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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055419
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20240411BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162341
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100173598
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 桜子
(72)【発明者】
【氏名】南 和彦
(72)【発明者】
【氏名】平野 智哉
(72)【発明者】
【氏名】中子 偉夫
(72)【発明者】
【氏名】石川 大
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BA03
5F136BB04
5F136BC03
5F136BC06
5F136DA27
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA33
5F136FA34
5F136FA52
5F136FA62
5F136FA74
5F136GA32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】半導体素子が積載されている部位とこの部位の周囲とを含む領域以外にも焼結体が設けられている場合と比べて、半導体素子から発生した熱の放熱効率の低下を抑制しながら、焼結体の量を低減する半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置1は、一方の面に半導体素子13が積載された基板と、平板状のベース部21を有し、ベース部21が基板の他方の面に積層されたヒートシンク20と、基板とヒートシンク20との積層方向から見て基板に半導体素子13が積載されている部位とこの部位の周囲とからなる素子領域において、基板の他方の面とヒートシンク20のベース部21とを接合する焼結体部31と、を備える。基板の他方の面とヒートシンク20のベース部21との間における素子領域以外の領域には、焼結体部は設けられていない。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に半導体素子が積載された基板と、
平板状のベース部を有し、当該ベース部が前記基板の他方の面に積層されたヒートシンクと、
前記基板と前記ヒートシンクとの積層方向から見て当該基板に前記半導体素子が積載されている部位と当該部位の周囲とからなる素子領域において、当該基板の前記他方の面と当該ヒートシンクの前記ベース部とを接合する焼結体とを備え、
前記基板の前記他方の面と前記ヒートシンクの前記ベース部との間における前記素子領域以外の領域には、前記焼結体が設けられていない半導体装置。
【請求項2】
前記積層方向から見た場合に、前記半導体素子の周縁から前記焼結体の周縁までの距離が、前記基板の厚さ以上であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記積層方向から見た場合に、前記素子領域に重なる前記焼結体の面積が、前記半導体素子の面積の1.1倍以上5.0倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記基板の前記他方の面と前記ヒートシンクの前記ベース部との間における前記素子領域以外の領域は、接合されていないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記基板の前記他方の面と前記ヒートシンクの前記ベース部との間における前記素子領域以外の領域が、はんだ合金により接合されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記基板の前記他方の面と前記ヒートシンクの前記ベース部との間における前記素子領域以外の領域が、樹脂または樹脂を含む複合材料により接合されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属ペーストの焼結体を用いて、ダイパッドに対して半導体チップを接合する技術が開示されている。
特許文献2には、第一の部材と第二の部材とを銅焼結体により接続する部材接続方法が開示されている。この部材接続方法では、各部材の接続領域に対して、銅ペーストの塗膜を、塗膜が形成される塗膜形成領域と塗膜が形成されない塗膜非形成領域とからなる印刷パターンを用いて形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-17671号公報
【特許文献2】特開2020-44480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置では、半導体素子が積載された基板と、半導体素子から生じた熱を放熱するヒートシンクとを、金属粒子を焼結させた焼結体を用いて接合する場合がある。このような半導体装置では、基板とヒートシンクとの間の領域全体を焼結体により接合すると、接合に用いる焼結体が多くなり、半導体装置のコスト上昇につながる。その一方で、基板とヒートシンクとの間の領域のうち一部の領域のみを焼結体により接合すると、基板に積載された半導体素子と焼結体との位置関係等によっては、半導体素子から発生した熱がヒートシンクへ伝導されにくくなり、ヒートシンクによる放熱効率が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、半導体素子が積載されている部位とこの部位の周囲とを含む領域以外にも焼結体が設けられている場合と比べて、半導体素子から発生した熱の放熱効率の低下を抑制しながら、焼結体の量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、下記(1)~(6)に係る発明が提供される。
(1)一方の面に半導体素子(半導体素子13)が積載された基板(絶縁性基板11)と、
平板状のベース部(ベース部21)を有し、当該ベース部が前記基板の他方の面に積層されたヒートシンク(ヒートシンク20)と、
前記基板と前記ヒートシンクとの積層方向から見て当該基板に前記半導体素子が積載されている部位(S1)と当該部位の周囲(S2)とからなる素子領域(素子領域S)において、当該基板の前記他方の面と当該ヒートシンクの前記ベース部とを接合する焼結体(焼結体部31)とを備え、
前記基板の前記他方の面と前記ヒートシンクの前記ベース部との間における前記素子領域以外の領域には、前記焼結体が設けられていない半導体装置。
(2)前記積層方向から見た場合に、前記半導体素子の周縁から前記焼結体の周縁までの距離が、前記基板の厚さ以上であることを特徴とする(1)に記載の半導体装置。
