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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055176
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】縮小装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 19/63 20140101AFI20240411BHJP
   H04N 19/124 20140101ALI20240411BHJP
   H04N 19/176 20140101ALI20240411BHJP
【FI】
H04N19/63
H04N19/124
H04N19/176
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161888
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(71)【出願人】
【識別番号】591053926
【氏名又は名称】一般財団法人NHKエンジニアリングシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】松尾 康孝
【テーマコード(参考)】
5C159
【Fターム(参考)】
5C159KK27
5C159LA02
5C159LC09
5C159MA04
5C159MA05
5C159MA21
5C159MA32
5C159MA41
5C159MC11
5C159ME01
5C159PP04
5C159RC11
5C159TA46
5C159TB08
5C159TC28
5C159TC38
5C159TD03
5C159TD05
5C159TD06
5C159TD12
5C159UA02
5C159UA05
5C159UA11
(57)【要約】
【課題】高画質な縮小画像を生成する。
【解決手段】縮小装置1は、原画像に対して位相情報を保持しながら周波数分解を行い、周波数帯域成分を生成する周波数分解部11と、周波数帯域成分の各画素位置において、全周波数帯域のパワーに対する所定の制限高周波数帯域のパワー割合を算出する高周波数帯域パワー割合算出部12と、制限高周波数帯域のパワー値を減衰させて帯域制限を行い、縮退周波数帯域成分を生成する帯域制限部13と、縮退周波数帯域成分に対して周波数再構成を行い、縮退画像を生成する周波数再構成部14と、縮退画像の縮小画像を生成する空間解像度縮小部15と、縮小画像に対して符号化処理を行い、符号化ブロック毎に符号化に用いられた量子化パラメータを抽出する符号化情報抽出部16と、を備え、帯域制限部13は、パワー割合及び量子化パラメータの値に応じて、パワー値の減衰量を変化させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原画像の縮小画像を生成する縮小装置であって、
前記原画像に対して位相情報を保持しながら周波数分解を行い、周波数帯域成分を生成する周波数分解部と、
前記周波数帯域成分の各画素位置において、全周波数帯域のパワーに対する、所定の制限高周波数帯域のパワー割合を算出する高周波数帯域パワー割合算出部と、
前記周波数帯域成分の前記制限高周波数帯域のパワー値を減衰させて帯域制限を行い、成分が縮退された縮退周波数帯域成分を生成する帯域制限部と、
前記縮退周波数帯域成分に対して周波数再構成を行い、前記原画像と同じサイズの縮退画像を生成する周波数再構成部と、
前記縮退画像の空間解像度を縮小した縮小画像を生成する空間解像度縮小部と、
前記縮小画像に対して符号化処理を行い、符号化ブロック毎に、符号化に用いられた量子化パラメータを抽出する符号化情報抽出部と、を備え、
前記帯域制限部は、前記パワー割合及び前記量子化パラメータの値に応じて、前記パワー値の減衰量を変化させる、縮小装置。
【請求項2】
前記帯域制限部、前記周波数再構成部、及び前記空間解像度縮小部は、前記量子化パラメータの値が閾値以下、あるいは前記量子化パラメータの減少度合いが閾値以下になるまで繰り返し処理を行う、請求項1に記載の縮小装置。
【請求項3】
前記帯域制限部は、1周目の処理においては、前記パワー値の減衰量を所定値とし、2周目以降の処理においては、前記パワー割合が大きく、かつ前記量子化パラメータが大きいほど、前記減衰量を大きくする、請求項2に記載の縮小装置。
【請求項4】
被符号化ブロックにおける前記パワー割合と前記被符号化ブロックの周囲の符号化ブロックにおける前記パワーの割合の差分が大きく、かつ前記被符号化ブロックにおける前記量子化パラメータと前記周囲の符号化ブロックにおける前記量子化パラメータの差分値が大きいほど、該差分値を小さくするように前記被符号化ブロックの前記量子化パラメータの値を補正するパラメータ補正部を更に備える、請求項3に記載の縮小装置。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1から4のいずれか一項に記載の縮小装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮小装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
