(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055280
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】液体組成物セット、画像形成方法、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41M 5/00 20060101AFI20240411BHJP
C09D 11/54 20140101ALI20240411BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20240411BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240411BHJP
D06P 5/30 20060101ALI20240411BHJP
D06P 5/00 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
B41M5/00 132
C09D11/54
C09D11/322
B41M5/00 120
B41M5/00 114
B41J2/01 501
B41J2/01 123
D06P5/30
D06P5/00 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162071
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(72)【発明者】
【氏名】松本 彩香
(72)【発明者】
【氏名】田中 彩加
(72)【発明者】
【氏名】小橋 紀之
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4H157
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EA13
2C056EE17
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2C056HA42
2H186AB02
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4H157AA01
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4J039GA24
(57)【要約】
【課題】洗濯堅牢性、摩擦堅牢性、画像濃度に優れた画像を形成することができる、前処理液組成物とインク組成物とを有する液体組成物セットの提供。
【解決手段】記録媒体に画像を形成するために用いられる、前処理液組成物と、インク組成物と、を有する液体組成物セットであって、前記インク組成物が色材及び樹脂を含み、
前記前処理液組成物が有機酸塩及びシリコーンオイルエマルションを含み、前記前処理液組成物中の前記シリコーンオイルエマルションの含有量が0.2質量%以上3質量%以下である液体組成物セット。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を形成するために用いられる、前処理液組成物と、インク組成物と、を有する液体組成物セットであって、
前記インク組成物が色材及び樹脂を含み、
前記前処理液組成物が有機酸塩及びシリコーンオイルエマルションを含み、
前記前処理液組成物中の前記シリコーンオイルエマルションの含有量が0.2質量%以上3質量%以下である液体組成物セット。
【請求項2】
前記記録媒体が布帛からなる、請求項1に記載の液体組成物セット。
【請求項3】
前記布帛が合成繊維からなる、請求項2に記載の液体組成物セット。
【請求項4】
前記前処理液組成物に含まれる前記シリコーンオイルエマルション中のシリコーンオイルの重量平均分子量が50000以上100000以下である、請求項1に記載の液体組成物セット。
【請求項5】
前記前処理液組成物に含まれる有機酸塩の陽イオン濃度が0.05質量%以上1.65質量%以下である、請求項1に記載の液体組成物セット。
【請求項6】
前記有機酸塩が乳酸塩である、請求項1に記載の液体組成物セット。
【請求項7】
前記乳酸塩が乳酸アンモニウムである、請求項6に記載の液体組成物セット。
【請求項8】
前記インク組成物中の前記樹脂の含有量が5質量%以上15質量%以下である、請求項1に記載の液体組成物セット。
【請求項9】
前記インク組成物を吐出し乾燥させた乾燥膜の破断伸度が700%以上である、請求項1に記載の液体組成物セット。
【請求項10】
前処理液組成物と、インク組成物と、を有する液体組成物セットを用いて記録媒体上に画像を形成する画像形成方法であって、
前記記録媒体に前記前処理液組成物を付与する工程と、
前記前処理液が付与された記録媒体上に、インク組成物を付与する工程と、
を含み、
前記液体組成物セットが、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の液体組成物セットであることを特徴とする画像形成方法。
【請求項11】
前記記録媒体が合成繊維から成る布帛である、請求項10に記載の画像形成方法。
【請求項12】
前処理液組成物と、インク組成物と、を有する液体組成物セットを用いて記録媒体上に画像を形成する画像形成装置であって、
前記記録媒体に前記前処理液組成物を付与する手段と、
前記前処理液が付与された記録媒体上に、インク組成物を付与する手段と、
を含み、
前記インク組成物を付与する手段が、ノズルからインク組成物を吐出させる手段であり、
前記液体組成物セットが、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の液体組成物セットであることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体組成物セット、画像形成方法、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターは低騒音、低ランニングコスト、カラー印刷が容易であるなどの利点を有するので、デジタル信号の出力機器として一般家庭に広く普及している。
近年では、家庭用のみならず、コート紙等の緩浸透性メディアやプラスチックフィルム等の非吸収性メディア、織物や編物等ファブリックに対しても、インクジェット記録方法により、スクリーン捺染法やローラー捺染法といった従来のアナログ印刷並の画質を獲得することが要求されるようになっている。
【0003】
