-5)中のR71~R88で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0042】
上記一般式(A-1)中のR1~R10、上記一般式(A-2)中のR11~R28、上記一般式(A-3)中のR31~R48、上記一般式(A-4)中のR51~R68及び上記一般式(A-5)中のR71~R88で表される炭素原子数1以上20以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、ヘプチル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、イソヘプチル基、tert-ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、n-ウンデシル基、1-メチルデシル基、n-ドデシル基、4-エチルオクチル基、1,3,5,7-テトラメチルオクチル基、トリデシル基、1-ヘキシルヘプチル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-エイコシル基等が挙げられる。
【0043】
上記一般式(A-1)中のR1~R10、上記一般式(A-2)中のR11~R28、上記一般式(A-3)中のR31~R48、上記一般式(A-4)中のR51~R68及び上記一般式(A-5)中のR71~R88で表される炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、アミルオキシ基、イソアミルオキシ基、tert-アミルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、tert-オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、デシルオキシ基、イソデシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、1-メチルデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、4-エチルオクチルオキシ基、1,3,5,7-テトラメチルオクチルオキシ基、n-トリデシルオキシ基、1-ヘキシルヘプチルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基、n-ペンタデシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基、n-ヘプタデシルオキシ基、n-オクタデシルオキシ基、n-エイコシルオキシ基等が挙げられる。
【0044】
上記一般式(A-5)中のZで表される、炭素原子数1以上4以下のアルキレン基としては、炭素原子数1以上4以下のアルキル基から水素原子を1個除いた基が挙げられ、該アルキル基としては、上記一般式(A-1)中のR1~R10で表されるアルキル基として挙げたアルキル基のうち、所定の炭素原子数を有する基が挙げられる。具体的には、メチレン基、メチルメチン基、イソプロピリデン基、ジメチルメチン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。上記アルキレン基の一部又は全ての水素原子が、フッ素原子で置換されていてもよい。
【0045】
なお、単結合とは、Zが連結する炭素原子同士が直接結合するものである。このような単結合により、2つのシクロアルケンオキサイド構造が結合された化合物としては、例えば、下記一般式(A-6)で表される化合物が挙げられる。
【0046】
【0047】
本発明においては、上記一般式(A-1)中、R1~R10の少なくとも1つが水素原子である化合物が好ましく、R1~R10の2つ以上が水素原子である化合物がより好ましく、なかでも、R1~R10の5つ以上が水素原子である化合物が好ましく、特に、R1~R10の6つ以上が水素原子である化合物が好ましく、なかでも特に、R1~R10の7つ以上が水素原子である化合物が好ましく、なかでも特に、R1~R10の8つ以上が水素原子である化合物が好ましく、なかでも特に、R1~R10の9つ以上が水素原子である化合物が好ましく、なかでも特に、R1~R10の全てが水素原子である化合物が好ましい。
上述の化合物であることで、上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0048】
本発明においては、上記一般式(A-5)中、R71~R88の少なくとも1つが水素原子である化合物が好ましく、R71~R88の少なくとも5以上が水素原子である化合物がより好ましく、なかでも、R71~R88の少なくとも9つ以上が水素原子である化合物が好ましく、特に、R71~R88の少なくとも13以上が水素原子である化合物が好ましく、なかでも特に、R71~R88の少なくとも17以上が水素原子である化合物が好ましく、なかでも特に、R71~R88の全てが水素原子である化合物が好ましい。
上述の化合物であることで、上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0049】
本発明においては、上記一般式(A-5)中、Zは、炭素原子数1以上4以下のアルキレン基である化合物が好ましく、炭素原子数2以上4以下のアルキレン基である化合物がより好ましく、なかでも、炭素原子数3以上4以下のアルキレン基である化合物が好ましく、特に、炭素原子数3以上4以下の分岐を有するアルキレン基である化合物が好ましく、なかでも特に、炭素原子数3の分岐を有するアルキレン基である化合物が好ましい。
上述の化合物であることで、上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0050】
上記一般式(A-1)~(A-5)で表される化合物の製造方法としては、特開2019-189844号公報に記載の製造方法等が挙げられる。
上記一般式(A-1)で表される化合物のうち市販されているものとしては、例えば、THI-DE(ENEOS(株)製)等が挙げられる。
上記一般式(A-2)で表される化合物のうち市販されているものとしては、例えば、DE-102(ENEOS(株)製)等が挙げられる。
上記一般式(A-3)で表される化合物のうち市販されているものとしては、例えば、DE-103(ENEOS(株)製)等が挙げられる。
上記一般式(A-5)で表される化合物のうち市販されているものとしては、例えば、DCA((株)ADEKA製)等が挙げられる。
【0051】
本発明においては、上記(A)成分は、上記一般式(A-1)、(A-2)、(A-3)、(A-5)で表される化合物の少なくとも1種を含むものであればよく、上記一般式(A-1)、(A-2)及び(A-5)で表される化合物の少なくとも1種を含むことがより好ましく、なかでも、上記一般式(A-1)及び(A-5)で表される化合物の少なくとも1種を含むことが好ましく、特に、上記一般式(A-1)で表される化合物を含むことが好ましい。
上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力及び寸法安定性のバランスに優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0052】
本発明においては、上記(A)成分中の脂環式エポキシ化合物Aの分子量が、100以上500以下であることがより好ましく、110以上400以下であることが好ましく、なかでも、120以上300以下であることが好ましく、特に、130以上250以下であることが好ましく、なかでも特に、140以上200以下であることが好ましい。
上述の数値範囲にすることで、上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力、寸法安定性、耐熱性及び温度変化に対する耐久性のバランスに優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0053】
本発明においては、上記(A)成分中の脂環式エポキシ化合物Aのエポキシ当量が、5以上250以下であることが好ましく、40以上200以下であることがより好ましく、なかでも、50以上150以下であることが好ましく、特に、60以上130以下であることが好ましく、なかでも特に、70以上120以下であることが好ましい。
上述の数値範囲にすることで、上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力、寸法安定性、耐熱性及び温度変化に対する耐久性のバランスに優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0054】
本発明においては、上記(A)成分、後述する(B)成分及び(C)成分の合計量100質量部中、上記(A)成分の含有量が、1質量部以上80質量部以下であることが好ましく、5質量部以上80質量部以下であることがより好ましく、なかでも、7質量部以上75質量部以下であることが好ましく、特に、9質量部以上70質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、10質量部以上65質量部以下であることが好ましく、なかでも特に15質量部以上60質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、20質量部以上55質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、30質量部以上50質量部以下であることが好ましい。
上述の数値範囲にすることで、上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0055】
本発明においては、上記組成物の固形分100質量部中、上記(A)成分の含有量が、0.1質量部以上80質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上60質量部以下であることがより好ましく、なかでも、1.0質量部以上40質量部以下であることが好ましく、特に、1.5質量部以上35質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、3質量部以上30質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、5質量部以上20質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、6質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
