(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055412
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】かご構造を有するシルセスキオキサンからなるネガ用レジスト材料及びかご構造を有するシルセスキオキサンを含むネガ用レジスト組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/038 20060101AFI20240411BHJP
C07F 7/18 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
G03F7/038
C07F7/18 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162330
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 芙美
(72)【発明者】
【氏名】村田 貴朗
【テーマコード(参考)】
2H225
4H049
【Fターム(参考)】
2H225AM85P
2H225AN47P
2H225CA12
2H225CB18
2H225CC01
2H225CC11
2H225CD05
4H049VN01
4H049VP06
4H049VP07
4H049VP08
4H049VP10
4H049VQ88
4H049VR21
4H049VU24
4H049VW02
(57)【要約】
【課題】電子線や極端紫外光(EUV)等の短波長の光源を使用した場合に、ドライエッチング耐性に優れ、微細なパターンを形成することができる、かご構造を有するシルセスキオキサンからなるネガ用レジスト材料を提供する。
【解決手段】ネガ用レジスト材料は、下記式1で表されるかご構造を有するシルセスキオキサンからなることを特徴とする。
(RmSiO
1.5)
n ・・・(式1)
(式1において、nは3~30の整数であり、Rmは下記式2で表される構造を含む。
【化2】
R
1はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれかを示す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1で表されるかご構造を有するシルセスキオキサンからなるネガ用レジスト材料。
(RmSiO
1.5)
n ・・・(式1)
(式1において、nは3~30の整数であり、Rmは下記式2で表される構造を含む。
【化2】
R
1はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれかを示す。)
【請求項2】
前記Rmとして極端紫外線及び電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生する基Rbを含む、請求項1記載のネガ用レジスト材料。
【請求項3】
前記Rmとしてラクトン骨格を有する基Rcを含む、請求項1記載のネガ用レジスト材料。
【請求項4】
前記Rmとして親水性基を有する基Rdを含む、請求項1記載のネガ用レジスト材料。
【請求項5】
下記式1で表されるかご構造を有するシルセスキオキサンを含むネガ用レジスト組成物。
(RmSiO
1.5)
n ・・・(式1)
(式1において、nは3~30の整数であり、Rmは下記式2で表される構造を含む。
【化2】
R
1はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれかを示す。)
【請求項6】
請求項5に記載のネガ用レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かご構造を有するシルセスキオキサンからなるネガ用レジスト材料及びかご構造を有するシルセスキオキサンを含むネガ用レジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
かご構造を有するシルセスキオキサンは、その硬直なポリシロキサン骨格と、サブナノレベルの分子サイズから、高い透明性、耐熱性、表面硬度・耐擦傷性、機械強度等を有しており、ハードコート材料、耐熱材料、レジスト材料等の用途が検討されている。
例えば、下記特許文献1には、かご構造を有するシルセスキオキサンを含む、リソグラフィー用のレジスト組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載のレジスト組成物では、近年の回路パターンの細線化に伴う、電子線や極端紫外光(EUV)等の短波長の光源を用いたリソグラフィーへの対応が不十分であった。
そこで、本発明はこれらの問題点を解決することを目的とし、新たなかご構造を有するシルセスキオキサンからなるネガ用レジスト材料及びかご構造を有するシルセスキオキサンを含むネガ用レジスト組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を有する。
【0006】
[1] 下記式1で表されるかご構造を有するシルセスキオキサンからなるネガ用レジスト材料。
(RmSiO1.5)n ・・・(式1)
(式1において、nは3~30の整数であり、Rmは下記式2で表される構造を含む。
【0007】
【化2】
R
1はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれかを示す。)
【0008】
[2] 前記Rmとして極端紫外線及び電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生する基Rbを含む、[1]記載のネガ用レジスト材料。
【0009】
[3] 前記Rmとしてラクトン骨格を有する基Rcを含む、[1]又は[2]記載のネガ用レジスト材料。
【0010】
[4] 前記Rmとして親水性基を有する基Rdを含む、[1]~[3]のいずれか記載のネガ用レジスト材料。
【0011】
[5] 下記式1で表されるかご構造を有するシルセスキオキサンを含むネガ用レジスト組成物。
