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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056220
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】給紙装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/14 20060101AFI20240416BHJP
   B41J 11/42 20060101ALI20240416BHJP
   B41J 29/46 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B65H7/14
B41J11/42
B41J29/46 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162958
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 武
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】岡田 克巳
【テーマコード(参考)】
2C058
2C061
3F048
【Fターム(参考)】
2C058AB04
2C058AB10
2C058AC07
2C058AC08
2C058AE04
2C058AF06
2C058GB03
2C058GB12
2C058GB18
2C058GB31
2C058GE02
2C061AP01
2C061AP04
2C061AQ05
2C061AQ06
2C061AR01
2C061AS06
2C061HJ07
2C061HK06
2C061HN08
2C061HN15
2C061HV02
2C061HV32
3F048AA01
3F048AA05
3F048AB01
3F048AC04
3F048BA02
3F048BB02
3F048BB05
3F048BB09
3F048BC03
3F048CA02
3F048CB03
3F048CC03
3F048DA01
3F048DB11
3F048DC07
3F048EB02
(57)【要約】
【課題】効率的に、ロール紙がスプールにセットされていないことを自動的に精度良く検知できるとともに、ロール紙がセットされていないにも関わらず、ロール紙がセットされている場合の処理を行うことを防止できる給紙装置。
【解決手段】先端検知センサ93とコロ部92とを配置した支持部材91を備える。ロール紙は内側に紙管99を有し、紙管の内側にスプール98が挿通されて給紙装置に備えられる。コロ部はロール紙の円周方向においてセンサと異なる位置に配置される。センサはロール紙の先端の段差を検知可能である。スプールは表面に凹部又は凸部を有する。凹部又は凸部は、スプールに用紙及び紙管がない状態でスプールが給紙装置に備えられて回転したときに、センサ又はコロ部と接触する位置に設けられている。制御部はセンサのセンサ信号に基づいて、ロール紙の先端の有無を判断するとともに、ロール紙がスプールに備えられているか判断する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の用紙が巻かれたロール紙から前記用紙を供給する給紙装置であって、
先端検知センサとコロ部とを配置し、前記先端検知センサと前記コロ部とが前記ロール紙の表面に当接するように支持する支持部材と、
前記先端検知センサのセンサ信号を取得する制御部と、を備え、
前記ロール紙は、内側に紙管を有し、該紙管の内側にスプールが挿通されて当該給紙装置に備えられ、前記スプールの回転と連動して回転し、
前記先端検知センサと前記コロ部とは、前記スプールの軸中心に向かって配置され、
前記コロ部は、前記ロール紙の円周方向において前記先端検知センサと異なる位置に配置され、
前記先端検知センサは、前記ロール紙の先端の段差を検知可能であり、
前記スプールは、表面の一部に凹部又は凸部を有しており、
前記凹部又は前記凸部は、前記スプールに前記用紙及び前記紙管がない状態で前記スプールが当該給紙装置に備えられて回転したときに、前記先端検知センサ又は前記コロ部と接触する位置に設けられており、
前記制御部は、前記先端検知センサのセンサ信号に基づいて、前記ロール紙の先端の有無を判断するとともに、前記ロール紙が前記スプールに備えられているかどうかを判断する
ことを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記制御部は、時間に対する、前記ロール紙の先端が前記コロ部を通過する際のセンサ信号の出力強度の変化量を表すグラフの傾きK1と、時間に対する、前記ロール紙の先端が前記先端検知センサを通過する際のセンサ信号の出力強度の変化量を表すグラフの傾きK2とを検出することにより、前記ロール紙の先端の有無を判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記凹部又は前記凸部の形状は、前記先端検知センサのセンサ信号において、使用可能な最大紙厚の先端を検知するときのセンサ信号の出力強度よりも大きい出力強度になるように定められた形状であり、
前記制御部は、使用可能な最大紙厚の先端を検知するときのセンサ信号の出力強度よりも大きい出力強度を検出した場合、前記ロール紙が前記スプールに備えられていないと判断する
ことを特徴とする請求項2に記載の給紙装置。
【請求項4】
前記先端検知センサのセンサ信号において、使用可能な最大紙厚の先端が前記コロ部を通過する際のセンサ信号の傾きをK1maxとし、使用可能な最大紙厚の先端が前記先端検知センサを通過する際のセンサ信号の傾きをK2maxとしたとき、あらかじめK1maxとK2maxを求めておき、
前記制御部は、判断対象の前記スプールを回転させて得られたセンサ信号において、K1maxと同じ符号の傾きとなる傾きのうち、絶対値がK1maxよりも大きい傾きを検出した場合、及び/又は、K2maxと同じ符号の傾きとなる傾きのうち、絶対値がK2maxよりも大きい傾きを検出した場合、前記ロール紙が前記スプールに備えられていないと判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項5】
