(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055680
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/24 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
G01N29/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162787
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 寛
(72)【発明者】
【氏名】吉田 慎
(72)【発明者】
【氏名】柘植 穂高
(72)【発明者】
【氏名】荻 博次
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA12
2G047BC20
2G047GA02
(57)【要約】
【課題】振動子の保持位置としての位置ずれを抑制することで、測定精度を向上することができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】柱形状を有しつつ、中心軸方向に伸縮、振動し、超音波の発振、受振を行う振動子と、筒形状を有しつつ、筒内に振動子を振動可能に支持する振動子ケースと、を超音波診断装置に設け、振動子に、柱形状の側面に他の部位よりも小径に設定された係止部を設け、振動子ケースに、筒内壁に係止部と軸方向に係合する係合部を設ける。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱形状を有しつつ、軸方向に伸縮、振動し、超音波の発振、受振を行う振動子と、
筒形状を有しつつ、筒内に該振動子を振動可能に支持する振動子ケースと、
を備え、
該振動子は、
柱形状の側面に他の部位よりも小径に設定された係止部を備え、
該振動子ケースは、
筒内壁に該係止部と軸方向に係合する係合部を備える
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記係合部は、
前記振動子ケースの筒内壁に周方向に延在する内周溝と、
該内周溝に嵌入されつつ、前記係止部と筒軸方向に係合する環状部材と、
を備える
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記係止部は、
共振時の前記振動子の軸方向における節が発生する部位に配置された
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記振動子の外径は、
前記振動子ケースの内径よりも小さく設定された
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記振動子ケースを筒軸方向に沿って付勢する付勢手段を備える
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記振動子の被測定物に当接する端部に前記振動子よりも硬質な超硬トップを備える
ことを特徴とする超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いて被測定物の性状を判定する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、超音波を用いて被測定物の性状を判定することが行われている。
たとえば、特許文献1では、被測定物として、ゴム、樹脂、食材、食品を被測定物が設定されている。
そして、これら被測定物にプローブの振動子を押し当てて、超音波を発振、受振し、硬さを測定する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された構成では、振動子を被測定物に押し付けた際に、振動子がプローブの内部に押し込まれてしまうおそれがある。
そして、振動子がプローブの内部に押し込まれた場合には、検出素子に対して振動子の位置がずれてしまい、測定精度が低下してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、前述の点に鑑みてなされたものであり、振動子の保持位置としての位置ずれを抑制することで、測定精度を向上することができる超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するために、本発明に係る超音波診断装置は、柱形状を有しつつ、軸方向に伸縮、振動し、超音波の発振、受振を行う振動子と、筒形状を有しつつ、筒内に該振動子を振動可能に支持する振動子ケースと、を備え、該振動子は、柱形状の側面に他の部位よりも小径に設定された係止部を備え、該振動子ケースは、筒内壁に該係止部と軸方向に係合する係合部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、振動子の保持位置としての位置ずれを抑制することで、測定精度を向上することができる超音波診断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】プローブの待機形態を示し、
