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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055851
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】硬化性樹脂及び硬化性樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/17 20060101AFI20240411BHJP
   H05K 3/28 20060101ALN20240411BHJP
【FI】
C08G59/17
H05K3/28 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023174288
(22)【出願日】2023-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2022162490
(32)【優先日】2022-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100221992
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真由美
(72)【発明者】
【氏名】岩淵 龍之介
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 剛司
(72)【発明者】
【氏名】代島 雄汰
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慶一
(72)【発明者】
【氏名】岩本 浩介
【テーマコード(参考)】
4J036
5E314
【Fターム(参考)】
4J036AD08
4J036AE05
4J036AF01
4J036AF06
4J036CA21
4J036CA22
4J036CA24
4J036CB20
4J036JA08
4J036JA10
5E314AA27
5E314AA32
(57)【要約】
【課題】耐加水分解性に優れる硬化性樹脂及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本開示の一態様に係る硬化性樹脂は、(A)エチレン性不飽和結合、水酸基、及びカルボキシ基を有するポリマーと、(B)水酸基と反応しうる官能基を有する化合物と、の反応生成物であり、前記ポリマーが有する水酸基の少なくとも一部が、前記化合物により保護されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレン性不飽和結合、水酸基、及びカルボキシ基を有するポリマーと、(B)水酸基と反応しうる官能基を有する化合物と、の反応生成物であり、
前記ポリマーが有する前記水酸基の少なくとも一部が、前記化合物により保護されている、硬化性樹脂。
【請求項2】
前記化合物の水とのハンセン溶解度パラメータの距離が、30~50である、請求項1に記載の硬化性樹脂。
【請求項3】
前記化合物が、モノイソシアネートである、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂。
【請求項4】
前記ポリマーが、酸変性ビニル基含有エポキシ誘導体である、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂。
【請求項5】
(A)エチレン性不飽和結合、水酸基、及びカルボキシ基を有するポリマーに、(B)水酸基と反応しうる官能基を有する化合物を反応させる工程を有し、
前記ポリマーが有する前記水酸基の少なくとも一部が、前記化合物により保護されている、硬化性樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記化合物の水とのハンセン溶解度パラメータの距離が、30~50である、請求項5に記載の硬化性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記化合物が、モノイソシアネートである、請求項5又は6に記載の硬化性樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記ポリマーが、酸変性ビニル基含有エポキシ誘導体である、請求項5又は6に記載の硬化性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、硬化性樹脂及び硬化性樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器の高性能化に伴い半導体の高集積化が進行している。それに伴い、プリント配線板、半導体パッケージ基板等に形成される永久レジスト(ソルダーレジスト)には、様々な性能が要求されている。
【0003】
永久レジストの形成に用いる感光性樹脂組成物として、例えば、酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂、エラストマー、光重合開始剤、希釈剤、及び硬化剤を必須成分とする光硬化性樹脂組成物が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-240930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂とビニル基含有モノカルボン酸との反応生成物、又は、該反応生成物に飽和又は不飽和基含有多塩基酸無水物を反応させて得られる樹脂である。酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂は、ビニル基を含有しているため、光又は熱により硬化することができ、カルボキシ基を含有しているため現像可能である硬化性樹脂であるが、親水性が高い水酸基を有しているため、耐加水分解性に劣る傾向がある。そこで、本開示は、耐加水分解性に優れる硬化性樹脂及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、以下の硬化性樹脂及び硬化性樹脂の製造方法に関する。
