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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005577
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】樹脂組成物、塗料、及び物品
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/442 20060101AFI20240110BHJP
   C08L 83/10 20060101ALI20240110BHJP
   C09D 183/10 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C08G77/442
C08L83/10
C09D183/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105813
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】三上 明音
(72)【発明者】
【氏名】桐澤 理恵
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
4J246
【Fターム(参考)】
4J002CP171
4J002EZ046
4J002FD156
4J002GH01
4J002HA05
4J038DL131
4J038NA04
4J038NA05
4J038NA14
4J038NA26
4J246AA03
4J246AA11
4J246AB02
4J246AB12
4J246BA12X
4J246BA14X
4J246BB022
4J246BB02X
4J246BB271
4J246BB27X
4J246CA24X
4J246CA40X
4J246EA05
4J246FA071
4J246FA371
4J246FA431
4J246FA77
4J246FB101
4J246GB04
4J246GC07
4J246GC37
4J246GC46
4J246GC47
4J246HA22
(57)【要約】
【課題】貯蔵安定性に優れ、塗膜外観、密着性、耐候性、耐溶剤性、及び耐汚染性に優れる塗膜を形成可能な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリシロキサン複合樹脂及び炭化水素系有機溶剤を含有する樹脂組成物であって、前記ポリシロキサン複合樹脂が、ビニル重合体(A)とポリシロキサン(B)とが結合した複合樹脂であり、前記ビニル重合体(A)が、加水分解性シリル基及び/またはシラノール基を有するビニル重合体(a1)と前記ビニル重合体(a1)以外のビニル重合体(a2)とを含むものであり、前記ビニル重合体(a1)の溶解度パラメータ(SP1)と前記ビニル重合体(a2)の溶解度パラメータ(SP2)との差(SP差)が、0.1~1.5(cal/cm1/2であることを特徴とする樹脂組成物を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル重合体セグメント(A)とポリシロキサンセグメント(B)とが結合してなる複合樹脂(AB)のポリシロキサンセグメント(B)と、トリアルコキシシランの縮合物(c)由来のポリシロキサンセグメント(C)とが珪素-酸素結合を介して結合している複合樹脂(ABC)が、炭化水素系有機溶剤中に溶解又は分散している樹脂組成物であって、前記ビニル重合体セグメント(A)が、加水分解性シリル基及び/またはシラノール基を有するビニル重合体(a1)と前記ビニル重合体(a1)以外のビニル重合体(a2)とを含むビニル重合体(a)に由来するものであり、前記ビニル重合体(a1)の溶解度パラメータ(SP1)と前記ビニル重合体(a2)の溶解度パラメータ(SP2)との差(SP差)が、0.1~1.5(cal/cm1/2であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記ビニル重合体セグメント(A)と前記ポリシロキサンセグメント(B)との結合が、前記ビニル重合体(a)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基とポリシロキサンの有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基との縮合結合である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリシロキサンセグメント(B)が下記一般式(1)及び/又は(2)の構造を有するものである請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【化1】

【化2】

(一般式(1)及び(2)中、Rは珪素原子に結合した炭素原子数が4~12の有機基であり、R及びRは、それぞれ独立して、珪素原子に結合したメチル基又は珪素原子に結合したエチル基である。)
【請求項4】
請求項1又は2記載の樹脂組成物を含有することを特徴とする塗料。
【請求項5】
請求項4記載の塗料の塗膜を有することを特徴とする物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、塗料、及び物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭化水素溶剤系塗料は、造膜性、速乾性に優れ、寒冷地や屋根用途を中心に各種塗料用途に利用されてきた。このような塗料に低汚染機能を付加した塗料として、ポリオール樹脂分散液、硬化剤、及びシラン化合物の縮合物を含有する上塗り塗料組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、構造物・高層住宅の塗り替え需要を背景に塗膜の長寿命化を図るため超高耐候性が求められる中、上記塗料組成物から得られる塗膜では耐候性が不足するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3877040号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、貯蔵安定性に優れ、塗膜外観、密着性、耐候性、耐溶剤性、及び耐汚染性に優れる塗膜を形成可能な樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のポリシロキサン複合樹脂が炭化水素系有機溶剤中に溶解又は分散している樹脂組成物は、貯蔵安定性に優れ、得られる硬化塗膜は、外観、密着性、耐候性、耐溶剤性、及び耐汚染性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、ビニル重合体セグメント(A)とポリシロキサンセグメント(B)とが結合してなる複合樹脂(AB)のポリシロキサンセグメント(B)と、トリアルコキシシランの縮合物(c)由来のポリシロキサンセグメント(C)とが珪素-酸素結合を介して結合している複合樹脂(ABC)が、炭化水素系有機溶剤中に溶解又は分散している樹脂組成物であって、前記ビニル重合体セグメント(A)が、加水分解性シリル基及び/またはシラノール基を有するビニル重合体(a1)と前記ビニル重合体(a1)以外のビニル重合体(a2)とを含むビニル重合体(a)に由来するものであり、前記ビニル重合体(a1)の溶解度パラメータ(SP1)と前記ビニル重合体(a2)の溶解度パラメータ(SP2)との差(SP差)が、0.1~1.5(cal/cm1/2であることを特徴とする樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、貯蔵安定性に優れ、得られる塗膜の外観、密着性、耐候性、耐溶剤性、及び耐汚染性に優れることから、外壁、屋根、ガラス、化粧板等の建築物の内外装材;コンクリート構造物の補修用途、防音壁、排水溝等の土木部材;テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等の家電製品の筐体;パソコン、スマートフォン、携帯電話、デジタルカメラ、ゲーム機等の電子機器の筐体;プリンター、ファクシミリ等のOA機器の筐体;自動車、鉄道車輌等の各種車輌の内外装材;産業機械等の各種コーティング用途に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の樹脂組成物は、ビニル重合体セグメント(A)とポリシロキサンセグメント(B)とが結合してなる複合樹脂(AB)のポリシロキサンセグメント(B)と、トリアルコキシシランの縮合物(c)由来のポリシロキサンセグメント(C)とが珪素-酸素結合を介して結合している複合樹脂(ABC)が、炭化水素系有機溶剤中に溶解又は分散している樹脂組成物であって、前記ビニル重合体セグメント(A)が、加水分解性シリル基及び/またはシラノール基を有するビニル重合体(a1)と前記ビニル重合体(a1)以外のビニル重合体(a2)とを含むビニル重合体(a)に由来するものであり、前記ビニル重合体(a1)の溶解度パラメータ(SP1)と前記ビニル重合体(a2)の溶解度パラメータ(SP2)との差(SP差)が、0.1~1.5(cal/cm1/2であるものである。
