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特開2024-55597ヒーター、単結晶の製造装置、単結晶の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055597
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】ヒーター、単結晶の製造装置、単結晶の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 15/14 20060101AFI20240411BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20240411BHJP
   H05B 3/14 20060101ALN20240411BHJP
【FI】
C30B15/14
C30B29/06 502E
H05B3/14 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162660
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 知世
(72)【発明者】
【氏名】末若 良太
(72)【発明者】
【氏名】下▲崎▼ 一平
【テーマコード(参考)】
3K092
4G077
【Fターム(参考)】
3K092PP20
3K092QA10
3K092QB14
3K092QB40
3K092QB45
3K092VV16
4G077AA02
4G077BA04
4G077CF10
4G077EG18
4G077PE03
4G077PE12
(57)【要約】
【課題】本発明は、出力の制御性を向上させたヒーター、該ヒーターを備えた単結晶の製造装置、及び、該ヒーターを用いた単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のヒーターは、 単結晶の製造装置に用いる円筒状のヒーターであり、周方向に延びる複数本の周方向貫通スリットを備えている。本発明の単結晶の製造装置は、上記のヒーターを備える。本発明の単結晶の製造方法は、上記のヒーターを用いる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶の製造装置に用いる円筒状のヒーターであって、
周方向に延びる複数本の周方向貫通スリットを備えたことを特徴とする、ヒーター。
【請求項2】
前記周方向貫通スリットにより区画された、周方向に延びる周方向延在部分と、軸方向に延びる軸方向延在部分とからなる、蛇行形状を有する、請求項1に記載のヒーター。
【請求項3】
円筒の中心軸を通る平面に対して、面対称な構造を有する、請求項1又は2に記載のヒーター。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のヒーターを備えることを特徴とする、単結晶の製造装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のヒーターを用いる、単結晶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶の製造装置に用いるヒーター、該ヒーターを備えた単結晶の製造装置、及び該ヒーターを用いた単結晶の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来のヒーターの概略形状を示す斜視図である。図1に示すように、従来、シリコン単結晶等の単結晶の引き上げを行う単結晶の製造装置に用いるヒーター90は、円筒状の概略形状を有しており、円筒の軸方向(鉛直方向)に延びる貫通スリット91、92が周方向に(図示例では等間隔に)複数設けられている。貫通スリット91は、図示上端から軸方向に延びて図示下端に開口せずに下端側で終端している。一方で、貫通スリット92は、図示下端から軸方向に延びて図示上端に開口せずに上端側で終端している。このような貫通スリット91、92が周方向に交互に配置されていることにより、ヒーター90は、蛇行形状をなす長い電流経路を形成している。このような構成は、ヒーター90が電気抵抗により所望の温度を発熱するのに適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平04-357191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、単結晶の製造時においては、融液の温度を一定に保ち結晶成長を安定して行うことが望ましく、そのためには、ヒーター出力を安定させることが不可欠である。