(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055167
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】赤外線モジュール及び赤外線モジュールの補正方法
(51)【国際特許分類】
G01J 5/53 20220101AFI20240411BHJP
G01J 5/80 20220101ALI20240411BHJP
【FI】
G01J5/53
G01J5/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161874
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】小泉 佳彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真之
【テーマコード(参考)】
2G066
【Fターム(参考)】
2G066AA06
2G066AC13
2G066BC11
2G066CA15
2G066CB03
(57)【要約】
【課題】容易に赤外線センサの温度調整が可能な赤外線モジュール及びその赤外線モジュールの補正方法が提供される。
【解決手段】赤外線モジュール(10)は、測定対象から放射される赤外線を検出する赤外線センサ(11)と、赤外線センサからの信号の取得及びそれ自体の温度を測定する温度測定部(22)を含み温度測定部からの温度信号の取得をして演算を行う演算制御装置(20)と、発熱によって赤外線センサの温度を調整する発熱体(60)と、を備え、赤外線センサと演算制御装置とが積層されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象から放射される赤外線を検出する赤外線センサと、
前記赤外線センサからの信号の取得及びそれ自体の温度を測定する温度測定部を含み前記温度測定部からの温度信号の取得をして演算を行う演算制御装置と、
発熱によって前記赤外線センサの温度を調整する発熱体と、を備え、
前記赤外線センサと前記演算制御装置とが積層されている、赤外線モジュール。
【請求項2】
前記赤外線センサと前記演算制御装置とが、受光素子と前記温度測定部とが近接し向かい合うように積層されている、請求項1に記載の赤外線モジュール。
【請求項3】
前記発熱体は、前記演算制御装置の前記赤外線センサに接する第1面とは反対側の第2面の近傍に設けられている、請求項1又は2に記載の赤外線モジュール。
【請求項4】
前記発熱体に電流を流すための端子を有する基板を備え、
前記発熱体は、前記基板の前記第2面に接する面に設けられた配線であり、前記発熱体を有する前記基板は、前記赤外線センサ及び前記演算制御装置とともにパッケージ化されている、請求項1又は2に記載の赤外線モジュール。
【請求項5】
前記発熱体に電流を流すための端子は複数である、請求項4に記載の赤外線モジュール。
【請求項6】
前記発熱体は、平面視で、前記赤外線センサを横切るように設けられる、請求項1又は2に記載の赤外線モジュール。
【請求項7】
測定対象から放射される赤外線を検出する赤外線センサと、前記赤外線センサの動作を制御し、前記赤外線センサからの信号及びそれ自体の温度を測定する温度測定部を含み前記温度測定部からの温度信号を取得して演算を行う演算制御装置と、発熱によって前記赤外線センサの温度を調整する発熱体と、を備える赤外線モジュールの補正方法であって、
前記演算制御装置が、
環境の温度又は前記発熱体の発熱によって前記赤外線センサの温度が第1の所定値になった場合に、前記測定対象から放射される赤外線を検出した第1の赤外線検出値及び前記温度測定部の第1の温度検出値を取得するステップと、
前記発熱体の発熱によって前記赤外線センサの温度が第2の所定値になった場合に、前記測定対象から放射される赤外線を検出した第2の赤外線検出値及び前記温度測定部の第2の温度検出値を取得するステップと、
前記第1の赤外線検出値及び第1の温度検出値及び前記第2の赤外線検出値及び第2の温度検出値に基づいて温度補正を実行するステップと、を含み、
前記赤外線モジュールは、
前記赤外線センサと前記演算制御装置とが積層されている、赤外線モジュールの補正方法。
【請求項8】
前記赤外線センサと前記演算制御装置とが、受光素子と前記温度測定部とが近接し向かい合うように積層されている、請求項7に記載の赤外線モジュールの補正方法。
【請求項9】
前記発熱体は、前記演算制御装置の前記赤外線センサに接する第1面とは反対側の第2面の近傍に設けられている、請求項7又は8に記載の赤外線モジュールの補正方法。
【請求項10】
前記発熱体に電流を流すための端子を有する基板を備え、
