(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005532
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】導電性フィルム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
G06F3/041 490
G06F3/041 495
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105745
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 滋英
(57)【要約】
【課題】金属配線の線見えを抑制し、視認性の向上を図った導電性フィルムを提供する。
【解決手段】基板と、板上に配置され、金属配線からなる導電層とを有する、導電性フィルムであって、金属配線の幅が2μm以下であり、金属配線の高さが1μm以下であり、金属配線が、基板側から、金属層と、第1黒化層と、第2黒化層とをこの順に有する。第1黒化層及び第2黒化層は金属原子と、酸素原子及び窒素原子からなる群から選択される少なくとも1種とを含む層であり、第1黒化層は、第1黒化層の厚み方向の中間位置における金属原子の含有量が、第2黒化層の厚み方向の中間位置における金属原子の含有量よりも多い。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置され、金属配線からなる導電層とを有する、導電性フィルムであって、
前記金属配線の幅が2μm以下であり、前記金属配線の高さが1μm以下であり、
前記金属配線が、前記基板側から、金属層と、第1黒化層と、第2黒化層とをこの順に有し、
前記第1黒化層及び前記第2黒化層は、金属原子と、酸素原子及び窒素原子からなる群から選択される少なくとも1種とを含む層であり、
前記第1黒化層は、前記第1黒化層の厚み方向の中間位置における前記金属原子の含有量が、前記第2黒化層の厚み方向の中間位置における前記金属原子の含有量よりも多い、導電性フィルム。
【請求項2】
前記金属層の側面に配置された、第3黒化層をさらに有し、
前記第3黒化層は、金属原子と、酸素原子及び窒素原子からなる群から選択される少なくとも1種とを含む層である、請求項1に記載の導電性フィルム。
【請求項3】
前記第2黒化層の厚みが、前記第1黒化層の厚みよりも厚い、請求項1又は2に記載の導電性フィルム。
【請求項4】
前記第2黒化層の厚みが、10~50nmである、請求項1又は2に記載の導電性フィルム。
【請求項5】
前記金属原子が、Cuを含む、請求項1又は2に記載の導電性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル等に利用される導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
タブレット型コンピュータ及びスマートフォン等の携帯情報機器を始めとした各種の電子機器において、液晶表示装置等の表示装置と組み合わせて用いられ、指、スタイラスペン等を画面に接触又は近接させることにより電子機器への入力操作を行うタッチパネルがある。
タッチパネルは、通常、指及びスタイラスペン等によるタッチ操作を検出するための複数の検出電極等が形成された導電性フィルムがタッチセンサーとして用いられている。導電性フィルムの検出電極はITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)等の透明導電性酸化物又は金属等により形成される。金属は透明導電性酸化物に比べてパターニングがしやすく、屈曲性に優れ、電気抵抗値がより低い等の利点がある。このため、導電性フィルムにおいて銅又は銀等の金属が、検出電極を構成する金属配線に用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1に、透明フィルム基材の少なくとも片面に酸化銅と銅とが順に薄膜形成され、酸化銅と銅が共に1~10μmの線幅に導電パターンが形成された透明導電積層体の製造方法が記載されている。酸化銅膜と銅膜とはスパッタリング法を用いて形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の酸化銅膜と銅膜とが積層された透明導電積層体を、タッチパネルのタッチセンサーに用いた場合、導電パターンの銅膜の部分がタッチパネルの使用者に視認されやすく、視認性が悪い。特許文献1の導電パターンは上述の金属配線に相当し、透明導電積層体は導電性フィルムに相当する。
導電パターンが使用者に視認される現象のことを「線見え」と呼ぶこともある。
タッチセンサーの視認性の観点から、導電性フィルムの金属配線が視認されないことが望まれていることから、導電性フィルムの金属配線の線見えを抑制することが望まれている。
【0006】
本発明の目的は、金属配線の線見えを抑制し、視認性の向上を図った導電性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、発明[1]は、基板と、基板上に配置され、金属配線からなる導電層とを有する、導電性フィルムであって、金属配線の幅が2μm以下であり、金属配線の高さが1μm以下であり、金属配線が、基板側から、金属層と、第1黒化層と、第2黒化層とをこの順に有し、第1黒化層及び第2黒化層は、金属原子と、酸素原子及び窒素原子からなる群から選択される少なくとも1種とを含む層であり、第1黒化層は、第1黒化層の厚み方向の中間位置における金属原子の含有量が、第2黒化層の厚み方向の中間位置における金属原子の含有量よりも多い、導電性フィルムを提供するものである。
発明[2]は、金属層の側面に配置された、第3黒化層をさらに有し、第3黒化層は、金属原子と、酸素原子及び窒素原子からなる群から選択される少なくとも1種とを含む層である、発明[1]に記載の導電性フィルム。
【0008】
発明[3]は、第2黒化層の厚みが、第1黒化層の厚みよりも厚い、発明[1]又は[2]に記載の導電性フィルム。
発明[4]は、第2黒化層の厚みが、10~50nmである、発明[1]~[3]のいずれか1つに記載の導電性フィルム。
発明[5]は、金属原子が、Cuを含む、発明[1]~[4]のいずれか1つに記載の導電性フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、金属配線の線見えを抑制し、視認性が良好な導電性フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態の導電性フィルムを有する画像表示装置の第1の例を示す模式的断面図である。
【
図2】本発明の実施形態の導電性フィルムの第1の例を示す模式的平面図である。
【
図3】本発明の実施形態の導電性フィルムの第1の例を示す模式的断面図である。
【
図4】本発明の実施形態の導電性フィルムの第2の例を示す模式的断面図である。
【
図5】本発明の実施形態の導電性フィルムの電極構成を示す模式図である。
【
図6】本発明の実施形態の導電性フィルムのメッシュパターンの形状の一例を示す模式図である。
【
図7】本発明の実施形態の導電性フィルムを有する画像表示装置の第2の例を示す模式的断面図である。
【
図8】本発明の実施形態の導電性フィルムの第1の例の製造方法の一工程を示す模式的断面図である。
【
図9】本発明の実施形態の導電性フィルムの第1の例の製造方法の一工程を示す模式的断面図である。
【
図10】本発明の実施形態の導電性フィルムの第1の例の製造方法の一工程を示す模式的断面図である。
【
図11】本発明の実施形態の導電性フィルムの第2の例の製造方法の一工程を示す模式的断面図である。
【
図12】本発明の実施形態の導電性フィルムの第2の例の製造方法の一工程を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の導電性フィルムを詳細に説明する。
なお、以下に説明する図は、本発明を説明するための例示的なものであり、以下に示す図に本発明が限定されるものではない。
なお、以下において数値範囲を示す「~」とは両側に記載された数値を含む。例えば、εが数値εα~数値εβとは、εの範囲は数値εαと数値εαを含む範囲であり、数学記号で示せばεα≦ε≦εαである。
「平行」、及び「直交」等の角度は、特に記載がなければ、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。
【0012】
透明とは、特に断りがなければ、光透過率が、波長380~780nmの可視光波長域において、40%以上のことであり、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上のことである。
光透過率は、JIS(日本産業規格) K 7375:2008に規定される「プラスチック-全光線透過率及び全光線反射率の求め方」を用いて測定されるものである。
また、絶縁とは、特に断りがなければ、電気的な絶縁を意味する。絶縁基板は、電気絶縁性を有する基板であり、使用する用途に応じた電気抵抗を有する。例えば、絶縁基板の両面に導電線が形成された場合、両面に形成された導電線同士は導通しない。
【0013】
(画像表示装置の第1の例)
図1は本発明の実施形態の導電性フィルムを有する画像表示装置の第1の例を示す模式的断面図である。
