(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055979
(43)【公開日】2024-04-19
(54)【発明の名称】架橋ポリオレフィン分離膜、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法及びそれを含む電気化学素子
(51)【国際特許分類】
H01M 50/417 20210101AFI20240412BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20240412BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20240412BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240412BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240412BHJP
H01M 50/406 20210101ALI20240412BHJP
【FI】
H01M50/417
H01M50/489
H01M50/403 Z
H01M4/505
H01M4/525
H01M50/406
H01M50/403 B
H01M50/403 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024032988
(22)【出願日】2024-03-05
(62)【分割の表示】P 2022526457の分割
【原出願日】2020-11-06
(31)【優先権主張番号】10-2019-0142908
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジュ-ソン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン-シク・ペ
(72)【発明者】
【氏名】ビ-オ・リュ
(72)【発明者】
【氏名】ソン-ジェ・ハン
(57)【要約】
【課題】高温においても弾性が維持される分離膜及びそれを含む電気化学素子を提供する。
【解決手段】本発明は、架橋ポリオレフィン分離膜であって、振動数-損失貯蔵弾性率曲線において、分離膜の振動数が1rad/s以下を示す範囲で、損失弾性率G”(loss modulus)(B)に対する貯蔵弾性率G’(storage modulus)(A)の比(A/B)が、2以上であることを特徴とする分離膜及びそれを含む電気化学素子に関する。
本発明によると、最終の架橋分離膜において、損失弾性率に対する貯蔵弾性率の比を高く制御することで高温で弾性特性が維持され、安全性が向上した分離膜を提供することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋ポリオレフィン分離膜であって、
横軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数(rad/s)であり、縦軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の貯蔵弾性率G’(A)及び損失弾性率G”(B)である振動数-損失貯蔵弾性率曲線において、
前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数が1rad/s以下を示す範囲で、前記損失弾性率G”(B)に対する前記貯蔵弾性率G’(A)の比(A/B)が、2以上であることを特徴とする、架橋ポリオレフィン分離膜。
【請求項2】
架橋ポリオレフィン分離膜であって、
横軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数(rad/s)であり、縦軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の貯蔵弾性率G’(A)及び損失弾性率G”(B)である振動数-損失貯蔵弾性率曲線において、
前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数が10-1~1rad/sを示す範囲で、前記振動数に対する貯蔵弾性率G’(A)曲線の傾きが0.05~0.4であることを特徴とする、架橋ポリオレフィン分離膜。
【請求項3】
前記貯蔵弾性率の値が、1.0×105~1.0×107Paであることを特徴とする、請求項1または2に記載の架橋ポリオレフィン分離膜。
【請求項4】
前記損失弾性率の値が、3.0×105Pa以下であることを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載の架橋ポリオレフィン分離膜。
【請求項5】
前記架橋ポリオレフィン分離膜が、水架橋または紫外線架橋によって形成されることを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の架橋ポリオレフィン分離膜。
【請求項6】
前記架橋ポリオレフィン分離膜が水架橋によって形成されたものであって、
前記架橋ポリオレフィン分離膜中にSi-O-Si結合を含み、
前記架橋ポリオレフィン分離膜中のシラン(Si)含量が、前記架橋ポリオレフィン分離膜100重量部に対して0.01~20重量部であることを特徴とする、請求項5に記載の架橋ポリオレフィン分離膜。
【請求項7】
前記架橋ポリオレフィン分離膜が、紫外線架橋によって形成されたものであって、
複数のフィブリル及び前記複数のフィブリルが相互に絡み合うことによって生成された気孔を含み、前記フィブリルを構成しているポリオレフィン鎖が相互に直接架橋されて形成されたことを特徴とする、請求項5に記載の架橋ポリオレフィン分離膜。
【請求項8】
正極、負極及び前記正極と負極との間に介在された分離膜を含むリチウム二次電池であって、
前記分離膜は、請求項1から7の何れか一項に記載の架橋ポリオレフィン分離膜であり、
前記正極は、集電体と、前記集電体の上に位置し、正極活物質を含む正極活物質層と、を備え、
前記正極活物質は、Li[NiaCobMncM1dM2e]O2(M1及びM2は、相互に独立的にAl,Ni,Co,Fe,Mn,V,Cr,Ti,W,Ta,Mg及びMoからなる群より選択されたいずれか一つであり、a,b,c,d及びeは、相互に独立に酸化物組成元素の原子分率であって、a≧0.5,a+b+c+d+e=1,b>d>eである。)を含むことを特徴とする、リチウム二次電池。
【請求項9】
架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法であって、
(S1)ポリオレフィン、希釈剤、開始剤、架橋触媒及び炭素-炭素二重結合基含有のアルコキシシランを押出機に投入及び混合してシラングラフトされたポリオレフィン組成物を反応押出する段階と、
(S2)前記反応押出されたシラングラフトされたポリオレフィン組成物をシート状に成形及び延伸する段階と、
(S3)前記延伸されたシートから希釈剤を抽出して多孔性膜を製造する段階と、
(S4)前記多孔性膜を熱固定する段階であって、前記熱固定時に熱固定槽に初期に導入される多孔性膜の幅の100~150%に延伸する段階と、
(S5)前記熱固定された多孔性膜を水架橋する段階と、を含み、
横軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数(rad/s)であり、縦軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の貯蔵弾性率G(A)及び損失弾性率G”(B)である振動数-損失貯蔵弾性率曲線において、
前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数が1rad/s以下を示す範囲で、前記損失弾性率G”(B)に対する前記貯蔵弾性率G’(A)の比(A/B)が、2以上であることを特徴とする、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項10】
前記(S4)段階が、前記多孔性膜を熱固定する段階であって、
前記熱固定時において、熱固定槽で初期に導入する多孔性膜の幅の100~180%に第1延伸を行い、その後、初期に導入する多孔性膜の幅の100~150%に延伸を低めて第2延伸を行うことを特徴とする、請求項9に記載の架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項11】
熱固定槽に多孔性膜を初期に導入して第1延伸を開始する時間t1に対する、前記熱固定槽に多孔性膜を初期に導入して第2延伸を開始する時間t2の比(t2/t1)が、0.5~1.5であることを特徴とする、請求項10に記載の架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項12】
前記熱固定温度が、100~140℃であり、前記熱固定時間が、10~120秒であることを特徴とする、請求項9から11の何れか一項に記載の架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項13】
複数のフィブリルと、前記複数のフィブリルが相互に絡み合うことによって生成された気孔と、を含み、前記フィブリルを構成しているポリオレフィン鎖が相互に直接架橋されている架橋ポリオレフィン多孔性基材を含む架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法であって、
タイプII光開始剤を含むタイプII光開始剤組成物を非架橋ポリオレフィン多孔性基材に適用する段階と、
前記タイプII光開始剤組成物が適用されたポリオレフィン多孔性基材に紫外線(UV)を照射し、この際、前記UV照射光量が10~2,500mJ/cm2範囲であり、
横軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数(rad/s)であり、縦軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の貯蔵弾性率G’(A)及び損失弾性率G”(B)である振動数-損失貯蔵弾性率曲線において、
前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数が1rad/s以下を示す範囲で、前記損失弾性率G”(B)に対する前記貯蔵弾性率G’(A)の比(A/B)が、2以上であることを特徴とする、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項14】