H.265/HEVC(High Efficiency Video Coding),H.266/VVC(Versatile Video Coding)などの映像符号化方式では、ブロック分割、直交変換、量子化、エントロピー符号化、イントラ予測、インター予測などの要素技術を組み合わせて高効率化を実現している。H.265/HEVCの技術の詳細については、例えば非特許文献1に詳細に記載されている。
【0003】
また、特許文献1には、原画像の解像度及び階調数を削減した空間・階調削減画像を符号化した符号化信号を出力する符号化装置が開示されている。具体的には、この符号化装置は、原画像の階調数及び解像度を削減した空間・階調削減画像群を生成し、該空間・階調削減画像群をそれぞれ符号化して符号化信号群を生成するとともに、該符号化信号群をそれぞれ局部復号した局部復号画像群を生成する。次に、局部復号画像群をそれぞれ解像度及び階調数が原画像と等しくなるように復元した空間・階調復元画像群を生成する。そして、空間・階調復元画像群と原画像とを比較し、誤差が最小となる空間・階調復元画像の生成に用いられたパラメータを決定し、最終的に該パラメータを用いて生成された空間・階調削減画像を符号化した符号化信号を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6388476号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】大久保榮監修、「インプレス標準教科書シリーズ H.265/HEVC教科書」、株式会社インプレスジャパン、2013年10月21日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術では、原画像の符号化ブロック毎の帯域制限量及び符号化パラメータの両方を最適化するということは行われていなかったため、縮小画像を符号化した際に、ブロック歪などのアーティファクトが発生し、画質が劣化することがあった。
【0007】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、高画質な縮小画像を生成することが可能な縮小装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る縮小装置は、原画像の縮小画像を生成する縮小装置であって、前記原画像に対して位相情報を保持しながら周波数分解を行い、周波数帯域成分を生成する周波数分解部と、前記周波数帯域成分の各画素位置において、全周波数帯域のパワーに対する、所定の制限高周波数帯域のパワー割合を算出する高周波数帯域パワー割合算出部と、前記周波数帯域成分の前記制限高周波数帯域のパワー値を減衰させて帯域制限を行い、成分が縮退された縮退周波数帯域成分を生成する帯域制限部と、前記縮退周波数帯域成分に対して周波数再構成を行い、前記原画像と同じサイズの縮退画像を生成する周波数再構成部と、前記縮退画像の空間解像度を縮小した縮小画像を生成する空間解像度縮小部と、前記縮小画像に対して符号化処理を行い、符号化ブロック毎に、符号化に用いられた量子化パラメータを抽出する符号化情報抽出部と、を備え、前記帯域制限部は、前記パワー割合及び前記量子化パラメータの値に応じて、前記パワー値の減衰量を変化させる。
【0009】
さらに、本発明に係る縮小装置において、前記帯域制限部、前記周波数再構成部、及び前記空間解像度縮小部は、前記量子化パラメータの値が閾値以下、あるいは前記量子化パラメータの減少度合いが閾値以下になるまで繰り返し処理を行ってもよい。
【0010】
さらに、本発明に係る縮小装置において、前記帯域制限部は、1周目の処理においては、前記パワー値の減衰量を所定値とし、2周目以降の処理においては、前記パワー割合が大きく、かつ前記量子化パラメータが大きいほど、前記減衰量を大きくしてもよい。
【0011】
さらに、本発明に係る縮小装置において、被符号化ブロックにおける前記パワー割合と前記被符号化ブロックの周囲の符号化ブロックにおける前記パワーの割合の差分が大きく、かつ前記被符号化ブロックにおける前記量子化パラメータと前記周囲の符号化ブロックにおける前記量子化パラメータの差分値が大きいほど、該差分値を小さくするように前記被符号化ブロックの前記量子化パラメータの値を補正するパラメータ補正部を更に備えてもよい。
【0012】
また、上記課題を解決するため、本発明に係るプログラムは、コンピュータを、上記縮小装置として機能させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高画質な縮小画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態に係る縮小装置の構成例を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る縮小装置におけるウェーブレットパケット分解の様子を示す図である。
図3】第2の実施形態に係る縮小装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る縮小装置の構成例を示すブロック図である。図1に示す縮小装置1は、周波数分解部11と、高周波数帯域パワー割合算出部12と、帯域制限部13と、周波数再構成部14と、空間解像度縮小部15と、符号化情報抽出部16と、を備える。
