(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055589
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】保護装置
(51)【国際特許分類】
H03K 17/16 20060101AFI20240411BHJP
H02H 3/20 20060101ALI20240411BHJP
H02M 1/00 20070101ALI20240411BHJP
【FI】
H03K17/16 H
H02H3/20
H02M1/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162647
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 崇博
(72)【発明者】
【氏名】遠山 陽平
(72)【発明者】
【氏名】秋山 輝
(72)【発明者】
【氏名】平山 裕樹
【テーマコード(参考)】
5G004
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5G004AA04
5G004BA07
5G004EA01
5H740BA12
5H740BB08
5H740BB10
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM01
5J055AX25
5J055AX26
5J055BX16
5J055CX07
5J055DX13
5J055DX22
5J055EY01
5J055EY10
5J055EY12
5J055EY21
(57)【要約】
【課題】コストおよび大型化を抑え、スイッチが誘導性負荷の逆起電力による負サージによって壊れるのを防ぐ保護装置を提供すること。
【解決手段】保護装置は、入力される制御信号に応じてオンまたはオフとなり、前記オンのときに電源からの電力を誘導性負荷へ供給し、前記オフのときに前記電源から前記誘導性負荷への電力供給を遮断するスイッチを制御するスイッチ制御部を有し、前記スイッチ制御部は、前記スイッチの前記電力の経路となる両端子間の電位差が、前記スイッチの耐圧値よりも小さい所定の保護閾値に達したと判定した場合、所定の期間だけ前記スイッチをオンにする保護制御信号を前記スイッチに出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される制御信号に応じてオンまたはオフとなり、前記オンのときに電源からの電力を誘導性負荷へ供給し、前記オフのときに前記電源から前記誘導性負荷への電力供給を遮断するスイッチを制御するスイッチ制御部を有し、
前記スイッチ制御部は、前記スイッチの前記電力の経路となる両端子間の電位差が、前記スイッチの耐圧値よりも小さい所定の保護閾値に達したと判定した場合、所定の期間だけ前記スイッチをオンにする保護制御信号を前記スイッチに出力する
保護装置。
【請求項2】
前記スイッチの両端子間の電位差を検出する電位差検出部を備える
請求項1に記載の保護装置。
【請求項3】
前記スイッチ制御部は、前記誘導性負荷の前記電力の経路となる両端子間の電位差に基づいて、前記スイッチの両端子間の電位差が前記保護閾値に達したかを判定する
請求項1に記載の保護装置。
【請求項4】
前記スイッチの耐圧値よりも小さい基準電圧値に、前記スイッチに流れる電流値の増減に応じて絶対値が増減する負値の補正値を加算して、前記保護閾値を生成する加算部を備える
請求項1に記載の保護装置。
【請求項5】
前記スイッチの両端子間の電位差を、前記スイッチに流れる電流値に基づいて算出する電位差算出部を備える
請求項1に記載の保護装置。
【請求項6】
前記スイッチは、前記誘導性負荷とグラウンドとの間に位置し、
前記スイッチの両端子間の電位差は、前記誘導性負荷と前記スイッチとの間の電位に基づいて取得される
