(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055576
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】充放電試験システム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/00 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
G01R31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162620
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】早田 祐也
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 達郎
【テーマコード(参考)】
2G036
【Fターム(参考)】
2G036AA12
2G036AA13
2G036AA28
2G036BA30
2G036BB08
(57)【要約】
【課題】充放電体に対して電気的に接続する1以上の充放電ユニットの組み合わせを変更可能にした場合の補正作業の手間を軽減可能な充放電試験システムを提供する。
【解決手段】充放電体9に対する充放電を行う複数の充放電試験装置12と、1つ以上の充放電体9に対して1つ以上の充放電試験装置12を電気的に接続する組み合わせを切替可能な切替回路14と、切替回路14を制御して組み合わせの切り替えを実行する制御部16と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電体に対する充放電を行う複数の充放電ユニットと、
1つ以上の前記充放電体に対して1つ以上の前記充放電ユニットを電気的に接続する組み合わせを切替可能な切替回路と、
前記切替回路を制御して前記組み合わせの切り替えを実行する制御部と、
を備える充放電試験システム。
【請求項2】
前記切替回路が、同一の前記充放電体に対して1つ以上の前記充放電ユニットを電気的に接続する組み合わせに切替可能である請求項1に記載の充放電試験システム。
【請求項3】
複数の前記充放電ユニットごとに設けられ、前記充放電体の電圧及び前記充放電ユニットを流れる電流の少なくとも一方を計測する計測部と、
前記計測部の計測値を補正する補正値を、前記組み合わせごとに取得する補正値取得制御部と、
前記補正値取得制御部が取得した前記組み合わせごとの前記補正値の中から前記切替回路の前記組み合わせに対応した前記補正値を選択し、選択した前記補正値に基づいて前記計測値を補正する補正部と、
を備える請求項1又は2に記載の充放電試験システム。
【請求項4】
複数の前記充放電ユニットの一端がバスを介して互いに電気的に接続されて、複数の前記充放電ユニットの他端が前記切替回路に接続され、
前記制御部が、複数の前記充放電体に対して前記切替回路を介して電気的に接続されている複数の前記充放電ユニットを制御して、複数の前記充放電体の充放電を制御し、
前記制御部が、放電を行う1つ以上の前記充放電体から前記切替回路及び前記充放電ユニットを介して出力された電力を、前記バス、1つ以上の前記充放電ユニット、及び前記切替回路を介して、充電可能な1つ以上の前記充放電体に充電させる請求項1又は2に記載の充放電試験システム。
【請求項5】
前記切替回路の他端に接続されている複数の前記充放電体が、充放電試験の対象となる前記充放電体である試験充放電体と、前記試験充放電体とは異なる前記充放電体である予備充放電体と、をそれぞれ1つ以上含む場合において、前記制御部が、同一の前記予備充放電体に対して複数の前記充放電ユニットが電気的に接続される前記組み合わせに前記切替回路を切り替える請求項4に記載の充放電試験システム。
【請求項6】
同一の充放電体に対して並列接続された状態で前記同一の充放電体に対する充放電を行う複数の充放電ユニットであって、スイッチング制御方式により出力電流の大きさを制御する複数の充放電ユニットと、
複数の前記充放電ユニットごとのスイッチングの位相を互いに異ならせる制御部と、
を備える充放電試験システム。
【請求項7】
複数の前記充放電ユニットの数をN(Nは2以上の自然数)とした場合に、前記制御部が、複数の前記充放電ユニットごとの前記スイッチングの位相を360°/Nずつずらす請求項6に記載の充放電試験システム。
【請求項8】
複数の前記充放電ユニットが、前記制御部から入力される同期信号に基づいて前記スイッチングの位相を互いに異ならせる請求項6又は7に記載の充放電試験システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充放電体の充放電試験を実行する充放電試験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリット車、プラグインハイブリッド車、及び電気自動車が普及してきている。これらの車の普及には、安価な駆動用電池開発が鍵となっている。これらの電池は、携帯電池などのコンシューマ用とは異なり、一般に数kWから数十kWと大容量である。このため、電池の開発時及び量産試験時に行われる電池の充放電の電力が極めて大きくなる。今後、上述したタイプの車の普及が進むにつれて、その充放電の電力はさらに増大する。また、上述したタイプの車には多数の電池セルが組み合わせて用いられるため、多数の電池セルを並行して試験可能な充放電試験システムが求められる。
【0003】
充放電試験システムは、複数の充放電試験装置を備える。複数の充放電試験装置の一端には交流バスを介してAC(Alternating Current)電源に電気的に接続され、複数の充放電試験装置の他端にはそれぞれ充放電試験対象の電池等の充放電体が電気的に接続されている。各充放電試験装置は、例えば双方向AC/DC(Direct Current)コンバータと、双方向DC/DCコンバータと、により構成されており、充放電体への直流電力(直流電流)の充電と、充放電体からの直流電力(直流電流)の放電と、を含む充放電を制御する。
【0004】
また、充放電試験システムには、複数の充放電試験装置ごとに充放電体の電圧と充放電試験装置を流れる電流を計測する計測部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の充放電試験装置を備える充放電試験システムでは、例えば、1つの充放電体に対して電気的に接続する充放電ユニット(充放電試験装置又は双方向DC/DCコンバータ等)の接続数を増やすことで、この充放電体に対して充放電可能な電流容量を増加させることが可能となる。一例として、1つの充放電試験装置が120Aの電流を充放電体に対して充放電可能である場合に、1つの充放電体に対してM(Mは任意の自然数)個の充放電ユニットを電気的に接続することで、1つの充放電体に対して120A×Mの電流容量で充放電可能になる。
【0007】
