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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055649
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】精製アルミニウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 21/06 20060101AFI20240411BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20240411BHJP
   C22C 21/02 20060101ALI20240411BHJP
   C22B 9/02 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
C22B21/06
C22C21/00 N
C22C21/02
C22B9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162745
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】志賀 敬次
(72)【発明者】
【氏名】村上 雄一朗
(72)【発明者】
【氏名】尾村 直紀
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA02
4K001BA23
4K001EA05
(57)【要約】
【課題】介在物が混入する可能性が十分に抑制され、精製アルミニウム合金を高純度で製造することが可能な精製アルミニウム合金の製造方法を提供する。
【解決手段】精製アルミニウム合金を製造する方法であって、精製対象であるアルミニウムと、当該アルミニウム以外の不純物元素とを含むアルミニウム合金の溶湯を精製容器内で冷却する冷却工程を含み、前記アルミニウム合金の組成は、前記不純物元素を含む不純物を初晶として晶出させる組成であり、前記冷却工程は、前記溶湯に回転磁場を付与することにより前記溶湯を撹拌しながら行うことで、前記不純物を前記精製容器の中心部から壁面側に移動させる製造方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
精製アルミニウム合金を製造する方法であって、
精製対象であるアルミニウムと、当該アルミニウム以外の不純物元素とを含むアルミニウム合金の溶湯を精製容器内で冷却する冷却工程を含み、
前記アルミニウム合金の組成は、前記不純物元素を含む不純物を初晶として晶出させる組成であり、
前記冷却工程は、前記溶湯に回転磁場を付与することにより前記溶湯を撹拌しながら行うことで、前記不純物を前記精製容器の中心部から壁面側に移動させる
製造方法。
【請求項2】
前記冷却工程において、前記精製容器の外周部における回転磁場の回転速度が1rps以上100rps以下である
請求項1の製造方法。
【請求項3】
前記冷却工程において、前記精製容器の外周部における磁束密度が10mT以上である
請求項1の製造方法。
【請求項4】
前記冷却工程においては、前記不純物の晶出が開始する温度よりも前記溶湯の温度が高い状態から冷却を開始する
請求項1の製造方法。
【請求項5】
前記不純物元素は、シリコン、鉄、マンガン、クロム、マグネシウム、銅、チタンおよび亜鉛のうち1種以上を含む
請求項1の製造方法。
【請求項6】
前記冷却工程の後に、前記精製容器の壁面側に移動した前記不純物を除去する除去工程を含む
請求項1の製造方法。
【請求項7】
前記冷却工程においては、固相率が100%となる温度以下まで前記溶湯を冷却し、
前記除去工程においては、前記精製容器の壁面側に移動した前記不純物を切除により除去する
請求項6の製造方法。
【請求項8】
前記冷却工程においては、固液共存温度域内の温度になるまで前記溶湯を冷却し、
前記除去工程においては、前記溶湯から前記精製容器の壁面側に移動した前記不純物を分離することで、当該不純物を除去する
請求項6の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムと不純物元素とを含む溶湯から高純度の精製アルミニウム合金を製造する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源や低環境負荷社会の実現という社会的課題への取り組みとして、金属スクラップから有用性の高い金属を精製する技術の開発が盛んに行われている。一般的に、リサイクルを繰り返すことで再生地金中の不純物元素濃度は増加する。したがって、再生地金への不純物元素の混入を可能な限り抑制することが、金属資源を恒常的に利用するために重要である。