図1のII-II線に沿った断面図である。
【
図3】プローブの待機形態を示し、
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】プローブの待機形態を示し、
図2のIV部を示す要部拡大図である。
【
図5】プローブの診断形態を示し、
図1のII-II線に沿った断面図である。
【
図6】プローブの診断形態を示し、
図2のIV部を示す要部拡大図である。
【
図8】超音波診断時の発振と受振の波形を示すグラフである。
【
図9】変形例1の振動子と振動子ケースを示し、前端側から振動子を見た平面図である。
【
図10】変形例2の振動子と振動子ケースを示し、前端側から振動子を見た平面図である。
【
図11】変形例3の振動子と振動子ケースを示し、軸線方向に沿った断面図である。
【
図13】変形例4の振動子と振動子ケースを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1実施形態の超音波診断装置Sについて、
図1~
図8を参照して詳細に説明する。
なお、説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
また、以下の説明においては、「前」「後については、特別に断らない限り、
図2における左側が「前」、右側が「後」を指すものとする。
【0010】
超音波診断装置Sは、センサ部を構成するプローブPBを被測定物TGに押し当て、プローブPBが振動するにあたり、被測定物TGとの接触によって振動子の振動形態の変化を検出する。
本実施形態では、プローブPBについて説明する。
【0011】
プローブPBは、診断作業の作業性を高めるために、装置本体(図示せず)から分かれて操作可能に構成されている(
図1~
図4参照)。
プローブPBは、把持体1、センサ20、振動子ケース30、付勢手段を備えている。
把持体1は、作業者がプローブPBを取り扱う際に把持する部位である。
把持体1は、前側ケース10、後側ケース12を備えている。
【0012】
前側ケース10は、前側本体11、前側カバー13で構成されている。
前側本体11は、細筒部11aと太筒部11bとで、段付きの円筒形状を有している。
なお、前側ケース10の筒軸は、プローブPBの前後方向に沿って延在している。
前側本体11は、その筒内部に、振動子ケース30、センサ20が配置されている。
【0013】
細筒部11aは、前側本体11の前端側の円筒部を構成し、太筒部11bは、細筒部11aよりも大径に設定され、且つ前側本体11の後端側の円筒部を構成している。
つまり、細筒部11aと太筒部11bとは、それぞれの筒軸が一致しつつ、筒軸方向に沿って直列に一体となっている。
なお、細筒部11a内を貫通する細筒孔11aaの孔径は、太筒部11b内を貫通する太筒孔11baの孔径よりも小さく設定されている。
つまり、前側本体11は、内部の筒孔も段付きに形成されている。
また、細筒部11aは、その外周に、後述するコイル23が巻回されている。
【0014】
前側カバー13は、細筒部11aに巻回されるコイル23の外周を覆い、保護するための構成である。
前側カバー13は、前側本体11に着脱可能に取り付けられている。
これにより、コイル23のメンテナンス性が高められている。
【0015】
後側ケース12は、前側ケース10の太筒部11bよりも大径な円筒形状を有している。
後側ケース12は、その前端部に、前側ケース10の太筒部11bが挿入されている。
そして、後側ケース12と前側ケース10とは、接続ピン14を用いて結合されている。
【0016】
接続ピン14は、軸状の部材からなり、後側ケース12を貫通しつつ、前側ケース10に挿嵌されている。
接続ピン14は、当該形状に限定されるものではなく、前側ケース10と後側ケース12とを結合することが可能であれば、ねじで螺合するなど、様々な形態を適宜採用することが可能である。
【0017】
次に、振動子ケース30について説明する(
図1~
図4参照)。
振動子ケース30は、後述する振動子21を前後方向(筒軸方向)に移動可能に支持するための構成である。