前記K1maxの絶対値に所定の許容値を加えた値と、前記K2maxの絶対値に所定の許容値を加えた値とのうち大きい方をKSとしたとき、
前記制御部は、判断対象の前記スプールを回転させて得られたセンサ信号において、絶対値が前記KSよりも大きくなる傾きを検出した場合、前記ロール紙が前記スプールに備えられていないと判断する
ことを特徴とする請求項4に記載の給紙装置。
【請求項6】
前記凹部又は前記凸部は、前記スプールの表面に2以上設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記ロール紙の一回転分以上の時間、判断対象の前記スプールを回転させ、前記ロール紙の先端の有無を判断するとともに、前記ロール紙が前記スプールに備えられているかどうかを判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項8】
前記スプールがスプール軸受台に備えられたことを検知するスプール検知センサと、
給紙画面を表示可能な表示部と、を備え、
前記制御部は、前記スプール検知センサにより前記スプールが備えられたことを検知した場合、前記給紙画面を表示部に表示する前に、前記スプールを回転させて前記ロール紙が前記スプールに備えられているかどうかを判断し、前記ロール紙が前記スプールに備えられていないと判断した場合、前記給紙画面を表示部に表示しない
ことを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記ロール紙が前記スプールに備えられていないと判断した場合、前記表示部に警告を表示する
ことを特徴とする請求項8に記載の給紙装置。
【請求項10】
前記凹部又は前記凸部は、前記スプールに前記用紙及び前記紙管がない状態で前記スプールが当該給紙装置に備えられて回転したときに、前記先端検知センサに接触する位置と、前記コロ部に接触する位置との両方に設けられており、
前記制御部は、前記スプールが回転したときに、前記コロ部が前記凹部又は前記凸部を通過する際のセンサ信号の傾きと、前記先端検知センサが前記凹部又は前記凸部を通過する際のセンサ信号の傾きとの両方を検出することにより、前記ロール紙が前記スプールに備えられていないと判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の給紙装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロール紙を用いる画像形成装置では、ロール紙をスプールにセットして給紙装置の保持部へ載置した後、給紙装置が給紙動作を行うことが知られている。このような装置では、ロール紙の先端を検知する技術が知られている。
【0003】
特許文献1では、ロール紙の用紙先端を検知する目的で、ロール紙を巻き取る方向に回転させて剥離した用紙をセンサ(剥離した用紙までの距離に応じて出力値が変化する)を用いて用紙の先端を検知する構成が開示されている。特許文献1によれば、装着されたロールの自動給紙をより確実に行うことができるとしている。
【0004】
特許文献2では、センサとコロ部を配置した支持部材を備え、前記センサはロール紙の先端の段差を検知可能な検知精度を有する給紙装置が開示されている。特許文献2によれば、ロール紙の用紙の先端を安定して検知して給紙部へ搬送できるとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、ロール紙がセットされていないスプールを給紙装置にセットした場合に、ロール紙がセットされていないにも関わらず、ロール紙がセットされた場合の処理を行うことがあった。また、検知を効率的に行うことが求められている他、検知精度の向上が求められていた。
【0006】
そこで本発明は、効率的に、ロール紙がスプールにセットされていないことを自動的に精度良く検知できるとともに、ロール紙がセットされていないにも関わらず、ロール紙がセットされている場合の処理を行うことを防止できる給紙装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の給紙装置は、
長尺の用紙が巻かれたロール紙から前記用紙を供給する給紙装置であって、
先端検知センサとコロ部とを配置し、前記先端検知センサと前記コロ部とが前記ロール紙の表面に当接するように支持する支持部材と、
前記先端検知センサのセンサ信号を取得する制御部と、を備え、
前記ロール紙は、内側に紙管を有し、該紙管の内側にスプールが挿通されて当該給紙装置に備えられ、前記スプールの回転と連動して回転し、
前記先端検知センサと前記コロ部とは、前記スプールの軸中心に向かって配置され、
前記コロ部は、前記ロール紙の円周方向において前記先端検知センサと異なる位置に配置され、
前記先端検知センサは、前記ロール紙の先端の段差を検知可能であり、
前記スプールは、表面の一部に凹部又は凸部を有しており、
前記凹部又は前記凸部は、前記スプールに前記用紙及び前記紙管がない状態で前記スプールが当該給紙装置に備えられて回転したときに、前記先端検知センサ又は前記コロ部と接触する位置に設けられており、
前記制御部は、前記先端検知センサのセンサ信号に基づいて、前記ロール紙の先端の有無を判断するとともに、前記ロール紙が前記スプールに備えられているかどうかを判断する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、効率的に、ロール紙がスプールにセットされていないことを自動的に精度良く検知できるとともに、ロール紙がセットされていないにも関わらず、ロール紙がセットされている場合の処理を行うことを防止できる給紙装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る画像形成装置の概略構成例を示す図である。
図2】一実施形態に係る画像形成装置の構成例を示す断面概略図である。
図3】従来のロール紙のセット方法を説明する図である。
図4】ロール紙をスプールにセットする方法を説明する図である。
図5】一実施形態の給紙装置の構成例の要部を説明する側面図である。
図6】一実施形態の給紙装置の機能例を説明する機能ブロック図である。
図7】一実施形態のアームの構成例を説明する図である。
図8】ロール紙の先端を検知する動作例を説明する図である。