【0010】
まず、複合樹脂(ABC)について説明する。前記複合樹脂(ABC)は、ビニル重合体セグメント(A)とポリシロキサンセグメント(B)とが結合してなる複合樹脂(AB)のポリシロキサンセグメント(B)と、トリアルコキシシランの縮合物(c)由来のポリシロキサンセグメント(C)とが珪素-酸素結合を介して結合しているものである。
【0011】
前記複合樹脂(ABC)としては、例えば、前記ポリシロキサンセグメント(B)が前記ビニル重合体セグメント(A)の側鎖に化学的に結合したグラフト構造を有する複合樹脂や、前記ビニル重合体セグメント(A)の末端に前記ポリシロキサンセグメント(B)が化学的に結合したブロック構造を有する複合樹脂のポリシロキサンセグメント(B)と、トリアルコキシシランの縮合物(c)由来のポリシロキサンセグメント(C)とが珪素-酸素結合を介して化学的に結合した構造を有する複合樹脂が挙げられる。
【0012】
前記複合樹脂(ABC)が有する、前記ビニル重合体セグメント(A)と前記ポリシロキサンセグメント(B)との化学的な結合としては、例えば、下記一般式(3)あるいは(4)の結合様式等が挙げられ、なかでも一般式(3)の結合様式を有する複合樹脂を使用することが、耐候性に優れた塗膜を形成できることから好ましい。
【0013】
【化1】

(一般式(3)中の炭素原子は前記ビニル重合体セグメント(A)の一部分を構成し、珪素原子と酸素原子は前記ポリシロキサンセグメント(B)の一部分を構成するものである。)
【0014】
【化2】

(一般式(4)中の炭素原子は前記ビニル重合体セグメント(A)の一部分を構成し、珪素原子と酸素原子は前記ポリシロキサンセグメント(B)の一部分を構成するものである。)
【0015】
前記複合樹脂(ABC)としては、貯蔵安定性、得られる塗膜の外観、密着性、耐候性、耐溶剤性、耐汚染性がより向上することから、前記ビニル重合体セグメント(A)と前記ポリシロキサンセグメント(B)との結合が、前記ビニル重合体セグメント(A)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基と前記ポリシロキサンセグメント(B)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基との縮合結合であることが好ましい。
【0016】
前記ビニル重合体セグメント(A)は、前記ポリシロキサン複合樹脂(ABC)が前記炭化水素系溶剤中に安定に分散し、優れた貯蔵安定性及び塗膜外観を有する上で、加水分解性シリル基及び/またはシラノール基を有するビニル重合体(a1)と前記ビニル重合体(a1)以外のビニル重合体(a2)とを含むビニル重合体(a)に由来するものであり、前記ビニル重合体(a1)の溶解度パラメータ(SP1)と前記ビニル重合体(a2)の溶解度パラメータ(SP2)との差(SP差)が、0.1~1.5(cal/cm1/2であることが重要である。
【0017】
前記ビニル重合体(a)が加水分解性シリル基及び/またはシラノール基を有する前記ビニル重合体(a1)を含むことで、前記ポリシロキサンセグメント(B)やその合成原料が有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基と容易に加水分解縮合して前記一般式(3)の結合様式で化学結合することができる。なお、前記ビニル重合体(a2)は、加水分解性シリル基及び/またはシラノール基を有していても、有していなくてもよい。
【0018】
前記SP差は、SP1とSP2との差の絶対値である。また、ビニル重合体の溶解度パラメータの値((cal/cm1/2)は、ホモポリマーのSP値に質量比をかけ合わせた値の足し合わせにより算出したものであり、具体的には次式により算出することができる。なお、ホモポリマーのSP値はJournal ofPaint Technology、第42巻、第541号、第76頁(1970)にK.L.Hoyが記述した文献に記載された数値を採用する。
SP1=ΣSP(m)*X(m)
SP(m):ビニル重合体(a1)を構成する各単量体のホモポリマーのSP値
X(m):各単量体の組成質量比
ΣX(m)=1
SP2=ΣSP(n)*X(n)
SP(n):ビニル重合体(a2)を構成する各単量体のホモポリマーのSP値
X(n):各単量体の組成質量比
ΣX(n)=1
【0019】
前記加水分解性シリル基としては、加水分解されることによって珪素原子に結合した水酸基(シラノール基)を生成することが可能な官能基であれば良く、例えば、珪素原子に結合したハロゲン原子、珪素原子に結合したアルコキシ基、珪素原子に結合したアシロキシ基、珪素原子に結合したフェノキシ基、珪素原子に結合したメルカプト基、珪素原子に結合したアミノ基、珪素原子に結合したアミド基、珪素原子に結合したアミノオキシ基、珪素原子に結合したイミノオキシ基、珪素原子に結合したアルケニルオキシ基等が挙げられ、なかでも加水分解反応を容易に進行でき、また、反応後の副生成物を容易に除去できることから、珪素原子に結合したアルコキシ基が好ましい。
【0020】
前記ビニル重合体(a1)中の加水分解性シリル基及び/またはシラノール基は、0.012~1.2mol/kgが好ましく、0.012~0.6mol/kgがより好ましい。
【0021】
前記ビニル重合体セグメント(A)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、加水分解性シリル基やシラノール基以外のその他の官能基を有していてもよい。前記その他の官能基としては、例えば、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、カルボン酸無水基、水酸基、ブロックされた水酸基、シクロカーボネート基、エポキシ基、カルボニル基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基、ポリエチレングリコール基、及びポリプロピレングリコール基、及び、下記一般式(5)で示される基等が挙げられる。
【0022】
【化3】
【0023】
前記複合樹脂(ABC)を構成する、ポリシロキサンセグメント(B)としては、例えば、珪素原子結合の水酸基及び/又は加水分解性基を有するポリシロキサンに由来のセグメントが挙げられる。なお、前記珪素原子に結合した加水分解性基としては、前記ビニル重合体セグメント(A)において記載した珪素原子に結合した加水分解性基と同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
【0024】
前記ポリシロキサンセグメント(B)としては、なかでも下記一般式(1)や(2)で示される構造を有するものが好ましい。下記一般式(1)や(2)で示される構造を有する前記ポリシロキサンセグメントは、三次元網目状のポリシロキサン構造を有することから、得られる塗膜は、耐溶剤性、耐候性などに優れたものである。
【0025】
【化4】
【0026】
【化5】

(一般式(1)及び(2)中、Rは珪素原子に結合した炭素原子数が4~12の有機基であり、R及びRは、それぞれ独立して珪素原子に結合したメチル基又は珪素原子に結合したエチル基である。なお、Rとしては、珪素原子に結合した炭素原子数が4~12の炭化水素基であることが好ましく、フェニル基又は炭素原子数4のアルキル基であることがより好ましい。R及びRは、いずれも珪素原子に結合したメチル基又は珪素原子に結合したエチル基であることが好ましく、いずれも珪素原子に結合したメチル基であることがより好ましい。)
【0027】