振動子ケース30は、支持筒部31と摺動筒部33とで、段付きの円筒形状を有している。
支持筒部31は、その筒内に振動子21を支持するための構成である。
支持筒部31の外径、および摺動筒部33の外径は、それぞれに対応する細筒孔11aa、および太筒孔11baと略同一寸法に設定されており、特に摺動筒部33の外径は対応する太筒孔11baと近しい滑り隙間設計とすることで、ガタつくことなく移動可能に配置されている。
【0018】
また、支持筒部31は、その前端に、係合部が設けられている。
係合部は、支持筒部31前端の全周に亘って、径方向内側に向かって突出する円環状の突起(以下、係合環32と称する)で構成されている。
係合環32は、後述する縮径溝21a(係止部)に嵌入しつつ、筒軸方向(前後方向)に係合している。
【0019】
次に、センサ20について説明する(
図4~
図8参照)。
センサ20は、超音波の発振と受振を行うための構成である。
センサ20は、振動子21、コイル23を備えている。
振動子21には、単結晶の水晶からなり、円柱形状に形成されている。
振動子21を構成する単結晶の水晶は、電場によって一時的に変形する圧電性を有している。
そして、電場の強度を周期的に変化させることで、振動子21は振動し、超音波を発振する。
【0020】
振動子21は、結晶の方向が、電場の変化による縦振動によって、円柱形状の軸方向に伸縮するように、結晶の塊から切り出されている。
そして、振動子21は、軸方向に伸張する際に、径方向に収縮し、軸方向に収縮する際に、径方向に拡径する。
また、振動子21を円柱形状とすることで、コイル23との距離の関係で感度を出しやすく、かつケース類を円柱で製造する際に容易にできる。
なお、振動子を構成する素材として、本実施形態では、水晶の単結晶を採用しているが、これに限定するものではない。
電気機械結合係数、圧電定数(係数)、誘電率、ヤング率、Q値などについて、条件を満たす素材であれば、適宜採用することができる。
そして、前述の条件を満たす素材として、たとえば、ランガサイト、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸鉛、四ホウ酸リチウム、タンタル酸リチウムなどが挙げられる。
また、振動子21には、縮径溝21a(係止部)と称する矩形溝が、形成されている。
【0021】
縮径溝21a(係止部)は、振動子21の外周に、軸周りの周方向に沿って環状に形成されている。
縮径溝21aは、係合環32(係合部)が嵌入しつつ、軸方向に係合可能な溝幅に設定されている。
縮径溝21a(係止部)の位置は、振動子21が1次共振の状態で、軸方向に伸縮が生じない「節」の位置に設定されている。
つまり、縮径溝21aは、振動子21の軸方向中央部に形成されている。
【0022】
また、振動子21は、その軸径(以下、振動子径D21と称する)が、振動子ケース30の支持筒部31の筒孔径(以下、支持孔径D31と称する)よりも僅かに小さく設定されている。
これにより、振動子21と支持筒部31との間には、僅かな隙間が形成されている。
そして、この支持筒部31と振動子21との隙間をガイド部35と称する。
【0023】
また、振動子21は、その前端に、超硬トップ22が設置されている。
超硬トップ22は、振動子21(水晶のビッカース硬度:HV1103)よりも硬度の高い素材(たとえば、ダイヤモンド(HV7140~HV15300)、炭化ケイ素(HV2350)、サファイア(HV2300)など)が採用されている。
超硬トップ22は、硬度が高ければ高いほど、受振の感度が高まることが認められている。
【0024】
コイル23は、振動子21の周囲の電場を変化させて、振動子21を振動させ、超音波を発振するための構成である(
図7参照)。
また、コイル23は、超音波によって、振動子21が振動することで、変化する振動子21の周囲の電場を検出するための構成である。
コイル23は、3本の導線(発振用の導線、受振用の導線、アース用の導線)で構成されている。
コイル23は、これら3本の導線を細筒部11aの外周に巻回することで構成されている。
【0025】
次に、付勢手段について説明する(
図2、
図5参照)。
付勢手段は、振動子21、および振動子ケース30を前方へ付勢するための構成である。
付勢手段は、一対の磁石41で構成されている。
一方の磁石41Fは、振動子ケース30の後端に設置され、他方の磁石41Rは、後側ケース12内に設置されている。
【0026】
また、これら一対の磁石41は、互いに反発力を発するように、同極(N極とN極、またはS極とS極)が対向するように配置されている。
そして、反発力によって、振動子ケース30を前方に押し出すように構成されている。