上述の数値範囲にすることで、上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力、寸法安定性、耐熱性及び温度変化に対する耐久性のバランスに優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0056】
本発明においては、上記組成物100質量部中、上記(A)成分の含有量が、0.1質量部以上80質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上60質量部以下であることがより好ましく、なかでも、1.0質量部以上40質量部以下であることが好ましく、特に、1.5質量部以上35質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、3質量部以上30質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、5質量部以上20質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、6質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
上述の数値範囲にすることで、上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力、寸法安定性、耐熱性及び温度変化に対する耐久性のバランスに優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0057】
A2.(B)成分
本発明の組成物は、(B)成分として、(A)成分以外のエポキシ化合物を含む。上記(A)成分以外のエポキシ化合物とは、エポキシ基を有するが、脂環式エポキシ基(シクロアルケンオキサイド構造)を有しないエポキシ化合物(以下、「エポキシ化合物1」と称する場合がある。)、及び、脂環式エポキシ基を有するが、上記一般式(A-1)、(A-2)、(A-3)、(A-4)若しくは(A-5)で表される化合物に該当しないエポキシ化合物(以下、「脂環式エポキシ化合物B」と称する場合がある。)である。
また、(B)成分として用いられるエポキシ化合物は、オキセタニル基を有していてもよい。
上記(B)成分は、2種以上の(A)成分以外のエポキシ化合物を組み合わせたものであってもよい。
上記(B)成分として用いられるエポキシ化合物1としては、例えば、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等が挙げられる。
【0058】
以下、上記(B)成分に用いられるエポキシ化合物として、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物Bについて説明する。
【0059】
(1)芳香族エポキシ化合物
上記芳香族エポキシ化合物とは、芳香族環を含み、脂環式エポキシ基を含まないエポキシ化合物である。上記芳香族エポキシ化合物は、複数のエポキシ基(脂環式エポキシ基を含まない)を有していてもよい。
上記芳香族エポキシ化合物を構成する芳香族環は、芳香族性を有する環であれば特に制限されるものではなく、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環等が挙げられる。本発明においては、芳香族環がベンゼン環であることが好ましい。上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0060】
このような芳香族エポキシ化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール等の一価のフェノール類又はそのアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル化物;少なくとも1個の芳香環を有する多価フェノール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル;フェノールノボラック型エポキシ化合物;レゾルシノール、ハイドロキノン、カテコール等の2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール類のグリシジルエーテル;ベンゼンジメタノール、ベンゼンジエタノール、ベンゼンジブタノール等のアルコール性水酸基を2個以上有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の2個以上のカルボン酸を有する多塩基酸芳香族化合物のポリグリシジルエステル;安息香酸、トルイル酸、ナフトエ酸等の安息香酸類のグリシジルエステル;スチレンオキサイド又はジビニルベンゼンのエポキシ化物等が挙げられる。
上記アルキレンオキサイド付加物に用いられるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0061】
本発明の組成物においては、上記芳香族エポキシ化合物中のエポキシ基の数が、2以上であることが好ましく、2以上10以下であることがより好ましく、なかでも、2以上5以下であることが好ましく、特に、2以上3以下であることが好ましく、なかでも特に、2であることが好ましい。上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0062】
また、上記組成物が、寸法安定性、耐熱性及び温度変化に対する耐久性のバランスに優れる硬化物を形成することが容易なものになる点からは、上記芳香族エポキシ化合物中のエポキシ基の数が、2以上5以下であることが好ましく、特に、3以上4以下であることが好ましい。
【0063】
本発明の組成物においては、上記芳香族エポキシ化合物中の芳香環の数が、2以上であることが好ましく、2以上10以下であることがより好ましく、特に、2以上8以下であることが好ましい。上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0064】
本発明においては、上記芳香族エポキシ化合物が、少なくとも1個の芳香環を有する多価フェノール、又は、そのアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテルであることが好ましく、2個以上の芳香環を有する多価フェノール、又は、そのアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテルであることがより好ましく、なかでも、ビスフェノールA型、ビスフェノールE型、ビスフェノールF型のグリシジルエーテルであることが好ましく、特に、ビスフェノールA型のグリシジルエーテルであることが好ましい。
上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力、寸法安定性、耐熱性及び温度変化に対する耐久性のバランスに優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0065】
本発明の組成物が上記芳香族エポキシ化合物を含む場合、上記芳香族エポキシ化合物の含有量が、上記(B)成分中、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、なかでも、90質量%以上であることが好ましく、特に、95質量%以上であることが好ましく、なかでも特に、100質量%、すなわち(B)成分の全量が芳香族エポキシ化合物であることが好ましい。
上記組成物は深部硬化性に優れ、接着力、寸法安定性、耐熱性及び温度変化に対する耐久性のバランスに優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0066】
(2)脂肪族エポキシ化合物
上記脂肪族エポキシ化合物とは、エポキシ基を有し、芳香族環及び脂環式エポキシ基を有しない化合物である。
上記脂肪族エポキシ化合物は、少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物であり、複数のエポキシ基を有していてもよい。また、上記脂肪族エポキシ化合物は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
このような脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、脂肪族環含有エポキシ化合物及び鎖状脂肪族エポキシ化合物等が挙げられる。
【0068】
上記脂肪族環含有エポキシ化合物とは、脂肪族炭化水素環、脂肪族複素環等の脂肪族環を含み、芳香族環及び脂環式エポキシ基を含まないエポキシ化合物である。
【0069】
上記脂肪族炭化水素環は、環形成原子が炭素原子のみであり、かつ、芳香族性を有しないものであればよい。また、脂肪族炭化水素環は、脂肪族炭化水素環の水素原子の1つ又は2つ以上が直鎖または分岐を有するアルキル基で置換されていてもよい。
このような脂肪族炭化水素環としては、例えば、シクロヘキサン環等の単環式脂肪族炭化水素環;ビシクロヘキシル等の、複数の単環式脂肪族炭化水素環が、直接、炭素と炭素との単結合、炭素原子数1以上4以下のアルキレン基、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル基、エステル結合若しくはこれらの基の組み合わせによる二価の基で結合した構造;イソボルニル環、アダマンタン環、ジシクロペンテン環、ジシクロペンタン環、トリシクロデカン環、ノルボルネン環、ノルボルナン環等の2以上の単環式脂肪族炭化水素環が環中の炭素原子を1又は2以上共有する構造を有する多環式脂肪族炭化水素環等が挙げられる。
【0070】