請求項1に記載の保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導性負荷へ電力を供給するスイッチを保護する発明として、例えば特許文献1に開示された保護装置がある。この保護装置は、例えばショートの発生により誘導性負荷へ流れる電流が過電流検出の閾値を超えると、誘導性負荷へ電力を供給する半導体スイッチとしてのFET(Field Effect Transistor)のゲートに対して、デューティ比が徐々に小さくなるようにPWM(Pulse Width Modulation)信号を出力し、最終的にPWM信号のデューティ比を0にする。これにより負荷へ流れる電流の変動が抑制され、FETの破壊を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
誘導性負荷へ電力を供給する回路においては、スイッチをオフにして電力の供給を停止した場合、誘導性負荷の逆起電力によりスイッチの後段で負サージが発生する。特許文献1に開示された保護装置は、このような負サージに対応するため、スイッチの後段で誘導性負荷と並列にクランプダイオードを設けているが、クランプダイオードを設けることによりコストがかかる。また、負サージが大きい場合は、これに対応するため容量の大きくかつ大型のクランプダイオードが必要となるため、コストがかかるとともに保護装置が大型化する。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、コストおよび大型化を抑え、スイッチが誘導性負荷の逆起電力による負サージによって壊れるのを防ぐ保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様は、入力される制御信号に応じてオンまたはオフとなり、前記オンのときに電源からの電力を誘導性負荷へ供給し、前記オフのときに前記電源から前記誘導性負荷への電力供給を遮断するスイッチを制御するスイッチ制御部を有し、前記スイッチ制御部は、前記スイッチの前記電力の経路となる両端子間の電位差が、前記スイッチの耐圧値よりも小さい所定の保護閾値に達したと判定した場合、所定の期間だけ前記スイッチをオンにする保護制御信号を前記スイッチに出力する保護装置である。
【0007】
前記保護装置は、前記スイッチの両端子間の電位差を検出する電位差検出部を備えるものでもよい。
【0008】
前記スイッチ制御部は、前記誘導性負荷の前記電力の経路となる両端子間の電位差に基づいて、前記スイッチの両端子間の電位差が前記保護閾値に達したかを判定するものでもよい。
【0009】
前記保護装置は、前記スイッチの耐圧値よりも小さい基準電圧値に、前記スイッチに流れる電流値の増減に応じて絶対値が増減する負値の補正値を加算して、前記保護閾値を生成する加算部を備えるものでもよい。
【0010】
前記保護装置は、前記スイッチの両端子間の電位差を、前記スイッチに流れる電流値に基づいて算出する電位差算出部を備えるものでもよい。
【0011】
前記スイッチは、前記誘導性負荷とグラウンドとの間に位置し、前記スイッチの両端子間の電位差は、前記誘導性負荷と前記スイッチとの間の電位に基づいて取得されるものでもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コストおよび大型化を抑え、スイッチが誘導性負荷の逆起電力による負サージによって壊れるのを防ぐことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る保護装置を備えた電気装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1における制御信号、Vds、および負荷電流の変化を示すタイムチャートである。
【
図3】
図3は、実施形態2に係る保護装置を備えた電気装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態3に係る保護装置を備えた電気装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態4に係る保護装置を備えた電気装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態5に係る保護装置を備えた電気装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一または対応する要素については適宜同一の符号を付し、重複説明を適宜省略する。
【0015】
[実施形態1]
(全体構成)