【0017】
縮小装置1は、原画像を入力し、原画像(入力画像)の空間解像度を縮小した縮小画像を生成して出力する。縮小装置1は、例えば8K解像度で撮影された原画像を4K解像度に縮小して放送する場合などに、画像符号化のプリ処理として用いることができる。
【0018】
周波数分解部11は、原画像に対して位相情報を保持しながら(すなわち、画像サイズの縮小を伴うデシメーション処理を伴わないで)、空間方向の周波数分解を行い、空間周波数帯域毎のパワー成分(以下、「周波数帯域成分」という。)を生成する。各成分はパワースペクトルを示す。そして、周波数分解部11は、生成した周波数帯域成分を高周波数帯域パワー割合算出部12及び帯域制限部13に出力する。
【0019】
本実施形態では、周波数分解部11は、周波数帯域分解としてウェーブレットパケット分解を行う。ウェーブレットパケット分解では、空間方向に均等に周波数分解を行う。すなわち、低周波帯域のみならず高周波帯域についても周波数分解を行う。なお、ウェーブレットフィルタ及び空間分解階層数は、ユーザが任意に設定可能である。
【0020】
図2は、周波数分解部11によるウェーブレットパケット分解の様子を示す図である。図2(a)は、4K×4Kの解像度の原画像を空間方向に3階ウェーブレットパケット分解して、1K×1K毎の空間周波数帯域に分解した様子を示している。XXで示す各周波数帯域は、それぞれLL,LH,HL,HHの4つの周波数帯域により構成される。周波数分解部11が、デシメーション無しのウェーブレットパケット分解を用いて周波数帯域分解を行った場合、各周波数帯域内の空間方向の要素数は4K×4K個となる。また、図2(b)に示すように、各周波数帯域XX~XX16は全て原画像と同じサイズとなる。
【0021】
高周波数帯域パワー割合算出部12は、帯域制限を行う所定の高周波数帯域(以下、「制限高周波数帯域」という。)を示す帯域制限情報を、縮小装置1の外部から取得する。そして、高周波数帯域パワー割合算出部12は、周波数分解部11から入力した周波数帯域成分の各画素位置(x,y)において、全周波数帯域に対する、制限高周波数帯域のパワーの割合(以下、「高周波数帯域パワー割合」という。)Ph(x,y)を算出する。そして、高周波数帯域パワー割合算出部12は、算出した高周波数帯域パワー割合Ph(x,y)を帯域制限部13に出力する。
【0022】
帯域制限情報は、帯域制限される下限の周波数(帯域制限周波数)frであってもよいし、帯域制限される下限の階層(帯域制限階層)Nrであってもよい。例えば、原画像が4K×4Kの解像度で、帯域制限階層Nrが2K×2Kの解像度の階層の場合、図2に示した例ではXX~XX16が制限高周波数帯域となる。
【0023】
符号化情報抽出部16は、後述する空間解像度縮小部15により生成された縮小画像に対して符号化処理を行い、符号化ブロック毎に、符号化に用いられた符号化情報を抽出する。そして、符号化情報抽出部16は、符号化情報を帯域制限部13に出力する。本実施形態では、VVC/H.266を用いて符号化処理を行い、符号化ブロックとして符号化ユニットCU(Coding Unit))を用い、符号化情報として符号化ユニットCU毎の量子化パラメータQp(Quantization parameter)を抽出する。
【0024】
帯域制限部13は、高周波数帯域パワー割合算出部12から入力した周波数帯域成分の各画素位置(x,y)において、制限高周波数帯域のパワー値を減衰させて帯域制限を行い、成分が縮退(制限)された縮退周波数帯域成分を生成する。そして、帯域制限部13は、生成した縮退周波数帯域成分を周波数再構成部14に出力する。
【0025】
周波数再構成部14は、帯域制限部13により生成された縮退周波数帯域成分に対して、周波数再構成(例えば、ウェーブレットパケット逆分解)を行い、原画像と同じサイズの縮退画像を生成する。そして、周波数再構成部14は、生成した縮退画像を空間解像度縮小部15に出力する。
【0026】
空間解像度縮小部15は、縮小画像の空間解像度(縮小画像解像度)を示す縮小情報を、縮小装置1の外部から取得する。そして、空間解像度縮小部15は、周波数再構成部14から入力した縮退画像の空間解像度を縮小画像解像度に縮小した縮小画像を生成する。そして、空間解像度縮小部15は、生成した縮小画像を縮小装置1の外部及び符号化情報抽出部16に出力する。縮小情報は、縮小画像解像度に対応する縮小階層Nsであってもよい。空間解像度縮小部15は、例えば縮退画像の画素を間引いて縮小画像を生成する。なお、縮小率が整数分の1倍ではない場合にはNearest neighbor,Bicubic,Lanczos-3などの補間内挿フィルタを使用でき、補間内挿フィルタの種類はユーザが指定してもよい。
【0027】
帯域制限部13は、2周目以降の処理においては、高周波数帯域パワー割合Ph(x,y)と、画素位置(x,y)の属する符号化ユニットCUの量子化パラメータQp(i,j)の値に応じて、制限高周波数帯域のパワー値の減衰量を変化させる。
【0028】