しかしながら、従来の充放電試験システムでは、充放電ユニットの接続数を変更するごとに、充放電ユニットと充放電体との接続関係を手動で変更し、上述の各計測部が計測する電圧及び電流の計測値を補正するための補正値が必要となり得る。そのため、充放電ユニットと充放電体との接続関係の変更作業や、補正値を求める補正作業に膨大な時間を要する。このため、従来の充放電試験システムでは、複数の充放電試験装置の中で同一の充放電体に対して電気的に接続する充放電ユニットの数を固定して使用、すなわち並列接続した状態で使用する複数の充放電ユニットを定めている。
【0008】
例えば、最大出力電流が120Aの充放電ユニットを4つ[4CH(channel)]備える充放電試験システムにおいて、2CHの充放電ユニットが互いに異なる充放電体に対して電気的に単独接続された状態でのみ使用されて、残りの2CHの充放電ユニットは同一の充放電体に対して電気的に接続された状態で使用される。この場合、本来あれば、4CHで120A以下の充放電試験を実行可能であるが、4CHの内の2CHの充放電ユニットを並列接続しているため、最大3CHまでの充放電試験に限定される。また、充放電ユニットの並列接続数が2つに固定されるため、充放電ユニットを4つ並列接続することで480A(120A×4CH)の電流容量で充放電試験が可能であるのに、240A(120A×2CH)までの容量電流による充放電試験に限定される。
【0009】
従って、補正作業に時間を要せずに同一の充放電体に対して電気的に接続する充放電ユニットの接続数を容易に変更できる充放電試験システムが望まれている。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、充放電体に対して電気的に接続する充放電ユニットの接続数を容易に変更可能な充放電試験システムを提供することを第1の目的とする。
【0011】
また、同一の充放電体に対して複数の充放電ユニットを電気的に接続して充放電試験を実行する場合には別の課題も生じる。
【0012】
具体的には、充放電試験システムには、FET(Field effect transistor)等のスイッチング素子をスイッチングさせるスイッチング制御により出力電流の大きさを制御するスイッチング制御方式を採用した充放電ユニットがよく用いられる。このスイッチング制御方式の充放電ユニットからは電流リップル(リップル電流ともいう)が出力される。
【0013】
従って、同一の充放電体に対して複数の充放電ユニットを電気的に並列接続した場合には複数の充放電ユニットごとに電流リップルが発生し、さらに各電流リップルが合成されてしまう。この場合には各電流リップルの位相(ピークの重なり)によっては大きな電流リップル(電流ノイズ)が合成されてしまう(
図12参照)。各充放電ユニットは独立して動作するが、各々の内部のスイッチング周波数は同じであるので、各電流リップルのピークが重なり合う可能性は高い。このため、例えば充放電ユニットが4CHである場合には、電流リップルのピークが最大で4倍の大きさになるおそれがある。
【0014】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、電流リップルを低減可能な充放電試験システムを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の目的を達成するための充放電試験システムは、充放電体に対する充放電を行う複数の充放電ユニットと、複数の充放電ユニットごとに同一又は互いに異なる任意の充放電体に対して電気的に接続可能な切替回路であって、1つ以上の充放電体に対して1つ以上の充放電ユニットを電気的に接続する組み合わせを切替可能な切替回路と、切替回路を制御して組み合わせの切り替えを実行する制御部と、を備える。
【0016】
この充放電試験システムによれば、切替回路を制御して組み合わせの切り替えを自動で実行することができる。
【0017】
本発明の他の態様に係る充放電試験システムにおいて、切替回路が、同一の充放電体に対して1つ以上の充放電ユニットを電気的に接続する組み合わせに切替可能である。これにより、オペレータが組み合わせの切り替えを手動で行う必要がなくなる。
【0018】
本発明の他の態様に係る充放電試験システムにおいて、複数の充放電ユニットごとに設けられ、充放電体の電圧及び充放電ユニットを流れる電流の少なくとも一方を計測する計測部と、計測部の計測値を補正する補正値を、組み合わせごとに取得する補正値取得制御部と、補正値取得制御部が取得した組み合わせごとの補正値の中から切替回路の組み合わせに対応した補正値を選択し、選択した補正値に基づいて計測値を補正する補正部と、を備える。これにより、組み合わせごとの補正値を取得する補正作業の手間を大幅に減らすことができる。
【0019】
本発明の他の態様に係る充放電試験システムにおいて、複数の充放電ユニットの一端がバスを介して互いに電気的に接続されて、複数の充放電ユニットの他端が切替回路に接続され、制御部が、複数の充放電体に対して切替回路を介して電気的に接続されている複数の充放電ユニットを制御して、複数の充放電体の充放電を制御し、制御部が、放電を行う1つ以上の充放電体から切替回路及び充放電ユニットを介して出力された電力を、バス、1つ以上の充放電ユニット、及び切替回路を介して、充電可能な1つ以上の充放電体に充電させる。これにより、充放電試験システムの電力使用効率を向上させることができる。
【0020】
本発明の他の態様に係る充放電試験システムにおいて、切替回路の他端に接続されている複数の充放電体が、充放電試験の対象となる充放電体である試験充放電体と、試験充放電体とは異なる充放電体である予備充放電体と、をそれぞれ1つ以上含む場合において、制御部が、同一の予備充放電体に対して複数の充放電ユニットが電気的に接続される組み合わせに切替回路を切り替える。これにより、同一の予備充放電体に対して電気的に接続する充放電ユニットの接続数を増加させることで、この予備充放電体に対して充放電する電流量を大幅に増やすことができる。
【0021】
本発明の第2の目的を達成するための充放電試験システムは、同一の充放電体に対して同一の充放電体に対する充放電を行う並列接続された複数の充放電ユニットであって、スイッチング制御方式により出力電流の大きさを制御する複数の充放電ユニットと、複数の充放電ユニットごとのスイッチングの位相を互いに異ならせる制御部と、を備える。
【0022】
この充放電試験システムによれば、各充放電ユニットからそれぞれ出力される電流リップルが互いに打ち消しあうことで、電流リップルを低減させることができる。
【0023】
本発明の他の態様に係る充放電試験システムにおいて、複数の充放電ユニットの数をN(Nは2以上の自然数)とした場合に、制御部が、複数の充放電ユニットごとのスイッチングの位相を360°/Nずつずらす。これにより、電流リップルを最も低減させることができる。
【0024】