前記一般式(1)や(2)で示される構造を有するポリシロキサンセグメントとしては、オルガノアルコキシシラン、好ましくは珪素原子に結合した炭素原子数が4~12の有機基(以下、「珪素原子結合の炭素原子数4~12の有機基」と略記する。)を有するモノオルガノトリアルコキシシラン、及び/又は、珪素原子に結合したメチル基及び/又は珪素原子に結合したエチル基(以下、「珪素原子結合のメチル基及び/又はエチル基」と略記する。)の2個を有するジオルガノジアルコキシシランを、加水分解縮合させて得られるポリシロキサンに由来のセグメントが挙げられる。これらポリシロキサンセグメントは、珪素原子結合の炭素原子数4~12の有機基と珪素原子結合の水酸基及び/又は加水分解性基、及び/又は、珪素原子結合のメチル基及び/又はエチル基の2個と珪素原子結合の水酸基及び/又は加水分解性基を有するものであり、線状、分岐状、環状のうちの、いずれの構造を有するものでもよい。
【0028】
前記珪素原子結合の炭素原子数4~12の有機基としては、例えば、いずれも珪素原子に結合した炭素原子数が4~12の、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。なお、これらの有機基は置換基を有するものであっても良い。
【0029】
かかる珪素原子結合の炭素原子数4~12の有機基としては、珪素原子に結合した炭化水素基が好ましく、例えば、いずれも珪素原子に結合した、n-ブチル基、iso-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ドデシル基、シクロヘキシルメチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、4-メチルフェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基などが挙げられ、なかでも珪素原子に結合したフェニル基又は珪素原子に結合した炭素原子数4のアルキル基がより好ましい。
【0030】
前記複合樹脂(ABC)を構成する、ポリシロキサンセグメント(C)は、トリアルコキシシランの縮合物(c)に由来のセグメントであり、ここで用いるトリアルコキシシランの縮合物(c)は、珪素原子に結合した水酸基及び/又は珪素原子に結合したアルコキシ基を有している。
【0031】
前記トリアルコキシシランの縮合物(c)としては、アルキル基の炭素原子数が1~3のアルキルトリアルコキシシランの縮合物が好ましい。アルキル基の炭素原子数が1~3のアルキルトリアルコキシシランと他のシラン原料とを併用する場合は、アルキル基の炭素原子数が1~3のアルキルトリアルコキシシランを60質量%以上含有する縮合物が好ましく、70質量%以上含有する縮合物がより好ましい。トリアルコキシシランの縮合物に由来のポリシロキサンセグメントは、三次元網目状のポリシロキサン構造を有することから、得られる塗膜は、耐溶剤性、耐候性などに優れたものである。
【0032】
前記複合樹脂(ABC)中のポリシロキサンセグメント含有量は、耐候性、耐汚染性等の観点から、5~80質量%が好ましく、10~75質量%がより好ましい。なお、前記ポリシロキサンセグメント含有量は、前記ポリシロキサンセグメント(B)と前記ポリシロキサンセグメント(C)とを合わせた含有量である。
【0033】
また、前記複合樹脂(ABC)中の前記ポリシロキサンセグメント(C)の含有量は、耐候性、耐汚染性などの観点から、10~60質量%が好ましく、20~50質量%がより好ましい。
【0034】
なお、ポリシロキサンセグメントの質量割合は、前記複合樹脂(ABC)の製造に使用する原料の仕込み質量より、加水分解性シリル基等を有する原料の加水分解縮合反応により生成しうるメタノールやエタノール等の副生成物の質量を除いた値である。
【0035】
前記複合樹脂(ABC)は、各種の方法で製造できるが、なかでも下記製造工程(I)及び(II)からなる工程で製造することが好ましい。
【0036】
製造工程(I)として、ビニル重合体(a)と、オルガノアルコキシシラン(b)及び/又はその加水分解縮合物(b1)とを加水分解縮合させて、ビニル重合体(a)由来のビニル重合体セグメント(A)とオルガノアルコキシシラン(b)由来のポリシロキサンセグメント(B)とが化学結合してなる複合樹脂(AB)を得る工程。
【0037】
製造工程(II)として、得られた複合樹脂(AB)とトリアルコキシシランの縮合物(c)を加水分解縮合させて、複合樹脂(AB)のポリシロキサンセグメント(B)と、トリアルコキシシランの縮合物(c)由来のポリシロキサンセグメント(C)とが珪素-酸素結合を介して結合している複合樹脂(ABC)を得る工程。
【0038】
前記製造工程における加水分解縮合反応は、各種の方法で反応を進行させることができるが、製造工程の途中で水と触媒とを供給することで反応を進行させる方法が簡便で好ましい。
【0039】
なお、前記加水分解縮合反応とは、前記加水分解性基の一部が水などの影響で加水分解され水酸基を形成し、次いで該水酸基や加水分解性基の間で進行する縮合反応をいう。
【0040】
前記ビニル重合体(a1)及び前記ビニル重合体(a2)は、例えば、珪素原子に結合した加水分解性基含有ビニル単量体と、その他のビニル単量体とを、前記炭化水素系有機溶剤中でラジカル重合させることによって製造することができる。なお、前記ビニル重合体(a2)における珪素原子に結合した加水分解性基含有ビニル単量体は任意原料である。
【0041】
前記ラジカル重合は、例えば、重合開始剤を含む炭化水素系有機溶剤中に、前記ビニル単量体を逐次供給、分割供給、または一括供給し、次いで、攪拌下、20~150℃の範囲で0.5~24時間程度行うことが好ましい。
【0042】
前記珪素原子に結合した加水分解性基含有ビニル単量体としては、例えば、下記一般式(6)で示す加水分解性基を有するビニル単量体を使用することができる。
【0043】
【化6】

(一般式(7)中のRはアルキル基、アリール基、アラルキル基等の1価の有機基であり、Rはハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基又はアルケニルオキシ基であり、nは0~2の整数である。)
【0044】
前記一般式(7)で示す加水分解性基を有するビニル単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリ(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、2-トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン等が挙げられ、なかでも加水分解反応を容易に進行でき、また反応後の副生成物を容易に除去することが可能なことから、ビニルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0045】
また、前記その他のビニル単量体は、特に限定されるものではなく、前記SP差が0.1~1.5(cal/cm1/2となる範囲で、その種類及び量を適宜選択することができる。
【0046】
前記その他のビニル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)ア、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の炭素原子数1~22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェニルエチル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート等のω-アルコキシアルキル(メタ)アクリレート;スチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;クロトン酸メチル、クロトン酸エチル等のクロトン酸のアルキルエステル;ジメチルマレート、ジ-n-ブチルマレート、ジメチルフマレート、ジメチルイタコネート等の不飽和二塩基酸のジアルキルエステル;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン;フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン等のフルオロオレフィン;エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-ビニルピロリドン等の3級アミド基含有単量体;
【0047】
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル;2-ヒドロキシエチルアリルエーテル、2-ヒドロキシブチルアリルエーテル等の水酸基含有アリルエーテル;これら炭素原子に結合した水酸基を含有するビニル系単量体とε-カプロラクトンなどのラクトンとの付加反応物;