(3)前記積層方向から見た場合に、前記素子領域に重なる前記焼結体の面積が、前記半導体素子の面積の1.1倍以上5.0倍以下であることを特徴とする(1)に記載の半導体装置。
(4)前記基板の前記他方の面と前記ヒートシンクの前記ベース部との間における前記素子領域以外の領域は、接合されていないことを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の半導体装置。
(5)前記基板の前記他方の面と前記ヒートシンクの前記ベース部との間における前記素子領域以外の領域が、はんだ合金(はんだ部33)により接合されていることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の半導体装置。
(6)前記基板の前記他方の面と前記ヒートシンクの前記ベース部との間における前記素子領域以外の領域が、樹脂または樹脂を含む複合材料(樹脂部35)により接合されていることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の半導体装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、半導体素子が積載されている部位とこの部位の周囲とを含む領域以外にも焼結体が設けられている場合と比べて、半導体素子から発生した熱の放熱効率の低下を抑制しながら、焼結体の量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1が適用される半導体装置の構成の一例を示す図である。
図2】半導体装置の構成の一例を示す図であって、半導体装置を図1のII部で切断した断面の一例を示す図である。
図3】半導体装置の構成の一例を示す図であって、半導体装置を図2のIII方向から見た図である。
図4】実施形態1が適用される半導体装置における接合層を、半導体モジュールが積載される側から見た図である。
図5】半導体素子とそれぞれの焼結体部との関係を説明する半導体装置の断面図である。
図6】(a)~(c)は、半導体装置の製造方法の一例を説明する図である。
図7】実施形態2が適用される半導体装置の構成の一例を示す図であって、半導体装置を積層方向に沿って切断した断面の一例を示す図である。
図8】実施形態2が適用される半導体装置における接合層を、半導体モジュールが積載される側から見た図である。
図9】実施形態3が適用される半導体装置の構成の一例を示す図であって、半導体装置を積層方向に沿って切断した断面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
[実施形態1]
(半導体装置1)
図1は、実施形態1が適用される半導体装置1の構成の一例を示す図である。
図2は、半導体装置1の構成の一例を示す図であって、半導体装置1を図1のII部で切断した断面の一例を示す図である。
図3は、半導体装置1の構成の一例を示す図であって、半導体装置1を図2のIII方向から見た図である。
【0010】
本実施形態に係る半導体装置1は、半導体モジュール10と、半導体モジュール10から伝導された熱を放熱するヒートシンク20と、半導体モジュール10とヒートシンク20とを接合する接合層30とを備えている。付言すると、半導体装置1では、半導体モジュール10とヒートシンク20とが、接合層30を介して積層されている。以下では、半導体装置1において接合層30を介して半導体モジュール10とヒートシンク20とが積層される方向(図2における上下方向)を、単に積層方向と表記する場合がある。
図示は省略するが、本実施形態の半導体装置1は、例えば冷却液が流通する内部空間を有するケースに対し、ヒートシンク20の後述するフィン22が冷却液に接触するように取り付けられて使用される。これにより、半導体モジュール10で発生し、接合層30を介してヒートシンク20へ伝導した熱が、冷却液によって放熱される。
【0011】
半導体モジュール10は、基板の一例としての絶縁性基板11と、絶縁性基板11の一方の面(図2における上側の面)に積載された複数(この例では4個)の半導体素子13と、絶縁性基板11の一方の面とそれぞれの半導体素子13とを接合する素子接合層15と、を備えている。
【0012】
絶縁性基板11は、半導体素子13とヒートシンク20とを絶縁する絶縁層111と、絶縁層111の一方の面(図2における上側の面)に形成され、それぞれの半導体素子13に電力を供給するための配線を含む配線層112と、絶縁層111の他方の面(図2における下側の面)に形成され、半導体素子13から発生した熱をヒートシンク20へ伝導する伝熱層113とを備えている。
【0013】
絶縁層111としては、例えば、アルミナ(Al)、窒化ケイ素(Si)、窒化アルミニウム(AlN)等からなるセラミック基板を用いることができる。絶縁層111の厚さは、例えば、0.1mm以上2.0mm以下の範囲を例示することができる。
【0014】
配線層112は、絶縁層111の一方の面における予め定められた領域に形成され、半導体素子13に電力を供給するための配線を構成する。
伝熱層113は、絶縁層111の他方の面における略全面を覆うように形成される。
配線層112および伝熱層113は、金属層からなる。配線層112および伝熱層113に用いられる金属としては、銅、ニッケル、銀、パラジウム、金、白金、鉛、コバルト、錫、アルミニウム、あるいはこれらから選ばれた2種以上の金属の合金が挙げられ、好ましくは、銅、ニッケル、銀、パラジウム、金、あるいはこれらから選ばれた2種以上の金属の合金であり、より好ましくは、銅、ニッケル、銀である。また、配線層112と伝熱層113とは、同種の金属から構成されていてもよく、異なる種類の金属から構成されていてもよい。
配線層112および伝熱層113の厚さは、例えば、0.05mm以上2.0mm以下の範囲を例示することができる。
【0015】
このような絶縁性基板11としては、セラミックからなる絶縁層111の一方の面および他方の面に、銅からなる配線層112および伝熱層113を接合したDCB(Direct Copper Bond)基板や、セラミック基板からなる絶縁層111の両面にアルミニウムからなる配線層112および伝熱層113を接合したDAB(Direct Aluminium Bond)基板を例示することができる。
なお、絶縁性基板11は、全体として半導体素子13とヒートシンク20とを絶縁することが可能であれば、配線層112および伝熱層113のように導電性を有する層を含んでいてもよい。
【0016】
半導体素子13は、絶縁性基板11の一方の面に形成された配線層112上に設けられている。本実施形態では、絶縁性基板11の配線層112上に、直交する第1の方向(図2図3における左右方向)と第2の方向(図3における上下方向)とに2個ずつ、合計4個の半導体素子13が、間隙をあけて並んで設けられている。
半導体素子13は、例えば、電力制御に用いられるトランジスタ、サイリスタ、ダイオード等のパワー半導体である。半導体素子13の材質は、シリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga)を例示することができる。