[1](A)エチレン性不飽和結合、水酸基、及びカルボキシ基を有するポリマーと、(B)水酸基と反応しうる官能基を有する化合物と、の反応生成物であり、前記ポリマーが有する前記水酸基の少なくとも一部が、前記化合物により保護されている、硬化性樹脂。
[2]前記化合物の水とのハンセン溶解度パラメータの距離が、30~50である、上記[1]に記載の硬化性樹脂。
[3]前記化合物が、モノイソシアネートである、上記[1]又は[2]に記載の硬化性樹脂。
[4]前記ポリマーが、酸変性ビニル基含有エポキシ誘導体である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の硬化性樹脂。
[5](A)エチレン性不飽和結合、水酸基、及びカルボキシ基を有するポリマーに、(B)水酸基と反応しうる官能基を有する化合物を反応させる工程を有し、前記ポリマーが有する前記水酸基の少なくとも一部が、前記化合物により保護されている、硬化性樹脂の製造方法。
[6]前記化合物の水とのハンセン溶解度パラメータの距離が、30~50である、上記[5]に記載の硬化性樹脂の製造方法。
[7]前記化合物が、モノイソシアネートである、上記[5]又は[6]に記載の硬化性樹脂の製造方法。
[8]前記ポリマーが、酸変性ビニル基含有エポキシ誘導体である、上記[5]~[7]のいずれかに記載の硬化性樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、耐加水分解性に優れる硬化性樹脂及び硬化性樹脂の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】合成例1の酸変性エポキシアクリレートのNMRスペクトルと、実施例1~4の硬化性樹脂のNMRスペクトルとを比較した図である。
図2】実施例5~8の硬化性樹脂のIRスペクトルを示す図である。
図3】実施例9の反応前後のIRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示について詳細に説明する。本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけではなく、その工程の所期の作用が達成される限り、他の工程と明確に区別できない工程も含む。「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0010】
本明細書において、「(メタ)アクリロイル」とは、「アクリロイル」及びそれに対応する「メタクリロイル」の少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」等の他の類似表現についても同様である。
【0011】
[硬化性樹脂]
本実施形態に係る硬化性樹脂は、(A)エチレン性不飽和結合、水酸基、及びカルボキシ基を有するポリマー(以下、「A成分」という。)と、(B)水酸基と反応しうる官能基を有する化合物(以下、「B成分」という。)と、の反応生成物であり、(A)成分のポリマーが有する水酸基の少なくとも一部が、(B)成分の化合物により保護されている。
【0012】
((A)成分:エチレン性不飽和結合、水酸基、及びカルボキシ基を有するポリマー)
(A)成分としては、光重合性のエチレン性不飽和結合と、水酸基と、カルボキシ基とを有していれば、特に限定されない。
【0013】
(A)成分が有するエチレン性不飽和結合を有する基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロパルギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、及び(メタ)アクリロイル基が挙げられる。これらの中でも、反応性及び解像性の観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0014】
(A)成分は、(a)エポキシ樹脂(以下、「(a)成分」という。)と、(b)エチレン性不飽和基含有有機酸(以下、「(b)成分」という。)と、を反応させてなる樹脂(A’)に、(c)飽和基又は不飽和基含有多塩基酸無水物(以下、「(c)成分」という。)を反応させてなる酸変性ビニル基含有エポキシ誘導体であることが好ましい。
【0015】
酸変性ビニル基含有エポキシ誘導体としては、例えば、酸変性エポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。酸変性エポキシ(メタ)アクリレートは、(a)成分と(b)成分との反応物であるエポキシ(メタ)アクリレートを(c)成分で酸変性した樹脂である。酸変性エポキシ(メタ)アクリレートとして、例えば、エポキシ樹脂とビニル基含有モノカルボン酸とを反応させて得られるエステル化物に、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を付加した付加反応物を用いることができる。
【0016】
(A)成分としては、例えば、(a)成分としてビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂(a1)(以下、「エポキシ樹脂(a1)」いう。)を用いてなる酸変性ビニル基含有樹脂(A1)(以下、「(A1)成分」という。)、及び(a)成分としてエポキシ樹脂(a1)以外のエポキシ樹脂(a2)(以下、「エポキシ樹脂(a2)」という。)を用いてなる酸変性ビニル基含有樹脂(A2)(以下、「(A2)成分」という。)が挙げられる。