前記発熱体は、前記基板の前記第2面に接する面に設けられた配線であり、前記発熱体を有する前記基板は、前記赤外線センサ及び前記演算制御装置とともにパッケージ化されている、請求項7又は8に記載の赤外線モジュールの補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は赤外線モジュール及び赤外線モジュールの補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
波長が2μm以上の赤外線は、その熱的効果及びガスによる赤外線吸収の効果から、人体を検知する人感センサ、非接触温度測定装置及びガスセンサ等に使用されている。例えば非接触温度測定装置は、測定対象から入射する赤外線のエネルギー量(赤外線量)を赤外線センサで検出し、検出した赤外線量に基づいて温度を測定する。
【0003】
ここで、赤外線センサを非接触温度測定装置で使用する場合に、正確な温度測定のために、装置又は電子機器として組み立てられてから温度補正(較正)が行われる必要がある。例えば特許文献1は、汚れなどの外的要因を考慮した誤差を補正するための補正データを簡易かつ高精度に取得する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、赤外線センサで検出した赤外線量と測定対象の温度などとの対応関係(特性曲線)は、赤外線センサ自体の温度に依存することが知られている。したがって、上記のような温度補正は、赤外線センサの温度がある特定の値(所定値)となった状態で実行される必要がある。しかし、赤外線センサが装置又は電子機器として組み立てられてから実行される温度補正では、装置又は電子機器の外部から熱を伝える必要があるため、赤外線センサの温度を所定値にすることが難しい。
【0006】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、容易に赤外線センサの温度調整が可能な赤外線モジュール及びその赤外線モジュールの補正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の一実施形態に係る赤外線モジュールは、
測定対象から放射される赤外線を検出する赤外線センサと、
前記赤外線センサからの信号の取得及びそれ自体の温度を測定する温度測定部を含み前記温度測定部からの温度信号の取得をして演算を行う演算制御装置と、
発熱によって前記赤外線センサの温度を調整する発熱体と、を備え、
前記赤外線センサと前記演算制御装置とが積層されている。
【0008】
(2)本開示の一実施形態として、(1)において、
前記赤外線センサと前記演算制御装置とが、受光素子と前記温度測定部とが近接し向かい合うように積層されている。
【0009】
(3)本開示の一実施形態として、(1)又は(2)において、
前記発熱体は、前記演算制御装置の前記赤外線センサに接する第1面とは反対側の第2面の近傍に設けられている。
【0010】
(4)本開示の一実施形態として、(1)から(3)のいずれかにおいて、
前記発熱体に電流を流すための端子を有する基板を備え、
前記発熱体は、前記基板の前記第2面に接する面に設けられた配線であり、前記発熱体を有する前記基板は、前記赤外線センサ及び前記演算制御装置とともにパッケージ化されている。
【0011】
(5)本開示の一実施形態として、(4)において、
前記発熱体に電流を流すための端子は複数である。
【0012】
(6)本開示の一実施形態として、(1)から(5)のいずれかにおいて、
前記発熱体は、平面視で、前記赤外線センサを横切るように設けられる。
【0013】
(7)本開示の一実施形態に係る赤外線モジュールの補正方法は、
測定対象から放射される赤外線を検出する赤外線センサと、前記赤外線センサの動作を制御し、前記赤外線センサからの信号及びそれ自体の温度を測定する温度測定部を含み前記温度測定部からの温度信号を取得して演算を行う演算制御装置と、発熱によって前記赤外線センサの温度を調整する発熱体と、を備える赤外線モジュールの補正方法であって、
前記演算制御装置が、
環境の温度又は前記発熱体の発熱によって前記赤外線センサの温度が第1の所定値になった場合に、前記測定対象から放射される赤外線を検出した第1の赤外線検出値及び前記温度測定部の第1の温度検出値を取得するステップと、
前記発熱体の発熱によって前記赤外線センサの温度が第2の所定値になった場合に、前記測定対象から放射される赤外線を検出した第2の赤外線検出値及び前記温度測定部の第2の温度検出値を取得するステップと、
前記第1の赤外線検出値及び第1の温度検出値及び前記第2の赤外線検出値及び第2の温度検出値に基づいて温度補正を実行するステップと、を含み、
前記赤外線モジュールは、
前記赤外線センサと前記演算制御装置とが積層されている。
【0014】
(8)本開示の一実施形態として、(7)において、
前記赤外線センサと前記演算制御装置とが、受光素子と前記温度測定部とが近接し向かい合うように積層されている。
【0015】
(9)本開示の一実施形態として、(7)又は(8)において、
前記発熱体は、前記演算制御装置の前記赤外線センサに接する第1面とは反対側の第2面の近傍に設けられている。