本実施形態では、それぞれの半導体素子13は、全体として直方体状の形状を有している。なお、図示は省略するが、半導体素子13には、モータやコンピュータ装置等の他の装置に電力を供給するための端子等が設けられていてもよい。
【0017】
素子接合層15は、絶縁性基板11の表面に形成された配線層112とそれぞれの半導体素子13とを接合する。素子接合層15としては、配線層112と半導体素子13とを電気的に接続可能なものであれば特に限定されない。素子接合層15を介して絶縁性基板11(配線層112)と半導体素子13とを接合する手法としては、はんだ付け、ろう付け、焼結等を例示することができる。なお、この例では、それぞれの半導体素子13は、個別の素子接合層15を介して絶縁性基板11に接合されているが、複数(4個)の半導体素子13が、共通する1つの素子接合層15を介して絶縁性基板11に接合されていてもよい。
【0018】
ヒートシンク20は、平板状のベース部21と、ベース部21から突出する複数のフィン22とを備えている。
ベース部21は、直交する第1の方向(図2図3における左右方向)と第2の方向(図3における上下方向)とを有する矩形状の部材である。ベース部21は、複数のフィン22が突出する表面211と、接合層30を介して半導体モジュール10と対向する裏面212とを有している。この例では、ベース部21の面積は、半導体モジュール10における絶縁性基板11の面積と比べて大きい。
なお、以下の説明では、ヒートシンク20のベース部21における第1の方向および第2の方向を、単に第1の方向および第2の方向と表記する場合がある。
【0019】
ヒートシンク20のそれぞれのフィン22は、ベース部21の表面211からベース部21の板面に直交する方向に突出する。それぞれのフィン22は、ベース部21の板面に直交する方向およびベース部21の第2の方向に延びる平板状の部材である。それぞれのフィン22は、ベース部21の表面211に対し第1の方向に間隙を挟んで並んで配置されている。
また、ヒートシンク20は、ベース部21の裏面212に対して、接合層30により半導体モジュール10の絶縁性基板11が接合されている。
【0020】
ヒートシンク20の材質は、特に限定されないが、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金であることを例示することができる。また、ヒートシンク20、特にヒートシンク20におけるベース部21の裏面212には、銀めっきや金めっき等のめっき層が形成されていてもよい。ベース部21の裏面212にこれらのめっき層が形成されることで、接合層30を介した半導体モジュール10の絶縁性基板11との接合強度を高めることができる。
なお、ヒートシンク20の形状は、接合層30を介して絶縁性基板11に接合される面を有し、この接合される面が金属からなり、半導体モジュール10から伝導された熱を放熱する機能を備えていれば、平板状のベース部21と、ベース部21から突出する平板状のフィン22とを有する上述した形態に限定されない。ヒートシンク20は、例えば、内部に冷却液を流通させることが可能な空間を有する、全体として箱状の形状であってもよい。また、ヒートシンク20において、絶縁性基板11が接合される面に用いられる金属としては、銅、ニッケル、銀、パラジウム、金、白金、鉛、コバルト、錫、アルミニウム、あるいはこれらから選ばれた2種以上の金属の合金が挙げられ、好ましくは、銅、ニッケル、銀、パラジウム、金、あるいはこれらから選ばれた2種以上の金属の合金であり、より好ましくは、銅、ニッケル、銀である。
【0021】
接合層30は、金属粒子を焼結させた焼結体からなる複数(この例では4個)の焼結体部31を有する。それぞれの焼結体部31は、積層方向から見た場合に、絶縁性基板11の一方の面に積載された半導体素子13と重なるように設けられている。なお、接合層30の焼結体部31と半導体素子13との位置関係等については、後段にて詳細に説明する。
【0022】
焼結体部31を構成する焼結体は、例えば、絶縁性基板11とヒートシンク20との間に、金属粒子を分散させた金属ペーストを塗布し、焼結することで得られる。また、焼結体部31を構成する焼結体は、例えば、絶縁性基板11とヒートシンク20との間に、金属粒子を含むシート状の接合用シートを積層し、焼結することで得られる。金属ペーストや接合用シートを焼結して焼結体を得る焼結方法としては、無加圧焼結、加圧焼結、通電焼結等を例示することができる。なお、接合層30を形成する手順、および焼結体部31の形成に用いる金属ペーストや接合用シートについては、後段にて詳細に説明する。
【0023】
焼結体部31を構成する焼結体に用いる金属粒子としては、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、銅と銀との合金(Cu-Ag)から選択された金属の粒子を用いることができる。また、金属粒子としては、例えば、表面を銀で被覆した銅からなる粒子を用いてもよい。これらの金属粒子の中でも、銅粒子を用いることが好ましい。焼結体を形成する金属粒子として銅粒子を用いることで、焼結体部31を介した半導体モジュール10とヒートシンク20との間の伝熱性を向上させることができる。
また、焼結体部31を構成する焼結体は、金属間化合物、無機化合物、樹脂等の金属以外の成分を含んでいてもよい。
【0024】
接合層30の厚さ、言い換えると、それぞれの焼結体部31の厚さは、10μm以上500μm以下の範囲を例示することができる。焼結体部31の厚さが10μm未満である場合、焼結体部31による半導体モジュール10とヒートシンク20との接合強度が不十分となる場合がある。また、焼結体部31の厚さが500μmを超える場合、焼結体部31を介した半導体モジュール10からヒートシンク20への伝熱性が低下しやすい。この場合、半導体モジュール10の半導体素子13で発生した熱の放熱効率が低下するおそれがある。
なお、焼結体部31の厚さは、50μm以上200μm以下の範囲が好ましく、60μm以上180μm以下の範囲がより好ましい。
【0025】
焼結体部31を構成する焼結体は、焼結により溶融した金属粒子同士が連結した構造を有している。また、焼結体部31を構成する焼結体は、金属粒子間に微細な間隙が形成されていることが好ましい。焼結体の金属粒子間に間隙が形成されることで、焼結体部31に生じた内部応力が緩和されやすくなる。
焼結体部31を構成する焼結体における金属の緻密度は、40体積%以上95体積%以下の範囲を例示することができ、50体積%以上95体積%以下の範囲であることが好ましく、60体積%以上95体積%以下の範囲であることがより好ましい。焼結体部31を構成する焼結体における金属の緻密度が上記範囲を満たすことで、焼結体部31を介した半導体モジュール10がとヒートシンク20との伝熱性と、焼結体部31による内部応力の緩和とを両立しやすくなる。
【0026】
焼結体における金属の緻密度は、焼結体の体積と、精密天秤で測定した焼結体の質量とを測定し、この体積と質量から、焼結体の見かけの密度M1(g/cm)を求める。続いて、求めた見かけの密度M1と、焼結体に用いた金属の理論密度Mx(例えば銅粒子の場合は、銅の理論密度8.96g/cm)とを用いて、下記式(1)から焼結体における金属の緻密度(体積%)が求められる。