好適には、帯域制限部13、周波数再構成部14、及び空間解像度縮小部15は、上記の帯域制限、周波数再構成、及び画像縮小という処理を繰り返し行う。2週目以降の処理では、符号化情報抽出部16から符号化ユニットCU毎の量子化パラメータを取得し、量子化パラメータに応じて帯域制限量を変化させる。量子化パラメータの値が閾値以下になった場合、あるいは量子化パラメータの減少度合いが閾値以下になった場合には繰り返し処理を終了し、最後に生成した縮小画像を縮小装置1の外部に出力する。なお、繰り返し処理において、符号化ユニットCUのサイズは変更しないものとする。繰り返し処理を行う際の帯域制限部13の処理の具体例について、以下に説明する。
【0029】
帯域制限部13は、1周目の処理においては、制限高周波数帯域のパワー値の減衰量を所定値とし、2周目以降の処理においては、高周波数帯域パワー割合Ph(x,y)が大きく、かつ量子化パラメータQpが大きいほど、設定する符号化圧縮率に対して空間解像度縮小が十分ではないとして、減衰量を大きくする。例えば、帯域制限部13は、1周目の処理においては、制限高周波数帯域のパワー値に、予め定めた減衰係数(例えばSc=0.01(パワーとして20dBの減衰に相当))を乗算することで、帯域制限を行う。帯域制限部13は、2周目以降の処理においては、原画像の高周波数帯域パワー割合Ph(x,y)が大きく、画素位置(x,y)の属する符号化ユニットCUの量子化パラメータQp(i,j)が大きいほど、減衰係数Svの値を小さく(すなわち、減衰量を大きく)設定する。
【0030】
表1に高周波数帯域パワー割合Ph(x,y)と減衰係数Sv1の値の例を示し、表2にQp(i,j)と減衰係数Sv2の値の例を示す。例えば、帯域制限部13は、2周目以降の処理においては、画素位置(x,y)における制限高周波数帯域のパワー値に、高周波数帯域パワー割合Ph(x,y)に応じた減衰係数Sv1、及び量子化パラメータQp(i,j)に応じた減衰係数Sv2を乗算することで、帯域制限を行う。
【0031】
【表1】
【表2】
【0032】
上述したように、縮小装置1は、符号化ブロック毎の帯域制限量及び符号化パラメータの両方を最適化する。そのため、縮小装置1によれば、高品質な縮小画像を生成することが可能となる。また、縮小装置1により生成した縮小画像を符号化することで、ブロック歪などの符号化アーティファクトを抑制した、高圧縮かつ高画質の符号化画像を生成することが可能となる。
【0033】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る縮小装置について説明する。
【0034】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る縮小装置の構成例を示すブロック図である。図3に示す縮小装置2は、周波数分解部11と、高周波数帯域パワー割合算出部12と、帯域制限部13と、周波数再構成部14と、空間解像度縮小部15と、符号化情報抽出部16と、パラメータ補正部17と、を備える。第2の実施形態に係る縮小装置2は第1の実施形態に係る縮小装置1と比較して、パラメータ補正部17を更に備える点が相違する。その他の構成については第1の実施形態と同一であるため、同一の参照番号を付して適宜説明を省略する。
【0035】
帯域制限部13は、高周波数帯域パワー割合Ph(x,y)及び量子化パラメータQp(i,j)をパラメータ補正部17に出力する。
【0036】
パラメータ補正部17は、被符号化ユニットCUにおける高周波数帯域パワー割合Phと被符号化ユニットCUの周囲の符号化ユニットCUにおける高周波数帯域パワー割合Phの差分が大きく、かつ被符号化ユニットCUにおける量子化パラメータQpと周囲の符号化ユニットCUにおける量子化パラメータQpの差分値が大きいほど、被符号化ユニットCUの部分的な画質劣化が目立つことを防ぐために、該差分値を小さくするように被符号化ユニットCUの量子化パラメータQpの値を補正する。すなわち、符号化パラメータの均等化を行う。そして、パラメータ補正部17は、補正後の量子化パラメータQp’を帯域制限部13に出力する。
【0037】
パラメータ補正部17の処理の一例を示す。パラメータ補正部17は、被符号化ユニットCU1内の全ての画素位置(x,y)における高周波数帯域パワー割合Ph1(x,y)の平均値P1を算出する。また、パラメータ補正部17は、被符号化ユニットCU1の周囲の符号化ユニットCU2内の全ての画素位置(x,y)における高周波数帯域パワー割合Ph2(x,y)の平均値P2を算出する。符号化ユニットCU2は、例えば被符号化ユニットCU1と同一のコーディングツリーユニットCTU(Coding Tree Unit)に属する他の符号化ユニットである。そして、パラメータ補正部17は、P1とP2の差分が大きく、かつ被符号化ユニットCU1における量子化パラメータQp1とその周囲の符号化ユニットCU2における量子化パラメータQp2の差分値が大きいほど、該差分値を小さくするように被符号化ユニットCU1の量子化パラメータQp1を補正する。
【0038】
パラメータ補正部17は、上記のP1とP2の差分が閾値(例えば、P1又はP2の5%以上)、かつ上記のQp1とQp2の差分|Qp1-Qp2|が閾値(例えば、3)以上の場合は、|Qp1-Qp2|が小さく(例えば、半分に)なるようにQp1をQp’に補正する。例えば、Qp1=16,Qp2=10であれば、Qp’=13とする。端数は四捨五入してよい。
【0039】