図1に示す第1例の画像表示装置10は、タッチパネル12と、画像表示部14とを有し、画像表示部14の表示面14a側にタッチパネル12が積層されたものである。画像表示装置10は、画像表示部14に表示された画像等の領域にタッチしたことを検出することができる。
画像表示装置10では、タッチパネル12と画像表示部14とは第1の透明絶縁層15を介して積層されている。タッチパネル12は、導電性フィルム18上に第2の透明絶縁層17を介してカバー層16が設けられている。第1の透明絶縁層15は、画像表示部14の表示面14a全域に設けられている。例えば、カバー層16の表面16a側から見た場合、導電性フィルム18と第2の透明絶縁層17とは同じ大きさである。また、カバー層16の表面16a側から見た場合、画像表示部14は導電性フィルム18よりも小さく、画像表示部14と第1の透明絶縁層15とが同じ大きさである。
画像表示装置10では、画像表示部14の表示面14aに表示された表示物(図示せず)が視認できるように画像表示部14の表示面14a側に配置される第1の透明絶縁層15、導電性フィルム18、第2の透明絶縁層17及びカバー層16はいずれも透明であることが好ましい。
【0014】
カバー層16は、ガラスで構成されていれば、カバーガラスと呼ばれる。
カバー層16の表面16aが、画像表示装置10のタッチ面であり、操作面となる。画像表示装置10は、カバー層16の表面16aを操作面として入力操作される。なお、タッチ面とは、指又はスタイラスペン等が接触する面である。カバー層16の表面16aが、画像表示部14の表示面14aに表示された表示物(図示せず)の視認面となる。
画像表示部14の裏面14bにコントローラ13が設けられている。導電性フィルム18とコントローラ13とが、例えば、フレキシブル回路基板19等の可撓性を有する配線部材で電気的に接続されている。
【0015】
カバー層16の裏面16bに、遮光機能を有する加飾層(図示せず)を設けてもよい。加飾層は、例えば、カバー層16の表面16a側から見た場合における、カバー層16の外縁に沿って設けられる。加飾層が設けられている領域は額縁部と呼ばれる。額縁部は加飾層により、その下側にある構成物、例えば、後述する導電性フィルム18の電極端子及び周辺配線を視認させない。
【0016】
コントローラ13はタッチ面であるカバー層16の表面16aの指等の接触の検出に利用される公知のものにより構成される。タッチパネル12が静電容量方式の場合、タッチ面であるカバー層16の表面16aの指等の接触により、導電性フィルム18において静電容量が変化した位置がコントローラ13で検出される。静電容量方式のタッチパネルには、相互容量方式のタッチパネル及び自己容量方式のタッチパネルがあるが、特に限定されるものではない。
【0017】
カバー層16は、導電性フィルム18を保護するものである。カバー層16は、その構成は、特に限定されるものではない。カバー層16は、画像表示部14の表示面14aに表示された表示物(図示せず)が視認できるように透明であることが好ましい。カバー層16は、例えば、ガラス板、化学強化ガラス、及び無アルカリガラス等で構成される。カバー層16の厚みはそれぞれの用途に応じて適宜選択することが好ましい。カバー層16は、ガラス板以外に、プラスチックフィルム及びプラスチック板等が用いられる。
上述のプラスチックフィルム及びプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVA(酢酸ビニル共重合ポリエチレン)等のポリオレフィン樹脂;ビニル系樹脂;その他、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)、シクロオレフィン系樹脂(COP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルサルホン(PES)、フルオレン誘導体、及び、結晶性COP等を用いることができる。
なお、(メタ)アクリル樹脂とは、アクリル樹脂とメタクリル樹脂とを含む総称である。
また、カバー層16は、偏光板、又は円偏光板等を有する構成でもよい。
カバー層16の表面16aは、上述のようにタッチ面となるため、必要に応じて表面16aにハードコート層を設けてもよい。なお、カバー層16の厚みとしては、例えば、0.1~1.3mmであり、特に0.1~0.7mmが好ましい。
【0018】
第1の透明絶縁層15は、透明であり、かつ電気絶縁性を有するものであり、かつ安定してタッチパネル12と画像表示部14とを固定することができれば、その構成は、特に限定されるものではない。第1の透明絶縁層15としては、例えば、光学的に透明な粘着剤(OCA、Optical Clear Adhesive)及びUV(Ultra Violet)硬化樹脂等の光学的に透明な樹脂(OCR、Optical Clear Resin)を用いることができる。また、第1の透明絶縁層15は部分的に中空でもよい。
なお、第1の透明絶縁層15を設けることなく、画像表示部14の表示面14a上に隙間をあけてタッチパネル12を離間して設ける構成でもよい。この隙間のことをエアギャップともいう。
また、第2の透明絶縁層17は、透明であり、かつ電気絶縁性を有するものであり、かつ安定して導電性フィルム18とカバー層16とを固定することができれば、その構成は、特に限定されるものではない。第2の透明絶縁層17は第1の透明絶縁層15と同じものを用いることができる。
【0019】
画像表示部14は、画像等の表示物を表示する表示面14aを備えるものであり、例えば、液晶表示装置である。画像表示部14は、液晶表示装置に限定されるものではなく、有機EL(Organic electro luminescence)表示装置でもよい。画像表示部14は、上述のもの以外に、陰極線管(CRT)表示装置、真空蛍光ディスプレイ(VFD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、表面電界ディスプレイ(SED)、電界放出ディスプレイ(FED)、及び電子ペーパー等を利用することができる。
画像表示部14は、その用途に応じたものが適宜利用されるが、画像表示装置10の厚みを薄く構成するために、液晶表示パネル、及び有機ELパネル等のパネルの形態とすることが好ましい。
【0020】
(タッチパネル)
以下、タッチパネル12について
図1及び
図2を用いて説明する。
図2は本発明の実施形態の導電性フィルムの一例を示す模式的平面図である。なお、
図2において、
図1に示す画像表示装置10と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
タッチパネル12は、コントローラ13と、導電性フィルム18と、カバー層16とを有する。導電性フィルム18は、タッチセンサーとして機能するものである。
導電性フィルム18は、例えば、基板24と、基板24の表面24a上に配置された金属配線35(
図3参照)と、金属配線35を被覆する透明絶縁層27(
図1参照)とを有する。
【0021】
基板24の表面24aには、複数の第1検出電極30を有する第1検出電極層29Aと、一端が第1検出電極層29Aの第1検出電極30に電気的に接続され、他端に第1外部接続端子26aが設けられた複数の第1周辺配線23aとを有する第1導電層11Aが設けられている。第1導電層11Aが透明絶縁層27により被覆されている。
第1検出電極30は金属配線35(
図3参照)により構成される。第1検出電極30を構成する金属配線35のことを第1の金属配線という。第1の金属配線は、基板24の表面24aに配置されている。
【0022】
第1外部接続端子26aには、フレキシブル回路基板19が電気的に接続されて、コントローラ13と接続されている。
また、透明絶縁層27上に、さらに金属配線35が配置されている。第2検出電極32は金属配線35により構成される。
透明絶縁層27上に、複数の第2検出電極32を有する第2検出電極層29Bと、一端が第2検出電極32に電気的に接続され、他端に第2外部接続端子26bが設けられた複数の第2周辺配線23bとを有する第2導電層11Bを有する。第1導電層11Aと同じく、第2外部接続端子26bには、フレキシブル回路基板19が電気的に接続されて、コントローラ13と接続されている。
第2検出電極32は金属配線35(
図3参照)により構成される。第2検出電極32を構成する金属配線35のことを第2の金属配線という。第2の金属配線は、透明絶縁層27上に配置されている。上述のように、第1検出電極30では、第1の金属配線といい、第2検出電極32では第2の金属配線という。第1の金属配線と第2の金属配線とをまとめて、金属配線35という。特に断りがなければ、金属配線35は、第1の金属配線と第2の金属配線とを含む。
【0023】
(導電性フィルム)
導電性フィルム18について、
図2及び
図3を用いて説明する。
図3は本発明の実施形態の導電性フィルムの第1の例を示す模式的断面図である。なお、
図3において、
図1に示す画像表示装置10と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図2に示す導電性フィルム18は、タッチパネル12のタッチセンサーと機能する部位であり、使用者によって入力操作が可能な検出領域E
1である検出部20と、検出領域E
1の外側に位置する周辺領域E
2に周辺配線部22とを有する。