焼結体における金属の緻密度(体積%)=[(M1)/(Mx)]×100・・・(1)
【0027】
図4は、実施形態1が適用される半導体装置1(図1等参照)における接合層30を、半導体モジュール10(図1等参照)が積載される側(図2における上側)から見た図である。付言すると、図4は、図3に示した半導体装置1から半導体モジュール10を省略した図に対応する。図4では、半導体モジュール10において、絶縁性基板11(図3等参照)に半導体素子13が積載されている位置を、破線で示している。
また、図5は、半導体素子13とそれぞれの焼結体部31との関係を説明する半導体装置1の断面図であって、図2に示した断面図の拡大図である。
【0028】
図4および図5に示すように、接合層30のそれぞれの焼結体部31は、絶縁性基板11の他方の面とヒートシンク20のベース部21との間において、積層方向から見て、絶縁性基板11の一方の面に積載されている半導体素子13に重なるように設けられている。
より具体的には、それぞれの焼結体部31は、積層方向から見て、絶縁性基板11の一方の面に半導体素子13が積載されている部位S1と、半導体素子13が積載されている部位S1の周囲S2とからなる領域(以下、素子領域Sと表記する。)に重なるように設けられている。また、絶縁性基板11の他方の面とヒートシンク20のベース部21との間において、素子領域S以外の領域には、焼結体部31が設けられていない。
【0029】
本実施形態では、素子領域Sに焼結体部31が設けられていることで、半導体素子13で発生した熱が、焼結体部31を介してヒートシンク20へ伝導されやすくなる。これにより、素子領域Sに焼結体部31が設けられていない場合と比べて、半導体装置1において、半導体素子13で発生した熱のヒートシンク20による放熱効率が向上する。
【0030】
本実施形態では、焼結体部31が、積層方向から見て、半導体素子13が積載されている部位S1に加えて、半導体素子13が積載されている部位S1の周囲S2にも設けられている。これにより、焼結体部31が、積層方向から見て、半導体素子13が積載されている部位S1のみに設けられている場合と比べて、半導体素子13で発生した熱が、焼結体部31を介してヒートシンク20へ伝導されやすくなる。
【0031】
具体的に説明すると、半導体素子13で発生した熱は、まず半導体素子13が積載される一方の面から絶縁性基板11に伝導される。そして、絶縁性基板11では、半導体素子13で発生した熱は、半導体素子13が積載される一方の面からヒートシンク20が接合される他方の面に向けて積層方向(図5において上から下に向かう方向)に伝導されるとともに、絶縁性基板11の面方向(図5における左右方向)にも伝導される。
これにより、絶縁性基板11では、半導体素子13で発生した熱が伝導される範囲が、絶縁性基板11の一方の面から他方の面に向かうに従い広くなる。付言すると、絶縁性基板11のうちヒートシンク20が接合される他方の面では、半導体素子13で発生した熱が、積層方向から見て絶縁性基板11の一方の面に半導体素子13が積載されている部位S1よりも広い範囲に伝導される。
本実施形態では、上述したように、焼結体部31が、積層方向から見て、絶縁性基板11の一方の面に半導体素子13が積載されている部位S1の周囲S2にも設けられている。これにより、絶縁性基板11において、半導体素子13が積載されている部位S1の周囲S2に伝導した熱が、焼結体部31を介してヒートシンク20へより伝導されやすくなる。
【0032】
さらに、本実施形態の接合層30では、積層方向から見た場合に、それぞれの半導体素子13の周縁から、この半導体素子13に重なるように設けられた焼結体部31の周縁までの距離D1が、絶縁性基板11の厚さD2以上であることが好ましい。この場合、半導体装置1の断面において、素子結合層15の周縁下端と焼結体部31の周縁上端とを結んだ方向と、積層方向と直交する方向(第1の方向および第2方向)とがなす角度θが45度以下となる。
上述したように、半導体素子13で発生した熱は、絶縁性基板11の面方向にも伝導される一方で、半導体素子13から面方向に離れるほど、伝導される熱の量が少なくなる。そして、絶縁性基板11において、半導体素子13で発生した熱の多くは、図5にて斜線で示すように、素子結合層15の周縁下端と焼結体部31の周縁上端とを結んだ方向と、積層方向と直交する方向(第1の方向および第2方向)とがなす角度θが45度となる範囲の内側に伝導される。
本実施形態では、それぞれの半導体素子13の周縁から焼結体部31の周縁までの距離D1が、絶縁性基板11の厚さD2以上であることで、半導体素子13で発生した熱が、絶縁性基板11において、焼結体部31が設けられていない領域に伝導されることが抑制される。これにより、半導体素子13で発生した熱が、焼結体部31を介してヒートシンク20へより伝導されやすくなる。
【0033】
さらにまた、それぞれの焼結体部31は、積層方向から見た面積が、半導体素子13を積層方向から見た面積の1.1倍以上5.0倍以下であることが好ましい。
それぞれの焼結体部31の面積が上述した範囲を満たすことで、それぞれの焼結体部31の面積が半導体素子13の面積の1.1倍未満である場合と比べて、半導体素子13で発生した熱が焼結体部31を介してヒートシンク20へ伝導されやすくなり、半導体装置1において、半導体素子13で発生した熱の放熱効率が向上する。また、それぞれの焼結体部31の面積が上述した範囲を満たすことで、それぞれの焼結体部31の面積が半導体素子13の面積の5.0倍を超える場合と比べて、半導体素子13から生じた熱による内部応力によって、それぞれの焼結体部31を構成する焼結体が破損しにくくなる。また、それぞれの焼結体部31の面積が上述した範囲を満たすことで、それぞれの焼結体部31の面積が半導体素子13の面積の5.0倍を超える場合と比べて、半導体モジュール10の絶縁性基板11とヒートシンク20とを接合するために使用する焼結体の量が少なくなる。
それぞれの焼結体部31を積層方向から見た面積は、半導体素子13を積層方向から見た面積の1.3倍以上4.0倍以下であることがより好ましい。
【0034】
また、本実施形態の接合層30では、絶縁性基板11の他方の面とヒートシンク20のベース部21との間において、素子領域S以外の領域には、焼結体部31が設けられていない。付言すると、本実施形態の接合層30では、素子領域Sに設けられた焼結体部31以外の領域が、空隙となっており、絶縁性基板11の他方の面とヒートシンク20のベース部21とが接合されていない。
これにより、素子領域S以外の領域にも焼結体部31が設けられている場合、例えば、絶縁性基板11の他方の面とヒートシンク20のベース部21との間の全域に亘って焼結体部31が設けられている場合と比べて、半導体モジュール10の絶縁性基板11とヒートシンク20とを接合するために使用する焼結体の量が少なくなる。この結果、半導体装置1のコストを低減することができる。
【0035】