前記タイプII光開始剤がチオキサントン(TX)、チオキサントン誘導体、ベンゾフェノン(BPO)、ベンゾフェノン誘導体またはこれらの二種以上の混合物を含むことを特徴とする、請求項13に記載の架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項15】
前記タイプII光開始剤組成物中のタイプII光開始剤の濃度が、0.01~0.3重量%の濃度範囲であることを特徴とする、請求項13または14に記載の架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋ポリオレフィン分離膜、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法及びそれを含む電気化学素子に関する。
【0002】
本出願は、2019年11月8日出願の韓国特許出願第10-2019-0142908号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
最近、エネルギー貯蔵技術に関する関心が高まりつつある。携帯電話、カムコーダー及びノートブックPC、延いては、電気自動車のエネルギーにまで適用分野が拡がり、電気化学素子の研究及び開発に対する努力が徐々に具体化している。電気化学素子は、このような面から最も注目されている分野であって、その中でも、充放電が可能な二次電池の開発は、関心の焦点となっている。最近は、このような電池の開発に際し、容量密度及び比エネルギーを向上させるために、新しい電極と電池の設計に関する研究開発へ進みつつある。
【0004】
現在、適用されている二次電池のうち、1990年代初めに開発されたリチウム二次電池は、水溶性電解液を使用するNi-MH、Ni-Cd、硫酸-鉛電池などの在来式電池に比べ、作動電圧が高く、エネルギー密度が遥かに高いという長所から脚光を浴びている。
【0005】
このようなリチウム二次電池は、正極、負極、電解液、分離膜から構成されており、このうち分離膜は正極と負極を分離して電気的に絶縁させるための絶縁性及び高い気孔度に基づいてリチウムイオンの透過性を高めるために高いイオン伝導度が求められる。
【0006】
このような分離膜は粘弾性を有するものであって、高温に露出する場合、粘性の特性が強くなって安全性を確保しにくいという問題がある。
【0007】
特に、このような問題点は、正極に含まれる正極活物質がニッケルリッチの正極活物質の場合に特に問題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一面が解決しようとする課題は、高温においても弾性が維持される分離膜及びそれを含む電気化学素子を提供することである。
【0009】
具体的には、180℃以上かつ220℃以下の範囲で弾性が維持されることによって、リチウム二次電池内で正極と負極とを隔離する機能が維持されることで、安全性が確保された分離膜及びそれを含む電気化学素子を提供することである。
【0010】
また、高温で分離膜の強度が維持されることで、高温への露出状況で外力に対する抵抗が充分に確保され、電気化学素子の安全性を確保することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一面は、下記の具現例による架橋ポリオレフィン分離膜を提供する。
【0012】
第1具現例によると、
架橋ポリオレフィン分離膜であって、
横軸は、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数(rad/s)であり、縦軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の貯蔵弾性率G’(storage modulus)(A)及び損失弾性率G”(loss modulus)(B)である振動数-損失貯蔵弾性率曲線において、
前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数が1rad/s以下を示す範囲で、前記損失弾性率G”(B)に対する前記貯蔵弾性率G’(A)の比(A/B)が、2以上であることを特徴とする架橋ポリオレフィン分離膜が提供される。
【0013】
第2具現例によると、
架橋ポリオレフィン分離膜であって、
横軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数(rad/s)であり、縦軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の貯蔵弾性率G’(A)及び損失弾性率G”(B)である振動数-損失貯蔵弾性率曲線において、
前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数が10-1~1rad/sを示す範囲で、前記振動数に対する貯蔵弾性率G’(A)曲線の傾きが0.05~0.4であることを特徴とする架橋ポリオレフィン分離膜が提供される。
【0014】
第3具現例によると、第1具現例または第2具現例において、前記貯蔵弾性率の値は、1.0×105~1.0×107Paであり得る。
【0015】
第4具現例によると、前述した具現例のいずれか一具現例において、前記損失弾性率の値は、3.0×105Pa以下であり得る。
【0016】
第5具現例によると、前記架橋ポリオレフィン分離膜は、水架橋または紫外線架橋によって形成され得る。
【0017】
第6具現例によると、第5具現例において、
前記架橋ポリオレフィン分離膜は水架橋によって形成されたものであって、
前記架橋ポリオレフィン分離膜中にSi-O-Si結合を含み、
前記架橋ポリオレフィン分離膜中のシラン(Si)含量は、前記架橋ポリオレフィン分離膜100重量部に対して0.01~20重量部であり得る。
【0018】
第7具現例によると、第5具現例において、
前記架橋ポリオレフィン分離膜は、紫外線架橋によって形成されたものであって、
複数のフィブリル及び前記複数のフィブリルが相互に絡み合うことによって生成された気孔を含み、前記フィブリルを構成しているポリオレフィン鎖が相互に直接架橋されて形成され得る。
【0019】
本発明の他の一面は、下記の具現例によるリチウム二次電池を提供する。
【0020】
第8具現例によると、
正極、負極及び前記正極と負極との間に介在された分離膜を含むリチウム二次電池であって、
前記分離膜は、前述した具現例に記載の架橋ポリオレフィン分離膜であり、
前記正極は、集電体と、前記集電体の上に位置し、正極活物質を含む正極活物質層と、を備え、
前記正極活物質は、Li[NiaCobMncM1dM2e]O2(M1及びM2は、相互に独立的にAl,Ni,Co,Fe,Mn,V,Cr,Ti,W,Ta,Mg及びMoからなる群より選択されたいずれか一つであり、a,b,c,d及びeは、相互に独立的に酸化物組成元素の原子分率であって、a≧0.5,a+b+c+d+e=1,b>d>eである。)を含むことを特徴とするリチウム二次電池は提供される。
【0021】
本発明の他の一面は、下記の具現例による架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法を提供する。
【0022】
第9具現例によると、
架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法であって、
(S1)ポリオレフィン、希釈剤、開始剤、架橋触媒及び炭素-炭素二重結合基含有のアルコキシシランを押出機に投入及び混合してシラングラフトされたポリオレフィン組成物を反応押出する段階と、
(S2)前記反応押出された、シラングラフトされたポリオレフィン組成物をシート状に成形及び延伸する段階と、
(S3)前記延伸されたシートから希釈剤を抽出して多孔性膜を製造する段階と、
(S4)前記多孔性膜を熱固定する段階であって、前記熱固定時に熱固定槽に初期に導入される多孔性膜の幅の100~150%に延伸する段階と、
(S5)前記熱固定された多孔性膜を水架橋する段階と、を含み、
横軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数(rad/s)であり、縦軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の貯蔵弾性率G(A)及び損失弾性率G”(B)である振動数-損失貯蔵弾性率曲線において、
前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数が1rad/s以下を示す範囲で、前記損失弾性率G”(B)に対する前記貯蔵弾性率G’(A)の比(A/B)が、2以上であることを特徴とする架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法が提供される。
【0023】
第10具現例によると、第9具現例において、
前記(S4)段階が、前記多孔性膜を熱固定する段階であって、
前記熱固定時において、熱固定槽で初期に導入する多孔性膜の幅の100~180%に第1延伸を行い、その後、初期に導入する多孔性膜の幅の100~150%に延伸を低めて第2延伸を行い得る。
【0024】
第11具現例によると、第10具現例において、
熱固定槽に多孔性膜を初期に導入して第1延伸を開始する時間t1に対する、前記熱固定槽に多孔性膜を初期に導入して第2延伸を開始する時間t2の比(t2/t1)は、0.5~1.5であり得る。
【0025】
第12具現例によると、第9~第11具現例のいずれか一具現例において、
前記熱固定温度は100~140℃であり、前記熱固定時間は10~120秒であり得る。
【0026】
本発明の他の一面は、下記の具現例による架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法を提供する。
【0027】
第13具現例によると、
複数のフィブリルと、前記複数のフィブリルが相互に絡み合うことによって生成された気孔と、を含み、前記フィブリルを構成しているポリオレフィン鎖が相互に直接架橋されている架橋ポリオレフィン多孔性基材を含む架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法であって、
タイプII光開始剤を含むタイプII光開始剤組成物を非架橋ポリオレフィン多孔性基材に適用する段階と、
前記タイプII光開始剤組成物が適用されたポリオレフィン多孔性基材に紫外線(UV)を照射し、この際、前記UV照射光量が10~2,500mJ/cm2範囲であり、
横軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数(rad/s)であり、縦軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の貯蔵弾性率G’(A)及び損失弾性率G”(B)である振動数-損失貯蔵弾性率曲線において、