【0003】
アルミニウムは、新地金を製造する際に多量のエネルギーを必要とする。それに対し、スクラップの再溶解に必要なエネルギーは低いことから、リサイクルによる温室効果ガス排出量の削減効果が高いのが特徴的である。一方で、アルミニウムはスクラップに含まれる不純物元素の除去が難しいという実情もある。
【0004】
そこで、不純物元素を含有するアルミニウム合金の溶湯中の不純物元素濃度を低減する各種の技術が提案されている。例えば、特許文献1-4の技術では、アルミニウム合金の溶湯に所定の元素を意図的に添加することで、不純物元素濃度を低減する技術が開示されている。
【0005】
具体的には、特許文献1には、アルミニウム合金の溶湯から晶出する金属間化合物と同じ組成を持つ微粒子を溶湯に添加し、微粒子を核形成の起点に不純物元素を金属間化合物として晶出させ、成長した金属間化合物を分離することでアルミニウム溶湯を精製する精製方法が記載されている。
【0006】
特許文献2には、鉄を含有するアルミニウム合金の溶湯に、ジルコニウムとマンガンをジルコニウム/マンガン比で0.5~1.5の範囲で添加することで、鉄を含有する金属間化合物の形成が促進する効果を利用して、金属間化合物の分離および除去によりアルミニウム溶湯を精製する精製方法が記載されている。
【0007】
特許文献3には、不純物元素を含有するアルミニウム合金の溶湯に、マグネシウムまたはマグネシウム合金を添加することにより、不純物元素を含有する金属間化合物の形成が促進する効果、および、マグネシウムが直接不純物元素と金属間化合物を形成する効果を利用して、金属間化合物の分離・除去によりアルミニウム溶湯を精製する精製方法が記載されている。
【0008】
特許文献4には、鉄を1.5%以上含むアルミニウム―ケイ素系合金の溶湯にマンガンを添加し、凝固時に晶出した初晶の鉄を含む金属間化合物を遠心力により偏析凝固し、相対的に鉄濃度が低くなった内周側の未凝固のアルミニウム合金溶湯を回収することにより、アルミニウム溶湯を精製する精製方法が記載されている。
【0009】
しかし、特許文献1に開示の技術では、金属間化合物の微粒子を溶湯に添加する必要があるため、微粒子製造のコストと手間がかかるという問題がある。また、添加した金属間化合物の溶解を防ぐために溶湯の詳細な温度制御が必要である。
【0010】
特許文献2に開示の技術では、添加したマンガンやジルコニウムがすべて鉄と金属間化合物を形成することは難しいため、添加元素が溶湯に濃縮し、かえって不純物元素濃度が増加するおそれがある。
【0011】
特許文献3に開示の技術では、アルミニウム合金溶湯に対して11wt%以上の多量のマグネシウムを添加し溶解する工程が必要であり、溶湯の濃度を制御しなければならない。また、得られるアルミニウムはマグネシウムを含むため、再生地金の用途は制限される。
【0012】
特許文献4に開示の技術では、マンガンを添加した溶融金属を保持する容器を高速で回転する必要があるため、溶融金属に加わる強い物理的エネルギーにより炉壁耐火物の損耗が問題となる。そして、炉壁耐火物の損耗に伴い介在物が発生することが懸念される。また、溶融金属を保持する容器の回転機構の導入が必要であるため、大型化には限界があり、大量処理には不向きである。
【0013】
以上の通り、アルミニウム合金の溶湯に所定の元素を添加する特許文献1-4の技術では、上記のような各種の問題があった。そこで、アルミニウム合金の溶湯に所定の元素を添加することなく、不純物元素濃度を低減する技術(特許文献5,6)が提案されている。
【0014】
具体的には、特許文献5には、アルミニウム合金の溶湯に直流電流と直角方向に直流磁場をかけて電磁気力を発生させ、金属間化合物に電磁アルキメデス力を作用させることで溶融金属から不純物元素を含む金属間化合物を分離し、不純物元素を除去する精製方法が記載されている。
【0015】
特許文献6には、回転磁場の印加により溶湯を水平回転させることで液相アルミニウムとの比重差を利用して不溶性介在物を遠心分離し、容器の底部に沈降させ除去する精製方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平5-295466号公報
【特許文献2】特開平9-235631号公報
【特許文献3】特開2019-183265号公報
【特許文献4】特開平8-35021号公報
【特許文献5】特開平8-60263号公報
【特許文献6】特開平7-207361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、特許文献5に開示の技術では、溶湯に直接電極を挿入し金属に通電する必要があるため、融点が高い金属には適用が難しい。それだけでなく、電極材質からの介在物の混入を抑制するために、電極材料と溶湯との反応性を考慮する必要がある。