検出部20は、例えば、第1検出電極層29Aと第2検出電極層29Bとを有する。第1検出電極層29Aと第2検出電極層29Bとは、透明絶縁層27を介して配置されている。第1検出電極層29Aと第2検出電極層29Bとは透明絶縁層27により電気的に絶縁される。透明絶縁層27は電気的な絶縁層として機能する。
第1検出電極層29Aは、複数の第1検出電極30と隣接した第1検出電極30間に配置され、第1検出電極30と絶縁された複数の第1ダミー電極31aとを有する。
【0024】
複数の第1検出電極30は、互いに平行にX方向に延びる帯状の電極であり、互いにX方向と直交するY方向に間隔をあけて、互いにY方向において電気的に絶縁された状態で基板24の表面24a(
図1参照)上に設けられている。また、複数の第1ダミー電極31aは、第1検出電極30間に配置され、第1検出電極30と電気的に絶縁された状態で基板24の表面24a(
図1参照)上に設けられている。第1検出電極30は、それぞれX方向の少なくとも一端に第1電極端子33が設けられている。
第2検出電極層29Bは、複数の第2検出電極32と隣接した第2検出電極32間に配置され、第2検出電極32と絶縁された複数の第2ダミー電極31bとを有する。複数の第2検出電極32は、互いに平行にY方向に延びる帯状の電極であり、互いにX方向に間隔をあけて、互いにX方向において電気的に絶縁された状態で透明絶縁層27の表面27a(
図1参照)上に設けられている。また、複数の第2ダミー電極31bは、第2検出電極32間に配置され、第2検出電極32と電気的に絶縁された状態で透明絶縁層27の表面27a(
図1参照)上に設けられている。第2検出電極32は、それぞれY方向の一方の端に第2電極端子34が設けられている。
【0025】
複数の第1検出電極30と複数の第2検出電極32とは、直交して設けられているが、上述のように透明絶縁層27により互いに電気的に絶縁されている。
なお、第1検出電極30及び第2検出電極32における第1ダミー電極31a及び第2ダミー電極31bは、第1検出電極30又は第2検出電極32と断線部により分断されており、電気的に接続されていない領域である。このため、上述のように、複数の第1検出電極30は互いにY方向において電気的に絶縁された状態であり、複数の第2検出電極32は互いにX方向において電気的に絶縁された状態である。
図2に示すように検出部20では、第1検出電極30が6つ、第2検出電極32が5つ設けられているが、その数は特に限定されるものではなく複数あればよい。
【0026】
第1検出電極層29Aと第2検出電極層29Bとは、上述のように金属配線35(
図3参照)により構成される。第1検出電極30及び第2検出電極32が、金属配線35によるメッシュパターンを有する金属メッシュである場合、第1ダミー電極31a及び第2ダミー電極31bも金属配線35によるメッシュパターンを有する金属メッシュである。
第1検出電極30の電極幅及び第2検出電極32の電極幅は、例えば、1~5mmであり、電極間ピッチは3~6mmである。第1検出電極30の電極幅はY方向の最大長さであり、第2検出電極32の電極幅はX方向の最大長さである。
【0027】
周辺配線部22は、第1検出電極30及び第2検出電極32にタッチ駆動信号及びタッチ検出信号をコントローラ13から送信又は伝達するための配線である周辺配線(第1周辺配線23a、第2周辺配線23b)が配置された領域である。周辺配線部22は、複数の第1周辺配線23a及び複数の第2周辺配線23bを有する。第1周辺配線23aは、一端が第1電極端子33を介して第1検出電極30に電気的に接続され、他端が第1外部接続端子26aに電気的に接続されている。また、第2周辺配線23bは、一端が第2電極端子34を介して第2検出電極32に電気的に接続されて、他端が第2外部接続端子26bに電気的に接続されている。
なお、第1電極端子33、及び第2電極端子34は、塗潰し膜形状でもよく、特開2013-127658号公報に示されるようなメッシュ形状でもよい。第1電極端子33及び第2電極端子34の幅の好ましい範囲は、それぞれ第1検出電極30及び第2検出電極32の電極幅の1/3倍以上1.2倍以下である。
【0028】
第1導電層11Aの第1検出電極30と第1ダミー電極31aと第1電極端子33と第1周辺配線23aとは、電気抵抗、及び断線の発生しにくさの等の観点から一体構成であることが好ましく、さらには同じ金属材料で形成することがより好ましい。この場合、第1導電層11Aは、例えば、リソグラフィ法等により形成される。
同じく、第2導電層11Bの第2検出電極32と第2ダミー電極31bと第2電極端子34と第2周辺配線23bとは、電気抵抗、及び断線の発生しにくさの等の観点から一体構成であることが好ましく、さらには同じ金属材料で形成することがより好ましい。この場合、第2導電層11Bは、例えば、リソグラフィ法等により形成される。
【0029】
なお、
図3では一部を省略し、基板24と、第1検出電極層29Aの第1検出電極30の金属配線35とを示している。
図3に示す金属配線35は、第1の金属配線である。
導電性フィルム18の金属配線35は、幅Wcが2μm以下であり、金属配線35の高さtcが1μm以下である。金属配線35の幅Wcは、厚み方向Dtと直交する方向における金属配線35の長さである。金属配線35の高さtcは、厚み方向Dtにおける金属配線35の長さである。厚み方向Dtは、基板24の表面24aに垂直な方向である。
【0030】
金属配線35は、基板24側から、金属層40と、第1黒化層42と、第2黒化層44とをこの順に有する。
第1黒化層42及び第2黒化層44は、金属原子と、酸素原子及び窒素原子からなる群から選択される少なくとも1種とを含む層である。例えば、金属原子が銅原子である場合、第1黒化層42及び第2黒化層44は、酸化銅、窒化銅又は酸窒化銅で構成されることが好ましい。なお、金属原子は、1種に限定されるものではなく、複数種であってもよく、例えば、金属原子は、銅とニッケルである。
第1黒化層42は、第1黒化層42の厚み方向Dtの中間位置における金属原子の含有量が、第2黒化層44の厚み方向Dtの中間位置における金属原子の含有量よりも多い。金属原子が複数種の場合、金属原子の含有量は、複数種の金属原子の合計の含有量である。
第1黒化層42において、第1黒化層42の厚み方向Dtの中間位置における金属原子の含有量は、60~90原子%が好ましく、70~85原子%がより好ましい。
第2黒化層44において、第2黒化層44の厚み方向Dtの中間位置における金属原子の含有量は、40~70原子%が好ましく、50~65原子%がより好ましい。
【0031】
第1黒化層42の厚み方向Dtの中間位置とは、厚み方向Dtにおける第1黒化層42の厚みtaの半分の位置である。
第2黒化層44の厚み方向Dtの中間位置とは、厚み方向Dtにおける第2黒化層44の厚みtbの半分の位置である。
第1黒化層42及び第2黒化層44は、金属配線35を視認しにくくして、線見えを抑制するためのものである。第1黒化層42及び第2黒化層44により、金属配線35反射率が小さくなって、金属配線35が視認されにくくなり、金属配線35の視認性が向上する。
【0032】
第1黒化層42の厚みtaは、50~100nmであることが好ましい。第1黒化層42の厚みtaは、厚み方向Dtにおける第1黒化層42の長さである。
第2黒化層44の厚みtbは、10~50nmであることが好ましい。第2黒化層44の厚みtbは、厚み方向Dtにおける第2黒化層44の長さである。
また、第2黒化層44は第1黒化層42よりも厚いと、金属配線35が見えにくくなるため、好ましい。
金属配線35の幅Wc、金属配線35の高さtc、第1黒化層42の厚みta及び第2黒化層44の厚みtbは、いずれも平均値である。金属配線35の幅Wc、金属配線35の高さtc、第1黒化層42の厚みta及び第2黒化層44の厚みtbの測定方法については後述する。
【0033】
また、金属配線35と基板24との界面、すなわち、金属層40と基板24の表面24aとの間に、基板24と金属層40との密着性を向上させる密着層(図示せず)を設けてもよい。例えば、金属配線35が銅で構成される場合、密着層は酸化銅で構成されることが好ましい。密着層を設けることにより、金属配線35と基板24との密着性を向上させ、金属配線35を基板24の表面24a上に安定して配置できる。
【0034】
図4は本発明の実施形態の導電性フィルムの第2の例を示す模式的断面図である。
図4において、
図3に示す導電性フィルム18と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
導電性フィルム18において、金属配線35は、
図3に示す構成に限定されるものではなく、例えば、
図4に示すように金属層40の側面40cに配置された、第3黒化層46をさらに有する構成でもよい。第3黒化層46は、金属配線35を視認しにくくして、線見えを抑制するためのものである。
第3黒化層46は、第1黒化層42及び第2黒化層44と同様に、金属原子と、酸素原子及び窒素原子からなる群から選択される少なくとも1種とを含む層である。
第1黒化層42及び第2黒化層44に加え、
図4に示すように金属層40の側面40cに第3黒化層46を有する金属配線35は、
図3に示す金属配線35に比して、金属層40の側面40cの反射率が小さく、金属配線35が更に視認されにくくなり、金属配線35の視認性が更に向上する。
【0035】