【0027】
また、他方の磁石41Rは、磁石ケース42に収容された状態で、後側ケース12内に設置されている。
そして、他方の磁石41Rは、磁石ケース42内における軸方向の位置が調整可能となっている。
一対の磁石41同士の間隔を調整することで、振動子ケース30を前方に押し出す力の大きさを調整することができる。
【0028】
なお、一対の磁石41(付勢手段)の反発力は、振動子21の後端を前方に押すのではなく、振動子ケース30の係合環32を介して、振動子21の中央部を前方に押すように作用する。
このため、1次共振において、振動子21を節のみで支持することになり、振動子21の自由振動として解析を行うことができる。
【0029】
<超音波診断装置の働き>
次に、超音波診断装置SのプローブPBを用いた診断手順について説明する。
プローブPBは、診断操作前後の形態(以下、待機形態と称する)と、診断操作時の形態(以下、診断形態と称する)とに変形する(
図1~
図8参照)。
待機形態では、一対の磁石41の反発力で、振動子21の前端が前側ケース10から突出している(
図1~
図4参照)。
【0030】
診断形態は、診断作業者によって、プローブPBが被測定物TGに押し付けられた状態である(
図5、
図6参照)。
診断形態では、振動子21の超硬トップ22の前端と、前側ケース10の前端とが、前後方向において、ほぼ一致している。
なお、診断形態において、振動子21の縮径溝21aは、コイル23の前後方向の中央に位置するように、振動子21の前後方向の寸法、およびコイル23の位置が設定されている。
また、診断形態における振動子21に対するコイル位置は、必ずしも中央でなくともよく、中央から端部までの間で高感度に検査できるように適宜設定が可能である。
【0031】
診断作業者は、待機形態のプローブPBの前端を被測定物TGの測定箇所に押し付け、プローブPBは、診断形態に変形する。
プローブPBの前端を被測定物TGの測定箇所に押し付けた状態では、振動子21は、その軸線が被測定物TGの表面に対して略垂直となっている。
診断作業者は、診断形態を維持しつつ、超音波診断装置Sの診断を開始する(
図8参照)。
超音波診断装置Sは、所定の周波数範囲をスイープしつつ、発振と受振とを交互に繰り返す。
【0032】
超音波診断装置Sは、既定の発振と受振とが終了したことを確認し、診断を終了する。
診断作業者は、診断が終了したことを確認し、プローブPBを被測定物TGから離す。
被測定物TGから離れたプローブPBは、一対の磁石41の反発力によって、振動子21が前側ケース10から飛び出し、待機形態に変形する。
【0033】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態のプローブPBでは、振動子21の円柱形状の側面に、他の部位よりも小径に設定された縮径溝21a(係止部)を備えている。
また、振動子ケース30は、支持筒部31の筒内壁に、縮径溝21a(係止部)と軸方向に係合する係合環32(係合部)を備えている。
そして、縮径溝21aと係合環32とが係合することで、振動子ケース30内における振動子21の位置が規定される。
これによって、診断中における振動子21の保持位置としての位置ずれが抑制され、測定精度を向上することができる。
【0034】
また、本実施形態では、振動子21の縮径溝21a(係止部)が、1次共振時の振動子21の軸方向における節が発生する部位に配置されている。
つまり、縮径溝21aは、振動子21の軸方向中央部に形成されている。
そして、縮径溝21aを介して、振動子21は、振動子ケース30に支持されている。
これによって、振動子21の振動を妨げることなく振動子ケース30が振動子21を支持することができる。
これによって、超音波を効率よく発振することができるとともに、超音波を高感度で受振することができる。
【0035】
本実施形態では、振動子21の振動子径D21(外径)が振動子ケース30の支持孔径(内径)よりも小さく設定されている。
そして、振動子21と振動子ケース30との間の隙間を介して、振動子ケース30の内壁にガイド部35に設定している。
これによって、振動子21が振動中の径方向の拡縮を妨げることなく、振動子21を支持することができる。
また、ガイド部35を設定することで、縮径溝21aを中心とする揺動を抑制しつつ、振動子を支持することができる。
【0036】
本実施形態では、振動子ケース30を前方(筒軸方向)に付勢する一対の磁石41(付勢手段)を備えている。
また、振動子21を前方に付勢しつつ、振動子21が突没可能に構成されている。