本発明の他の態様に係る充放電試験システムにおいて、複数の充放電ユニットが、制御部から入力される同期信号に基づいてスイッチングの位相を互いに異ならせる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の第1の目的を達成するための充放電試験システムは、充放電体に対して電気的に接続する1以上の充放電ユニットの組み合わせを変更可能にした場合の補正作業の手間を軽減可能である。
【0026】
本発明の第2の目的を達成するための充放電試験システムは、電流リップルを低減可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1実施形態の充放電試験システムの概略図である。
【
図2】切替回路による任意の1つ以上の充放電試験装置と、任意の1つ以上の充放電体と、の電気的な接続の一例を説明するための説明図である。
【
図3】切替回路による任意の1つ以上の充放電試験装置と、任意の1つ以上の充放電体と、の電気的な接続の一例を説明するための説明図である。
【
図4】同一の充放電体に対して電気的に接続可能な1つ以上の充放電試験装置の組み合わせを示した説明図である。
【
図5】補正作業の流れを示したフローチャートである。
【
図6】充放電試験制御部による1つ以上の充放電体の充放電試験、及び補正部による計測部の計測値の補正を説明するための説明図である。
【
図7】充放電試験システムによる予備充放電体を用いたエネルギーシェアリング(Energy Sharing:ES)を説明するための説明図である。
【
図8】充放電試験システムによる予備充放電体を用いたESを説明するための説明図である。
【
図9】第2実施形態の充放電試験システムの概略図である。
【
図10】第3実施形態の充放電試験システムの概略図である。
【
図11】第4実施形態の充放電試験システムの概略図である。
【
図12】スイッチング制御方式の各充放電試験装置により同一の充放電体に対して充放電を実行する場合の課題を説明するための説明図である。
【
図13】制御部による各充放電試験装置のスイッチングの位相制御を説明するための説明図である。
【
図14】第5実施形態の充放電試験システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の充放電試験システム10の概略図である。
図1に示すように、充放電試験システム10は、1つ以上の充放電体9に対する充放電試験を実行する。なお、充放電体9は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び全固体電池などの公知の各種二次電池(その他、電気二重層などの大容量キャパシタも含む電力蓄電可能なデバイス)である。
【0029】
充放電試験システム10は、複数の充放電ユニット、例えば、充放電試験装置12と、切替回路14と、制御部16と、を備える。
【0030】
充放電試験装置12は、括弧付き数字(1)~(4)で示すように4つ設けられており、後述の制御部16の制御の下、後述の切替回路14を介して電気的に接続されている充放電体9の充放電を実行する。これにより、充放電試験システム10は、最大で4つの充放電体9に対する充放電試験を並行して実行することができる。なお、充放電試験装置12の数は2つ以上であれば特に限定はされない。
【0031】
各充放電試験装置12の一端は、交流バス18を介して、AC電源20に電気的に接続されている。換言すると、AC電源20に対して交流バス18を介して各複数の充放電試験装置12が電気的に接続されている。また、各充放電試験装置12の一端とは反対側の他端は、それぞれ切替回路14の互いに異なるポート14aに電気的に接続されている。
【0032】
各充放電試験装置12は、図示は省略するが、双方向AC/DCコンバータと、双方向DC/DCコンバータと、を備える。各充放電試験装置12は、AC電源20から交流バス18を介して入力された交流電力(交流電流)を直流電力(直流電流)に変換するAC/DC変換と、この直流電力の高圧電圧を降圧するDC/DC変換と、を実行した後、降圧後の直流電力を、切替回路14を介して充放電体9へ出力する。また、充放電試験装置12は、充放電体9から切替回路14を介して入力された直流電力の低圧電圧を昇圧するDC/DC変換と、昇圧後の直流電力を交流電力に変換するDC/AC変換と、を実行した後、交流バス18を介して交流電力をAC電源20に回生、或いは他の充放電試験装置12へ出力する。
【0033】
各充放電試験装置12には、計測部13が設けられている。各計測部13は、充放電試験装置12に対して切替回路14を介して電気的に接続されている充放電体9の電圧の大きさ、及び充放電試験装置12を流れる電流の大きさの少なくともいずれか一方(本実施形態では両方)を公知の方法で計測し、電圧及び電流の計測値を制御部16へ出力する。なお、各計測部13が各充放電試験装置12と別体で設けられていてもよい。
【0034】
なお、本実施形態では、各充放電試験装置12が不図示の双方向AC/DCコンバータ及び双方向DC/DCコンバータを備える場合を例に挙げて説明したが、各充放電試験装置12がコンバータとして双方向DC/DCコンバータのみを備えるものであってもよい。この場合には、AC電源20に対して交流バス18を介して双方向AC/DCコンバータを電気的に接続して、さらにこの双方向AC/DCコンバータに対して不図示の直流バスを介して各充放電試験装置12を電気的に並列接続する。
【0035】
切替回路14の一端側には複数のポート14aが設けられ、切替回路14の一端とは反対の他端側には複数のポート14bが設けられている。複数のポート14aにはそれぞれ充放電試験装置12が電気的に接続可能である。また、複数のポート14bにはそれぞれ充放電体9が電気的に接続可能である。これにより、切替回路14には、各ポート14aに各充放電試験装置12が電気的に接続され、各ポート14bに各充放電体9が電気的に接続される。
【0036】
図2及び
図3は、切替回路14による任意の1つ以上の充放電試験装置12と、任意の1つ以上の充放電体9と、の電気的な接続の一例を説明するための説明図である。切替回路14は、後述の制御部16の制御により、複数のポート14aと複数のポート14bとを電気的に任意に接続できる。例えば、
図2の符号2Aから符号2Cに示すように、切替回路14は、各ポート14aと各ポート14bとを1対1で電気的に接続可能である。また、
図3の符号3Aから符号3Cに示すように、切替回路14は、複数のポート14aと任意のポート14bとを複数(多数)対1で電気的に接続可能である。複数のポート14aと任意のポート14bとを複数(多数)対1で電気的に接続する場合、任意のポート14bに接続された複数のポート14aにそれぞれ接続された充放電試験装置12は、電気的に並列に接続される。以上のように、切替回路14は、1つ以上の充放電体9と1つ以上の充放電試験装置12とを電気的に任意に接続できる。
【0037】