(RmSiO1.5)n ・・・(式1)
(式1において、nは3~30の整数であり、Rmは下記式2で表される構造を含む。
【0012】
【化2】
R
1はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれかを示す。)
【0013】
[6] [5]に記載のネガ用レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のかご構造を有するシルセスキオキサンからなるネガ用レジスト材料は、例えば、異なる物性の官能基を2種類以上有することにより、種々の用途への展開が可能となる。特に、本発明のかご構造を有するシルセスキオキサンを含むネガ用レジスト組成物は、電子線や極端紫外光(EUV)等の短波長の光源を使用した場合に、ドライエッチング耐性に優れ、微細なパターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施例のネガ用レジスト組成物を用いて形成したレジストパターンにおいて、露光量と残膜率との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を一実施形態に基づいて説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0017】
[ネガ用レジスト材料]
本発明の一実施形態のかご構造を有するシルセスキオキサンからなるネガ用レジスト材料(以下、本レジスト材料ともいう。)は、下記式1で表されるものである。
(RmSiO1.5)n ・・・(式1)
【0018】
式1中、nは3~30の整数であり、Rmは下記式2で表される構造を含むものである。
【0019】
【0020】
なお、式2において、R1はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれかを表すものである。
【0021】
微細なパターンを形成するために、分子サイズが小さく分子鎖の絡まり合いが弱いのが好ましく、nは30以下が好ましく、20以下がより好ましい。また、構造の安定性の点から、nは3以上が好ましく、6以上がより好ましい。
【0022】
本レジスト材料の質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによるポリスチレン換算)は、微細なパターンを形成できる点で1.0~2.0が好ましく、1.0~1.8がより好ましい。
【0023】
本レジスト材料のかご構造を有するシルセスキオキサンは、(SiO1.5)nで表現される頂点の数がn個のかご構造である。係るかご構造は、完全かご型シルセスキオキサン構造であっても、不完全かご型シルセスキオキサン構造であってもよい。例えば完全かご型シルセスキオキサン構造としては以下の化合物が挙げられる。
【0024】
【0025】
ここで、各頂点は置換基をそれぞれ1個含有する珪素原子であり、各辺はSi-O-Si結合を表す。
【0026】
本レジスト材料では、剛直な化学構造を有する有機ケイ素化合物を含むことにより、例えば、ドライエッチング耐性に優れたものとなる。
【0027】
本レジスト材料において、前記シルセスキオキサンのRmは、下記式2で表される構造を含むものである。
【0028】
【0029】
なお、式2において、R1はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれかを表すものである。
【0030】
前記式2で表される構造を有することにより、レジスト組成物として基板等に塗布してレジスト膜を形成し、前記レジスト膜に対して選択的に露光すると、露光部と未露光部との間で有機系現像液に対する溶解性の差が生じ、かかるレジスト膜を現像することでネガ型レジストパターンが形成される。
【0031】
アルキル基は炭素数1~10が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。なお、アルキル基中の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
【0032】
シクロアルキル基は単環型でも、多環型でもよい。単環型としては、炭素数3~10のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロデシル基等が挙げられる。
多環型としては、炭素数6~20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α-ピネル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、アンドロスタニル基等が挙げられる。
【0033】
なお、シクロアルキル基中の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
【0034】
アリール基は、炭素数6~20のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基等が挙げられる。
アラルキル基は、炭素数7~12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0035】
アルケニル基は、炭素数2~10のアルケニル基が好ましく、例えばビニル基、アリル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0036】
Rmは、Rbを有していてもよい。Rbは極端紫外線及び電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生する基を有するのが好ましい。
【0037】
また、本レジスト材料では、前記Rbが、極端紫外線及び電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生する基を有していることにより、電子線や極端紫外線を用いるレジストとして使用した場合、効率的に2次電子を発生させ、高感度化が達成される。