(半導体装置1の製造方法)
続いて、半導体装置1の製造方法について説明する。ここでは、接合層30の焼結体部31を構成する焼結体を、金属ペーストを用いて形成する場合を例に挙げて説明する。
図6(a)~(c)は、半導体装置1の製造方法の一例を説明する図である。図6(a)~(c)は、半導体装置1の製造方法における工程を示し、図6(a)~(c)の順に進む。図6(a)~(c)は、半導体装置1の製造方法における代表的な工程であって、他の工程を含んでもよい。図6(a)~(c)は、図2に示した断面図に対応する。
【0036】
実施形態1の半導体装置1の製造方法は、金属ペーストを半導体モジュール10とヒートシンク20との間に塗布して金属ペーストの塗膜層40を形成する塗布工程と、金属ペーストの塗膜層40を介して半導体モジュール10とヒートシンク20とを積層する積層工程と、金属ペーストの塗膜層40を焼結して焼結体部31を形成し、接合層30を形成する焼結工程とを含む。
【0037】
<塗布工程>
塗布工程では、一方の面(配線層112上)に半導体素子13が積載される絶縁性基板11における他方の面(伝熱層113上)と、ヒートシンク20のベース部21における裏面212とのいずれかである塗布面に、金属ペーストを塗布して塗膜層40を形成する。
この例では、図5(a)に示すように、塗布面の一例としてヒートシンク20におけるベース部21の裏面212に、金属ペーストを塗布して塗膜層40を形成する。
塗布面に金属ペーストを塗布する手法としては、特に限定されず、スクリーン印刷、転写印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、各種のディスペンサやコータを用いた印刷法等を例示することができる。
【0038】
塗布工程では、塗布面(この例では、ベース部21の裏面212)に対して、積層方向から見て、絶縁性基板11の一方の面に半導体素子13が積載される部位と、半導体素子13が積載される部位の周囲とからなる領域に金属ペーストを塗布する。金属ペーストが塗布された複数の塗布部41を有する塗膜層40を形成する。
また、本実施形態では、絶縁性基板11の一方の面に半導体素子13が積載される部位と、半導体素子13が積載される部位の周囲とからなる領域以外の領域には、金属ペーストは塗布しない。これにより、塗膜層40では、絶縁性基板11の一方の面に半導体素子13が積載される部位と、半導体素子13が積載される部位の周囲とからなる領域以外の領域が、金属ペーストが塗布されていない非塗布部42となっている。
【0039】
なお、塗布工程で形成する塗膜層40では、それぞれの塗布部41の面積等は、後述する積層工程および焼結工程を経て得られる接合層30の焼結体部31の形状が目的の形状となるように設定する。付言すると、塗膜層40のそれぞれの塗布部41の面積等は、塗膜層40の形成に用いる金属ペーストの粘度や、積層工程において塗膜層40を介してヒートシンク20と半導体モジュール10の絶縁性基板11とを積層する際の押圧力、焼結工程における焼結条件等を考慮して、得られる焼結体部31の形状が目的の形状となるように設定する。
【0040】
<積層工程>
積層工程では、図6(b)に示すように、塗布工程により形成された塗膜層40の金属ペーストを介して、ヒートシンク20と半導体モジュール10の絶縁性基板11とを積層する。この例では、ヒートシンク20におけるベース部21の裏面212上に形成された塗膜層40上に、半導体モジュール10における絶縁性基板11の伝熱層113を重ねる。
積層工程では、塗膜層40がヒートシンク20と半導体モジュール10とに挟まれることで、塗膜層40における塗布部41の金属ペーストがベース部21および絶縁性基板11の面方向に拡がり、積層方向から見たそれぞれの塗布部41の面積が大きくなる。
【0041】
塗膜層40を介してヒートシンク20と半導体モジュール10の絶縁性基板11とを積層する際には、ヒートシンク20および半導体モジュール10に対して押圧力を付与してもよく、無加圧であってもよい。ヒートシンク20および半導体モジュール10に付与する押圧力としては、塗膜層40の形成に用いる金属ペーストの粘度等によっても異なるが、0.01MPa以下、好ましくは0.005MPa以下の範囲を例示することができる。また、押圧力を付与する方法としては、特に限定されないが、半導体モジュール10上に重りを載せる方法等を例示することができる。
【0042】
<焼結工程>
焼結工程は、図6(c)に示すように、塗膜層40(図6(b)参照)を加熱して塗膜層40の塗布部41を構成する金属ペーストを焼結し、ヒートシンク20と半導体モジュール10の絶縁性基板11とを接合する焼結体からなる焼結体部31を形成する。
焼結工程では、塗膜層40の塗布部41を構成する金属ペーストが焼結されることで、接合層30の焼結体部31が形成される。
ここで、焼結工程において塗膜層40の塗布部41を構成する金属ペーストを焼結する際には、金属ペーストに含まれる溶媒が揮発したアウトガス等の気体が発生する。そして、発生した気体が塗布部41内に留まった状態で塗布部41を構成する金属ペーストが焼結されると、塗布部41から形成される焼結体部31に、金属ペーストから発生した気体に由来する空隙が発生するおそれがある。この場合、焼結体部31からなる接合層30を介した半導体モジュール10とヒートシンク20との接合強度が低下するおそれがある。
【0043】
これに対し、本実施形態では、上述した塗布工程において、塗膜層40の塗布部41以外の領域に、金属ペーストを塗布しない非塗布部42を設けている。これにより、焼結工程において塗布部41の金属ペーストから気体が発生した場合であっても、気体が非塗布部42を介して塗布部41の外部に排出されやすくなる。この結果、金属ペーストから発生した気体が塗布部41内に留まった状態で塗布部41を構成する金属ペーストが焼結されることが抑制され、焼結体部31からなる接合層30を介した半導体モジュール10とヒートシンク20との接合強度の低下が抑制される。
【0044】
焼結工程において塗膜層40を加熱する際の温度は、金属ペーストに含まれる金属粒子の種類等によっても異なるが、150℃以上500℃以下の範囲を例示することができる。
また、焼結工程では、半導体モジュール10とヒートシンク20とを塗膜層40を介して積層方向に押圧しながら焼結を行ってもよく、半導体モジュール10とヒートシンク20とを押圧せずに無加圧で焼結を行ってもよい。焼結工程において半導体モジュール10とヒートシンク20とを押圧する場合、押圧力は、25MPa以下であることが好ましく、10MPa以下であることがより好ましい。焼結工程において半導体モジュール10とヒートシンク20とを押圧する押圧力が10MPaを超える場合、隣接する塗布部41同士が広がって繋がりやすくなり、金属ペーストから発生した気体が塗布部41同士の間に形成された非塗布部42を介して排出されにくくなる。また、焼結工程において半導体モジュール10とヒートシンク20とを押圧する押圧力が25MPaを超える場合、絶縁性基板11等の構造物が破損する可能性がある。
【0045】