捺染分野においても、Tシャツ等の衣類に直接印字するいわゆるDTG(Direct To Garment)分野の市場規模は年々拡大しており、従来の綿や綿・ポリエステル混紡メディアだけでなく、通気性や速乾性に優れたポリエステルメディア対応性が求められている。このような動向は、DTG分野のみならず、捺染分野全体に認められ、綿やポリエステルを始めとする様々な素材のファブリックに対して、発色性及び種々堅牢性に優れた画像を形成可能なインクジェット記録システムへの需要がますます高まりつつある。
【0004】
このようなファブリック向けのインクとしては、低VOCや安全性の観点から、水性インクの開発が最も盛んである。
例えば、特許文献1には、金属イオンの含有量が0.5g/L以上50g/L以下であり、オルガノポリシロキサンの重量平均分子量が5000以上500000以下の範囲にある処理液を用いることで、ポリエステル等の化学繊維からなる布帛に対する画像の堅牢性を改善し、柔軟な風合いを付与する捺染方法が開示されている。
また、特許文献2には、二種のインクを用いて発色性と手触性に優れた印刷物を得る捺染方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特許文献1、2に記載されている方法では、洗濯時の堅牢性が不十分であり、前記特許文献1では有機酸塩を用いた際は画質も不十分であるという課題があった。
本発明は、洗濯堅牢性、摩擦堅牢性、及び、画像濃度に優れた画像を印刷することができる前処理液組成物と、インク組成物と、を有する液体組成物セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する手段としての本発明の液体組成物セットは、色材及び樹脂を含有するインク組成物と、有機酸塩、シリコーンオイルエマルションを含有する前処理液組成物、を有し、前記前処理液組成物中の前記シリコーンオイルエマルションの含有量が0.2質量%以上3質量%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、ポリエステル等の化学繊維からなる布帛に対して優れた洗濯堅牢性、摩擦堅牢性および画像濃度に優れた画像を印刷することができるインク組成物と、前処理液組成物、を有する液体組成物セットを提供することができる。
なお、以下ではインク組成物を「インク」といい、「前処理液組成物」を「処理液」といい、「液体組成物セット」を「セット」ということがある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、インクジェット記録装置の一例を示す斜視説明図である。
【
図2】
図2は、インクジェット記録装置におけるメインタンクの一例を示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明するが、以下の実施形態は本発明を限定するものではない。
【0010】
本発明の処理液とインクのセットは、色材及び樹脂を含有するインクと、有機酸塩、シリコーンオイルエマルションを含有する処理液と、を有する。
また、前記処理液とインクのセットでは、ポリエステル等の化学繊維からなる布帛に対して堅牢性および画質濃度に優れた画像を提供する。理論に拘束されないが、この理由は以下のように推察される。
【0011】
前記処理液中の有機酸塩は、記録媒体上における、インク中の樹脂との反応によるインクの凝集化の役割を有し、記録媒体へのインクの浸透が抑制される。さらに、有機酸塩は無機塩に比べてインクの凝集力が弱いため、記録媒体表面にインクが留まりすぎず、摩擦時や洗濯時でのインクの脱離が起こりにくいため、堅牢性に優れた画像が得られる。一方で、有機酸塩を使用する場合は無機塩を使用する場合に比べて画像の画質が劣る。
【0012】
また、前記処理液中のシリコーンオイルエマルションは、離型剤としての役割を有し、顔料及び顔料分散剤から離脱しやすい傾向も有しているため、記録媒体である布帛の繊維上にインクが濡れ広がり、顔料が記録媒体上に留まりやすい。このため、前記処理液中にシリコーンオイルエマルションを0.2質量%以上含有させることで、画質に優れた画像および画像表層に離型性が付与されることによる堅牢性に優れた画像が得られる。さらに、シリコーンオイルエマルションの含有量が3質量%を超えると、記録媒体とインクの間にも離型性が付与され、記録媒体に対するインクの密着力が低下し、摩擦時や洗濯時でのインクの脱離が起こりやすくなるため、画像の堅牢性も低下する。このため、処理液中に含まれるシリコーンオイルエマルションの添加量は0.2質量%以上3質量%以下が好ましい。
【0013】
<<処理液とインクのセット>>
本発明の処理液とインクのセットは、色材及び樹脂を含有するインクと、有機酸塩及びシリコーンオイルエマルションを含有する処理液と、を有する。
【0014】
<<処理液>>
処理液は、有機酸塩及びシリコーンオイルエマルションを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。なお、処理液、前処理液はいずれも同義語である。
【0015】
<有機酸塩>
本発明における処理液に含まれる有機酸塩としては、例えば、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、堅牢性向上の観点から、乳酸塩が好ましい。乳酸塩としては、例えば、乳酸ナトリウム、乳酸カルシウム、乳酸アルミニウム、乳酸アンモニウムなどが挙げられる。これらの中でも、洗濯堅牢性向上の観点から、乳酸アンモニウムが更に好ましい。
本発明における処理液中の有機酸塩の役割としては、インク中の樹脂との反応による記録媒体上でのインクの凝集化が挙げられる。記録媒体上でインクが凝集化することにより、記録媒体へのインクの浸み込みが抑制され、発色性に優れた画像が得られる。
【0016】
前記処理液中における有機酸塩の含有量は、前記処理液中の有機酸塩の陽イオン濃度が0.05質量%以上1.65質量%以下であり、堅牢性および画質向上の観点から0.18質量%以上1.00質量%以下であるような含有量であることが好ましい。
【0017】
処理液中の有機酸塩の陽イオン濃度は、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES)、イオンクロマトグラフィー等により測定可能である。
インクの凝集化作用を付与することによる画質の向上および記録媒体上に留まるインクの量を制御することによる堅牢性の向上の観点から、処理液中の有機酸塩の陽イオン濃度は上記範囲であることが好ましい。
【0018】
<シリコーンオイルエマルション>