ヒーターの出力を安定させるため、ヒーターあるいはヒーターによって温められたヒーター付近の部材の温度を測定し、ヒーターの出力の制御を行う。放射温度計を用いて、ヒーターが格納された単結晶製造装置のチャンバーの外から、ヒーターあるいはヒーターによって温められた部材の温度を測定し、その測定温度の結果をフィードバックしてヒーターの出力を制御することがある。この場合、ヒーターあるいはヒーターによって温められたヒーター付近の部材の温度を測定する測定点の位置を変更することは容易でなく、ヒーターの出力制御に用いる温度測定点が固定される。よって、ヒーターの出力制御に用いる温度測定点が固定される影響を減じて、ヒーターの出力を安定して制御することが希求される。
【0005】
ところが、従来のヒーターの温度を測定した場合であっても、ヒーターの構造によって、ヒーターの出力の制御が適切に行えない場合があることが判明した。例えば、一体構造型ヒーターと軸方向に二分割された二分割型ヒーターがあって、一体構造型ヒーターでは適切にヒーターの出力の制御が行えたとしても、二分割型ヒーターでは適切にヒーターの出力の制御が行えない場合があった。逆に一体構造型ヒーターでは適切にヒーターの出力の制御が行えなかったとしても、二分割型ヒーターでは適切にヒーターの出力の制御が行える場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、出力の制御性を向上させたヒーター、該ヒーターを備えた単結晶の製造装置、及び、該ヒーターを用いた単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)単結晶の製造装置に用いる円筒状のヒーターであって、
周方向に延びる複数本の周方向貫通スリットを備えたことを特徴とする、ヒーター。
【0008】
(2)前記周方向貫通スリットにより区画された、周方向に延びる周方向延在部分と、軸方向に延びる軸方向延在部分とからなる、蛇行形状を有する、上記(1)に記載のヒーター。
【0009】
(3)円筒の中心軸を通る平面に対して、面対称な構造を有する、上記(1)又は(2)に記載のヒーター。
【0010】
(4)上記(1)~(3)のいずれか1つに記載のヒーターを備えることを特徴とする、単結晶の製造装置。
【0011】
(5)上記(1)~(3)のいずれか1つに記載のヒーターを用いる、単結晶の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、出力の制御性を向上させたヒーター、該ヒーターを備えた単結晶の製造装置、及び、該ヒーターを用いた単結晶の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来のヒーターの概略形状を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態にかかるヒーターの概略形状を示す斜視図である。
図3図2の実施形態において電極が4つの場合の変形例のヒーターの概略形状を示す斜視図である。
図4】従来の一体型のヒーターの温度の測定について説明するための単結晶の引き上げ炉の断面図である。
図5】従来の二分割型のヒーターの温度の測定について説明するための単結晶の引き上げ炉の断面図である。
図6】従来の一体型のヒーターの温度の測定について説明するための模式図である。
図7】従来の二分割型のヒーターの温度の測定について説明するための模式図である。
図8】本実施形態の一体型のヒーターの温度の測定について説明するための単結晶の引き上げ炉の断面図である。
図9】本実施形態の二分割型のヒーターの温度の測定について説明するための単結晶の引き上げ炉の断面図である。
図10】本実施形態の一体型のヒーターの温度の測定について説明するための模式図である。
図11】本実施形態の二分割型のヒーターの温度の測定について説明するための模式図である。
図12】本発明の他の実施形態にかかるヒーターの概略形状を示す斜視図である。
図13図12の実施形態において電極が4つの場合の変形例のヒーターの概略形状を示す斜視図である。
図14】発明例の試験結果を示す図である。
図15】比較例の試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0015】
<ヒーター>