図9】コロとセンサとの位置関係による違いを説明する図である。
図10】コロ、センサ、ロール紙先端の位置関係の一例を示す図(A)及びセンサ信号の波形の一例を示す図(B)である。
図11】ロール紙先端の位置が変化した場合のコロ、センサ、アームの動きの一例を説明するための図(A)~(C)である。
図12図11におけるセンサ信号の波形の一例を示す図である。
図13】ロール紙先端の位置が変化した場合のコロ及びアームの動きの一例を説明するための図(a)~(d)である。
図14図13のようにロール紙先端の位置が変化した場合のセンサの動きの一例を説明するための図(a)~(d)である。
図15図14からロール紙先端の位置が更に変化した場合のセンサの動きの一例を説明するための図(e)~(h)である。
図16図12に示すセンサ信号の波形について詳細を説明する図である。
図17】検知動作を繰り返した場合のセンサ信号の波形の一例を説明する図である。
図18】ロール紙をセットしてから用紙搬送動作を行うまでの一例を説明するフローチャートである。
図19図18のAの部分を説明するフローチャートである。
図20図19のEの部分を説明するフローチャートである。
図21図19図20及び図27に示すフローチャートで使用される記号を説明する図である。
図22】ロール紙がなく、紙管がセットされている場合の一例を示す図(A)及び(B)である。
図23】空スプールの状態でセットされている場合の一例を示す図(A)及び(B)である。
図24】空スプールの状態でセットされている場合の他の例を示す図(A)及び(B)である。
図25】凹凸部とコロ及びセンサとの位置関係の一例を示す図(A)~(C)である。
図26】凹凸部とコロ及びセンサとの位置関係の一例を示す図(D)~(F)である。
図27】凹部の一例を示す図(A)及び(B)並びに凸部の一例を示す図(C)及び(D)である。
図28】紙管の表面に接している場合のセンサ信号の出力例を示す図である。
図29】コロが凹部を通過する際の動きの一例を説明するための図である。
図30図29におけるコロの当接例(A)、コロが凹部を通過する時のセンサ信号の出力例(B)及び(B)におけるセンサ信号の傾きの例(C)である。
図31】空スプールを検知する場合のセンサ信号の出力例を示す図であり、凹部が一つの場合の例を示す図である。
図32】空スプールを検知する場合のセンサ信号の出力例を示す図であり、凹部が二つの場合の例を示す図である。
図33】空スプールを検知する場合のセンサ信号の出力例を示す図であり、凹部が一つの場合の例S1と、使用可能な最大紙厚時の例S2とを示す図(A)である。(B)は(A)に補足説明を加えた図である。
図34】ロール紙先端を検出する場合のセンサ信号の出力例を示す図である。
図35】ロール紙の先端検知動作と空スプールの検知動作を行う場合のフローチャートの一例である。
図36】ロール紙の先端検知動作と空スプールの検知動作を行う場合のフローチャートの他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る給紙装置及び画像形成装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0011】
本発明の給紙装置は、
長尺の用紙が巻かれたロール紙から前記用紙を供給する給紙装置であって、
先端検知センサとコロ部とを配置し、前記先端検知センサと前記コロ部とが前記ロール紙の表面に当接するように支持する支持部材と、
前記先端検知センサのセンサ信号を取得する制御部と、を備え、
前記ロール紙は、内側に紙管を有し、該紙管の内側にスプールが挿通されて当該給紙装置に備えられ、前記スプールの回転と連動して回転し、
前記先端検知センサと前記コロ部とは、前記スプールの軸中心に向かって配置され、
前記コロ部は、前記ロール紙の円周方向において前記先端検知センサと異なる位置に配置され、
前記先端検知センサは、前記ロール紙の先端の段差を検知可能であり、
前記スプールは、表面の一部に凹部又は凸部を有しており、
前記凹部又は前記凸部は、前記スプールに前記用紙及び前記紙管がない状態で前記スプールが当該給紙装置に備えられて回転したときに、前記先端検知センサ又は前記コロ部と接触する位置に設けられており、
前記制御部は、前記先端検知センサのセンサ信号に基づいて、前記ロール紙の先端の有無を判断するとともに、前記ロール紙が前記スプールに備えられているかどうかを判断する
ことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、効率的に、ロール紙がスプールにセットされていないことを自動的に精度良く検知できるとともに、ロール紙がセットされていないにも関わらず、ロール紙がセットされている場合の処理を行うことを防止できる。効率的に検知することとしては、例えば、部品数を増やすことなく検知を行えることが挙げられる。
【0013】
本実施形態の給紙装置は、ロール紙から用紙を供給する。ロール紙は、長尺の用紙(「シート」とも称する)をロール状に巻き付けた記録媒体とする。
【0014】
図1、2を参照して、本発明の一実施形態に係る給紙装置を適用する画像形成装置の構成例について説明する。
本発明の実施形態の一態様である画像形成装置は、画像データに対応してインク滴を吐出することで記録媒体に印字を行うインクジェットプリンタであるが、本発明は記録媒体を搬送して印刷を行う電子写真方式等の複写機や印刷機等に適用することも可能である。
【0015】
図1に一実施形態に係る画像形成装置80の概略構成例の斜視図、図2に該画像形成装置の側面断面図を示し、一実施形態に係る画像形成装置の全体構成と共に要部の動作を説明する。図1の矢印は、Xが画像形成装置80の奥行き方向(前後方向)、Yが画像形成装置80の幅方向(主走査方向)、Zが上下方向を示している。
【0016】
図1において、画像形成装置80は、シリアル型の液体吐出方式(インク吐出方式)の画像形成装置であり、本体筐体81が、本体フレーム82上に配設されている。画像形成装置80は、本体筐体81内に、図1に両矢印Yで示す主走査方向に主ガイドロッド64と副ガイドロッド65が張り渡されている。主ガイドロッド64は、キャリッジ66を移動可能に支持しており、キャリッジ66には、副ガイドロッド65に係合してキャリッジ66の姿勢を安定化させる連結片66aが設けられている。