図1は、実施形態1に係る保護装置を備えた電気装置の構成を示すブロック図である。電気装置10は、実施形態1に係る保護装置1と、電源2と、スイッチ3と、誘導性負荷4と、通常動作制御部5と、信号入力部6と、抵抗7a、7bと、を備えている。
【0016】
電気装置10は、たとえば車両に搭載されている。電源2は、たとえば車両に搭載されるバッテリである。電源2が供給する電力は、スイッチ3を経由して誘導性負荷4へ供給される。
【0017】
スイッチ3は、たとえば、FETやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体スイッチ素子3aと、コンデンサ3bとを備えている。半導体スイッチ素子3aはNチャネルMOSFETでもよい。コンデンサ3bは、半導体スイッチ素子3aの寄生コンデンサを含むが、半導体スイッチ素子3aと並列接続した外付けのコンデンサを含んでもよい。スイッチ3は、電力の経路となる両端子のうち一方の端子(たとえばドレイン端子)が電源2側に接続されており、両端子のうちもう一方の端子(たとえばソース端子)が誘導性負荷4側に接続されている。スイッチ3は、信号入力部6から半導体スイッチ素子3aの制御端子(たとえばゲート端子)に入力される制御信号によってオンまたはオフとなり、オンのときに電源2からの電力を誘導性負荷4へ供給し、オフのときに電源2から誘導性負荷4への電力供給を遮断する。
【0018】
図1において、スイッチ3における電力の経路となる両端子間の電位差をVdsで示している。
【0019】
誘導性負荷4は、たとえば車両において電源2から供給される電力で駆動する誘導性負荷であり、コイルを内蔵しているモータなどの機器である。誘導性負荷4は、グラウンドGに接続されている。
図1において、誘導性負荷4における電力の経路となる両端子間の電位差をVLで示している。
【0020】
通常動作制御部5は、たとえばマイクロコントローラを含んで構成されている。通常動作制御部5は、ECU(Electronic Control Unit)などの上位装置から受け取った通常動作制御指令に応じて、信号入力部6を経由して半導体スイッチ素子3aの制御端子に通常動作制御信号を出力する。ここで、通常動作とは、誘導性負荷4が搭載される対象(たとえば車両)においてその機能を発揮するために行う誘導性負荷4の動作である。通常動作制御信号とは、誘導性負荷4が通常動作を行うようにスイッチ3を動作させるための制御信号である。したがって、誘導性負荷4は、通常動作制御部5からの通常動作制御信号に従ってスイッチ3を経由して電力が供給されることによって、その機能を発揮すべく通常動作を行ない、電力供給が遮断されることによって通常動作を停止する。
【0021】
信号入力部6は、通常動作制御部5からの通常動作制御信号または保護装置1からの保護動作制御信号を半導体スイッチ素子3aの制御端子に出力する。信号入力部6は、たとえばOR回路を含んで構成されている。
【0022】
抵抗7aは、たとえばゲート抵抗として機能する。抵抗7bは、たとえばゲート-ソース間抵抗として機能する。
【0023】
(保護装置の構成)
保護装置1は、電位差検出部1aと、基準電圧発生部1bと、比較部1cと、保護動作制御部1dと、を備えている。保護動作制御部1dは、スイッチ制御部の一例である。
【0024】
電位差検出部1aは、スイッチ3における電力の経路となる両端子間の電位差Vdsを検出する。電位差検出部1aは、たとえば差動検出回路を含んで構成されている。
【0025】
基準電圧発生部1bは、後述するように実施形態1において保護閾値となる基準電圧を発生する。基準電圧発生部1bは、たとえば直流定電圧源を含んで構成されている。
【0026】
比較部1cは、電位差検出部1aが検出した電位差Vdsの値と、基準電圧発生部1bが発生した基準電圧の値(保護閾値)とを比較し、その比較結果を保護動作制御部1dに出力する。比較部1cは、たとえば比較回路を含んで構成されている。
【0027】
保護動作制御部1dは、比較部1cから受け取った比較結果に基づいて、信号入力部6を経由して、保護動作制御信号を半導体スイッチ素子3aの制御端子に出力する。ここで、保護動作とは、通常動作の終了時にスイッチ3をオフにして電力の供給を遮断した場合、誘導性負荷4の逆起電力により発生する負サージから、スイッチ3を保護するためのスイッチ3の動作である。保護動作制御信号とは、スイッチ3を保護動作させるための制御信号である。保護動作制御部1dは、たとえばマイクロコントローラを含んで構成されている。