また、切替回路14は、充放電体9に対して電気的に接続する少なくとも1つの充放電試験装置12の組み合わせ(以下、単に、充放電試験装置12の組み合わせ又は装置組み合わせと称する場合もある)を切替可能である。切替回路14は、例えば、1つの充放電体9に対して電気的に接続する並列接続された充放電試験装置12の数(以下、単に接続数又は並列数という)を切替可能である。言い換えると、切替回路14は、1つの充放電体9に対して接続する充放電試験装置12の並列数を任意に増減させることができる(
図3参照)。つまり、充放電試験システム10は、切替回路14によって並列数を変更することによって、充放電体9に対して充放電可能な電流容量を変更することができる。
【0038】
前述のように、切替回路14を制御して、充放電体9に対する充放電試験装置12の組み合わせを切り替える場合、特に、充放電試験装置12の並列数を切り替える場合には、各充放電試験装置12の計測部13が計測する電圧及び電流の計測値を補正するための補正値が必要となる。充放電試験装置12の組み合わせごとの補正値を求める補正作業(以下、単に「補正作業」という)は、例えば、充放電試験システム10のメーカで予め実行される。なお、補正作業は校正作業とも称される。
【0039】
図1に戻って、制御部16は、例えば、プログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller:PLC)のような公知の制御装置が用いられる。また、制御部16として、PLCと、PC(Personal Computer)又はPC以外の端末(携帯端末、タブレット端末等)と、を組み合わせたものを用いてもよい。
【0040】
制御部16は、各充放電試験装置12及び切替回路14に対して電気的に接続されている。制御部16は、充放電試験時には、オペレータにより予め入力された充放電体9の充放電パターンに従って、1つ以上の充放電試験装置12と、切替回路14と、を制御して1つ以上の充放電体9の充放電試験を実行する。また、制御部16は、補正作業時には、各充放電試験装置12及び切替回路14を制御して、充放電試験装置12の組み合わせごとの補正値を取得する。
【0041】
制御部16は、補正値取得制御部30、充放電試験制御部32、及び補正部34を含む。これら各部は、例えば、制御部16が不図示の制御プログラムを実行することで実現されてもよいし、各機能を実行するための回路であってもよい。
【0042】
補正値取得制御部30は補正作業を制御する。なお、補正値取得制御部30は、例えば、切替回路14の任意の1つのポート14bに対して補正作業用の充放電体9a(充放電可能な電圧電流発生器を含む)を電気的に接続した状態で、補正作業を実行する。また、本実施形態の補正作業では、切替回路14の4つのポート14aに対してそれぞれ充放電試験装置12が電気的に接続されている、すなわち切替回路14に対して4つの充放電試験装置12が電気的に接続されているものとする。
【0043】
図4は、同一の充放電体9aに対して電気的に接続可能な1つ以上の充放電試験装置12の組み合わせ(装置組み合わせ)を示した説明図である。
図4及び既述の
図1に示すように、装置装置組み合わせのパターン数は、充放電試験システム10に搭載される充放電試験装置12の数により定まる。本実施形態では、充放電試験装置12の数は4つであるため、充放電試験装置12の組み合わせのパターン数は10通りである。そして、補正値取得制御部30は、装置組み合わせの切り替えを、全ての組み合わせについて順次実行する。
【0044】
具体的には補正値取得制御部30は、装置組み合わせを示す組み合わせ指令信号D1を生成する処理と、この組み合わせ指令信号D1を切替回路14及び対応する充放電試験装置12に対して出力する処理と、を全ての装置組み合わせについて繰り返し実行する。なお、組み合わせ指令信号D1は、切替回路14により充放電体9aに対して複数の充放電試験装置12を電気的に並列接続させる場合には、複数の充放電試験装置12による同一の充放電体9aの充放電を同時に実行させるための並列指令信号(同期信号等)を含む。
【0045】
切替回路14は、補正値取得制御部30から入力された組み合わせ指令信号D1で指定された装置組み合わせへの切り替えを実行する。また、補正値取得制御部30から組み合わせ指令信号D1が入力された全ての充放電試験装置12が、所定の補正値演算用の充放電パターンに従って充放電体9aに対する充放電を実行する。これにより、装置組み合わせに対応した切替回路14の切り替えと、装置組み合わせに対応した全ての充放電試験装置12による充放電体9aの充放電と、が繰り返し実行される。
【0046】
また、補正値取得制御部30は、切替回路14に対して装置組み合わせに対応した補正条件切替指令信号D2を出力する処理を、全ての組み合わせについて繰り返し実行する。補正条件切替指令信号D2は、装置組み合わせに対応した補正条件(オフセット調整時の出力回路のショート及び電圧補正時の極性切替等)を切り替える制御信号であり、装置組み合わせごとに定められている。切替回路14は、補正値取得制御部30から入力された補正条件切替指令信号D2に従って作動する。これにより、装置組み合わせに対応した切替回路14の補正条件の切り替えが繰り返し実行される。
【0047】
さらに、補正値取得制御部30は、装置組み合わせに対応した充放電試験装置12による充放電体9aの充放電が実行されるごとに、この充放電を実行する充放電試験装置12の計測部13からの電圧及び電流の計測値の取得と、取得した計測値に基づいた補正値の演算と、を繰り返し実行する。なお、補正値の具体的な演算方法については公知技術であるのでここでは具体的な説明は省略する。これにより、装置組み合わせごとの計測部13の補正値が求められ、不図示の記憶部等に記憶される。
【0048】
図5は、補正作業の流れを示したフローチャートである。
図5に示すように、充放電試験システム10のメーカでは、切替回路14の任意の1つのポート14bに対して充放電体9aを接続した後、不図示の操作部を操作して制御部16に対して補正作業の開始操作を入力する(ステップS1)。
【0049】
制御部16は補正作業の開始操作が入力されると、補正値取得制御部30として機能する。補正値取得制御部30は、全ての装置組み合わせの中で第1番目の装置組み合わせを示す組み合わせ指令信号D1を生成する処理と、この組み合わせ指令信号D1を切替回路14及び対応する充放電試験装置12に対して出力する処理と、を実行する(ステップS2)。また、補正値取得制御部30は、第1番目の装置組み合わせに対応した補正条件切替指令信号D2を切替回路14に対して出力する処理を実行する(ステップS3)。なお、ステップS2及びステップS3の順番は逆であっても或いは同時であってもよい。
【0050】
切替回路14は、補正値取得制御部30から入力された組み合わせ指令信号D1に基づいて、第1番目の装置組み合わせへの切り替えを実行する(ステップS4)。また、切替回路14は、補正値取得制御部30から入力された補正条件切替指令信号D2に従って第1番目の装置組み合わせに対応した切替回路14の補正条件の切り替えを実行する(ステップS5)。
