(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055407
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】繊維、繊維束および繊維製品
(51)【国際特許分類】
D01F 6/62 20060101AFI20240411BHJP
C08G 63/16 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
D01F6/62 307
C08G63/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162324
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】晴山 和直
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇
【テーマコード(参考)】
4J029
4L035
【Fターム(参考)】
4J029AA03
4J029AB07
4J029AC01
4J029AD01
4J029AE02
4J029BA02
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4J029KE03
4J029KE06
4L035AA05
4L035BB31
4L035BB89
4L035BB91
4L035EE09
4L035EE20
(57)【要約】
【課題】ポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)を含む強度に優れる繊維を提供する。
【解決手段】ジカルボン酸系化合物(A)単位と脂肪族ジオール(B)単位とを含むポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)を含み、示差走査熱量測定によって測定される結晶融解熱が52J/g~80J/gであり、ジカルボン酸系化合物(A)は、2,5-フランジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸誘導体、フランジカルボン酸エステルおよびフランジカルボン酸無水物から選ばれる1つ以上であり、脂肪族ジオール(B)は、1,2-エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールおよび2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールの群から選ばれる1つ以上である、繊維。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)を含み、示差走査熱量測定によって測定される結晶融解熱が52J/g~80J/gである繊維であって、
前記ポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)は、ジカルボン酸系化合物(A)単位と脂肪族ジオール(B)単位とを含む共重合体であり、
前記ジカルボン酸系化合物(A)は、2,5-フランジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸誘導体、フランジカルボン酸エステルおよびフランジカルボン酸無水物の群から選ばれる1つ以上であり、
前記脂肪族ジオール(B)は、1,2-エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールおよび2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールの群から選ばれる1つ以上である、
繊維。
【請求項2】
ポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)を含み、引張強度が5.0cN/dtex以上である繊維であって、
前記ポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)は、ジカルボン酸系化合物(A)単位と脂肪族ジオール(B)単位とを含む共重合体であり、
前記ジカルボン酸系化合物(A)は、2,5-フランジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸誘導体、フランジカルボン酸エステルおよびフランジカルボン酸無水物の群から選ばれる1つ以上であり、
前記脂肪族ジオール(B)は、1,2-エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールおよび2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールの群から選ばれる1つ以上である、
繊維。
【請求項3】
引張強度が5.0cN/dtex以上である請求項1に記載の繊維。
【請求項4】
引張強度が6.5cN/dtex以上である請求項1または2に記載の繊維。
【請求項5】
複屈折の値が0.10~0.20である請求項1または2に記載の繊維。
【請求項6】
ポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)の含有量が70~100質量%である請求項1または2に記載の繊維。