【0028】
ここで、保護動作制御部1dは、比較部1cから受け取った比較結果に基づいて、スイッチ3の両端子間の電位差Vdsが、上述した保護閾値に達したと判定した場合、所定の期間だけスイッチ3をオンにする保護制御信号をスイッチ3に出力する。
【0029】
保護動作制御部1dの動作とこれによって得られる効果について、
図2のタイムチャートを参照して説明する。
図2は、
図1における制御信号、Vds、および負荷電流の変化を示すタイムチャートである。
【0030】
図2において、制御信号のうち信号S1は通常動作制御信号である。時刻0から時刻t1までは、スイッチ3にはオン信号である通常動作制御信号が入力されている。これにより、スイッチ3はオンとなっており、電力が誘導性負荷4に供給される。そして、誘導性負荷4には定常電流が流れる。一方、時刻0から時刻t1においては、Vdsは、スイッチ3の半導体スイッチ素子3aのオン抵抗などに応じた低い値となっている。
【0031】
時刻t1において、通常動作制御信号がオフになると、誘導性負荷4の逆起電力により負サージが発生する。この負サージによって、スイッチ3のコンデンサ3bが充電されるので、Vdsは徐々に増加する。一方、負荷電流は、通常動作時に誘導性負荷4が蓄えたエネルギーがスイッチ3や誘導性負荷4によって消費されるので、低下する。
【0032】
その後、保護動作制御部1dは、Vdsが保護閾値(
図2における保護電圧)に達したと判定したら、所定の期間だけスイッチ3をオンにする保護制御信号S21を出力する。保護制御信号S21は、たとえば
図2に示すように所定のパルス幅を有する矩形状のパルス信号である。これにより、スイッチ3はオンとなり、コンデンサ3bが放電するとともに、Vdsは半導体スイッチ素子3aののオン抵抗などに応じた低い値に低下する。
【0033】
ここで、保護制御信号S21がオンである所定の期間は、コンデンサ3bの容量Cおよび内部抵抗(等価直列抵抗)ESR、ならびに半導体スイッチ素子3aのオン抵抗Ronによって決まる時定数に応じて、コンデンサ3bが十分放電してVdsが十分低くなるような適正な値とすることができる。たとえば、所定の期間を、コンデンサ3bが95%以上放電するまでの時間にする場合は、当該所定の期間は上記時定数の3倍以上にする。すなわち、(所定の期間)≧C(Ron+ESR)3にする。
【0034】
また、保護閾値は、スイッチ3の耐圧値よりも小さい値に設定される。これにより、スイッチ3のVdsが負サージによって過度に上昇することが抑制され、スイッチ3が破壊することが防止される。
【0035】
その後、保護制御信号S21がオフになると、再び負サージが発生し、これによりVdsは徐々に増加する。そこで、保護動作制御部1dは、Vdsが保護閾値に達したと判定したら、所定の期間だけスイッチ3をオンにする保護制御信号S22を出力する。これにより、再びVdsは低い値に低下する。
【0036】
その後も、保護動作制御部1dは、Vdsが保護閾値に達したと判定する度に、保護制御信号S23~S27を順次出力する。なお、パルス幅は、たとえば全ての保護制御信号S21~S27において等しいが、互いに異なるものが含まれていてもよい。また、
図2に示すように負荷電流は徐々に低下するので、Vdsの上昇の傾きは徐々に小さくなる。
【0037】
そして、時刻t2以降は、Vdsが保護閾値に達したと判定されないので、保護動作制御部1dは保護制御信号を出力しなくなる。
【0038】
以上のように構成された保護装置1によれば、スイッチ3が負サージによって壊れるのを防ぐことができる。また、保護装置1では、クランプダイオードが不要なので、コストおよび大型化が抑制される。
【0039】
また、保護装置1を備えた電気装置10によれば、誘導性負荷4に蓄えられたエネルギーをスイッチ3自体ではあまり消費しない。したがって、スイッチ3の発熱が抑えられるので、誘導性負荷4の定格に対してスイッチ3の定格に過度にマージンを設ける必要がない。その結果、スイッチ3を適正に低コストかつ小型化できる。
【0040】
[実施形態2]
図3は、実施形態2に係る保護装置を備えた電気装置の構成を示すブロック図である。電気装置10Aは、