【0016】
(10)本開示の一実施形態として、(7)から(9)のいずれかにおいて、
前記発熱体に電流を流すための端子を有する基板を備え、
前記発熱体は、前記基板の前記第2面に接する面に設けられた配線であり、前記発熱体を有する前記基板は、前記赤外線センサ及び前記演算制御装置とともにパッケージ化されている。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、容易に赤外線センサの温度調整が可能な赤外線モジュール及びその赤外線モジュールの補正方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る赤外線モジュールの一構成例のブロック図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係る赤外線モジュールの使用例を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に係る赤外線モジュールの一構成例の断面図である。
【
図4】
図4は、発熱体の一構成例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、発熱体の別の構成例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、本開示の一実施形態に係る赤外線モジュールの補正方法の処理を例示するフローチャートである。
【
図7】
図7は、本開示の一実施形態に係る赤外線モジュールの実装例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係る赤外線モジュール及び赤外線モジュールの補正方法が説明される。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号が付されている。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る赤外線モジュール10のブロック図である。
図2は、赤外線モジュール10の使用例を示す図である。
図3は、赤外線モジュール10の断面図である。本実施形態において、赤外線モジュール10は非接触温度測定装置として用いられる。ただし、赤外線モジュール10は、非接触温度測定装置としての使用に限定されず、装置として組み立てられた後に温度補正(較正)が行われる各種の装置として使用され得る。
【0021】
さらに、赤外線モジュール10は様々な電子機器に組み込まれて使用され得る。本実施形態において、赤外線モジュール10はイヤホン40に組み込まれる。
図2に示すように、イヤホン40の赤外線モジュール10が配置されている部分には、赤外線を透過させるように、窓材30が設けられていてよい。赤外線モジュール10がユーザの温度(体温)を測定し、測定された温度に基づいてイヤホン40の電源オン又は電源オフなどの動作が制御されてよい。また、赤外線モジュール10の温度補正は、イヤホン40に組み込まれた状態で実行可能であり、イヤホン40の製造出荷時又は使用時に実行されてよい。
【0022】
図1に示すように、赤外線モジュール10は、赤外線センサ11と、演算制御装置20と、発熱体60と、を備える。演算制御装置20は、信号処理部21と、温度測定部22と、補正処理部23と、記憶部24と、通信部25と、を備えてよい。また、
図3に示すように、本実施形態において赤外線モジュール10は基板70も備えており、赤外線センサ11、演算制御装置20、発熱体60及び基板70が、樹脂によって封止されてパッケージ化されている。また、
図3の電子回路は演算制御装置20を含む。したがって、
図3の電子回路は温度測定部22を含む。赤外線モジュール10の構成要素の詳細については後述する。
【0023】
ここで、
図3には
図4及び
図5と共通の直交座標が示されている。z軸方向は、赤外線センサ11と演算制御装置20とが積層される方向であって、積層方向と称することができる。z軸方向は、基板70の主面に直交する軸方向でもある。主面は最も面積の大きい面である。y軸方向は、矩形である基板70の主面の一方の辺の方向に対応する。また、x軸方向は、基板70の主面の他方の辺の方向に対応する。xy平面は基板70の主面と平行である。また、z軸正方向に位置する場合を上と、z軸負方向に位置する場合を下と、積層方向の上下に対応付けて説明することがある。例えば
図3の赤外線センサ11、演算制御装置20及び基板70の位置関係は、赤外線センサ11が演算制御装置20の上に積層されており、基板70が演算制御装置20の下にある。また、xy平面を正面から見る見方を、以下において平面視と称することがある。例えば、z軸負方向に向かう視線で、赤外線センサ11及び演算制御装置20を透過させて、基板70の主面におけるxy平面上の位置関係を説明する場合の見方は平面視である。
【0024】