図2は、本発明の一実施形態にかかるヒーターの概略形状を示す斜視図である。ヒーター1は、チョクラルスキー法によりシリコン単結晶等の単結晶を製造する装置に用いるものであり、図2に示すように円筒状の形状をなしている。図示例では、ヒーター1は、円筒の中心軸を通る平面に対して、面対称な構造を有しており、当該平面を通って図示上端から軸方向に延びる第1の軸方向貫通(径方向に貫通する)スリット2により、軸方向の大部分が部分1aと部分1bとに2分割される一方で、図示下端部においては部分1a及び部分1bは連結した構造となっている。
【0016】
また、ヒーター1は、周方向に延びる複数本の周方向貫通スリット(周方向に延び、径方向に貫通するスリット)3を備えている。図示例では、第1の軸方向貫通スリット2に連通し、第1の軸方向貫通スリット2との連通部分から周方向両側に延びる、第1の周方向貫通スリット3aと、第1の軸方向貫通スリット2に連通せず、第2の周方向貫通スリット3bと、を有する。そして、本例では、第1の周方向貫通スリット3aと、第2の周方向貫通スリット3bとが、軸方向に交互に等間隔で配置されている。複数の第2の周方向貫通スリット3bの一方側の周方向端部の各々が、軸方向に延びる第2の軸方向貫通スリット4に連通している。
【0017】
ヒーター1は、周方向貫通スリット3により区画された(図示例では、第1の軸方向貫通スリット2、第1の周方向貫通スリット3a、第2の周方向貫通スリット3b、及び第2の軸方向貫通スリット4により区画された)、周方向に延びる周方向延在部分5aと、軸方向に延びる軸方向延在部分5bとからなる、蛇行形状を有する。
【0018】
図示例では、周方向延在部分5aの延在長さは、軸方向延在部分5bの延在長さより長くなっている。なお、図示下端部における周方向延在部分5aは、第1の軸方向貫通スリット2により分断されることなく、部分1aと部分1bとを連結している。
【0019】
図示例で2つの電極6は、軸方向に延在しており、図示上端部の周方向延在部分5aに連通している。これにより、電流が正極から負極へと、上記の蛇行形状に沿って流れることとなる。なお、図示下端部の周方向延在部分5aでは、電流が、他の周方向延在部分5aのおよそ2倍の長さの経路を流れる。
【0020】
図3は、図2の実施形態において電極が4つの場合の変形例のヒーターの概略形状を示す斜視図である。この変形例では、ヒーター1の図示下端部に、周方向に等間隔に4つの電極が配置されている点で、図2の例と異なっている。図示のように4つの電極6は、図示下端部の周方向延在部分5aに連通している。対向する電極6の一対は正極同士であり、他の対向する電極6の一対は負極同士である。この構成では、1つの正極から2つの負極へと2方向に、電流が蛇行形状に沿って流れることとなる。
【0021】
以下、本実施形態のヒーターの作用効果について、従来のヒーターとの対比で説明する。図4は、従来の一体型のヒーターの温度の測定について説明するための単結晶の引き上げ炉の断面図である。図5は、従来の二分割型のヒーターの温度の測定について説明するための単結晶の引き上げ炉の断面図である。図6は、従来の一体型のヒーターの温度の測定について説明するための模式図である。図7は、従来の二分割型のヒーターの温度の測定について説明するための模式図である。
【0022】
本発明者らが検討したところ、一体構造の場合と軸方向に二分割された二分割型の構造の場合とで、ヒーターの出力に対する応答性が異なる原因は、以下のような現象によるものであることを突き止めた。
図1に示したように、従来のヒーターでは、軸方向に延びる貫通スリットを有しており、電流は最短経路を通る性質があるため、蛇行形状の屈曲箇所において電流が集中し、電流によるジュール熱の発生による発熱量が極大になる。従って、図4図6に示すように、一体型のヒーターでは、断面視で極大発熱部Aがヒーターの上端部及び下端部に、断面視の水平方向に交互に現れる。このような極大発熱部Aは、ヒーターパワーの出力の変化を最も顕著に反映する部分である。一方で、図5図7に示すように、二分割型のヒーターでは、断面視で極大発熱部Aが二分割された上側半部の上端部及び下端部、並びに、下側半部の上端部及び下端部に交互に現れる。すなわち、軸方向に延びる貫通スリットを有する従来のヒーターでは、極大発熱部Aが上下方向に投影した際に水平方向に並ぶように現れる。これにより、同じ温度測定点に対して、一体型と二分割型とで、位置によっては、一方では極大発熱部Aに対する測定を行い、他方ではその他の部分(例えば2つの極大発熱部Aの中間)の測定を行う場合が生じてしまい、このような場合に、一体型と二分割型とでヒーターの出力に対する測定温度が異なるために応答性が異なってしまう。
【0023】