また、例えば、第3黒化層46は、第3黒化層46の厚み方向Dtの中間位置における金属原子の含有量が、上述の第2黒化層44の厚み方向Dtの中間位置における金属原子の含有量よりも多い。
また、例えば、第3黒化層46は、第1黒化層42よりも金属原子の含有量が多くてもよい。
第3黒化層46において、第3黒化層46の厚み方向Dtの中間位置における金属原子の含有量は、80~90原子%が好ましく、80~85原子%がより好ましい。
【0036】
金属配線35の高さtcは1μm以下であると電気抵抗が小さいが、金属配線35の電気抵抗がより小さくなるため、200~900nmが好ましく、より好ましくは300以上600nm未満である。
金属配線35の高さtcは低いほど好ましい。その理由は、より幅が狭い金属配線35をエッチングによりパターニングする際、金属配線35の高さが低く、すなわち、厚みが薄く、厚み方向のエッチングが一瞬で進むほど、横方向のオーバーエッチング及びアンダーカットの制御がしやすくなるためである。
金属配線35の幅Wcは2μm以下であると、視認されにくくなり、視認性が優れる。また、金属配線35の幅Wcは2μm以下であると、モアレが見えにくくなる。
金属配線35の幅Wcは、下限値については、導電性が保たれる範囲であれば狭いほど好ましい。加工プロセスでの擦り等の耐久性を考慮すると、金属配線35の幅Wcは1μm以上が好ましい。
また、後述するが、例えば、金属配線35によりメッシュパターン(
図5参照)が構成されており、金属配線35はメッシュパターン状(
図5参照)に配置される。
【0037】
ここで、スマートフォンに対してサイズの大きいタブレット又はノートPC(personal computer)に搭載されるタッチパネルには、指又はスタイラスペン等の接触又は近接によるタッチ操作を検出されるために、金属配線35の電気抵抗として、より低い細線抵抗が求められる。
指又はスタイラスペン等の操作に遅れが生じないためには、細線抵抗は80Ω/mm以下が好ましく、60Ω/mm以下がより好ましく、40Ω/mm以下がさらに好ましく、30Ω/mm以下が特に好ましい。
上述の金属配線の細線抵抗は、金属配線の電気抵抗を測定し、1mm長の電気抵抗に規格化(Ω/mm)したものである。電気抵抗は、例えば、抵抗計(日置電機株式会社製 RM3544)により測定できる。
【0038】
例えば、意匠性向上のためにディスプレイ周辺の額縁を狭くする狭額縁化のために、導電性フィルム18は、
図2に示す周辺配線部22の折曲げ領域Bfで、第1外部接続端子26a及び第2外部接続端子26bを外側にして折り曲げられる。第1外部接続端子26a及び第2外部接続端子26bに電気的に接続されたフレキシブル回路基板19が画像表示部14の表示面14a側とは反対の裏面14b側に配置される。
なお、第1周辺配線23a及び第2周辺配線23bは、後述のように金属配線35で構成することができる。
【0039】
なお、透明絶縁層27の厚みは1.0~5.0μmであることが好ましい。透明絶縁層27の厚みが1.0~5.0μmであれば、絶縁性と折り曲げ性を両立できる。また、透明絶縁層27の厚みは2~5μmであることがより好ましく、2.5~4.5μmであることがさらに好ましい。
透明絶縁層27の厚みは、導電性フィルム18を切断し、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて切断断面の断面画像を用いて測定する。断面画像において、透明絶縁層に該当する画像領域について、透明絶縁層の厚みに相当する長さを10箇所測定し、10箇所の測定値の平均値を求める。透明絶縁層の厚みは、上述の10箇所の測定値の平均値である。
【0040】
以下、導電性フィルム及びタッチパネルの各部について説明する。
<基板>
基板は、金属配線を支持するものであり、第1検出電極、及び金属配線で構成される第2検出電極を支持する。また、基板は、第1周辺配線、及び第2周辺配線を支持する。また、基板の両面のうち、一方の面に第1検出電極が配置され、他方の面に第2検出電極が配置されていれば、第1検出電極と第2検出電極とを電気的に絶縁する。基板には、例えば、透明絶縁基板が用いられる。基板の材料としては、例えば、透明樹脂材料及び透明無機材料等が挙げられる。基板は、厚みが20~50μmであることが好ましい。
【0041】
基板としては、コスト面からポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましい。耐熱性が必要な場合は、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム又はポリイミド系フィルムが使用できる。この他、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン系樹脂、メタクリル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-(ポリ)スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、又はポリアミドイミド系樹脂等から製造される厚みが20~50μmの範囲のフィルムを、基板として使用できる。
基板の全光線透過率は、40~100%であることが好ましく、85~100%がより好ましい。全光透過率は、例えば、JIS K 7375:2008に規定される「プラスチック-全光線透過率及び全光線反射率の求め方」を用いて測定されるものである。
【0042】
<金属配線>
金属配線35は、上述のように第1検出電極30(
図2参照)と、第2検出電極32(
図2参照)とを構成するものである。上述の第1導電層11A及び第2導電層11Bは金属配線からなる。金属配線35の形成方法は後に説明する。
金属配線35の金属層40に含まれる金属としては、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、及びアルミニウム(Al)等の金属又は合金等が挙げられる。なかでも、金属配線の導電性が優れる理由から、金属層40に含まれる金属は、銀又は銅であることが好ましく、銅又は銅合金がより好ましい。また、金属配線35の金属層40は、金属単体で構成されることに限定されるものではなく、酸化物等の層を含まない金属だけの多層構造であってもよい。
【0043】
金属層を銅で構成する場合、例えば、厚みが10~30μmの表面が平滑な電解銅箔若しくは圧延銅箔を接着剤を介して基板に積層したものを用いるか、又は蒸着法によりフィルムに厚みが2μm程度の銅層を形成したものを使用する。
銅箔をエッチングして形成する銅線の線幅は銅箔の厚みよりは細くできないので、所望の線幅から銅箔のタイプを決める必要がある。線幅が10μm程度以下と薄くなる場合には、基板に蒸着した銅薄膜を用いることが好ましい。
銅箔のパターニングには定法のフォトリソグラフィー法を使用する。
先ず、レジストを銅箔の上に2μm程度の厚みで塗布し、メッシュ部を構成するストライプパターンと引出し用電極パターン他を備えたフォトマスクを使用して近接露光する。現像してレジストパターンを形成し、約60℃の塩化第二鉄溶液で開口部分に露呈した銅箔をエッチング除去して、銅配線パターンを形成する。
基板の両面に金属配線を形成する場合、配線パターンは重ならないので、上述の加工を基板の表面と裏面とに、それぞれ別々に、又は同時に行う。
【0044】
ストライプパターンの銅配線パターンに直交する方向に、同じピッチのストライプパターンの銅配線パターンを形成する場合、交差部では、重なった上下の銅配線がショートしないように、最初に形成した銅配線パターン上に絶縁層を形成する必要がある。この場合、最初の銅配線パターンのフォトリソグラフィー法に用いた銅配線上に残っているレジストを剥離した後に、改めて絶縁用のレジストパターンを形成してもよいし、銅配線上に残っているレジストを絶縁層に利用することもできる。
銅配線パターンを上下に重ねて形成する場合では、ネガ型レジストとポジ型レジストとで対応が若干異なるが、目標はいずれも残ったレジストを、エッチング形成された銅配線の側面を被覆し、かつ裾を引くように変形させることである。このような形態にしておかないと後続する銅配線とショートしたり断線する恐れがあるからである。銅配線の厚みは2.0μm以下が好ましい。厚すぎるとレジストが軟化して流動しても側面を被覆できない恐れがあるからである。
【0045】
ポジ型レジストについては、レジストを加熱して融点以上になれば流動化してダレて所望の形態が得られ、同時に光反応性が消失する。加熱する前に再露光と現像を行って、交差部以外のレジストを除去してから加熱処理をしてもよく、不要なレジストが配線上に残らない。
【0046】
レジストにネガ型レジストを用いた場合、ネガ型レジストについては、硬化して融点が高くなっている可能性があるため、不十分な硬化状態で最初の銅配線の形成を行うことが考えられる。あるいは、紫外線吸収剤を添加する等して銅箔上のレジストの表面を優先的に硬化させて、基部に向けてサイドエッチが入るように現像することが好ましい。きのこ状のレジストパターンとなるが、銅箔のエッチング後にはレジストが庇のようになっているので、あまり温度を上げずとも側面の被覆ができる。
交差部をこのような形態にしておいてから、直交方向の銅配線パターンをフォトリソ法で形成する。2回目の銅箔形成方法は特に規定するものではないが、蒸着法が好ましい。また、エッチングについては、基板の表面と裏面とに対して同時に行うことが可能であり、望ましい加工法である。