【0017】
画像形成装置80は、主ガイドロッド64に沿って無端ベルト状のタイミングベルト67が配設されており、タイミングベルト67は、駆動プーリ68と従動プーリ69との間に張り渡されている。駆動プーリ68は、主走査モータ70によって回転駆動され、従動プーリ69は、タイミングベルト67に対して所定の張りを与える状態で配設されている。駆動プーリ68は、主走査モータ70によって回転駆動されることで、その回転方向に応じて、タイミングベルト67を主走査方向に回転移動させる。
【0018】
キャリッジ66はタイミングベルト67に連結されており、タイミングベルト67が駆動プーリ68によって主走査方向に回転移動されることで、キャリッジ66が主ガイドロッド64に沿って主走査方向に往復移動する。
【0019】
画像形成装置80は、本体筐体81内の主走査方向端部位置に、カートリッジ部71と維持機構部72が着脱自在に収納されている。カートリッジ部71は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各インクをそれぞれ収納するカートリッジ73が、交換可能に収納されている。カートリッジ部71の各カートリッジは、キャリッジ66が搭載する記録ヘッド(図示略)の対応する色の記録ヘッドと、図示しないパイプで連結されており、パイプを通してカートリッジ部71から各色の記録ヘッドに対してインクを供給する。
【0020】
画像形成装置80は、キャリッジ66を主走査方向に移動させながら、プラテン(板)74(図2参照)上を、主走査方向と直交する副走査方向(図1の矢印X方向)に間欠的に搬送される用紙Pにインクを吐出することで、用紙Pに画像を記録する。
【0021】
用紙Pとしては、紙製に限られず、ロール状フィルム等の種々の種類のものを用いることができるが、以下の説明では、説明を明確にするために、搬送中の用紙を用紙P、用紙Pが巻き付いたロール状態をロール紙Pr(Pa,Pb)、ロール紙Prの芯管(芯部)をPsとして説明する。
【0022】
画像形成装置80は、図2に示すように、プラテン74の下部にファンを配設されたチャンバー75が設けられており、ファンを駆動させることで、プラテン74上を搬送される用紙Pをプラテン74に密接させながら搬送させる。
【0023】
画像形成装置80は、用紙Pを副走査方向に間欠的に搬送し、用紙Pの副走査方向の搬送が停止している間に、キャリッジ66を主走査方向に移動させながら、キャリッジ66に搭載された記録ヘッドのノズル列からプラテン74上の用紙P上にインクを吐出して、ロール状用紙Pに画像を形成(記録)する。
【0024】
維持機構部72は、記録ヘッドの吐出面の清掃、キャッピング、不要なインクの吐出等を行って、記録ヘッドからの不要なインクの排出や記録ヘッドの信頼性の維持を図っている。
【0025】
画像形成装置80は、タイミングベルト67及び主ガイドロッド64に平行に、少なくともキャリッジ66の移動範囲に亘ってエンコーダシート(図示略)が配設されている。キャリッジ66には、エンコーダシートを読み取るエンコーダセンサが取り付けられている。画像形成装置80は、エンコーダセンサによるエンコーダシートの読み取り結果に基づいて主走査モータ70の駆動を制御することで、キャリッジ66の主走査方向の移動を制御する。
【0026】
また、キャリッジ66に搭載された反射型センサ(エンコーダセンサ、用紙先端検知センサ)により、画像形成部60に搬送された用紙Pの両端部を検知し、その際、用紙先端検知センサによって読み取られた主走査方向位置から用紙Pのサイズを検出する。
【0027】
画像形成装置80は、本体筐体81を支持する本体フレーム82に、図1及び図2に示すように、図1及び図2の上下方向に2つのスプール軸受台5a,5bが設けられている。
【0028】
スプール軸受台5a,5bにセットされているロール紙Prの先端から引き出された用紙(ロール状用紙)Pは、図2に矢印で示すように、搬送ローラ対6a,6b、レジストローラ10、レジスト加圧ローラ17によって、搬送路9内で搬送される。
制御部110は、駆動装置7を制御して、搬送ローラ対6a,6b、レジストローラ10、レジスト加圧ローラ17等を回転させる。
ロール紙Pr(Pa,Pb)の下には、ロール紙Prの落下を防ぐロール紙受け台8a,8bが設けられている。
【0029】
用紙Pは、媒体搬送ガイド部材18a,18b等によってサポートされる搬送路9を通過して、画像形成部60におけるプラテン74上に搬送される。
【0030】
画像形成部60では、液体記録ヘッドが各色の液滴を画像データに対応して用紙P上に吐出することで画像が形成される。画像が形成された用紙Pの順搬送方向排出部には、連続紙からなる用紙Pを所定の長さに切断するのに用いられる、副走査方向(用紙幅方向)に延在するカッター76が設けられている。
【0031】
搬送された連続紙である用紙Pの先端を揃えるため、カッター76は、複数のプーリ(そのうちの1つのプーリは駆動モータに連結されている)間に掛け渡されたワイヤやタイミングベルトに固定され、駆動モータにより主走査方向Yに移動することで用紙Pを所定の長さに切断する。切断された用紙Pは、排出部に排出される。
なお、図1、2では、二つのスプール軸受台5a,5bにロール紙Pa、Pbをセット可能な画像形成装置の構成例を示したが、スプール軸受台を一つ備える画像形成装置であってもよい。
また、前述の説明では、二つのロール紙Pa、Pbに対応する構成を識別子a、bを用いて記載したが(例えば、スプール軸受台5a,5b)、以降、区別しないときには識別子a、bを記載しない。
【0032】
また、本実施形態では、例えばスプール軸受台5a,5bにセンサを設け、スプールがセットされたかどうかの検知を行うようにしてもよい。このようなセンサは、スプール検知センサなどとも称する。スプール検知センサを用いることで、ロール紙がセットされたかどうかを検知できる。また、ロール紙がセットされた場合に、給紙画面を表示部170に表示するなどの処理が可能になる。
【0033】
ここで、従来のロール紙のセット方法を説明する。
図3は、従来のロール紙のセット方法を説明する図である。