上記脂肪族複素環としては、環形成原子が炭素原子以外の原子を含み、かつ、芳香族性を有しないものであればよく、例えば、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、ホモピペリジン環、ホモピペラジン環、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、ジヒドロベンゾフラン環、テトラヒドロカルバゾール環、カプロラクタム環、イソシアヌル環、ヒダントイン環等を挙げることができる。
【0071】
上記脂肪族環含有エポキシ化合物としては、例えば、下記一般式(B-1)及び(B-2)で表される化合物等が挙げられる。
【0072】
【化18】
(一般式(B-1)中、Y
B1は、脂肪族環から水素原子を2個引き抜いた基を表し、脂肪族環の水素原子の1又は2つ以上が、直鎖又は分岐を有する炭素原子数1~10のアルキル基で置換されていてもよい。)
【0073】
【化19】
(一般式(B-2)中、R
B2は、炭素原子数1以上10以下のアルキル基を表し、n2は、1~30の整数を表す。)
【0074】
上記一般式(B-1)中、YB1で表される、脂肪族環から水素原子を2個引き抜いた基としては、上述の脂肪族炭化水素環又は脂肪族複素環から水素原子を2個引き抜いた基が挙げられる。
【0075】
上記一般式(B-2)中のRB2で表される炭素原子数1以上10以下のアルキル基としては、上記「A1.(A)成分」の項の一般式(A-1)中のR1等の炭素原子数1以上20以下のアルキル基において、所定の炭素原子数を有する基が挙げられる。
【0076】
上記鎖状脂肪族エポキシ化合物は、脂肪族環、芳香族環、オキセタニル基及び脂環式エポキシ基を含まないエポキシ化合物とすることができる。
上記鎖状脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、特開2005-99735号公報に記載の化合物等が挙げられる。
【0077】
本発明においては、脂肪族エポキシ化合物が、脂肪族環含有エポキシ化合物を含むことが好ましい。上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力、耐熱性及び温度変化に対する耐久性のバランスに優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0078】
本発明においては、上記脂肪族エポキシ化合物中のエポキシ基の数が、1以上であればよいが、2以上であることが好ましく、2以上10以下であることがより好ましく、なかでも、2以上5以下であることが好ましく、特に、2以上3以下であることが好ましく、なかでも特に、2であることが好ましい。
上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力及び寸法安定性のバランスに優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0079】
本発明の組成物が上記脂肪族エポキシ化合物を含む場合、上記(B)成分中、上記脂肪族エポキシ化合物の含有量が、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、なかでも、90質量%以上であることが好ましく、特に、95質量%以上であることが好ましく、なかでも特に、100質量%、すなわち(B)成分の全量が脂肪族エポキシ化合物であることが好ましい。
上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力、耐熱性及び温度変化に対する耐久性に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0080】
(3)脂環式エポキシ化合物B
上記脂環式エポキシ化合物Bとは、脂環式エポキシ基を有し、上記一般式(A-1)、(A-2)、(A-3)、(A-4)及び(A-5)で表される化合物に該当しないエポキシ化合物である。
【0081】
上記脂環式エポキシ化合物Bとしては、例えば、リモネンジオキシド;セロキサイド2021P、セロキサイド2081P、セロキサイド2000(以上、(株)ダイセル製);サイラキュアUVR-6110、ERL4221(以上、ユニオン・カーバイド社製)等が挙げられる。
【0082】
本発明の組成物が上記脂環式エポキシ化合物Bを含む場合、上記(B)成分100質量部中、上記脂環式エポキシ化合物Bの含有量が、100質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、なかでも、30質量部以下であることが好ましく、特に、10質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、0質量部、すなわち脂環式エポキシ化合物Bを含まないことが好ましい。
上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力、寸法安定性、耐熱性及び温度変化に対する耐久性のバランスに優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0083】
(4)(B)成分
上記(B)成分として用いられるエポキシ化合物の分子量が、100以上2,000以下であることが好ましく、150以上1,500以下であることがより好ましく、なかでも、180以上1,200以下であることが好ましく、特に、200以上1,150以下であることが好ましい。
上述の数値範囲にすることで、上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
また、上記組成物が、深部硬化性に優れ、接着力、寸法安定性、耐熱性及び温度変化に対する耐久性のバランスに優れる硬化物を形成することが容易なものとなる点からは、上記(B)成分として用いられるエポキシ化合物の分子量が、250以上600以下であることが好ましく、特に、300以上500以下であることが好ましい。
【0084】
本発明においては、上記(B)成分として用いられるエポキシ化合物のエポキシ当量が、50以上500以下であることが好ましく、70以上400以下であることがより好ましく、なかでも、90以上350以下であることが好ましく、特に、100以上300以下であることが好ましい。
上述の数値範囲にすることで、上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
また、上記組成物が、深部硬化性に優れ、接着力、寸法安定性、耐熱性及び温度変化に対する耐久性のバランスに優れる硬化物を形成することが容易なものとなる点からは、上記(B)成分として用いられるエポキシ化合物のエポキシ当量が、130以上300以下であることが好ましく、特に、150以上250以下であることが好ましい。
【0085】
本発明においては、上記(A)成分、上記(B)成分及び後述する(C)成分との合計量100質量部中、上記(B)成分の含有量が、1質量部以上80質量部以下であることが好ましく、3質量部以上70質量部以下であることがより好ましく、なかでも、5質量部以上60質量部以下であることが好ましく、特に、10質量部以上35質量部以下であることが好ましい。
上述の数値範囲にすることで、上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
また、上記組成物が、深部硬化性に優れ、接着力、寸法安定性、耐熱性及び温度変化に対する耐久性のバランスに優れる硬化物を形成することが容易なものとなる点からは、上記(A)成分、上記(B)成分及び(C)成分との合計量100質量部中、上記(B)成分の含有量が、13質量部以上30質量部以下であることが好ましく、特に、15質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
【0086】
本発明においては、上記組成物の固形分100質量部中、上記(B)成分の含有量が、0.1質量部以上60質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上40質量部以下であることがより好ましく、なかでも、1.0質量部以上20質量部以下であることが好ましく、特に、1.5質量部以上15質量部以下であることが好ましい。
上述の数値範囲にすることで、上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
また、上記組成物が、深部硬化性に優れ、接着力、寸法安定性、耐熱性及び温度変化に対する耐久性のバランスに優れる硬化物を形成することが容易なものとなる点からは、上記組成物の固形分100質量部中、上記(B)成分の含有量が、2質量部以上10質量部以下であることが好ましく、特に2.5質量部以上6質量部以下であることが好ましい。
【0087】
本発明の組成物においては、上記組成物100質量部中、上記(B)成分の含有量が、0.1質量部以上60質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上40質量部以下であることがより好ましく、なかでも、1.0質量部以上20質量部以下であることが好ましく、特に、1.5質量部以上15質量部以下であることが好ましい。
上述の数値範囲にすることで、上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
また、上記組成物が、深部硬化性に優れ、接着力、寸法安定性、耐熱性及び温度変化に対する耐久性のバランスに優れる硬化物を形成することが容易なものとなる点からは、上記組成物100質量部中、上記(B)成分の含有量が、2質量部以上10質量部以下であることが好ましく、特に2.5質量部以上6質量部以下であることが好ましい。
【0088】
A3.(C)成分
本発明の組成物は、(C)成分として、オキセタン化合物を含む。
上記オキセタン化合物とは、オキセタニル基を有し、エポキシ基(脂環式エポキシ基を含む)を有しない化合物である。上記オキセタン化合物は、1分子中に複数のオキセニル基を有していてもよい。また、上記(C)成分は、2種以上のオキセタン化合物を組み合わせたものであってもよい。
【0089】
このようなオキセタン化合物としては、例えば、芳香族オキセタン化合物、脂肪族オキセタン化合物が挙げられる。