符号化情報抽出部16は、1周目の処理では、空間解像度縮小部15から入力した帯域制限縮小画像に対して符号化処理を行い、符号化ユニットCU毎に、量子化パラメータQpを抽出する。符号化情報抽出部16は、2周目以降の処理では、空間解像度縮小部15から入力した帯域制限縮小画像に対して、パラメータ補正部17から入力した量子化パラメータQp’を用いて符号化処理を行い、符号化情報として、符号化ユニットCU毎の量子化パラメータQPを抽出する。
【0040】
上述したように、縮小装置2は、縮小装置1の構成に加えて、被符号化ユニットCUにおける高周波数帯域パワー割合Phと被符号化ユニットCUの周囲の符号化ユニットCUにおける高周波数帯域パワー割合Phの差分が大きく、かつ被符号化ユニットCUにおける量子化パラメータQpと周囲の符号化ユニットCUにおける量子化パラメータQpの差分値が大きいほど、該差分値を小さくするように被符号化ユニットCUの量子化パラメータQpの値を補正するパラメータ補正部17を備える。そのため、縮小装置2によれば、被符号化ユニットCUの部分的な画質劣化を抑制することができ、さらなる高画質化を図ることが可能となる。
【0041】
(プログラム)
上述した縮小装置1,2として機能させるために、それぞれプログラム命令を実行可能なコンピュータを用いることも可能である。ここで、コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、ワークステーション、PC(Personal Computer)、電子ノートパッドなどであってもよい。プログラム命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード、コードセグメントなどであってもよい。
【0042】
コンピュータは、プロセッサと、記憶部と、入力部と、出力部と、通信インターフェースとを備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、SoC(System on a Chip)などであり、同種又は異種の複数のプロセッサにより構成されてもよい。プロセッサは、記憶部からプログラムを読み出して実行することで、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。なお、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェアで実現することとしてもよい。入力部は、ユーザの入力操作を受け付けてユーザの操作に基づく情報を取得する入力インターフェースであり、ポインティングデバイス、キーボード、マウスなどである。出力部は、情報を出力する出力インターフェースであり、ディスプレイ、スピーカなどである。通信インターフェースは、外部の装置と通信するためのインターフェースであり、例えばLAN(Local Area Network)インターフェースである。
【0043】
プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。このような記録媒体を用いれば、プログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録された記録媒体は、非一過性(non-transitory)の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリなどであってもよい。また、このプログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0044】
例えば、縮小装置1として機能させるためのプログラムは、原画像に対して位相情報を保持しながら周波数分解を行い、周波数帯域成分を生成する周波数分解ステップと、周波数帯域成分の各画素位置において、全周波数帯域のパワーに対する、所定の制限高周波数帯域のパワー割合を算出する高周波数帯域パワー割合算出ステップと、周波数帯域成分の制限高周波数帯域のパワー値を減衰させて帯域制限を行い、成分が縮退された縮退周波数帯域成分を生成する帯域制限ステップと、縮退周波数帯域成分に対して周波数再構成を行い、原画像と同じサイズの縮退画像を生成する周波数再構成ステップと、縮退画像の空間解像度を縮小した縮小画像を生成する空間解像度縮小ステップと、縮小画像に対して符号化処理を行い、符号化ブロック毎に、符号化に用いられた量子化パラメータを抽出する符号化情報抽出ステップと、をコンピュータに実行させ、帯域制限ステップは、パワー割合及び量子化パラメータの値に応じて、パワー値の減衰量を変化させる。
【0045】
また、上述した縮小装置1,2は、1つ又は複数の半導体チップにより構成されてもよい。この半導体チップは、縮小装置1,2の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを実行するCPUを搭載してもよい。
【0046】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを統合したり、1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1,2 縮小装置
11 周波数分解部
12 高周波数帯域パワー割合算出部
13 帯域制限部
14 周波数再構成部
15 空間解像度縮小部
16 符号化情報抽出部
17 パラメータ補正部
図1
図2
図3