【0048】
2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジ-n-プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、3-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、4-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]エチルモルホリン等の3級アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル;ビニルピリジン、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルキノリン等の3級アミノ基含有芳香族ビニル系単量体;N-(2-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ジ-n-プロピルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド等の3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド;N-(2-ジメチルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N-(4-ジメチルアミノ)ブチルクロトン酸アミド等の3級アミノ基含有クロトン酸アミド;2-ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2-ジエチルアミノエチルビニルエーテル、4-ジメチルアミノブチルビニルエーテル等の3級アミノ基含有ビニルエーテル等が挙げられる。
【0049】
前記ビニル重合体(a1)及び(a2)を製造する際に使用可能な重合開始剤としては、例えば、2,2′-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2′-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2′-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等のアゾ化合物;tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等の過酸化物等が挙げられる。
【0050】
前記炭化水素系有機溶剤としては、例えば、「マルカゾール R」(丸善石油株式会社製)、「スワゾール310」(丸善石油株式会社製)、「LAWS」(シェルジャパン株式会社製)、「HAWS」(シェルジャパン株式会社製)、「メルベイユ 30もしくは40」(出光興産株式会社)、「IPソルベント 1016もしくは16 20」(出光興産株式会社)、「Aソルベント」(ENEOS株式会社製)、「AFソルベント」(ENEOS株式会社製)、「エクソール D40、D60もしくはD80」(エクソンモービル社製)、「アイソパー E、GもしくはH」(エクソンモービル社製)などをはじめ、さらにはn-ヘキサンまたはn-ヘプタンなどのような、脂肪族炭化水素系溶剤が使用できる。なお、これらの炭化水素系溶剤は、単独使用でも、2種以上の併用でもよい。また、「スワゾール1500」(丸善石油株式会社製)、「T-SOL100もしくは150」(東燃ゼネラル石油株式会社製)等の芳香族系炭化水素溶剤などのその他の有機溶剤を併用することもできる。
【0051】
前記ビニル重合体(a1)及び(a2)を含むビニル重合体の重量平均分子量としては、貯蔵安定性、得られる塗膜の外観、密着性、耐候性、耐溶剤性、耐汚染性がより向上することから、5,000~300,000が好ましく、5,000~250,000がより好ましく、15,000~200,000がさらに好ましい。ここで、重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)測定に基づきポリスチレン換算した値である。
【0052】
次いで、前記製造工程(I)においてポリシロキサンセグメント(B)を構成するために用いるオルガノアルコキシシラン(b)及び/又はその加水分解縮合物(b1)について述べる。
【0053】
前記オルガノアルコキシシラン(b)としては、特に限定はないが、なかでも分散安定性に優れる複合樹脂(ABC)を製造することができ、且つ耐久性に優れた塗膜を形成することができることから、炭素原子数4~12の有機基を有するモノオルガノトリアルコキシシランと、メチル基及び/又はエチル基の2個を有するジオルガノジアルコキシシランがいずれも好ましい。
【0054】
前記オルガノアルコキシシラン(b)の加水分解縮合物(b1)は、オルガノアルコキシシラン(b)を加水分解縮合させたものであれば良く、特に限定はないが、珪素原子結合の炭素原子数4~12の有機基を有するモノオルガノトリアルコキシシラン、及び/又は、珪素原子結合のメチル基及び/又はエチル基の2個を有するジオルガノジアルコキシシランを加水分解縮合させたものがいずれも好ましい。
【0055】
前記珪素原子結合の炭素原子数4~12の有機基を有するモノオルガノトリアルコキシシランとしては、例えば、iso-ブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0056】
前記珪素原子結合のメチル基及び/又はエチル基の2個を有するジオルガノジアルコキシシランとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ-n-ブトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジアセトキシシラン等が挙げられる。
【0057】
これらオルガノアルコキシシラン(b)のなかでは、加水分解反応を容易に進行でき、また反応後の副生成物を容易に除去できることから、iso-ブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランが好ましい。また、これらオルガノアルコキシシラン(b)は、単独使用でも2種類以上の併用でもよい。
【0058】
なお、前記製造工程(I)では、オルガノアルコキシシラン(b)の加水分解縮合物(b1)を単独で用いることも十分可能であるが、加水分解縮合による複合樹脂(A′B)の製造が容易なことから、オルガノアルコキシシラン(b)の単独使用、又は、オルガノアルコキシシラン(b)とその加水分解縮合物(b1)の併用が好ましく、オルガノアルコキシシラン(b)の単独使用が特に好ましい。ここにおいて、オルガノアルコキシシラン(b)の単独使用とは、オルガノアルコキシシラン(b)のみを用いることであり、オルガノアルコキシシラン(b)を2種以上併用する場合も含む。
【0059】
前記製造工程(I)における加水分解縮合反応は、各種の方法で反応を進行させることができるが、前記製造工程(I)の途中で水と触媒とを供給することで反応を進行させる方法が簡便で好ましい。
【0060】
前記触媒としては、例えば塩酸、硫酸、燐酸等の無機酸;p-トルエンスルホン酸、燐酸モノイソプロピル、酢酸等の有機酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン酸エステル;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ-n-ブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、モノエタノールアミン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール等の塩基性窒素原子を含有する化合物;テトラメチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、ジラウリルジメチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩であって、対アニオンとして、クロライド、ブロマイド、カルボキシレート、ハイドロオキサイドなどを有する4級アンモニウム塩;ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、オクチル酸錫、ステアリン酸錫など錫カルボン酸塩等を、単独で使用又は2種以上併用することができる。
【0061】