本発明における処理液に含まれるシリコーンオイルエマルションは、シリコーンオイルが微粒子状態(すなわちエマルション状態)で含有されている。前記シリコーンオイルは、シロキサン結合を主鎖とする分子構造をもつオイル状の物質を示すものであり、一般に入手できるものを特に制限なく使用することができる。例えば、ジメチルシリコーンオイルや、アルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ヒドロキシ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイル等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
これらの中でも、ジメチルシリコーンオイルのエマルションが画像の堅牢性および画質向上の観点から好ましい。
処理液中に含有されているシリコーンオイルの重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下GPC)で測定可能である。
【0020】
前記シリコーンオイルの重量平均分子量は、2000以上150000以下の範囲であることが好ましく、堅牢性および風合いの観点から50000以上100000以下であることがさらに好ましい。
シリコーンオイルの重量平均分子量が50000以上であると、画像からインクが脱離し難くなり、堅牢性に優れた画像が得られる。また、画像の手触り、風合いの観点から、重量平均分子量が100000以下であることが好ましい。
【0021】
重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)により以下の条件で測定される。
・装置:GPC-8020(東ソー株式会社製)
・カラム:TSK G2000HXL及びG4000HXL(東ソー株式会社製)
・温度:40℃
・溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
・流速:1.0mL/分間
【0022】
前記処理液中のシリコーンオイルエマルションの含有量は処理液全量に対して、堅牢性および画質向上の観点から固形分換算で0.2質量%以上3質量%以下の範囲が好ましく、0.3質量%以上1.5質量%以下であることがさらに好ましく、0.4質量%以上0.9質量%以下であることがさらに好ましい。
【0023】
記録媒体へのインクの浸透性制御による画質向上の観点から、シリコーンオイルエマルションの含有量は処理液全量に対して0.3質量%以上であることが好ましい。
記録媒体上でインク膜に離型性を持たせ、堅牢性を向上させる観点から、シリコーンオイルエマルションの含有量は1.5質量%以下であることが好ましい。
【0024】
処理液中のシリコーンオイルエマルションの含有量は、ICP発光分光分析または核磁気共鳴法等により測定可能である。
【0025】
<その他の成分>
本発明の処理液は有機酸塩及びシリコーンオイルエマルションを含有し、必要に応じてその他の成分を添加してもよい。
処理液は、有機酸塩及びシリコーンオイルエマルションを含有する限り、その他の成分には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、有機溶剤、水などを含有することが好ましく、溶媒としては、例えば水溶性有機溶剤などが挙げられる。
また、必要に応じて、添加剤等のその他の成分を含有していてもよい。
【0026】
<水>
前記処理液における水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0027】
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
多価アルコール類の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等が挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテル類としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
多価アルコールアリールエーテル類としては、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
含窒素複素環化合物としては、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
アミド類としては、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等が挙げられる。
アミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
含硫黄化合物類としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等が挙げられる。
その他の有機溶剤としては、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0028】
有機溶剤として、炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0029】
有機溶剤の処理液中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、処理液の乾燥性の観点から、1質量%以上20質量%以下が好ましく、2質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0030】
<添加剤>
前記処理液には、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えてもよい。
【0031】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等が、使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前期シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0032】
処理液中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上1質量%以下がより好ましい。
【0033】
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0034】
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0035】