前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数が1rad/s以下を示す範囲で、前記損失弾性率G”(B)に対する前記貯蔵弾性率G’(A)の比(A/B)が、2以上であることを特徴とする架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法が提供される。
【0028】
第14具現例によると、第13具現例において、
前記タイプII光開始剤がチオキサントン(TX:Thioxanthone)、チオキサントン誘導体、ベンゾフェノン(BPO:Benzophenone)、ベンゾフェノン誘導体またはこれらの二種以上の混合物を含み得る。
【0029】
第15具現例によると、第13または第14具現例において、
前記タイプII光開始剤組成物中のタイプII光開始剤の濃度が、0.01~0.3重量%の濃度範囲であり得る。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一実施例によると、分離膜中のシラン架橋結合によって機械的または熱的安全性が改善された分離膜を提供することができる。
【0031】
本発明の一実施例によると、超高分子量ポリオレフィンの使用によって機械的または熱的安全性が改善された分離膜を提供することができる。
【0032】
本発明の一実施例によると、特に、自分の発熱温度が低いことから、安全性の面で相対的に不安定なニッケルリッチの正極活物質を含む正極を備えたリチウム二次電池に本発明の一実施例による分離膜を使用することで、安全性が改善されたリチウム二次電池を提供することができる。
【0033】
本発明の一実施例によると、高温で粘性が低い一方、弾性の高い分離膜を提供することができる。これによって、高温で分離膜の強度が維持され、高温への露出状況で外力に対する抵抗が充分に確保されることで、安全性が改善された電気化学素子を提供することができる。
【0034】
本発明の一実施例によると、従来と異なり、架橋ポリオレフィン分離膜を簡素化した方法で製造することができる。
【0035】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の実施例及び比較例による分離膜の損失貯蔵弾性率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0038】
本明細書の全体において、ある部分が他の部分と「連結(接続)」されているとするとき、これは、「直接的に連結(接続)」されている場合のみならず、その間に他の素子を介して「間接的に連結(接続)」されている場合も含む。また、前記連結(接続)は、物理的連結(接続)のみならず、電気化学的連結(接続)を含む。
【0039】
なお、明細書の全体において、ある部分が、ある構成要素を「含む」とするとき、これは特に反する記載がない限り、他の構成要素を除くことではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0040】
また、本明細書で使用される「含む(comprise及び/またはcomprising)」は、言及した形状、数字、段階、動作、部材、要素及び/またはこれらのグループの存在を特定することであり、一つ以上の他の形状、数字、動作、部材、要素及び/またはグループの存在または付加を排除しない。
【0041】
本明細書の全体にかけて使われる用語、「実質的に」などは、言及された意味に、固有の製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値またはその数値に近接した意味として使われ、本願の理解を助けるために正確または絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に用いることを防止するために使われる。
【0042】
本明細書の全体において、「A及び/またはB」の記載は、「AまたはB、もしくはこれら全部」を意味する。
【0043】
本発明の一面は、架橋ポリオレフィン分離膜及びそれを含む電気化学素子に関する。
【0044】
リチウム二次電池に使用される分離膜は、シャットダウン温度とメルトダウン温度との差が大きい場合に優秀な安全性を示す。この際、この二つの間隔を広げるためには、シャットダウン温度は減少する方向へ、メルトダウン温度は増加する方向へ調節しなければならない。
【0045】
そこで本発明者は、より高いメルトダウン温度を有する分離膜を製造するために架橋反応を用いた。この際、架橋反応は水架橋反応または紫外線架橋反応であり得る。メルトダウン温度を高めるさらに他の方法には、ポリオレフィンの分子量を高めて弾性を向上させる方法が挙げられる。分子量が高いポリオレフィン樹脂を使用する場合、低温は勿論、高温においても流動性が弱くなりながら弾性が高くなる。この際、分子量の高いポリオレフィン樹脂は、超高分子量ポリオレフィンであり得る。
【0046】
一方、このような架橋分離膜は粘弾性を有する一方、高温に露出する場合、粘弾性特性のうち粘性が強くなってしまい、安全性を確保しにくいという問題があった。
【0047】
本発明者はこのような問題点に着眼して高温においても安全性が確保された分離膜及びそれを含む電気化学素子を提供する。
【0048】
一方、本発明において、高温とは180~220℃を意味し、分離膜が溶融する温度以上を指す。
【0049】
本発明の一面による架橋ポリオレフィン分離膜は、
横軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数(rad/s)であり、縦軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の貯蔵弾性率G’(storage modulus)(A)及び損失弾性率G”(loss modulus)(B)である振動数-損失貯蔵弾性率曲線において、
前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数が1rad/s以下を示す範囲で、前記損失弾性率G”(B)に対する前記貯蔵弾性率G’(A)の比(A/B)が、2以上であることを特徴とする。
【0050】
本発明は、架橋ポリオレフィン分離膜において、高温においても安全性が確保された分離膜を発明しようと研究した。これを解決するための手段として、高温で分離膜の粘性は低める一方、分離膜の弾性を高めることで、結果的に高温安全性の改善を図る。
【0051】
具体的には、高温で分離膜の粘性を低める一方、弾性を高める場合、高温で分離膜の強度が維持され、分離膜そのものの流動性が発生しなくなり、正・負極間の短絡を防止することができるので、結果的に分離膜の安全性が改善される。
【0052】
本発明の具体的な一実施様態において、横軸を、対数スケールに変換された架橋ポリオレフィン分離膜の振動数(rad/s)にし、縦軸を、対数スケールに変換された架橋ポリオレフィン分離膜の貯蔵弾性率G’(A)及び損失弾性率G”(B)である振動数-損失貯蔵弾性率曲線において、G’の値がG”に比べて大きい場合、具体的には、2以上である場合に安全性が向上した分離膜を提供することができる。
【0053】
G’値に比べてG”値が大きい場合には、分離膜の弾性に比べて粘性が大きく現われるようになり、高温で分離膜の気孔が速く閉塞する問題がある。
【0054】
一方、G”に対するG’の値が2未満である場合には、分離膜の流動性が発生し、分離膜による隔離機能が失われる問題があって、望ましくない。
【0055】
本発明において、貯蔵弾性率G’(storage modulus)とは、エネルギーを貯蔵する物質の能力を意味し、数式1のように表すことができる。
【0056】
[数1]
G’=(応力(stress)/歪み(strain))cosδ
【0057】
本発明において、前記貯蔵弾性率は、動的機械分析(Dynamic Mechanical Analysis)を用いて測定することができる。
【0058】
本発明において、前記貯蔵弾性率は180~220℃の温度範囲及び1rad/sの振動数において温度掃引テスト(Temperature sweep test)方法で動的機械分析を用いて測定した。
【0059】
本発明の具体的な一実施様態において、前記貯蔵弾性率の値は、190℃の温度範囲及び1rad/sの振動数で、1.0×105~1.0×107Pa、または1.2×105~5.0×106Pa、または1.5×105~2.0×106Pa、または1.7×105~1.0×106Pa、または1.9×105~3.8×105Paであり得る。前記貯蔵弾性率の値が前記数値範囲である場合、高温における分離膜強度を維持できるという面で有利である。
【0060】
本発明において、損失弾性率G”(loss modulus)とは、変形によってエネルギーを失う物質の能力を意味し、数式2のように表すことができる。
【0061】
[数2]
G”=(応力(stress)/歪み(strain))sinδ
【0062】
本発明において、前記損失弾性率は、動的機械分析を用いて測定し得る。
【0063】
本発明において、前記損失弾性率は、180~220℃の温度範囲及び1rad/sの振動数において、温度掃引テストの方法で動的機械分析を用いて測定した。
【0064】
本発明の具体的な一実施様態において、前記損失弾性率の値は190℃の温度範囲及び1rad/sの振動数において、3.0×105Pa以下、1.0×104~3.0×105Pa、または2.0×104~1.5×105Pa、または5.0×104~1.2×105Pa、または7.0×104~1.1×105Paであり得る。前記損失弾性率の値が前記数値範囲の場合、分離膜の流動性が発生しないという面で有利である。
【0065】
本発明において、分離膜損失弾性率G”(B)に対する貯蔵弾性率G’(A)の比(A/B)が意味することは、粘性寄与に対する弾性寄与の相対的な尺度である。
【0066】
具体的には、前記の割合が1以上である場合には、固体に類似な特性を示し、前記の割合が1以下である場合には、液体に類似な特性を示す。
【0067】
一方、前記A/Bは、キャスト及び延伸工程においては、押出シートの均一性及び流動性を決定する相対的な尺度として用いられる。
【0068】
したがって、分離膜の製造工程においては、工程が円滑に行われるようにするために、A/Bの値が低いことが望ましい。最終分離膜においては、A/Bの比が高いことが望ましく、本発明では、特に2以上であることが望ましい。
【0069】