【請求項7】
前記ジカルボン酸系化合物(A)が2,5-フランジカルボン酸であり、前記脂肪族ジオール(B)が1,2-エタンジオールである請求項1または2に記載の繊維。
【請求項8】
前記ジカルボン酸系化合物(A)が、バイオマス由来の2,5-フランジカルボン酸を含む請求項1または2に記載の繊維。
【請求項9】
広角X線回折によって測定される結晶面間隔が0.440~0.470nmである請求項1または2に記載の繊維。
【請求項10】
引張伸度が5~15%である請求項1または2に記載の繊維。
【請求項11】
単繊維繊度が1.5~1000dtexである請求項1または2に記載の繊維。
【請求項12】
請求項1または2に記載の繊維が複数本で束になった、総繊度が10~10000dtexである繊維束。
【請求項13】
請求項1または2に記載の繊維を含む、繊維製品。
【請求項14】
請求項12に記載の繊維束を含む、繊維製品。
【請求項15】
織物、編物、不織布または紐である請求項13に記載の繊維製品。
【請求項16】
織物、編物、不織布または紐である請求項14に記載の繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維、繊維束および繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
合成繊維は、衣料品からカーペット、自動車の内装や工事用養生ネットなど多くの用途において用いられる。特に、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリアミド(ナイロン-6およびナイロン-6,6)は、多く使用されるポリマーであり、製造経路および用途は過去数十年間開発されているが、これらのポリマーはすべて、化石燃料に由来する。
【0003】
2,5-フランジカルボン酸は、糖中間体から製造される二官能性芳香族二酸であることから、製造されるポリマーはバイオマス由来である。このバイオマス由来ポリマーを使用して、バイオマス由来繊維を製造することができる。バイオマス由来ポリマーは再生可能な資源から得られ、現存の繊維に対してカーボンフットプリントが低減されるため、バイオマス由来のポリエステル繊維が関心を集めている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ポリエステル、特にポリ(トリメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)(PTF)およびPTFベースのブレンドおよびコポリマーから製造されるバイオマス由来繊維の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、実施例における繊維は延伸倍率が低く、繊維強度は、最大で3g/デニール程度であり、広く繊維製品として用いるには低い強度であった。また、延伸倍率が低いことから、結晶化熱も低いものと考えられる。
【0007】
本発明の目的は、ポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)を含む強度に優れる繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1.ポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)を含み、示差走査熱量測定によって測定される結晶融解熱が52J/g~80J/gである繊維であって、
前記ポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)は、ジカルボン酸系化合物(A)単位と脂肪族ジオール(B)単位とを含む共重合体であり、
前記ジカルボン酸系化合物(A)は、2,5-フランジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸誘導体、フランジカルボン酸エステルおよびフランジカルボン酸無水物の群から選ばれる1つ以上であり、
前記脂肪族ジオール(B)は、1,2-エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールおよび2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールの群から選ばれる1つ以上である、
繊維。
2.ポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)を含み、引張強度が5.0cN/dtex以上である繊維であって、
前記ポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)は、ジカルボン酸系化合物(A)単位と脂肪族ジオール(B)単位とを含む共重合体であり、
前記ジカルボン酸系化合物(A)は、2,5-フランジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸誘導体、フランジカルボン酸エステルおよびフランジカルボン酸無水物の群から選ばれる1つ以上であり、
前記脂肪族ジオール(B)は、1,2-エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールおよび2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールの群から選ばれる1つ以上である、