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0036】
<<インク>>
インクは、色材及び樹脂を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
前記インクは、樹脂及び色材を含有する限り、その他の成分には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、樹脂の他に、有機溶剤、水などを含有することが好ましく、更に必要に応じて、添加剤等のその他の成分を含有していてもよい。
【0037】
また、インクを乾燥することにより得られる乾燥物の、破断伸度が700%以上であることが好ましい。
高い柔軟性により優れた堅牢性を持つ画像を得られるという観点から、インクを乾燥することにより得られる乾燥物の、破断伸度が700%以上であることが好ましい。
破断伸度は以下の計算式(1)によって算出できる。
破断伸度=100×(L-Lo)/Lo (1)
(但し、Lo:試験前の試料長さ、L:破断時の試料長さ)
【0038】
破断伸度は引張試験機を用いて、測定可能である。
引張試験に供するインク乾燥膜は3gのインクを均一に広がるように容器に入れ、50℃で12時間、80℃で6時間減圧乾燥の後、100℃で3時間減圧乾燥させることで得ることができる。引張試験に用いる試験片は、5mm×4mmに切り出す。厚みはサンプル毎に測定した。
測定サンプルについて、強度や伸びを引張試験機(株式会社島津製作所製、AutoGraph AGS-5KN)を用いて、以下の条件にて測定した。具体的には以下のようにして、測定した。
【0039】
(測定条件)
・ロードセル:5kN
・測定温度:25℃
・引張速度:50mm/min
以上の測定条件にて、測定を行い、破断伸度(%)を得た。
【0040】
<樹脂>
樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
前記樹脂としては、前記種類の樹脂からなる樹脂粒子を用いてもよい。前記樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
これらの中でも、前記インク中に含有する前記樹脂の種類としては、ポリウレタン樹脂が好ましい。
前記ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネートとポリオールとの反応性生物である。ポリウレタン樹脂の特徴として、凝集力が弱いポリオール成分からなるソフトセグメントと、凝集力の強いウレタン結合からなるハードセグメントのそれぞれの性能を発揮することが挙げられる。ソフトセグメントはやわらかく、引き伸ばしや折り曲げなど基材の変形に強い。一方、ハードセグメントは基材に対する密着性が高く、堅牢性に優れている。
前記ポリウレタン樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0042】
前記インクにおける前記樹脂の含有量としては、堅牢性、画質、定着性、インクの保存安定性の点から、前記インク全量に対して、固形分換算で5.0質量%以上15.0質量%以下であることが好ましい。
前記インク中の固形分全量に対する前記樹脂の含有量としては、堅牢性、画質、定着性、インクの保存安定性の点から、45質量%以上60質量%以下が好ましい。
なお、本明細書において、前記インク中の固形分としては、前記樹脂や前記色材の粒子等が含まれる。
【0043】
前記インクにおける前記樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0044】
<色材>
本発明の処理液とインクのセットにおけるインクは色材を含む。
前記インクにおける前記色材としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、顔料、顔料分散体、染料などを使用することが可能である。
〔顔料〕
前記インクにおける前記顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。また、混晶を使用してもよい。
前記顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色等の光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。
これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
前記顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、又は銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
また、カラー用の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213;C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、;C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264;C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38;C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63;C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36などが挙げられる。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクトブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0045】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0046】
<顔料分散体>
前記顔料分散体は、水、有機溶剤、顔料、及び顔料分散剤、更に必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
前記顔料を分散させて顔料分散体を調製する方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、前記顔料に、水、有機溶剤等の材料を混合して製造する方法、前記顔料と、その他水や顔料分散剤等を混合して顔料分散体としたものに、水、有機溶剤等の材料を混合して製造する方法などが挙げられる。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0047】