【0051】
切替回路14の切り替え及び補正条件の切り替えが完了すると、第1番目の装置組み合わせに対応する全ての充放電試験装置12が作動して、所定の補正値演算用の充放電パターンに従って充放電体9aに対する充放電を実行する(ステップS6)。
【0052】
次いで、補正値取得制御部30は、第1番目の装置組み合わせに対応した充放電試験装置12による充放電体9aの充放電が実行されている間、この充放電を実行する充放電試験装置12の計測部13からの電圧及び電流の計測値を取得する(ステップS7)。そして、補正値取得制御部30は、取得した電圧及び電流の計測値に基づいて補正値を演算する(ステップS8)。これにより、第1番目の装置組み合わせに対応した補正値の取得が完了し、この補正値は補正値取得制御部30によって不図示の記憶部に記憶される。
【0053】
以下、第2番目以降の全ての装置組み合わせについて、上述のステップS2からステップS8までの処理が繰り返し実行され、全ての装置組み合わせに対応した補正値の取得及び記憶が完了する(ステップS9)。この際に、切替回路14の切り替え及び補正条件の切り替えを自動で実行することができるので、これらの切り替えをオペレータが手動で行う必要がなくなり、補正作業の手間を大幅に減らすことができる。その結果、従来のように、複数の充放電試験装置12の中で、充放電体9に対して単独で電気的に接続するものと、充放電体9に対して並列で電気的に接続するものと、を固定して使用する必要がなくなる。これにより、充放電試験の対象の充放電体9の容量等に応じて充放電試験装置12の接続数を任意に増減させることができるので、充放電体9に対して充放電可能な電流量を自在に変えることができる。
【0054】
なお、上記第1実施形態では、全ての装置組み合わせに対応した補正値を取得しているが、各充放電試験装置12の種類が同一である場合には充放電試験装置12の接続数のみを変えながら補正値の取得を行ってもよい。例えば第1実施形態では、充放電試験装置12の接続数を1から4の間で変更可能であるので4種類の補正値が得られる。
【0055】
図6は、充放電試験制御部32による1つ以上の充放電体9の充放電試験、及び補正部34による計測部13の計測値の補正を説明するための説明図である。
【0056】
図6に示すように、充放電試験制御部32は、オペレータにより入力された充放電試験時の1以上の充放電試験装置12と1つ以上の充放電体9との組み合わせに基づいて、切替回路14の切り替えを実行する。そして、充放電試験制御部32は、オペレータにより予め入力された充放電体9の充放電試験用の充放電パターンに基づいて、1つ以上の充放電試験装置12を制御して1つ以上の充放電体9の充放電を制御する。
【0057】
この際に、充放電試験制御部32は、複数の充放電体9の充放電制御を実行する場合には、複数の充放電体9の中で、1つ以上の充放電体9に対して充電を実行する充電タイミングと、他の1つ以上の充放電体9から放電を実行する放電タイミングと、を同期させる。これにより、充放電試験制御部32は、1つ以上の充放電体9から放電された電力を他の1つ以上の充放電体9の充電に使用するエネルギーシェアリング(Energy Sharing:ES)を実行する。
【0058】
また、充放電試験制御部32が、充電を実行する全ての充放電体9の充電に必要な電力である充電必要電力に対して、放電を実行する全ての充放電体9から放電される電力である放電電力が余剰になるか或いは不足するのかを判定する。そして、充放電試験制御部32は、充電必要電力に対して放電電力の余剰が発生する場合には、上述のESを実行する他に、放電電力の余剰分に相当する余剰電力を、1つ以上の充放電体9から切替回路14及び1以上の充放電試験装置12、及び交流バス18を介してAC電源20に回生する(符号RE参照)。
【0059】
逆に充放電試験制御部32は、充電必要電力に対して放電電力の不足が発生する場合には、上述のESを実行する他に、放電電力の不足分に相当する不足電力を、AC電源20から交流バス18、1つ以上の充放電試験装置12、及び切替回路14を介して、1つ以上の充放電体9に充電させる(符号SU参照)。
【0060】
補正部34は、充放電試験制御部32による1つ以上の充放電体9の充放電試験が実行される場合に、切替回路14を介して電気的に接続されている1つ以上の充放電試験装置12と1つ以上の充放電体9との組み合わせに対応した補正値を不図示の記憶部から選択及び取得する。そして、補正部34は、取得した補正値に基づいて、充放電試験中の全ての充放電試験装置12の計測部13が計測する電圧及び電流の計測値を補正する。なお、補正後の計測値は、充放電試験制御部32による充放電制御に使用される。
【0061】
図7及び
図8は、充放電試験システム10による予備充放電体9-2を用いたESを説明するための説明図である。
図7及び
図8に示すように、複数の充放電体9には、充放電試験の対象となる充放電体9である試験充放電体9-1と、充放電試験の対象外となる充放電体9である予備充放電体9-2とが、それぞれ1つ以上含まれる。そして、切替回路14に対して試験充放電体9-1及び予備充放電体9-2をそれぞれ1つ以上電気的に接続してもよい。なお、図中では切替回路14に対して1つの予備充放電体9-2を電気的に接続しているが、複数の予備充放電体9-2を電気的に接続してもよい。
【0062】
試験充放電体9-1と予備充放電体9-2とは、例えば、充放電試験の対象の充放電体9であるか否かという点において互いに異なるが、両者の種類は同一又は非同一のいずれでもよい。以下、予備充放電体9-2に対して切替回路14を介して電気的に接続されている充放電試験装置12を適宜「余剰ユニット12A」と称する。
【0063】
充放電試験制御部32は、充放電試験で充電を実行する全ての試験充放電体9-1の充電に必要な充電必要電力と、放電を実行する全ての試験充放電体9-1から放電される電力である放電電力とを比較する。そして、充放電試験制御部32は、充電必要電力に対する放電電力の余剰が発生する場合には、既述のESを実行する他に、予備充放電体9-2による余剰電力の充電を実行する。
【0064】
具体的には充放電試験制御部32は、1つ以上の充放電試験装置12と1つ以上の余剰ユニット12Aとを制御して、1つ以上の予備充放電体9-2への余剰電力の充電を実行する。これにより、1つ以上の試験充放電体9-1から切替回路14及び充放電試験装置12を介して出力された余剰電力が、交流バス18及び1つ以上の充放電試験装置12、及び切替回路14を介して、1つ以上の予備充放電体9-2に充電される(
図8参照)。
【0065】
なお、余剰電力が、全ての予備充放電体9-2の充電可能容量を超過する場合には、この超過分に相当する超過電力がAC電源20に回生される(符号RE参照)。
【0066】