なお、「極端紫外線及び電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生する基」としては、スズ、アンチモン、テルル、キセノン、セシウム、バリウム等の金属元素やフッ素、ヨウ素等のハロゲン元素を含む基が挙げられる。
【0038】
Rbとしては、合成容易性および入手容易性の観点からフッ素原子を含む基が好ましく、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1H,1H-ペンタデカフルオロ-n-オクチル基、1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル基、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチル基、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基、ペンタフルオロフェニル基等を含む基が挙げられる。
【0039】
本レジスト材料では、前記Rbはアミノ基を有する下記式3で表される構造を含むものが、容易にかご型シルセスキオキサンを得られる点でより好ましい。
【0040】
【0041】
式3においてR2は極端紫外線及び電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生する基を含む基である。
【0042】
本レジスト材料におけるかご構造を有するシルセスキオキサンは、Rmとして、ラクトン骨格を有する基Rcを有していてもよい。
ラクトン環の例としては、4~20員環程度のラクトン環が挙げられる。ラクトン環は、ラクトン環のみの単環であってもよく、ラクトン環に脂肪族または芳香族の炭素環または複素環が縮合した縮合環であってもよい。
【0043】
Rcとしては、基板等への密着性に優れる点から、置換または無置換のδ-バレロラクトン環、および置換または無置換のγ-ブチロラクトン環からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、無置換のγ-ブチロラクトン環を有する基が特に好ましい。
ラクトン環の具体例としては、β-メチル-δ-バレロラクトン、4,4-ジメチル-2-メチレン-γ-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、β-メチル-γ-ブチロラクトン、パントイルラクトン、2,6-ノルボルナンカルボラクトン、4-オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-3-オン、4-オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-3-オン等が挙げられる。
【0044】
ラクトン骨格を有する基Rcは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記シルセスキオキサンがラクトン骨格を有する基Rcを含む場合、その含有量は、全構成単位に対して5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましい。また、感度および解像度の点から、80モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましい。
【0045】
なお、前記ラクトン骨格を有する基Rcは極端紫外線及び電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生する基を有しないものである。
【0046】
本レジスト材料のかご構造を有するシルセスキオキサンは、Rmとして、親水性基を有する基Rdを有していてもよい。
「親水性基」とは、-C(CF3)2-OHで表される1価基、ヒドロキシ基、シアノ基、メトキシ基、カルボキシ基およびアミノ基の少なくとも1種である。
【0047】
前記Rdとしては、2-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシ-n-プロピル、4-ヒドロキシブチル、3-ヒドロキシアダマンチル、2-または3-シアノ-5-ノルボルニル、2-シアノメチル-2-アダマンチル基等が挙げられる。
基板等に対する密着性の点から、3-ヒドロキシアダマンチル、3,5-ジヒドロキシアダマンチル、2-または3-シアノ-5-ノルボルニル、2-シアノメチル-2-アダマンチル基が好ましい。
【0048】
前記Rdは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、前記Rdは、極端紫外線及び電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生する基、及びラクトン骨格を有しないものである。
かご構造有するシルセスキオキサンが前記Rdを含む場合、その含有量は、レジストパターン矩形性の点から、全構成単位に対して5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましい。また、感度および解像度の点から、30モル%以下が好ましく、25モル%以下がより好ましい。
【0049】
次に、本レジスト材料の製造方法の一例を示す。
本レジスト材料のかご構造を有するシルセスキオキサン化合物は、Rmを有するシラン化合物を公知の方法により加水分解・共縮合することにより得られる。なお、本発明において、加水分解・共縮合とは、2種類以上のシラン化合物と所定量の水および触媒を混合し、アルコキシシリル基の加水分解と、これに続くシラノール基の縮合反応により、所望のシルセスキオキサン化合物を製造する一連の反応のことである。
【0050】
Rmを有するシラン化合物の加水分解・共縮合の触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸およびフッ化水素酸などの無機酸、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、アンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライドおよびベンジルトリエチルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩などが好適である。
【0051】
これらの中でも、フッ化水素酸、アンモニウムフルオリドは、かご構造を特異的に生成するため、特に好ましい。
触媒量は、Rmを有するシラン化合物の加水分解性アルコキシ基モル数の理論量合計の0.001~1倍が好ましく、0.005~0.5倍がより好ましい。0.001倍以上では十分な触媒活性を得ることができる。また、1倍以下ならば、ゲル化を抑制することができる。
【0052】
Rmを有するシラン化合物の加水分解に使用する水量は、加水分解性アルコキシ基モル数の理論量合計の0.1~10倍が好ましく、1~3倍がより好ましい。
加水分解・共縮合の反応温度は、0~100℃が好ましく、20~50℃がより好ましい。0℃以上ならば十分に反応が進行する。100℃以下ならば副反応の誘発やゲル化の可能性が少ない。
【0053】
加水分解・共縮合時には、有機溶媒を使用することが好ましい。有機溶媒としては、Rmを有するシラン化合物を溶解できるものであれば特に限定はないが、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1-メトキシ-2-プロパノール、アセトニトリルなどが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独でも、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0054】
シラン化合物としては、前述したアミノ基を有する下記式2又は式3で表される構造を含むものが、容易にかご型シルセスキオキサンを得られる点でより好ましく、例えば、アミノ基を含有するシラン化合物と単官能アクリレート化合物とのマイケル付加反応により製造することができる。
【0055】
【0056】
【0057】
アミノ基を含有するシラン化合物としては、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられ、特に、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシランが好適である。
【0058】
単官能アクリレート化合物としては、式2におけるR1にアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれかを有するアクリレート化合物であり、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、s-ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、t-ブチルアクリレート、1-メチルシクロペンチルアクリレート、1-メチルシクロヘキシルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、フェニルアクリレート、4-メチルフェニルアクリレート、ジメチルフェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェネチルアクリレートなどが挙げられる。かご構造を有するシルセスキオキサン化合物としたときの現像液溶解性および入手容易性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、s-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレートが好適である。
【0059】
また、式3におけるR2に極端紫外線及び電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生する基を有するアクリレート化合物は、特に入手容易性の観点から、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチルアクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、1H,1H-ペンタデカフルオロ-n-オクチルアクリレート、1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシルアクリレート、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチルアクリレート、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、ペンタフルオロフェニルアクリレートが好適である。
【0060】
本付加反応は無溶媒で行ってもよいし、溶媒を用いることもできる。溶媒の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、1-プロピルアルコール、2-プロピルアルコール、1-ブチルアルコール、2-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、ベンジルアルコール、2-メトキシエチルアルコール、2-エトキシエチルアルコール、2-(メトキシメトキシ)エタノール、2-ブトキシエタノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、フェネトール、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、グリセリンエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、3-メトキシブチルアセテート、2-エチルブチルアセテート、2-エチルヘキシルアセテート、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、γ-ブチロラクトン、2-メトキシエチルアセテート、2-エトキシエチルアセテート、2-ブトキシエチルアセテート、2-フェノキシエチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