図8は、本実施形態の一体型のヒーターの温度の測定について説明するための単結晶の引き上げ炉の断面図である。図9は、本実施形態の二分割型のヒーターの温度の測定について説明するための単結晶の引き上げ炉の断面図である。図10は、本実施形態の一体型のヒーターの温度の測定について説明するための模式図である。図11は、本実施形態の二分割型のヒーターの温度の測定について説明するための模式図である。
【0024】
本実施形態のヒーター1は、周方向に延びる複数本の周方向貫通スリット3を備えているため、図8図11に示すように、一体型のヒーターでも二分割型のヒーターでも、蛇行形状の屈曲箇所が上下方向に順次現れるため、極大発熱部Aは、水平方向に投影した際に上下方向に並ぶように現れる。よって、水平方向から温度を測定した際に、一体型の場合でも二分割型の場合でも、いずれの上下方向位置においても、極大発熱部Aを測定対象とすることができるため、一体型と二分割型とでヒーターの出力に対する応答性が異ならないようにすることができる。たとえ、極大発熱部Aを測定対象とすることができない場合であっても、本発明のヒーターでは、極大発熱部Aの近くの部位を測定対象とすることができるため、従来のヒーターと比較して一体型と二分割型とでヒーターの出力に対する応答性の違いが少ない。
以上のように、本実施形態のヒーター1によれば、引き上げ炉の水平方向からのヒーターの温度測定を行ってヒーターの出力を制御する際の、出力の制御性を向上させることができる。また、極大発熱部Aで顕著に生じる熱環境の変化(減肉や酸化物の付着等)も観察することができる。また、良好な熱環境とするために、本実施形態のように、円筒の中心軸を通る平面に対して、面対称な構造を有することが好ましい。
【0025】
図12は、本発明の他の実施形態にかかるヒーターの概略形状を示す斜視図である。図12に示す実施形態のヒーター10は、シリコン単結晶等の単結晶の製造装置に用いるものであり、図12に示すように円筒状の形状をなしている。図12の実施形態では、第1の軸方向貫通スリット20は、図示上端から軸方向に延びる第1の軸方向貫通スリット20aと、図示下端から軸方向に延びる第1の軸方向貫通スリット20bとからなる。また、第1の軸方向貫通スリット20(20a、20b)に連通し、第1の軸方向貫通スリット20との連通部分から周方向両側に延びる、第1の周方向貫通スリット30aと、第1の軸方向貫通スリット20に連通せず、第2の周方向貫通スリット30bと、を有する。第1の周方向貫通スリット30aは、千鳥状に配置されている。そして、本例では、第1の周方向貫通スリット30aと、第2の周方向貫通スリット30bとが、軸方向に交互に等間隔で配置されている。複数の第2の周方向貫通スリット30bの一方側の周方向端部の各々が、軸方向に延びる第2の軸方向貫通スリット40に連通している。
【0026】
ヒーター1は、周方向貫通スリット3(30a、30b)により区画された(図示例では、第1の軸方向貫通スリット20、第1の周方向貫通スリット30a、第2の周方向貫通スリット30b、及び第2の軸方向貫通スリット40により区画された)、周方向に延びる周方向延在部分50aと、軸方向に延びる軸方向延在部分50bとからなる、蛇行形状を有する。なお、図示下端部における周方向延在部分50aは、第1の軸方向貫通スリット20により分断されることなく周方向に延在している。
【0027】
図示例で2つの電極60は、軸方向に延在しており、図示上端部の周方向延在部分50aに連通している。これにより、電流が正極から負極へと、上記の蛇行形状に沿って流れることとなる。
【0028】
図13は、図12の実施形態において電極が4つの場合の変形例のヒーターの概略形状を示す斜視図である。この変形例では、ヒーター1の図示下端部に、周方向に等間隔に4つの電極が配置されている点で、図12の例と異なっている。図示のように4つの電極60は、図示下端部の周方向延在部分50aに連通している。対向する電極6の一対は正極同士であり、他の対向する電極6の一対は負極同士である。この構成では、1つの正極から2つの負極へと2方向に、電流が蛇行形状に沿って流れることとなる。
【0029】
図12図13に示す実施形態のヒーター10によっても、ヒーター10は、周方向に延びる複数本の周方向貫通スリット30を備えているため、極大発熱部Aは、水平方向に投影した際に上下方向に並ぶように現れる。よって、水平方向から温度を測定した際に、一体型の場合でも二分割型の場合でも、いずれの上下方向位置においても、極大発熱部Aを測定対象とすることができるため、一体型と二分割型とでヒーターの出力に対する応答性が異ならないようにすることができる。