本発明の具体的な一実施様態において、前記分離膜の振動数が1rad/s以下を示す範囲で、前記損失弾性率G”(B)に対する前記貯蔵弾性率G’(A)の比(A/B)が2以上、または2~7、または2~5、または2.1~4.7、または2.18~4.68であり得る。前記A/Bの比が前記のようなとき、高温で分離膜の強度を維持しながら分離膜が隔離機能を維持できるという面で有利である。
【0070】
一方、本発明の他の一面は、
架橋ポリオレフィン分離膜であって、
横軸は、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数(rad/s)であり、縦軸は対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の貯蔵弾性率G’(A)及び損失弾性率G”(B)である振動数-損失貯蔵弾性率曲線において、
前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数が10-1~1rad/sを示す範囲で、前記振動数に対する貯蔵弾性率G’(A)曲線の傾きが0.05~0.4であることを特徴とする架橋ポリオレフィン分離膜を提供する。
【0071】
この際、貯蔵弾性率及び損失弾性率は、前述した内容を代わりにする。
【0072】
本発明の具体的な一実施様態において、前記分離膜の振動数が10-1~1 rad/sを示す範囲で、前記振動数に対する貯蔵弾性率G’(A)曲線の傾きが0.05~0.4、または0.07~0.35、または0.1~0.3、0.12~0.28、または0.133~0.267であり得る。前記A/Bの比が前記のようなとき、高温で分離膜が隔離機能を維持できるという面で有利である。
【0073】
本発明の具体的な一実施様態において、前記分離膜は、水架橋または紫外線架橋によって形成されたものであり得る。
【0074】
本発明の具体的な一実施様態において、前記分離膜は、超高分子量ポリオレフィンが全体ポリオレフィンの含量100重量部に対して50重量部以上であり得る。
【0075】
本発明において、前記分離膜は、架橋されたものであれば、制限されないが、特に、水架橋である場合、高温で分離膜の弾性を極大化できるという面で有利である。
【0076】
具体的には、前記分離膜が水架橋によって形成された場合には、前記分離膜中のSi-O-Si結合を含み、
前記分離膜中のケイ素(Si)含量は、前記分離膜100重量部に対して0.01~20重量部であり得る。
【0077】
この際、前記のようなシラン含量を維持することで、分離膜の架橋度が30~80%に維持されてメルトダウン温度の高い分離膜を提供することができる。
【0078】
本発明の具体的な一実施様態において、前記架橋ポリオレフィン分離膜は、紫外線架橋によって形成されたものであって、複数のフィブリルと、前記複数のフィブリルが相互に絡み合うことによって生成された気孔と、を含み、前記フィブリルを構成しているポリオレフィン鎖が相互に直接架橋されて形成されたものであり得る。
【0079】
この際、前記「フィブリル」とは、ポリオレフィン多孔性基材を構成する高分子鎖が多孔性基材の製造過程で長手方向へ延伸及び配向されることで、隣接する分子鎖同士の結合力が大きくなり、長手方向へ集合して形成されたものを意味する。その結果、本発明による架橋ポリオレフィン多孔性基材は、基材の表面と平行に配列された複数のフィブリルが層状で積層された構造を有するようになる。
【0080】
この際、前記「直接架橋」とは、実質的にポリオレフィンからなるフィブリル、より望ましくは、ポリオレフィンのみからなるフィブリルが、タイプII光開始剤の添加によって反応性を有するようになり、前記フィブリルを構成するポリオレフィン鎖の間に直接架橋された状態を意味する。したがって、追加的な架橋剤が投入されて架橋剤同士で発生した架橋反応は、本発明で指す「直接架橋」に該当しない。
【0081】
前記「直接架橋」とは、タイプII光開始剤によって行われる架橋である。
【0082】
通常、光開始剤は、タイプI光開始剤と、タイプII光開始剤に分けられる。
【0083】
タイプI光開始剤は、光を吸収した後、単分子が開裂(unimolecular bond cleavage)され、反応性化合物種になるものである。これらの光開始剤が作用するためには、他の化合物種が不要である。このようなタイプI光開始剤と硬化剤を用いてポリオレフィンの鎖、例えば、ポリエチレンを架橋する場合には、ポリエチレンの鎖から形成されたラジカルに開始剤または硬化剤が結合して架橋が発生することが知られている。
【0084】
これに対し、タイプII光開始剤は、二分子が反応するものであって、光を吸収した後にさらに他の分子(例えば、共開始剤または相乗剤(synergist))と反応して反応性化合物を形成することが知られている。
【0085】
しかし、本発明では、タイプII光開始剤が使用されるにも拘わらず、前記タイプII光開始剤は、さらに他の共開始剤、相乗剤の補助なく、光吸収のみで水素引き抜き反応(hydrogen abstraction)によって水素原子が除去されながらラジカルを形成して反応性化合物に形成され、また、ポリオレフィンそのものを反応性にすることを特徴とする。これによって、本発明の一面によると、ポリオレフィン化合物からなるフィブリルのポリオレフィン鎖が直接架橋された架橋ポリオレフィン多孔性基材を提供することができる。この場合、直接架橋の前と後のポリオレフィン多孔性基材で気孔構造がそのまま維持できる。これによって、熱的安全性が改善される。
【0086】
本発明による架橋ポリオレフィン分離膜は、下記のような方法によって製造され得るが、これに制限されない。
【0087】
本発明の一面は、下記のような架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法を提供する。
【0088】
具体的には、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法であって、
(S1)ポリオレフィン、希釈剤、開始剤、架橋触媒及び炭素-炭素二重結合基含有のアルコキシシランを押出機に投入及び混合してシラングラフトされたポリオレフィン組成物を反応押出する段階と、
(S2)前記反応押出されたシラングラフトされたポリオレフィン組成物をシート状に成形及び延伸する段階と、
(S3)前記延伸されたシートから希釈剤を抽出して多孔性膜を製造する段階と、
(S4)前記多孔性膜を熱固定する段階であって、前記熱固定時に熱固定槽に初期に導入される多孔性膜の幅の100~150%に延伸する段階と、
(S5)前記熱固定された多孔性膜を水架橋する段階と、を含み、
横軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数(rad/s)であり、縦軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の貯蔵弾性率G(A)及び損失弾性率G”(B)である振動数-損失貯蔵弾性率曲線において、
前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数が1rad/s以下を示す範囲で、前記損失弾性率G”(B)に対する前記貯蔵弾性率G’(A)の比(A/B)が、2以上であることを特徴とする。
【0089】
前記(S1)段階は、非グラフトされたポリオレフィン、希釈剤、開始剤、架橋触媒及び炭素-炭素二重結合基含有のアルコキシシランを押出機に投入し、混合及び反応させて反応押出する段階である。
【0090】
本発明の具体的な一実施様態において、前記ポリオレフィンは、ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリブチレン;ポリペンテン;ポリヘキセン;ポリオクテン;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、4-メチルペンテン、ヘキセン、ヘプテン及びオクテンのうち二種以上の共重合体;またはこれらの混合物であり得る。
【0091】
特に、前記ポリエチレンには、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)などがあり、このうち結晶度が高くて樹脂の溶融点が高い高密度ポリエチレンが最も望ましい。
【0092】
本発明の具体的な一実施様態において、前記ポリエチレンの重量平均分子量は、200,000~1,000,000、または220,000~700,000、または250,000~600,000であり得る。本発明では、200,000~1,000,000の重量平均分子量を有する高分子量のポリオレフィンを分離膜製造の出発物質として使用することで、分離膜フィルムの均一性及び製膜工程性を確保しながら、最終的に強度及び耐熱性に優れた分離膜を得ることができる。
【0093】
本発明の具体的な一実施様態において、前記希釈剤は、湿式分離膜の製造に通常使用される液体または固体パラフィンオイル、鉱油、ワックス、大豆油などを使用し得る。
【0094】
本発明の具体的な一実施様態において、前記希釈剤としては、ポリオレフィンと液-液相分離できる希釈剤も使用可能であり、例えば、ジブチルフタレート(dibutyl phthalate)、ジヘキシルフタレート(dihexyl phthalate)、ジオクチルフタレート(dioctyl phthalate)などのフタル酸エステル(phthalic acid ester)類;ジフェニルエーテル(diphenyl ether)、ベンジルエーテル(benzyl ether)などの芳香族エーテル類;パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸などの炭素数10~20の脂肪酸類;パルミチン酸アルコール、ステアリン酸アルコール、オレイン酸アルコールなどの炭素数10~20の脂肪酸アルコール類;パルミチン酸モノ-、ジ-、またはトリエステル、ステアリン酸モノ-、ジ-、またはトリエステル、オレイン酸モノ-、ジ-、またはトリエステル、リノール酸モノ-、ジ-、またはトリエステルなどの脂肪酸グループの炭素数が4~26である飽和及び不飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸の二重結合がエポキシに置き換えられた一つまたは二つ以上の脂肪酸が、ヒドロキシ基が1~8個であり、炭素数が1~10であるアルコールとエステル結合した脂肪酸エステル類;であり得る。
【0095】
前記希釈剤は、前述した成分を単独でまたは少なくとも二種以上を含む混合物として使用し得る。
【0096】