繊維。
3.引張強度が5.0cN/dtex以上である1に記載の繊維。
4.引張強度が6.5cN/dtex以上である1~3のいずれかに記載の繊維。
5.複屈折の値が0.10~0.20である1~4のいずれかに記載の繊維。
6.ポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)の含有量が70~100質量%である1~5のいずれかに記載の繊維。
7.前記ジカルボン酸系化合物(A)が2,5-フランジカルボン酸であり、前記脂肪族ジオール(B)が1,2-エタンジオールである1~6のいずれかに記載の繊維。
8.前記ジカルボン酸系化合物(A)が、バイオマス由来の2,5-フランジカルボン酸を含む1~7のいずれかに記載の繊維。
9.広角X線回折によって測定される結晶面間隔が0.440~0.470nmである1~8のいずれかに記載の繊維。
10.引張伸度が5~15%である1~9のいずれかに記載の繊維。
11.単繊維繊度が1.5~1000dtexである1~10のいずれかに記載の繊維。
12.1~11のいずれかに記載の繊維が複数本で束になった、総繊度が10~10000dtexである繊維束。
13.1~12のいずれかに記載の繊維または12に記載の繊維束を含む、繊維製品。
14.織物、編物、不織布、または紐である13に記載の繊維製品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バイオマス由来であるポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)を含む強度に優れる繊維を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態の一例の繊維は、ポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)を含み、示差走査熱量測定によって測定される結晶融解熱が52J/g~80J/gである繊維であって、
前記ポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)は、ジカルボン酸系化合物(A)単位と脂肪族ジオール(B)単位とを含む共重合体であり、
前記ジカルボン酸系化合物(A)は、2,5-フランジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸誘導体、フランジカルボン酸エステルおよびフランジカルボン酸無水物の群から選ばれる1つ以上であり、
前記脂肪族ジオール(B)は、1,2-エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールおよび2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールの群から選ばれる1つ以上である。
【0011】
本実施形態の繊維の示差走査熱量測定によって測定される結晶融解熱は、52J/g以上である。結晶融解熱が高いほど、延伸配向に伴う配向結晶化が進んでおり、高強度な繊維が得られる。この観点から、繊維の結晶融解熱は、56J/g以上がより好ましく、60J/g以上が更に好ましい。上限については、適度な伸度を得るためには、80J/g以下であり、70J/g以下が好ましい。
【0012】
実施形態の他の一例の繊維は、ポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)を含み、引張強度が5.0cN/dtex以上である繊維であって、
前記ポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)は、ジカルボン酸系化合物(A)単位と脂肪族ジオール(B)単位とを含む共重合体であり、
前記ジカルボン酸系化合物(A)は、2,5-フランジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸ハロゲン化物、フランジカルボン酸エステルおよびフランジカルボン酸無水物の群から選ばれる1つ以上であり、
前記脂肪族ジオール(B)は、1,2-エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールおよび2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールの群から選ばれる1つ以上である。
【0013】
本発明の繊維は、引張強度が5.0cN/dtex以上であることが好ましい。引張強度が高いほど後加工時の糸切れが少なく、品質の良い繊維製品を得ることができ、また繊維製品の耐久性が向上する。これらの観点から、前記引張強度は6.0cN/dtex以上がより好ましく、6.5cN/dtex以上がさらに好ましく、6.8cN/dtex以上が最も好ましい。引張強度の上限については特に制限されないが、10.0cN/dtex以下に設定することができ、9.0cN/dtex以下、もしくは8.0cN/dtex以下に設定することができる。
【0014】