前記触媒は、前記オルガノアルコキシシラン(b)及び/又はその加水分解縮合物(b1)100質量部に対して、0.0001~10質量部の範囲で使用することが好ましく、0.0005~3質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.001~1質量部の範囲で使用することが特に好ましい。
【0062】
また、前記加水分解縮合反応を進行させる際に使用する水は、前記オルガノアルコキシシラン(b)及び/又はその加水分解縮合物(b1)が有する加水分解性基及び水酸基の1モルに対して、0.05モル以上が適切であり、好ましくは0.1モル以上、特に好ましくは0.5~3.0モルである。
【0063】
前記触媒及び水は、一括供給でも逐次供給であってもよく、触媒と水とを予め混合したものを供給してもよい。
【0064】
前記加水分解縮合反応の反応温度は、0~150℃の範囲内が適切であり、好ましくは、20~100℃の範囲内である。また、反応の圧力としては、常圧、加圧下又は減圧下の、いずれの条件においても行うことができる。
【0065】
前記加水分解縮合反応において生成しうる副生成物であるアルコールや水は、得られる水性硬化性塗料組成物の安定性等を低下させる場合には、蒸留などの方法により除去してもよい。
【0066】
次いで、前記製造工程(II)においてポリシロキサンセグメント(C)を構成するために用いるトリアルコキシシランの縮合物(c)について、詳細に述べる。
【0067】
前記トリアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、iso-プロピルトリメトキシシラン等のアルキル基の炭素原子数が1~3のアルキルトリアルコキシシラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシドキシ基を有するトリアルコキシシランなどが挙げられ、これらの中でも、加水分解反応を容易に進行でき、また反応後の副生成物を容易に除去できることから、アルキル基の炭素原子数が1~3のアルキルトリアルコキシシランが好ましく、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシランがより好ましい。なお、これらのトリアルコキシシランは、単独使用でも2種類以上の併用でもよい。
【0068】
前記トリアルコキシシランからその縮合物(c)を得る方法としては、特に限定はなく、各種の方法が挙げられるが、水と触媒とを供給することで加水分解縮合反応を進行させる方法が簡便で好ましい。
【0069】
その際に使用する水と触媒については、前記製造工程(I)での加水分解縮合反応と同様の条件で使用することができる。
【0070】
また、前記製造工程(II)においては、前記トリアルコキシシランの縮合物(c)に加えて、その他のシラン化合物やその加水分解縮合物を併用することができる。
【0071】
前記その他のシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランもしくはテトラn-プロポキシシランなどの4官能アルコキシシラン化合物;、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン化合物;メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシランもしくはジフェニルジクロロシラン等のクロロシラン化合物;これらのシラン化合物の加水分解縮合物などが挙げられる。これらは、本発明の効果を損なわない範囲で併用することができる。
【0072】
前記4官能アルコキシシラン化合物やその加水分解縮合物を併用する場合には、前記ポリシロキサンセグメント(B)とポリシロキサンセグメント(C)を構成する全珪素原子100モル%に対して、該4官能アルコキシシラン化合物やその加水分解縮合物の有する珪素原子が、20モル%を超えない範囲で併用することが好ましい。
【0073】
本発明の樹脂組成物は、前記複合樹脂(ABC)が、脂肪族炭化水素系有機溶剤中に溶解又は分散しているものであるが、前記脂肪族炭化水素系有機溶剤としては、前記ビニル重合体(a1)及び(a2)の製造に使用できるものとして列挙した溶剤等を使用することができる。
【0074】
本発明の樹脂組成物中の有機溶剤は、製造の際の急激な粘度上昇を抑制し、かつ、樹脂組成物の生産性や、その塗工のしやすさや乾燥性等を向上する観点から、30~75質量%が好ましく、35~70質量%がより好ましい。
【0075】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて熱硬化性樹脂を含有させることも可能である。かかる熱硬化性樹脂としては、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、石油樹脂、ケトン樹脂、シリコン樹脂、あるいはこれらの変性樹脂等が挙げられる。
【0076】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて粘土鉱物、金属、金属酸化物、ガラス等の各種の無機粒子を使用することができる。金属の種類としては、金、銀、銅、白金、チタン、亜鉛、ニッケル、アルミニウム、鉄、シリコン、ゲルマニウム、アンチモン、それらの金属酸化物等が挙げられる。
【0077】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて光触媒性化合物や無機顔料、有機顔料、体質顔料、ワックス、界面活性剤、安定剤、流動調整剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤等の各種の添加剤等を使用することができる。
【0078】
また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて硬化触媒を含有させることも可能である。前記硬化触媒としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸カリウム、ナトリウムメチラート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、オクチル酸錫、オクチル酸鉛、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ジ-n-ブチル錫ジアセテート、ジ-n-ブチル錫ジオクトエート、ジ-n-ブチル錫ジラウレート、ジ-n-ブチル錫マレエート、p-トルエンスルホン酸、トリクロル酢酸、燐酸、モノアルキル燐酸、ジアルキル燐酸、モノアルキル亜燐酸、ジアルキル亜燐酸等を使用することができる。
【0079】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて硬化剤を配合することもできる。前記硬化剤としては、前記複合樹脂(ABC)が有する官能基と反応し得る官能基を有する化合物等を使用することができるが、例えば、シラノール基及び/または加水分解性シリル基を有する化合物、ポリエポキシ化合物、ポリオキサゾリン化合物、ポリカルボジイミド化合物、ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0080】
本発明の樹脂組成物は、貯蔵安定性に優れることから塗料や接着剤等の各種用途に使用することができる。なかでも、本発明の樹脂組成物は、塗膜外観、密着性、耐候性、耐溶剤性、及び耐汚染性優れた塗膜を形成できることから、塗料に使用することが好ましく、トップ層形成用塗料やプライマー層形成用塗料に使用することがより好ましい。
【0081】
前記塗料を塗布し塗膜を形成可能な基材としては、例えば、無機質基材、金属基材、プラスチック基材、ガラス基材、紙や木材基材、繊維質基材等が挙げられる。
【0082】
本発明の塗料は、例えば、それを前記基材表面に直接、塗布し、次いで乾燥、硬化させることによって、曝露試験後の塗膜外観、耐久性及び耐候性等に優れた塗膜を形成することができる。
【0083】
前記したような種々の基材上に、前記塗料を塗装し、硬化させることによって、塗装物を得ることができる。その際に、(1)前記塗料を基材に直接塗装する、(2)予め基材上に下塗り塗料を塗装してから、前記塗料を上塗り塗料として塗装する、(3)基材に下塗り塗料として前記塗料を塗装し、次いで別の上塗り塗料を塗装し塗膜を形成させる等の塗装方法により塗装物を得ることができる。
【0084】
本発明の塗料を塗装する方法としては、例えば、刷毛塗り、ローラー塗装、スプレー塗装、浸漬塗装、フロー・コーター塗装、ロール・コーター塗装、電着塗装等が挙げられる。
【0085】
