(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005527
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】車両用窓ガラス
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/32 20060101AFI20240110BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20240110BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01Q1/32 A
H01Q1/22 C
B60J1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105737
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 充俊
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 栄太
【テーマコード(参考)】
5J046
5J047
【Fターム(参考)】
5J046AA02
5J046AB17
5J046LA01
5J046LA05
5J046LA13
5J047AA02
5J047AB17
5J047EC02
(57)【要約】
【課題】所定周波数帯における電波を所望の利得で受信できる車両用窓ガラスを提供する。
【解決手段】車両用窓ガラス1は、ガラス板10と、ガラス板10に形成され、所定周波数帯の電波を受信可能なアンテナ30と、を有し、アンテナ30は、給電電極31と、給電電極31と接続して、第1方向と、第1方向とは反対向きの第2方向に分岐して、各々半ループ形状をなす、第1半ループエレメント40及び第2半ループエレメント50と、を有し、給電電極31から第1開放端41までの長さをL
1、給電電極31から第2開放端42までの長さをL
2、給電電極31から第3開放端51までの長さをL
3、給電電極31から第4開放端52までの長さをL
4、とするとき、L
1 > L
2、L
3 > L
4、の関係を満足する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板と、
前記ガラス板に形成され、所定周波数帯の電波を受信可能なアンテナと、を有し、
前記アンテナは、給電電極と、前記給電電極と接続して、第1方向と、前記第1方向とは反対向きの第2方向に分岐して、各々半ループ形状をなす、第1半ループエレメント及び第2半ループエレメントと、を有し、
前記第1半ループエレメントは、第1開放端と第2開放端と、を有し、
前記第2半ループエレメントは、第3開放端と第4開放端と、を有し、
前記給電電極から前記第1開放端までの長さをL1、
前記給電電極から前記第2開放端までの長さをL2、
前記給電電極から前記第3開放端までの長さをL3、
前記給電電極から前記第4開放端までの長さをL4、とするとき、
L1 > L2、
L3 > L4、
の関係を満足する、車両用窓ガラス。
【請求項2】
前記アンテナは、前記所定周波数帯の電波として、第1周波数帯の電波と、前記第1周波数帯よりも高い第2周波数帯の電波を受信可能である、請求項1に記載の車両用窓ガラス。
【請求項3】
前記第1周波数帯の電波の空気中の波長をλ1、前記第2周波数帯の電波の空気中の波長をλ2、前記ガラス板の波長短縮率をk、とするとき、
0.50×(1/4)×λ1×k ≦ L1 ≦ 2.0×(1/4)×λ1×k、
0.50×(1/4)×λ2×k ≦ L2 ≦ 3.0×(1/4)×λ2×k、
0.50×(1/4)×λ1×k ≦ L3 ≦ 2.0×(1/4)×λ1×k、
0.50×(1/4)×λ2×k ≦ L4 ≦ 3.0×(1/4)×λ2×k、
の関係を満足する、請求項2に記載の車両用窓ガラス。
【請求項4】
前記第1半ループエレメント及び前記第2半ループエレメントは、前記第1方向及び前記第2方向と異なる第3方向に延伸する形状を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項5】
前記第1半ループエレメントの前記給電電極から前記第2開放端までの部分と、前記第2半ループエレメントの前記給電電極から前記第4開放端までの部分は、前記第3方向に延伸するエレメントを含む、請求項4に記載の車両用窓ガラス。
【請求項6】
前記第1半ループエレメントは、前記第1方向又は前記第2方向のいずれか一方の向きに開口する第1切り欠き部を有し、
前記第2半ループエレメントは、前記第1切り欠き部と同一の向きに開口する第2切り欠き部を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項7】
前記第1半ループエレメントは、前記第1方向又は前記第2方向のいずれか一方の向きに開口する第1切り欠き部を有し、
前記第2半ループエレメントは、前記第1切り欠き部と反対向きに開口する第2切り欠き部を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項8】
前記第1半ループエレメントの前記第1切り欠き部と反対側の部分と、前記第2半ループエレメントの前記第2切り欠き部と反対側の部分は、共通のエレメントである、請求項7に記載の車両用窓ガラス。
【請求項9】
前記第1半ループエレメントの前記給電電極から前記第1開放端までの部分、及び、前記第2半ループエレメントの前記給電電極から前記第3開放端までの部分、の少なくとも一方は、折り返し部を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項10】
前記折り返し部は、前記第1方向及び前記第2方向と異なる第3方向と、反対向きの第4方向に延伸する部分を含む、請求項9に記載の車両用窓ガラス。
【請求項11】
前記第1開放端及び前記第3開放端の少なくとも一方は、前記第4方向の先端に位置する、請求項10に記載の車両用窓ガラス。
【請求項12】
前記第1半ループエレメントのうち、前記折り返し部において、前記第4方向に延伸する長さをL5とし、
前記第2半ループエレメントのうち、前記折り返し部において、前記第4方向に延伸する長さをL9とするとき、
0.50×(1/4)×λ2×k ≦ L5 ≦ 2.0×(1/4)×λ2×k、
0.50×(1/4)×λ2×k ≦ L9 ≦ 2.0×(1/4)×λ2×k、
を満足する、請求項10に記載の車両用窓ガラス。
【請求項13】
前記第1半ループエレメントの前記給電電極から前記第1開放端までの部分、及び、前記第2半ループエレメントの前記給電電極から前記第3開放端までの部分、の少なくとも一方は、クランク部を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項14】
前記クランク部は、前記第1方向及び前記第2方向と交差する第3方向に延伸する部分を含む、請求項13に記載の車両用窓ガラス。
【請求項15】
前記第1開放端及び前記第3開放端の少なくとも一方は、前記第3方向の先端に位置する、請求項14に記載の車両用窓ガラス。
【請求項16】
前記第1半ループエレメントのうち、前記クランク部の折れ曲がり後に前記第3方向に延伸する長さをL13とし、
前記第2半ループエレメントのうち、前記クランク部の折れ曲がり後に前記第3方向に延伸する長さをL14とするとき、
0.50×(1/4)×λ2×k ≦ L13 ≦ 2.0×(1/4)×λ2×k、
0.50×(1/4)×λ2×k ≦ L14 ≦ 2.0×(1/4)×λ2×k、
を満足する、請求項14に記載の車両用窓ガラス。
【請求項17】
前記ガラス板に、接地電極を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項18】
前記接地電極と接続される、接地エレメントを有し、
前記接地エレメントは、前記第1方向又は前記第2方向に延伸する、請求項17に記載の車両用窓ガラス。
【請求項19】
前記第1周波数帯は、FM放送波の周波数帯である、請求項2又は3に記載の車両用窓ガラス。
【請求項20】
前記第2周波数帯は、地上デジタル放送波の周波数帯である、請求項2又は3に記載の車両用窓ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車は、AM放送波、FM放送波、欧州規格のDAB(Digital Audio Broadcasting)のBand III、地上デジタル放送波等の様々な周波数帯の電波を受信できるアンテナが形成された窓ガラスを備えている。
【0003】
このように窓ガラスの開口部に形成されるアンテナは、窓ガラスの開口部の面積に合わせて所定の受信感度が得られるパターンが形成されている。例えば、自動車のリアガラスには、防曇・防氷のためにガラスを加熱する電熱線を有するデフォッガが配置され、デフォッガ領域とは異なる開口部の領域に、所定周波数帯の電波において所定感度が得られるためのアンテナパターンが形成されている。