以下、赤外線モジュール10の構成要素の詳細が説明される。赤外線センサ11は、測定対象から放射される赤外線を検出する。また、赤外線センサ11は、検出された赤外線のエネルギー量(以下、赤外線量)に応じた電気信号を出力する。赤外線量に応じた電気信号は例えば電流値であってよい。赤外線センサ11は、半導体に赤外線が照射されるとその光量子によって発生する電子又は正孔を利用して、赤外線を検出する量子型のセンサであってよい。量子型のセンサは、熱型赤外線センサに比べて、高感度で応答速度が速い。
【0025】
演算制御装置20は、赤外線センサ11からの信号の取得及びそれ自体の温度を測定する温度測定部22を含み温度測定部22からの温度信号の取得をして演算を行う。演算制御装置20は、演算及び制御を実行するプロセッサを備える装置などであってよく、例えばマイコン(Micro Controller Unit)によって実現されてよい。また、演算制御装置20が備えるプロセッサは、特定用途向けIC(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)を含んでよい。本実施形態において、演算制御装置20はIC(Integrated Circuit)で実現される。
【0026】
信号処理部21、温度測定部22及び補正処理部23の機能は、ソフトウェアによって実現されてよく、ハードウェアによって実現されてよい。例えば記憶部24に、1つ以上のプログラムが記憶されていてよい。記憶部24に記憶されたプログラムは、演算制御装置20が備えるプロセッサによって読み込まれると、プロセッサを信号処理部21、温度測定部22及び補正処理部23として機能させてよい。
【0027】
信号処理部21は、検出された赤外線量に応じた電気信号を赤外線センサ11から取得する。そして、信号処理部21は、算出式を用いて電気信号から測定対象の温度を算出する。算出式は、赤外線量に応じた電気信号から測定対象の温度を算出する式(関数)である。ここで、赤外線センサ11は温度特性が大きい。そのため、算出式は赤外線センサ11の温度に応じた修正項を含む。算出式は、例えば以下の式(1)で示される。
【0028】
【0029】
ここで、Tobjは測定対象の温度である。CNVは変換用の関数であることを示し、例えば4次以上の多項式であり得る。Tsは赤外線センサ11の温度である。また、G及びFは、CNV内で用いられる修正項に対応する関数である。Ipは赤外線センサ11からの電気信号である。また、αとβは算出式における係数である。αはゲインに対応する。また、βはオフセットに対応する。
【0030】
温度測定部22は、赤外線センサ11の温度を測定する。温度測定部22は、測定した温度を示す信号である温度情報を出力する。温度情報は、直接的に温度を示してよいし、温度に応じた値(一例として温度に比例して変化する電圧値)であってよい。温度測定部22は、特定の種類に限定されず、公知の構成のものが用いられてよい。温度測定部22は、例えば演算制御装置20に集積される半導体のダイオード順方向電圧Vfの温度係数を利用した温度センサを含んで構成されてよい。
【0031】
図3に示すように、赤外線センサ11と演算制御装置20とが積層されて配置されている。ここで、演算制御装置20の赤外線センサ11に接する主面は、以下において、第1面81と称される。また、演算制御装置20の第1面81とは反対側の主面は、第2面82と称される。温度測定部22は、赤外線センサ11の温度を正確に測定できるように、第1面81の近くに配置されてよい。つまり、温度測定部22は、演算制御装置20に含まれて、赤外線センサ11と近接するように設けられてよい。赤外線センサ11において受光素子が第1面81に対向するように設けられており、入光した赤外線に応じた電気信号が、受光素子のある第1面81側の面と対向した面から出力される。出力された電気信号は、赤外線センサ11の出力用電極PADを介して、演算制御装置20の入力用電極PADに出力される。演算制御装置20の入力用電極PADは第1面81に設けられ、接続用バンプ等で赤外線センサ11の出力用電極PADと接続されてよい。このように、赤外線センサ11と演算制御装置20とが、受光素子と温度測定部22とが近接し向かい合うように積層されることが好ましい。
【0032】
補正処理部23は、温度補正を実行して、測定対象の温度の算出で用いられる算出式の係数を補正する。温度補正は、上記のように、例えば赤外線モジュール10又は電子機器の製造出荷時などに実行されてよい。温度補正の詳細については後述する。
【0033】
記憶部24は、1つ以上のメモリである。メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等であるが、これらに限られず任意のメモリとすることができる。記憶部24は、演算制御装置20が実行する各種の処理において使用される各種のデータを記憶する。また、記憶部24は、演算制御装置20が実行する各種の算出の結果及び中間データを記憶してよい。
【0034】