【0018】
特許文献6に開示の技術では、回転磁場を用いて溶湯を撹拌するため、撹拌子からの介在物混入のおそれはない。しかし、遠心分離による精製効率は液相と固相の比重差に依存するため、分離すべき固相と液相の比重が近い場合には、効率よく分離精製することが難しいという問題があった。すなわち、高純度の精製アルミニウム合金を得るという観点からは、改善の余地があった。
【0019】
以上の事情を考慮して、本発明では、介在物が混入する可能性が十分に抑制され、精製アルミニウム合金を高純度で製造可能である精製アルミニウム合金の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
[1]本発明の製造方法は、精製アルミニウム合金を製造する方法であって、精製対象であるアルミニウムと、当該アルミニウム以外の不純物元素とを含むアルミニウム合金の溶湯を精製容器内で冷却する冷却工程を含み、前記アルミニウム合金の組成は、前記不純物元素を含む不純物を初晶として晶出させる組成であり、前記冷却工程は、前記溶湯に回転磁場を付与することにより前記溶湯を撹拌しながら行うことで、前記不純物を前記精製容器の中心部から壁面側に移動させる。
【0021】
[2]上記[1]の製造方法は、前記冷却工程において、前記精製容器の外周部における回転磁場の回転速度が1rps以上100rps以下である。
【0022】
[3]上記[1]または[2]の製造方法は、前記冷却工程において、前記精製容器の外周部における磁束密度が10mT以上である。
【0023】
[4]上記[1]から[3]の何れかの製造方法は、前記冷却工程においては、前記不純物の晶出が開始する温度よりも前記溶湯の温度が高い状態から冷却を開始する。
【0024】
[5]上記[1]から[4]の何れかの製造方法は、前記不純物元素は、シリコン、鉄、マンガン、クロム、マグネシウム、銅、チタンおよび亜鉛のうち1種以上を含む。
【0025】
[6]上記[1]から[5]の何れかの製造方法は、前記冷却工程の後に、前記精製容器の壁面側に移動した前記不純物を除去する除去工程を含む。
【0026】
[7]上記[6]の製造方法は、前記冷却工程においては、固相率が100%となる温度以下まで前記溶湯を冷却し、前記除去工程においては、前記精製容器の壁面側に移動した前記不純物を切除により除去する。
【0027】
[8]上記[6]の製造方法は、前記冷却工程においては、固液共存温度域内の温度になるまで前記溶湯を冷却し、前記除去工程においては、前記溶湯から前記精製容器の壁面側に移動した前記不純物を分離することで、当該不純物を除去する。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る製造方法によれば、介在物が混入する可能性が十分に抑制され、精製アルミニウム合金を高純度で製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施形態に係る製造方法で得られた凝固体の模式的な平面図である。
図2】実施例で使用した回転磁場付与装置の模式図である。
図3】実施例に係る凝固体における観察断面の模式図であり。
図4】実施例1および比較例1に係る観察断面の写真である。
図5】実施例1および比較例1に係る観察断面(外周部および中心部)におけるシリコン濃度を示すグラフである。
図6】実施例2および比較例2に係る観察断面の写真である。
図7】実施例2および比較例2に係る観察断面(外周部および中心部)における鉄濃度を示すグラフである。
図8】実施例3および比較例3に係る観察断面の写真である。
図9】実施例3および比較例3に係る観察断面(外周部および中心部)におけるマンガン濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係る精製アルミニウム合金の製造方法は、アルミニウム合金の溶湯を精製容器内で冷却する冷却工程を含む。そして、本発明に係る冷却工程は、溶湯に回転磁場を付与しながら行う。すなわち、溶湯の冷却に並行して回転磁場の付与が実行される。回転磁場の付与の詳細については、後述する。
【0031】
以下の説明では、精製前のアルミニウム合金を単に「アルミニウム合金」と表記し、精製後の高純度なアルミニウム合金を「精製アルミニウム合金」と表記する。
【0032】
アルミニウム合金は、精製対象であるアルミニウムと、不純物元素とを含む。例えば、アルミニウム合金を含む金属スクラップ等を溶融温度以上に加熱することで溶湯を得る。すなわち、アルミニウム合金の溶湯では、アルミニウムと不純物元素とが溶融状態にある。
【0033】