これによって、振動子21の保持位置としての位置ズレを抑制できる。さらに、振動子21を押し付けた際の磁石41間の距離を均一に保つことが可能となり、検査時の荷重が安定するため、荷重によって変わる検査誤差を低減することができる。
【0037】
また、適切な押し付け力で、振動子21を被測定物に当接させることができることから、振動子21の振動を妨げずに超音波の発振と受振とを行うことができる。
さらに、振動子21の前端と、前側ケース10前端とが、前後方向において、ほぼ一致した状態で診断を行うことで、センサ20が被測定物TGの表面に対して略垂直に押し当てられ、被測定物TGの性状評価における精度が向上する。
これによって、被測定物TGとの接触による振動子21の振動形態の変化を効率よく受振することができるため、測定精度を向上させることができる。
【0038】
本実施形態では、振動子21の前端(被測定物TGに当接する端部)に振動子21よりも硬質な超硬トップ22が設けられている。
これにより、被測定物TGの振動をより正確に受振することができるため、測定感度を高めることができる。
【0039】
なお、本実施形態では、係合部が、係合環32で構成されている。
このような構成とすることで、振動子21とコイル23との間隔を狭めることができる。
これによって、コイル23への入出力のロスを低減することができるため、計測感度を向上することができる。
【0040】
また、本実施形態の超音波診断装置Sでは、被測定物の硬度を測定しているが、硬度測定に限定するものではない。
プローブを被測定物に押し付けた状態で、振動子が超音波を発振、受振する形態の超音波診断装置であれば、適宜採用することが可能であり、同様の作用効果を得ることができる。
【0041】
さらに、本実施形態では、振動子21が前後方向に移動可能に、振動子ケース30に支持され、作業者による押付けによって、振動子21が突没する形態になっているが、このような形態に限定するものではない。
プローブPBを被測定物に押し付けない形態の超音波診断装置Sにおいても採用が可能である。
プローブPBを被測定物に押し付けない形態の場合でも、プローブPBを誤って落下させる等、プローブPBに衝撃が加わるような状況で、振動子21の位置ズレが抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態では、振動子21が、磁歪性を有する素材で構成されているが、これに限定するものではない。
たとえば、振動子に電歪性を有する素材を採用することが可能である。
なお、電歪性とは、電圧が掛かることで一時的に変形する性質である。
【0043】
次に、振動子21、および係合部の変形例(以下、変形例1、2と称する)について説明する(
図9、
図10参照)。
なお、説明において、前述の実施形態と同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0044】
変形例1では、前述の実施形態のプローブPBと比較して、振動子51の形状、および振動子ケース30の係合部の構成が異なる(
図9参照)。
前述の実施形態の振動子21は、円柱形状を有しているが、変形例1の振動子51は、四角柱形状を有している。
なお、振動子51の軸方向中央部に縮径溝21aを備える構成は、前述の実施形態と同様である。
【0045】
四角柱形状の振動子21を採用することに伴い、振動子ケース30の係合部は、係合環32ではなく、係合爪52で構成されている。
係合爪52は、振動子21の四角柱形状の4つの側面に対向して形成され、各係合爪52が、縮径溝21aに嵌入している。
そして、係合爪52が、縮径溝21aに嵌入することで、振動子ケース30と振動子51とが、筒軸方向に係合するとともに、振動子51の軸周りの回転が規制される。
そして、このような構成に係合部を変更しても、前述の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、振動子51を四角柱形状とすることで、振動子51を結晶の塊から切り出す作業を簡便に行うことができる。
【0046】
変形例2では、前述の実施形態のプローブPBと比較して、振動子51の形状が異なる(
図10参照)。
前述の実施形態の振動子21は、円柱形状を有しているが、変形例2の振動子51は、変形例1と同様に、四角柱形状を有している。
なお、振動子51の軸方向中央部に縮径溝21aを備える構成は、前述の実施形態と同様である。
また、振動子ケース30の係合部は、前述の実施形態と同様に、係合環32で構成されている。
そして、係合環32が、縮径溝21aにおける四角柱形状の角部分に嵌入し、振動子ケース30と振動子51とが、筒軸方向に係合している。