本発明の具体的な一実施様態において、前記希釈剤の含量は、非グラフトされたポリオレフィン含量100重量部を基準で、100~350重量部、または125~300重量部、または150~250重量部であり得る。希釈剤の総含量が前記数値範囲を満たす場合、非グラフトされたポリオレフィン含量が多いことによって気孔度が減少して気孔サイズが小さくなり、気孔同士の相互連結が少なくて透過度が大幅低下し、非グラフトされたポリオレフィン組成物の粘度が上昇することで押出負荷の上昇によって加工が困難になる問題が減少し、非グラフトされたポリオレフィンの含量が小さいことによって、非グラフトされたポリオレフィンと希釈剤の混練性が低下して、非グラフトされたポリオレフィンが希釈剤に熱力学的に混練されずにゲル状で押し出されて発生する延伸破断及び厚さのばらつきなどのような問題を減少させることができる。
【0097】
本発明の具体的な一実施様態において、炭素-炭素二重結合基含有のアルコキシシランは、シラン架橋反応を起こす架橋剤であって、炭素-炭素二重結合基、具体的には、ビニル基によってポリオレフィンにグラフト化され、アルコキシ基によって水架橋反応が行われ、ポリオレフィンを架橋させる役割を果たす。
【0098】
本発明の具体的な一実施様態において、下記の化学式1で表される化合物を含むことができる:
【化1】
【0099】
前記化学式1において、前記R1、R2及びR3は、各々独立に、炭素数1~10のアルコキシ基または炭素数1~10のアルキル基であり、ここで、前記R1、R2及びR3の少なくとも一つは、アルコキシ基であり;
前記Rは、ビニル基、アクリルオキシ基、メタクリルオキシ基または炭素数1~20のアルキル基であり、ここで、前記アルキル基の少なくとも一つの水素が、ビニル基、アクリル基、アクリルオキシ基、メタクリルオキシ基またはメタクリル基に置き換えられる。
【0100】
一方、前記Rは、追加的に、アミノ基、エポキシ基またはイソシアネート基をさらに含み得る。
【0101】
本発明の具体的な一実施様態において、前記炭素-炭素二重結合基含有のアルコキシシランは、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、(3-メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-メタクリルオキシプロピル)トリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジエトキシシラン、またはこれらの少なくとも二種以上の混合物を含み得る。
【0102】
本発明の具体的な一実施様態において、前記炭素-炭素二重結合基含有のアルコキシシランの含量は、ポリオレフィンと希釈剤の総量100重量部を基準で、0.1~3.0重量部、または0.2~2.0重量部、または0.5~1.5重量部であり得る。前記炭素-炭素二重結合基含有のアルコキシシランの含量が、前記数値範囲を満たす場合、シランの含量が小さくてグラフト率が低下することで架橋度が低くなるか、またはシランの含量が多くて未反応シランが残存して押出シートの外観が不良になる問題などを防止することができる。
【0103】
本発明の具体的な一実施様態において、前記開始剤は、ラジカル生成が可能な開始剤であれば、制限なく使用可能である。前記開始剤の非制限的な例には、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(2,5-dimethyl-2,5-di(tert-butylperoxy)hexane,(DHBP))、ベンゾイルペルオキシド、アセチルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、クミルペルオキシド、ハイドロゲンペルオキシド、ポタシウムペルサルフェートなどが挙げられる。
【0104】
本発明の具体的な一実施様態において、前記開始剤の含量は、前記炭素-炭素二重結合基含有のアルコキシシラン100重量部を基準で、0.1~20重量部、詳しくは1~10重量部、より詳しくは2~5重量部であり得る。前記開始剤の含量が前記数値範囲を満たす場合、開始剤の含量が低いことによってシラングラフト率が低下するか、または開始剤の含量が多いことによって押出機内でポリエチレン同士の架橋問題を防止することができる。
【0105】
本発明の具体的な一実施様態において、前記架橋触媒は、シラン架橋反応を促進するために添加される。
【0106】
本発明の具体的な一実施様態において、前記架橋触媒は、すず、亜鉛、鉄、鉛、コバルトなどの金属のカルボン酸塩、有機塩基、無機酸及び有機酸が使用され得る。前記架橋触媒の非制限的な例には、前記金属のカルボン酸塩としては、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジアセテート、酢酸第一スズ、カプリル酸第一スズ、ナフテン酸亜鉛、カプリル酸亜鉛、ナフテン酸コバルトなどが挙げられ、前記有機塩基としては、エチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ピリジンなどが挙げられ、前記無機酸としては、硫酸、塩酸などが挙げられ、前記有機酸としては、トルエン、スルホン酸、酢酸、ステアリン酸、マレイン酸などが挙げられる。また、前記架橋触媒は、これらのうち単独でまたは二種以上の混合物を使用し得る。
【0107】
本発明の具体的な一実施様態において、前記架橋触媒の含量は、前記炭素-炭素二重結合基含有のアルコキシシラン100重量部を基準で0.1~20重量部、または1~10重量部、または2~5重量部であり得る。前記架橋触媒の含量が前記数値範囲を満たす場合、所望する水準のシラン架橋反応が起こり、リチウム二次電池内における所望しない副反応を起こさない。架橋触媒が無駄に使われるなどの費用的な問題が発生しない。
【0108】
本発明の具体的な一実施様態において、前記希釈剤の含量は、前記ポリオレフィン100重量部を基準で100~350重量部、または125~300重量部、または150~250重量部であり得る。希釈剤の総含量が前記数値範囲を満たす場合、ポリオレフィンの含量が多いことによって気孔度が減少して気孔サイズが小さくなり、気孔同士の相互連結が少なくなって透過度が大幅低下し、ポリオレフィン溶液の粘度が上昇することによる押出負荷の上昇によって加工しにくくなる問題が減少し、ポリオレフィンの含量が少ないことからポリオレフィンと希釈剤との混練性が低下してポリオレフィンが希釈剤に熱力学的に混練されずにゲル状で押し出されて発生する延伸時における破断及び厚さのばらつきなどの問題を減少させることができる。
【0109】
本発明の具体的な一実施様態において、前記シラングラフトされたポリオレフィン組成物は、必要に応じて、酸化安定剤、UV安定剤、帯電防止剤、核剤(nucleating agent)など、特定機能の向上のための通常の添加剤がさらに含まれ得る。
【0110】
本発明の具体的な一実施様態において、前記反応押出段階は、単軸押出機または二軸押出機を使い得る。
【0111】
次に、前記反応押出された、シラングラフトされたポリオレフィン組成物をシート状に成形及び延伸する(S2)。
【0112】
例えば、反応押出された、シラングラフトされたポリオレフィン組成物をTダイなどを設置した押出機などを用いて押し出し、その後、水冷式、空冷式を用いた通常のキャスト製法(casting)またはカレンダー製法を用いて冷却押出物を形成し得る。
【0113】
本発明の具体的な一実施様態において、前記のように延伸する段階を経ることで、改善された機械的強度及び穿孔強度を有する分離膜を提供することができる.
【0114】
本発明の具体的な一実施様態において、前記延伸は、ロール方式またはテンター方式または逐次または同時延伸で行い得る。延伸比は、縦方向または横方向へ各々3倍以上または4~10倍であり得、総延伸比は、14~100倍であり得る。延伸比が前記数値範囲を満たす場合、一方向の配向が十分ではないと共に、縦方向と横方向との物性均衡が崩れ、引張強度及び突刺し強度が低下する問題を防止することができ、総延伸比が前記数値範囲を満たすことによって、未延伸または気孔形成が起こらない問題を防止することができる。
【0115】
本発明の具体的な一実施様態において、前記延伸温度は、使用されたポリオレフィンの融点、希釈剤の濃度及び種類によって変わり得る。
【0116】
本発明の具体的な一実施様態において、例えば、使用されたポリオレフィンがポリエチレンであり、希釈剤が液体パラフィンである場合、前記延伸温度は縦延伸の場合、70~160℃、または90~140℃、または100~130℃であり得、横延伸の場合、90~180℃、または110~160℃、または120~150℃であり得、両方向の延伸を同時に行う場合には、90~180℃、または110~160℃、または120~150℃であり得る。前記延伸温度が前記数値範囲を満たす場合、前記延伸温度が低い温度範囲を有することによって軟性(softness)がなくて破断が起こるか、または未延伸となる問題を防止することができ、延伸温度が高いことによって発生する部分的な過延伸または物性差を防止することができる。
【0117】
その後、前記成形及び延伸されたシートから希釈剤を抽出してシラングラフトされたポリオレフィン多孔性膜を製造する(S3)。
【0118】
本発明の具体的な一実施様態において、前記多孔性膜で有機溶媒を用いて希釈剤を抽出し、前記多孔性膜を乾燥し得る。
【0119】
本発明の具体的な一実施様態において、前記有機溶媒は、前記希釈剤を抽出できるものであれば、特に制限されないが、抽出効率が高くて乾燥が速いメチルエチルケトン、メチレンクロライドまたはヘキサンなどが望ましい。
【0120】
本発明の具体的な一実施様態において、前記抽出方法は、浸漬(immersion)方法、溶剤スプレー(solvent spray)方法、超音波(ultrasonic)法などのような通常の全ての溶媒抽出方法が各々または複合的に使用され得る。抽出処理した後、残留希釈剤の含量は、望ましくは1重量%以下である。残留希釈剤の含量が1重量%を超過すると、物性が低下して多孔性膜の透過度が減少する。残留希釈剤の含量は、抽出温度と抽出時間に影響を受け得、希釈剤と有機溶媒の溶解度の増加のために、抽出温度は高い方が良いが、有機溶媒が沸騰することによる安全性の問題を考慮すると、40℃以下であることが望ましい。前記抽出温度が希釈剤の凝固点以下になると、抽出効率が大幅低下するため、希釈剤の凝固点よりは必ず高いことが望ましい。
【0121】
また、抽出時間は、製造される多孔性膜の厚さによって変わるが、5~15μmの厚さの分離膜の場合には、1~3分間が適切である。
【0122】
その後、前記多孔性膜を熱固定する(S4)。前記熱固定とは、多孔性膜を固定して熱を加え、収縮しようとする多孔性膜を強制的に固定して残留応力を除去することである。
【0123】