以上説明したように、本実施形態では、塗布工程、積層工程および焼結工程により、半導体モジュール10と、ヒートシンク20と、半導体素子13が積載されている部位S1と部位S1の周囲S2とからなる素子領域Sに形成された複数の焼結体部31を有する接合層30とを備えた、図1図4の半導体装置1が得られる。
【0046】
なお、上述した半導体装置1の製造方法では、絶縁性基板11上に半導体素子13が接合された半導体モジュール10と、ヒートシンク20との間に金属ペーストを塗布して、塗膜層40を形成したが、これに限られるものではない。
例えば、半導体素子13が接合される前の絶縁性基板11とヒートシンク20との間に塗膜層40を形成し、焼結して複数の焼結体部31を有する接合層30を形成した後に、絶縁性基板11上に半導体素子13を接合して半導体モジュール10としてもよい。この場合、塗布面に金属ペーストを塗布して塗膜層40を形成する塗布工程において、複数の塗布部41を形成し、積層工程および焼結工程において、塗布部41を構成する金属ペーストを焼結して複数の焼結体部31を有する接合層30を形成する。その後、絶縁性基板11に半導体素子13を接合する接合工程において、積層方向から見て、接合層30のそれぞれの焼結体部31と重なる絶縁性基板11の領域に、半導体素子13を接合すればよい。
【0047】
(金属ペースト)
続いて、本実施形態の半導体装置1において、接合層30の焼結体部31の形成に用いる金属ペーストの一例について、詳細に説明する。
金属ペーストは、金属粒子と、金属粒子を分散する溶媒とを含む。また、金属ペーストは、金属粒子および溶媒以外の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、界面活性剤、消泡剤、イオントラップ剤等が挙げられる。
【0048】
<金属粒子>
金属粒子としては、上述したように銅、銀、銅と銀との合金から選択された金属の粒子を例示することができる。また、金属粒子としては、表面を銀で被覆した銅からなる粒子を用いてもよい。
これらの中でも、接合層30の焼結体部31を介した半導体モジュール10とヒートシンク20との熱の伝導性の観点から、金属粒子として銅粒子を用いることが好ましい。
【0049】
金属粒子の平均粒径(50%堆積平均粒径)は、0.1μm以上500μm以下の範囲を例示することができ、1μm以上200μm以下の範囲が好ましく、10μm以上100μm以下の範囲がより好ましい。
なお、金属粒子の平均粒子径は、金属ペーストから溶媒を除去し乾燥させた金属粒子を、公知の分散剤を用いて分散させたものを光散乱法粒度分布測定装置で測定する方法により求めることができる。
【0050】
金属粒子の形状は、特に限定されず、球状、回転楕円体等の略球状、塊状、針状、フレーク状、これらの凝集体等を例示することができる。金属粒子のこれらの形状は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。金属ペーストにおける金属粒子の分散性や焼結体部31を構成する焼結体における金属粒子の充填性等の観点からは、金属粒子の形状は、球状、略球状またはフレーク状であることが好ましい。
また、金属粒子は、公知の表面処理剤により表面処理が施されていてもよい。
【0051】
<溶媒>
溶媒としては、金属ペーストの溶媒として公知の揮発性の溶媒を用いることができる。このような溶媒としては、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、テルピネオール、ジヒドロタピネオール、イソボルニルシクロヘキサノール(MTPH)等の一価及び多価アルコール類;エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(DPMA)、乳酸エチル、乳酸ブチル、トリブチリン、ステアリン酸ブチル、スクアラン、セバシン酸ジプチル、アジピン酸ビス(2―エチルヘキシル)、γ-ブチロラクトン、炭酸プロピレン等のエステル類;N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等の酸アミド;シクロヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;炭素数1~18のアルキル基を有するメルカプタン類;炭素数5~7のシクロアルキル基を有するメルカプタン類が挙げられる。
【0052】
また、金属ペーストにおける溶媒の含有量は、金属粒子の全質量を100質量部とした場合に、5質量部以上50質量部以下の範囲を例示することができる。
【0053】
(接合用シートを用いた焼結体の形成)
上述したように、本実施形態の接合層30における焼結体部31を構成する焼結体は、金属粒子を含む接合用シートを用いて形成してもよい。具体的には、上述した金属ペーストを用いた場合の半導体装置1の製造方法における塗布工程に代えて、以下の成形工程および貼り付け工程を行えばよい。そして、貼り付け工程後、上述した例と同様に、積層工程および焼結工程を行えばよい。
【0054】
<成形工程>
成形工程では、金属粒子を含む接合用シートを、焼結体部31が形成される領域の形状に合わせて、成形する。付言すると、成形工程では、絶縁性基板11の一方の面に半導体素子が積載される部位と、半導体素子13が積載される部位の周囲とからなる領域の形状に合わせて、接合用シートを成形する。
なお、貼り付け工程の後に行われる積層工程や焼結工程では、接合用シートがヒートシンク20と半導体モジュール10とに挟まれることで、接合用シートの面積が大きくなる場合がある。したがって、成形工程では、積層工程および焼結工程を経て得られる接合層30の焼結体部31の形状が目的の形状となるように、接合用シートを成形する。
【0055】
<貼り付け工程>
貼り付け工程では、成形工程にて成形した接合用シートを、一方の面(配線層112上)に半導体素子13が積載される絶縁性基板11における他方の面(伝熱層113上)と、ヒートシンク20のベース部21における裏面212とのいずれかに、貼り付ける。この例では、一例としてヒートシンク20におけるベース部21の裏面212に、接合用シートを貼り付ける。
貼り付け工程では、ベース部21の裏面212に対して、積層方向から見て、絶縁性基板11の一方の面に半導体素子13が積載される部位と、半導体素子13が積載される部位の周囲とからなる領域に、接合用シートを貼り付ける。この例では、絶縁性基板11の一方の面に半導体素子13が積載される部位と、半導体素子13が積載される部位の周囲とからなる領域に合わせて、複数の接合用シートを、間隙をあけて貼り付ける。なお、貼り付け工程では、絶縁性基板11の一方の面に半導体素子13が積載される部位と、半導体素子13が積載される部位の周囲とからなる領域以外の領域には、接合用シートを貼り付けない。
【0056】
<積層工程>
積層工程では、上述した例と同様に、貼り付け工程で貼り付けた接合用シートを介して、ヒートシンク20と半導体モジュール10の絶縁性基板11とを積層する。この例では、ヒートシンク20におけるベース部21の裏面212上に貼り付けられた接合用シート上に、半導体モジュール10における絶縁性基板11の伝熱層113を重ねる。