一方、充放電試験制御部32は、充電必要電力に対する放電電力の不足が発生する場合には、既述のESを実行する他に、予備充放電体9-2による電力の放電を実行する。具体的には充放電試験制御部32は、1つ以上の充放電試験装置12と1つ以上の余剰ユニット12Aとを制御して、1つ以上の予備充放電体9-2からの電力供給を実行する。これにより、1つ以上の予備充放電体9-2から切替回路14及び余剰ユニット12Aを介して出力された電力が、交流バス18、1つ以上の充放電試験装置12、及び切替回路14を介して、1つ以上の試験充放電体9-1に充電される(
図7参照)。
【0067】
なお、全ての予備充放電体9-2から放電される電力のみで、充電必要電力に対する放電電力の不足分を補うことができない場合には、AC電源20からの電力供給で補う(符号SU参照)。
【0068】
このように予備充放電体9-2に余剰電力を充電したり或いは予備充放電体9-2から電力供給を行ったりすることで、AC電源20に回生する余剰電力とAC電源20から供給する電力とを最小限に抑えられる。その結果、充放電試験システム10の電力使用効率を向上させることができる。
【0069】
また、第1実施形態の充放電試験システム10では、既述の通り、切替回路14を介して同一の充放電体9(試験充放電体9-1、予備充放電体9-2)に対して電気的に接続する充放電試験装置12の接続数を任意に増減させることができる。このため、この充放電試験装置12の接続数を増加させることで、予備充放電体9-2に対して充放電する電流量を大幅に増やすことができる。その結果、AC電源20に回生する余剰電力、及びAC電源20からの電力供給を減らすことができるので、充放電試験システム10の電力使用効率をより向上させることができる。また、複数の余剰ユニット12Aを同じ充放電パターンに従って並列制御することができるので、複数の余剰ユニット12Aを互いに異なる充放電パターンに従って独立制御する場合と比較して、制御の簡素化及び負荷低減が図れる。
【0070】
また逆に、ユーザの希望に応じて、同一の予備充放電体9-2に対する複数の余剰ユニット12Aの並列接続を解除して、切替回路14に対して電気的に接続する予備充放電体9-2の数(チャンネル数)を増加させることもできる。
【0071】
以上のように第1実施形態の充放電試験システム10では、1以上の充放電試験装置12と1以上の充放電体9,9aとの電気的接続を任意に切替可能な切替回路14を設けることで、充放電体9,9aに対して電気的に接続する1以上の充放電試験装置12の組み合わせを変更可能にしつつ、補正作業の手間を大幅に減らすことができる。
【0072】
[第2実施形態]
図9は、第2実施形態の充放電試験システム40の概略図である。
図9に示すように、充放電試験システム40は、1つ以上の充放電体9に対する充放電試験を実行する。
【0073】
充放電試験システム40は、充放電試験装置12と、切替回路14と、制御部16と、を備える。
【0074】
充放電試験装置12は、双方向AC/DCコンバータ121と、複数の充放電ユニット、例えば、双方向DC/DCコンバータ122と、を有する。なお、
図9中において、双方向AC/DCコンバータを単にAC/DCコンバータと記載し、双方向DC/DCコンバータを単にDC/DCコンバータと記載している。
【0075】
複数の双方向DC/DCコンバータ122は、それぞれ、第1実施形態における充放電試験装置12と同様に、切替回路14を介して複数の充放電体9に接続している。
【0076】
切替回路14は、第1実施形態における充放電試験装置12と同様に、充放電体9に対して電気的に接続する少なくとも1つの双方向DC/DCコンバータ122の組み合わせ(以下、単に、コンバータ122の組み合わせ又はコンバータ組み合わせと称する場合もある)を切替可能である。切替回路14は、例えば、1つの充放電体9に電気的に接続する並列接続された双方向DC/DCコンバータ122の数(接続数又は並列数)を切替可能である。切替回路14を制御して、充放電体9に対するコンバータ組み合わせを切り替える場合、特に、双方向DC/DCコンバータ122の並列数を切り替える場合、切替回路14は、第1実施形態と同様に、各双方向DC/DCコンバータ122の計測部13が計測する電圧及び電流の計測値をコンバータ組み合わせごとの補正値により補正する。
【0077】
[第3実施形態]
図10は、第3実施形態の充放電試験システム42の概略図である。
図10に示すように、充放電試験システム42は、1つ以上の充放電体9に対する充放電試験を実行する。
【0078】
充放電試験装置12は、双方向AC/DCコンバータ121と、複数の充放電ユニット、例えば、双方向DC/DCコンバータ122と、切替回路14と、制御部16と、を備える。なお、
図10中において、双方向AC/DCコンバータを単にAC/DCコンバータと記載し、双方向DC/DCコンバータを単にDC/DCコンバータと記載している。
【0079】
複数の双方向DC/DCコンバータ122は、それぞれ、第1実施形態における充放電試験装置12と同様に、切替回路14を介して複数の充放電体9に接続している。
【0080】
切替回路14は、第2実施形態と同様に、1つの充放電体9に電気的に接続する双方向DC/DCコンバータ122の並列数を切り替えることができる。
【0081】
[第4実施形態]
図11は、第4実施形態の充放電試験システム50の概略図である。
図11に示すように、充放電試験システム50は、複数の充放電ユニット52を使用して1つの充放電体9の充放電試験を実行する。なお、第4実施形態の充放電体9は第1実施形態で説明した充放電体9と同じものである。
【0082】
第4実施形態の充放電試験システム50は、複数の充放電ユニット52と、制御部54と、を備える。ここで、充放電ユニット52は、例えば、充放電試験装置であってもよいし、双方向DC/DCコンバータであってもよい。なお、充放電ユニット52が双方向DC/DCコンバータである場合、
図9又は
図10に示すように、AC電源と双方向DC/DCコンバータの間に、双方向AC/DCコンバータ(図示せず)が配置される。
【0083】
充放電ユニット52は、第1実施形態と同様に括弧付き数字(1)~(4)で示すように4つ設けられており、後述の制御部54の制御の下、同一の充放電体9に対する充放電を実行する。なお、充放電ユニット52の数は2以上であれば特に限定はされない。
【0084】
各充放電ユニット52の一端は、上記第1実施形態と同様に交流バス18を介してAC電源20に電気的に接続されている。換言すると、AC電源20に対して交流バス18を介して並列接続された複数の充放電ユニット52が電気的に接続されている。また、各充放電ユニット52の一端とは反対側の他端は、直流バス56を介して、同一の充放電体9に対して電気的に接続されている。換言すると、同一の充放電体9に対して直流バス56を介して並列接続された複数の充放電ユニット52が電気的に接続されている。
【0085】