ロール紙Prは、幅方向端部にフランジ(フランジ部材)が設けられ、スプールがセットされる。ユーザーは、スプールがセットされたロール紙を装置の給紙部受け部(スプール軸受台)にセットし(図3(A))、ロール紙の用紙先端を探し、先端を維持しながら、図3(B)の様に両手で押さえ、用紙の先端が手前に来るようにロール紙を回転させる。次に、ユーザーは、用紙先端をロール紙の奥にあるガイド板の間に位置させてロール紙を回転させながら挿入する(図3(C))。ガイド板は、用紙が見えるように透明材で出来ており、上下2枚で構成されている。ユーザーが下側のガイドの上部に紙の先端が来るようにロール紙を奥に回転させ、紙をガイドの奥に挿入すると、用紙は、内部で固定され、装置内部に引き込まれるようになっている。
【0034】
図3(C)で示した様に用紙先端を挿入するガイド板はロール紙の奥にある為、ロール紙に隠れてしまい見えづらく、ガイド板も透明な為2枚のガイド板間に挿入したつもりが上のガイド板の上側に位置してしまって、やり直す場合が生じる。また、ガイド板を透明ではなくした場合には、2枚のガイド板間に挿入できたのかの確認がわかりづらくなってしまう。
加えて、ロール紙の用紙先端を出来るだけ均等に挿入する必要があり、気を遣う作業となっている。さらに、用紙先端が均等に挿入されなかった場合には、斜めに給紙されスキューの原因となってしまい、操作のやり直しやジャムの発生につながってしまう。
【0035】
また、図3(D)、(E)で示すように、ロール紙セット部が二段で構成された装置において、上段にロール紙がセットされている場合に下段にロール紙をセットし、先端をガイド板間に挿入する場合には上段のロール紙が既にある為に更にガイド板が見えづらくセットの困難や斜め挿入の恐れが大きくなってしまう。
【0036】
そこで、一実施形態の給紙装置は、ロール紙の用紙先端を検知する構成において、ロール紙の用紙先端の段差をセンサによって検知することで先端を検知し、給紙部まで搬送する。供給部は、ロール紙の用紙を供給先へ供給する手段であり、例えば、図2の搬送ローラ対6、または、搬送路9とする。
【0037】
図4は、ロール紙をスプールにセットする場合の一例を説明するための図である。図4の1~3は、古いロール紙を取り外す場合の例であり、4~6は新しいロール紙をセットする場合の例である。図4の1~3に示すように、スプールの両端部側にはフランジが設けられており、フランジを外した後、古いロール紙をスプールから取り外す。次いで、図4の4~6に示すように、新しいロール紙にスプールを挿通させ、フランジをセットする。
【0038】
図4の1~3に示す例では、古いロール紙としているが、用紙が無い場合は、ロール紙の内側に設けられていた紙管をスプールから外すことになる。ロール紙は、内側に紙管を有し、該紙管の内側にスプールが挿通されて給紙装置に備えられる(セットされる)。また、例えばフランジを用いることにより、ロール紙がスプールの回転と連動して回転することができるが、フランジに限られるものではない。
【0039】
スプールは、スプール軸などと称されてもよいし、単に軸などと称されてもよい。スプールは例えば円筒状であり、円筒内部は中空でもよいし、中空でなくてもよい。スプールの構成は、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。スプールは基本的に紙管と接していないが、スプールと紙管が接する構成を排除するものではない。
【0040】
図5は、一実施形態の給紙装置の構成例の要部を説明する側面図である。
給紙装置90は、アーム91と、コロ92と、センサ93と、搬送部としての搬送ローラ対6とを少なくとも備える。給紙装置90は、入口ガイド板95をさらに備えるとよい。
図5では、ユーザーがロール紙Prを給紙装置90にセットしたときのロール紙Prの位置を破線で示している。ロール紙Prは図示していないモジュール構成部品にロール紙中心(軸)を基準として回転可能に保持されている。
【0041】
ロール紙Prの支持部材としてのアーム(ガイド板)91は、回動中心911で回動可能に構成される。アーム91は、回動中心911の一方に、バネ等によりロール紙方向に押圧されている。これにより、アーム91は、ロール紙径が変わってもロール紙外径と接することになる。白抜きの矢印は、アーム91の回動方向を示す。
また、アーム91は、回動中心911の他方に、コロ92とセンサ93とを有する。アーム91は、ロール紙方向に押圧されるため、コロ92とセンサ93とをロール紙Prの表面に当接するように支持する。
【0042】
アーム91は、ロール紙Prの用紙の搬送方向をガイドするガイド板として働く。アーム91は、ロール紙Prがセットされる部分(端部側)をロール紙の外径に沿った形状(例えば、円弧状)にして、ユーザーがロール紙Prをセットしたときにロール紙Prが保持されるように(落下等しないように)するとよい。また、アーム91は、図2のロール紙受け台8としても機能する。
支持部材としてのアーム91は、ロール紙をガイドするガイド板を兼ねることにより、部品点数を減らすことができ、コストを抑えることが可能である。
【0043】
コロ92およびセンサ93は、ロール紙径に依らず略ロール紙中心に向くように(ロール紙の軸中心に対向するように)配置されている。
コロ92は、ロール紙Prの円周方向においてセンサ93と異なる位置に配置され、コロ92とセンサ93とは円周方向に互いにオフセットされた配置とする。
センサ93は、ロール紙Prの先端の段差(紙厚)を検知可能である。具体的には例えば、センサ93は、ロール紙Prの先端の段差を検知可能な検知精度を有する。
【0044】
入口ガイド板95は、ロール紙Prから剥離した用紙の搬送方向をガイドする。図5の構成例では、給紙動作時(ロール紙Prの正転回動時)において、ガイド板として働くアーム91は、用紙の搬送方向の上流側で用紙をガイドし、入口ガイド板95は、下流側でガイドする。
【0045】
次に、給紙装置の機能の制御について説明する。図6は、一実施形態の給紙装置の機能例を説明する機能ブロック図である。
制御部110は、給紙装置全体の制御を行う。図6では、制御部110が、センサ93と、モータ駆動回路部120、140と、表示部170とを制御する機能ブロック例を示し、他の機能ブロックを省略している。制御部110の機能は、画像形成装置全体の制御を行う制御部110(図2参照)が実行するように構成してもよい。