アルミニウム合金の組成は、不純物元素を含む不純物を初晶として晶出させる組成である。すなわち、不純物が晶出する温度は、アルミニウムが晶出する温度よりも高い。不純物とは、不純物元素そのものと、当該不純物元素を含む金属間化合物との双方を含む。不純物として、不純物元素そのものおよび金属間化合物の何れか一方を含んでもよいし、双方を含んでもよい。
【0034】
不純物元素は、アルミニウム以外の元素である。具体的には、不純物元素は、例えば、シリコン、鉄、マンガン、クロム、マグネシウム、銅、チタンおよび亜鉛などの元素のうち1種以上が例示される。貴金属の1種以上やレアメタルの1種以上が不純物元素に含まれていてもよい。なお、不純物が金属間化合物である場合には、例えば、アルミニウムと、以上に列挙した1種以上の不純物元素とを含む金属間化合物または以上に列挙した2種以上の不純物元素を含む金属間化合物である。
【0035】
アルミニウム合金の溶湯における不純物元素濃度は、不純物(不純物元素または不純物元素を含む金属間化合物)を初晶として晶出させる濃度であれば特に限定されない。溶湯中の不純物元素濃度の目安としては、例えば、不純物元素がシリコンである場合には、シリコンは13wt%以上であり、不純物元素がシリコンおよび鉄の2元素である場合には、シリコン10wt%に対して鉄が2wt%以上であり、不純物元素がシリコンおよびマンガンの2元素である場合には、シリコン10wt%に対してマンガンは1wt%以上の範囲を例示することができる。
【0036】
以上の説明から理解される通り、不純物元素は、当該不純物元素を含む不純物を初晶として晶出させることが可能であれば、種類および濃度は任意である。
【0037】
溶湯を収容する精製容器は、典型的には円柱状であり、溶湯を保持することが可能であれば特に限定されず、公知の坩堝などを幅広く使用することができる。具体的には、精製容器としては、例えば、アルミナ坩堝、黒鉛坩堝またはSUS製坩堝が例示される。
【0038】
冷却工程における溶湯の冷却方法は、特に限定されず、例えば自然空冷や公知の冷却器を使用した空冷が採用される。なお、冷却工程において溶湯温度を一定に保持しなくてもよく、経時的に溶湯温度が低下すればよい。
【0039】
以下の説明では、冷却工程を開始する時点の溶湯の温度を「開始温度」と表記する。開始温度は、回転磁場の付与を開始する時点の溶湯の温度であるとも換言できる。
【0040】
開始温度は、例えば、溶湯が固液共存状態である温度の領域(以下「固液共存温度域」という)を上回る温度である。固液共存温度域は、溶湯に含まれる不純物元素の種類や濃度に応じて適宜に異なり得る。例えば、不純物元素としてシリコンおよび鉄の2元素を含む場合には、固液共存温度域として570℃~650℃の範囲が例示される。
【0041】
開始温度は、不純物を適切に分離する観点からは、不純物の晶出が開始する温度以上であることが好ましい。具体的には、開始温度は、例えば、不純物の晶出が開始する温度よりも10℃以上高い温度であり、好ましくは50℃以上高い温度であり、より好ましくは80℃以上高い温度である。不純物の晶出が開始する温度は、例えば、不純物元素がシリコンと鉄との2元素を含む場合には600~700℃程度であり、不純物元素がシリコンとマンガンとの2元素を含む場合には600~750℃程度である。
【0042】
以上の説明から理解される通り、冷却工程においては、不純物の晶出が開始する温度よりも溶湯の温度が高い状態から冷却を開始することが好ましい。なお、実際には、アルミニウム合金を溶湯にした直後に冷却工程を開始するため、開始温度はアルミニウム合金の溶融温度程度(例えば溶融温度±50℃の範囲)となる。
【0043】
そして、本発明に係る冷却工程は、溶湯に回転磁場を付与することにより当該溶湯を撹拌しながら行う。回転磁場とは、S極とN極との対が中点または中心軸を中心に回転しているかのように極性が変化する磁場をいう。
【0044】
回転磁場を溶湯に付与する装置は、公知の回転磁場付与装置を適宜に使用することができる。回転磁場は、例えば精製容器の外側から回転磁場付与装置により溶湯に付与される。例えば、3つのステータコイルを具備する回転磁場付与装置が採用される。精製容器の周囲に沿って等間隔(周方向に沿って120°間隔)で配置された3つのステータコイルに交流電流を流すことで、溶湯に回転磁場が付与される。なお、溶湯の温度は、例えば温度センサにより連続的に把握される。
【0045】
冷却工程が回転磁場の付与とともに開始した後、初晶として不純物(不純物元素または不純物元素を含む金属間化合物)が晶出する温度まで低下すると、まず、不純物の晶出が開始する。不純物が晶出する際に、回転磁場の付与により溶湯が回転していると、溶湯中の溶融金属にはローレンツ力が作用する。晶出する不純物が溶融金属よりも導電性が低い場合には、溶融金属中に存在する固体は周りの金属から斥力を受ける。そして、斥力を受けた固体は、溶融金属に作用するローレンツ力の方向とは逆の方向に移動する。冷却工程では、回転磁場が付与されることで、溶融金属に作用するローレンツ力が常に溶湯の中心方向に作用する。したがって、固体は溶湯の外周部に移動する。すなわち、溶湯中(すなわち精製容器内)において不純物が精製容器の壁面に向かって移動する。その結果、固液共存温度域では、精製容器の上方からみると、溶湯の外周部に晶出した不純物が位置し、溶湯の中心部に主に溶融金属が位置する状態になる。すなわち、溶湯から不純物が分離された状態になる。