【0017】
エポキシ樹脂(a1)としては、例えば、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、及びビスフェノールEノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂(a1)は、下記式(I)で表される構造単位及び下記式(II)で表される構造単位のうち少なくとも一方の構造単位を有することが好ましい。
【0018】
【化1】
【0019】
式(I)及び(II)中、R11は水素原子又はメチル基を示し、複数のR11は同一でも異なっていてもよい。Y及びYはそれぞれ独立に水素原子又はグリシジル基を示すが、Y及びYの少なくとも一方はグリシジル基である。アンダーカットの発生を抑制し、レジストパターン輪郭の直線性及び解像性を向上する観点から、R11は、水素原子であることが好ましく、耐熱衝撃性をより向上する観点から、Y及びYは、グリシジル基であることが好ましい。
【0020】
エポキシ樹脂(a1)中の式(I)又は(II)で表される構造単位数は、1以上であり、10~100、15~80、又は15~70であってもよい。構造単位数が上記範囲内であると、レジストパターン輪郭の直線性、銅基板との密着性、耐熱性及び電気絶縁性を向上し易くなる。ここで、構造単位の構造単位数は、単一の分子においては整数値を示し、複数種の分子の集合体においては平均値である有理数を示す。以下、構造単位の構造単位数については同様である。
【0021】
ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂は、例えば、EXA-7376シリーズ(DIC株式会社製、商品名)として商業的に入手可能であり、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂は、例えば、EPON SU8シリーズ(三菱ケミカル株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0022】
エポキシ樹脂(a2)は、エポキシ樹脂(a1)とは異なるエポキシ樹脂であれば特に制限されないが、アンダーカットの発生を抑制し、レジストパターン輪郭の直線性、銅基板との密着性、及び解像性を向上する観点から、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0023】
ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、下記式(III)で表される構造単位を有するエポキシ樹脂が挙げられる。ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、例えば、下記式(IV)で表される構造単位を有するエポキシ樹脂が挙げられる。トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂としては、例えば、下記式(V)で表される構造単位を有するエポキシ樹脂が挙げられる。ビフェニル型エポキシ樹脂としては、下記式(VI)で表される構造単位を有するエポキシ樹脂が挙げられる。
【0024】
エポキシ樹脂(a2)としては、下記式(III)で表される構造単位を有するノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。このような構造単位を有するノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、下記式(III’)で表されるノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0025】
【化2】
【0026】
式(III)及び(III’)中、R13は水素原子又はメチル基を示し、Yは水素原子又はグリシジル基を示すが、Yの少なくとも一つはグリシジル基である。式(III’)中、nは1以上の数であり、複数のR13及びYは、同一でも異なっていてもよい。アンダーカットの発生を抑制し、レジストパターン輪郭の直線性及び解像性を向上する観点から、R13は、水素原子であることが好ましい。
【0027】
式(III’)中、水素原子であるYとグリシジル基であるYとのモル比が、アンダーカットの発生を抑制し、レジストパターン輪郭の直線性及び解像性を向上する観点から、0/100~30/70又は0/100~10/90であってもよい。nは1以上であるが、10~200、30~150、又は30~100であってもよい。nが上記範囲内であると、レジストパターン輪郭の直線性、銅基板との密着性、及び耐熱性が向上し易くなる。
【0028】
式(III’)で表されるノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。これらのノボラック型エポキシ樹脂は、例えば、公知の方法でフェノールノボラック樹脂又はクレゾールノボラック樹脂と、エピクロルヒドリンとを反応させることにより得ることができる。
【0029】
式(III’)で表されるフェノールノボラック型エポキシ樹脂又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、YDCN-701、YDCN-702、YDCN-703、YDCN-704、YDCN-704L、YDPN-638、YDPN-602(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、商品名)、DEN-431、DEN-439(以上、ダウ・ケミカル社製、商品名)、EOCN-120、EOCN-102S、EOCN-103S、EOCN-104S、EOCN-1012、EOCN-1025、EOCN-1027、BREN(以上、日本化薬株式会社製、商品名)、EPN-1138、EPN-1235、EPN-1299(以上、BASF社製、商品名)、N-730、N-770、N-865、N-665、N-673、VH-4150、VH-4240(以上、DIC株式会社製、商品名)等が商業的に入手可能である。