【0057】
<焼結工程>
焼結工程では、上述した例と同様に、接合用シートを加熱して接合用シートに含まれる金属粒子を焼結し、ヒートシンク20と半導体モジュール10の絶縁性基板11とを接合する焼結体からなる焼結体部31を形成する。なお、焼結工程では、接合用シートに含まれる溶媒が揮発したアウトガス等の気体が発生する。本実施形態では、上述した貼り付け工程において、間隙をあけて複数の接合用シートを貼り付けている。これにより、焼結工程において接合用シートから気体が発生した場合であっても、気体が接合用シートの間隙を介して外部に排出されやすくなる。
【0058】
以上のように、金属粒子を含む接合用シートを用いた場合も金属ペーストを用いた場合と同様に、半導体モジュール10と、ヒートシンク20と、半導体素子13が積載されている部位S1と部位S1の周囲S2とからなる素子領域Sに形成された複数の焼結体部31を有する接合層30とを備えた半導体装置1が得られる。
【0059】
(接合用シート)
接合用シートは、金属粒子を含む。金属粒子としては、上述した金属ペーストに用いられる金属粒子と同様のものを用いることができる。接合用シートとしては、以下の3つの態様を例示することができる。
【0060】
<第1の態様>
第1の態様の接合用シートは、金属粒子と、熱分解性樹脂からなるバインダとを含む。第1の態様の接合用シートは、熱分解性樹脂からなるバインダにより金属粒子が保持されることで、シート状の形状をなしている。
熱分解樹脂とは、上述した焼結工程において加熱することにより熱分解が可能な樹脂である。熱分解性樹脂は、熱分解することで、焼結工程により形成される焼結体部31にはほとんど残存しないことが好ましい。熱分解性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、エチルセルロース、ポリビニルアルコール等を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、熱分解性が高いポリカーボネートを用いることが好ましい。
【0061】
第1の態様の接合用シートにおける熱分解性樹脂の含有量は、接合用シート全体に対して30体積%以上70体積%以下であることが好ましく、35体積%以上65体積%以下であることがより好ましく、40体積%以上60体積%以下であることがさらに好ましい。
また、第1の態様の接合用シートは、金属粒子および熱分解性樹脂に加えて、他の添加剤を含んでいてもよい。
【0062】
<第2の態様>
第2の態様の接合用シートは、金属粒子と、室温でロウ状または液体状の溶媒からなるバインダとを含む。第2の態様の接合用シートは、溶媒からなるバインダにより金属粒子が保持されることで、シート状の形状をなしている。
溶媒としては、例えば、エチレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ブタントリオール、ポリオキシプロピレントリオール等を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
第2の態様の接合用シートにおける溶媒の含有量は、接合用シート全体に対して1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
また、第2の形態の接合用シートは、金属粒子および溶媒に加えて、他の添加剤を含んでいてもよい。
【0064】
<第3の態様>
第3の態様の接合用シートは、隣接する金属粒子同士が連続し、且つ金属粒子間に空孔が形成された多孔質体からなる。第3の態様の接合用シートは、例えば、金属粒子を焼結することにより形成される。なお、第3の態様の接合用シートは、金属粒子が完全には焼結されておらず、上述した焼結工程により金属粒子をさらに焼結して、ヒートシンク20と半導体モジュール10の絶縁性基板11とを接合することが可能な状態となっている。
第3の態様の接合用シートは、空孔率が15体積%以上50体積%以下であることが好ましく、15体積%以上30体積%以下であることがより好ましい。
また、第3の形態の接合用シートは、金属粒子に加えて、接着助剤、還元剤等の他の添加剤を含んでいてもよい。
【0065】
[実施形態2]
続いて、本発明の実施形態2について説明する。なお、実施形態1と同様の構成については同様の符号を用い、ここでは、詳細な説明は省略する。
図7は、実施形態2が適用される半導体装置1の構成の一例を示す図であって、半導体装置1を積層方向に沿って切断した断面の一例を示す図である。
図8は、実施形態2が適用される半導体装置1(図7参照)における接合層30を、半導体モジュール10(図7参照)が積載される側(図7における上側)から見た図である。図8では、半導体モジュール10において、絶縁性基板11(図7参照)に半導体素子13が積載されている位置を、破線で示している。
【0066】
実施形態2の半導体装置1は、接合層30の構成が実施形態1とは異なっている。
上述した実施形態1の接合層30では、素子領域Sに設けられた焼結体部31以外の領域では、焼結体が設けられておらず、半導体モジュール10の絶縁性基板11とヒートシンク20のベース部21とが接合されていない。これに対し、実施形態2の接合層30では、素子領域Sに設けられた焼結体部31以外の領域に、はんだ合金からなるはんだ部33が設けられている。そして、実施形態2の接合層30では、焼結体部31に加えて、はんだ部33を介して、半導体モジュール10の絶縁性基板11とヒートシンク20のベース部21とが接合されている。
【0067】
具体的に説明すると、本実施形態の接合層30は、焼結体からなる4個の焼結体部31を有する。それぞれの焼結体部31は、実施形態1と同様に、積層方向から見て、絶縁性基板11の一方の面に半導体素子13が積載されている部位S1と、半導体素子13が積載されている部位S1の周囲S2とからなる素子領域Sに重なるように設けられている。
また、本実施形態の接合層30は、積層方向から見て、素子領域S以外の領域に、はんだ合金からなるはんだ部33が設けられている。付言すると、本実施形態の接合層30は、複数の焼結体部31同士の間、および複数の焼結体部31の周囲に、はんだ部33が設けられている。
そして、本実施形態の接合層30では、複数の焼結体部31と、はんだ部33とにより、半導体モジュール10の絶縁性基板11とヒートシンク20のベース部21とが接合されている。
【0068】
はんだ部33を構成するはんだ合金としては、特に限定されず、鉛を含む共晶はんだ、鉛フリーはんだを用いることができる。共晶はんだとしては、Sn-Pb系、Sn-Pb-Bi系、Sn-Pb-Ag系のはんだが挙げられる。また、鉛フリーはんだとしては、Sn-Ag-Cu系、Sn-Cu系、Sn-Zn-Bi系のはんだが挙げられる。鉛フリーはんだとしては、これらのはんだに、さらにニッケル、ゲルマニウム、コバルト、シリコン等が添加されたものを用いてもよい。
【0069】
はんだ部33は、例えば、実施形態1に記載した半導体装置1の製造方法において、焼結工程により焼結体部31を形成した後、絶縁性基板11とヒートシンク20のベース部21との間に形成された空隙に、溶融したはんだ合金を流し込むことで形成することができる。