前記顔料を分散して前記インクを得る方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、前記顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて前記顔料を分散させる方法などが挙げられる。
前記顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、前記顔料(例えば、カーボン)に、スルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法などが挙げられる。
前記顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、例えば、前記顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法などが挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、前記インクに配合される顔料は、全てが樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、樹脂に被覆されていない顔料や、部分的に樹脂に被覆された顔料が前記インク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて前記顔料を分散させる方法としては、例えば、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤を用いて分散する方法、公知の高分子型の分散剤を用いて分散する方法などが挙げられる。
前記分散剤としては、特に制限はなく、顔料に応じて適宜選択することができ、例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などを使用することが可能である。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
<その他の成分>
本発明のインクは必要に応じてその他の成分を添加してもよい。
溶媒としては、水以外のものを添加してもよく、例えば水溶性有機溶剤などが挙げられる。
添加剤は、必要に応じて添加してよい。
【0049】
<水>
前記インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0050】
<有機溶剤>
前記インクに使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0051】
有機溶剤として、炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0052】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
前記インクにおける前記有機溶剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、前記インク全量に対して、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
<添加剤>
前記インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えてもよい。
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等が、使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH
4、NH
3CH
2CH
2OH、NH
2(CH
2CH
2OH)
2、NH(CH
2CH
2OH)
3等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【化1】
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。 これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【化2】
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
一般式(F-2)
C
nF
2n+1-CH
2CH(OH)CH
2-O-(CH
2CH
2O)
a-Y
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はC
mF
2m+1でmは1~6の整数、又はCH
2CH(OH)CH
2-C
mF
2m+1でmは4~6の整数、又はC
pH
2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0053】
前記インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0054】
なお、本発明の処理液及びインク中に含有されている有機溶剤、樹脂、顔料、その他成分等の定性方法、定量方法としては、例えば、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)などが挙げられる。例えば、前記ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)による測定装置としては、例えば、GCMS-QP2020NX(株式会社島津製作所製)などが挙げられる。
インクに含まれる水分量は、一般的な方法として、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)による揮発成分の定量や、熱重量・示差熱同時測定法(TG-DTA)による質量変動等により測定することができる。
【0055】
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0056】
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0057】
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0058】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0059】
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0060】
<記録媒体>