各充放電ユニット52は、上記第1実施形態の充放電試験装置12と基本的には同じ構成であり、AC電源20から交流バス18を介して入力された交流電力を直流電力に変換するAC/DC変換と、この直流電力の高圧電圧を降圧するDC/DC変換と、を実行した後、降圧後の直流電力を、直流バス56を介して充放電体9へ出力する。また、各充放電ユニット52は、充放電体9から直流バス56を介して入力された直流電力の低圧電圧を昇圧するDC/DC変換と、昇圧後の直流電力を交流電力に変換するDC/AC変換と、を実行した後、交流バス18を介して交流電力をAC電源20に回生する。
【0086】
なお、各充放電ユニット52がDC/DC変換のみを実行するものであってもよく、この場合にはAC電源20に対して交流バス18を介して電気的に接続された双方向AC/DCコンバータに対して、不図示の直流バスを介して各充放電ユニット52を電気的に並列接続する。
【0087】
各充放電ユニット52のいずれか1つはマスターユニット52-1(マスターコンバータとも称する)であり、各充放電ユニット52の残りはスレーブユニット52-2(スレーブコンバータとも称する)である。マスターユニット52-1は、制御部54から入力された充放電指令D3Aに従って充放電体9に対する充放電を実行すると共に、各スレーブユニット52-2に対してI(Input)/O(Output)信号及び電流リファレンス信号(アナログ信号)を含む並列信号D3Bを出力する。各スレーブユニット52-2は、マスターユニット52-1から入力された並列信号D3Bに基づいて充放電体9に対する充放電を実行する。例えば、マスターユニット52-1は、充放電体9に対して480Aの直流電流を出力する場合には、自身に対して120Aの電流出力指令を出すと共に、残りの3つのスレーブユニット52-2対して120Aの電流出力を実行する旨の並列信号D3Bを出力する。
【0088】
なお、各充放電ユニット52をマスターユニット52-1と複数のスレーブユニット52-2とに分けることなく、全ての充放電ユニット52が制御部54から直接入力された充放電指令D3Aに従って充放電体9に対する充放電を実行してもよい。また、上記第1実施形態の各充放電試験装置12と第2実施形態及び第3実施形態の各DC/DCコンバータ122とを本実施形態と同様にマスターとスレーブに分けてもよい。
【0089】
各充放電ユニット52は、図示は省略するが、FET等のスイッチング素子をスイッチングさせるスイッチング制御により出力電流の大きさを制御するスイッチング制御方式を採用している。
【0090】
制御部54は、第1実施形態乃至第3実施形態の制御部16と同様に、PLCが用いられたり、或いはPLCとPC又はPC以外の端末とを組み合わせたものが用いられたりする。制御部54は、マスターユニット52-1に対して電気的に接続されている。
【0091】
制御部54は、充放電体9の充放電試験時にオペレータにより予め入力された充放電体9の充放電パターン(充放電体9に対して充放電する電流量を含む)に従って、マスターユニット52-1に対して充放電指令D3Aを出力する。これにより、マスターユニット52-1が充放電指令D3Aに従って充放電体9に対して充放電を実行すると共に、このマスターユニット52-1から入力される並列信号D3Bに基づいて各スレーブユニット52-2が充放電体9に対して充放電を実行する。すなわち、4つの充放電ユニット52(マスターユニット52-1、各スレーブユニット52-2)により同一の充放電体9に対して同時に充放電させることができる。例えば、各充放電ユニット52の最大出力電流が120Aである場合には、各充放電ユニット52により同一の充放電体9に対して480A(=120A×4)の電流を充放電可能である。
【0092】
また、制御部54は、スイッチング制御方式の各充放電ユニット52(各充放電ユニット52のスイッチング素子)のスイッチングの位相を制御するスイッチング同期信号SGを各充放電ユニット52に出力する。具体的には制御部54がマスターユニット52-1に対してスイッチング同期信号SGを出力し、このマスターユニット52-1を経由してスイッチング同期信号SGが各スレーブユニット52-2へ出力される。これにより、各充放電ユニット52を跨るスイッチング同期信号SGに基づいて、各充放電ユニット52のスイッチングの位相の同期を実行したり或いは位相をずらしたりすることができる。
【0093】
図12は、スイッチング制御方式の各充放電ユニット52により同一の充放電体9に対して充放電を実行する場合の課題を説明するための説明図である。なお、
図12では図面の煩雑化を防止するために、交流バス18及びAC電源20の図示は省略している。
【0094】
各充放電ユニット52のスイッチングの位相を同期させた場合には、各充放電ユニット52からそれぞれ出力される電流リップルRiの位相が揃い易くなる。その結果、各充放電ユニット52から出力される電流リップルRiが合成された場合に、各電流リップルRiのピークの重なりによってはピークの大きさが最大で4倍になる合成電流リップルSRi(電流ノイズ)が生成されてしまう。
【0095】
そこで、制御部54は、合成電流リップルSRiが低減されるように各充放電ユニット52のスイッチングの位相を制御する。
【0096】
図13は、制御部54による各充放電ユニット52のスイッチングの位相制御を説明するための説明図である。
図13に示すように、制御部54は、スイッチング同期信号SGに基づいて各充放電ユニット52のスイッチングの位相を互いに異ならせる。
【0097】
具体的には制御部54は、同一の充放電体9に対して直流バス56を介して電気的に並列接続されている各充放電ユニット52の数をN(Nは2以上の自然数)とした場合に、各充放電ユニット52のスイッチングの位相を360°/Nずつずらす。ここではN=4であるため、各充放電ユニット52のスイッチングの位相を90°ずつずらす。これにより、各充放電ユニット52から出力される電流リップルRiの位相を90°ずつずらすことができる。例えば、括弧付き数字(1)で示す充放電ユニット52(マスターユニット52-1)から出力される電流リップルRiの位相に対して、括弧付き数字(2)~(4)で示す各充放電ユニット52(各スレーブユニット52-2)から出力される電流リップルRiの位相がそれぞれ90°、180°、270°ずれる。
【0098】
このように各充放電ユニット52から出力される電流リップルRiの位相が互いにずれることで、各電流リップルRiのピークの位置がずれる。その結果、各充放電ユニット52からそれぞれ出力される電流リップルRiが互いに打ち消しあうため、合成電流リップルSRiが低減される。
【0099】
以上のように第4実施形態の充放電試験システム10では、スイッチング制御方式の各充放電ユニット52のスイッチングの位相を360°/Nずつずらすことで、合成電流リップルSRiを大幅に低減させることができる。
【0100】