【0004】
以下の特許文献1には、DABアンテナとFMアンテナを、リアガラスのデフォッガ上部の余白部に配設した例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術のように、様々なアンテナをガラス板に集約させると、スペースの関係からアンテナエレメントを配置する領域も限られ、必ずしも所定の周波数帯における受信利得を高められない場合があった。
【0007】
本発明は、従来のガラス板に形成されるアンテナパターンとは異なるアンテナパターンで、所定周波数帯における電波を所望の利得で受信できる車両用窓ガラスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の構成を備える。
[1]ガラス板と、前記ガラス板に形成され、所定周波数帯の電波を受信可能なアンテナと、を有し、前記アンテナは、給電電極と、前記給電電極と接続して、第1方向と、前記第1方向とは反対向きの第2方向に分岐して、各々半ループ形状をなす、第1半ループエレメント及び第2半ループエレメントと、を有し、前記第1半ループエレメントは、第1開放端と第2開放端と、を有し、前記第2半ループエレメントは、第3開放端と第4開放端と、を有し、前記給電電極から前記第1開放端までの長さをL1、前記給電電極から前記第2開放端までの長さをL2、前記給電電極から前記第3開放端までの長さをL3、前記給電電極から前記第4開放端までの長さをL4、とするとき、L1 > L2、L3 > L4、の関係を満足する、車両用窓ガラス。
【0009】
[2]前記アンテナは、前記所定周波数帯の電波として、第1周波数帯の電波と、前記第1周波数帯よりも高い第2周波数帯の電波を受信可能である、[1]に記載の車両用窓ガラス。
【0010】
[3]前記第1周波数帯の電波の空気中の波長をλ1、前記第2周波数帯の電波の空気中の波長をλ2、前記ガラス板の波長短縮率をk、とするとき、0.50×(1/4)×λ1×k ≦ L1 ≦ 2.0×(1/4)×λ1×k、0.50×(1/4)×λ2×k ≦ L2 ≦ 3.0×(1/4)×λ2×k、0.50×(1/4)×λ1×k ≦ L3 ≦ 2.0×(1/4)×λ1×k、0.50×(1/4)×λ2×k ≦ L4 ≦ 3.0×(1/4)×λ2×k、の関係を満足する、[2]に記載の車両用窓ガラス。
【0011】
[4]前記第1半ループエレメント及び前記第2半ループエレメントは、前記第1方向及び前記第2方向と異なる第3方向に延伸する形状を有する、[1]から[3]のいずれかに記載の車両用窓ガラス。
【0012】
[5]前記第1半ループエレメントの前記給電電極から前記第2開放端までの部分と、前記第2半ループエレメントの前記給電電極から前記第4開放端までの部分は、前記第3方向に延伸するエレメントを含む、[4]に記載の車両用窓ガラス。
【0013】
[6]前記第1半ループエレメントは、前記第1方向又は前記第2方向のいずれか一方の向きに開口する第1切り欠き部を有し、前記第2半ループエレメントは、前記第1切り欠き部と同一の向きに開口する第2切り欠き部を有する、[1]から[5]のいずれかに記載の車両用窓ガラス。
【0014】
[7]前記第1半ループエレメントは、前記第1方向又は前記第2方向のいずれか一方の向きに開口する第1切り欠き部を有し、前記第2半ループエレメントは、前記第1切り欠き部と反対向きに開口する第2切り欠き部を有する、[1]から[5]のいずれかに記載の車両用窓ガラス。
【0015】
[8]前記第1半ループエレメントの前記第1切り欠き部と反対側の部分と、前記第2半ループエレメントの前記第2切り欠き部と反対側の部分は、共通のエレメントである、[7]に記載の車両用窓ガラス。
【0016】
[9]前記第1半ループエレメントの前記給電電極から前記第1開放端までの部分、及び、前記第2半ループエレメントの前記給電電極から前記第3開放端までの部分、の少なくとも一方は、折り返し部を有する、[1]から[8]のいずれかに記載の車両用窓ガラス。
【0017】
[10]前記折り返し部は、前記第1方向及び前記第2方向と異なる第3方向と、反対向きの第4方向に延伸する部分を含む、[9]に記載の車両用窓ガラス。
【0018】
[11]前記第1開放端及び前記第3開放端の少なくとも一方は、前記第4方向の先端に位置する、[10]に記載の車両用窓ガラス。
【0019】
[12]前記第1半ループエレメントのうち、前記折り返し部において、前記第4方向に延伸する長さをL5とし、前記第2半ループエレメントのうち、前記折り返し部において、前記第4方向に延伸する長さをL9とするとき、0.50×(1/4)×λ2×k ≦ L5 ≦ 2.0×(1/4)×λ2×k、0.50×(1/4)×λ2×k ≦ L9 ≦ 2.0×(1/4)×λ2×k、を満足する、[10]又は[11]に記載の車両用窓ガラス。
【0020】
[13]前記第1半ループエレメントの前記給電電極から前記第1開放端までの部分、及び、前記第2半ループエレメントの前記給電電極から前記第3開放端までの部分、の少なくとも一方は、クランク部を有する、[1]から[8]のいずれかに記載の車両用窓ガラス。
【0021】
[14]前記クランク部は、前記第1方向及び前記第2方向と交差する第3方向に延伸する部分を含む、[13]に記載の車両用窓ガラス。
【0022】
[15]前記第1開放端及び前記第3開放端の少なくとも一方は、前記第3方向の先端に位置する、[14]に記載の車両用窓ガラス。
【0023】
[16]前記第1半ループエレメントのうち、前記クランク部の折れ曲がり後に前記第3方向に延伸する長さをL13とし、前記第2半ループエレメントのうち、前記クランク部の折れ曲がり後に前記第3方向に延伸する長さをL14とするとき、0.50×(1/4)×λ2×k ≦ L13 ≦ 2.0×(1/4)×λ2×k、0.50×(1/4)×λ2×k ≦ L14 ≦ 2.0×(1/4)×λ2×k、を満足する、[14]又は[15]に記載の車両用窓ガラス。
【0024】
[17]前記ガラス板に、接地電極を有する、[1]から[16]のいずれかに記載の車両用窓ガラス。
【0025】
[18]前記接地電極と接続される、接地エレメントを有し、前記接地エレメントは、前記第1方向又は前記第2方向に延伸する、[17]に記載の車両用窓ガラス。
【0026】
[19]前記第1周波数帯は、FM放送波の周波数帯である、[2]又は[3]に記載の車両用窓ガラス。
【0027】
[20]前記第2周波数帯は、地上デジタル放送波の周波数帯である、[2]又は[3]に記載の車両用窓ガラス。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、従来のガラス板に形成されるアンテナパターンとは異なるアンテナパターンで、所定周波数帯における電波を所望の利得で受信できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第1実施形態による車両用窓ガラスの平面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態によるアンテナの拡大平面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態によるアンテナの拡大平面図である。
【
図4】本発明の第3実施形態によるアンテナの拡大平面図である。
【
図5】本発明の第4実施形態によるアンテナの拡大平面図である。
【
図6】本発明の第5実施形態によるアンテナの拡大平面図である。
【
図7】本発明の第6実施形態によるアンテナの拡大平面図である。
【
図8】本発明の第7実施形態によるアンテナの拡大平面図である。
【
図9】第1実施例による車両用窓ガラスの地上デジタル放送波のアンテナ利得の実測結果を示すグラフである。
【
図10】第1実施例による車両用窓ガラスのFM放送波のアンテナ利得の実測結果を示すグラフである。
【
図11】第1実施例による車両用窓ガラスのFM放送波のアンテナ利得の実測結果を示すグラフである。
【
図12】第1実施例と第2実施例による車両用窓ガラスの地上デジタル放送波のアンテナ利得の実測結果を示すグラフである。
【
図13】第1実施例及び第2実施例による車両用窓ガラスのFM放送波のアンテナ利得の実測結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による車両用窓ガラスについて詳細に説明する。なお、理解の容易のため、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右等の方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、弓状に丸みを帯びてもよい。平行、直角、直交、水平、垂直には、略平行、略直角、略直交、略水平、略垂直が含まれてもよい。