本発明の繊維に含まれるポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)は、ジカルボン酸系化合物(A)単位と脂肪族ジオール(B)単位とを含む共重合体である。すなわち、本発明の繊維に含まれるポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)は、カルボン酸系化合物(A)と脂肪族ジオール(B)を共重合することによって得られる共重合体である。
ジカルボン酸系化合物(A)は、2,5-フランジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸誘導体、フランジカルボン酸エステルおよびフランジカルボン酸無水物の群から選択される1つ以上である。
脂肪族ジオール(B)は、1,2-エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールおよび2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールの群から選ばれる1つ以上である。
【0015】
2,5-フランジカルボン酸誘導体としては、2,5-フランジカルボン酸のフラン環の3位および4位の少なくとも一方の水素原子が置換基で置換された化合物である。
置換基としては、例えば、-CH3、-C2H5などのアルキル基、O、N、SiおよびSからなる群から選択されるヘテロ原子1~3個を任意に含有する炭素数3~25の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基、-Cl、-Br、-F、-I、-OH、-NH2および-SHを例示できる。フラン環の3位と4位の両方の水素原子が置換されている場合、それらの置換基は同じであってもよく、異なっていてもよい。
フランジカルボン酸エステルとしては、例えば、ジメチルフランジカルボキシレート、ジエチルフランジカルボキレートを例示できる。
フランジカルボン酸無水物としては、例えば、2,3-フランジカルボン酸無水物、3,4-フランジカルボン酸無水物を例示できる。
【0016】
実施形態において、耐熱性を向上させる観点から、本発明の繊維は、2,5-フランジカルボキシレート単位および1,2-エタンジオール単位で構成されるポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシレート)を含むことが好ましい。
【0017】
本発明の繊維はバイオマス由来の原料を含むバイオマス由来繊維であることが好ましい。
本明細書で使用される、「バイオマス由来の」という用語は、植物から得られ、かつ再生可能な炭素、つまり化石燃料ベースもしくは石油ベースの炭素ではない、例えば作物から再生することができる資源から得られる炭素のみを含有する、モノマーおよびポリマーを含む化合物を意味する。したがって、その生成によって減りつつある化石燃料が枯渇せず、分解すると、炭素が放出されて大気へと戻され、もう一度植物によって使用されるため、生物由来材料は、環境に対する影響が少ない。
【0018】
本発明の繊維は、ジカルボン酸系化合物(A)が、バイオマス由来である2,5-フランジカルボン酸を含むことが好ましい。
また、本発明の繊維は、耐熱性の観点から、ポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)が、バイオマス由来である2,5-フランジカルボン酸と、1,2-エタンジオールの反応混合物の重合によって得られる、ポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシレート)であることがより好ましい。
【0019】
共重合に用いる脂肪族ジオール(B)の使用量は、ジカルボン酸系化合物(A)の使用量に対して1.2~3当量であることが好ましい。
【0020】
本発明の繊維のポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)の含有量は、強度を発現しやすいことから、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。上限は特に制限されないが、100%以下に設定でき、95%以下に設定することができる。
【0021】
本発明の繊維は、複屈折の値が0.10~0.20であることが好ましい。
複屈折の値が高いほど、繊維の延伸方向に沿って高分子鎖が配列し、繊維軸方向の引張強度を発現することができる。この観点から、複屈折の値は、0.14以上がより好ましく、0.17以上がさらに好ましい。複屈折は、0.19以下、もしくは0.18以下に設定することができる。
【0022】
本発明の繊維は、広角X線回折によって測定される結晶面間隔が0.440~0.470nmであることが好ましい。
結晶面間隔が狭いほど、結晶のパッキングが密になり、強度が発現しやすい。この観点から、繊維の結晶面間隔は、0.455nm以下がより好ましく、0.450nm以下がさらに好ましい。結晶面間隔が広いほど、適度な伸度を得やすい。この観点では、繊維の結晶面間隔は、0.445nm以上がより好ましい。
【0023】
本発明の繊維は、引張伸度が5~15%であることが好ましい。
引張伸度が5%以上であれば、破断し難く加工が容易にできやすく、15%以下であれば、加工品の寸法安定性が良好となりやすい。
これらの観点から、前記引張伸度は、6%以上がより好ましく、7%以上がさらに好ましく、13%以下がより好ましく、11%以下がさらに好ましい。
【0024】