【0046】
制御部110は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備える。
CPUは、各種のプログラムを実行し、演算処理や、制御プログラムに基づいて画像処理装置の全体を制御する。
RAMは、情報を高速で読み書きするための揮発性の記憶媒体であり、CPUがプログラムを実行する際のワークエリアとして機能する。
ROMは、各種プログラムや制御プログラムが記憶されている読み出し専用の不揮発性の記憶媒体である。
【0047】
モータ駆動回路部120は、制御部110の制御によりモータを駆動させ、ロール紙駆動部130を駆動させる。
ロール紙駆動部130は、ロール紙を正転方向または逆転方向に回転させる。ロール紙駆動部130は、例えば、ロール紙回転モータを用いる。
モータ駆動回路部140は、制御部110の制御によりモータを駆動させ、搬送駆動部150を駆動させる。
搬送駆動部150は、搬送部160を駆動する。
搬送部160は、用紙を搬送する搬送手段であり、例えば、搬送ローラ対6とする。
表示部170は、給紙装置の動作状況などを表示する。
【0048】
次に、支持部材としてのアームの構成例と、先端検知動作例とを説明する。
図7は、一実施形態のアームの構成例を説明する図であり、(A)にアーム91の一例を説明する斜視図、(B)にセンサ93の外観を示す概略図、(C)にセンサ93を構成するアクチュエータと側板との一例を説明する側面図を示す。
【0049】
アーム91は、センサ93がロール紙の先端を検知する動作(逆転回動)において、コロ92が用紙搬送方向の上流側、センサ93が下流側となるように配置する。
【0050】
センサ93は、例えば、アクチュエータ931にスリット932が設けられたエンコーダセンサを用いる。センサ93を紙厚センサ、先端検知センサなどと称してもよい。
アクチュエータ931は、センサの筐体を構成する二つの側板933の間に配置され、側板933の軸受に軸934がはめ込まれ、軸934を中心に回動する。アクチュエータ931は、例えば、図7(C)に示すような、軸934を中心として非対称の形状を有する。
【0051】
センサ93は、発光部と受光部とを有し(図示せず)、アクチュエータ931のスリット932を発光部から受光部へ光が通る数をカウントすることにより(信号波形の数をカウントすることにより)、ロール紙Prの先端を検知する。センサ93は、例えば5μm/パルス程度の分解能を持つことで紙厚分の段差を検出することが可能である。
【0052】
図7の構成例では、コロ92を二つ設け、二つのコロ92間にセンサ93を配置している。コロ92間にセンサ93を配置することにより、ロール紙先端の浮きを確実に押させることが可能となり、用紙の厚みやコシ、カール状況によってセンサ93の出力が不安定となることはなく、確実に先端を検知できる。また、コロ92とセンサ93とを円周方向でずれて配置しているので、部分的なキズ等があっても、コロとセンサとの両方にかかる割合は少なくなり、誤検知しにくい構成となる。
以降の説明では、二以上のコロ92をコロ部とも称する。
【0053】
図8は、ロール紙の先端を検知する動作例を説明する図である。また、図9は、コロとセンサとの位置関係による違いを説明する図である。
図8では、ロール紙Prの先端がコロ92とセンサ93とを通過する経過を示し、(A)に先端がコロ92を通過する前の状態、(B)に先端がコロ92を通過しセンサ93を通過する前の状態、(C)に先端がセンサ93を通過した状態を示す。
図9では、先端検知動作において、(A)にコロ92がセンサ93より下流側の場合、(B)にコロ92がセンサ93より上流側の場合であり、たるみの発生状況の違いを示している。
【0054】
センサ93とコロ92とは近傍にオフセット(ロール紙の円周方向でオフセット)されて配置されており、コロ92がセンサ93よりも上流にあるため、センサ93で用紙先端を検知する直前までコロ92が用紙先端を押さえることができる(図9(A))。このようにすると、センサ93は、図9(B)に示すように、ロール紙Pr表面に先端を密着させた状態で、ロール紙表面の段差(紙厚)を先端として検知することが可能となる。これにより、用紙の厚みやコシ、カール状況によってセンサ93の出力(検知結果)が不安定となることはなく、センサ93は、確実にロール紙Prの先端を検知することができる。
【0055】
なお、本実施形態の例ではコロ92をセンサ93より上流に配置しているが、逆の配置(図9(A))でも検知は可能である。しかし、コロ92をセンサ93より上流に配置した方がより確実にロール紙先端の浮きを検知直前まで押さえることが可能となるため好ましい。
また、図7で示した様にコロ92を2つ設けコロ間にセンサを配置することにより、コロ92が1つよりもロール紙先端の浮きをより確実に押さえておくことが可能となる。
【0056】
次に、センサ93により得られる信号の一例について説明する。
図10(A)は、コロ92とセンサ93の位置関係、コロ92とセンサ93を配置したアーム91、ロール紙先端Prs等を説明する図である。図10(B)は、図10(A)のセンサ93によって得られる信号波形の一例である。
【0057】
図10(A)に示す例は、図4図8等と同様に、コロ92とセンサ93は、ロール紙Prの円周方向において異なる位置に配置され、コロ92とセンサ93とは円周方向に互いにオフセットされた配置となっている。また、図中のOはスプールの軸中心を表し、センサ93とコロ92はスプールの軸中心に向かって配置されている。また、先端検知動作において、コロ92がセンサ93よりも上流側に配置されている。
【0058】
図中の(1)~(3)は、ロール紙先端Prsの位置によって分けられた領域である。(1)は、ロール紙先端Prsがコロ92よりも上流側にある場合の領域である。(2)は、ロール紙先端Prsがコロ92よりも下流側であり、センサ93よりも上流側にある場合の領域である。(3)は、ロール紙先端Prsがセンサ93よりも下流側にある場合の領域である。これらを領域(1)、領域(2)、領域(3)とも称する。
【0059】
図10(B)に示すように、ロール紙先端Prsが領域(1)から領域(2)に移ったときにセンサ信号の値が変化し、ロール紙先端Prsが領域(2)から領域(3)に移ったときにセンサ信号の値が変化する。ここで示す例では、領域(1)のセンサ信号の値と領域(3)のセンサ信号の値が同じ、もしくは近い値になっている。