【0031】
また、以下では、車両用窓ガラスを窓枠に取り付けた状態で平面視したとき、水平面に平行な方向を水平方向と定義し、当該水平方向に直交する方向を垂直方向と定義する。また、水平方向及び垂直方向は、それぞれ相反する2つの向きを含み、当該相反する2つの向きの一方を示す場合、第1方向、第2方向、第3方向、及び第4方向と定義する。なお、水平方向及び垂直方向と、第1方向、第2方向、第3方向、及び第4方向との関係は、実施形態ごとに定義する。また、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0032】
さらに、以下では、本発明の実施形態による車両用窓ガラスを車両後部のリアガラスに適用する例について説明するが、車両前部のウィンドシールド(フロントガラス)や車両側部のサイドガラスにも適用できる。
【0033】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態による車両用窓ガラス1の平面図である。
図1に示す車両用窓ガラス1は、車体後部の窓枠2に取り付けられる。なお、
図1では、窓枠2の開口部を点線で示している。また、
図1では、窓枠2に取り付けられた状態の車両用窓ガラス1を、車内側からの視点(車内視)で示している。
図1において、点線で示す開口部の外側には、ガラス板10の主面の周縁部と、金属部となるフランジである窓枠2とが(不図示の)ウレタン樹脂等の接着剤で取り付けられる。
【0034】
図1に示す通り、本実施形態の車両用窓ガラス1は、ガラス板10、デフォッガ20、及びアンテナ30を備える。なお、車両用窓ガラス1がリアガラス以外の窓ガラスである場合、デフォッガ20は必須ではない。ガラス板10は、平面視において略四角形の外形を有する。ガラス板10の外縁は、ガラス板10を窓枠2に取り付けたときに、垂直方向に対向する上縁11及び下縁12と、水平方向に対向する左縁13及び右縁14とを含む。
【0035】
デフォッガ20は、ガラス板10に設けられる導電パターンである。
図1に示すデフォッガ20は、通電加熱式のものであって、第1バスバー21a及び第2バスバー21bと、第1バスバー21aと第2バスバー21bとの間に配置された複数のヒータ線22a~22fと、を有する。ヒータ線22a~22fは、第1バスバー21aと第2バスバー21bとの間に配置され、第1バスバー21a及び第2バスバー21bを介して電圧(直流電圧)が印加されることでガラス板10を加熱する。ガラス板10が加熱されることで、ガラス板10の結露(曇り)が取り除かれる。
【0036】
第1バスバー21a及び第2バスバー21bは、ガラス板10の水平方向での両端側に配置されている。第1バスバー21aは、ガラス板10の左縁13に沿って垂直方向に延在している。第2バスバー21bは、ガラス板10の右縁14に沿って垂直方向に延在している。第1バスバー21a及び第2バスバー21bは、互いに並走するように水平方向に延在するヒータ線22a~22fに給電する。なお、ヒータ線22a~22fの数は、6本より多くても少なくてもよい。
【0037】
アンテナ30は、所定周波数帯の電波を受信可能に形成されている。アンテナ30は、後述する第1半ループエレメント40と第2半ループエレメント50によって、同じ周波数帯の電波を受信可能に形成されてもよいし、異なる2つの周波数帯の電波を受信可能に形成されてもよい。異なる2つの周波数帯は、一部の周波数帯が重なる組み合わせでもよいし、全く重ならない周波数帯の組み合わせでもよい。以降、特に断りがない場合、アンテナ30は、所定周波数帯の電波として、異なる2つの周波数帯の電波を受信可能に形成されており、その2つの異なる周波数帯における周波数でそれぞれ共振するものとして説明し、本明細書における第2実施形態以降の各アンテナについても同様とする。例えば、アンテナ30は、VHF帯(30MHz~300MHz)の電波と、UHF帯(300MHz~3GHz)の電波を受信可能とされている。
本実施形態のアンテナ30は、VHF帯の電波として、例えばFM放送波(76MHz~108MHz)の電波を受信する。また、本実施形態のアンテナ30は、VHF帯の電波として、例えば地上デジタルテレビ放送波(470MHz~710MHz)の電波を受信する。
なお、アンテナ30は、VHF帯としてDAB規格のバンドIII(174MHz~240MHz)の電波や、MF帯としてAM放送波(522kHz~1710kHz)の電波などを受信してもよい。
【0038】
デフォッガ20は、ヒータ線22a~22fを短絡させる少なくとも1本の短絡線23aを有してもよい。なお、デフォッガ20が短絡線23aを有する場合、ヒータ線22a~22fのうち、少なくとも垂直方向に隣り合う複数のヒータ線を短絡すればよい。短絡線23aは、例えば、意匠性の観点から、第1バスバー21aと第2バスバー21bとの間の中心に配置されてもよい。
【0039】
第1バスバー21aと短絡線23aとの間の水平方向の長さ、第2バスバー21bと短絡線23aとの間の水平方向の長さは、アンテナ30が受信する所定周波数帯において定在波が発生しない長さに設定すると、アンテナ感度が低下せず好ましい。つまり、所定周波数帯の空気中の波長をλ1~λ2の間の任意の波長λとし、ガラス板10の波長短縮率をk、1以上の整数をNとするとき、第1バスバー21aと短絡線23aとの間の水平方向の長さ、第2バスバー21bと短絡線23aとの間の水平方向の長さは、N×k×λ/2とならないように設定するとよい。
【0040】
例えば、アンテナ30が少なくともFM放送波(76MHz~108MHz)の電波を受信する場合、λ1≒2776mm、λ2≒3945mmであり、k≒0.64、N=1とすると、第1バスバー21aと短絡線23aとの間の水平方向の長さ、第2バスバー21bと短絡線23aとの間の水平方向の長さは、888mm~1262mmを除く範囲であればよい。また、第1バスバー21aと短絡線23aとの間の水平方向の長さ、第2バスバー21bと短絡線23aとの間の水平方向の長さは、k×λ/2未満が好ましく、k×(3×λ/8)以下がより好ましい。
【0041】
アンテナ30は、ガラス板10に設けられるガラスアンテナである。アンテナ30は、ガラス板10を窓枠2に取り付けたときに、デフォッガ20より上側の領域に配置されている。ただし、アンテナ30の配置は、デフォッガ20よりも上側の領域に限らす、下側の領域に配置されてもよい。また、アンテナ30は、給電電極31と、給電電極31と電気的に接続された第1半ループエレメント40と、給電電極31と電気的に接続された第2半ループエレメント50と、を有する。
【0042】
ここで、「半ループエレメント」とは、線状エレメントで構成され、閉ループではなく、切り欠き部を有してループ状(半ループ形状)となる導体パターンを指す。具体的に、「半ループ形状」とは、ガラス板10の平面視において、少なくとも「U字状」、「C字状」、「J字状」又は「L字状」の形状を含む導体パターンを指す。
【0043】
給電電極31は、例えば、矩形状に形成された導体パターンであり、不図示の給電ラインの一端に電気的に接続されている。なお、給電電極31の形状は、円形や他の多角形等の他の形状でもよい。
図1において、給電電極31は、ガラス板10の左縁13近傍に配置されているが、金属部となるフランジである窓枠2近傍であれば、右縁14近傍に配置されてもよい。
【0044】
図2は、本発明の第1実施形態によるアンテナ30の拡大平面図である。以下では、垂直方向の上向きを第1方向、垂直方向の下向きを第2方向、水平方向の右向きを第3方向、水平方向の左向きを第4方向と定義する。なお、第1方向及び第2方向が垂直方向、第3方向及び第4方向が水平方向、として説明するが、これらの方向は、90°回転した方向でもよい。すなわち、第1方向及び第2方向が水平方向、第3方向及び第4方向が垂直方向でもよく、さらに、第1方向及び第2方向と、第3方向及び第4方向とは、交差していれば、これらの交差角度は90°以外でもよい。さらに、垂直方向とは、ガラス板10を車体の窓枠2に取り付けたとき、ガラス板の平面視において、ガラス端部(例えば左縁13)に対して垂直方向としてもよい。また、水平方向とは、ガラス板10を車体の窓枠2に取り付けたとき、水平面と平行方向としてもよい。
図2に示すように、アンテナ30は、給電電極31と接続して、第1方向と、第1方向とは反対向きの第2方向に分岐して、各々半ループ形状をなす、第1半ループエレメント40及び第2半ループエレメント50を有する。
【0045】
図2において、第1方向は、垂直方向を基準にした角度θ1が絶対値で、0°≦θ1≦15°を含んでもよく、0°≦θ1≦10°の範囲でもよく、0°≦θ1≦5°の範囲でもよく、0°≦θ1≦3°でもよく、θ1=0°でもよい。第1方向が延在する角度θ1が0°に近づくとアンテナ30の意匠性が向上する。