図1に示す電気装置10の構成において、保護装置1を、実施形態2に係る保護装置1Aに置き換えた構成を有する。
【0041】
保護装置1Aは、
図1に示す保護装置1の構成において、電位差検出部1aを、電位差検出部1Aaに置き換えた構成を有する。
【0042】
電位差検出部1Aaは、ダイオード1Aa1と、抵抗1Aa2と、ツェナーダイオード1Aa3とを含んで構成されている。ダイオード1Aa1は、アノードが電源2とスイッチ3との間に接続されており、カソードが抵抗1Aa2を経由してツェナーダイオード1Aa3のカソードに接続されている。ツェナーダイオード1Aa3のアノードは、スイッチ3と誘導性負荷4との間に接続されている。
【0043】
電位差検出部1Aaは、誘導性負荷4における電力の経路となる両端子間の電位差VLと、ツェナーダイオード1Aa3のツェナー電圧Vzとを加算した値であるVLs(=VL+Vz)を比較部1cに出力する。
【0044】
比較部1cは、電位差検出部1aが検出したVLsの値と、基準電圧発生部1bが発生した基準電圧Vthの値とを比較し、その比較結果を保護動作制御部1dに出力する。
【0045】
保護動作制御部1dは、比較部1cから受け取った比較結果に基づいて、スイッチ3の両端子間の電位差Vdsが保護閾値に達したと判定する。具体的には、VLsの値が基準電圧Vthの値と等しい場合、Vdsが保護閾値に達したと判定する。
【0046】
すなわち、保護装置1Aでは、保護動作制御部1dは、VLに基づいて、Vdsが保護閾値に達したかを判定する。
【0047】
ここで、ツェナー電圧Vzの値は、電源2の電源電圧Vbと保護閾値Vdsthと基準電圧Vthとに基づいて設定される。例えば、Vbが最大で16V、保護閾値Vdsthが27Vであれば、VL=Vb-Vdsth=16V-27V=-11Vである。このとき、基準電圧Vthが1Vであれば、Vzは、Vth-VL=1V-(-11V)=12Vである。なお、逆に基準電圧Vthを、VbとVdsとVzとに基づいて設定してもよい。
【0048】
保護装置1Aによれば、保護装置1と同様に、スイッチ3が負サージによって壊れるのを防ぐことができ、保護装置1Aのコストおよび大型化が抑制される。また、保護装置1Aを備えた電気装置10Aによれば、スイッチ3を適正に低コストかつ小型化できる。
【0049】
[実施形態3]
図4は、実施形態3に係る保護装置を備えた電気装置の構成を示すブロック図である。電気装置10Bは、
図1に示す電気装置10の構成において、保護装置1を、実施形態3に係る保護装置1Bに置き換えた構成を有する。
【0050】
保護装置1Bは、
図1に示す保護装置1の構成に、電流検出部1e、電圧変換部1f、乗算部1g、および加算部1hを追加した構成を有する。
【0051】
電流検出部1eは、スイッチ3の両端子間に流れる電流Idsの値を検出し、電圧変換部1fに出力する。電流Idsは、負荷に流れる負荷電流と等しい。
【0052】
電圧変換部1fは、入力された電流Idsの検出値をこの検出値に比例する電圧値(正値)に変換し、乗算部1gに出力する。
【0053】
乗算部1gは、入力された電圧値に負値の係数を乗算して負値の補正値を生成し、加算部1hに出力する。
【0054】
基準電圧発生部1bは、基準電圧を発生し、加算部1hに出力する。基準電圧は、スイッチ3の耐圧値よりも小さい。
【0055】
加算部1hは、基準電圧発生部1bから入力された基準電圧の値に、乗算部1gから入力された負値の補正値を加算して、保護閾値を生成する。
【0056】
比較部1cは、電位差検出部1aが検出した電位差Vdsの値と、基準電圧発生部1bが発生した保護閾値とを比較し、その比較結果を保護動作制御部1dに出力する。
【0057】
保護動作制御部1dは、比較部1cから受け取った比較結果に基づいて、信号入力部6を経由して、保護動作制御信号を半導体スイッチ素子3aの制御端子に出力する。具体的には、保護動作制御部1dは、比較部1cから受け取った比較結果に基づいて、電位差Vdsが、上述した保護閾値に達したと判定した場合、所定の期間だけスイッチ3をオンにする保護制御信号をスイッチ3に出力する。
【0058】