これらの溶媒は単独で、又は2種以上を併用して使用することができる。また、その使用量は適宜、決めればよい。
【0061】
アミノ基を含有するシラン化合物と単官能アクリレート化合物との反応モル比は、未反応物を少なくできることから、アミノ基を含有するシラン化合物1モルに対して単官能アクリレート化合物2~10モルが好ましく、2~5モルがより好ましい。
付加反応の温度は、20~100℃が好ましく、30~80℃がより好ましい。20℃以上ならば、付加反応を十分進行させることができる。また、100℃以下ならば、アクリレート化合物の重合を抑制することができる。
【0062】
付加反応の時間は、1~60時間が好ましく、2~48時間がより好ましい。1時間以上ならば、付加反応を十分進行させることができる。60時間以内ならば、アクリレート化合物の重合を抑制することができる。
本付加反応は、触媒を用いることができる。触媒としては、マイケル付加反応に使用されるアミン類、アルカリ金属アルコキシドなどの公知のものを用いることができる。
アクリレート化合物の重合を抑制するため、反応系内に重合防止剤を添加してもよい。重合防止剤の種類は、特に限定されない。重合防止剤は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合防止剤としては、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、4-tert-ブチルカテコール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、ペンタエリスリトールテトラキス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメイト)、2-sec-ブチル-4,6-ジニトロフェノール等のフェノール系化合物;N,N-ジイソプロピルパラフェニレンジアミン、N,N-ジ-2-ナフチルパラフェニレンジアミン、N-フェニレン-N-(1,3-ジメチルブチル)パラフェニレンジアミン、N,N’-ビス(1,4-ジメチルフェニル)-パラフェニレンジアミン、N-(1,4-ジメチルフェニル)-N’-フェニル-パラフェニレンジアミン等のアミン系化合物;4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)セバケイト等のN-オキシル系化合物;銅、塩化銅(II)、塩化鉄(III)等の金属化合物;等が例示できる。
重合防止剤の使用量は適宜設定できる。例えば、アクリレート化合物に対して20ppm以上が好ましく、充分な重合防止効果を得るには50ppm以上がより好ましい。一方、コストの観点から重合防止剤の使用量は、10000ppm以下が好ましく、5000ppm以下がより好ましい。
【0063】
本付加反応終了後の精製方法については、生成物の物性、原料、溶剤の有無等を考慮して、分液、水洗、蒸留、晶析、濾過等の公知の精製方法を、適宜組み合わせることができる。
【0064】
[ネガ用レジスト組成物]
本発明の一実施形態のネガ用レジスト組成物(以下、本レジスト組成物ともいう。)は、本レジスト材料と、溶媒と、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物とを含むことが好ましい。
【0065】
かご構造を有するシルセスキオキサンは1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
本レジスト組成物(溶剤を除く)に対して、かご構造を有するシルセスキオキサンの含有量は、特に限定されないが、70~100質量%が好ましい。
溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)などが挙げられる。溶媒は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
溶媒の使用量は、形成するレジスト膜の厚みにもよるが、かご構造を有するシルセスキオキサン100質量部に対して100~10,000質量部の範囲が好ましい。
さらに本レジスト組成物は、必要に応じて、光酸発生剤、含窒素化合物、酸化合物(有機カルボン酸、リンのオキソ酸またはその誘導体)、界面活性剤、その他のクエンチャー、増感剤、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。前記添加剤は、当該分野で公知のものを使用できる。
【0067】
[パターン形成方法]
本発明の一実施形態のパターン形成方法は、本レジスト組成物を基板に塗布し製膜する製膜工程と、製膜後の本レジスト組成物を露光する露光工程と、露光後の本レジスト組成物を現像する現像工程を含む。
【0068】
<製膜工程>
本レジスト組成物を基板に塗布する方法は、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の公知の方法を用いることができる。
前記基板としては、シリコンウエハ、SiNウエハ、AINウエハ、アルミニウムで被覆されたウエハ等が挙げられる。なお、本レジスト組成物の密着性、現像後の解像性等を改善するために、有機系、無機系の反射防止膜を基板上に形成してもよい。
【0069】
本工程で形成する膜の平均厚さは、1nm以上、500nm以下が好ましい。前記下限以下では、レジスト膜としての機能が損なわれ、前記上限以上ではパターン形成・現像後のパターン倒れなどが発生しやすくなる。
また、必要に応じて塗布後にプリベークを行ってもよい。プリベークの温度は、60℃以上、140℃以下が好ましい。プリベークの時間は、5秒以上、300秒以下が好ましい。
【0070】
<露光工程>
前記製膜工程で得られた基板のレジスト層に、所定のパターンを有するマスクを介して、露光を行う。露光に用いる光源は、紫外線、遠紫外線、極端紫外線(EUV)、X線、ガンマ線等が挙げられる。
これらの中で、EUV、電子線が好ましい。
【0071】
<現像工程>
露光後、適宜熱処理(露光後ベーク、PEB)し、レジスト膜に現像液を接触させてレジスト膜の一部を溶解する。ネガ型現像プロセスでは有機系現像液で未露光部を溶解して除去する。