第2方向も同様に、垂直方向を基準にした角度θ2が絶対値で、0°≦θ2≦15°を含んでもよく、0°≦θ2≦10°の範囲でもよく、0°≦θ2≦5°の範囲でもよく、0°≦θ2≦3°でもよく、θ2=0°でもよい。第2方向は、第1方向と正反対(180°)の関係でなくてもよいが、第1方向と正反対に近づくとアンテナ30の意匠性が向上する。
【0046】
第1半ループエレメント40は、第1開放端41と第2開放端42と、を有し、第1開放端41と第2開放端42は、水平方向において対向している。第1開放端41と第2開放端42との間には、第1半ループエレメント40の第1切り欠き部43が形成されており、第2方向に開口している。すなわち、
図2に示す第1半ループエレメント40は、ガラス板10の平面視において、第2方向(下向き)に開口するC字状に形成されている。
【0047】
第1半ループエレメント40は、第1方向及び第2方向と異なる、第3方向に延伸する形状を有する。第3方向は、第1方向及び第2方向と交差する方向であって、この場合、第3方向は、垂直方向で交差する方向である。
第3方向は、水平方向を基準にした角度θ3が絶対値で、0°≦θ3≦15°を含んでもよく、0°≦θ3≦10°の範囲でもよく、0°≦θ3≦5°の範囲でもよく、0°≦θ3≦3°でもよく、θ=0°でもよい。第3方向が延在する角度θ3が0°に近づくとアンテナ30の意匠性が向上する。
【0048】
第1半ループエレメント40は、給電電極31から第1開放端41までの部分に第1折り返し部44を有する。第1折り返し部44は、第3方向と反対向きの第4方向に延伸する部分を含む。第1開放端41は、第4方向の先端に位置する。第2開放端42は、第1開放端41と水平方向で隙間をあけて対向している。
第4方向は、水平方向を基準にした角度θ4が絶対値で、0°≦θ4≦15°を含んでもよく、0°≦θ4≦10°の範囲でもよく、0°≦θ4≦5°の範囲でもよく、0°≦θ4≦3°でもよく、θ=0°でもよい。第4方向は、第3方向と正反対の角度(180°)でなくてもよいが、第3方向と正反対の角度に近づくとアンテナ30の意匠性が向上する。
【0049】
第2半ループエレメント50は、第3開放端51と第4開放端52と、を有し、第3開放端51と第4開放端52は、水平方向において対向している。第3開放端51と第4開放端52との間には、第2半ループエレメント50の第2切り欠き部53が形成されており、第2方向に開口している。すなわち、
図2に示す第2半ループエレメント50は、ガラス板10の平面視において、第2方向(下向き)に開口するC字状に形成されている。
【0050】
第2半ループエレメント50は、第1方向及び第2方向と異なる、第3方向に延伸する形状を有する。第2半ループエレメント50は、給電電極31から第3開放端51までの部分に第2折り返し部54を有する。第2折り返し部54は、第3方向と反対向きの第4方向に延伸する部分を含む。第3開放端51は、第4方向の先端に位置する。第4開放端52は、第3開放端51と水平方向に隙間をあけて対向している。
【0051】
なお、アンテナ30は、第1開放端41、第2開放端42、第3開放端51、及び第4開放端52の少なくとも1つが、各開放端を有するエレメントの先端で折れ曲がった位置にあってもよく、以降の実施形態にも適用できる。つまり、本実施形態において、後述する、第5エレメント105、第6エレメント106、第9エレメント109、及び第11エレメント111の少なくとも1つの先端部が水平方向から屈曲して開放端を有してもよい。
【0052】
上記構成のアンテナ30は、引き出しエレメント100、第1エレメント101、第2エレメント102、第3エレメント103、第4エレメント104、第5エレメント105、第6エレメント106、第7エレメント107、第8エレメント108、第9エレメント109、第10エレメント110、及び第11エレメント111を含む。なお、アンテナ30に含まれる垂直エレメントは、所定周波数帯における、アンテナ特性の低周波数領域の受信利得改善エレメントとして機能する。また、アンテナ30に含まれる水平エレメントは、所定周波数帯における、アンテナ特性の受信利得のピークとなる周波数をシフトさせるエレメントとして機能する。
【0053】
図2において、引き出しエレメント100は、給電電極31から第3方向に延伸する水平エレメントであるが、給電電極31と、第1半ループエレメント40及び第2半ループエレメント50と、を接続するために水平方向に延伸しなくてもよく、例えば、第1エレメント101、第2エレメント102よりも短くてもよい。引き出しエレメント100は、例えば、給電電極31に接続するためのコネクタの形状に合わせて任意の形状としてもよく、さらに、アンテナ30は、引き出しエレメント100を有さずに、給電電極31は、直接、第1半ループエレメント40及び第2半ループエレメント50と接続してもよい。
【0054】
第1エレメント101は、引き出しエレメント100の第3方向の端部から分岐し、第1方向に延伸する垂直エレメントである。第2エレメント102は、第1エレメント101の第1方向の端部近傍から、さらに第1方向に延伸する垂直エレメントである。第3エレメント103は、第2エレメント102の第1方向の端部近傍から屈曲し、第3方向に延伸する水平エレメントである。
【0055】
なお、第1エレメント101、第2エレメント102、及び第3エレメント103と、窓枠2の金属部との間隔は、特に限定されないが、例えば、60mm以下でもよく、50mm以下でもよく、40mm以下でもよく、30mm以下でもよく、20mm以下でもよく、15mm以下でもよい。第1エレメント101、第2エレメント102、及び第3エレメント103と、窓枠2の金属部との間隔は、これらを容量結合させる場合、30mm以下でもよく、また、該間隔は、とくに下限は無いが、例えば1mm以上でもよく、3mm以上でもよく、5mm以上でもよい。
【0056】
第4エレメント104は、第3エレメント103の第3方向の端部近傍から屈曲し、第2方向に延伸する垂直エレメントである。第5エレメント105は、第4エレメント104の第2方向の端部近傍から屈曲し、第4方向に延伸する水平エレメントである。第5エレメント105の第4方向の端部は、第1開放端41を形成している。第4エレメント104及び第5エレメント105は、第1折り返し部44を形成している。
【0057】
第6エレメント106は、第1エレメント101の第1方向の端部において第2エレメント102と分岐し、第3方向に延伸する水平エレメントである。第6エレメント106の第3方向の端部は、第2開放端42を形成している。
第2エレメント102、第3エレメント103、第4エレメント104、第5エレメント105、及び第6エレメント106は、第1半ループエレメント40のC字部分を形成している。第1半ループエレメント40のC字部分は、引き出しエレメント100及び第1エレメント101を介して給電電極31と電気的に接続されている。
【0058】
第7エレメント107は、引き出しエレメント100の第3方向の端部において第1エレメント101と分岐し、第3方向に延伸する水平エレメントである。第8エレメント108は、第7エレメント107の第3方向の端部近傍から屈曲し、第2方向に延伸する垂直エレメントである。第9エレメント109は、第8エレメント108の第2方向の端部近傍から屈曲し、第4方向に延伸する水平エレメントである。第9エレメント109の第4方向の端部は、第3開放端51を形成している。第8エレメント108及び第9エレメント109は、第2折り返し部54を形成している。
【0059】
第10エレメント110は、第1エレメント101の第1方向の端部において第2エレメント102及び第7エレメント107と分岐し、第2方向に延伸する垂直エレメントである。第11エレメント111は、第10エレメント110の第2方向の端部近傍から屈曲し、第3方向に延伸する水平エレメントである。第11エレメント111の第3方向の端部は、第4開放端52を形成している。
【0060】
なお、第10エレメント110と窓枠2の金属部との間隔は、特に限定されないが、例えば、60mm以下でもよく、50mm以下でもよく、40mm以下でもよく、30mm以下でもよく、20mm以下でもよく、15mm以下でもよい。第10エレメント110と窓枠2の金属部との間隔は、これらを容量結合させる場合、30mm以下でもよく、また、該間隔は、とくに下限は無いが、例えば1mm以上でもよく、3mm以上でもよく、5mm以上でもよい。
【0061】
また、第9エレメント109及び第11エレメント111と、ヒータ線22aとの間隔は、特に限定されないが、例えば、60mm以下でもよく、50mm以下でもよく、40mm以下でもよく、30mm以下でもよく、20mm以下でもよく、15mm以下でもよい。第9エレメント109及び第11エレメント111と、ヒータ線22aとの間隔は、これらを容量結合させる場合、30mm以下でもよく、また、該間隔は、とくに下限は無いが、例えば1mm以上でもよく、3mm以上でもよく、5mm以上でもよい。