ここで、電位差検出部1aが電位差Vdsを検出してから、保護動作制御部1dが出力した保護動作制御信号によってスイッチ3がオンになるまでには、或る程度の遅延時間tdが存在する。この遅延時間tdが経過する間にも、電位差Vdsは上昇し続け保護閾値をオーバーするおそれがある。このような場合、スイッチ3の破壊を防止するために、スイッチ3の耐圧値に対して保護閾値を設定する場合に、予測されるオーバー量よりも大きな差を設ける(マージンを設ける)手法が考えられる。しかし、あまりマージンを大きくすると、スイッチ3の耐圧値に対して低すぎる電位差Vdsに達したときにスイッチ3をオンにしてしまうことになる。この場合、スイッチ3がオンの期間に消費されるエネルギーが比較的少なくなるので、
図1に示すような負荷電流が0Aに収まるまでに比較的時間が掛かることになる。
【0059】
本発明者らが鋭意検討したところ、オーバー量をVds_overとすると、以下の式(1)が成り立つので、Vds_overは式(2)によって表すことができることを見出した。
Ids(t)×td=C×Vds_over ・・・ (1)
Vds_over=Ids(t)×td/C ・・・ (2)
なお、式(1)、(2)において、Cはスイッチ3のコンデンサ3bの容量である。
【0060】
式(2)から、Vds_overはIds(t)の増減に応じて増減する、すなわち、Ids(t)が大きくなるとVds_overも大きくなり、Ids(t)が小さくなるとVds_overも小さくなる。
【0061】
そこで、実施形態2に係る保護装置1Bでは、基準電圧値に、Ids(t)の増減に応じて絶対値が増減する負値の補正値を加算して、保護閾値としている。これにより、保護閾値は、
図2の時刻t2の直後のようにIds(t)が大きくVds_overが大きい場合は、基準電圧値に対してより低くなる。その結果、スイッチ3の耐圧値に対する保護閾値のマージンは大きくなるので、Vds_overが大きくてもVdsが耐圧値に達しにくくなる。その後、Ids(t)が徐々に小さくなると、Vds_overも小さくなるが、このとき補正値の絶対値も徐々に小さくなるので、保護閾値は徐々に大きくなる。その結果、スイッチ3の耐圧値に対する保護閾値のマージンは小さくなる。
【0062】
このように、保護装置1Bでは、Vds_overの大きさに応じて保護閾値の値が適正に変化するので、遅延時間tdによるVds_overの発生の問題を解決できるととに、負荷電流が0Aに収まるまでに掛かる時間が過度に長くなることが抑制される。また、スイッチ3として、基準電圧値に対してマージンを取るために耐圧値が過度に大きいものを用いなくてもよいので、スイッチ3をより適正に低コストかつ小型化することができる。
【0063】
また、保護装置1Bによれば、保護装置1と同様に、スイッチ3が負サージによって壊れるのを防ぐことができ、保護装置1Bのコストおよび大型化が抑制されるとともに、スイッチ3を適正に低コストかつ小型化できる。
【0064】
[実施形態4]
図5は、実施形態4に係る保護装置を備えた電気装置の構成を示すブロック図である。電気装置10Cは、
図1に示す電気装置10の構成において、保護装置1を、実施形態4に係る保護装置1Cに置き換えた構成を有する。
【0065】
保護装置1Cは、
図1に示す保護装置1の構成において、電流検出部1eを追加し、電位差検出部1aを電位差算出部1iに置き換えた構成を有する。
【0066】
電流検出部1eは、スイッチ3の両端子間に流れる電流Idsの値を検出し、電位差算出部1iに出力する。
【0067】
電位差算出部1iは、入力された電流Idsの検出値に基づいて、電位差Vdsを算出し、比較部1cに出力する。電位差算出部1iは、たとえば積分回路を含んで構成されている。
【0068】
比較部1cは、電位差算出部1iが算出した電位差Vdsの値と、基準電圧発生部1bが発生した基準電圧の値(保護閾値)とを比較し、その比較結果を保護動作制御部1dに出力する。
【0069】
保護動作制御部1dは、比較部1cから受け取った比較結果に基づいて、電位差Vdsが、上述した保護閾値に達したと判定した場合、所定の期間だけスイッチ3をオンにする保護制御信号をスイッチ3に出力する。
【0070】
電位差算出部1iの動作についてより具体的に説明する。本発明者らが鋭意検討したところ、電位差Vdsについては、以下の式(3)が成り立つので、Vdsは式(4)によって表すことができる。なお、tはスイッチ3がオフの時間である。