【0047】
[第1黒化層、第2黒化層、及び第3黒化層]
また、上述のように金属配線は、第1黒化層及び第2黒化層を有する。さらには、第3黒化層も有する。
第1黒化層及び第2黒化層は、金属原子と、酸素原子及び窒素原子からなる群から選択される少なくとも1種とを含む層である。
第3黒化層は、金属原子と、酸素原子及び窒素原子からなる群から選択される少なくとも1種とを含む層である。
金属原子は、例えば、Cuである。また、金属原子は、1種に限定されるものではなく、複数種であってもよく、Cu以外に、例えば、Niをさらに含んでもよい。
【0048】
(金属の分析手法)
第1黒化層、第2黒化層、及び第3黒化層の金属原子の含有量(原子%)は、X線光電子分光法(XPS)を用いて決定することができる。このとき、エッチングを併用することにより、黒化層の表面下の異なる深さにおける金属原子の含有量(原子%)を決定することができる。
第1黒化層、第2黒化層、及び第3黒化層の金属原子の含有量の測定装置には、例えば、GC-IB/XPS(ガスクラスターイオンビームXPS)が用いられる。
【0049】
(装置及び条件)
GC-IB/XPSとして適した装置は、Physical Electronics, Inc.のVersa Probe II XPS装置(ULVAC-PHI株式会社製)である。単色化Al Kα X線源(1486.6eV、15W、25KV イオンビームのスポットサイズ直径100μm、ラスターサイズ300μm×300μm)を使用することが好ましい。電荷補償のため、測定時に低エネルギー電子とArイオンを流すことがある。
【0050】
(深さ方向の組成分析)
金属配線35の深さ方向、すなわち、金属配線35の厚み方向Dtの分析には、Arガスクラスタービーム(5kV、20nA,2mm×2mm)によりエッチングしながら、組成分析することができる。
この分析から、第1黒化層、第2黒化層、及び第3黒化層の金属原子の含有量(原子%)及び黒化層中に存在する他の元素、例えば、酸素及び窒素の含有量(原子%)を測定することができる。
【0051】
金属配線35の表層から、エッチングしながら、金属配線35の深さ方向の金属原子、酸素原子、及び窒素原子の組成を測定する。金属、例えば、Cuと酸素との組成比のプロファイルから、第1黒化層及び第2黒化層の各層の厚み方向の中間位置における組成を読み取り、金属原子の含有量(原子%)を得る。
第3黒化層については、第3黒化層の厚み方向Dtの中間位置における組成を読み取り、金属原子の含有量(原子%)を得る。
このようにして、第1黒化層42、第2黒化層44及び第3黒化層の金属原子、酸素原子及び窒素原子の含有量(原子%)を測定する。
【0052】
<金属配線の測定>
以下に示す(導電処理工程)及び(切削加工及び観察工程)を行うことにより、金属配線を測定する。
【0053】
(導電処理工程)
真空蒸着装置(日本電子株式会社製IB-29510VET)を用いて第1導電層11Aに、10nmの厚みのカーボンを蒸着する。続いて、スパッタ蒸着装置(株式会社日立社製E-1030型イオンスパッタ)を用いて10nmの厚みのカーボンの上から10nmの厚みの白金を蒸着する。
【0054】
(切削加工及び観察工程)
FIB(Focused Ion Beam)-SEM(Scanning Electron Microscope)複合装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製Helios600i)のFIB機能を用いて、金属配線に対して断面切削加工を行う。これにより、金属配線が延びる方向に対して直交する面に沿って切断された金属配線の断面を露出させる。
さらに、上述のFIB-SEM複合装置のSEM機能を用いて、2次電子像と反射電子像により、露出された断面を観察し、厚みを測定する。
ランダムに抽出した10箇所の金属配線の各層の厚みを、同様に測定し、各層の平均値を、それぞれの層の厚みとする。上述の方法で測定したSEMの断面像とXPSプロファイルデータから、最終的な各層の厚みを決定する。具体的には、SEMの断面観察から、各層の色味差により各層の界面を判断して、各層の膜厚を得る。層の組成によっては界面を特定しにくいことがありXPSを併用する。XPSでは、表面からエッチングしつつ深さ方向の特定の元素、例えば、Cu及びOの原子%を測定し、Cu/O比が変化する部分を界面と判断する。XPSにより界面と判断した位置を、SEMの断面画像に基づいて特定した界面の位置と照らし合わせて各層の膜厚を決定する。
このようにして、金属配線35の幅Wc、金属配線35の高さtc、第1黒化層42の厚みta及び第2黒化層44の厚みtbを測定する。
【0055】
なお、XPSを用いて金属配線の組成の定量を行う場合、金属配線の幅が細いと組成の測定が困難である。このため、金属配線と同じ層構成の組成分析用パターンを、金属配線の形成時に形成して、組成分析用パターンの組成を測定して、金属配線の組成の定量を行ってもよい。組成分析用パターンとしては、例えば、塗潰しパターンが用いられる。
また、第3黒化層46は、金属層40の側面40cに配置される側面層である。厚みが薄いと組成の測定が困難であるため、斜め切削法を用いて、第3黒化層46を拡張して、測定を行うこともできる。
【0056】
[メッシュパターン]
第1検出電極30及び第2検出電極32は、上述のように金属配線35により構成される。第1検出電極30及び第2検出電極32により、例えば、
図5に示すように複数の金属配線35が交差してなるメッシュパターンが構成される。
第1検出電極と第2検出電極において、金属配線35により構成されるメッシュパターンは、可視光透過率の点から、その開口率は90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。開口率とは、導電層を設けられた領域において金属配線を除いた透過性部分、すなわち、開口部が導電層を設けられた領域全体に占める割合に相当する。
なお、第1周辺配線23a及び第2周辺配線23bについても、第1検出電極30及び第2検出電極32と同じ構成とすることができ、金属配線35で構成することができる。第1周辺配線23a及び第2周辺配線23bは、複数の金属配線35が交差してなるメッシュパターンを有するものであってもよい。
【0057】
第1検出電極30及び第2検出電極32、並びに第1周辺配線23a及び第2周辺配線23bを、メッシュパターンを有する構成とする場合、メッシュパターンのパターンは特に制限されず、正三角形、二等辺三角形、直角三角形等の三角形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形等の四角形、(正)六角形、(正)八角形等の(正)n角形、円、楕円、星形等を組み合わせた幾何学図形であることが好ましい。
メッシュパターンのメッシュとは、
図6に示すように、交差する金属配線35により構成される複数の開口部36を含んでいる形状を意図する。開口部36は、金属配線35で囲まれる開口領域である。
図6において、開口部36は、菱形の形状を有しているが、他の形状であってもよい。例えば、多角形状(例えば、三角形、四角形、六角形、及び、ランダムな多角形)としてもよい。また、一辺の形状を直線状の他、湾曲形状にしてもよいし、円弧状にしてもよい。円弧状とする場合は、例えば、対向する二辺については、外方に凸の円弧状とし、他の対向する二辺については、内方に凸の円弧状としてもよい。また、各辺の形状を、外方に凸の円弧と内方に凸の円弧が連続した波線形状としてもよい。もちろん、各辺の形状を、サイン曲線にしてもよい。メッシュパターンとしては、特に限定されるものでなく、ランダムなパターンでも規則的なパターンでもよく、合同な形状が複数繰り返し配置された規則的なメッシュパターンでもよい。
【0058】
メッシュパターンとしては、同じ菱形格子を有する規則的なメッシュパターンが好ましい。その菱形の一辺の長さ、すなわち、開口部36の一辺の長さWは、50~1500μmが好ましく、150~800μmがより好ましく、200~600μmが視認性の観点から更に好ましい。開口部36の一辺の長さWが上述の範囲である場合には、さらに透明性も良好に保つことが可能であり、導電性フィルム18(
図1参照)を画像表示部14(
図1参照)の表示面14a(
図1参照)上に取り付けた際に、違和感なく表示を視認することができる。
なお、金属配線のメッシュパターンは光学顕微鏡(株式会社キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX-7000)を用いて観察及び測定ができる。
【0059】
(画像表示装置の第2の例)
画像表示装置は、
図1に示す画像表示装置10に限定されるものではない。以下に、画像表示装置10の第2の例について説明する。
図7は本発明の実施形態の導電性フィルムを有する画像表示装置の第2の例を示す模式的断面図である。なお、
図7において、
図1~
図3に示す構成と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図7に示す第2の例の画像表示装置10aは、
図1に示す画像表示装置10に比して、基板24の両方の面、それぞれに第1検出電極層29Aと第2検出電極層29Bとが設けられている点が異なる。基板24の表面24a上に第2検出電極層29Bが設けられ、基板24の裏面24b上に第1検出電極層29Aが設けられている。基板24により第1検出電極層29Aと第2検出電極層29Bとが電気的に絶縁される。すなわち、第1検出電極30と第2検出電極32とが、基板24により電気的に絶縁される。