【0062】
図2に示すように、第7エレメント107、第8エレメント108、第9エレメント109、第10エレメント110、及び第11エレメント111は、第2半ループエレメント50のC字部分を形成している。第2半ループエレメント50のC字部分は、引き出しエレメント100を介して給電電極31と電気的に接続されている。
【0063】
なお、第1エレメント101、第7エレメント107、及び第10エレメント110の分岐点は、引き出しエレメント100との接続点Pと一致しているが、当該接続点Pとずれて配置されていてもよい。例えば、第1エレメント101の第1方向の端部と第2方向の端部との間に、接続点Pが配置されていてもよい。この場合、引き出しエレメント100がクランク状に屈曲してもよい。
【0064】
上記構成のアンテナ30において、給電電極31から第1開放端41までの長さをL1、給電電極31から第2開放端42までの長さをL2としたとき、下の関係式(1)を満足する。なお、L1は、引き出しエレメント100、第1エレメント101、第2エレメント102、第3エレメント103、第4エレメント104、及び第5エレメント105の合計の長さである。また、L2は、引き出しエレメント100、第1エレメント101、及び第6エレメント106の合計の長さである。
L1 > L2 …(1)
【0065】
また、上記構成のアンテナ30において、給電電極31から第3開放端51までの長さをL3、給電電極31から第4開放端52までの長さをL4としたとき、下の関係式(2)を満足する。なお、L3は、引き出しエレメント100、第7エレメント107、第8エレメント108、及び第9エレメント109の合計の長さである。また、L4は、引き出しエレメント100、第10エレメント110、及び第11エレメント111の合計の長さである。
L3 > L4 …(2)
【0066】
アンテナ30は、給電電極31から第1開放端41までの長さL1及び給電電極31から第3開放端51までの長さL3の比較的長いアンテナパターンで、例えば、FM放送波(76MHz~108MHz)の電波を受信するように設計できる。また、アンテナ30は、給電電極31から第2開放端42までの長さL2及び給電電極31から第4開放端52までの長さL4の比較的短いアンテナパターンで、例えば、地上デジタルテレビ放送波(470MHz~710MHz)の電波を受信するように設計できる。
【0067】
給電電極31から第1開放端41までの長さL1は、アンテナ30が所定周波数帯(例えば、FM放送波(76MHz~108MHz))の電波を受信する場合、その空気中の波長をλ1、ガラス板10の波長短縮率をk、とするとき、下の関係式(3)を満足するとよい。
0.50×(1/4)×λ1×k ≦ L1 ≦ 2.0×(1/4)×λ1×k …(3)
【0068】
また、長さL1は、
0.75×(1/4)×λ1×k ≦ L1 ≦ 1.5×(1/4)×λ1×k …(3a)
を満足するとより好ましい。
【0069】
給電電極31から第2開放端42までの長さL2は、アンテナ30が所定周波数帯(例えば、地上デジタルテレビ放送波(470MHz~710MHz))の電波を受信する場合、その空気中の波長をλ2、ガラス板10の波長短縮率をk、とするとき、下の関係式(4)を満足するとよい。
0.50×(1/4)×λ2×k ≦ L2 ≦ 3.0×(1/4)×λ2×k …(4)
【0070】
また、長さL2は、
0.75×(1/4)×λ2×k ≦ L2 ≦ 1.5×(1/4)×λ2×k …(4a)
を満足するとより好ましい。
【0071】
給電電極31から第3開放端51までの長さL3は、アンテナ30が所定周波数帯(例えば、FM放送波(76MHz~108MHz))の電波を受信する場合、その空気中の波長をλ1、ガラス板10の波長短縮率をk、とするとき、下の関係式(5)を満足するとよい。
0.50×(1/4)×λ1×k ≦ L3 ≦ 2.0×(1/4)×λ1×k …(5)
【0072】
また、長さL3は、
0.75×(1/4)×λ1×k ≦ L3 ≦ 1.5×(1/4)×λ1×k …(5a)
を満足するとより好ましい。
【0073】
給電電極31から第4開放端52までの長さL4は、アンテナ30が所定周波数帯(例えば、地上デジタルテレビ放送波(470MHz~710MHz))の電波を受信する場合、その空気中の波長をλ2、ガラス板10の波長短縮率をk、とするとき、下の関係式(6)を満足するとよい。
0.50×(1/4)×λ2×k ≦ L4 ≦ 3.0×(1/4)×λ2×k …(6)
【0074】
また、長さL4は、
0.75×(1/4)×λ2×k ≦ L4 ≦ 1.5×(1/4)×λ2×k …(6a)
を満足するとより好ましい。
【0075】
さらに、第1半ループエレメント40のうち、第1折り返し部44において、第4方向に延伸する第5エレメント105の長さをL5とするとき、下の関係式(7)を満足するとよい。
0.50×(1/4)×λ2×k ≦ L5 ≦ 2.0×(1/4)×λ2×k …(7)
【0076】
また、長さL5は、
0.75×(1/4)×λ2×k ≦ L5 ≦ 1.5×(1/4)×λ2×k …(7a)
を満足するとより好ましい。
【0077】
加えて、第2半ループエレメント50のうち、第2折り返し部54において、第4方向に延伸する第9エレメント109の長さをL9とするとき、下の関係式(8)を満足するとよい。
0.50×(1/4)×λ2×k ≦ L9 ≦ 2.0×(1/4)×λ2×k …(8)
【0078】
また、長さL9は、
0.75×(1/4)×λ2×k ≦ L9 ≦ 1.5×(1/4)×λ2×k …(8a)
を満足するとより好ましい。
【0079】
以上の通り、本実施形態の車両用窓ガラス1は、ガラス板10と、ガラス板10に形成され、所定周波数帯の電波、特に、第1周波数帯の電波と、第1周波数帯よりも高い第2周波数帯の電波を受信可能なアンテナ30と、を有し、アンテナ30は、給電電極31と、給電電極31と接続して、第1方向と、第1方向とは反対向きの第2方向に分岐して、各々半ループ形状をなす、第1半ループエレメント40及び第2半ループエレメント50と、を有し、第1半ループエレメント40は、第1開放端41と第2開放端42と、を有し、第2半ループエレメント50は、第3開放端51と第4開放端52と、を有し、給電電極31から第1開放端41までの長さをL1、給電電極31から第2開放端42までの長さをL2、給電電極31から第3開放端51までの長さをL3、給電電極31から第4開放端52までの長さをL4、とするとき、L1 > L2、L3 > L4、の関係を満足する。これにより、給電電極31から第1開放端41までの長さL1及び給電電極31から第3開放端51までの長さL3の比較的長いアンテナパターンで、例えば、FM放送波(76MHz~108MHz)の電波を受信し、アンテナ30は、給電電極31から第2開放端42までの長さL2及び給電電極31から第4開放端52までの長さL4の比較的短いアンテナパターンで、例えば、地上デジタルテレビ放送波(470MHz~710MHz)の電波を受信できる。これにより、所定周波数帯の電波を所望の利得で受信できる車両用窓ガラス1を提供できる。
【0080】
また、本実施形態の車両用窓ガラス1では、第1周波数帯の電波の空気中の波長をλ1、第2周波数帯の電波の空気中の波長をλ2、ガラス板10の波長短縮率をk、とするとき、0.50×(1/4)×λ1×k ≦ L1 ≦ 2.0×(1/4)×λ1×k、0.50×(1/4)×λ2×k ≦ L2 ≦ 3.0×(1/4)×λ2×k、0.50×(1/4)×λ1×k ≦ L3 ≦ 2.0×(1/4)×λ1×k、0.50×(1/4)×λ2×k ≦ L4 ≦ 3.0×(1/4)×λ2×k、の関係を満足する。これにより、車両用窓ガラス1のアンテナ特性を向上できる。
【0081】
また、本実施形態の車両用窓ガラス1では、第1半ループエレメント40及び第2半ループエレメント50は、第1方向及び第2方向と異なる第3方向に延伸する形状を有する。これにより、ガラス板10のデフォッガ20の上部における、垂直方向に狭く水平方向に長い領域にアンテナ30を配置し易くなる。
【0082】
また、本実施形態の車両用窓ガラス1では、第1半ループエレメント40の給電電極31から第2開放端42までの部分と、第2半ループエレメント50の給電電極31から第4開放端52までの部分は、第3方向に延伸するエレメントを含むとよい。
【0083】
また、本実施形態の車両用窓ガラス1では、第1半ループエレメント40は、第1方向又は第2方向のいずれか一方の向きに開口する第1切り欠き部43を有し、第2半ループエレメント50は、第1切り欠き部43と同一の向きに開口する第2切り欠き部53を有する。これにより、第1半ループエレメント40と第2半ループエレメント50の形状が上下で略同一の形状となり、意匠性が向上する。