【0030】
エポキシ樹脂(a2)として、下記式(IV)で表される構造単位を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましく挙げられる。このような構造単位を有するエポキシ樹脂としては、例えば、下記式(IV’)で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0031】
【化3】
【0032】
式(IV)及び(IV’)中、R14は水素原子又はメチル基を示し、複数存在するR14は同一でも異なっていてもよく、Yは水素原子又はグリシジル基を示す。式(IV’)中、nは1以上の数を示し、nが2以上の場合、複数のYは同一でも異なっていてもよく、少なくとも一つのYはグリシジル基である。
【0033】
アンダーカットの発生を抑制し、レジストパターン輪郭の直線性及び解像性を向上する観点から、R14は水素原子であることが好ましく、耐熱衝撃性をより向上する観点から、Yはグリシジル基であることが好ましい。nは1以上を示すが、10~100、10~80、又は15~60であってもよい。nが上記範囲内であると、レジストパターン輪郭の直線性、銅基板との密着性、及び耐熱性が向上し易くなる。
【0034】
式(IV)中のYがグリシジル基であるビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂は、例えば、式(IV)中のYが水素原子であるビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂の水酸基(-OY)とエピクロルヒドリンとを反応させることにより得ることができる。
【0035】
水酸基とエピクロルヒドリンとの反応を促進するためには、反応温度50~120℃でアルカリ金属水酸化物の存在下、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の極性有機溶剤中で反応を行うことが好ましい。反応温度が上記範囲内であると、反応が遅くなりすぎることがなく、副反応を抑制することができる。
【0036】
式(IV’)で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、例えば、jER807、jER815、jER825、jER827、jER828、jER834、jER1001、jER1004、jER1007、jER1009(以上、三菱ケミカル株式会社製、商品名)、DER-330、DER-301、DER-361(以上、ダウ・ケミカル社製、商品名)、YD-8125、YDF-170、YDF-175S、YDF-2001、YDF-2004、YDF-8170(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、商品名)等が商業的に入手可能である。
【0037】
エポキシ樹脂(a2)としては、下記式(V)で表される構造単位を有するトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂が好ましく挙げられる。このような構造単位を有するトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂としては、例えば、下記式(V’)で表されるトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0038】
【化4】
【0039】
式(V)及び(V’)中、Yは水素原子又はグリシジル基を示し、複数のYは同一でも異なっていてもよく、少なくとも一つのYはグリシジル基である。式(V’)中、nは1以上の数を示す。
【0040】
アンダーカット及び上部の欠落の発生を抑制し、レジストパターン輪郭の直線性及び解像性を向上する観点から、Yにおける水素原子であるYとグリシジル基であるYとのモル比が、0/100~30/70であってもよい。このモル比からもわかるように、Yの少なくとも一つはグリシジル基である。nは1以上であるが、10~100、15~80、又は15~70であってもよい。nが上記範囲内であると、レジストパターン輪郭の直線性、銅基板との密着性、及び耐熱性が向上し易くなる。
【0041】
式(V’)で表されるトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂としては、例えば、FAE-2500、EPPN-501H、EPPN-502H(以上、日本化薬株式会社製、商品名)等が商業的に入手可能である。
【0042】
エポキシ樹脂(a2)としては、下記式(VI)で表される構造単位を有するビフェニル型エポキシ樹脂が好ましく挙げられる。このような構造単位を有するビフェニル型エポキシ樹脂としては、例えば、下記式(VI’)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0043】
【化5】
【0044】
式(VI)及び(VI’)中、Yは水素原子又はグリシジル基を示し、複数のYは同一でも異なっていてもよく、少なくとも一つのYはグリシジル基である。式(VI’)中、nは1以上の数を示す。
【0045】