【0060】
画像表示装置10aでは、第1検出電極層29A及び第1周辺配線23a上の周辺配線絶縁層50を覆う透明絶縁層52が設けられている。基板24の表面24a上に第2検出電極層29Bを覆う透明絶縁層27が設けられており、透明絶縁層27上にカバー層16が設けられている。透明絶縁層52に、表示面14aを向けて画像表示部14が接続されている。透明絶縁層52は、上述の透明絶縁層27と同じ構成である。第1検出電極層29Aを構成する第1の金属配線及び第2検出電極層29Bを構成する第2の金属配線は、いずれも
図3又は
図4に示す金属配線35と同じ構成である。
図3又は
図4に示す基板24の表面24aと裏面24bとに金属配線35が配置される。基板24の裏面24bに配置される金属配線35は、基板24の裏面24b側から金属層40と、第1黒化層42と、第2黒化層44との順で配置されている。
【0061】
周辺配線絶縁層50は第1周辺配線23a上に取出し配線のマイグレーション及び腐食を防止する目的で形成されるものである。周辺配線絶縁層50としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の有機膜が用いられる。周辺配線絶縁層50の膜厚は1~30μmが好ましい。
【0062】
以下、金属配線の形成方法について説明する。
(金属配線の形成方法)
金属配線の形成方法は、特に限定されるものではない。金属配線の形成方法には、例えば、めっき法、印刷法及び蒸着法等が適宜利用可能である。
図8~10は本発明の実施形態の導電性フィルムの第1の例の製造方法を工程順に示す模式的断面図である。
図8に示すように基板24の表面24aに、金属膜47を形成する。金属膜47は、金属配線35の金属層40になるものであり、例えば、Cu膜である。金属膜47は、例えば、スパッタリングを用いて形成する。スパッタリングは、特に限定されるものではなく、例えば、反応性RF(高周波)スパッタリングが例示される。
【0063】
次に、
図9に示すように、金属膜47上に、第1の黒化膜48を形成する。第1の黒化膜48は、第1黒化層42になるものであり、例えば、Cu
2O膜である。Cu
2O膜は、例えば、反応性RFスパッタリングにより形成される。
例えば、第1の黒化膜48を反応性RFスパッタリングにより形成する際に、原料ガスに酸素(O
2)ガス及び窒素(N
2)ガスのうち、少なくとも一方を用いることにより、第1黒化層42について、酸素原子及び窒素原子のうち、少なくとも一方を含む構成にできる。
また、第1の黒化膜48を反応性RFスパッタリングにより形成する際に、ターゲットにCuとNiとの合金を用いることにより、第1黒化層42について、金属原子としてCuとNiとを含む構成にできる。
【0064】
次に、
図10に示すように、第1の黒化膜48上に第2の黒化膜49を形成する。第2の黒化膜49は、第2黒化層44になるものであり、例えば、Cu
2O膜である。Cu
2O膜は、例えば、黒化処理又は反応性RFスパッタリングにより形成される。
黒化処理は、
図9に示す状態の基板24を、予め定めた時間、黒化液に浸漬させる処理である。なお、黒化液としては、例えば、酸化剤30重量%、苛性ソーダ6重量%程度の水溶液、及びBO-7770V(商品名 メック株式会社製)を使用できる。
例えば、第2の黒化膜49を反応性RFスパッタリングにより形成する際に、原料ガスに酸素(O
2)ガス及び窒素(N
2)ガスのうち、少なくとも一方を用いることにより、第2黒化層44について、酸素原子及び窒素原子のうち、少なくとも一方を含む構成にできる。
また、第2の黒化膜49を反応性RFスパッタリングにより形成する際に、ターゲットにCuとNiとの合金を用いることにより、第2黒化層44について、金属原子としてCuとNiとを含む構成にできる。
【0065】
図10に示すように基板24の表面24aに金属膜47、第1の黒化膜48及び第2の黒化膜49を積層された状態で、フォトリソグラフィー法を用いて、金属膜47、第1の黒化膜48及び第2の黒化膜49をパターニングして、例えば、
図3に示す金属配線35を形成する。パターニングにより、金属配線35は、例えば、メッシュパターン(
図5参照)に形成される。
【0066】
上述では、金属配線35を基板24の表面24aに形成することを例にして説明したが、金属配線35を基板24の表面24a及び裏面24bに形成する場合、金属膜47、第1の黒化膜48及び第2の黒化膜49を、基板24の表面24aと同様に裏面24bに形成する。そして、基板24の表面24a及び裏面24bに、それぞれ金属膜47、第1の黒化膜48及び第2の黒化膜49が積層された状態で、フォトリソグラフィー法を用いて、金属膜47、第1の黒化膜48及び第2の黒化膜49をパターニングして、基板24の表面24a及び裏面24bに金属配線35(
図3参照)を形成する。
【0067】
また、
図4に示す金属配線35は、例えば、以下のようにして形成できる。
図11及び12は、本発明の実施形態の導電性フィルムの第2の例の製造方法を工程順に示す模式的断面図である。なお、
図11及び12において、
図3及び
図4に示す導電性フィルム18と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図4に示す金属配線35は、
図3に示す金属配線35に比して、金属層40の側面40cに第3黒化層46が形成されたものである。
【0068】
図4に示す金属配線35の形成では、上述の
図9に示すように基板24に金属膜47及び第1の黒化膜48が形成された状態で、フォトリソグラフィー法を用いて、金属膜47及び第1の黒化膜48を、パターニングして、例えば、
図11に示す金属配線層37を形成する。パターニングにより、金属配線層37は、例えば、メッシュパターン(
図5参照)に形成される。金属配線層37は、金属層40と第1黒化層42とが積層されたものである。
次に、
図11に示す金属配線層37に対して、
図12に示すように、第3黒化層46を形成する。第3黒化層46は、例えば、黒化処理又は反応性RFスパッタリングにより形成する。第3黒化層46を形成する際に、第1黒化層42上に、第2黒化層44も形成される。このようにして、
図4に示す金属配線35が形成される。
【0069】
上述では、金属配線35を基板24の表面24aに形成することを例にして説明したが、金属配線35を基板24の表面24a及び裏面24bに形成する場合、金属膜47、及び第1の黒化膜48を、基板24の表面24aと同様に裏面24bに形成する。そして、基板24の表面24a及び裏面24bに、それぞれ金属膜47、及び第1の黒化膜48が積層された状態で、フォトリソグラフィー法を用いて、金属膜47、及び第1の黒化膜48をパターニングして、基板24の表面24a及び裏面24bに金属配線層37(
図11参照)を形成する。そして、例えば、黒化処理又は反応性RFスパッタリングにより第3黒化層46を形成する。このようして、基板24の表面24a及び裏面24bに、第1黒化層42、第2黒化層44及び第3黒化層46を有する金属配線35(
図4参照)を形成する。
【0070】
なお、スパッタリングを用いた金属配線35の形成方法を説明したが、これに限定されるものではない。金属配線35の形成方法には、公知の方法が利用できる。例えば、めっき法、印刷法、塗布法、インクジェット法、コーティング法、及びディップ法等のウェットプロセスを用いる方法、抵抗加熱法及びEB(電子ビーム)法等の蒸着法、並びにスパッタ法及びCVD(Chemical Vapor Deposition)法等のドライプロセスを用いる方法等が挙げられる。上述の製膜方法の中でもスパッタリングが好ましく適用される。
金属膜、第1の黒化膜48及び第2の黒化膜49をフォトリソグラフィー法を利用して、エッチング加工することにより所望のパターンに金属配線を形成できる。
【0071】
次に、めっき法よる金属配線の形成方法について説明する。例えば、金属膜47は、基板上にめっき法を用いて形成することができる。この場合、少なくとも金属微粒子を含有する触媒インクを基材上に形成した後に、基材を無電解めっき浴に浸漬し、金属膜として、金属めっき膜を形成する。より具体的には、特開2014-159620号公報に記載の金属被膜基材の製造方法を利用することができる。また、少なくとも金属触媒前駆体と相互作用しうる官能基を有する樹脂組成物を基材上にパターン状に形成した後、触媒又は触媒前駆体を付与し、基材を無電解めっき浴に浸漬し、金属膜として、金属めっき膜を形成する。より具体的には、特開2012-144761号公報に記載の金属被膜基材の製造方法を応用することができる。パターン状には、メッシュパターンが含まれる。
【0072】
めっき法は無電解めっきのみでもよく、無電解めっき後電解めっきを行ってもよい。めっき法にはアディティブ法を用いることができる。
アディティブ法とは、透明基板上の金属配線を形成したい部分にのみめっき処理等を施すことにより、金属配線を形成する方法である。生産性等の点から、アディティブ方法が好ましい。
金属配線の形成には、サブトラクティブ方法を用いることもできる。サブトラクティブ方法とは、透明基板上に導電層を形成して、例えば、化学エッチング処理等のエッチング処理により不要部分を除去して、金属配線を形成する方法である。