【0090】
(1)芳香族オキセタン化合物
上記芳香族オキセタン化合物とは、芳香族環及びオキセタニル基を含み、エポキシ基を含まない化合物である。上記芳香族環は、「A2.(B)成分」の「(1)芳香族エポキシ化合物」の項に記載の芳香族環と同様である。本発明においては、芳香族環がベンゼン環であることが好ましい。上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
上記芳香族オキセタン化合物としては、例えば、下記一般式(C-1)で表される化合物等が挙げられる。
【0091】
【化20】
(一般式(C-1)中、Y
C1は、炭素原子数6以上20以下の芳香環基を表し、R
C2は、炭素原子数1以上10以下のアルキル基を表し、n3は、1以上5以下の数を表す。)
【0092】
上記一般式(C-1)中のYC1で表される、炭素原子数6以上20以下の芳香環基は、芳香族環からn3個の水素原子を引き抜いた基を表す。
上記芳香環基は、芳香族環の水素原子が、炭素原子数1~5のアルキル基で置換されていてもよい。
【0093】
本発明においては、上記芳香環基が、炭素原子数6以上15以下であることが好ましく、ベンゼン環若しくはビフェニルからn3個の水素原子を引き抜いた基であることがより好ましく、特に、ビフェニルからn3個の水素原子を引き抜いた基であることが好ましい。
上記組成物は、寸法安定性に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0094】
上記一般式(C-1)中のRC2で表される炭素原子数1以上10以下のアルキル基としては、「A1.(A)成分」の項に記載の上記一般式(A-1)中のR1等の炭素原子数1以上20以下のアルキル基において、所定の炭素原子数を有する基が挙げられる。
【0095】
本発明においては、上記RC2が、炭素原子数1以上5以下のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数2以上3以下のアルキル基であることがより好ましく、特に、エチル基であることが好ましい。
上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0096】
本発明においては、上記n3が、1以上3以下であることが好ましく、1以上2以下であることがより好ましく、特に、2であることが好ましい。
上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力及び寸法安定性のバランスに優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0097】
本発明においては、上記芳香族オキセタン化合物の含有量が、(C)成分中、10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、20質量%以上85質量%以下であることがより好ましく、特に、30質量%以上80質量%以下であることが好ましく、なかでも特に50質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力、寸法安定性、耐熱性及び温度変化に対する耐久性のバランスに優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0098】
(2)脂肪族オキセタン化合物
上記脂肪族オキセタン化合物とは、オキセタニル基を含み、芳香族環及びエポキシ基を含まない化合物である。
上記脂肪族オキセタン化合物としては、例えば、下記一般式(C-2)で表される化合物等が挙げられる。
【0099】
【化21】
(一般式(C-2)中、Y
C3は、酸素原子、水酸基、又は、酸素原子を有していてもよい、n4価の炭素原子数1~10以下の脂肪族炭化水素基を表し、R
C4は、炭素原子数1以上10以下のアルキル基を表し、n4は、1以上4以下の数を表す。)
【0100】
上記一般式(C-2)中のRC4で表される炭素原子数1以上10以下のアルキル基としては、上記「A1.(A)成分」の項に記載の一般式(A-1)中のR1等で表される炭素原子数1以上20以下のアルキル基において、所定の炭素原子数を有する基が挙げられる。
【0101】
上記一般式(C-2)中のYC3で表される、酸素原子を有していてもよい、1価の炭素原子数1以上10以下の脂肪族炭化水素基としては、炭素原子数1以上10以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上10以下のアルキル基を表し、一部のメチレン基が酸素原子で置換されていてもよい。
上記炭素原子数1以上10以下のアルコキシ基としては、上記「A1.(A)成分」の項に記載の一般式(A-1)中のR1等で表される炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基において、所定の炭素原子数を有する基が挙げられる。
上記炭素原子数1以上10以下のアルキル基としては、上記「A1.(A)成分」の項に記載の一般式(A-1)中のR1等で表される炭素原子数1以上20以下のアルキル基において、所定の炭素原子数を有する基が挙げられる。
【0102】
n4が1である場合、本発明においては、YC3が、炭素原子数1以上10以下のアルコキシ基、且つ、RC4が、炭素原子数1以上6以下のアルキル基であることが好ましく、YC3が、炭素原子数3以上8以下のアルコキシ基、且つ、RC4が、炭素原子数2以上4以下のアルキル基であることがより好ましく、特に、YC3が、炭素原子数5以上7以下のアルコキシ基、且つ、RC4が、炭素原子数2又は3のアルキルきであることが好ましい。
上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0103】
上記一般式(C-2)中のYC3で表される、酸素原子を有していてもよい、2価の炭素原子数1以上10以下の脂肪族炭化水素基としては、上記炭素原子数1以上10以下のアルキル基から水素原子を1個引き抜いた基が挙げられる。
【0104】
n4が2である場合、本発明においては、YC3が、酸素原子、且つ、RC4が、炭素原子数1以上6以下のアルキル基であることが好ましく、YC3が、酸素原子、且つ、RC4が、炭素原子数2以上4以下のアルキル基であることがより好ましく、特に、YC3が、酸素原子、且つ、RC4が、炭素原子数2又は3のアルキル基であることが好ましい。
上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0105】
上記一般式(C-2)中のYC3で表される、酸素原子を有していてもよい、3価の炭素原子数1以上10以下の脂肪族炭化水素基としては、上記炭素原子数1以上10以下のアルキル基から水素原子を2個引き抜いた基が挙げられる。
【0106】
上記一般式(C-2)中のYC3で表される、酸素原子を有していてもよい、4価の炭素原子数1以上10以下の脂肪族炭化水素基としては、上記炭素原子数1以上10以下のアルキル基から水素原子を3個引き抜いた基が挙げられる。
【0107】
本発明においては、n4が、1以上3以下の数であることが好ましく、1以上2以下の数であることがより好ましく、特に、2であることが好ましい。
上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力、耐熱性及び温度変化に対する耐久性のバランスに優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0108】
(3)(C)成分
本発明においては、上記(C)成分は、芳香族オキセタン化合物を含むことが好ましく、芳香族オキセタン化合物及び脂肪族オキセタン化合物の両方を含むことがより好ましい。
本発明において、上記芳香族オキセタン化合物及び脂肪族オキセタン化合物の両方を含む場合、脂肪族オキセタン化合物の含有量に対し、芳香族オキセタン化合物の含有量の比率(芳香族オキセタン化合物/脂肪族オキセタン化合物)が、0.1以上10以下であることが好ましく、0.3以上7以下であることがより好ましく、特に、0.5以上4以下であることが好ましい。
上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
上記組成物が、深部硬化性に優れ、接着力及び寸法安定性のバランスに優れる硬化物を形成することが容易なものになる点からは、脂肪族オキセタン化合物の含有量に対し、芳香族オキセタン化合物の含有量の比率(芳香族オキセタン化合物/脂肪族オキセタン化合物)が、1.0以上3.5以下であることが好ましく、1.1以上3.0以下であることがより好ましく、なかでも、1.2以上2.5以下であることが好ましく、特に、1.3以上2.0以下であることが好ましい。
【0109】
本発明においては、上記(C)成分として用いられるオキセタン化合物の分子量が、100以上1,000以下であることが好ましく、150以上600以下であることがより好ましく、なかでも、180以上500以下であることが好ましく、特に、190以上420以下であることが好ましい。
上述の数値範囲にすることで、上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0110】
本発明においては、上記(A)成分、上記(B)成分及び上記(C)成分の合計量100質量部中、上記(C)成分の含有量が、10質量部以上90質量部以下であることが好ましく、20質量部以上80質量部以下であることがより好ましく、なかでも、25質量部以上70質量部以下であることが好ましく、特に、30質量部以上60質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、35質量部以上50質量部以下であることが好ましい。
上述の数値範囲にすることで、上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0111】