【0060】
次に、図10(B)に示すような信号波形になることについて、図11を用いて補足の説明を行う。図11は、図10(A)に示す例において、ロール紙先端Prsの位置が変化した場合のコロ92、センサ93、アーム91の動きの一例を説明するための図である。図11(A)は、図10(A)と同様に、ロール紙先端Prsが領域(1)を移動している場合の例である。領域(1)では、センサ信号は変化せず、一定、もしくは略一定となる。
【0061】
図11(B)は、ロール紙先端Prsが領域(2)を移動している場合の例である。ロール紙先端Prsが領域(1)を越えると、換言すると、ロール紙先端Prsがコロ92を通過すると、ロール紙Prの紙厚分だけアーム91がロール紙Prの方向へ回動する。このことを図中の白矢印で模式的に示している。そして、アーム91がロール紙Prの方向へ回動することにより、アーム91とロール紙Prとの距離が小さくなり、小さくなった距離の分、センサ93は変化する。このことを図中の黒矢印で模式的に示している。このようなセンサ93の変化としては、センサ93の根元部分(図中の円の部分)とロール紙Prの距離が小さくなったと表現してもよいし、センサの検知部分(図中のL字の部分)の角度が変化した(角度が小さくなった)と表現してもよい。このため、領域(2)では、図10(B)に示すように、センサ信号が小さくなる。ただし、センサの種類等によっては、センサ信号が大きくなるような信号波形であってもよい。また、領域(2)において、アーム91の回動が止まると、センサ信号は領域(3)に至るまで一定、もしくは略一定になる。
【0062】
図11(C)は、ロール紙先端Prsが領域(3)を移動している場合の例である。ロール紙先端Prsが領域(2)を越えると、換言すると、ロール紙先端Prsがセンサ93を通過すると、ロール紙Prの紙厚分だけ、センサの検知部分(図中のL字の部分)の角度が大きくなる。このことを図中の黒矢印で模式的に示している。領域(3)では、アーム91は回動しないため、センサ93の根元部分(図中の円の部分)とロール紙Prとの距離は変わらない。領域(3)におけるセンサ93は、領域(1)におけるセンサ93と同様の形状になる。その他の表現として、領域(1)と領域(3)とで、ロール紙Prとセンサ93との距離が同じになるなどと表現してもよい。このため、領域(3)では、図10(B)に示すように、センサ信号が領域(1)と同様の値になる、もしくは近い値になる。
【0063】
次に、図10(B)のセンサ信号の波形について詳細を説明する。
図12は、図10(B)のセンサ信号の波形について、領域(1)~領域(3)の境界がわかるように示した図である。図12に示すように、領域(1)と領域(2)の境界及び領域(2)と領域(3)の境界で、センサ信号が傾きを有していることがわかる。図示するように、領域の境界では、センサ信号は不連続な変化にならずに、連続した変化になっている。
【0064】
本実施形態では、時間に対する、ロール紙の先端がコロ92を通過する際のセンサ信号の出力強度の変化量を表すグラフの傾きK1と、時間に対する、ロール紙の先端がセンサ93を通過する際のセンサ信号の出力強度の変化量を表すグラフの傾きK2とを検出することにより、ロール紙の先端の有無を検知することができる。図12にあわせて換言すると、ロール紙先端Prsが領域(1)から領域(2)に移る際のセンサ信号の傾きK1と、ロール紙先端Prsが領域(2)から領域(3)に移る際のセンサ信号の傾きK2とを検出することにより、ロール紙の先端を検知することができる。
【0065】
なお、センサ信号の出力強度の変化量を表すグラフは、時間に対する変化量として記載しているが、距離に対する変化量として記載してもよい。簡略化のため、時間に対する、センサ信号の出力強度の変化量を表すグラフの傾きを、単にセンサ信号の傾きなどとも表記することがある。
【0066】
ここでは、ロール紙の先端がコロ92を通過する際のセンサ信号の傾きを傾きK1と称し、ロール紙の先端がセンサ93を通過する際のセンサ信号の傾きを傾きK2と称している。後述するように、ここで示す例では、傾きK1は負の値であり、傾きK2は正の値であるが、これに限られず、逆であってもよい。センサの種類等によっては、傾きK1が正の値であり、傾きK2が負の値でもよい。
【0067】
次に、図12に示すセンサ信号の波形において、センサ信号が傾きを有することについて、図13図15を用いて補足の説明を行う。図13(a)~(d)は、ロール紙先端Prsが図11(A)に示す破線Aの地点、すなわちコロ92の位置まで到達してから、図11(B)に示す位置まで移動した場合の時系列に沿った図である。換言すると、ロール紙先端Prsが領域(1)の端部に到達してから、領域(2)に移る場合の図である。
【0068】
図13(a)~(d)に示すように、ロール紙先端Prsがコロ92を通過する際、コロ92の回転に伴い、ロール紙Prとコロ92との距離は徐々に変化する。ロール紙先端Prsがコロ92を通過する際、図13(a)から例えば図13(b)や図13(c)を経て図13(d)に至る。そのため、アーム91は、図13(a)から例えば図13(b)や図13(c)を経て図13(d)のように回動する。コロ92とアーム91の動きを白矢印で模式的に示している。
【0069】
このときのセンサ93の動きを図14(a)~(d)に示す。図14(a)~(d)と図13(a)~(d)は対応しており、同じ時系列である。図13(a)~(d)に示すようにアーム91が移動するため、センサ93は図14(a)から例えば図14(b)や図14(c)を経て図14(d)に至るといったように徐々に変化する。例えば、センサ93の根元部分(図中の円の部分)とロール紙Prの距離が徐々に小さくなったと表現してもよいし、センサの検知部分(図中のL字の部分)の角度が徐々に小さくなったなどと表現してもよい。このため、ロール紙先端Prsがコロ92を通過する際、図12に示すように、センサ信号は傾きK1を有することになる。
【0070】
図15(e)~(h)は、ロール紙先端Prsが図11(B)に示す破線Bの地点、すなわちセンサ93の位置まで到達してから、図11(C)に示す位置まで移動した場合の時系列に沿った図である。換言すると、ロール紙先端Prsが領域(2)の端部に到達してから、領域(3)に移る場合の図である。図15(e)は、図14(d)よりも時間が後の状態を示す図である。