【0046】
以上の説明から理解される通り、本発明の冷却工程は、回転磁場を付与することで溶湯を撹拌しながら行うことで、不純物を精製容器の中心部から壁面側に移動させる。
【0047】
精製容器の外周部における回転磁場の移動速度は、例えば0.1m/s以上10.0m/s以下であり、好ましくは0.5m/s以上8.0m/s以下であり、より好ましくは0.8m/s以上6.5m/s以下であり、さらに好ましくは1.0m/s以上6.0m/s以下である。なお、精製容器の外周部とは、精製容器内において当該精製容器の内壁面から10mm以内の部分を言う。回転磁場の移動速度が0.1m/s未満であると、溶湯の流動性が悪く、十分に不純物の分離効率を得られない可能性がある。一方で、回転磁場の移動速度が10.0m/sより大きい場合には、撹拌力が強く、精製容器面において溶湯の湯面が著しく上昇するため、溶湯を精製容器内に保持できない可能性がある。不純物の分離効率を良好にして、溶湯を精製容器内に保持する観点からは、精製容器の外周部における回転磁場の移動速度は上記の範囲内が好ましい。ただし、回転磁場の移動速度は、以上の例示には限定されず、不純物元素の種類や濃度および精製容器の径に応じて適宜に変更し得る。
【0048】
精製容器の外周部における回転磁場の回転速度は、例えば1rps以上100rps以下であり、好ましくは5rps以上80rps以下であり、より好ましくは10rps以上60rps以下である。回転磁場の回転速度が1rps未満であると、溶湯の流動性が悪く、十分に不純物の分離効率を得られない可能性がある。一方で、回転磁場の回転速度が100rpsより大きい場合には、撹拌力が強く、精製容器面において溶湯の湯面が著しく上昇するため、溶湯を精製容器内に保持できない可能性がある。不純物の分離効率を良好にして、溶湯を精製容器内に保持する観点からは、精製容器の外周部における回転磁場の回転速度は上記の範囲内が好ましい。ただし、回転磁場の回転速度は、以上の例示には限定されず、不純物元素の種類や濃度に応じて適宜に変更し得る。
【0049】
精製容器の外周部における磁束密度は、例えば10mT以上、好ましくは12mT以上であり、さらに好ましくは15mT以上である。磁束密度が10mT未満の場合には、十分な電磁分離力が得られない可能性がある。一方で、20Tより大きい磁束密度を発生するコイルを有する回転磁場付与装置の作成には大型の超電導コイルを設置する必要があり現実的ではない。不純物の分離効率を良好にする観点からは、精製容器の外周部における磁束密度は以上の範囲内が好ましい。ただし、磁束密度は、以上の例示には限定されず、不純物元素の種類や濃度に応じて適宜に変更し得る。
【0050】
そして、冷却工程は、溶湯の温度が開始温度から低下して不純物の晶出が開始した後に、さらに溶湯が目的となる温度(以下「目的温度」という)に低下するまで実行する。目的温度は、不純物の除去が可能になる温度であり、例えば、溶湯の固相率が100%に達する温度である。例えば不純物元素がシリコンおよび鉄の2元素である場合には、固相率が100%に達する温度は570℃付近である。なお、後述する除去工程において不純物を切除可能であれば、必ずしも溶湯の固相率が100%になる温度を目的温度としなくてもよい。
【0051】
溶湯が目的温度に到達すると、全て固相となる凝固体が得られる。溶湯が目的温度に到達するまで、回転磁場の付与も継続的に実行することが好ましい。すなわち、目的温度は、回転磁場の付与を終了する温度であるとも換言できる。図1は、凝固体の模式的な平面図である。図1に例示される通り、精製容器内の壁面側(凝固体における外周部)に不純物が移動した凝固体が得られる。一方で、凝固体における中心部には主にアルミニウムが位置する。
【0052】
なお、固液共存温度域や固相率が100%となる温度は、例えば公知の任意の熱力学計算ソフトやデータベース等から把握することができる。
【0053】