記録媒体としては特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできる。
記録媒体としては、一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、壁紙、床材等の建材、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。
【0061】
本発明において、記録に用いる記録媒体としては布帛が好ましい。布帛を構成する素材としては、特に限定されず、例えば、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、ポリプロピレン、ポリエステル、アセテート、トリアセテート、ポリアミド、ポリウレタン等の合成繊維、ポリ乳酸等の生分解性繊維などが挙げられ、これらの混紡繊維であってもよい。布帛としては、上記に挙げた繊維を、織物、編物、不織布等いずれの形態にしたものでもよく、繊維の太さや網目の大きさに制限はない。
【0062】
通常、ポリエステル等の合成繊維に対して発色性と堅牢性を両立させることは難しいが、本発明ではポリエステル等の合成繊維に対しても良好な効果を示す。
本発明の印刷方法は、本発明における処理液を記録媒体に付与する、処理液付与工程を含み、前記処理液を付与した記録媒体に、顔料及び樹脂を含有するインクを付与するインク付与工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
なお、本発明のインクジェット印刷装置およびインクジェット印刷方法では、例えば記録媒体に処理液が付与された後に、好ましくはその場所にインクが吐出される。
【0063】
<記録物>
本発明のインク記録物は、記録媒体上に、本発明のインクを用いて形成された画像を有してなる。
インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法により記録して記録物とすることができる。
【0064】
<記録装置、記録方法>
本発明のインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
本発明において、記録装置、記録方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この記録装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
記録装置、記録方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有しても良い。加熱手段、乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
また、記録装置、記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
記録装置の一例について
図1乃至
図2を参照して説明する。
図1は同装置の斜視説明図である。
図2はメインタンクの斜視説明図である。記録装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
【0065】
この記録装置には、インクを吐出する部分だけでなく、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
前処理装置、後処理装置の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)などのインクの場合と同様に、前処理液や、後処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、前処理液や、後処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。
前処理装置、後処理装置の他の態様として、インクジェット記録方式以外の、例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法による前処理装置、後処理装置を設ける態様がある。
【0066】
なお、インクの使用方法としては、インクジェット記録方法に制限されず、広く使用することが可能である。インクジェット記録方法以外にも、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。
【0067】
本発明のインクの用途は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、印刷物、塗料、コーティング材、下地用などに応用することが可能である。さらに、インクとして用いて2次元の文字や画像を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。
立体造形物を造形するための立体造形装置は、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、インクの収容手段、供給手段、吐出手段や乾燥手段等を備えるものを使用することができる。立体造形物には、インクを重ね塗りするなどして得られる立体造形物が含まれる。また、記録媒体等の基材上にインクを付与した構造体を加工してなる成形加工品も含まれる。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された記録物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形する用途に好適に使用される。
【0068】
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。
【0069】
記録媒体、メディア、被印刷物は、いずれも同義語とする。
【実施例0070】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
また、以下の記載においては特に明記しない限り、「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示す。
【0071】
<シリコーンオイルエマルションの合成>
―シリコーンオイルエマルション1の合成―
温度計・攪拌手段を備えたガラス製の反応容器に、オクタメチルシクロテトラシロキサンを300質量部、ヘキサメチルジシロキサンを6質量部入れ、水酸化カリウム存在下で70℃6時間重合反応させた。その後、加熱、減圧蒸留することにより、シリコーンオイル1を得た。
シリコーンオイル1の重量平均分子量(Mw)は80000であった。