また、前記(2)または(3)の塗装方法で前記塗料からなる塗膜を有する塗装物を得る場合、下塗り塗料や、上塗り塗料として、従来から知られているアクリル樹脂系塗料、ポリエステル樹脂系塗料、アルキド樹脂系塗料、エポキシ樹脂系塗料、脂肪酸変性エポキシ樹脂系塗料、シリコーン樹脂系塗料、ポリウレタン樹脂系塗料等を使用することができる。
【0086】
前記乾燥し硬化を進行させる方法としては、常温下で1~10日程度養生する方法であってもよいが、硬化を迅速に進行させる観点から、50~250℃の温度で、1~600秒程度加熱する方法が好ましい。また、比較的高温で変形や変色をしやすいプラスチック基材を用いる場合には、30~100℃程度の比較的低温下で養生を行うことが好ましい。
【0087】
本発明の塗料を用いて形成する塗膜の膜厚は、基材の使用される用途等に応じて、0.5~1,000μmとすることができる。
【0088】
上記のような方法により、本発明の塗料を用いて形成された塗膜を有する物品としては、例えば、外壁、屋根、ガラス、化粧板等の建築物の内外装材;コンクリート構造物の補修用途、防音壁、排水溝等の土木部材;テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等の家電製品の筐体;パソコン、スマートフォン、携帯電話、デジタルカメラ、ゲーム機等の電子機器の筐体;プリンター、ファクシミリ等のOA機器の筐体;自動車、鉄道車輌等の各種車輌の内外装材;産業機械等が挙げられる。
【実施例0089】
次に、本発明を、実施例及び比較例により具体的に説明をする。なお、樹脂の平均分子量は、下記のGPC測定条件で測定したものである。
【0090】
[GPC測定条件]
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度4mg/mLのテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の単分散ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0091】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0092】
使用した単量体のホモポリマーの溶解度パラメータは、下記の値を使用した。
メチルメタクリレート(MMA):9.23(cal/cm1/2
ノルマルブチルメタクリレート(n-BMA):8.25(cal/cm1/2
2-エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA):7.85(cal/cm1/2ノルマルブチルメタクリレート(n-BA):8.63(cal/cm1/2
2-ヒドロキシエチルメタクリレート(β―HEMA):9.90(cal/cm1/2
アクリル酸(AA):12.89(cal/cm1/2
アクリロニトリル(AN):10.56(cal/cm1/2
【0093】
(合成例1:ビニル重合体(a2-1)の合成)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、LAWS(シェルジャパン株式会社製)192質量部を仕込んで、110℃まで昇温した。次いで、2-エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)720質量部、ノルマルブチルメタクリレート(n-BMA)80質量部、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(TBPEH)16.0質量部からなる混合物を、同温度で、窒素ガスの通気下、撹拌しながら、前記反応容器中へ4時間かけて滴下した。その後、同温度で4時間撹拌し、不揮発分80質量%のビニル重合体(a2-1)の溶液を1000質量部調製した。このビニル重合体(a2-1)の溶解度パラメータは、7.9(cal/cm1/2であった。
【0094】
(合成例2:ビニル重合体(a-1)の合成)
合成例1と同様の反応容器に、合成例1で得たビニル重合体(a2-1)の溶液377質量部を仕込んで、110℃まで昇温した。次いで、n-BMA 209質量部、ノルマルブチルアクリレート(n-BA)90質量部、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPTS)3質量部、TBPEH 3.0質量部からなる混合物を、同温度で、窒素ガスの通気下、撹拌しながら、前記反応容器中へ4時間かけて滴下した。その後、同温度で4時間撹拌し、LAWS 314質量部を仕込んで更に30分間攪拌し、ビニル重合体(a2-1)及びトリメトキシシリル基を有するビニル重合体(a1-1)からなる、不揮発分60質量%のビニル重合体(a-1)の溶液を1000質量部調製した。なお、ビニル重合体(a1-1)の溶解度パラメータは、8.4(cal/cm1/2、ビニル重合体(a-1)の重量平均分子量は86,000であった。
【0095】
(合成例3:ビニル重合体(a-2)の合成)
合成例1と同様の反応容器に、合成例1で得たビニル重合体(a2-1)の溶液377質量部を仕込んで、110℃まで昇温した。次いで、2EHMA 269質量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(β―HEMA)30質量部、MPTS 3質量部、TBPEH 0.3質量部からなる混合物を、同温度で、窒素ガスの通気下、撹拌しながら、前記反応容器中へ4時間かけて滴下した。その後、同温度で4時間撹拌し、LAWS 314質量部を仕込んで更に30分間攪拌し、ビニル重合体(a2-1)及びトリメトキシシリル基を有するビニル重合体(a1-2)からなる、不揮発分60質量%のビニル重合体(a-2)の溶液を1000質量部調製した。ビニル重合体(a1-2)の溶解度パラメータは、8.1(cal/cm1/2、ビニル重合体(a-2)の重量平均分子量は145,000であった。
【0096】
(合成例4:ビニル重合体(a-3)の合成)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、LAWS(シェルジャパン株式会社製)72質量部を仕込んで、110℃まで昇温した。次いで、2EHMA 269質量部、n-BMA 30質量部、TBPEH 6.0質量部からなる混合物を、同温度で、窒素ガスの通気下、撹拌しながら、前記反応容器中へ4時間かけて滴下した。その後、同温度で4時間撹拌した。このビニル重合体(a2-1)の溶解度パラメータは、7.9(cal/cm1/2であった。次いで、MMA 239質量部、n-BA 45質量部、アクリル酸(AA)15質量部、MPTS 3質量部、TBPEH 1.5質量部からなる混合物を、同温度で、窒素ガスの通気下、撹拌しながら、前記反応容器中へ4時間かけて滴下した。その後、同温度で4時間撹拌し、LAWS 314質量部を仕込んで更に30分間攪拌し、ビニル重合体(a2-1)及びトリメトキシシリル基を有するビニル重合体(a1-3)からなる、不揮発分60質量%のビニル重合体(a-3)の溶液を1000質量部調製した。ビニル重合体(a1-3)の溶解度パラメータは、9.3(cal/cm1/2、ビニル重合体(a-3)の重量平均分子量は121,000であった。
【0097】
(合成例5:ビニル重合体(Ra-1)の合成)
合成例1と同様の反応容器に、合成例1で得たビニル重合体(a2-1)の溶液377質量部を仕込んで、110℃まで昇温した。次いで、MMA 239質量部、アクリロニトリル(AN)60質量部、MPTS 3質量部、TBPEH 4.5質量部からなる混合物を、同温度で、窒素ガスの通気下、撹拌しながら、前記反応容器中へ4時間かけて滴下した。その後、同温度で4時間撹拌し、LAWS 314質量部を仕込んで更に30分間攪拌し、ビニル重合体(a2-1)及びトリメトキシシリル基を有するビニル重合体(a1-4)からなる、不揮発分60質量%のビニル重合体(Ra-1)の溶液を1000質量部調製した。ビニル重合体(a1-4)の溶解度パラメータは、9.5(cal/cm1/2、ビニル重合体(Ra-1)の重量平均分子量は53,000であった。
【0098】
(合成例6:メチルトリメトキシシランの縮合物(c-1)の合成)
合成例1と同様の反応容器に、メチルトリメトキシシラン(MTMS)853質量部を仕込んで、60℃まで昇温した。次いで、前記反応容器中に「A-3」(堺化学株式会社製の、iso-プロピルアシッドホスフェート)0.10質量部と脱イオン水124質量部との混合物を5分間で滴下した後、80℃の温度で4時間撹拌して加水分解縮合反応させた。