なお、上記第4実施形態では、各充放電ユニット52のスイッチングの位相を360°/Nずつずらしているが、各充放電ユニット52のスイッチングの位相が揃っていなければ合成電流リップルSRiをある程度は低減可能である。このため、各充放電ユニット52のスイッチングの位相のずれ量の大きさは特に限定はされないが、第2実施形態で説明したようにずれ量を360°/Nに設定することで合成電流リップルSRiを最も低減させることができる。
【0101】
また、上記第4実施形態の充放電試験システム10では、1つの充放電体9に対して直流バス56を介して複数の充放電ユニット52を電気的に並列接続させているが、複数の充放電体9に対してそれぞれ直流バス56を介して複数の充放電ユニット52を電気的に並列接続させてもよい(上記
図3の符号3A参照)。
【0102】
[第5実施形態]
図14は、第5実施形態の充放電試験システム70の概略図である。
図14に示すように、第5実施形態の充放電試験システム70は、複数の充放電ユニット72と、制御部74と、を備える。ここで、充放電ユニット72は、例えば、充放電試験装置であってもよいし、双方向DC/DCコンバータであってもよい。なお、充放電ユニット72が双方向DC/DCコンバータである場合、
図9又は
図10に示すように、AC電源と双方向DC/DCコンバータの間に、双方向AC/DCコンバータ(図示せず)が配置される。
【0103】
充放電ユニット72は、第3実施形態では括弧付き数字(1)~(2)で示すように2つ設けられており、後述の制御部74の制御の下、2つの充放電体9(試験充放電体9-1及び予備充放電体9-2)に対する充放電を実行する。なお、充放電ユニット72の数は3つ以上であってもよい。
【0104】
各充放電ユニット72の一端は、上記第1実施形態と同様に交流バス18を介してAC電源20に電気的に接続されている。また、各充放電ユニット72の一端とは反対側の他端は、直流バス76を介して充放電体9に対して電気的に接続されている。
【0105】
ここで一方の充放電ユニット72の他端には直流バス76を介して既述の試験充放電体9-1が電気的に接続され、他方の充放電ユニット72の他端には直流バス76を介して既述の予備充放電体9-2が電気的に接続されている。以下、直流バス76を介して試験充放電体9-1に電気的に接続されている充放電ユニット72を適宜「試験中ユニット72-1」と称し、直流バス76を介して予備充放電体9-2に電気的に接続されている充放電ユニット72を適宜「余剰ユニット72-2」と称する。なお、全ての充放電ユニット72の他端に直流バス76を介して試験充放電体9-1を電気的に接続してもよい。
【0106】
各充放電ユニット72は、上記第1実施形態の充放電試験装置12と基本的には同じ構成である。各充放電ユニット72は、AC電源20から交流バス18を介して入力された交流電力を直流電力に変換するAC/DC変換と、この直流電力の高圧電圧を降圧するDC/DC変換と、を実行した後、降圧後の直流電力を、直流バス56を介して充放電体9(試験充放電体9-1、予備充放電体9-2)へ出力する。
【0107】
また、各充放電ユニット72は、充放電体9から入力された直流電力の低圧電圧を昇圧するDC/DC変換と、昇圧後の直流電力を交流電力に変換するDC/AC変換と、を実行した後、交流バス18を介して交流電力をAC電源20に回生、或いは他の充放電ユニット72へ出力する。なお、各充放電ユニット72がDC/DC変換のみを実行するものであってもよい。
【0108】
制御部74は、上記各実施形態と同様に、PLCが用いられたり、或いはPLCとPC又はPC以外の端末とを組みわせたものが用いられたりする。制御部54は、各充放電ユニット72に対して電気的に接続されている。
【0109】
制御部74は、オペレータにより予め入力された試験充放電体9-1の充放電パターンに基づいて、試験中ユニット72-1に対して充放電指令を出力する。これにより、試験中ユニット72-1が充放電指令に従って試験充放電体9-1に対して充放電を実行する。
【0110】
この際に制御部74は、試験充放電体9-1の充電を実行する場合には、試験充放電体9-1に対する予備充放電体9-2からの電力供給を実行させる。これにより、予備充放電体9-2から直流バス76及び余剰ユニット72-2を介して出力された電力が、交流バス18、試験中ユニット72-1、及び直流バス76を介して試験充放電体9-1に充電される。
【0111】
また逆に制御部74は、試験充放電体9-1の放電を実行する場合には、予備充放電体9-2による充電を実行させる。これにより、試験充放電体9-1から直流バス76及び試験中ユニット72-1を介して出力された電力が、交流バス18、余剰ユニット72-2及び直流バス76を介して予備充放電体9-2に充電される。これにより、AC電源20からの電力供給を減らしたり、AC電源20に回生する余剰電力を減らしたりすることができるので、充放電試験システム70の電力使用効率を向上させることができる。
【0112】
制御部74は、2つの充放電ユニット72(試験中ユニット72-1及び余剰ユニット72-2)のいずれか一方による充放電体9(試験充放電体9-1又は予備充放電体9-2)の充電のスイッチング制御と、いずれか他方による充放電体9(予備充放電体9-2又は試験充放電体9-1)の放電のスイッチングの制御と、を同期させる。
【0113】
例えば
図14に示した例では、制御部74は、余剰ユニット72-2による予備充放電体9-2の放電のスイッチング制御と、試験中ユニット72-1による試験充放電体9-1の充電のスイッチング制御と、を同期する。これにより、余剰ユニット72-2から交流バス18側への電流リップルRiの出力(放電)と、試験中ユニット72-1から直流バス76側への電流リップルRiの出力(充電)と、を同期することができる。そのため、余剰ユニット72-2から出力された電流リップルRi(出力電流リップル)を低減することができる。この電流リップルRiを低減することで、ロス低減、ケーブル発熱低減、及びヒューズの長寿命化することが可能である。
【0114】
[その他]
上記各実施形態を適宜組み合わせ実行してもよい。
【符号の説明】
【0115】
9…充放電体
9-1…試験充放電体
9-2…予備充放電体
9a…充放電体
10…充放電試験システム
12…充放電試験装置
12A…余剰ユニット
13…計測部
14…切替回路
14a…ポート
14b…ポート
16…制御部
18…交流バス
20…AC電源
30…補正値取得制御部
32…充放電試験制御部
34…補正部
40…充放電試験システム
42…充放電試験システム
50…充放電試験システム
52…充放電ユニット
52-1…マスターユニット
52-2…スレーブユニット
54…制御部
56…直流バス
70…充放電試験システム
72…充放電ユニット
72-1…試験中ユニット
72-2…余剰ユニット
74…制御部
76…直流バス
121…双方向AC/DCコンバータ
122…双方向DC/DCコンバータ
D1…組み合わせ指令信号
D2…補正条件切替指令信号
D3…充放電指令
D3A…充放電指令
D3B…並列信号
Ri…電流リップル
SG…スイッチング同期信号
SRi…合成電流リップル