本発明のかご構造を有するシルセスキオキサンは、露光により露光部の有機系現像液への溶解速度が低下する。
【0072】
有機系現像液としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤及び炭化水素系溶剤を用いることができる。
ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンなどが挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、などが挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、1-プロピルアルコール、2-プロピルアルコール、1-ブチルアルコール、2-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、ベンジルアルコール、2-メトキシエチルアルコール、2-エトキシエチルアルコール、2-(メトキシメトキシ)エタノール、2-ブトキシエタノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどが挙げられる。
炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどが挙げられる。
これらの中で、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を含有する現像液であることが好ましい。また、これらの溶剤は単独で、又は2種以上を併用して使用することができる。
【0073】
現像は、公知の方法で行えばよく、現像液が満たされた槽の中に基板を一定時間浸漬する方法、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法、基板表面に現像液を噴霧する方法、一定速度で回転させている基板上に一定速度でノズルを走査しながら現像液を吐出する方法等が挙げられる。
現像後、基板を純水等で適宜リンス処理する。このようにして被加工基板上にレジストパターンが形成される。
【0074】
レジストパターンが形成された基板は、適宜熱処理(ポストベーク)してレジストを強化し、レジストのない部分を選択的にドライエッチングする。
ドライエッチング後、レジストを剥離剤によって除去することによって、微細パターンが形成された基板が得られる。
【実施例0075】
以下、本発明の一実施例を説明する。本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準である。
なお、シルセスキオキサン化合物の数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリスチレン換算で求めた。
【0076】
<シラン化合物の合成(A1)>
撹拌子、温度計を備えたフラスコに、3-アミノプロピルトリエトキシシラン2.00g(9.0mmol)、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール7mgを加えた。氷冷下、メチルアクリレート1.7mL(18mmol)を滴下した後、40℃で6時間反応後、50℃で7時間反応させた。さらにメチルアクリレート0.9mL(10mmol)を加えた後、50℃で7.5時間反応させた。反応終了後、濃縮、減圧乾燥して下記式4に示すシラン化合物(A1)3.12gを無色液体として収率88%で得た。1H-NMR(400MHz、CDCl3):δ3.80ppm(q、6H)、3.65ppm(s、3H)、2.76ppm(t、4H)、2.43ppm(m、6H)、1.51ppm(m、2H)、1.21ppm(t、9H)、0.55ppm(t、2H)。
【0077】
【0078】
<シルセスキオキサン化合物の合成>
撹拌子、温度計を備えたフラスコに、合成したシラン化合物(A1)1.00g(2.5mmol)、メチルアルコール3.3mlを加え溶解させ、3.2%アンモニウムフルオリド水溶液0.29gを滴下した。室温で5.5時間攪拌した後、濃縮した。酢酸エチル10mLを加え、水10mL、続いて水5mLで洗浄した。得られた有機層を濃縮、減圧乾燥して、下記式5に示すシルセスキオキサン(SQ1)0.71gを無色粘調液体として収率99%で得た。Mn1900、Mw/Mn1.05であり、下記化学式中、mは6~8と推測される。1H-NMR(400MHz、CDCl3):δ3.64ppm(s、3H)、2.74ppm(brt、4H)、2.41ppm(brt、6H)、1.48ppm(m、2H)、0.55ppm(brt、2H)。
【0079】
【0080】
<実施例1>
前記シルセスキオキサン(SQ1)100質量部をメチルエチルケトン3900質量部に溶解させ均一溶液とした後、孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過し、レジスト組成物を調製した。
パターン形成基板としてヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコンウエハを用い、調製したレジスト組成物を、パターン形成基板上にスピンコートし、ホットプレートを用いて90℃60秒間乾燥して、レジスト層厚130nmのレジスト層含有パターン形成基板を得た。これを電子線露光装置(エリオニクス社製「ELS-S50」)を用いて露光し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)で60秒間現像を行った。露光量を変えて残膜率を測定した結果を
図1に示す。
【0081】
(結果)
図1の結果から、露光量増加に伴う残膜率増加が確認できたことにより、本発明で得られたシルセスキオキサンを含むネガ用レジスト組成物の塗膜は、光照射により塗膜の溶解性を光照射部のみ選択的に変化させることで、所望の精密パターンを基板上に形成することが可能であることが明らかとなった。なお、残膜率は光干渉式膜厚測定装置を用いて測定した。