【0073】
印刷法よる金属配線の形成方法について説明する。例えば、印刷法により、金属膜47を基板上に形成することができる。この場合、まず、導電性粉末を含有する導電性ペーストを基板に塗布し、その後、加熱処理を施すことにより金属膜を形成することができる。導電性ペーストとしては、より具体的には、特開2011-28985号公報に記載の導電性ペーストを利用することができる。
蒸着法よる金属配線の形成方法について説明する。例えば、蒸着法により、金属膜47を基板上に形成することができる。この場合、まず、蒸着により、銅等の金属膜を形成する。金属膜は、蒸着以外にも、電解銅箔が利用可能である。より具体的には、特開2014-29614号公報に記載の銅配線を形成する工程を利用することができる。
【0074】
フォトリソグラフィー法とは、レジスト塗布、レジスト膜の形成、レジスト膜の露光、現像及びリンス、並びに金属膜、第1の黒化膜48及び第2の黒化膜49のエッチング、及びレジスト膜の剥離の各工程を経ることにより、金属膜、第1の黒化膜48及び第2の黒化膜49を所望のパターンに加工する手法である。従来公知の一般的なフォトリソグラフィー法を適宜利用することができる。例えば、レジストとしてはポジ型又はネガ型のいずれのレジストを用いることができる。また、レジスト塗布後、必要に応じて予備加熱又はプリベークを実施することができる。露光に際しては、所望のパターンを有するパターンマスクを配置し、その上から、用いたレジストに適合する波長の光、一般には紫外線を照射する。露光後、用いたレジストに適合する現像液で現像を行うことができる。現像後、水等のリンス液で現像を止めるとともに洗浄を行うことにより、レジストパターンが形成される。レジストパターンは、例えば、メッシュパターンに対応するパターンである。
【0075】
次いで、形成されたレジストパターンを必要に応じて前処理又はポストベークを実施した後、エッチングにより、金属膜、第1の黒化膜48及び第2の黒化膜49にレジストパターンに応じたパターンが形成される。エッチング液としては、塩化第二鉄水溶液等銅のエッチング液として使用可能なものを適宜選択することができる。エッチング後、残留するレジスト膜を剥離することにより、所望のパターンを有する金属配線が得られる。フォトリソグラフィー法は、当業者に一般に認識されている方法であり、その具体的な適用態様は当業者であれば所期の目的に応じて容易に選定することができる。
【0076】
<透明絶縁層>
透明絶縁層27は、第1の金属配線上を被覆する層であり、透明で電気絶縁性を有する。透明絶縁層27は、上述の第1の透明絶縁層15及び第2の透明絶縁層17とは異なるものである。
透明絶縁層27は、導電性フィルム18の使用時に、本来電気的に絶縁状態にある金属配線35同士を導通させることなく電気絶縁性を維持することができれば、特に限定されるものではない。透明絶縁層27は、例えば、二酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、及び酸化アルミ等の無機物により形成される。また、透明絶縁層27は、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、及びポリイミド樹脂等の有機物により形成される。透明絶縁層27は、形成の容易さ、膜厚の制御の容易さから、有機物であることが好ましく、特に(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
透明絶縁層を形成するためには、後述するように透明絶縁層形成用組成物を用いることが好ましい。
透明絶縁層形成用組成物に含まれる成分は特に制限されないが、モノマーを含むことが好ましい。モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物が好ましく、(メタ)アクリロイル基を有する多官能重合性化合物((メタ)アクリロイル基を2以上有する重合性化合物))がより好ましい。
透明絶縁層形成用組成物は、上記モノマー以外に、重合開始剤及び溶媒を含んでいてもよい。
透明絶縁層形成用組成物中におけるモノマーの含有量は特に制限されないが、透明絶縁層形成用組成物中の溶媒を除いた成分の合計量に対して、40~95質量%が好ましい。
透明絶縁層形成用組成物中における重合開始剤の含有量は特に制限されないが、透明絶縁層形成用組成物中の溶媒を除いた成分の合計量に対して、0.1~10質量%が好ましい。
【0077】
(導電性フィルムの製造方法)
以下、導電性フィルム18の製造方法について説明する。
基板上に第1の金属配線を形成する第1の工程と、第1の金属配線を被覆する透明絶縁層を形成する第2の工程とを有する。
例えば、基板に、例えば、PET基板を用いる。
第1の工程は、基板24の表面24aに、第1の金属配線を形成する工程であるが、第1の金属配線は、上述の金属配線の形成方法により形成されるため、その詳細な説明は省略する。なお、金属配線35によりメッシュパターン(
図5参照)を形成するために第2の工程では、第1の金属配線をメッシュパターン状(
図5参照)に形成する工程を含むことが好ましい。メッシュパターン状に形成する工程も、上述の金属配線の形成方法の通りであるため、その詳細な説明は省略する。
第1の金属配線により第1検出電極30(
図2参照)が形成される。基板24の表面24a上に第1検出電極30(
図2参照)が形成される。
【0078】
第2の工程は、第1の金属配線を被覆する透明絶縁層27を形成する工程である。透明絶縁層27は、例えば、(メタ)アクリル樹脂が用いられる。上述のように透明絶縁層27の厚みは、1.0~5.0μmであることが好ましい。
透明絶縁層27の形成方法は、特に限定されるものでない。透明絶縁層を形成する方法(塗布法)、又は仮基板上に透明絶縁層を形成して、金属配線を被覆するように基板24の表面24aに転写する方法(転写法)等が挙げられる。
第2の工程は、透明絶縁層形成用組成物を、第1の金属配線上に塗布して、透明絶縁層27を形成する工程であることが好ましい。すなわち、透明絶縁層27は、厚みの制御がしやすい観点からは、塗布法を用いることが好ましい。
透明絶縁層形成用組成物を塗布する塗布法は、特に限定されるものでなく、公知の方法、例えば、グラビアコーター、コンマコーター、バーコーター、ナイフコーター、ダイコーター若しくはロールコーター等の塗布法式、インクジェット方式、又はスクリーン印刷方式等を使用できる。
なお、塗布後、必要に応じて硬化処理を実施してもよい。硬化処理としては、光硬化処理及び加熱処理が挙げられる。
【0079】
なお、導電性フィルムの構成応じて、透明絶縁層27上に、さらに第2の金属配線を形成する第3の工程を有してもよい。
第3の工程の第2の金属配線は、上述の金属配線の形成方法により形成されるため、その詳細な説明は省略する。なお、金属配線35によりメッシュパターン(
図5参照)を形成するために、第3の工程でも、第2の金属配線をメッシュパターン状(
図5参照)に形成してもよい。第2の金属配線により第2検出電極32(
図2参照)が形成される。透明絶縁層27上に第2検出電極が形成される。また、第3の工程では、第2の金属配線により、第2検出電極32に電気的に接続される第2周辺配線23bも形成される。
第2検出電極32及び第2周辺配線23b上に第2の透明絶縁層17を形成してもよい。第2の透明絶縁層17は、例えば、光学的に透明な粘着剤(OCA)が用いられ、柔軟性を有する。なお、第2の透明絶縁層17上にシールド電極を設けてもよい。
【0080】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の導電性フィルムについて詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良又は変更をしてもよいのはもちろんである。
【実施例0081】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、及び、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0082】
以下、実施例1~6及び比較例1の導電性フィルムについて説明する。
(実施例1)
実施例1の導電性フィルムについて説明する。
まず、基板として、厚み50μmのPET基板(東洋紡株式会社製、コスモシャイン(登録商標)A4300)を準備した。
【0083】
次に、基板上に銅膜を、以下のようにして、反応性RFスパッタリングを用いて形成した。ターゲットとして銅を用い、原料ガスとして、アルゴン(Ar)ガス(流量270sccm(456.3×10-3Pa・m3/sec))をスパッタ装置内に導入しながら、製膜室内圧力が0.4Pa、パワー密度が4.2W/cm2、製膜中の温度が90℃の条件で、製膜を行なった。得られた銅膜の膜厚は、500nmであった。銅膜は、金属層になるものである。
【0084】
次に、基板上に形成した銅膜上に、厚み50nmのCu2O膜を、以下のようにして、反応性RFスパッタリングを用いて形成した。ターゲットとして銅を用い、原料ガスとして、Arガスと酸素(O2)ガスを使用した。Cu2O膜が第1黒化層になるものである。
続いて、Cu2O膜上に、レジストフィルムを貼合し、マスクを用いて配線パターンを露光した。そして、レジストフィルムにおいて未硬化部分のレジストを除去した。その後、銅膜とCu2O膜との積層膜をエッチングして、金属配線パターンを形成した。エッチングには、サンハヤト株式会社製 エッチング液H-1000A(型番、塩化第二鉄液)を用いた。