本発明においては、上記組成物の固形分100質量部中、上記(C)成分の含有量が、0.1質量部以上60質量部以下であることが好ましく、1質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、なかでも、3質量部以上45質量部以下であることが好ましく、特に、5質量部以上40質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、6質量部以上20質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、7質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
上述の数値範囲にすることで、上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0112】
本発明においては、上記組成物100質量部中、上記(C)成分の含有量が、0.1質量部以上60質量部以下であることが好ましく、1質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、なかでも、3質量部以上45質量部以下であることが好ましく、特に、5質量部以上40質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、6質量部以上20質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、7質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
上述の数値範囲にすることで、上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0113】
A4.(D)成分
本発明の組成物は、重合を促進するために、(D)成分として増感剤を含む。上記増感剤は、エネルギー線照射光を吸収して、酸発生剤の分解を促進するものであれば、特に制限なく公知の化合物を使用することができる。上記(D)成分は、2種以上の増感剤を組み合わせたものであってもよい。
上記酸発生剤としては、後述するカチオン開始剤(例えば、光カチオン開始剤、熱カチオン開始剤)等が挙げられる。
【0114】
本発明においては、上記(D)成分が、ナフタレン構造又はアントラセン構造を有する増感剤であることが好ましく、なかでも、下記一般式(D1)及び(D2)で表される化合物の少なくとも1種を含むことが好ましい。上記組成物の増感性能を高める効果が大きいからである。
【0115】
【化22】
(一般式(D1)及び(D2)中、R
d1、R
d2、R
d3及びR
d4は、それぞれ独立に、炭素原子数1以上10以下のアルキル基を表す。)
【0116】
上記一般式(D1)及び(D2)中の、Rd1、Rd2、Rd3及びRd4で表される炭素原子数1以上10以下のアルキル基としては、上記「A1.(A)成分」の項の一般式(A-1)中のR1等の炭素原子数1以上20以下のアルキル基において、所定の炭素原子数を有する基が挙げられる。
Rd1、Rd2、Rd3及びRd4で表される炭素原子数1以上10以下のアルキル基の置換基としては、カルボニル基及びアルコキシ基が挙げられる。
【0117】
本発明においては、上記組成物の感度を向上させる観点から、上記一般式(D1)及び(D2)中の、Rd1、Rd2、Rd3及びRd4は、炭素原子数1以上10以下のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数2以上6以下のアルキル基であることがより好ましく、特に、炭素原子数2以上4以下のアルキル基であることが好ましい。
上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
また、Rd1及びRd2、若しくは、Rd3及びRd4は、同一の基であってもよく、異なる基であってもよいが、本発明においては、同一の基であることが好ましい。増感性能が良好になるからである。
【0118】
本発明においては、上記(D)成分は、上記一般式(D1)及び(D2)で表される化合物の少なくとも1種を含むことが好ましく、上記一般式(D1)で表される化合物を含むことがより好ましく、特に、上記一般式(D1)中のRd1及びRd2が、炭素原子数2以上4以下のアルキル基である化合物を含むことが好ましい。
上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力、寸法安定性、耐熱性及び温度変化に対する耐久性のバランスに優れる硬化物を形成しやすくなるからである。
【0119】
上記(D)成分は、市販品を用いてもよい。増感剤の市販品としては、例えば、9,10-ビス(オクタノイルオキシ)アントラセン(エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル(株)製、製品名「UVS-581」)、1,4-ジエトキシナフタレン(エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル(株)製、製品名「UVS-2171」)、9,10-ジブトキシアントラセン(エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル(株)製、製品名「UVS-1331」)、9,10-ジエトキシアントラセン(エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル(株)製、製品名「UVS-1101」)が挙げられる。
【0120】
本発明においては、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100質量部中、上記(D)成分の含有量が、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.03質量部以上5質量部以下であることがより好ましく、特に、0.05質量部以上1質量部以下であることが好ましい。
上述の数値範囲にすることで、上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0121】
本発明においては、上記組成物100質量部中、上記(D)成分の含有量が、0.001質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.003質量部以上1質量部以下であることがより好ましく、なかでも、0.005質量部以上0.5質量部以下であることが好ましく、特に、0.007質量部以上0.2質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、0.009質量部以上0.1質量部以下であることが好ましい。
上述の数値範囲にすることで、上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0122】
A5.その他の成分
本発明の組成物は、上記(A)成分、上記(B)成分、上記(C)成分及び上記(D)成分を含むことに加え、さらに必要に応じて、その他の成分を含むことができる。
上記その他の成分としては、上記(A)成分、上記(B)成分及び上記(C)成分を除くその他の重合性化合物;カチオン開始剤;熱開始剤;安定剤;無機化合物;カップリング剤;溶剤;硬化促進剤;レベリング剤;顔料、染料等の着色剤;消泡剤;増粘剤;チクソ剤;界面活性剤;難燃剤;可塑剤;酸化防止剤;重合禁止剤;紫外線吸収剤;静電防止剤;流動調整剤;接着促進剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0123】
(1)その他の重合性化合物
本発明においては、上記(A)成分、上記(B)成分、上記(C)成分以外の、その他の重合性化合物を含んでいてもよい。その他の重合性化合物としては、エネルギー線照射によって硬化する成分であれば特に制限なく用いることができる。例えば、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。
上記ビニルエーテル化合物は、ビニルエーテル構造を有し、エポキシ基及びオキセタニル基を有しない化合物等が挙げられる。
上記ビニルエーテル化合物としては、例えば、特開2022-42418号公報に記載の化合物等が挙げられる。
【0124】
(2)カチオン開始剤
本発明の組成物は、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の何れかの成分を硬化させるためにカチオン開始剤(酸発生剤)を含むことができる。
カチオン開始剤としては、光カチオン開始剤、熱カチオン開始剤が挙げられる。本発明においては、光カチオン開始剤を含むことが好ましい。
上記組成物の硬化反応を容易に制御することができ、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0125】
上記光カチオン開始剤は、光照射によりカチオン重合を開始させる物質を放出させることが可能な化合物であれば特に制限なく既存の化合物を用いることが可能であり、好ましくは、エネルギー線の照射によってルイス酸を放出するオニウム塩である複塩、またはその誘導体である。
上記オニウム塩としては、例えば、国際公開WO2018/51941等に記載のものが挙げられる。
本発明においては、光カチオン開始剤として、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等のオニウム塩を含むことが好ましく、芳香族オニウム塩を含むことがより好ましく、なかでも、芳香族スルホニウム塩又は芳香族ヨードニウム塩を含むことが好ましく、特に、芳香族スルホニウム塩を含むことが好ましい。
本発明の組成物は、硬化性に優れるものとなるからである。
【0126】
上記芳香族スルホニウム塩としては、例えば、S,S,S’,S’-テトラフェニル-S,S’-(4、4’-チオジフェニル)ジスルホニウムビスヘキサフルオロホスフェート、S,S,S’,S’-テトラフェニル-S,S’-(4、4’-チオジフェニル)ジスルホニウムビステトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル-4-フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル-4-フェニルチオフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