本発明に係る製造工程は、壁面側に移動した不純物を除去する除去工程を含んでもよい。除去工程では、例えば、冷却工程で得られた凝固体のうち壁面側に移動した不純物を切除(例えば切削や研削)することで、当該不純物を除去する。不純物を除去すると、高純度の精製アルミニウム合金が得られる。本発明の製造方法で得られた精製アルミニウム合金中のアルミニウムの濃度は、例えば75%以上であり、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上である。例えば、アルムニウム合金の組成がAl-20wt%SiおよびAl-10wt%Si-2wt%Mnの場合は、精製アルミニウム合金中のアルミニウムの濃度は、それぞれ88%および90%以上である。
【0054】
本発明に係る製造方法によれば、例えば電極を溶湯内に挿入する構成(例えば特許文献5)と比較して、介在物の混入による溶湯の汚染を抑制して精製アルミニウム合金を製造することができる。また、本発明の製造方法は、遠心分離により不純物を分離する構成(例えば特許文献6)と比較して、比重差の違いが分離効率には影響しないため、より高純度な精製アルミニウム合金が得られる。また、遠心分離法の適用が難しい不純物元素の除去ができるという利点もある。
【0055】
なお、本発明において、冷却工程における目的温度は、溶湯の固相率が100%に達する温度には限定されない。除去工程において、溶湯の温度が固液共存温度域にある場合に、不純物の除去を行う構成も想定される。具体的には、冷却工程においては、固液共存温度域内の温度になるまで溶湯を冷却し、除去工程においては、溶湯(すなわち固液共存状態にある溶湯)から精製容器の壁面側に移動した不純物を分離することで、当該不純物を除去する。以上の構成における除去工程では、公知の除去方法を用いて不純物を除去することができる。例えば、磁性体部材を溶湯に挿入することで金属間化合物(不純物)を選択的に着磁することにより除去する方法、または、耐熱フィルタを用いて精製容器の壁面に設けられた排出口から金属間化合物(不純物)をろ過する方法が例示される。以上の構成においては、目的温度は、固液共存温度域内の任意の温度であり、上記の公知の除去方法において一般的に採用される温度である。
【0056】
本発明では精製容器内の壁面側に不純物が移動するから、磁性体部材を用いて金属間化合物を選択的に着磁して除去する工程で用いる場合には、磁性体部材の挿入位置を不純物に対応する位置に限定できる。したがって、不純物の回収効率が向上するという利点がある。また、耐熱フィルタを用いて金属間化合物をろ過する方法を除去工程で用いる場合においても、精製容器内の壁面側に移動した不純物を、排出口から耐熱フィルタを介して、効率的に除去できるという利点がある。なお、不純物を除去した後の溶湯は、固相率が100%となる温度(すなわち高純度のアルミニウムの固相からなる精製アルミニウム合金が得られる温度)までさらに低下させてもよい。
【0057】
以上の説明から理解される通り、目的温度は、除去工程に応じても適宜に変更される場合があり、固液共存温度域内の任意の温度であってもよいし、固液共存温度域を下回る温度であってもよい。ただし、冷却工程において固相率が100%となる温度まで低下させる構成によれば、切除により不純物を除去できるという利点がある。
【0058】
本発明の精製アルミニウム合金の製造方法は、以上の実施形態に限定されることはない。
【実施例0059】
以下、本発明の精製アルミニウム合金の製造方法について、実施例とともに詳述する。ただし、本発明の精製アルミニウム合金の製造方法は、以下の実施例には限定されない。
【0060】
[実施例1]
Al-20.3%Si合金を材料として使用した。窒化ホウ素を塗布した内径50mm、外径60mmのSUS製坩堝(Φ50mm)にAl-20.3%Si合金約100gを入れ、電気炉で850℃まで加熱して溶融状態の溶湯を得た。
【0061】
溶湯表面のドロスを除去後、坩堝を電気炉から取り出し、回転磁場付与装置からの回転磁場が付与される位置に設置した。図2は、実施例で使用した回転磁場付与装置の模式図である。図2に例示される通り、精製容器の外側から回転磁場を付与できるように、回転磁場付与装置を設置した。回転磁場付与装置として3相4極交流モータのステータコイルを使用した。回転磁場付与装置はインバータを接続される。なお、溶湯の温度は、溶湯内に挿入された熱電対により確認した。
【0062】
そして、回転磁場付与装置により溶湯に回転磁場を付与して撹拌をしながら自然放冷により凝固を行った。回転磁場の付与は、坩堝を回転磁場付与装置に置いてから溶湯温度が500℃に冷却されるまで継続して付与し続けた。そして、実施例1に係る凝固体(直径50mm,高さ20mm)を得た。精製容器の外周部における磁束密度は18mT~25mTであった。
【0063】
なお、精製容器の外周部における磁場の移動速度を0.8m/s(=5rps),3.1m/s(=20rps),6.3m/sと(=40rps)した場合のそれぞれについて凝固体を得た。移動速度は、回転磁場の周波数を10Hz,40Hz,80Hzに制御することで変化させた。
【0064】