上記の加水分解縮合反応によって得られた縮合物を、40~1.3kPaの減圧下(メタノールの留去開始時の減圧条件が40kPaで、最終的に1.3kPaとなるまで減圧する条件をいう。以下、同様。)、温度40~60℃の条件で蒸留し前記反応過程で生成したメタノール及び水を除去することによって、数平均分子量1,000のMTMSの縮合物(c-1)を含有する液(有効成分70質量%)600質量部を得た。
【0099】
(実施例1:樹脂組成物(1)の合成)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、合成例2で得たビニル重合体(a-1)の溶液700質量部を仕込んで、80℃まで昇温した。次いで、フェニルトリメトキシシラン(PTMS)48質量部、ジメチルジメトキシシラン(DMDMS)29質量部を、前記反応容器中へ添加した。その後、「A-3」(堺化学株式会社製の、iso-プロピルアシッドホスフェート)0.09質量部と脱イオン水22質量部との混合物を5分間で滴下し、同温度で4時間撹拌して加水分解縮合反応させることで、珪素原子に結合した加水分解性基を含有するビニル重合体セグメントとPTMS及びDMDMS由来のポリシロキサンセグメントからなる複合樹脂(AB-1)を得た。その後、MTMSの縮合物(c-1)265質量部と脱イオン水64質量部を添加し、同温度で4時間撹拌して加水分解縮合反応させることで、前記複合樹脂(AB-1)とMTMSの縮合物(c-1)由来のポリシロキサンセグメント(C-1)が結合した複合樹脂(ABC-1)を得た。更に前記反応生成物を、40~1.3kPaの減圧下で、40~60℃の条件で2時間蒸留することにより、生成したメタノール及び水を除去し、次いで、LAWS 120質量部を添加することで、不揮発分が60.0%である樹脂組成物(1)を1000質量部得た。複合樹脂(ABC-1)中のポリシロキサンセグメント含有量は30質量%であった。
【0100】
(実施例2:樹脂組成物(2)の合成)
実施例1と同様の反応容器に、合成例3で得たビニル重合体(a-2)の溶液700質量部を仕込んで、80℃まで昇温した。次いで、PTMS 48質量部、DMDMS 29質量部を、前記反応容器中へ添加した。その後、「A-3」(堺化学株式会社製の、iso-プロピルアシッドホスフェート)0.09質量部と脱イオン水22質量部との混合物を、5分間で滴下し、同温度で4時間撹拌して加水分解縮合反応させることで、珪素原子に結合した加水分解性基を含有する重合体セグメントとPTMS及びDMDMS由来のポリシロキサンセグメントからなる複合樹脂(AB-2)を得た。その後、MTMSの縮合物(c-1)265質量部と脱イオン水64質量部を添加し、同温度で4時間撹拌して加水分解縮合反応させることで、前記複合樹脂(AB-2)とMTMSの縮合物(c-1)由来のポリシロキサンセグメント(C-1)が結合した複合樹脂(ABC-2)を得た。更に前記反応生成物を、40~1.3kPaの減圧下で、40~60℃の条件で2時間蒸留することにより、生成したメタノール及び水を除去し、次いで、LAWS 120質量部を添加することで、不揮発分が60.0%である樹脂組成物(2)を1000質量部得た。複合樹脂(ABC-2)中のポリシロキサンセグメント含有量は30質量%であった。
【0101】
(実施例3:樹脂組成物(3)の合成)
実施例1と同様の反応容器に、合成例4で得たビニル重合体(a-3)の溶液700質量部を仕込んで、80℃まで昇温した。次いで、PTMS 48質量部、DMDMS 29質量部を、前記反応容器中へ添加した。その後、「A-3」(堺化学株式会社製の、iso-プロピルアシッドホスフェート)0.09質量部と脱イオン水22質量部との混合物を、5分間で滴下し、同温度で4時間撹拌して加水分解縮合反応させることで、珪素原子に結合した加水分解性基を含有する重合体セグメントとPTMS及びDMDMS由来のポリシロキサンセグメントからなる複合樹脂(AB-3)を得た。その後、MTMSの縮合物(c-1)265質量部と脱イオン水64質量部を添加し、同温度で4時間撹拌して加水分解縮合反応させることで、前記複合樹脂(AB-3)とMTMSの縮合物(c-1)由来のポリシロキサンセグメント(C-1)が結合した複合樹脂(ABC-3)を得た。更に前記反応生成物を、40~1.3kPaの減圧下で、40~60℃の条件で2時間蒸留することにより、生成したメタノール及び水を除去し、次いで、LAWS 120質量部を添加することで、不揮発分が60.0%である樹脂組成物(3)を1000質量部得た。複合樹脂(ABC-3)中のポリシロキサンセグメント含有量は30質量%であった。
【0102】
(実施例4:樹脂組成物(4)の合成)
実施例1と同様の反応容器に、合成例2で得たビニル重合体(a-1)の溶液900質量部を仕込んで、80℃まで昇温した。次いで、PTMS 16質量部、DMDMS 10質量部を、前記反応容器中へ添加した。その後、「A-3」(堺化学株式会社製の、iso-プロピルアシッドホスフェート)0.03質量部と脱イオン水7質量部との混合物を、5分間で滴下し、同温度で4時間撹拌して加水分解縮合反応させることで、珪素原子に結合した加水分解性基を含有する重合体セグメントとPTMS及びDMDMS由来のポリシロキサンセグメントからなる複合樹脂(AB-4)を得た。その後、MTMSの縮合物(c-1)88質量部と脱イオン水21質量部を添加し、同温度で4時間撹拌して加水分解縮合反応させることで、前記複合樹脂(AB-4)とMTMSの縮合物(c-1)由来のポリシロキサンセグメント(C-1)が結合した複合樹脂(ABC-4)を得た。更に前記反応生成物を、40~1.3kPaの減圧下で、40~60℃の条件で2時間蒸留することにより、生成したメタノール及び水を除去し、次いで、LAWS 40質量部を添加することで、不揮発分が60.0%である樹脂組成物(4)を1000質量部得た。複合樹脂(ABC-4)中のポリシロキサンセグメント含有量は10質量%であった。
【0103】
(実施例5:樹脂組成物(5)の合成)
実施例1と同様の反応容器に、合成例2で得たビニル重合体(a-1)の溶液300質量部を仕込んで、80℃まで昇温した。次いで、PTMS 112質量部、DMDMS 68質量部を、前記反応容器中へ添加した。その後、「A-3」(堺化学株式会社製の、iso-プロピルアシッドホスフェート)0.21質量部と脱イオン水51質量部との混合物を、5分間で滴下し、同温度で4時間撹拌して加水分解縮合反応させることで、珪素原子に結合した加水分解性基を含有する重合体セグメントとPTMS及びDMDMS由来のポリシロキサンセグメントからなる複合樹脂(AB-5)を得た。その後、MTMSの縮合物(c-1)618質量部と脱イオン水149質量部を添加し、同温度で4時間撹拌して加水分解縮合反応させることで、前記複合樹脂(AB-5)とMTMSの縮合物(c-1)由来のポリシロキサンセグメント(C-1)が結合した複合樹脂(ABC-5)を得た。更に前記反応生成物を、40~1.3kPaの減圧下で、40~60℃の条件で2時間蒸留することにより、生成したメタノール及び水を除去し、次いで、LAWS 280質量部を添加することで、不揮発分が60.0%である樹脂組成物(4)を1000質量部得た。複合樹脂(ABC-5)中のポリシロキサンセグメント含有量は70質量%であった。
【0104】
(実施例6:樹脂組成物(6)の合成)
実施例1と同様の反応容器に、合成例2で得たビニル重合体(a-1)の溶液702質量部を仕込んで、80℃まで昇温した。次いで、PTMS 46質量部、DMDMS 28質量部を、前記反応容器中へ添加した。その後、「A-3」(堺化学株式会社製の、iso-プロピルアシッドホスフェート)0.09質量部と脱イオン水21質量部との混合物を、5分間で滴下し、同温度で4時間撹拌して加水分解縮合反応させることで、珪素原子に結合した加水分解性基を含有する重合体セグメントとPTMS及びDMDMS由来のポリシロキサンセグメントからなる複合樹脂(AB-6)を得た。その後、MTMSの縮合物(c-1)245質量部と3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン17質量部と脱イオン水59質量部を添加し、同温度で4時間撹拌して加水分解縮合反応させることで、前記複合樹脂(AB-6)と、MTMSの縮合物(c-1)及び3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン由来のポリシロキサンセグメント(C-2)が結合した複合樹脂(ABC-6)を得た。更に前記反応生成物を、40~1.3kPaの減圧下で、40~60℃の条件で2時間蒸留することにより、生成したメタノール及び水を除去し、次いで、LAWS 120質量部を添加することで、不揮発分が60.0%である樹脂組成物(6)を1000質量部得た。複合樹脂(ABC-6)中のポリシロキサンセグメント含有量は30質量%であった。