以上のように、図12図13の実施形態のヒーター10によっても、引き上げ炉の水平方向からのヒーターの温度測定を行ってヒーターの出力を制御する際の、出力の制御性を向上させることができる。
【0030】
図2図3図12図13に示したヒーター1、10は、高純度なカーボン製のヒーターとすることができる。また、これらのヒーター1、10は、無欠陥なシリコン単結晶の製造に用いることが好ましい。ここで、「無欠陥なシリコン単結晶」とは、COP(Crystal Originated Particle)と呼ばれる、空孔が凝集して生じるボイド欠陥、格子間シリコンが凝集して生じる転位クラスタ欠陥のいずれも含まないか、実質的に含まない結晶である。
【0031】
<単結晶の製造装置>
本発明の一実施形態にかかる単結晶の製造装置は、例えばチョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造に用いるものであり、るつぼの周囲に上記各実施形態のヒーター1、10を備える単結晶引き上げ炉を備える。本例で、単結晶の製造装置は、ヒーターが格納されたチャンバーの外から水平方向にヒーターの温度を測定する測定部(放射温度計等)をさらに備えることができる。単結晶引き上げ炉のその他の構成は、通常のものと同様にすることができるため、説明を省略するが、一例としては、図4等に示すように、単結晶の製造装置100は、チャンバー101内に、多結晶シリコン等のシリコン原料を収容するためのるつぼ102を備えている。このるつぼ102は、石英製るつぼ102aとカーボン製るつぼ102bとで構成されており、石英製るつぼ102aはカーボン製るつぼ102b内に収容されている。また、カーボン製るつぼ102bの周囲には、ヒーター103が配置されており、その周囲にはさらに断熱材104が配置されており、ヒーター103により石英製るつぼ102a内に収容されたシリコン原料を加熱してシリコン融液Mにする。シリコン融液Mからワイヤー105により、単結晶106が引き上げられていく。
【0032】
<単結晶の製造方法>
本発明の一実施形態にかかる単結晶の製造方法は、例えばチョクラルスキー法によるシリコン単結晶を製造する方法であり、るつぼの周囲に上記各実施形態のヒーター1、10を備えた単結晶引き上げ炉を用いて行うものである。製造方法の各工程は、通常の単結晶の製造方法と同様とすることができるため、説明を省略する。
【実施例0033】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0034】
本発明の効果を確かめるため、チョクラルスキー法により径300mm単結晶を製造する引上げ装置を対象にして、図1に示したような構造を有す従来のヒーター(比較例)と図2に示す構造を有すヒーター(発明例)のヒーターパワーの制御性を比較した。比較例にかかるヒーターが用いられているヒーターパワーの制御性が低い引上げ装置に対して、発明例にかかるヒーターを適用することによりヒーターパワーの制御性が改善するか否かを評価することによって本発明の効果を確認した。本実施例では、伝熱解析モデルを用いた数値シミュレーションにより検討した。発明例及び比較例のヒーターの発熱分布に基づいて、発明例及び比較例のヒーターそれぞれをモデル化した。発明例と比較例とでは、モデル化したヒーターのみが異なり、引上げ装置を構成する他の構成要素、プロセス条件は全て同じとした。種結晶を融液に着液後、55分間で種結晶位置とるつぼ位置がともに55mm上昇する際にヒーター温度が120K上昇する条件を与えた。
【0035】
図14は、発明例における、ヒーターパワーの変化量及びヒーター温度の時間変化を示す図であり、図15は、比較例における、ヒーターパワーの変化量及びヒーター温度の時間変化を示す図である。図14図15に示すように、比較例の発熱分布では、ヒーターパワーの変化量の時間変化は大きかった一方で、発明例の発熱分布では、ヒーターパワーの変化量の時間変化は小さかった。このことから、ヒーター温度を同じだけ上昇させるためのヒーターパワーの制御性は、発明例の方が比較例対比で安定しており良好であったことがわかる。
【符号の説明】
【0036】
1、10:ヒーター、
2、20:第1の軸方向貫通スリット、
3、30:周方向貫通スリット、
4、40:第2の軸方向貫通スリット、
5a、50a:周方向延在部分、
5b、50b:軸方向延在部分、
6、60:電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15