凝固体を周方向に沿って4等分に切断し、そのうちの一つを底部から10mmの高さの位置で水平に切り出し、鏡面研磨した断面(以下「観察断面」という)の組織を観察した。図3に、観察断面を説明する模式図を図示する。
【0065】
図4は、実施例1に係る3つの凝固体(移動速度:0.8m/s,3.1m/s,6.3m/s)の観察断面および外周部における組織を拡大した写真である。なお、図4には、回転磁場を付与しないこと以外は実施例1と同様の条件で得た凝固体(以下「比較例1」という)についても示されている。写真において、輝度の高い組織がα-アルミニウムであり、輝度の低い組織がシリコンである。
【0066】
図1に示したように、回転磁場を付与しない比較例1では、デンドライトの初晶シリコンが観察断面の全体にわたり分布しており、初晶シリコンが外周部と中心部とにわたり存在した。初晶シリコン間にはα-アルミニウムとシリコンとの共晶組織が形成されている。
【0067】
それに対して、回転磁場を付与した実施例1に係る3つの凝固体では、比較例1と比較して、中心部におけるシリコンの割合が少なく、初晶シリコンが外周部に偏在化することが確認された。特に、0.8m/sおよび3.1m/sの回転磁場を付与した凝固体では、以上の効果が顕著であった。
【0068】
図5は、比較例1と実施例1(移動速度:3.1m/s)との凝固体について、外周部と中心部とにおけるシリコン濃度を走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法により測定した結果である。外周部は、凝固体の外周縁から5mmの領域であり、中心部は、凝固体の中心から10mm(半径)の円の領域である。外周部と中心部とについて、それぞれ1.8×1.4 mm2の範囲で5点組成分析を行い、平均値をもとめた。図5のエラーバーは最小値と最大値とを示す。回転磁場を付与しない比較例1では、外周部と中心部とにおけるシリコン濃度は、それぞれ約24.5%および約19.0%であった。
【0069】
それに対して、移動速度3.1m/sの回転磁場を付与した場合では、外周部と中心部とにおけるシリコン濃度は、それぞれ約36.0%および約14.0%であり、外周部にシリコン濃度の濃縮が認められた。すなわち、外周部にシリコンが偏在することが確認された。
【0070】
[実施例2]
Al-10.1%Si-2.1%Fe合金を材料として使用した。実施例2において使用した回転磁場付与装置およびSUS製坩堝は、実施例1と同様である。窒化ホウ素を塗布したSUS製坩堝にAl-10.1%Si-2.1%Fe合金約100gを入れ、電気炉で720℃まで加熱して溶融状態の溶湯を得た。
【0071】
溶湯表面のドロスを除去後、坩堝を電気炉から取り出し、図2に示すように設置した後に、回転磁場を付与して溶湯を撹拌しながら自然放冷により凝固を行った。回転磁場の付与は、坩堝を回転磁場付与装置に置いてから溶湯温度が500℃に冷却されるまで継続して付与し続けた。そして、実施例2に係る凝固体(直径50mm,高さ20mmの)を得た。精製容器の外周部における磁束密度は18mT~25mTであった。
【0072】
なお、精製容器の外周部における磁場の移動速度を0.8m/s(=5rps),3.1m/s(=20rps),6.3m/s(=40rps),9.4m/s(=60rps)とした場合のそれぞれについて凝固体を得た。移動速度は、回転磁場の周波数を10Hz,40Hz,80Hz,120Hzに制御することで変化させた。そして、実施例1(図3)と同様に、得られた凝固体を切断して、観察断面の組織を観察した。
【0073】
図6は、実施例2に係る4つの凝固体(移動速度:0.8m/s,3.1m/s,6.3m/s,9.4m/s)の観察断面および外周部における組織を拡大した写真である。なお、図6には、回転磁場を付与しないこと以外は実施例2と同様の条件で得た凝固体(以下「比較例2」という)についても示されている。写真において、輝度の高い組織がα-アルミニウム相であり、輝度の低い針状の組織がβ-AlSiFe金属間化合物であり、中間の輝度を持つ組織が共晶シリコンである。
【0074】
図6に示したように、回転磁場を付与しない比較例2では、デンドライトのα-アルミニウムが全体にわたり存在し、当該デンドライト間に共晶Siとβ-AlSiFe金属間化合物とが存在する。
【0075】
それに対して、回転磁場を付与した実施例2に係る4つの凝固体では、α-アルミニウム相が等軸粒化する傾向があることが確認された。特に、移動速度が3.1m/s以上の凝固体では、β-AlSiFe金属間化合物が分離し、坩堝壁面近くの外周部に偏在する傾向があることが確認された。移動速度が9.4m/sになると、外周部にβ-AlSiFe金属間化合物が分離はされているものの、凝固体の中心部に部分的にβ-AlSiFe金属間化合物の存在が認められた。