本実施形態において、記憶部24は測定対象の温度の算出で用いられる算出式を記憶する。補正処理部23は、算出式の係数を補正した場合に、補正後の係数を記憶部24に記憶させる。また、記憶部24は、演算制御装置20を信号処理部21、温度測定部22及び補正処理部23として機能させるためのプログラムを記憶してよい。
【0035】
通信部25は、赤外線モジュール10の外部にある装置(以下、外部装置)と通信するために、1つ以上の通信モジュールを含んで構成される。本実施形態において、外部装置は、温度補正を実行する場合に発熱体60を発熱させて、測定対象を設定された温度にするコントローラを含んでよい。温度補正において、測定対象として黒体が使用されて、コントローラが黒体の温度を例えば30℃と45℃とに調整してよい。本実施形態において、通信部25は、コントローラと通信するためのI2Cの通信モジュールを含む。通信部25は、他の外部装置と通信するために、I2Cの他に、移動体通信規格、無線のLAN規格又は有線のLAN規格に対応する通信モジュールを含んでよい。
【0036】
発熱体60は、発熱によって赤外線センサ11の温度を調整する。発熱体60は、第2面82の近傍に設けられ、演算制御装置20を介して赤外線センサ11の温度を上昇させることができる。ここで、演算制御装置20に実装されている温度測定部22は第1面81にあるので、赤外線センサ11に近接していて、より正確な赤外線センサ11の温度を測定することができる。
【0037】
ここで、
図3に示すように、基板70の演算制御装置20に近い方の主面は、以下において、表面71と称される。また、基板70の表面71とは反対側の主面(演算制御装置20から遠い方の主面)は、裏面72と称される。本実施形態において、発熱体60は、基板70の第2面82に接する面、すなわち、表面71に設けられた配線である。ただし、発熱体60は、基板70上の配線に限定されない。
【0038】
図4は発熱体60の一構成例を説明するための図である。
図4の左図は、基板70の表面71における電気的接続及び発熱体60を示す。また、
図4の右図は、基板70の裏面72の端子などを示す。基板70の表面71では、演算制御装置20の第1面81の端子との間でワイヤボンディング等により電気的接続が行われる。FVDD、VDD及びVSSは電源に関する信号を示す。また、INTN、SDA及びSCLは通信に関する信号を示す。赤外線モジュール10としての各信号の端子は、
図4の右図のように配置されており、例えば外部装置と接続されて信号の送受信が行われる。ここで、「P1」は発熱体60を発熱させる電流を流すための端子であり、温度補正を実行する場合に上記のコントローラがP1に電流を流すことによって発熱体60が発熱する。
図4の例において、発熱体60はP1とVSSとをつなぐが、P1と基板70が有する別の電源端子(例えばVDD)又は他の信号の端子(例えばINTN)とをつないでよい。また、発熱体60は、赤外線センサ11及び演算制御装置20を透過させた平面視で、赤外線センサ11を横切るように設けられる。また、発熱体60は、流れる電流を大きくして発熱量を増やすために、他の信号線より太い配線が用いられる。
【0039】
図5は発熱体60の別の構成例を説明するための図である。発熱体60に電流を流すための端子は、
図4のように1つに限定されず、複数であってよい。
図5の例では、発熱体60を発熱させる電流を流すための端子として、P1及びP2の2つが設けられている。ただし、発熱体60に電流を流すための端子は、3つ以上であってよい。
図5の左図のように、発熱体60はP1とP2とを接続するように分岐しており、発熱する領域が
図4の例に比べて拡大している。そのため、さらに効率よく、赤外線センサ11の温度を上昇させることが可能になる。
【0040】
基板70は、本実施形態においてLGA(Land Grid Array)基板であるが、これに限定されない。基板70は、例えばBGA(Ball Grid Array)基板などであってよい。
【0041】
ここで、本実施形態において、赤外線センサ11と演算制御装置20とが積層されてパッケージ化されており、z軸方向について熱の伝導性が高い。そのため、発熱体60に大きな電流を流さなくても、赤外線センサ11の温度を十分早く上昇させることが可能である。z軸方向についての熱抵抗値は一例として50℃/W~100℃/Wであって、0.1~0.2Wの電力を供給することで、赤外線センサ11の温度を10℃程度上昇させることが可能である。
【0042】
図6は、本実施形態に係る赤外線モジュール10の補正方法の処理を示すフローチャートである。赤外線モジュール10の補正方法は、例えば温度補正を実行するための外部装置である上記のコントローラが赤外線モジュール10と接続され、I2Cによる通信によってコントローラから開始信号が送信されたタイミングで開始されてよい。
【0043】