式(VI’)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂としては、例えば、NC-3000、NC-3000-L、NC-3000-H、NC-3000-FH-75M、NC-3100、CER-3000-L(以上、日本化薬株式会社製、商品名)等が商業的に入手可能である。
【0046】
エポキシ樹脂(a2)としては、式(III)で表される構造単位を有するノボラック型エポキシ樹脂、式(IV)で表される構造単位を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び式(IV)で表される構造単位を有するビスフェノールF型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、式(IV)で表される構造単位を有するビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0047】
耐熱衝撃性、反り低減性、及び解像性をより向上観点から、エポキシ樹脂(a1)として、式(II)で表される構造単位を有するビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂を用いた(A1)成分と、エポキシ樹脂(a2)として、式(IV)で表される構造単位を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いた(A2)成分とを組み合わせて用いてもよい。
【0048】
(b)成分としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸の二量体、メタクリル酸、β-フルフリルアクリル酸、β-スチリルアクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、α-シアノ桂皮酸等のアクリル酸誘導体;水酸基含有(メタ)アクリレートと二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物;及びビニル基含有モノグリシジルエーテル又はビニル基含有モノグリシジルエステルと二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物が挙げられる。(b)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0049】
半エステル化合物は、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレート、ビニル基含有モノグリシジルエーテル又はビニル基含有モノグリシジルエステルと、二塩基酸無水物とを反応させることで得られる。
【0050】
水酸基含有(メタ)アクリレート、ビニル基含有モノグリシジルエーテル、及びビニル基含有モノグリシジルエステルとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びグリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0051】
二塩基酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、及び無水イタコン酸が挙げられる。
【0052】
(a)成分と(b)成分との反応において、(a)成分のエポキシ基1当量に対して、(b)成分が0.6~1.05当量となる比率で反応させることが好ましく、0.8~1.0当量となる比率で反応させることがより好ましい。このような比率で反応させることで、光感度が大きくなり、レジストパターン輪郭の直線性に優れる傾向にある。
【0053】
(a)成分及び(b)成分は、有機溶剤に溶かして反応させることができる。有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤が挙げられる。有機溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0054】
(a)成分と(b)成分との反応を促進するための触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン、メチルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、及びトリフェニルホスフィンが挙げられる。触媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0055】
触媒の使用量は、(a)成分と(b)成分との反応を促進する観点から、(a)成分と(b)成分の合計100質量部に対して、0.01~10質量部、0.05~2質量部、又は0.1~1質量部であってもよい。
【0056】
(a)成分と(b)成分との反応には、反応中の重合を防止する目的で、重合禁止剤を用いてもよい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、及びピロガロールが挙げられる。重合禁止剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0057】
重合禁止剤の使用量は、安定性を向上させる観点から、(a)成分と(b)成分の合計100質量部に対して、0.01~1質量部、0.02~0.8質量部、又は0.04~0.5質量部であってもよい。
【0058】
(a)成分と(b)成分との反応温度は、生産性の観点から、60~150℃、80~120℃、又は90~110℃であってもよい。
【0059】
(a)成分と(b)成分とを反応させてなる(A’)成分は、(a)成分のエポキシ基と(b)成分のカルボキシ基との開環付加反応により形成される水酸基を有している。(A’)成分に、更に(c)成分を反応させることにより、(A’)成分の水酸基((a)成分中に元来存在する水酸基も含む。)と(c)成分の酸無水物基とが半エステル化された、酸変性ビニル基含有樹脂が得られる。