さらに、シリコーンオイル1を200部、ポリエチレングリコールドデシルエーテルを10部、ポリエチレングリコールヘキサデシルエーテルを10部、およびイオン交換水20部をビーカーに入れて混合し、ホモミキサーを用いて乳化した後、イオン交換水260部を加えて希釈し、シリコーンオイルエマルション1を得た。
【0072】
―シリコーンオイルエマルション2の合成―
ヘキサメチルジシロキサンを8.2部入れる以外は、シリコーンオイルエマルション1と同様にして合成し、シリコーンオイル2、シリコーンオイルエマルション2を得た。
シリコーンオイル2の重量平均分子量(Mw)は52000であった。
【0073】
―シリコーンオイルエマルション3の合成―
ヘキサメチルジシロキサンを8.5部入れる以外は、シリコーンオイルエマルション1と同様にして合成し、シリコーンオイル3、シリコーンオイルエマルション3を得た。
シリコーンオイル3の重量平均分子量(Mw)は44000であった。
【0074】
―シリコーンオイルエマルション4の合成―
ヘキサメチルジシロキサンを5.6部入れる以外は、シリコーンオイルエマルション1と同様にして合成し、シリコーンオイル4、シリコーンオイルエマルション4を得た。
シリコーンオイル4の重量平均分子量(Mw)は96000であった。
【0075】
―シリコーンオイルエマルション5の合成―
ヘキサメチルジシロキサンを5.2部入れる以外は、シリコーンオイルエマルション1と同様にして合成し、シリコーンオイル5、シリコーンオイルエマルション5を得た。
シリコーンオイル5の重量平均分子量(Mw)は120000であった。
【0076】
―シリコーンオイルエマルション6の合成―
ヘキサメチルジシロキサンを5.0部入れる以外は、シリコーンオイルエマルション1と同様にして合成し、シリコーンオイル6、シリコーンオイルエマルション6を得た。
シリコーンオイル6の重量平均分子量(Mw)は155000であった。
【0077】
<処理液の調製>
下記表1-1及び表1-2に示す処方及び配合量(%)で材料を混合攪拌し、5μmのフィルター(ザルトリウス社製、ミニザルト)で濾過することにより処理液1~23を得た。
【0078】
使用した添加剤の詳細を以下に示す。
・工業用プロピレングリコール(株式会社ADEKA製、溶剤)
・シルフェイスSAG-503A(日信化学工業株式会社製、シリコーン系界面活性剤)
・プロキセルLV(アビシア社製、防腐剤)
なお、表1-1及び表1-2に記載の有機酸塩は全て塩濃度、シリコーンオイルエマルションは固形分量で記載している。
【0079】
【0080】
【0081】
<ブラック顔料分散体の調製>
以下の処方混合物をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製、KDL型、メディア:直径0.3mmジルコニアボール使用)で7時間循環分散してブラック顔料分散体(顔料濃度:15%)を得た。
下記の部数は質量部を表し、全体を100質量部とした。
・カーボンブラック顔料: 15部
(商品名:Monarch800、キャボット社製)
・アニオン性界面活性剤: 3部
(商品名:パイオニンA-51-B、竹本油脂株式会社製)
・イオン交換水: 残部
【0082】
<樹脂エマルションの合成>
―ポリカーボネートウレタン樹脂エマルション1の合成例―
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹込み管を備えた四つ口フラスコに、ポリカーボネートジオール(1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートの反応生成物(数平均分子量(Mn):1,600)を1,500部、2,2-ジメチロールプロピオン酸を220部、及びN-メチルピロリドンを1,347部、窒素気流下で仕込み、60℃に加熱して、2,2-ジメチロールプロピオン酸を溶解させた。
次いで、ジシクロヘキシルメタン4,4‘-ジイソシアナート1,445部、ジブチルスズジラウリレート(触媒)2.6部を加えて90℃まで加熱し、5時間反応させることで、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得た。 この反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン149部を添加、混合したものから4,340gを抜き出して、強撹拌下、水5,400部、及びトリエチルアミン15部の混合溶液の中に加えた。
次に、氷1,500部を投入し、35%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液626部を加えて鎖延長反応を行い、固形分濃度が40%となるように溶媒を留去し、ポリカーボネートウレタン樹脂エマルション1を得た。
【0083】
―ガラス転移温度の測定―
得られたポリカーボネートウレタン樹脂エマルション1について、ガラス転移温度(Tg)を示差走査熱量計(DSC)(TAインスツルメンツ社製Q2000)を用いて測定した。
3gのポリカーボネートウレタン樹脂エマルション1を均一に広がるように容器に入れ、それを50℃で24時間乾燥させ、次いで100℃で5時間乾燥させて測定サンプルの固形物を得た。
【0084】
測定サンプルについて、ガラス転移温度を、示差走査熱量計を用いて以下の条件にて測定した。
(測定条件)
・サンプル容器:アルミニウム製サンプルパン(蓋有り)
・サンプル量:5mg
・リファレンスアルミニウム製サンプルパン(空の容器)
・雰囲気:窒素(流量50mL/min)
・開始温度:-20℃
・昇温速度:10℃/min
・終了温度:150℃
・保持時間:1min
・降温速度:5℃/min
・終了温度:-50℃
・保持時間:5min
・昇温速度:10℃/min
・終了温度:150℃
【0085】
以上の測定条件にて、測定を行い、「吸発熱量」と「温度」とのグラフを作成した。
第二昇温過程にて観測される特徴的な変曲部を、ガラス転移温度(Tg)とした。
なお、これらは、DSC曲線からミッドポイント法によって得た値を使用した。
ポリカーボネートウレタン樹脂エマルション1のTgは-30℃であった。
【0086】
―ポリカーボネート樹脂エマルション2の合成例―
前記ポリカーボネートウレタン樹脂エマルション1と同様にして、ポリカーボネートジオール(1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートの反応生成物(数平均分子量(Mn):1,600)を、ポリカーボネートジオール(3-メチル-1,5-ペンタンジオールとジフェニルカーボネートの反応生成物)(数平均分子量(Mn):1,200)に変更した以外は、樹脂エマルション1の合成例と同様にして、固形分濃度40%のポリカーボネートウレタン樹脂エマルション2を得た。