なお、このような構成に係合部を変更しても、前述の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0047】
次に、係合部の変形例(以下、変形例3と称する)について説明する(
図11、
図12参照)。
なお、説明において、前述の実施形態と同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
変形例3では、前述の実施形態のプローブPBと比較して、係合部の構成が異なる。
前述の実施形態の係合部としての係合環32は、支持筒部31前端の全周に亘って、径方向内側に向かって突出する円環状の突起で構成されている。
【0048】
これに対して、変形例3の係合部は、内周溝61と、Oリング62(環状部材)とで構成されている。
なお、振動子21が円柱形状を有し、軸方向中央部に縮径溝21a(係止部)を備える構成は、前述の実施形態と同様である。
内周溝61は、振動子ケース30の内周面に、筒軸周りに延在する環状の矩形溝で構成されている。
【0049】
Oリング62は、内周溝61内に配置され、内周溝61の溝壁に対して、前後方向に係合している。
また、Oリング62は、内周溝61内に設置された状態で、その内径側が内周溝61から径方向内側へはみ出すように設定されている。
そして、Oリング62は、内周溝61からはみ出した内径側の部位が、振動子21の縮径溝21aに嵌入され、縮径溝21aの溝壁に対して、前後方向に係合している。
つまり、振動子21に凹形状(縮径溝21a)を設け、振動子ケース30に凸形状(内周溝61、Oリング62)を設けて、筒軸方向に係合させている。
【0050】
このような構成に係合部を変更しても、前述の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、Oリング62は、内周溝61と縮径溝21aに係合することで、振動子21の保持位置としての位置ずれをより抑制でき、測定精度をさらに向上できる。
さらに、Oリング62は、内周溝61に着脱可能なため、分解しやすく、メンテナンス性に優れている。
また、振動子21が円柱形状を有していることから、Oリング62の取り扱いが容易になっている。
そして、Oリング62を介して振動子21を支持することで、径方向の拡縮、振動を妨げることなく、筒軸方向の移動を規制することができる。
【0051】
なお、プローブPBを組み立てる際に、Oリング62を縮径溝21aに設置した後に、振動子21を振動子ケース30内に挿嵌する構成とすることも可能である。
つまり、振動子21に凸形状を設け、振動子ケース30に凹形状を設けて、筒軸方向(前後方向)に係合させる構成とすることも可能である。
このように、筒軸方向に係合可能な構成であれば、適宜採用することが可能であり、前述の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0052】
次に、係合部の変形例(以下、変形例4と称する)について説明する(
図13参照)。
なお、説明において、前述の実施形態と同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
前述の実施形態の係合部としての係合環32は、支持筒部31前端の全周に亘って、径方向内側に向かって突出する円環状の突起で構成されている。
これに対して、変形例4は、前述の実施形態の振動子ケース30の支持筒部31に対して、軸方向に沿ったスリット71が複数形成されている。
つまり、断面円弧状の板ばね72によって、円筒形状が形成されている。
そして、板ばね72の先端に設けられた係合突起73(係合部)が、振動子21の縮径溝21aに係合し、振動子ケース30内における振動子21の軸方向の移動が規制される。
【0053】
このような形態とすることで、振動子ケース30に振動子21を組付ける際に、板ばね72が撓み、振動子21の振動子ケース30への組付けが、前述の実施形態よりも容易になる。
また、板ばね72の周囲が細筒部11aに囲まれているために、組立後は板ばね72が撓めないため、振動子21の脱落し難さ、および軸方向の係合の強度は、前述の実施形態と同様である。
なお、振動子21が円柱形状を有し、軸方向中央部に縮径溝21a(係止部)を備える構成は、前述の実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0054】
S 超音波診断装置
21 振動子
21a 縮径溝
TG 被測定物
22 超硬トップ
30 振動子ケース
32 係合環(係合部)
41 一対の磁石(付勢手段)
61 内周溝(係合部)
62 Oリング(係合部、環状部材)