【0060】
(c)成分としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、及び無水イタコン酸が挙げられる。これらの中でも、解像性の観点から、テトラヒドロ無水フタル酸が好ましい。(c)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0061】
(A’)成分と(c)成分との反応において、例えば、(A’)成分中の水酸基1当量に対して、(c)成分を0.1~1.0当量反応させることで、(A)成分の酸価を調整することができる。
【0062】
(A’)成分と(c)成分との反応温度は、生産性の観点から、50~150℃、60~120℃、又は70~100℃であってもよい。
【0063】
必要に応じて、(a)成分として、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂を一部併用してもよく、スチレン-無水マレイン酸共重合体のヒドロキシエチル(メタ)アクリレート変性物等のスチレン-マレイン酸系樹脂を一部併用してもよい。
【0064】
(A)成分は、アンダーカットの発生を抑制し、銅基板との密着性、耐熱衝撃性及び解像性をより向上する観点から、(A1)成分を含むことが好ましく、特に密着強度を向上する観点から、(A1)成分と(A2)成分とを含むことがより好ましい。
【0065】
(A)成分として(A1)成分と(A2)成分とを組み合わせて用いる場合、(A1)/(A2)の質量比は、特に限定されないが、レジストパターン輪郭の直線性、耐無電解めっき性及び耐熱性を向上する観点から、20/80~90/10、30/70~80/20、40/60~75/25、又は50/50~70/30であってもよい。
【0066】
(A)成分の酸価は、特に限定されない。(A)成分の酸価は、未露光部のアルカリ水溶液への溶解性を向上する観点から、30mgKOH/g以上、40mgKOH/g以上、又は50mgKOH/g以上であってもよい。(A)成分の酸価は、硬化膜の電気特性を向上する観点から、150mgKOH/g以下、120mgKOH/g以下、又は100mgKOH/g以下であってもよい。
【0067】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されない。(A)成分のMwは、硬化膜の密着性を向上する観点から、3000以上、4000以上、又は5000以上であってもよい。(A)成分のMwは、感光層の解像性を向上する観点から、30000以下、25000以下、又は18000以下であってもよい。
【0068】
Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定することができる。Mwは、例えば、下記のGPC条件で測定し、標準ポリスチレンの検量線を使用して換算した値をMwとすることができる。検量線の作成は、標準ポリスチレンとして5サンプルセット(「PStQuick MP-H」及び「PStQuick B」、東ソー株式会社製)を用いることができる。
GPC装置:高速GPC装置「HCL-8320GPC」(東ソー株式会社製)
検出器 :示差屈折計又はUV検出器(東ソー株式会社製)
カラム :カラムTSKgel SuperMultipore HZ-H(カラム長さ:15cm、カラム内径:4.6mm)(東ソー株式会社製)
溶離液 :テトラヒドロフラン(THF)
測定温度 :40℃
流量 :0.35mL/分
試料濃度 :10mg/THF5mL
注入量 :20μL
【0069】
((B)成分:水酸基と反応しうる官能基を有する化合物)
(B)成分としては、水酸基の保護基となる化合物であれば特に限定されない。(B)成分として、例えば、水酸基と反応してウレタン結合を形成可能なモノイソシアネート(以下、「(B1)成分」という。)、及び、水酸基と反応してエーテル結合を形成可能なビニル基含有化合物又はハロゲン化合物(以下、「(B2)成分」という。)が挙げられる。
【0070】
(B1)成分としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート等の(メタ)アクリロイル基を有するモノイソシアネート;フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、4-メトキシフェニルイソシアネート、2,6-ジメチルフェニルイソシアネート、3,5-ジメチルフェニルイソシアネート、2-ビフェニルイソシアネート、1-ナフタレンイソシアネート、2-フェニルエチルイソシアネート、4-エチルフェニルイソシアネート、4-ブチルフェニルイソシアネート等の芳香環を有するモノイソシアネート;エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、tert-ブチルイソシアネート、ヘプチルイソシアネート、へキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート等のアルキル基を有するモノイソシアネート;及び1-アダマンチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、シクロペンチルイソシアネート等の脂環を有するモノイソシアネートが挙げられる。
【0071】
(B2)成分としては、例えば、テトラヒドロピラン、クロロジメチルエーテル、クロロジエチルエーテル、クロロジメチルスルフィド、ベンジルブロミド、4-メトキシベンジルクロリド、及び2-メトキシエトキシメチルクロリドが挙げられる。
【0072】