【0105】
(比較例1:樹脂組成物(R1)の合成)
実施例1と同様の反応容器に、合成例1で得たビニル重合体(a2-1)の溶液438質量部、LAWS 146質量部を仕込んで、80℃まで昇温した。次いで、PTMS 40質量部、DMDMS 24質量部を、前記反応容器中へ添加した。その後、「A-3」(堺化学株式会社製の、iso-プロピルアシッドホスフェート)0.07質量部と脱イオン水18質量部との混合物を、5分間で滴下し、同温度で4時間撹拌して加水分解縮合反応させることで、珪素原子に結合した加水分解性基を含有する重合体セグメントとPTMS及びDMDMS由来のポリシロキサンセグメントからなる複合樹脂(RAB-1)を得た。その後、MTMSの縮合物(c-1)221質量部と脱イオン水53質量部を添加し、同温度で4時間撹拌して加水分解縮合反応させることで、前記複合樹脂(RAB-1)とMTMSの縮合物(c-1)由来のポリシロキサンセグメント(C-1)が結合した複合樹脂(RABC-1)を得た。更に前記反応生成物を、40~1.3kPaの減圧下で、40~60℃の条件で2時間蒸留することにより、生成したメタノール及び水を除去し、次いで、LAWS 267質量部を添加することで、不揮発分が50.0%である樹脂組成物(R1)を1000質量部得た。複合樹脂(RABC-1)中のポリシロキサンセグメント含有量は30質量%であった。
【0106】
(比較例2:樹脂組成物(R2)の合成)
実施例1と同様の反応容器に、合成例5で得たビニル重合体(Ra-1)の溶液583質量部を仕込んで、80℃まで昇温した。次いで、PTMS 40質量部、DMDMS 24質量部、前記反応容器中へ添加した。その後、「A-3」(堺化学株式会社製の、iso-プロピルアシッドホスフェート)0.07質量部と脱イオン水18質量部との混合物を、5分間で滴下し、同温度で4時間撹拌して加水分解縮合反応させることで、珪素原子に結合した加水分解性基を含有する重合体セグメントとPTMS及びDMDMS由来のポリシロキサンセグメントからなる複合樹脂(RAB-2)を得た。その後、MTMSの縮合物(c-1)221質量部と脱イオン水53質量部を添加し、同温度で4時間撹拌して加水分解縮合反応させることで、前記複合樹脂(RAB-2)とMTMSの縮合物(c-1)由来のポリシロキサンセグメント(C-1)が結合した複合樹脂(RABC-2)を得た。更に前記反応生成物を、40~1.3kPaの減圧下で、40~60℃の条件で2時間蒸留することにより、生成したメタノール及び水を除去し、次いで、LAWS 267質量部を添加することで、不揮発分が50.0%である樹脂組成物(R2)を1000質量部得た。複合樹脂(RABC-2)中のポリシロキサンセグメント含有量は30質量%であった。
【0107】
[貯蔵安定性の評価]
上記で得た樹脂組成物を温度50℃の環境で1カ月貯蔵し、増粘率(%)=[(1カ月後粘度-初期粘度)/初期粘度]について下記の評価基準で評価した。なお、粘度測定条件は、JIS K5600-2-2のガードナー形泡粘度計測法に準拠した。増粘率の計算には測定粘度のストークス換算値を用いた。
〇:増粘率が100%未満のもの。
×:増粘率が100%以上のもの。
【0108】
上記の実施例1~4の評価結果を表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
上記の実施例5及び比較例1~2の評価結果を表2に示す。
【0111】
【表2】
【0112】
(実施例7:塗料(1)の調製)
上記で得た樹脂組成物(1)100質量部、LAWS 9.6質量部、及びスズオクトエート0.6質量部を配合し、塗料(1)を得た。
【0113】
(実施例8~12:塗料(2)~(6)の調製)
実施例6で使用した樹脂組成物(1)を樹脂組成物(2)~(6)に変更した以外は、実施例6と同様にして、塗料(2)~(6)を得た。
【0114】
(実施例13:塗料(7)の調製)
上記で得た樹脂組成物(2)100質量部、LAWS 10.7質量部、及びポリイソシアネート硬化剤(DIC株式会社製「DN-980」)4.4質量部を配合し、塗料(7)を得た。
【0115】
(比較例3及び4:塗料(R1)~(R2)の調製)
実施例7で使用した樹脂組成物(1)を樹脂組成物(R1)及び(R2)に変更した以外は、実施例7と同様にして、塗料(R1)~(R2)を得た。
【0116】
[下塗り塗膜の作製]
厚さ0.8mmのクロメート処理アルミニウム板に、アクリル-ウレタン系の白色塗料(顔料:タイペークCR-97,PWC:35%)を塗装し、焼き付け、水研ぎし、下塗り塗膜を得た。
【0117】
[評価用硬化塗膜の作製]
上記で得た各塗料を、前記下塗り塗膜上に、硬化塗膜の膜厚が20μmとなるように塗装し、23℃で7日間乾燥させて評価用硬化塗膜を得た。
【0118】
[塗膜外観の評価]
上記で得た硬化塗膜を目視で観察し、下記の基準で塗膜外観を評価した。
○:クラックの発生が認められない。
△:若干のクラックの発生が認められる。
×:クラックの発生が認められる。
【0119】
[密着性の評価]
上記で得た評価用硬化塗膜について、JIS K-5600 碁盤目試験法に基づいて測定した。前記硬化塗膜の上にカッターで1mm幅の切込みを入れ碁盤目の数を100個とし、全ての碁盤目を覆うようにセロハンテープを貼り付け、すばやく引き剥がして付着して残っている碁盤目の数を数え、下記の基準で評価した。
○:はがれなし。
△:はがれの面積は、全碁盤目面積の1~64%。
×:はがれの面積は、全碁盤目面積の65%以上。
【0120】
[耐候性(外観)の評価]
上記で得た評価用硬化塗膜について、紫外線蛍光ランプ式促進耐候試験機QUV(Q-lab製、光照射時:0.71W/m、60℃、湿潤時:湿度98%、50℃、光照射/湿潤サイクル=4時間/4時間)で1,000時間曝露を行なった後の塗膜を目視で観察し、下記の基準で塗膜外観を評価した。
○:クラックの発生が認められない。
△:若干のクラックの発生が認められる。
×:クラックの発生が認められる。
【0121】
[耐候性(光沢保持率)の評価]
作製直後の評価用硬化塗膜の鏡面反射率(光沢値)(%)と、前記硬化塗膜を、紫外線蛍光ランプ式促進耐候試験機QUV(Q-lab製、光照射時:0.71W/m、60℃、湿潤時:湿度98%、50℃、光照射/湿潤サイクル=4時間/4時間)で1,000時間曝露した後の塗膜の鏡面反射率(光沢値)(%)の、曝露前の硬化塗膜の鏡面反射率(光沢値)に対する保持率(光沢保持率:%)〔(100×暴露後の塗膜の鏡面反射率)/(曝露前の硬化塗膜の鏡面反射率)〕で評価した。保持率の値が大きいほど、耐候性が良好であることを示す。
【0122】
[耐溶剤性の評価]
上記で得た評価用硬化塗膜について、メチルエチルケトンを浸み込ませたフェルトで、硬化塗膜上を1kg荷重を加え往復50回ラビングしたのちの硬化塗膜の状態を、指触及び目視により判定し、下記の基準で評価した。
○:軟化及び光沢低下が認められない。
△:若干の軟化又は光沢低下が認められる。
×:著しい軟化又は光沢低下が認められる。
【0123】
[耐汚染性の評価]
上記で得た評価用硬化塗膜について、大阪府高石市のDIC株式会社堺工場内において3か月間曝露を行なった。曝露試験後の未洗浄の塗膜と、曝露試験前の塗膜との色差(ΔE)を、コニカミノルタ株式会社製の分光測色計「CM-5」を用いて下記の基準で評価した。
○:ΔEが2.5未満
△:ΔEが2.5以上5未満
×:ΔEが5以上
【0124】
上記の実施例7~10の評価結果を表3に示す。
【0125】
【表3】
【0126】
上記の実施例11~13及び比較例3~4の評価結果を表4に示す。
【0127】
【表4】
【0128】
実施例1~6の本発明の樹脂組成物は、貯蔵安定性に優れ、得られる塗膜は、外観、密着性、耐候性、耐溶剤性、及び耐汚染性に優れることが確認された。
【0129】
比較例1の樹脂組成物は、本発明の必須成分であるビニル重合体(a1)を使用しない例であるが、貯蔵安定性に劣り、得られる塗膜の外観が不十分であることが確認された。
【0130】
比較例2は、ビニル重合体(a1)の溶解度パラメータとビニル重合体(a2)の溶解度パラメータとの差が、本発明の上限である1.5(cal/cm1/2を超える例であるが、貯蔵安定性に劣り、得られる塗膜の外観が不十分であることが確認された。