本発明の繊維は、単繊維繊度が1.5~1000dtexであることが好ましい。
単繊維繊度が大きいほど、後加工時の糸切れが少なく、品質の良い繊維製品を得やすい。この観点から、単繊維繊度は、2dtex以上がより好ましく、10dtex以上がさらに好ましく、100dtex以上が最も好ましい。また、単繊維繊度は、500dtex以下、もしくは300dtex以下に設定することができる。
【0025】
本発明の繊維束は、前記繊維が複数本で束になった、総繊度が10~10000dtexの繊維束である。
繊維束の総繊度が、高いほど後加工時の糸切れが少なく、品質の良い繊維製品を得やすい。これらの観点から、前記総繊度は50dtex以上がより好ましく、100dtex以上がさらに好ましい。また、前記総繊度は、1000dtex以下、もしくは500dtex以下に設定することができる。
【0026】
本発明の繊維製品は、前記繊維または前記繊維束を含むことが好ましい。前記繊維製品は、織物、編物、不織布および紐を包含する。
【0027】
その他にも繊維製品として、例えば、衣料品(靴下、サポーター等を含むインナーウェア、アウターウェア、スポーツウェア、レッグウェア、リゾートウェア、ホームウェア、サポーター、芯地等)、医療用品(使い捨てマスクや洗濯再使用が可能なマスク等のマスク、包帯、ガーゼ、パップ材基布、絆創膏、サージカルテープ、サポーター等)、産業資材(ネット、ロープ、ワイピングクロス、フィルター、カバー等)、レジャー用品(釣り糸、テント生地)などに使用できる。
特に本発明の繊維は、バイオマス由来でありながら高強度の繊維のため、産業用ロープ、産業用ネット、レジャー用釣り糸として有用である。
【実施例0028】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0029】
(総繊度の測定方法)
1mあたりの繊維複数本の質量W(g)を測定して、10000倍することで、総繊度(dtex)を算出した。
総繊度(dtex)=W×10000
【0030】
(単繊維繊度の測定方法)
1mあたりの繊維1本の質量w(g)を測定して、10000倍することで、単繊維繊度(dtex)を算出した。
単繊維繊度(dtex)=w×10000
【0031】
(単繊維の直径の測定方法)
単繊維の直径を超高速・高精度寸法測定器(キーエンス社製、型式:LS-9006)
で測定した。
【0032】
(繊維引張試験)
繊維強度、伸度の測定はJIS L 1013に準じて行った。引張試験機(島津社製AG-IS)を用い、温度20℃、相対湿度65%の雰囲気下で試料長25mm、引張速度25mm/分の条件で歪-応力曲線を測定し、破断点の値から伸度を、破断点での応力から強度を求めた。5回測定を行い、平均値を使用した。
【0033】
(結晶面間隔の測定)
繊維の結晶面間隔の測定は、X線発生装置(リガク社製、ultraX 18、波長λ=0.15418nm)を用いて行った。得られたX線回折パターンのピーク位置から、ブラックの式より結晶面間隔を算出した。
【0034】
(結晶融解熱の測定)
繊維の結晶融解熱の測定はDSC装置(セイコー電子工業株式会社製DSC220)を用いて算出した。
繊維を細かく切断してサンプルパンに10mg投入した。窒素雰囲気中で昇温速度10℃/分で室温から240℃まで測定を行い、得られたDSCカーブより、220℃の融点付近に見られる吸熱ピークの面積を算出した。
【0035】
(複屈折の測定)
繊維の複屈折の測定は偏光顕微鏡(ニコン社製ECLIPSE E600)を用いて行った。波長が546nmになるように干渉フィルターを入れて、レタデーション測定を行った。得られたレタデーションを繊維直径で除することで、複屈折値を算出した。5回測定を行い、平均値を使用した。
【0036】
(実施例1)
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計、精留塔を備えた反応容器に、原料として、2,5-フランジカルボン酸(V&V PHARMA INDUSTRIES製)42.85kg、1,2-エタンジオール(三菱ケミカル製)30.6L、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド35重量%水溶液を14.3g仕込み、反応容器内を窒素雰囲気にした。
次に、撹拌しながら2時間かけて200℃まで昇温し、200℃で2時間30分間保持して留出液を回収し、エステル化反応を進行させた。
続いて、この反応液を、減圧口と撹拌装置を備えた反応器に移送し、テトラブチルチタネートを2.0重量%(Tiの2,5-フランジカルボン酸に対するモル比は0.00019モル)溶解させた1,2-エタンジオール溶液888.5gを添加して撹拌を開始した(生成したポリエステルに対するTi濃度は50ppm)。2時間かけて260℃まで昇温すると共に、圧力を常圧から1.5時間かけて130Pa程度になるように徐々に減圧し、その後130Paを保持した。減圧開始から3時間50分経過したところで撹拌を停止し、復圧して重縮合反応を終了し、反応槽下部より製造されたポリエステルをストランド状に抜き出し、冷却水槽を通して冷却した後、ペレタイザーによって切断し、2~3mm角程度のペレット状のポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)を得た。ポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)の固有粘度は0.74dL/gであった。
このポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)に対して、窒素ガスを30L/minの流量で導入しながら加熱することにより、予備結晶化を行った。具体的には、ポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)10kgをイナートオーブン(ヤマト科学社製「DN411I」)に入れ、120℃で3時間加熱後、常温(25℃)に冷却してから融着したペレット同士をほぐした。更にもう1回、このペレットを150℃で3時間加熱した後に常温(25℃)に冷却してから融着したペレット同士をほぐした。
次に、この予備結晶化させたポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)10kgを前述のイナートオーブンに入れ、窒素ガスを30L/minの流量で導入させた状態で、120℃で1時間、150℃で1時間、180℃で3時間、200℃で6時間の順に加熱することにより固相重合を行い、ポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)を得た。ポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)の固有粘度は0.85dL/gであった。
【0037】
上記ポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)を溶融紡糸装置の押出機に投入し、240℃から250℃で溶融混練し、250℃の樹脂を吐出孔径が0.4mmφ、吐出孔数が36ホールの紡糸ノズルから15.1g/分の吐出量で吐出し、400m/分の引取り速度でボビンに巻き取って未延伸糸を得た。
【0038】
得られた未延伸糸について熱ロールを用いて糸温度が90℃になるように予備加熱を行い、1段目の延伸として糸温度120℃で3.6倍の熱板延伸を行った。
連続して更に糸温度が120℃になるように熱ロールで予備加熱を行い、2段目の延伸として糸温度160℃、延伸張力260cNで1.1倍の熱板延伸を行った。2段目の延伸速度は100m/分で行った。得られた繊維の総繊度、単繊維繊度、繊維直径、結晶面間隔、結晶融解熱、複屈折、強度を求めるための測定を行った。これらの結果を表1に示す。
【0039】
(実施例2)
実施例1と同様にして得られたポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)について、溶融紡糸装置に投入し、210℃から240℃で溶融混練し、240℃の樹脂を吐出孔径が1.0mmφ、吐出孔数が1ホールの紡糸ノズルから1.79g/分の吐出量で吐出し、15m/分の引取り速度でボビンに巻き取って未延伸糸を得た。
得られた未延伸糸に対し、1段目の延伸として、糸温度90℃、延伸倍率4.8倍の熱板延伸を行った。連続して2段目の延伸として、糸温度100℃、延伸倍率1.25倍の熱板延伸を行った。続いて、3段目の延伸として、糸温度160℃、延伸倍率1.17倍の熱板延伸を行い、総延伸倍率7.0倍の延伸繊維を得た。3段目の延伸速度は21m/分で行った。得られた繊維の総繊度、単繊維繊度、繊維直径、結晶面間隔、結晶融解熱、複屈折、強度を求めるための測定を行った。これらの結果を表1に示す。
【0040】
(比較例1)
実施例1と同様にして得られたポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)を、溶融紡糸装置にて240℃から250℃で溶融混練し、250℃の樹脂を吐出孔径が0.4mmφ、吐出孔数が36ホールの紡糸ノズルから15.1g/分の吐出量で吐出し、400m/分の引取り速度でボビンに巻き取って未延伸糸を得た。
【0041】
得られた未延伸糸について熱ロールを用いて糸温度が90℃になるように予備加熱を行い、1段目の延伸として糸温度140℃で3.2倍の熱板延伸を行った。延伸速度は163m/分で行った。得られた繊維の総繊度、単繊維繊度、繊維直径、結晶面間隔、結晶融解熱、複屈折、強度を求めるための測定を行った。これらの結果を表1に示す。
【0042】
(比較例2)
実施例1と同様にして得られたポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)を、溶融紡糸装置にて240℃から250℃で溶融混練し、250℃の樹脂を吐出孔径が0.4mmφ、吐出孔数が36ホールの紡糸ノズルから15.1g/分の吐出量で吐出し、400m/分の引取り速度でボビンに巻き取って未延伸糸を得た。
【0043】
得られた未延伸糸について熱ロールを用いて糸温度が90℃になるように予備加熱を行い、1段目の延伸として糸温度140℃で3.2倍の熱板延伸を行った。
連続して更に糸温度が140℃になるように熱ロールで予備加熱を行い、2段目の延伸として糸温度160℃、延伸張力160cNで1.1倍の熱板延伸を行った。2段目の延伸速度は200m/分で行った。得られた繊維の総繊度、単繊維繊度、繊維直径、結晶面間隔、結晶融解熱、複屈折、強度を求めるための測定を行った。これらの結果を表1に示す。
【0044】