【0076】
図7は、比較例2と実施例2(移動速度:6.3m/s)との凝固体について、外周部と中心部とにおける鉄濃度を走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法により分析した結果である。外周部は、凝固体の外周縁から5mmの領域であり、中心部は、凝固体の中心から10mm(半径)の円の領域である。外周部と中心部とについて、それぞれ1.8×1.4 mm2の範囲で5点組成分析を行い、平均値をもとめた。図7のエラーバーは最小値と最大値とを示す。回転磁場を付与しない比較例2では、外周部へのβ-AlSiFe金属間化合物の偏在化は認められず、鉄濃度は外周部と中心部とでそれぞれ約1.8%および約1.9%でありほぼ等しかった。
【0077】
それに対して、移動速度6.3m/sの回転磁場を付与した場合では、外周部と中心部との鉄濃度はそれぞれ約3.5%および約1.2%であり、外周部にβ-AlSiFe金属間化合物の濃縮が認められた。すなわち、外周部にβ-AlSiFe金属間化合物が偏在することが確認された。
[実施例3]
Al-10.1%Si-1.6%Mn-0.3%Fe合金を材料として使用した。実施例3において使用した回転磁場付与装置およびSUS製坩堝は、実施例1と同様である。窒化ホウ素を塗布したSUS製坩堝にAl-10.1%Si-1.6%Mn-0.3%Fe合金約100gを入れ、電気炉で800℃まで加熱して溶融状態の溶湯を得た。
【0078】
溶湯表面のドロスを除去後、坩堝を電気炉から取り出し、図2に示すように設置した後に、回転磁場を付与して溶湯を撹拌しながら自然放冷により凝固を行った。回転磁場の付与は、坩堝を回転磁場付与装置に置いてから溶湯温度が500℃に冷却されるまで継続して付与し続けた。そして、実施例3に係る凝固体(直径50mm,高さ20mmの)を得た。精製容器の外周部における磁束密度は18mT~25mTであった。
【0079】
なお、精製容器の外周部における磁場の移動速度を0.8m/s(=5rps),3.1m/s(=20rps),6.3m/s(=40rps),9.4m/s(=60rps)とした場合のそれぞれについて凝固体を得た。移動速度は、回転磁場の周波数を10Hz,40Hz,80Hz,120Hzに制御することで変化させた。そして、実施例1(図3)と同様に、得られた凝固体を切断して、観察断面の組織を観察した。
【0080】
図8は、実施例3に係る4つの凝固体(移動速度:0.8m/s,3.1m/s,6.3m/s,9.4m/s)の観察断面および外周部における組織を拡大した写真である。なお、図8には、回転磁場を付与しないこと以外は実施例3と同様の条件で得た凝固体(以下「比較例3」という)についても示されている。この写真において、輝度の高い組織がα-アルミニウム相であり、輝度の低い多角形状の組織がα-AlSiMn金属間化合物であり、中間の輝度を持つ組織が共晶シリコンである。
【0081】
図8に示したように、回転磁場を付与しない比較例3では、デンドライトのα-アルミニウム相が全体にわたり存在し、当該デンドライト間に共晶シリコンとα-AlSiMn金属間化合物が存在する。
【0082】
これに対して、回転磁場を付与した実施例3に係る4つの凝固体では、α-アルミニウム相が等軸粒化する傾向があることが確認され、α-AlSiMn金属間化合物が坩堝壁面近くの外周部に偏在する傾向があることが確認された。移動速度が9.4m/sになると、外周部にα-AlSiMn金属間化合物の偏在は確認されるものの、中心部に部分的にα-AlSiMn金属間化合物の形成が認められた。
【0083】
図9は、比較例3と実施例3(移動速度:6.3m/s)との凝固体について、外周部と中心部とにおけるマンガン濃度を走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法により分析した結果である。外周部は、凝固体の外周縁から5mmの領域であり、中心部は、凝固体の中心から10mm(半径)の円の領域である。外周部と中心部とについて、それぞれ1.8×1.4 mm2の範囲で5点組成分析を行い、平均値をもとめた。図9のエラーバーは最小値と最大値とを示す。回転磁場を付与しない比較例3では、外周部へのα-AlSiMn金属間化合物の偏在化は認められず、マンガン濃度は外周部と中心部ともに約1~2%と等しかった。
【0084】
それに対して、移動速度6.3m/sを付与した場合には、外周部と中心部とのマンガン濃度はそれぞれ約8.6%および約0.5%であり、外周部にマンガン濃度の濃縮が認められた。すなわち、外周部にα-AlSiMn金属間化合物が偏在することが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9