得られたポリカーボネートウレタン樹脂エマルション2について、ポリカーボネートウレタン樹脂エマルション1と同様にしてガラス転移温度を測定したところ、Tgは10℃であった。
【0087】
<インクの調製>
下記表2に示す処方及び配合量(%)で材料を混合攪拌し、0.8μmのフィルター(ザルトリウス社製、ミニザルト)で濾過することによりインク1~6を得た。
色材および樹脂の含有量は固形分換算値である。
インク1~6の乾燥膜の破断伸度(%)も表2に示す。
インク成分として使用した添加剤の詳細を以下に示す。
・精製グリセリン(阪本薬品工業社製、溶剤)
・ソルフィットMMB(クラレ社製、溶剤)
・BYK348(BYK社製、シリコーン系界面活性剤)
・AD01(Envirogem AD01、AIR PRODUCT社製)
・プロキセルLV(アビシア社製、防腐剤)
【0088】
【0089】
<実施例1~24及び比較例1~5>
表3に示す処理液1~23とインク1~6とを組み合わせて、処理液とインクのセット1~29とし、実施例1~24、及び比較例1~5について、以下のようにして諸特性を評価した。
【0090】
―画像形成方法―
トムス社製ポリエステル生地に対して、前記処理液1~23を、A4サイズあたり13gスプレー塗布した後にヒートプレスにて180℃で35秒乾燥し、インクジェットプリンター(株式会社リコー製、Ri100)を用いて、前記インク1~6をインクの付着量が1.9mg/cm2となるように調整後、600×600dpiでベタ印字を行い、ヒートプレスにて180℃で35秒乾燥させ、実施例1~24、比較例1~4のベタ印字画像を得た。
比較例5では、処理液の塗布をせずにヒートプレスにて180℃で35秒乾燥させたのち、実施例1~24、比較例1~4と同様にしてベタ印字画像を得た。
【0091】
-洗濯堅牢性評価-
JIS L1930 A形 3Nに準拠し家庭洗濯試験(洗濯堅牢性試験)を行い、ベタ印字画像の洗濯前後のODを測色し、下記評価基準に基づいて判断した。なお、A、B、Cが許容範囲である。
〔評価基準〕
A:試験前後のΔL値が6未満
B:試験前後のΔL値が6以上10未満
C:試験前後のΔL値が10以上15未満
D:試験前後のΔL値が15以上
【0092】
-摩擦堅牢性評価-
得られたベタ印字画像を日本工業規格(JIS)JIS L0849に準拠し学振型摩擦堅牢度試験機を用いて摩擦堅牢性試験(乾摩擦)を行い、綿布への転写ODを測色し下記評価基準に基づいて判断した。なお、A、B、Cが許容範囲である。
[評価基準]
A:試験後の綿布の転写ODが0.12未満
B:試験後の綿布の転写ODが0.12以上0.18未満
C:試験後の綿布の転写ODが0.18以上0.22未満
D:試験後の綿布の転写ODが0.22以上
【0093】
-画像濃度評価-
得られたベタ印字画像を分光測色計(X-Rite eXact、X-Rite社製)を用いて測定し、以下の基準で判断した。なお、A、B、Cが許容範囲である。
[評価基準]
A:画像濃度1.28以上
B:画像濃度1.23以上1.28未満
C:画像濃度1.2以上1.23未満
D:画像濃度1.2未満
【0094】
-風合い評価-
JIS L1069 E法に基づき、一片9cmに切り出したべた画像を用いて、風合い(剛軟度)を測定し、以下の基準で判断した。なお、A、Bが許容範囲である。
〔評価基準〕
A:8g未満
B:8g以上12g未満
C:12g以上
【表3】
【0095】
表3の結果から、各実施例では各特性において実用上十分あるいはそれ以上のレベルを示したが、各比較例では各特性を同時に満足させることができなかった。
【0096】
本発明の実施の態様は例えば以下のとおりである。
(1)記録媒体に画像を形成するために用いられる、前処理液組成物と、インク組成物と、を有する液体組成物セットであって、
前記インク組成物が色材及び樹脂を含み、
前記前処理液組成物が有機酸塩及びシリコーンオイルエマルションを含み、
前記前処理液組成物中の前記シリコーンオイルエマルションの含有量が0.2質量%以上3質量%以下である液体組成物セット。
(2)前記記録媒体が布帛からなる、上記(1)に記載の液体組成物セット。
(3)前記布帛が合成繊維からなる、上記(2)に記載の液体組成物セット。
(4)前記前処理液組成物に含まれる前記シリコーンオイルエマルション中のシリコーンオイルの重量平均分子量が50000以上100000以下である、上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の液体組成物セット。
(5)前記前処理液組成物に含まれる有機酸塩の陽イオン濃度が0.05質量%以上1.65質量%以下である、上記(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の液体組成物セット。
(6)前記有機酸塩が乳酸塩である、上記(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の液体組成物セット。
(7)前記乳酸塩が乳酸アンモニウムである、上記(6)に記載の液体組成物セット。
(8)前記インク組成物中の前記樹脂の含有量が5質量%以上15質量%以下である、上記(1)乃至(7)のいずれか1項に記載の液体組成物セット。
(9)前記インク組成物を吐出し乾燥させた乾燥膜の破断伸度が700%以上である、上記(1)乃至(8)のいずれか1項に記載の液体組成物セット。
(10)前処理液組成物と、インク組成物と、を有する液体組成物セットを用いて記録媒体上に画像を形成する画像形成方法であって、
前記記録媒体に前記前処理液組成物を付与する工程と、
前記前処理液が付与された記録媒体上に、インク組成物を付与する工程と、
を含み、
前記液体組成物セットが、上記(1)乃至(9)のいずれか1項に記載の液体組成物セットであることを特徴とする画像形成方法。
(11)前記記録媒体が合成繊維から成る布帛である、上記(10)に記載の画像形成方法。
(12)前処理液組成物と、インク組成物と、を有する液体組成物セットを用いて記録媒体上に画像を形成する画像形成装置であって、
前記記録媒体に前記前処理液組成物を付与する手段と、
前記前処理液が付与された記録媒体上に、インク組成物を付与する手段と、
を含み、
前記インク組成物を付与する手段が、ノズルからインク組成物を吐出させる手段であり、
前記液体組成物セットが、上記(1)乃至(9)のいずれか1項に記載の液体組成物セットであることを特徴とする画像形成装置。