水と(B)成分との分子間の分散力によるエネルギー(δD)、分子間の双極子相互作用によるエネルギー(δP)、分子間の水素結合によるエネルギー(δH)から求められる三次元空間座標のハンセン溶解度パラメータ(HSP)の距離を比較することで、(B)成分の疎水性を算出できる。(B)成分の疎水性は、本実施形態に係る硬化性樹脂の疎水性に相当する。
【0073】
HSPiPソフトウェアによるY-MBで算出した具体的な(B)成分のHSPと水とのHSP距離を表1に示す。硬化性樹脂の疎水性を高める観点から、(B)成分の水とのHSP距離は、30~50であってよく、32~48が好ましく、34~46がより好ましく、36~43が更に好ましい。
【0074】
【表1】
【0075】
本実施形態に係る硬化性樹脂の製造方法は、(A)成分であるエチレン性不飽和結合、水酸基、及びカルボキシ基を有するポリマーに、(B)成分である水酸基と反応しうる官能基を有する化合物を反応させる工程を有している。
【0076】
(A)成分と(B1)成分との反応において、例えば、(A)成分中の水酸基1当量に対して、(B1)成分のイソシアネート基を0.1~2.0当量反応させることで、硬化性樹脂の疎水性を高めることができる。
【0077】
(A)成分の水酸基と(B1)成分のイソシアネート基によるウレタン結合の形成反応の起こり易さは、(B1)成分のイソシアネートの構造に依存する。一般的に芳香環の電子吸引性の影響により、芳香環を有するイソシアネートは、水酸基との反応性が高く、芳香環を有しないイソシアネートは、水酸基と反応性が低い傾向にある。
【0078】
水酸基との反応性が低いイソシアネートを用いる場合は、触媒存在下で反応を行ってもよい。触媒としては、例えば、ジブチルラウリン酸スズ等の錫系触媒、トリエチレンジアミン等のアミン系触媒、ナフテン酸鉛等のカルボキシレート触媒、及びトリエチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン触媒が挙げられる。触媒の使用量は、(A)成分及び(B)成分の総量を基準として10~1000ppm程度であり、100~200ppmが好ましい。
【0079】
(B1)成分を反応させる際には、溶剤を添加してもよい。溶剤の添加量は、(A)成分100質量部に対して10~100質量部であってもよい。溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0080】
(A)成分と(B1)成分との反応温度は、25~100℃であってよく、40~90℃が好ましく、50~90℃がより好ましく、60~80℃が更に好ましい。反応時間は、0.5~15時間であってよい。(A)成分と(B1)成分との反応は、大気雰囲気下で実施することができるが、窒素ガス、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0081】
本実施形態に係る硬化性樹脂の水酸基の保護率が高くなることで、水酸基価が小さくなり、硬化性樹脂の耐加水分解性を向上することができる。水酸基価は、50mgKOH/g以下、40mgKOH/g以下、又は35mgKOH/g以下であってもよい。水酸基価は、JIS K0070に準じて、電位差滴定法により測定することができる。
【0082】
本実施形態に係る硬化性樹脂の水酸基の保護率は、耐加水分解性をより向上する観点から、30%以上、40%以上、又は50%以上であってもよい。水酸基の保護率は、13C NMR又は電位差滴定法により測定することで算出することができる。
【0083】
本実施形態に係る硬化性樹脂は、光硬化性、熱硬化性、及び現像性を有しているため、感光性樹脂組成物、接着剤等に好適に用いることができる。
【実施例0084】
以下、実施例により本開示をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0085】
(合成例1)
撹拌機、還流冷却器及び温度計を備えたフラスコに、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名「EXA-7376」、エポキシ当量:186)350質量部、アクリル酸70質量部、メチルハイドロキノン0.5質量部及びカルビトールアセテート120質量部を加え、90℃で加熱攪拌して混合物を完全に溶解した。次に、得られた溶液を60℃に冷却し、トリフェニルホスフィン2質量部を加え、100℃に加熱して、溶液の酸価が1mgKOH/g以下になるまで反応させた。反応後の溶液に、テトラヒドロ無水フタル酸(THPAC)98質量部及びカルビトールアセテート85質量部を加え、80℃で6時間反応させた。その後、室温まで冷却し、固形分が73質量%である(A1)成分としての酸変性エポキシアクリレートの溶液を得た。
【0086】
(A2)成分として、トリスフェノールメタン型酸変性エポキシアクリレートのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(日本化薬株式会社製、商品名「TCR-1348H」、酸価:98mgKOH/g)を準備した。(B1)成分として、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(株式会社レゾナック製、商品名「カレンズMOI」)、フェニルイソシアネート(東京化成工業株式会社製)、2,6-ジメチルフェニルイソシアネート(富士フイルム和光純薬株式会社製)、ベンジルイソシアネート(東京化成工業株式会社製)、シクロヘキシルイソシアネート(東京化成工業株式会社製)、及びオクチルイソシアネート(富士フイルム和光純薬株式会社製)を準備した。
【0087】
(実施例1)