この際、前記熱固定時、熱固定槽に初期に導入する多孔性膜の幅の100~150%に多孔性膜を延伸する。本発明の具体的な一実施様態において、前記延伸は、前述した数値範囲内で、100、105または110%以上であり得、150、140または130%以下であり得る。前記のような範囲を満たす場合、分離膜の残留応力を効果的に除去すると共に、所望する厚さ及び気孔度を確保することができる。
【0124】
ここで、前記(S4)段階は、前記多孔性膜を熱固定する段階であって、
前記熱固定時、熱固定槽で初期に導入される多孔性膜の幅の100~180%に第1延伸し、初期に導入される多孔性膜の幅の100~150%に延伸を緩和して第2延伸する段階であり得る。言い換えれば、第1延伸される多孔性膜の幅に比べて第2延伸される多孔性膜の幅がより狭い。
【0125】
このように、第2延伸において、第1延伸に比べて幅を緩和させることで分離膜の熱収縮率を減少させることができる。
【0126】
熱固定槽での延伸が上述した範囲よりも過度な場合、架橋が起こり得る架橋点が相互に遠くなって架橋が効果的に起こりにくく、これによって、所望する貯蔵弾性率の増加効果が微々たるものになり、一般的な未架橋の分離膜と類似なレオロジー特性を示す。
【0127】
この際、前記熱固定槽に多孔性膜を初期に導入して第1延伸を開始する時間t1に対する、前記熱固定槽に多孔性膜を初期に導入して第2延伸を開始する時間t2の比(t2/t1)は、0.5~1.5、または0.7~1.3、または0.8~1.2であり得る。
【0128】
熱固定温度が高いことが収縮率を低めるのに有利であるが、高すぎる場合、多孔性膜が部分的に溶けて形成された微細多孔が塞がれて透過度が低下し得る。本発明の具体的な一実施様態において、前記ポリオレフィンがポリエチレンである場合、前記熱固定温度は、100~140℃、または105~135℃、または110~130℃であり得る。ポリオレフィンがポリエチレンである場合に、前記熱固定温度が前記数値範囲を満たす場合、ポリオレフィン分子の再配列が起こって多孔性膜の残留応力を除去することができ、部分的溶融によって多孔性膜の気孔が塞がれる問題を減少させることができる。熱固定温度が高いほど、製造された分離膜の熱収縮率が改善され、熱固定温度が低いほど、分離膜の抵抗を低減させることができる。
【0129】
熱固定時間は、熱固定温度が高い場合は相対的に短くし、熱固定温度が低い場合は相対的に長くし得る。本発明の具体的な一実施様態において、前記熱固定温度の時間は10~120秒、または20~90秒、または30~60秒であり得る。前記時間で熱固定する場合、ポリオレフィン分子の再配列が起こって多孔性膜の残留応力を除去でき、部分的溶融によって多孔性膜の気孔が塞がれる問題を減少させることができる。
【0130】
次に、熱固定された多孔性膜を水分存在下で架橋させる段階を含む(S5)。本発明の具体的な一実施様態において、前記架橋は60~100℃、または65~95℃、または70~90℃で行われ得る。本発明の具体的な一実施様態において、前記架橋は、湿度60~95%で、6~50時間行われ得る。架橋反応を促進するために、架橋触媒を使用してもよい。このような架橋触媒としては、通常、すず、亜鉛、鉄、鉛、コバルトなどの金属のカルボン酸塩、有機塩基、無機酸及び有機酸が使用され得る。具体的には、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、酢酸第一スズ、カプリル酸第一スズ、ナフテン酸亜鉛、カプリル酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、エチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ピリジン、硫酸、塩酸などの無機酸、トルエン、スルホン酸、酢酸、ステアリン酸、マレイン酸などの有機酸などが挙げられる。架橋触媒の使用方法としては、架橋触媒をシラングラフトされたポリオレフィン溶液の製造時に添加する方法、架橋触媒の溶液または分散液を多孔性膜に塗布する方法などがある。
【0131】
本発明の他の一面は、下記のような架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法を提供する。
【0132】
具体的には、複数のフィブリルと、前記複数のフィブリルが相互に絡み合うことによって生成された気孔と、を含み、前記フィブリルを構成しているポリオレフィン鎖が相互に直接架橋されている架橋ポリオレフィン多孔性基材を含む架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法であって、
タイプII光開始剤を含むタイプII光開始剤組成物を非架橋ポリオレフィン多孔性基材に適用する段階と、
前記タイプII光開始剤組成物が適用されたポリオレフィン多孔性基材に紫外線(UV)を照射し、この際、前記UV照射光量が10~2,500mJ/cm2範囲であり、
横軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数(rad/s)であり、縦軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の貯蔵弾性率G’(A)及び損失弾性率G”(B)である振動数-損失貯蔵弾性率曲線において、
前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数が1rad/s以下を示す範囲で、前記損失弾性率G”(B)に対する前記貯蔵弾性率G’(A)の比(A/B)が、2以上であることを特徴とする、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法を提供する。
【0133】
即ち、本発明では、G’とG”との関係、G’の傾き関係を有する架橋ポリオレフィン分離膜を提供し、このような相関関係を有する分離膜は、前述したように、分離膜が高温で強度を維持しながら隔離機能を果たすことができる。言い換えれば、外部の異常環境によってリチウム二次電池の温度が急激に上昇した場合においても、分離膜が固体性質を示す貯蔵弾性率が液体性質を示す損失弾性率よりも高く維持されながら形態を維持することができ、隔離機能を失わない。
【0134】
このような架橋ポリオレフィン分離膜を製造する方法としては、前述したように、炭素-炭素二重結合含有のアルコキシシランを用い、この際、熱固定時に延伸比を制御して製造してもよく、以下で説明するようにタイプII光開始剤を使用して製造してもよい。
【0135】
具体的には、
先ず、タイプII光開始剤組成物をポリオレフィン多孔性基材に適用する段階を行う。
【0136】
本発明の具体的な一実施様態によると、前記タイプII光開始剤は、チオキサントン(TX:Thioxanthone)、チオキサントン誘導体、ベンゾフェノン(BPO:Benzophenone)、ベンゾフェノン誘導体、またはこれらの二種以上の混合物であり得る。
【0137】
本発明において、前記チオキサントン誘導体は、例えば、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-ドデシルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、1-メトキシカルボニルチオキサントン、2-エトキシカルボニルチオキサントン、3-(2-メトキシエトキシカルボニル)-チオキサントン、4-ブトキシカルボニル-チオキサントン、3-ブトキシカルボニル-7-メチルチオキサントン、1-シアノ-3-クロロチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-クロロチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-エトキシチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-アミノチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-フェニルスルフリルチオキサントン、3,4-ジ[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシカルボニル]チオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-(1-メチル-1-モルホリノ-エチル)-チオキサントン、2-メチル-6-ジメトキシメチル-チオキサントン、2-メチル-6-(1,1-ジメトキシ-ベンジル)-チオキサントン、2-モルホリノメチルチオキサントン、2-メチル-6-モルホリノメチル-チオキサントン、N-アリルチオキサントン-3,4-ジカルボキシミド、N-オクチルチオキサントン-3,4-ジカルボキシミド、N-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-チオキサントン-3,4-ジカルボキシミド、1-フェノキシチオキサントン、6-エトキシカルボニル-2-メトキシチオキサントン、6-エトキシカルボニル-2-メチルチオキサントン、チオキサントン-2-ポリエチレングリコールエステル、2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサントン-2-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロライドなどを含み得るが、これらに制限されない。
【0138】
本発明において、前記ベンゾフェノンは、例えば、4-フェニルベンゾフェノン、4-メトキシベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシ-ベンゾフェノン、4,4’-ジメチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-(4-メチルチオフェニル)-ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシ-ベンゾフェノン、メチル-2-ベンゾイルベンゾエート、4-(2-ヒドロキシエチルチオ)-ベンゾフェノン、4-(4-トリルチオ)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N,N-トリメチルベンゼンメタンアミニウムクロライド、2-ヒドロキシ-3-(4-ベンゾイルフェノキシ)-N,N,N-トリメチル-プロパンアミニウムクロライド一水和物、4-ヒドロキシベンゾフェノン、4-(13-アクリロイル-1,4,7,10,13-ペンタオキサトリデシル)-ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロフェニル)オキシ]エチル-ベンゼンメタンアミニウムクロライドなどを含み得るが、これらに制限されない。