【0084】
また、本実施形態の車両用窓ガラス1では、第1半ループエレメント40の給電電極31から第1開放端41までの部分、及び、第2半ループエレメント50の給電電極31から第3開放端51までの部分、の少なくとも一方は、折り返し部(第1折り返し部44、第2折り返し部54)を有する。これにより、アンテナ30の水平方向の寸法が小さくなり、ガラス板10の水平方向の狭い領域にアンテナ30を配置し易くなる。
【0085】
また、本実施形態の車両用窓ガラス1では、折り返し部(第1折り返し部44、第2折り返し部54)は、第1方向及び第2方向と異なる第3方向と、反対向きの第4方向に延伸する部分(第5エレメント105、第9エレメント109)を含む。また、本実施形態の車両用窓ガラス1では、第1開放端41及び第3開放端51の少なくとも一方は、第4方向の先端に位置する。これにより、折り返し部をシンプルな形状にできる。
【0086】
また、本実施形態の車両用窓ガラス1では、第1半ループエレメント40のうち、第1折り返し部44において、第4方向に延伸する長さをL5とし、第2半ループエレメント50のうち、第2折り返し部54において、第4方向に延伸する長さをL9とするとき、0.50×(1/4)×λ2×k ≦ L5 ≦ 2.0×(1/4)×λ2×k、0.50×(1/4)×λ2×k ≦ L9 ≦ 2.0×(1/4)×λ2×k、を満足する。これにより、車両用窓ガラス1のアンテナ特性を向上できる。
【0087】
〔第2実施形態〕
図3は、本発明の第2実施形態によるによるアンテナ30の拡大平面図である。以下では、垂直方向の上向きを第1方向、垂直方向の下向きを第2方向、水平方向の右向きを第3方向、水平方向の左向きを第4方向と定義し、第3~第6実施形態も同様の定義に基づき説明する。なお、
図3においては、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付してある。
【0088】
図3に示すように、第2実施形態の車両用窓ガラス1は、第1半ループエレメント40が、第1方向又は第2方向のいずれか一方の向き(第1方向)に開口する第1切り欠き部43を有し、第2半ループエレメント50が、第1切り欠き部43と反対向き(第2方向)に開口する第2切り欠き部53を有する点で、上述した実施形態と異なる。
【0089】
第2実施形態のアンテナ30は、上述した
図2に示す、第3エレメント103と、第5エレメント105及び第6エレメント106の配置が上下入れ替わった第1半ループエレメント40を有する。その他の構成は、第1実施形態と同様の構成である。具体的に、第2実施形態のアンテナ30は、引き出しエレメント100、第1エレメント101、第2エレメント102、第3エレメント103a、第4エレメント104、第5エレメント105a、第6エレメント106a、第7エレメント107、第8エレメント108、第9エレメント109、第10エレメント110、及び第11エレメント111を含む。
【0090】
第2実施形態の第3エレメント103aは、第1エレメント101の第1方向の端部において第2エレメント102と分岐し、第3方向に延伸する水平エレメントである。第3エレメント103aの第3方向の端部は、第4エレメント104の第2方向の端部と接続される。第2実施形態の第5エレメント105aは、第4エレメント104の第1方向の端部から屈曲し、第4方向に延伸する水平エレメントである。
【0091】
第5エレメント105aの第4方向の端部は、第1開放端41を形成している。第4エレメント104及び第5エレメント105aは、第1折り返し部44を形成している。第2実施形態の第6エレメント106aは、第2エレメント102の第1方向の端部から屈曲し、第3方向に延伸する水平エレメントである。第6エレメント106の第3方向の端部は、第2開放端42を形成している。第1開放端41と第2開放端42との間には、第1切り欠き部43が形成されている。
【0092】
以上の通り、第2実施形態の車両用窓ガラス1では、第1半ループエレメント40が、第1方向に開口する第1切り欠き部43を有し、第2半ループエレメント50が、第1切り欠き部43と反対向きの第2方向に開口する第2切り欠き部53を有する。このアンテナパターンであっても、異なる周波数帯の電波を所望の利得で受信できる。
なお、第2実施形態の変形例として、第1半ループエレメント40が、第2方向に開口する第1切り欠き部43を有し、第2半ループエレメント50が、第1方向に開口する第2切り欠き部53を有し、第1切り欠き部43と第2切り欠き部53とが垂直方向で対向する構成も採用できる。
【0093】
〔第3実施形態〕
図4は、本発明の第3実施形態によるによるアンテナ30の拡大平面図であり、
図4においては、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付してある。
【0094】
図4に示すように、第3実施形態の車両用窓ガラス1は、第1半ループエレメント40の第1切り欠き部43と反対側の部分と、第2半ループエレメント50の第2切り欠き部53と反対側の部分が、共通のエレメントである点で、上述した実施形態と異なる。
【0095】
第3実施形態のアンテナ30では、上述した
図3に示す、第3エレメント103aと第7エレメント107とが、共通の第12エレメント112とされている。また、第3実施形態のアンテナ30では、上述した
図3に示す、第1エレメント101が無く、第2エレメント102aが接続点Pに直接接続されている。その他の構成は、第2実施形態と同様の構成である。具体的に、第3実施形態のアンテナ30は、引き出しエレメント100、第2エレメント102a、第4エレメント104、第5エレメント105a、第6エレメント106a、第8エレメント108、第9エレメント109、第10エレメント110、第11エレメント111、及び第12エレメント112を含む。
【0096】
第3実施形態の第2エレメント102aは、引き出しエレメント100の第3方向の端部である接続点Pから分岐し、第1方向に延伸する垂直エレメントである。第2エレメント102aの第1方向の端部は、第6エレメント106aの第4方向の端部と接続される。第3実施形態の第12エレメント112は、引き出しエレメント100の第3方向の端部である接続点Pから分岐し、第3方向に延伸する水平エレメントである。第12エレメント112の第3方向の端部は、第4エレメント104の第2方向の端部及び第8エレメント108の第1方向の端部と接続される。
【0097】
以上の通り、第3実施形態の車両用窓ガラス1では、第1半ループエレメント40の第1切り欠き部43と反対側の部分と、第2半ループエレメント50の第2切り欠き部53と反対側の部分は、共通のエレメント(第12エレメント112)である。これにより、第1半ループエレメント40と第2半ループエレメント50の一部を共通化し、アンテナパターンを単純化すると共に、アンテナ30の垂直方向の寸法を小さくできる。
【0098】
〔第4実施形態〕
図5は、本発明の第4実施形態によるによるアンテナ30の拡大平面図であり、
図5においては、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付してある。
【0099】
図5に示すように、第4実施形態の車両用窓ガラス1は、第1半ループエレメント40の給電電極31から第1開放端41までの部分、及び、第2半ループエレメント50の給電電極31から第3開放端51までの部分、の少なくとも一方が、クランク部(第1クランク部45,第2クランク部55)を有する点で、上述した実施形態と異なる。
ここで「クランク部」とは、水平方向に平行に延びる2つのエレメントの端部同士が、垂直方向に接続され、「段差状」又は「階段状」となる形状を含む導体パターンを指す。
【0100】
第4実施形態のアンテナ30では、上述した
図2に示す、第5エレメント105が無い代わりに第13エレメント113を有し、且つ、第9エレメント109が無い代わりに第14エレメント114を有する。その他の構成は、第1実施形態と同様の構成である。具体的に、第4実施形態のアンテナ30は、引き出しエレメント100、第1エレメント101、第2エレメント102、第3エレメント103、第4エレメント104、第6エレメント106、第7エレメント107、第8エレメント108、第10エレメント110、第11エレメント111、第13エレメント113、及び第14エレメント114を含む。
【0101】
第4実施形態の第13エレメント113は、第4エレメント104の第2方向の端部近傍から、第3方向に延伸する水平エレメントである。第13エレメント113の第3方向の端部は、第1開放端41を形成している。第4実施形態では、第1切り欠き部43が、第6エレメント106の第3方向の端部と、第13エレメント113の第4方向の端部との間に形成されている。第3エレメント103、第4エレメント104、及び第13エレメント113は、第1クランク部45を形成している。