補正処理部23は、発熱体60の発熱によって赤外線センサ11の温度が所定値になるまで待機する(ステップS1のNo)。赤外線センサ11の温度は、温度測定部22からの温度情報に基づいて得られる。補正処理部23は、赤外線センサ11の温度が所定値になった場合に(ステップS1のYes)、測定対象から放射される赤外線を検出した第1の検出値を取得する(ステップS2)。ここで、赤外線を検出した検出値を赤外線検出値と、温度を検出した検出値を温度検出値と称することがある。温度検出値は、上記のように温度測定部22から出力される。
【0044】
補正処理部23は、コントローラによって測定対象の温度が変更されるまで待機する(ステップS3のNo)。測定対象の温度の変更はコントローラとのI2Cによる通信によって把握可能である。補正処理部23は、測定対象の温度が変更された後で(ステップS3のYes)、発熱体60の発熱によって赤外線センサ11の温度が所定値になるまで待機する(ステップS4のNo)。補正処理部23は、赤外線センサ11の温度が所定値になった場合に(ステップS4のYes)、測定対象から放射される赤外線を検出した第2の検出値を取得する(ステップS5)。
【0045】
補正処理部23は、第1の検出値及び第2の検出値に基づいて温度補正を実行する(ステップS6)。温度補正は、上記の算出式(式(1))における係数を変更することで行われる。赤外線センサ11の温度の所定値が「C」であるとする。また、第1の検出値(Ip1)に基づく測定対象の温度がTobj1であるとする。また、第2の検出値(Ip2)に基づく測定対象の温度がTobj2であるとする。このとき、以下の式(2)及び式(3)が得られる。
【0046】
【0047】
補正処理部23は、式(2)及び式(3)から、αを求めることによって、温度補正を実行することができる。また、赤外線センサ11の温度の所定値を「C」と異なる値として、同様の処理を実行することによって、βを求めることができる。このように、演算制御装置20が、以下の3つの処理を含む補正方法を実行してよい。まず、演算制御装置20は第1処理として、環境の温度又は発熱体60の発熱によって赤外線センサ11の温度が第1の所定値になった場合に、測定対象から放射される赤外線を検出した第1の赤外線検出値及び温度測定部22の第1の温度検出値を取得する。演算制御装置20は第2処理として、発熱体60の発熱によって赤外線センサ11の温度が第2の所定値になった場合に、測定対象から放射される赤外線を検出した第2の赤外線検出値及び温度測定部22の第2の温度検出値を取得する。演算制御装置20は第3処理として、第1の赤外線検出値及び第1の温度検出値及び第2の赤外線検出値及び第2の温度検出値に基づいて温度補正を実行する。
【0048】
図7は、赤外線モジュール10の実装例を示す。非接触温度計としての赤外線モジュール10はイヤホン筐体内に
図7のように実装される。筐体は、壁部41及びPCB基板43を含んで構成されてよい。窓材30は人体の肌に直接触れないようにイヤホン40の筐体から少し内側に設置されてよい。赤外線モジュール10は測定対象以外の部位のからの赤外線が入光されないように視野角制限体42を上部に設置してよい。実際に人体に触れるイヤホン40の筐体及び窓材30から空間を設け、赤外線モジュール10の温度が人体に影響されにくい構造であってよい。
【0049】
以上のように、本実施形態に係る赤外線モジュール10及び赤外線モジュール10の補正方法は、上記の構成及び処理によって、容易に赤外線センサ11の温度を調整することができる。
【0050】
本開示の実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部などに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部などを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0051】
上記の実施形態において、発熱体60は、赤外線センサ11、演算制御装置20及び基板70とともにパッケージ化されるとしたが、赤外線モジュール10が基板70を含まない構成であってよい。この場合に、発熱体60は、第2面82の近傍に設けられればよく、例えば第2面82にある配線であってよいし、第1面81の側にある演算制御装置20の内部を通る配線であってよい。ここで、第2面82にある配線は例えば再配線RDL(Redistribution Layer)であってよい。若しくは発熱体60がPCB基板43上の配線であってよい。演算制御装置20の内部を通る配線は、例えばIC内の配線であってよい。IC内の配線の場合、流れる電流を大きくして発熱量を増やすために、他の信号線より太い配線が用いられる。
【符号の説明】
【0052】
10 赤外線モジュール
11 赤外線センサ
20 演算制御装置
21 信号処理部
22 温度測定部
23 補正処理部
24 記憶部
25 通信部
30 窓材
40 イヤホン
41 壁部
42 視野角制限体
43 PCB基板
60 発熱体
70 基板
71 表面
72 裏面
81 第1面
82 第2面