【0127】
上記芳香族スルホニウム塩の市販品としては、例えば、CPI-100P、CPI-101A、CPI-200K、CPI-100B、CPI-310B、CPI-310FG、VC-1S、FC-1FG、CPI-410S、CPI-410B、ES-1B、(以上、サンアプロ(株)製);WPAG-336、WPAG-367、WPAG-370、WPAG-469(以上、FUJIFILM社製)、東洋合成工業(株)製)、TR-PAG-201/201S、TR-PAG-202/202S、TR-PAG-20101、TR-PAG-20108(以上、TRONLY社製);UVI-6992、UVI-6976(以上、ダウ・ケミカル社製);SP-150、SP-150(以上、(株)ADEKA製)等が挙げられる。
【0128】
上記芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、4-イソブチルフェニル-4’-メチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、4-イソブチルフェニル-4’-メチルフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-イソプロピルフェニル-4’-メチルフェニルヨードニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート等が挙げられる。
芳香族ヨードニウム塩の市販品としては、例えば、Omnicat 250(IGM Resins B.V.社製)、DPI-105、MPI-103、MPI-105、BBI-101、BBI-102、BBI-103、BBI-105(以上、みどり化学(株)製)、PI2074(Solvay社製)、TR-PAG-30408(Dongguan GKEY Trading社製)等が挙げられる。
【0129】
上記熱カチオン開始剤は、加熱によりカチオン種又はルイス酸を発生する化合物であれば、特に制限なく既存の化合物を用いることが可能である。
熱カチオン開始剤としては、例えば、(4-ヒドロキシフェニル)メチル(フェニルメチル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のスルホニウム塩、チオフェニウム塩、チオラニウム塩、ベンジルアンモニウム、ピリジニウム塩及びヒドラジニウム塩等の塩;ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン及びテトラエチレンペンタミン等のポリアルキルポリアミン類;1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-3,6-ジエチルシクロヘキサン及びイソホロンジアミン等の脂環式ポリアミン類;m-キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン及びジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミン類;前記ポリアミン類と、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ビスフェノールA-ジグリシジルエーテル及びビスフェノールF-ジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類又はカルボン酸のグリシジルエステル類等の各種エポキシ樹脂とを常法によって反応させることによって製造されるポリエポキシ付加変性物;前記有機ポリアミン類と、フタル酸、イソフタル酸及びダイマー酸等のカルボン酸類とを常法によって反応させることによって製造されるアミド化変性物;前記ポリアミン類とホルムアルデヒド等のアルデヒド類;フェノール、クレゾール、キシレノール、第三ブチルフェノール及びレゾルシン等の核に少なくとも一個のアルデヒド化反応性場所を有するフェノール類とを常法によって反応させることによって製造されるマンニッヒ化変性物;多価カルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2-メチルコハク酸、2-メチルアジピン酸、3-メチルアジピン酸、3-メチルペンタン二酸、2-メチルオクタン二酸、3,8-ジメチルデカン二酸、3,7-ジメチルデカン二酸、水添ダイマー酸及びダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸類;トリメリット酸、トリメシン酸、及び、ひまし油脂肪酸等の三量体等のトリカルボン酸類;ピロメリット酸等のテトラカルボン酸類等)の酸無水物;ジシアンジアミド、イミダゾール類、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル及びアミンイミド等が挙げられる。
【0130】
上記熱カチオン開始剤としては、市販品を用いることができ、例えば、アデカオプトンCP-77、アデカオプトンCP-66(以上、(株)ADEKA製);CI-2639、CI-2624(以上、日本曹達(株)製);サンエイドSI-60、サンエイドSI-80、サンエイドSI-B3、サンエイドSI-B3A、サンエイドSI-B4(以上、三新化学工業(株)製)、CXC1612、CXC1738、CXC1821(以上、King Industries社製)等が挙げられる。
【0131】
本発明の組成物において、上記カチオン開始剤の含有量は、特に制限されるものではないが、例えば、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計の100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることがより好ましく、特に、1質量部以上2.5質量部以下であることが好ましい。
上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0132】
本発明の組成物において、上記カチオン開始剤の含有量は、特に制限されるものではないが、例えば、上記組成物100質量部中、0.01質量部以上2質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上1.5質量部以下であることがより好ましく、特に、0.1質量部以上0.9質量部以下であることが好ましい。
上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
【0133】
(3)無機化合物
本発明の組成物には、無機化合物を含有させることができる。
上記無機化合物としては、例えば、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化イリジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化カリウム、シリカ及びアルミナ等の金属酸化物;層状粘土鉱物、ミロリブルー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、コバルト系、マンガン系、ガラス粉末、マイカ、タルク、カオリン、フェロシアン化物、各種金属硫酸塩、硫化物、セレン化物、アルミニウムシリケート、カルシウムシリケート、水酸化アルミニウム、白金、金、銀及び銅等が挙げられる。
これらの中でも、酸化チタン、シリカを用いることが好ましい。
上記組成物は、硬化後の収縮率が小さくなるからである。
【0134】
本発明の組成物において、上記無機化合物の含有量は、特に制限されるものではないが、例えば、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計の100質量部に対し、10質量部以上1,000質量部以下であることが好ましく、50質量部以上800質量部以下であることがより好ましく、特に、160質量部以上500質量部以下であることが好ましい。
上記組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成することが容易になるからである。
上記組成物が、深部硬化性に優れ、接着力、寸法安定性、耐熱性及び温度変化に対する耐久性のバランスに優れる硬化物を形成することが容易となる点からは、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計の100質量部中、無機化合物の含有量が、200質量部以上500質量部以下であることが好ましい。
【0135】
(4)カップリング剤
本発明の組成物には、カップリング剤を添加することにより、上記組成物は、基材との密着性が向上するので好ましい。
上記カップリング剤としては、例えば、特許第7043142号公報に記載の化合物等が挙げられる。
上記カップリング剤としては、市販品を用いることができ、例えば、1003、KBM-303、KBM-403、KBE-402、KBE-403、KBM-1403、KBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103、KBM-602、KBM-603、KBE-603,KBM-903,KBE-903,KBE-9103,KBM-573、KBM-575、KBM-6123、KBE-585、KBM-703、KBM-802、KBM-803、KBE-846、KBE-9007、KBM-04、KBE-04、KBM-13、KBE-13、KBE-22、KBE-103、HMDS-3、KBM-3063、KBM-3103C、KPN-3504及びKF-99(以上、信越シリコーン製)等が挙げられる。
【0136】
本発明の組成物において、上記カップリング剤の含有量は、特に制限されるものではないが、例えば、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計の100質量部に対し、0.3質量部以上20質量部以下であることが好ましく、1質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、特に、2質量部以上8質量部以下であることが好ましい。