【0139】
本発明において、前記タイプII光開始剤を用いると、タイプI光開始剤及び/または架橋剤を用いる場合よりも少ない光量で架橋が可能であるので、量的な面で有利である。
【0140】
本発明の具体的な一実施様態で、前記タイプII光開始剤が、2-イソプロピルチオキサントン、チオキサントンまたはこれらの混合物であり得る。前記タイプII光開始剤が、2-イソプロピルチオキサントン、チオキサントンまたはこれらの混合物である場合、ベンゾフェノンなどの光開始剤を使用する場合よりも少ない光量、例えば、500mJ/cm2水準でも架橋が可能であって、量の面でより有利である。
【0141】
本発明の具体的な一実施様態によると、前記タイプII光開始剤を含む組成物は、前記タイプII光開始剤を溶媒に溶解して得たものであり得る。前記溶媒は、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)、N-メチルピロリドン(NMP)、メチルアルコールまたはこれらの二種以上の混合物であり得る。前記タイプII光開始剤は、前記組成物中に0.01~0.4重量%の濃度、0.01~0.3重量%の濃度、または0.03~0.3重量%の濃度、または0.05~0.2重量%の濃度で含まれ得る。タイプII光開始剤の含量が前述した範囲よりも過度な場合には、UV照射時に急激な架橋反応によって分離膜の収縮が発生することがあり、ポリエチレンの主鎖切断(main chain scission)が発生して機械的強度が低下する恐れがあり、前述したタイプII光開始剤の含量範囲では、架橋収縮なく適切な架橋反応を発生させることができる。
【0142】
本発明で使用可能なポリオレフィン多孔性基材については、前述した内容を代わりにする。
【0143】
本発明の具体的な一実施様態によると、前記タイプII光開始剤を含む組成物(タイプII光開始剤組成物)をポリオレフィン多孔性基材に適用する具体的な方法としては、前記タイプII光開始剤組成物にポリオレフィン多孔性基材を浸漬するか、または前記タイプII光開始剤組成物をポリオレフィン多孔性基材の少なくとも一面にスプレー噴射のような方法で塗布する方法があるが、これに限定されない。タイプII光開始剤組成物をポリオレフィン多孔性基材に適用する時間は、例えば、0.1~5分間であり得るが、これに制限されない。その後、前記タイプII光開始剤組成物が適用されたポリオレフィン多孔性基材を乾燥し得る。前記乾燥は、例えば、常温で30秒~10分間行われ得る。
【0144】
続いて、前記組成物が適用されたポリオレフィン多孔性基材にUVを照射する段階を行い、この際、前記UV照射光量は10~2,500mJ/cm2範囲である。
【0145】
UV照射は、UV硬化装置を用いて、光開始剤の含量比のような条件を考慮してUV照射時間及び照射光量を適切に調節して行い得る。例えば、前記UV照射時間及び照射光量は、ポリオレフィンフィブリルが充分に架橋されてポリオレフィン多孔性基材のメルトダウン温度が160℃以上、または170℃以上になる程度になり、かつUVランプで発生する熱によってポリオレフィン多孔性基材が損傷しない条件に設定され得る。また、前記UV硬化装置に使用されるUVランプは、使用する光開始剤に応じて、高圧水銀ランプ、メタルランプ、ガリウムランプなどから適切に選択して使用し得、UVランプの発光波長及び容量は、工程に合わせて適切に選択し得る。
【0146】
本発明の具体的な一実施様態によると、タイプII組成物が適用されたポリオレフィン多孔性基材にUVが照射され、この際、UV光量は、10~2,500mJ/cm2範囲、または50~1,000mJ/cm2、または150~500mJ/cm2範囲であることを特徴とする。
【0147】
本発明の具体的な一実施様態によると、「UV光量」は、Miltec社のH type UV bulb及びUV power puckと呼ばれる携帯用の光量測定機を用いて測定され得る。Miltec社のH type UV bulbを用いて光量を測定する場合、波長別に、UVA、UVB、UVCの3種類の波長値が得られるが、本発明のUVはUVAである。
【0148】
本発明において、「UV光量」の測定方法は、UV power puckをサンプルと同じ条件で光源下にコンベヤー上で通過させ、この際、UV power puckに示されるUV光量数値を「UV光量」と称する。
【0149】
光開始剤の使用によってフィブリルを架橋させることで、高温においても貯蔵弾性率を高く維持することができ、損失弾性率の変化は僅かである。また、貯蔵弾性率は、周波数変化による光開始剤の使用前には、一般的な高分子はMaxwellモデルによる場合、理論的に2程度の傾きを有すると知られているが、架橋が行われながら弾性が急激に上昇する場合、このような傾きの変化が非常に緩くなる特性がある。
【0150】
一方、本発明の他の一面は、前述した分離膜を含むリチウム二次電池を提供する。
【0151】
具体的には、正極、負極及び前記正極と負極との間に介在された分離膜を含むリチウム二次電池であって、
前記分離膜は、前述した架橋ポリオレフィン分離膜であり、
前記正極は、集電体と、前記集電体の上に位置し、正極活物質を含む正極活物質層と、を備え、
前記正極活物質は、Li[NiaCobMncM1dM2e]O2(M1及びM2は、相互に独立的にAl,Ni,Co,Fe,Mn,V,Cr,Ti,W,Ta,Mg及びMoからなる群より選択されたいずれか一つであり、a,b,c,d及びeは、酸化物組成元素の原子分率であって、a≧0.5,a+b+c+d+e=1,b>d>eである。)を含むことを特徴とするリチウム二次電池を提供することができる。
【0152】
前記正極活物質は、層状構造を有するニッケルリッチ(Ni-rich)系正極活物質であり、200mAh/g以上の高容量を発現できるという点で有利である。一方、このような正極活物質を含む正極は、自己発熱温度が低くて安全性の面で相対的に不安定である。
【0153】
本発明者は、このような安全性の問題を改善するために、前述した分離膜を前記正極と同時に使用する場合、安全性が大幅改善されることを見出した。
【0154】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形され得、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0155】
実施例1
押出機ホッパーに、ポリオレフィンとして重量平均分子量60万であるポリエチレン(Hanwha total社、VO601)を投入し、3kg/hrの流量で移送した。その後、一番目のインジェクションポートに希釈剤として液体パラフィンオイル(Kukdong Oil&Chemicals Co.,LTD.,LP350)を5kg/hrの流速で投入して、移送されるポリエチレンと混合した。その後、二番目のインジェクションポートには、希釈剤である液体パラフィンオイル(Kukdong Oil&Chemicals Co.,LTD.,LP350)に、開始剤として2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-ヘキサン(2,5-Dimethyl-2,5-di(tert,butylperoxy)hexane)及び炭素-炭素二重結合基含有のアルコキシシランとしてビニルトリメトキシシラン(vinyltrimethoxysilane)を、前記ポリオレフィン及び前記希釈剤の総含量100重量部に対して各々0.05重量部、2.5重量部の割合で混合して、2kg/hrの流速で供給した。
【0156】
その後、200℃の温度条件で反応押出してシランがグラフトされたポリオレフィン組成物を製造した。
【0157】
製造されたポリオレフィン組成物を、Tダイ、40℃に駆動される冷却キャストロールを経てシート状に成形し、その後110℃に維持されるロールの周速比を用いて総6倍の長さにMD延伸し、120℃に維持されるオーブン内でテンターを用いて総7倍の幅にTD延伸した。その後、延伸されたシートをメチレンクロライドを含む希釈槽に浸漬して、延伸されたシート内に残留する希釈剤を除去することで、気孔が形成された多孔性膜を製造した。その後、128℃に維持される熱固定槽で初期に導入する多孔性膜の幅の20%を幅方向へさらに延伸した後、熱固定槽の後半で緩和して初期多孔性膜に対して幅が10%増加した多孔性膜を巻き取った。
【0158】
巻き取られた多孔性膜を温度60℃、相対湿度85%に維持されるオーブンで2日間放置して架橋反応が完了した架橋ポリオレフィン分離膜を製造した。
【0159】
製造された分離膜の厚さは9μm、通気時間は77sec/100ccであった。
【0160】
実施例2
延伸工程でMD延伸比を5.5倍、TD延伸比を6倍に制御したことを除いては、実施例1と同様の方法で架橋ポリオレフィン分離膜を製造した。製造された分離膜の厚さは9μm、通気時間は74sec/100ccであった。
【0161】
実施例3
熱固定槽で初期に導入する多孔性膜の幅の70%を幅方向へさらに延伸した後、熱固定槽の後半で緩和して初期多孔性膜の幅に対して40%増加した多孔性膜を巻き取ったことを除いては、実施例1と同様に架橋ポリオレフィン分離膜を製造した。製造された分離膜の厚さは9μm、通気時間は70sec/100ccであった。
【0162】
比較例1
開始剤と炭素-炭素二重結合基含有のアルコキシシランを追加しないことを除いては、実施例1と同様の方法でポリオレフィン分離膜を製造した。即ち、製造された分離膜は、非架橋ポリオレフィン分離膜である。製造された分離膜の厚さは9μm、通気時間は89sec/100ccであった。
【0163】
実施例4
アセトンに、タイプII開始剤として2-イソプロピルチオキサントン(ITX,2-Isopropylthioxanthone,Sigma Aldrich社)を0.5重量%の濃度で溶解してタイプII光開始剤組成物を準備した。
【0164】
比較例1で製造した非架橋ポリオレフィン分離膜の表面に前記光開始剤組成物をディップコート方式で塗布した。その後、60℃の温度条件でアセトンを乾燥した。
【0165】
続いて、前記タイプII光開始剤組成物が適用された非架橋ポリオレフィン分離膜の上面に、積算光量、即ち、UV照射光量が500mJ/cm2になるようにUVを照射した。この際、UV照射強度(intensity)はUV光源の80%にし、工程ライン速度(line speed)は10m/minにした。これによって架橋ポリオレフィン分離膜を製造した。製造された分離膜の厚さは9μm、通気時間は90sec/100ccであった。
【0166】