撹拌機及び温度計を備えたフラスコに、合成例1の酸変性エポキシアクリレートの溶液397.6gを加え、窒素雰囲気下、70℃で撹拌しながら、ジブチルラウリン酸スズの10質量%酢酸エチル溶液0.8gをフラスコ内に滴下した。次いで、(B1)成分として、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート33.4gをフラスコ内に滴下し、70℃で1時間撹拌して、硬化性樹脂P-1の溶液を得た。
【0088】
(実施例2)
(B1)成分として、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート66.8gをフラスコ内に滴下し、70℃で2時間撹拌した以外は、実施例1と同様にして、硬化性樹脂P-2の溶液を得た。
【0089】
(実施例3)
(B1)成分として、フェニルイソシアネート25.9gをフラスコ内に滴下し、70℃で0.5時間撹拌した以外は、実施例1と同様にして、硬化性樹脂P-3の溶液を得た。
【0090】
(実施例4)
(B1)成分として、フェニルイソシアネート52.0gをフラスコ内に滴下し、70℃で1時間撹拌した以外は、実施例1と同様にして、硬化性樹脂P-4の溶液を得た。
【0091】
[評価]
13C NMRの測定)
(A)成分の水酸基に対する(B1)成分のイソシアネート基の反応を確認するため、合成例1の酸変性エポキシアクリレートと、実施例1~4の熱硬化性樹脂の13C NMRを測定した。NMRの測定は、測定装置としてAvance NEO(Bruker製)を用い、共鳴周波数:400MHz、測定温度:298K(25℃)、測定溶媒:DMSO-d6、積算回数:1024、待ち時間:50秒の条件で行った。
【0092】
図1に、合成例1の酸変性エポキシアクリレートのNMRスペクトルと、実施例1~4の硬化性樹脂のNMRスペクトルとを比較した図を示す。実施例1~4では、(A)成分の水酸基が結合している1級炭素(CH)に由来する73.8ppm付近のピークが減少し、70.7ppm付近に反応生成物由来のウレタン結合に隣接する1級炭素CHピークが出現した。実施例1と2、実施例3と4を比較することで、(B1)成分の添加量に応じて(A)成分由来の73.8ppmのピークの積分値が減少し、反応生成物由来の70.7ppm付近のピーク積分値が増加することから、水酸基の保護率を制御できることが確認された。
【0093】
(水酸基価及び酸価の測定)
合成例1の酸変性エポキシアクリレート、実施例1~4の硬化性樹脂の水酸基価及び酸価を、JIS K0070に準じて電位差滴定法により測定した。結果を表2に示す。
【0094】
【表2】
【0095】
表2より、水酸基の保護率に対応して、水酸基価が小さくなるのに対し、酸価は大きく変化しないことから、実施例1~4の硬化性樹脂には、カルボキシ基が残存していることが確認できた。
【0096】
(実施例5)
撹拌機及び温度計を備えたフラスコに、合成例1の酸変性エポキシアクリレートの溶液272.2gを加え、窒素雰囲気下、70℃で撹拌しながら、ジブチルラウリン酸スズの10質量%酢酸エチル溶液0.4gをフラスコ内に滴下した。次いで、(B1)成分として、2,6-ジメチルフェニルイソシアネート21.8gをフラスコ内に滴下し、70℃で30分撹拌して、硬化性樹脂P-5の溶液を得た。
【0097】
(実施例6)
撹拌機及び温度計を備えたフラスコに、合成例1の酸変性エポキシアクリレートの溶液253.5gを加え、窒素雰囲気下、70℃で撹拌した。次いで、(B1)成分として、ベンジルイソシアネート18.3gをフラスコ内に滴下し、70℃で50分撹拌して、硬化性樹脂P-6の溶液を得た。
【0098】
(実施例7)
撹拌機及び温度計を備えたフラスコに、合成例1の酸変性エポキシアクリレートの溶液254.4gを加え、窒素雰囲気下、70℃で撹拌しながらジブチルラウリン酸スズの10質量%酢酸エチル溶液0.4gをフラスコ内に滴下した。次いで、(B1)成分として、シクロヘキシルイソシアネート17.6gをフラスコ内に滴下し、70℃で2時間20分撹拌して、硬化性樹脂P-7の溶液を得た。
【0099】
(実施例8)
撹拌機及び温度計を備えたフラスコに、合成例1の酸変性エポキシアクリレートの溶液257.3gを加え、窒素雰囲気下、70℃で撹拌しながらジブチルラウリン酸スズの10質量%酢酸エチル溶液0.4gをフラスコ内に滴下した。次いで、(B1)成分として、オクチルイソシアネート20.7gをフラスコ内に滴下し、70℃で2時間10分撹拌して、硬化性樹脂P-8の溶液を得た。
【0100】
(実施例9)
撹拌機及び温度計を備えたフラスコに、トリスフェノールメタン型酸変性エポキシアクリレートの溶液407.4gを加え、窒素雰囲気下、70℃で撹拌した。次いで、(B1)成分として、フェニルイソシアネート20.1gをフラスコ内に滴下し、70℃で30分撹拌して、硬化性樹脂P-9の溶液を得た。
【0101】
[評価]
(FT-IRの測定)
(A)成分の水酸基に対する(B1)成分のイソシアネート基の反応を確認するため、実施例5~9の熱硬化性樹脂のFT-IRを測定した。FT-IRの測定は、測定装置としてNicolet iS50R FT-IR分光光度計(Thermo Fisher Scientific製)を用い、ATR法で測定した。
【0102】
図2は、実施例5~8の硬化性樹脂のIRスペクトルを示す図である。実施例5~8の硬化性樹脂は、(B1)成分のイソシアネート基由来する2250cm-1付近のピークが消失していることから、反応が進行したことが確認できた。
【0103】
図3は、実施例9のトリスフェノールメタン型酸変性エポキシアクリレートとフェニルイソシアネートの反応前後のIRスペクトルを比較した図である。反応後に2250cm-1付近のイソシアネート基由来のピークが消失していることから、反応が進行したことが確認できた。
図1
図2
図3