上記組成物は、金属材料への接着力が良好な硬化物を形成することが容易になるからである。
【0137】
(5)溶剤
本発明の組成物は、重合開始剤等の成分を溶解させるための最低限の溶剤を含むものであってもよい。溶剤は、上記(A)成分、上記(B)成分、上記(C)成分及び上記(D)成分の何れにも該当せず、25℃、大気圧下で液状であり、組成物中の各成分を分散、又は溶解可能なものが挙げられる。また、溶剤は、本発明の組成物中のモノマーと反応しないものが、本発明の組成物の硬化物への悪影響が少ないので好ましい。
本発明の組成物における溶剤の含有量の上限が、組成物100質量部中、1質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以下であることがより好ましく、特に、溶剤を含まないことが好ましい。本発明の効果が顕著なものとなるからである。
上記溶剤の具体例としては、例えば、国際公開第WO2019/159953号に記載の溶剤等が挙げられる。また、本発明の組成物では、溶剤を単独で用いてもよく、2種類以上の溶剤を混合した混合溶剤を使用することができる。
【0138】
A6.組成物
本発明の組成物の製造方法としては、上記各成分を所望量含む組成物を形成可能な方法であれば問題はなく、公知の混合手段を用いる方法を挙げることができる。例えば、本発明の組成物は、ホモディスパー、ホモミキー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて、各成分を混合することで製造することができる。
【0139】
本発明の組成物は、従来のエポキシ樹脂組成物が使用される各種用途に用いることが可能である。本発明の組成物の用途は、特に限定されるものではないが、例えば、自動車内装用、電子・電気機器用、建材パネル用、家具木工用、製本用、繊維加工用等の各種用途が挙げられ、これら用途のいずれにも好適に用いることができる。なかでも、本発明の組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れる硬化物を形成できることから、例えば、光学材料用接着剤、光学材料の周辺部材用接着剤等の接着剤用途において、特に好適に使用することができる。
【0140】
上記光学材料としては、例えば、カメラ(車載カメラ、デジタルカメラ、PC用カメラ、モバイルフォン用カメラ、監視カメラ等)の撮影用レンズ、メガネレンズ、フィルター、回折格子、プリズム、光ビーム集光レンズ、光拡散用レンズ、表示装置用カバーガラス、フォトセンサー、フォトスイッチ、LED、発光素子、光導波路、光分割器、光ファイバー用接着剤、表示装置用基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、ディスプレイ保護膜、ディスプレイバックライト、導光板、遮光フィルタ、反射防止用フィルム等が挙げられる。
本発明の組成物は、特にカメラの撮影用レンズに好適に使用することができる。
【0141】
また、本発明の組成物のその他の用途としては、例えば、遮光フィルタを含む光学フィルタ;塗料;コーティング剤;ライニング剤;印刷版;絶縁ワニス;絶縁シート;積層板;プリント配線基板;半導体装置用・LEDパッケージ用・液晶注入口用・有機エレクトロルミネッセンス(EL)用・光素子用・電気絶縁用・電子部品用・分離膜用等の封止剤;成形材料;パテ、ガラス繊維含浸剤;目止め剤;半導体用・太陽電池用等のパッシベーション膜;層間絶縁膜;保護膜;カラーテレビ、PCモニタ、携帯情報端末、CCDイメージセンサのカラーフィルタ;プラズマ表示パネル用の電極材料;印刷インク;歯科用組成物;光造形用樹脂;液状及び乾燥膜の双方;微小機械部品;ガラス繊維ケーブルコーティング材;ホログラフィ記録用材料等が挙げられる。
【0142】
本発明の組成物を接着剤用途に使用する場合、本発明の組成物と接着する基材は特に限定されるものではないが、例えば、金属材料、高分子材料、木質材料、紙質材料、無機材料等が挙げられる。
上記金属材料としては、鉄、銅、アルミニウム、チタン、ブリキ、ステンレス、軟鋼、めっき鋼、塗装鋼板、亜鉛鋼板等が挙げられる。
上記高分子材料としては、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエステル;ポリアミド(ナイロン);ポリウレタン;エポキシ樹脂;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ-1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-1,2-ジフェノキシエタン-4,4’-ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレン、ABS樹脂等のスチレン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂;ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル等のビニル系樹脂;ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート;非晶ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂等のエンジニアリングプラスチック;ノルボルネン樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)等の環状高分子等が挙げられる。
上記木質材料としては、例えば、木材、合板、パーティクルボード、MDF等が挙げられる。
上記紙質材料としては、例えば、普通紙、強化紙、樹脂含侵紙、ボール紙等が挙げられる。
上記無機材料としては、石膏ボード、ケイ酸カルシウム板等が挙げられる。
本発明においては、上記基材は、金属材料及び高分子材料が好ましく、なかでも、金属材料及びエンジニアリングプラスチックが好ましく、特に、金属材料が好ましい。本発明の組成物との接着が良好になるからである。
【0143】
B.硬化物
次に、本発明の硬化物について説明する。
本発明の硬化物は、上記組成物の硬化物である。
【0144】
本発明によれば、上述の組成物を用いているため、硬化後の収縮率が小さく、接着性にも優れる硬化物を提供することができる。
なお、本発明の組成物については、上記「A.組成物」の項に記載の内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明の硬化物の用途等については、上記「A.組成物」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0145】
本発明の硬化物の製造方法としては、本発明の組成物を硬化させることができる方法であればよい。本発明の硬化物の製造方法としては、後述する「C.硬化物の製造方法」に記載の方法を用いることができる。
【0146】
C.硬化物の製造方法
次に、本発明の硬化物の製造方法について説明する。
本発明の硬化物の製造方法は、上述の組成物中の(A)成分、(B)成分及び(C)成分の硬化による硬化工程を有することを特徴とする。
【0147】
本発明によれば、上述の組成物を用いているため、硬化後の収縮率が小さく、接着力にも優れる硬化物を容易に得ることができる。
【0148】
C1.硬化工程
本工程は、上述の組成物を硬化する工程である。
本工程では、上述の組成物中の(A)成分、(B)成分及び(C)成分の何れか一つ以上を重合可能な方法であればよく、例えば、組成物の塗膜に対して光(エネルギー線)を照射して、本発明の組成物を重合する方法等が挙げられる。
【0149】
上記光エネルギー線の光源としては、例えば、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、キセノンアーク灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、エキシマーランプ、殺菌灯、発光ダイオード、CRT光源等から得られる2,000オングストローム以上7,000オングストローム以下の波長を有する電磁波エネルギーや電子線、X線、放射線等の高エネルギー線等が挙げられる。
本工程においては、上記光源は、波長300以上450nm以下の光を発光する超高圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、カーボンアーク灯、キセノンアーク灯、発光ダイオード等好ましい。本発明の組成物の重合が容易になるからである。
【0150】
上記エネルギー線の照射量は、特に制限されるものではなく、組成物の組成によって適宜決定することができる。上記照射量は、組成物中の成分の劣化防止の観点から、照射量は365nmにおいて、100mJ/cm2以上2,000mJ/cm2以下であることが好ましい。
【0151】
本工程において、上記硬化方法が、エネルギー線を照射する方法及び加熱する方法を併用する方法であることが好ましく、より具体的には、エネルギー線を照射する方法及び加熱する方法をこの順で行うことが好ましい。本発明の組成物の硬化を効率的に進めることができるからである。
【0152】
本工程における組成物の塗膜を加熱する方法としては、ホットプレート等の熱板や、大気オーブン、イナートガスオーブン、真空オーブン、熱風循環式オーブン等を用いる方法が挙げられる。
本発明の組成物を加熱する温度は、特に限定されないが、本発明の組成物の重合容易の観点から、70℃以上200℃以下であることが好ましく、特に、90℃以上150℃以下であることが好ましい。
塗膜を加熱する時間とは、特に限定されないが、生産性向上の点から、1分以上60分以下であることが好ましく、なかでも、1分以上30分以下であることが好ましい。
【0153】
C2.その他の工程
上記製造方法は、必要に応じてその他の工程を有するものであっても構わない。
その他の工程としては、例えば、上述の硬化工程の前に、本発明の組成物を基材に塗布する工程等を挙げることができる。
組成物を基材に塗布する方法としては、例えば、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬等の公知の方法を用いることができる。