【0085】
金属配線パターンを形成した後、基板を、黒化液に浸漬して、Cu2O膜の表面に、CuO層を厚み30nmになるよう形成した。CuO層が第2黒化層である。なお、浸漬時間、黒化液の濃度、及び黒化液の温度により、CuO層の厚みを制御した。同時に銅膜の側面に、第3黒化層であるCu2O層が形成される。このようにして、第1黒化層、第2黒化層及び第3黒化層を有する金属配線を形成した。
なお、黒化処理には、黒化液として、BO-7770V(商品名 メック株式会社製)を使用した。
【0086】
(実施例2)
実施例2は、実施例1に比して、黒化処理の時間を長くして、最表面のCuO層の厚み、すなわち、第2黒化層の厚みが40nmになるように黒化処理した点が異なる以外は、実施例1と同じとした。
(実施例3)
実施例3は、実施例1に比して、基板上の銅膜上に、厚み50nmのCuON膜を形成した点が異なる以外は、実施例1と同じとした。実施例3は、第1黒化層をCuON層で構成した。
CuON層は、反応性RFスパッタリングを用いて形成した。ターゲットにCuを用い、原料ガスに、Arガス、窒素(N2)ガス、及びO2ガスを使用した。
(実施例4)
実施例4は、実施例1に比して、基板上の銅膜上に、厚み50nmのCuNiO膜を形成した点が異なる以外は、実施例1と同じとした。実施例4は、第1黒化層をCuON層で構成した。
CuNiO層は、反応性RFスパッタリングを用いて形成した。ターゲットにCuNi合金を用い、原料ガスに、Arガス、及びO2ガスを使用した。
【0087】
(実施例5)
実施例5は、実施例1に比して、基板上に銅膜、及びCuO膜を形成した後、金属配線パターンを形成する前に、黒化処理を行い、CuO膜上にCu2O膜を形成した。その後、金属配線パターンを形成した点以外は、実施例1と同じとした。実施例5は、銅膜、すなわち、金属層の側面に第3黒化層がない構成である。
(実施例6)
実施例6は、実施例1に比して、黒化処理の時間を短くして、最表面のCuO層の厚み、すなわち、第2黒化層の厚みが20nmになるように黒化処理した点が異なる以外は、実施例1と同じとした。
【0088】
(比較例1)
比較例1は、実施例1に比して、第2黒化層及び第3黒化層がない点が異なる以外は、実施例1と同じとした。
比較例1では、実施例1と同様にして、厚み500nmの銅膜を形成し、銅膜上に厚み50nmのCu2O層を形成した。
【0089】
<金属配線の金属組成比の定量>
XPSを用いて金属配線の組成の定量を行うが、金属配線の幅が細いと組成の測定が困難である。このため、予め、基板上に組成分析用パターンとして、5mm×5mmの塗潰しパターンを形成した。金属配線の金属組成の定量のために、組成分析用パターンの組成を測定した。
なお、第3黒化層である側面層の組成は、厚みが薄いと組成の測定が困難であるため、斜め切削法を用いて、側面層を拡張して、測定を行うこともできる。
GCアルゴン-IB(ガスクラスターイオンビーム)により、金属配線の表面からエッチンクしながら、金属配線35の深さ方向の組成を測定した。
表層から、CuO層(第2黒化層に相当)、Cu2O層(第1黒化層に相当)及びCu層(金属層に相当)の順に観測される。組成変化から各層の境界を決め、厚み方向の中間位置の組成を、CuO層、Cu2O層及びCu層の各組成として採用した。
【0090】
(金属原子の含有量(原子%)の分析手法)
黒化層の金属原子の含有量(原子%)は、X線光電子分光法(XPS)を用いて決定することができる。このとき、エッチングを併用することにより、黒化層の表面下の異なる深さにおける金属原子の含有量(原子%)を決定した。
黒化層の金属原子の含有量の測定装置には、例えば、GC-IB/XPS(ガスクラスターイオンビームXPS)を用いた。
【0091】
(装置及び条件)
GC-IB/XPSとして適した装置は、Physical Electronics, Inc.のVersa Probe II XPS装置(ULVAC-PHI株式会社製)である。単色化Al Kα X線源(1486.6eV、15W、25KV イオンビームのスポットサイズ直径100μm、ラスターサイズ300μm×300μm)を使用することが好ましい。電荷補償のため、測定時に低エネルギー電子とArイオンを流すことがある。
【0092】
(深さ方向の組成分析)
金属配線35の深さ方向、すなわち、厚み方向Dtの分析には、Arガスクラスタービーム(5kV、20nA,2mm×2mm)によりエッチングしながら、組成分析した。
この分析から、第1黒化層、第2黒化層、及び第3黒化層の金属原子の含有量(原子%)を測定し、第1黒化層、第2黒化層、及び第3黒化層中に存在する他の元素、例えば、酸素及び窒素を測定した。
【0093】
表層から、エッチングしながら、金属配線35の深さ方向の金属原子、酸素原子、及び窒素原子の組成を測定する。金属、例えば、Cuと酸素との組成比のプロファイルから、第1黒化層及び第2黒化層の各層の厚み方向の中間位置における組成を読み取り、金属原子の含有量(原子%)とした。
第3黒化層については、厚み方向Dtの中間位置における組成を読み取り、金属原子の含有量(原子%)とした。
【0094】
<金属配線の測定>
以下に示す(導電処理工程)及び(切削加工及び観察工程)を行うことにより、金属配線を測定した。
【0095】
(導電処理工程)
真空蒸着装置(日本電子株式会社製IB-29510VET)を用いて第1導電層11Aに、10nmの厚みのカーボンを蒸着した。続いて、スパッタ蒸着装置(株式会社日立社製E-1030型イオンスパッタ)を用いて10nmの厚みのカーボンの上から10nmの厚みの白金(Pt)を蒸着した。
【0096】
(切削加工及び観察工程)
FIB(Focused Ion Beam)-SEM(Scanning Electron Microscope)複合装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製Helios600i)のFIB機能を用いて、表面保護膜としてPtのCVD膜(500nm厚)を形成したのち、Ga+加速電圧30kVの条件下で、金属配線に対して断面切削加工を行った。これにより、金属配線が延びる方向に対して直交する面に沿って切断して、金属配線の断面を露出させた。
【0097】
さらに、上述のFIB-SEM複合装置のSEM機能を用いて、加速電圧1kV、プローブ電流86pA、W.D.(Working Distance)4mmの条件下で、2次電子像と反射電子像により、露出された断面を観察し、厚みを測定した。なお、上述の「W.D.」とは、SEMの対物レンズと、試料、この場合、金属配線の断面との間の距離のことである。
ランダムに抽出した10箇所の金属配線の各層の厚みを、同様に測定し、各層の平均値を、それぞれの層の厚みとした。上述の方法で測定したSEMの断面像とXPSプロファイルデータから、最終的な各層の厚みを決定した。具体的には、SEMの断面観察から、Cu層、Cu2O層、及びCuO層の色味差により各層の界面を判断して、Cu層、Cu2O層、及びCuO層の膜厚を得た。Cu2O層とCuO層との界面は特定しにくいため、XPSを併用した。XPSでは、表面からエッチングしつつ深さ方向のCuとOの原子%を測定し、Cu/O比が変化する部分を界面と判断した。XPSにより界面と判断した位置を、SEMの断面画像に基づいて特定した界面の位置と照らし合わせて各層膜厚を決定した。
【0098】
本実施例では、実施例1~6及び比較例1の導電性フィルムについて、配線抵抗及び視認性を評価した。配線抵抗及び視認性の評価結果を下記表1に示す。以下、配線抵抗及び視認性について説明する。
【0099】
<配線抵抗>
配線抵抗は、金属配線を形成した後、金属配線の電気抵抗を測定し、1mm長の電気抵抗に規格化(Ω/mm)した。これを10本の金属配線で実施し、10本の金属配線の平均値を配線抵抗とした。金属配線の電気抵抗は、抵抗計(日置電機株式会社製 RM3544)を用いて測定した。
【0100】
<視認性>
実施例1~6及び比較例1の導電性フィルムの、それぞれにおいて配線面側にOCA(Optical Clear Adhesive)を介してガラスを貼合した。基板の配線面の反対側の反対面にOCAを介して黒紙を貼合して、実施例1~6及び比較例1の視認性の評価用のサンプルを作製した。サンプルを、蛍光灯下でガラス面側から角度を変えて観察した。視認性については20人の評価者により判定した。20人の評価者の観察結果を、下記評価基準に基づいて評価して、視認性を評価した。
評価基準
「A」:20人中、1人も金属細線を認識できない。
「B」:20人中、1人以上4人以下が金属細線を認識できた。
「C」:20人中、5人以上10人未満が金属細線を認識できた。
「D」:20人中、10人以上が金属細線を認識できた。
なお、評価「D」は実用上問題があるレベルであり、評価「C」以上が実用上問題ないレベル、評価「B」は優れたレベル、評価「A」はとても優れたレベルである。
【0101】
【0102】
表1に示すように、実施例1~6は、比較例1に比して視認性が良好であった。
比較例1は第2黒化層がなく、金属配線が見え、視認性が悪かった。
実施例1~6の比較から、第3黒化層がある方が線が更に見えにくく、視認性が更に良好であった。また、第2黒化層は第1黒化層よりも厚い方が見えにくく、視認性が良好であった。