比較例2
超高分子量ポリエチレンと少量のポリプロピレンが含まれた非架橋ポリオレフィン分離膜(Asahi社,S10W)を準備した。準備された分離膜の厚さは9μm、通気時間は92sec/100ccであった。
【0167】
実施例5
アセトンに、タイプII開始剤として2-イソプロピルチオキサントン(ITX,Sigma Aldrich社)を0.5重量%の濃度で溶解してタイプII光開始剤組成物を準備した。
【0168】
比較例2で準備した非架橋ポリオレフィン分離膜の上に前記光開始剤組成物をディップコート方式で塗布した。60℃の温度条件でアセトンを乾燥した。
【0169】
続いて、前記タイプII光開始剤組成物が適用された非架橋ポリオレフィン分離膜の上面に、積算光量、即ち、UV照射光量が500mJ/cm2になるようにUVを照射し、この際、UV照射強度はUV光源の80%にし、工程ライン速度は10m/minにした。これによって架橋ポリオレフィン分離膜を製造した。製造された分離膜の厚さは9μm、通気時間は91sec/100ccであった。
【0170】
比較例3
シャットダウン温度が低いコア(core)層と、前記コア層の両面にメルトダウン温度が高いスキン(skin)層に塗布され、3層から構成された厚さが9μmである非架橋ポリオレフィン分離膜(Toray社,DB0905)を準備した。準備した分離膜の厚さは9μm、通気時間は88sec/100ccであった。
【0171】
比較例4
アセトンに、タイプII開始剤として2-イソプロピルチオキサントン(ITX,Sigma Aldrich社)を0.5重量%の濃度で溶解してタイプII光開始剤組成物を準備した。
【0172】
比較例3で準備した非架橋ポリオレフィン分離膜の上に前記光開始剤組成物をディップコート方式で塗布した。60℃の温度条件でアセトンを乾燥した。
【0173】
続いて、前記タイプII光開始剤組成物が適用された非架橋ポリオレフィン分離膜の上面に、積算光量、即ち、UV照射光量が5,000mJ/cm2になるようにUVを照射した。この際、UV照射強度はUV光源の80%にし、工程ライン速度は10m/minにした。製造された分離膜の厚さは9μm、通気時間は88sec/100ccであった。比較例4は、UV照射光量が過多になり、ポリオレフィン中の鎖が切れることを確認することができた。
【0174】
比較例5
熱固定槽において、初期に導入する多孔性膜の幅の85%を幅方向へさらに延伸した後、熱固定の後半で緩和して初期の多孔性膜の幅に対して55%増加した多孔性膜を巻き取ったことを除いては、実施例1と同様の方法で架橋ポリオレフィン分離膜を製造した。製造された分離膜の厚さは9μm、通気時間は66sec/100ccであった。即ち、比較例5は、実施例1と比較して熱固定槽における延伸率が185%である場合である。比較例5の場合、多孔性膜が過度に延伸されてフィブリルが切れ、結果的に架橋反応が起こりにくかった。
【0175】
比較例6
一次酸化防止剤(BASF社,Irganox 1010)及び二次酸化防止剤(BASF社,Irgafos 168)を各々8,000ppmずつ投入したことを除いては、比較例1と同様に非架橋ポリオレフィン分離膜を製造した。その後、実施例4のようにUV架橋ポリオレフィン分離膜を製造した。製造された分離膜の厚さは9μm、通気時間は92sec/100ccであった。比較例7の場合、多孔性膜内に酸化防止剤の含量が多くて架橋反応が円滑に起こらないことを確認することができた。
【0176】
実験例
貯蔵弾性率及び損失弾性率の測定
各々の実施例及び比較例で製造された分離膜をレオロジー特性測定装置(ARES-G2,TA Instrument)を用いて190℃の温度条件で周波数掃引(frequency sweep)テストを行い、振動数1rad/sにおける貯蔵弾性率G’(storage modulus)及び1rad/sにおける損失弾性率G”(loss modulus)及び振動数10-1~1rad/s範囲における貯蔵弾性率G’(storage modulus)の傾きを測定した。その結果を下記の表1に示した。一方、G’、G”から製造された分離膜の流動性を確認することができる。
【0177】
分離膜の熱破膜温度の測定
それぞれの実施例及び比較例で製造された分離膜をTA社のQ400装置を用いてTMA(Thermomechanical analysis)方式で熱破膜温度(meltdown temperature)を評価し、その結果を表1に示した。
【0178】
【0179】
前記表1を参照すると、架橋ポリオレフィン分離膜の振動数が1rad/s以下を示す範囲で、前記損失弾性率G”(B)に対する前記貯蔵弾性率G’(A)の比(A/B)が2以上、または前記振動数に対する貯蔵弾性率G’(A)曲線の傾きが0.05~0.4を満たす実施例1~5で製造された架橋ポリオレフィン分離膜が、比較例1~6の分離膜と比較して遥かに高い被膜温度を示していることから、熱的安定性が大幅向上したことが分かる。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋ポリオレフィン分離膜であって、
横軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数(rad/s)であり、縦軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の貯蔵弾性率G’(A)及び損失弾性率G”(B)である振動数-損失貯蔵弾性率曲線において、
前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数が1rad/s以下を示す範囲で、前記損失弾性率G”(B)に対する前記貯蔵弾性率G’(A)の比(A/B)が、2以上であり、
前記架橋ポリオレフィン分離膜が水架橋によって形成されたことを特徴とする、架橋ポリオレフィン分離膜。
【請求項2】
架橋ポリオレフィン分離膜であって、
横軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数(rad/s)であり、縦軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の貯蔵弾性率G’(A)及び損失弾性率G”(B)である振動数-損失貯蔵弾性率曲線において、
前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数が10-1~1rad/sを示す範囲で、前記振動数に対する貯蔵弾性率G’(A)曲線の傾きが0.05~0.4であり、
前記架橋ポリオレフィン分離膜が水架橋によって形成されたことを特徴とする、架橋ポリオレフィン分離膜。
【請求項3】
前記貯蔵弾性率の値が、1.0×105~1.0×107Paであることを特徴とする、請求項1または2に記載の架橋ポリオレフィン分離膜。
【請求項4】
前記損失弾性率の値が、3.0×105Pa以下であることを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載の架橋ポリオレフィン分離膜。
【請求項5】
前記架橋ポリオレフィン分離膜が水架橋によって形成されたものであって、
前記架橋ポリオレフィン分離膜中にSi-O-Si結合を含み、
前記架橋ポリオレフィン分離膜中のシラン(Si)含量が、前記架橋ポリオレフィン分離膜100重量部に対して0.01~20重量部であることを特徴とする、請求項1に記載の架橋ポリオレフィン分離膜。
【請求項6】
正極、負極及び前記正極と負極との間に介在された分離膜を含むリチウム二次電池であって、
前記分離膜は、請求項1から5の何れか一項に記載の架橋ポリオレフィン分離膜であり、
前記正極は、集電体と、前記集電体の上に位置し、正極活物質を含む正極活物質層と、を備え、
前記正極活物質は、Li[NiaCobMncM1dM2e]O2(M1及びM2は、相互に独立的にAl,Ni,Co,Fe,Mn,V,Cr,Ti,W,Ta,Mg及びMoからなる群より選択されたいずれか一つであり、a,b,c,d及びeは、相互に独立に酸化物組成元素の原子分率であって、a≧0.5,a+b+c+d+e=1,b>d>eである。)を含むことを特徴とする、リチウム二次電池。
【請求項7】
架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法であって、
(S1)ポリオレフィン、希釈剤、開始剤、架橋触媒及び炭素-炭素二重結合基含有のアルコキシシランを押出機に投入及び混合してシラングラフトされたポリオレフィン組成物を反応押出する段階と、
(S2)前記反応押出されたシラングラフトされたポリオレフィン組成物をシート状に成形及び延伸する段階と、
(S3)前記延伸されたシートから希釈剤を抽出して多孔性膜を製造する段階と、
(S4)前記多孔性膜を熱固定する段階であって、前記熱固定時に熱固定槽に初期に導入される多孔性膜の幅の100~150%に延伸する段階と、
(S5)前記熱固定された多孔性膜を水架橋する段階と、を含み、
横軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数(rad/s)であり、縦軸が、対数スケールに変換された前記架橋ポリオレフィン分離膜の貯蔵弾性率G(A)及び損失弾性率G”(B)である振動数-損失貯蔵弾性率曲線において、
前記架橋ポリオレフィン分離膜の振動数が1rad/s以下を示す範囲で、前記損失弾性率G”(B)に対する前記貯蔵弾性率G’(A)の比(A/B)が、2以上であることを特徴とする、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項8】
前記(S4)段階が、前記多孔性膜を熱固定する段階であって、
前記熱固定時において、熱固定槽で初期に導入する多孔性膜の幅の100~180%に第1延伸を行い、その後、初期に導入する多孔性膜の幅の100~150%に延伸を低めて第2延伸を行うことを特徴とする、請求項7に記載の架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項9】
熱固定槽に多孔性膜を初期に導入して第1延伸を開始する時間t1に対する、前記熱固定槽に多孔性膜を初期に導入して第2延伸を開始する時間t2の比(t2/t1)が、0.5~1.5であることを特徴とする、請求項8に記載の架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項10】
前記熱固定温度が、100~140℃であり、前記熱固定時間が、10~120秒であることを特徴とする、請求項8に記載の架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【外国語明細書】