【0154】
上記基材は、硬化物の用途等に応じて適宜設定することができ、特に制限されず、通常用いられるものを使用することができる。上記基材の具体例としては、上記「A6.組成物」の項に記載の内容と同様とすることができる。
本発明の硬化物は、上記基材上で形成された後、基材から剥離して用いてもよく、基材から他の基材に転写して用いることができる。
【0155】
D.その他
なお、本発明は、下記[1]~[6]の形態を含むものとする。
[1] 下記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含有する組成物。
(A)成分:上記一般式(A-1)、(A-2)、(A-3)、(A-4)及び(A-5)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種の脂環式エポキシ化合物
(B)成分:(A)成分以外のエポキシ化合物
(C)成分:オキセタン化合物
(D)成分:増感剤
[2] 上記(C)成分が、芳香族オキセタン化合物を含む、[1]に記載の組成物。
[3] 上記(D)成分が、上記一般式(D1)及び(D2)で表される化合物の少なくとも1種を含む、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4] 上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100質量部に対し、(A)成分の含有量が、5質量部以上80質量部以下、(B)成分の含有量が、5質量部以上60質量部以下、(C)成分の含有量が、10質量部以上90質量部以下である、[1]~[3]の何れか一項に記載の組成物。
[5] [1]~[4]の何れか一項に記載の組成物の硬化物。
【0156】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例0157】
[実施例1~25及び比較例1~5]
下記表1~4の配合に従って、各成分を混合して組成物を得た。
各成分は以下の材料を用いた。
なお、表中の配合量は、各成分の質量部を表すものである。
【0158】
(A)成分:上記一般式(A-1)、(A-2)、(A-3)、(A-4)及び(A-5)で表される化合物の少なくとも1種を含む、脂環式エポキシ化合物
A1:エポカリック(登録商標)THI-DE((株)ENEOS製、一般式(A-1)で表される化合物)
【0159】
【0160】
A2:DCA((株)ADEKA製、一般式(A-5)で表される化合物)
【0161】
【0162】
(B)成分:エポキシ化合物
B1:ビスフェノールAジグリシジルエーテル(下記化合物、芳香族エポキシ化合物)
【0163】
【0164】
B2:TECHMORE VG3101L(エア・ウォーター社製、芳香族エポキシ化合物)
【0165】
【化26】
(EP1が90wt%、EP2が10wt%の混合物)
【0166】
B3:ビスフェノールFジグリシジルエーテル(下記化合物、芳香族エポキシ化合物)
【0167】
【0168】
B4:トリシクロデカンジメタノールグリシジルエーテル(下記化合物、脂肪族エポキシ化合物、脂肪族環含有エポキシ化合物、一般式(B-1)で表される化合物)
【0169】
【0170】
B5:EHPE-31((株)ダイセル製商品、脂肪族エポキシ化合物、脂肪族環含有エポキシ化合物、一般式(B-2)で表される化合物)
【0171】
【0172】
B6:リモネンジオキシド(下記化合物、脂環式エポキシ化合物)
【0173】
【0174】
B7:セロキサイド2021P((株)ダイセル製商品、脂環式エポキシ化合物)
【0175】
【0176】
(C)成分:オキセタン化合物
C1:ETERNACOLL OXBP(UBE(株)製、芳香族オキセタン化合物、一般式(C-1)で表される化合物)
【0177】
【0178】
C2:アロンオキセタンOXT-211(東亜合成(株)製、芳香族オキセタン化合物)
【0179】
【0180】
C3:アロンオキセタンOXT-221(東亜合成(株)製商品、脂肪族オキセタン化合物、一般式(C-1)で表される化合物)
【0181】
【0182】
C4:アロンオキセタンOXT-101(東亜合成(株)製商品、脂肪族オキセタン化合物、一般式(C-2)で表される化合物)
【0183】
【0184】
(D)成分:増感剤
D1:1,4-ジエトキシナフタレン (一般式(D1)で表される化合物)
D2:9,10-ジブトキシアントラセン (一般式(D2)で表される化合物)
【0185】
(E)その他の成分
E1:TR-PAG-20108(Dongguan社製商品,光カチオン開始剤、芳香族スルホニウム塩)
E2:SI-B3(三新化学工業(株)製、熱カチオン開始剤)
E3:FEB25G-SED((株)アドマテックス、無機化合物、シリカフィラー)
E4:VP NKC-130(日本アエロジル社製、無機化合物、疎水性シリカ)
E5:KBM-403(信越化学工業(株)製、カップリング剤)
【0186】
<評価>
得られた各組成物につき、深部硬化性、接着力、硬化収縮、線膨張、ガラス転移点(Tg)を下記の手順に従って評価した。結果を表1~表5に示す。
【0187】
(1)深部硬化性
孔径3mmのチューブに各組成物を充填し、一方のチューブの端部から、365nm波長のLED光源(1,000mW/cm2)、2,000mJ/cm2の露光条件で照射した。得られた硬化物をチューブから取り出し、露光面から硬化物の先端までの距離を測定した。この結果を下記表1~表5に示す。
なお、深部硬化性は、1mm以上であることが好ましく、1.3mm以上であることがより好ましく、特に、1.5mm以上であることが好ましい。
深部硬化性の高い組成物は、硬化性に優れたものである。
【0188】
(2)接着力(高分子材料への接着力)
高分子材料としてのPPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)上に、塗布量が10mm3になるように塗布し、365nm波長のLED光源(1,000mW/cm2)を用いて、2,000mJ/cm2露光した後、120℃×1h加熱硬化して試験片を得た。その後、Nordson DAGE 4000Plusを用いて接着力(MPa)を測定した。この結果を下記表1~表5に示す。
【0189】
(3)接着力(金属材料への接着力)
金属材料としてのアルミニウム上に、塗布量が10mm3になるように塗布し、365nm波長のLED光源(1,000mW/cm2)を用いて、2,000mJ/cm2露光した後、120℃×1h加熱硬化させて試験片を得た。その後、Nordson DAGE 4000Plusを用いて接着力(MPa)を測定した。この結果を下記表1~表5に示す。
【0190】
(4)硬化収縮率
各組成物をガラス基材上に塗布して、365nm波長のLED光源(1,000mW/cm2)を用いて、2,000mJ/cm2露光した後、120℃×1h加熱硬化して硬化物を得た。硬化物をガラス基材から剥離し、測定用サンプル(膜厚1mm×幅5mm)を得た。得られたサンプル及び硬化前のサンプルのそれぞれについて、ガスピクノメーターを用いて密度を測定した(JIS Z8837)。硬化前と硬化後の密度の変化の割合から硬化収縮率を算出した。この結果を下記表1~表5に示す。
なお、硬化収縮率は、2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、特に、1.2以下であることが好ましい。
硬化収縮率が低い硬化物は、寸法安定性に優れており、例えば、位置精度の高い接着剤として好適に用いることができる。
【0191】
(5)線膨張率(10-6/℃)
各組成物をガラス基材上に塗布して、365nm波長のLED光源(1,000mW/cm2)を用いて、2,000mJ/cm2露光した後、120℃×1h加熱硬化して硬化物を得た。硬化物をガラス基材から剥離し、測定用サンプル(膜厚1mm×幅3mm)を得た。
得られた測定用サンプルについて、HITACHIハイテク製TMA7100を用いて、以下の条件で線膨張率(10-6/℃)を測定した。この結果を下記表1~表5に示す。
測定温度:-20℃~250℃
昇温速度:5℃/min
なお、線膨張率は、60以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましく、特に、30以下であることが好ましい。
線膨張率が低い硬化物は、寸法安定性に優れており、例えば、位置精度の高い接着剤として好適に用いることができる。
【0192】
(6)硬化物Tg(℃)
各組成物をガラス基材上に塗布して、365nm波長のLED光源(1,000mW/cm2)を用いて、2,000mJ/cm2露光した後、120℃×1h加熱硬化して硬化物を得た。硬化物をガラス基材から剥離し、測定用サンプル(膜厚1mm×幅0.6mm)を得た。
得られた測定用サンプルについて、(株)日立ハイテクサイエンス製の粘弾性測定装置(DMA7100)を用いて、ガラス転移点(Tg)を測定した。この結果を下記表1~表5に示す。
なお、硬化物Tg(℃)は、110℃以上であることが好ましく、115℃以上であることがより好ましく、なかでも、120℃以上であることが好ましく、特に、125℃以上であることが好ましい。
硬化物Tgが高い硬化物は、耐熱性及び温度変化に対する耐久性に優れたものである。
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
【0198】
表1~表5の結果より、実施例の組成物は、深部硬化性に優れ、接着力に優れることが確認できた。
なかでも、実施例1及び実施例26と、比較例3との比較により、脂環式エポキシ化合物として、上記一般式(A-1)又は(A-5)で表される化合物を含む組成物は、深部硬化性が顕著であり、得られた硬化物は、硬化収縮率及び線膨張率が低く、高い硬化物Tgを示した。硬化収縮率及び線膨張率が低いことから、変形が少なく、優れた寸法安定性を有することが確認できた。さらに、高い硬化物Tgにより、耐熱性及び温度変化に対する耐久性に優れることが確認できた。また、実施例17より、芳香族オキセタン化合物として、C1及びC2を併用することにより、高分子材料への接着力が顕著なものとなることが確認できた。