【0102】
第1半ループエレメント40のうち、第1クランク部45の折れ曲がり後に第3方向に延伸する第13エレメント113の長さをL13とするとき、下の関係式(9)を満足するとよい。
0.50×(1/4)×λ2×k ≦ L13 ≦ 2.0×(1/4)×λ2×k …(9)
【0103】
また、長さL13は、
0.75×(1/4)×λ2×k ≦ L13 ≦ 1.5×(1/4)×λ2×k …(9a)
を満足するとより好ましい。
【0104】
第4実施形態の第14エレメント114は、第8エレメント108の第2方向の端部から、第3方向に延伸する水平エレメントである。第14エレメント114の第3方向の端部は、第3開放端51を形成している。第4実施形態では、第2切り欠き部53が、第11エレメント111の第3方向の端部と、第14エレメント114の第4方向の端部との間に形成されている。第7エレメント107、第8エレメント108、及び第14エレメント114は、第2クランク部55を形成している。
【0105】
第2半ループエレメント50のうち、第2クランク部55の折れ曲がり後に第3方向に延伸する第14エレメント114の長さをL14とするとき、下の関係式(10)を満足するとよい。
0.50×(1/4)×λ2×k ≦ L14 ≦ 2.0×(1/4)×λ2×k …(10)
【0106】
また、長さL14は、
0.75×(1/4)×λ2×k ≦ L14 ≦ 1.5×(1/4)×λ2×k …(10a)
を満足するとより好ましい。
【0107】
以上の通り、第4実施形態の車両用窓ガラス1では、第1半ループエレメント40の給電電極31から第1開放端41までの部分、及び、第2半ループエレメント50の給電電極31から第3開放端51までの部分、の少なくとも一方は、クランク部(第1クランク部45,第2クランク部55)を有する。このアンテナパターンであっても、異なる周波数帯の電波を所望の利得で受信できる。
【0108】
また、第4実施形態の車両用窓ガラス1では、クランク部(第1クランク部45,第2クランク部55)は、第1方向及び第2方向と交差する第3方向に延伸する部分を含む。また、第4実施形態の車両用窓ガラス1では、第1開放端41及び第3開放端51の少なくとも一方は、クランク部(第1クランク部45,第2クランク部55)の第3方向の先端に位置する。
【0109】
また、第4実施形態の車両用窓ガラス1では、第1半ループエレメント40のうち、第1クランク部45の折れ曲がり後に第3方向に延伸する長さをL13とし、第2半ループエレメント50のうち、第2クランク部55の折れ曲がり後に第3方向に延伸する長さをL14とするとき、0.50×(1/4)×λ2×k ≦ L13 ≦ 2.0×(1/4)×λ2×k、0.50×(1/4)×λ2×k ≦ L14 ≦ 2.0×(1/4)×λ2×k、を満足する。これにより、車両用窓ガラス1のアンテナ30の、所定周波数帯における、アンテナ受信特性を向上できる。
【0110】
〔第5実施形態〕
図6は、本発明の第5実施形態によるによるアンテナ30の拡大平面図であり、
図6においては、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付してある。
【0111】
図6に示すように、第5実施形態の車両用窓ガラス1は、ガラス板10に、接地電極32を有する点で、上述した実施形態と異なる。
【0112】
接地電極32は、例えば、矩形状に形成された導体パターンであり、電気的に接地されている。なお、接地電極32の形状は、円形や他の多角形等の他の形状でもよい。接地電極32は、給電電極31の第2方向に隙間を有して配置されている。接地電極32には、接地エレメント33が接続されている。接地エレメント33は、接地電極32から第2方向に延伸する垂直エレメントである。
なお、
図6において、接地電極32は、給電電極31の第1方向や第4方向など、任意の方向に隙間を有して配置されてもよい。そして、接地エレメント33は、当該接地電極32から第1方向に延伸する垂直エレメントでもよい。
【0113】
以上の通り、第5実施形態の車両用窓ガラス1では、ガラス板10に、接地電極32を有する。これにより、ガラス板10の窓枠2(
図1参照)が樹脂製などであっても、ガラス板10の接地電極32からアースを取ることができる。
また、第5実施形態の車両用窓ガラス1では、接地電極32と接続される、接地エレメント33を有し、接地エレメント33は、第1方向又は第2方向に延伸する。これにより、アンテナ30が、給電電極31(HOT側)と接地電極32(アース側)を有するいわゆる双極(ダイポール)アンテナとなる。
【0114】
〔第6実施形態〕
図7は、本発明の第6実施形態によるによるアンテナ30の拡大平面図であり、
図7においては、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付してある。
【0115】
図7に示すように、第6実施形態の車両用窓ガラス1は、第1半ループエレメント40及び第2半ループエレメント50が折り返し部(第1折り返し部44、第2折り返し部54)を有しない点で、上述した実施形態と異なる。
【0116】
第6実施形態のアンテナ30では、上述した
図2に示す、第4エレメント104及び第5エレメント105が無い代わりに、第3方向に延長された第3エレメント103bを有し、且つ、第8エレメント108及び第9エレメント109が無い代わりに、第3方向に延長された第7エレメント107bを有する。その他の構成は、第1実施形態と同様の構成である。具体的に、第6実施形態のアンテナ30は、引き出しエレメント100、第1エレメント101、第2エレメント102、第3エレメント103b、第6エレメント106、第7エレメント107b、第10エレメント110、及び第11エレメント111を含む。
【0117】
第6実施形態の第3エレメント103bは、第2エレメント102の第1方向の端部から、第3方向に延伸する水平エレメントである。第3エレメント103bの第3方向の端部は、第1開放端41を形成している。第6実施形態では、第1切り欠き部43が、第6エレメント106の第3方向の端部と、第3エレメント103bの第3方向の端部との間に形成されている。
【0118】
第6実施形態の第7エレメント107bは、引き出しエレメント100の第3方向の端部である接続点Pから分岐し、第3方向に延伸する水平エレメントである。第7エレメント107bの第3方向の端部は、第3開放端51を形成している。第6実施形態では、第2切り欠き部53が、第10エレメント110の第3方向の端部と、第7エレメント107bの第3方向の端部との間に形成されている。
【0119】
以上の通り、第6実施形態の車両用窓ガラス1では、第1半ループエレメント40及び第2半ループエレメント50が折り返し部(第1折り返し部44、第2折り返し部54)を有しないが、このアンテナパターンでも、異なる周波数帯の電波を所望の利得で受信できる。
【0120】
〔第7実施形態〕
図8は、本発明の第7実施形態によるによるアンテナ30の拡大平面図である。以下では、いままでの実施形態と異なり、水平方向の左向きを第1方向、水平方向の右向きを第2方向、垂直方向の下向きを第3方向、垂直方向の上向きを第4方向と定義する。なお、
図8においては、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付してある。
【0121】
図8に示すように、第7実施形態の車両用窓ガラス1は、給電電極31と接続して、水平方向において、第1方向と、第1方向とは反対向きの第2方向に分岐して、各々半ループ形状をなす、第1半ループエレメント40及び第2半ループエレメント50と、を有する点で、上述した実施形態と異なる。
【0122】
具体的に、第7実施形態のアンテナ30は、引き出しエレメント200、第21エレメント121、第22エレメント122、第23エレメント123、第24エレメント124、第25エレメント125、第26エレメント126、第27エレメント127、第28エレメント128、第29エレメント129、及び第30エレメント130を含む。第7実施形態の給電電極31は、ガラス板10の上縁11近傍に配置されている。
【0123】
引き出しエレメント200は、給電電極31から第3方向に延伸する垂直エレメントである。第21エレメント121は、引き出しエレメント200の第3方向の端部である接続点Pから分岐し、第1方向に延伸する水平エレメントである。第22エレメント122は、第21エレメント121の第1方向の端部近傍から屈曲し、第3方向に延伸する垂直エレメントである。
【0124】
第23エレメント123は、第22エレメント122の第3方向の端部近傍から屈曲し、第2方向に延伸する水平エレメントである。第23エレメント123の第1方向の端部は、第1開放端41を形成している。第22エレメント122及び第23エレメント123は、第1折り返し部44を形成している。