∫Ids(t)dt=C×Vds ・・・ (3)
Vds=∫Ids(t)dt/C ・・・ (4)
なお、式(3)、(4)において、Cはスイッチ3のコンデンサ3bの容量である。
【0071】
そこで、電位差算出部1iは、入力された電流Idsの検出値に基づいて式(4)に示すような積分演算を実行し、電位差Vdsを算出する。なお、電位差算出部1iの積分回路は、たとえばスイッチ3がオンの期間に、保護動作制御部1dからのリセット信号によってリセットされる。
【0072】
保護装置1Cによれば、保護装置1と同様に、スイッチ3が負サージによって壊れるのを防ぐことができ、保護装置1Cのコストおよび大型化が抑制されるとともに、スイッチ3を適正に低コストかつ小型化できる。
【0073】
また、保護装置1Cによれば、電位差算出部1iを、簡易な積分演算を実行できる要素で構成できるので、構成や実施が比較的容易である。
【0074】
[実施形態5]
図6は、実施形態5に係る保護装置を備えた電気装置の構成を示すブロック図である。電気装置10Dは、
図1に示す電気装置10の構成において、スイッチ3と誘導性負荷4との配置を入れ替え、保護装置1を、実施形態5に係る保護装置1Dに置き換えた構成を有する。
【0075】
具体的には、電気装置10Dにおいては、スイッチ3は誘導性負荷4とグラウンドGとの間に位置する。すなわち、スイッチ3は、電力の経路となる両端子のうち一方の端子(たとえばドレイン端子)が誘導性負荷4側に接続されており、両端子のうちもう一方の端子(たとえばソース端子)がグラウンドG側に接続されている。このような配置は、スイッチ3が誘導性負荷4の低電圧側に接続されるので、ローサイドスイッチとも呼ばれる。一方、実施形態1~4のような配置は、スイッチ3が誘導性負荷4の高電圧側に接続されるので、ハイサイドスイッチとも呼ばれる。
【0076】
また、保護装置1Dは、
図1に示す保護装置1の構成において、電位差検出部1aを電位差検出部1jに置き換えた構成を有する。
【0077】
電位差検出部1jは、誘導性負荷4とスイッチ3との間の電位を検出する。スイッチ3の端子(たとえばソース端子)がグラウンドG側に接続されているので、検出された電位は、スイッチ3の電位差Vdsに相当する。電位差検出部1jは、たとえば分圧回路を含んで構成されている。
【0078】
比較部1cは、電位差検出部1aが検出した電位差Vdsの値と、基準電圧発生部1bが発生した基準電圧の値(保護閾値)とを比較し、その比較結果を保護動作制御部1dに出力する。
【0079】
保護動作制御部1dは、比較部1cから受け取った比較結果に基づいて、電位差Vdsが、上述した保護閾値に達したと判定した場合、所定の期間だけスイッチ3をオンにする保護制御信号をスイッチ3に出力する。
【0080】
保護装置1Dによれば、保護装置1と同様に、スイッチ3が負サージによって壊れるのを防ぐことができ、保護装置1Dのコストおよび大型化が抑制されるとともに、スイッチ3を適正に低コストかつ小型化できる。
【0081】
なお、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。たとえば、実施形態3のように補正値を用いて保護閾値を生成する構成を他の実施形態と組み合わせてもよいし、実施形態5のようなローサイドスイッチの配置において他の実施形態の構成を適用してもよい。
【0082】
また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1、1A、1B、1C、1D :保護装置
1a、1Aa、1j :電位差検出部
1b :基準電圧発生部
1c :比較部
1d :保護動作制御部
1e :電流検出部
1f :電圧変換部
1g :乗算部
1h :加算部
1i :電位差算出部
1Aa1 :ダイオード
1Aa2、7a、7b :抵抗
1Aa3 :ツェナーダイオード
2 :電源
3 :スイッチ
3a :半導体スイッチ素子
3b :コンデンサ
4 :誘導性負荷
5 :通常動作制御部
6 :信号入力部
10、10A、10B、10C、10D :電気装置
G :グラウンド
S1 :信号
S21、S22、S23、S24、S25、S26、S27 :保護制御信号