【0070】
実施形態1でも説明したように、半導体素子13で発生した熱は、絶縁性基板11において、絶縁性基板11の面方向にも伝導される。そして、半導体素子13で発生した熱は、絶縁性基板11において、素子領域S1よりも広い範囲に伝導される場合がある。
本実施形態の半導体装置1では、接合層30が素子領域S以外の領域にはんだ部33を有することで、半導体素子13で発生した熱が、焼結体部31に加えてはんだ部33を介して絶縁性基板11からヒートシンク20へ伝導される。これにより、接合層30がはんだ部33を備えない場合と比べて、半導体装置1において、半導体素子13で発生した熱のヒートシンク20による放熱効率が向上する。
【0071】
また、接合層30が、焼結体部31に加えてはんだ部33を有することで、接合層30がはんだ部33を備えない場合と比べて、接合層30の機械的強度が向上する。
【0072】
さらに、実施形態2の接合層30は、素子領域S以外の領域にはんだ部33を有することで、素子領域S以外の領域には、焼結体部31が設けられていない。
これにより、実施形態2の半導体装置1は、実施形態1と同様に、素子領域S以外の領域にも焼結体部31が設けられている場合と比べて、半導体モジュール10の絶縁性基板11とヒートシンク20とを接合するために使用する焼結体の量が少なくなる。一般に、はんだ部33に用いられるはんだ合金は、焼結体部31に用いられる焼結体と比べて安価である。したがって、本実施形態では、素子領域S以外の領域にも焼結体部31が設けられている場合と比べて、半導体装置1のコストを低減することができる。
【0073】
なお、図7および図8に示した例では、素子領域S以外の領域全体にはんだ部33が設けられているが、これに限られるものではない。素子領域S以外の領域の少なくとも一部にはんだ合金からなるはんだ部33が設けられていれば、接合層30において焼結体部31およびはんだ部33が設けられていない領域が存在しても構わない。
【0074】
[実施形態3]
続いて、本発明の実施形態3について説明する。なお、実施形態1、2と同様の構成については同様の符号を用い、ここでは、詳細な説明は省略する。
図9は、実施形態3が適用される半導体装置1の構成の一例を示す図であって、半導体装置1を積層方向に沿って切断した断面の一例を示す図である。
【0075】
実施形態3の半導体装置1は、接合層30の構成が実施形態1および実施形態2とは異なっている。
実施形態3の接合層30は、実施形態2の接合層30におけるはんだ部33(図7参照)に替えて、樹脂または樹脂を含む複合材料からなる樹脂部35を有する。付言すると、実施形態3の接合層30では、素子領域S(図8参照)に設けられた焼結体部31以外の領域に、樹脂または樹脂を含む複合材料からなる樹脂部35が設けられている。そして、実施形態3の接合層30では、焼結体部31に加えて、樹脂部35を介して、半導体モジュール10の絶縁性基板11とヒートシンク20のベース部21とが接合されている。
【0076】
樹脂部35を構成する樹脂または樹脂を含む複合材料としては、例えば、半導体装置1においてアンダーフィルとして一般に使用される材料を用いることができる。具体的には、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂や、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に酸化ケイ素や炭素繊維等のフィラーを含有させたもの等を用いることができる。
【0077】
樹脂部35は、例えば、実施形態1に記載した半導体装置1の製造方法において、焼結工程により焼結体部31を形成した後、絶縁性基板11とヒートシンク20のベース部21との間に形成された空隙に、上述した樹脂や樹脂を含む複合材料を充填し、硬化させることにより形成することができる。
【0078】
実施形態3では、接合層30が焼結体部31と樹脂部35とを備えることで、外部からの応力を樹脂部35により緩和することが可能となる。これにより、接合層30が樹脂部35を備えない場合と比べて、焼結体部31を構成する焼結体が破損しにくくなる。
【0079】
また、実施形態3の接合層30は、素子領域S以外の領域に樹脂部35を有することで、素子領域S以外の領域には、焼結体部31が設けられていない。
これにより、実施形態3の半導体装置1は、実施形態1、2と同様に、素子領域S以外の領域にも焼結体部31が設けられている場合と比べて、半導体モジュール10の絶縁性基板11とヒートシンク20とを接合するために使用する焼結体の量が少なくなる。一般に、樹脂部35に用いられる樹脂または樹脂を含む複合材料は、焼結体部31に用いられる焼結体と比べて安価である。したがって、本実施形態では、素子領域S以外の領域にも焼結体部31が設けられている場合と比べて、半導体装置1のコストを低減することができる。
【0080】
なお、図9に示した例では、素子領域S以外の領域全体に樹脂部35が設けられているが、これに限られるものではない。素子領域S以外の領域の少なくとも一部に樹脂または樹脂を含む複合材料からなる樹脂部35が設けられていれば、接合層30において焼結体部31および樹脂部35が設けられていない領域が存在しても構わない。
【0081】
また、実施形態2と実施形態3とを併用してもよい。具体的には、接合層30が、積層方向から見て、素子領域Sに形成された焼結体部31に加えて、素子領域S以外の領域に、はんだ合金からなるはんだ部33と、樹脂または樹脂を含む複合材料からなる樹脂部35との双方を有していてもよい。
【0082】
さらに、実施形態1~実施形態3の接合層30は、複数(4個)の半導体素子13のそれぞれに対応する複数(4個)の焼結体部31を備えているが、これに限られない。接合層30は、半導体素子13が積載されている部位S1と部位S1の周囲S2とからなる素子領域Sに焼結体部31が設けられ、且つ素子領域S以外の領域には焼結体が設けられていなければ、それぞれの半導体素子13に対応する焼結体部31同士の一部が繋がっていてもよい。
さらにまた、実施形態1~実施形態3では、半導体モジュール10が4個の半導体素子13を備える半導体装置1について説明したが、半導体モジュール10が有する半導体素子13の個数は、4以外の複数であってもよく、単数であってもよい。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではない。本発明の趣旨に反しない限りにおいては様々な変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0084】
1…半導体装置、10…半導体モジュール、11…絶縁性基板、13…半導体素子、15…素子接合層、20…ヒートシンク、21…ベース部、22…フィン、30…接合層、31…焼結体部、33…はんだ部、35…樹脂部、40…塗膜層、41…塗布部、42…非塗布部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9