【0125】
第24エレメント124は、引き出しエレメント200の第3方向の端部である接続点Pから分岐し、第3方向に延伸する垂直エレメントである。第25エレメント125は、第24エレメント124の第3方向の端部近傍から屈曲し、第1方向に延伸する水平エレメントである。第25エレメント125の第1方向の端部は、第2開放端42を形成している。
【0126】
第21エレメント121、第22エレメント122、第23エレメント123、第24エレメント124、及び第25エレメント125は、第1半ループエレメント40を形成している。第1半ループエレメント40は、引き出しエレメント200を介して給電電極31と電気的に接続されている。
【0127】
第26エレメント126は、引き出しエレメント200の第3方向の端部である接続点Pから分岐し、第2方向に延伸する水平エレメントである。第27エレメント127は、第26エレメント126の第2方向の端部近傍から屈曲し、第3方向に延伸する垂直エレメントである。
【0128】
第28エレメント128は、第27エレメント127の第3方向の端部近傍から屈曲し、第1方向に延伸する水平エレメントである。第28エレメント128の第1方向の端部は、第3開放端51を形成している。第27エレメント127及び第28エレメント128は、第2折り返し部54を形成している。
【0129】
第29エレメント129は、第26エレメント126の中途部分から分岐し、第3方向に延伸する垂直エレメントである。第30エレメント130は、第29エレメント129の第3方向の端部近傍から屈曲し、第2方向に延伸する水平エレメントである。第30エレメント130の第2方向の端部は、第4開放端52を形成している。
【0130】
第26エレメント126、第27エレメント127、第28エレメント128、第29エレメント129、及び第30エレメント130は、第2半ループエレメント50を形成している。第2半ループエレメント50は、引き出しエレメント200を介して給電電極31と電気的に接続されている。
【0131】
以上の通り、第7実施形態の車両用窓ガラス1では、水平方向において、第1方向と、第1方向とは反対向きの第2方向に分岐して、各々半ループ形状をなす、第1半ループエレメント40及び第2半ループエレメント50を有する。このアンテナパターンであっても、異なる周波数帯の電波を所望の利得で受信できる。
【0132】
以上、本発明の実施形態による車両用窓ガラスについて説明したが、本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、各実施形態の一部又は全部を組み合わせて実施してもよい。
【実施例0133】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかにする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施できる。
【0134】
[第1実施例]
第1実施例の車両用窓ガラス1は、上述した
図2に示す単極のアンテナ30を、以下の寸法で備えた。引き出しエレメント100は、5mmである。第1エレメント101は、35mmである。第2エレメント102は、25mmである。第3エレメント103は、225mmである。第4エレメント104は、30mmである。第5エレメント105は、60mmである。第6エレメント106は、120mmである。第1切り欠き部43の寸法は、55mmである。つまり、第1開放端41と第2開放端42との隙間の寸法は、55mmである。
【0135】
第1実施例のアンテナ30において、給電電極31から第1開放端41までの長さL1は、5mm+35mm+25mm+225mm+30mm+60mmとなり、380mmmとなる。また、給電電極31から第2開放端42までの長さL2は、5mm+35mmm+120mmとなり、160mmとなる。また、第1折り返し部44において、第4方向に延伸する第5エレメント105の長さをL5は、60mmである。
【0136】
また、第7エレメント107は、240mmである。第8エレメント108は、90mmである。第9エレメント109は、90mmである。第10エレメント110は、80mmである。第10エレメント110は、80mmである。第2切り欠き部53の寸法は、80mmである。つまり、第3開放端51と第4開放端52との隙間の寸法は、80mmである。
【0137】
第1実施例のアンテナ30において、給電電極31から第3開放端51までの長さL3は、5mm+240mm+90mm+90mmとなり、425mmmとなる。また、給電電極31から第4開放端52までの長さL4は、5mm+80mmm+80mmとなり、165mmとなる。また、第2折り返し部54において、第4方向に延伸する第9エレメント109の長さL9は、90mmである。
【0138】
図9は、第1実施例による車両用窓ガラス1の地上デジタル放送波の周波数帯におけるアンテナ利得の実測結果を示すグラフである。
図9及び後述する
図10~
図13では、横軸に周波数[MHz]をとり、縦軸に利得[dB]をとってある。
図9及び後述する
図10~
図11の「R側」、「L側」とは、実施例1のアンテナ30を各々、ガラス板10の右縁14側、左縁13側に配置したことを意味する。なお、ガラス板10の右縁14側に配置されたアンテナ30は、
図2に示すアンテナ30を、ガラス板10を水平方向に二分する中心線を基準に反転した導体パターンを有する。
図9を参照すると、アンテナ30を「R側」、「L側」のいずれに配置しても、地上デジタル放送波の周波数帯に関してはアンテナ利得(受信利得)が高いことが確認できた。
【0139】
図10は、第1実施例による車両用窓ガラス1のFM放送波の周波数帯におけるアンテナ利得の実測結果を示すグラフである。なお、
図10及び後述する
図11~
図12の「H+V」とは、FM放送波における「水平偏波」と「垂直偏波」の合計のアンテナ利得を意味する。
図10を参照すると、アンテナ30を「R側」、「L側」のいずれに配置しても、FM放送波に関してはアンテナ利得が高いことが確認できた。
【0140】
図11は、第1実施例による車両用窓ガラス1のFM放送波の周波数帯におけるアンテナ利得の実測結果を示すグラフである。なお、
図11の「水平」とは、FM放送波における「水平偏波」と意味し、「垂直」とはFM放送波における「垂直偏波」を意味する。すなわち、
図11は、
図10に示す曲線を、「水平偏波」と「垂直偏波」に分けたグラフである。
図11を参照すると、アンテナ30を「R側」、「L側」のいずれに配置しても、FM放送波の周波数帯における「水平偏波」と「垂直偏波」のアンテナ利得の変化が小さいことが確認できた。
【0141】
[第2実施例]
第2実施例の車両用窓ガラス1は、上述した
図6に示す双極のアンテナ30を備える。第2実施例のアンテナ30は、上述した第1実施例と接地電極32及び接地エレメント33を備える点で相違し、それ以外の寸法は、上述した第1実施例と同じとした。接地エレメント33の寸法は、80mmである。
【0142】
図12は、第1実施例と第2実施例による車両用窓ガラス1の地上デジタル放送波の周波数帯におけるアンテナ利得の実測結果を示すグラフである。
図12及び後述する
図13の「単極」とは、第1実施例のアンテナ30を意味し、「双極」とは第2実施例のアンテナ30を意味する。
図12を参照すると、アンテナ30を「単極」、「双極」のいずれも、地上デジタル放送波の周波数帯に関してはアンテナ利得が高いことが確認できた。
【0143】
図13は、第1実施例及び第2実施例による車両用窓ガラス1のFM放送波の周波数帯におけるアンテナ利得の実測結果を示すグラフである。
図13を参照すると、アンテナ30を「単極」、「双極」のいずれにしても、FM放送波の周波数帯に関してはアンテナ利得が高いことが確認できた。
【0144】
FM放送波の中心周波数は、92MHzであり、その中心波長(λ1)は、3258mmとなる。また、地上デジタル放送波の中心周波数は、590MHzであり、その中心波長(λ2)は、508mmとなる。また、ガラス板10の波長短縮率(k)が0.64とすると、第1実施例及び第2実施例のアンテナ30の各寸法は、上述した(1)~(8)の各関係式及び範囲において、好ましい長さに設定されている。
このように、第1実施例及び第2実施例によれば、所望の(異なる2つの)周波数帯の電波を所望の利得で受信できる車両用窓ガラス1を提供できた。
【0145】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
例えば、
図2に示す第5エレメント105と、
図5に示す第13エレメント113を組み合わせて、T字状のエレメントを形成してもよい。その他、アンテナ30の任意の箇所に補助エレメントを接続してもよい。