【0071】
なお、図11に示す破線Bの位置と、図15に示す破線Bの位置とは若干異なっているが、結果に何ら影響を与えるものではない。図11に示す破線Bは、ロール紙先端Prsが領域(1)に位置する場合のセンサ93の接触点を通る直線であり、図15に示す破線Bは、ロール紙先端Prsが領域(2)に位置する場合のセンサ93の接触点を通る直線である。
【0072】
図15(e)~(h)に示すように、ロール紙先端Prsがセンサ93を通過する際、センサ93は図15(e)から例えば図15(f)や図15(g)を経て図15(h)に至るといったように徐々に変化する。このため、ロール紙先端Prsがセンサ93を通過する際、図12に示すように、センサ信号は傾きK2を有することになる。本実施形態におけるセンサ93は、ロール紙の先端の段差を検知可能な検知精度を有しているため、傾きK1と傾きK2を検出することが可能になる。
【0073】
次に、図12に示すセンサ信号の詳細について、図16を用いて説明する。
図16は、図12について説明を付した図である。図16に示す例では、ロール紙先端Prsがコロ92を通過する際、センサ信号は点a1から点a4に変化する。このとき、点a1から点a4までの途中の任意の点、点a2と点a3を選ぶことで、傾きK1を求めることができる。例えば、図16の横軸をx、縦軸をyとしたとき、点a2から点a3へ、x1変化し、y1変化したとすると、傾きはK1=y1/x1となり、傾きK1が求められる。特に制限されるものではないが、傾きK1の値が所定の範囲である場合に、傾きが検出されたとしてもよい。また、複数の点を選択して複数の傾きを求めて平均を算出してもよい。
【0074】
図16に示す例では、ロール紙先端Prsがセンサ93を通過する際、センサ信号は点b1から点b4に変化する。このとき、点b1から点b4までの途中の任意の点、点b2と点b3を選ぶことで、傾きK2を求めることができる。例えば、図16の横軸をx、縦軸をyとしたとき、点b2から点b3へ、x2変化し、y2変化したとすると、傾きはK2=y2/x2となり、傾きK2が求められる。上記と同様に、特に制限されるものではないが、傾きK2の値が所定の範囲である場合に、傾きが検出されたとしてもよい。また、複数の点を選択して複数の傾きを求めて平均を算出してもよい。図16に示す例では、傾きK1と傾きK2の符号は逆になっている。
【0075】
このように、ロール紙の先端がコロ92を通過する際のセンサ信号の傾きK1と、ロール紙の先端がセンサ93を通過する際のセンサ信号の傾きK2とを検出することにより、ロール紙の先端の有無を検知することができる。また本実施形態では、傾きK1と傾きK2の両方を検出することにより、ロール紙先端の有無について、検知精度を向上させることができる。
【0076】
また、図16に示すように、ロール紙の先端がコロ92を通過する際のセンサ信号の傾きK1と、ロール紙の先端がセンサ93を通過する際のセンサ信号の傾きK2とが、所定の時間T1内に検出されることが好ましい。この場合、ロール紙表面の凹凸による誤検知を抑制することができる。
【0077】
T1としては、適宜選択することができるが、以下のようにすることが好ましい。
コロ92からセンサ93までの円周距離をL(mm)とし、ロール紙先端の線速度をV(mm/s)とし、設定マージン時間をm1(s)としたとき、T1は、
T1=L/V+m1 [s]
とすることが好ましい。このようにすることで、ロール紙表面の凹凸による誤検知を抑制することができるとともに、ロール紙先端の検出漏れを抑制することができる。
【0078】
また、ロール紙先端の検知動作を開始してから、ロール紙又はスプールが1回転してもロール紙先端が検知されない場合、ロール紙又はスプールを更に回転させて検知動作を繰り返すことが好ましい。これにより、検知精度を更に向上させることができる。なお、この場合、実施回数を設定することが好ましい。実施回数を設定することで、検知動作が繰り返されて終了しない事態を回避できる。
【0079】
上記の式に表されるように、T1は任意に設定可能である。また、設定マージン時間m1(s)は、特に制限されるものではなく、適宜設定することができる。例えばセンサの種類、ロール紙の紙厚なども考慮して設定してもよい。ただしm1<T1である。
【0080】
本実施形態において、ロール紙の先端の有無は、例えば制御部110が行う。また、後述するように、ロール紙の先端の有無だけでなく、ロール紙の先端の位置を検出するようにしてもよい。この場合のロール紙の先端の位置は、ロール紙の円周方向における位置である。
【0081】
上記の検知の例では、傾きK1と傾きK2が所定の時間T1内に検出された場合に、ロール紙先端があると判断していたが、本発明はこれに限られない。以下に説明するように、ロール紙又はスプールを複数回回転させて検知動作を繰り返すことで、n回転目の傾きK1又は傾きK2を検出できなかったとしても、n+1回転目の傾きK1又は傾きK2が検出されたときにロール紙の先端があると判断することも可能である。
【0082】
図12に示すセンサ信号の詳細について、図17を用いて更に説明する。図17は、ロール紙又はスプールを複数回回転させて検知動作を繰り返した場合の例である。ここでは、n回転目の信号波形とn+1回転目の信号波形を示している。nは1以上の整数であり、例えば1である。
【0083】
上記の検知の例では、n回転目に傾きK1と傾きK2が時間T1内に検出された場合、ロール紙先端があると判断していた。例えば図7のようにロール軸方向に2つ以上のコロ92を配置している場合、用紙先端が斜めにカットされた状態だと、傾きK1や傾きK2が検出されにくい場合がある。
【0084】
そこで、本例では、傾きK1と傾きK2を検出した後、所定の時間T2内に再度、傾きK1を検出したかどうかを判断し、傾きK1が再度検出された場合に、ロール紙の先端があると判断するようにしてもよい。このようにすることで、検出精度を更に向上させることができる。所定の時間T2(s)は、ロール紙又はスプールが1回転するときの時間に、設定マージン時間m2(s)を加えた時間である。イメージとしては、n回転目で傾きK1が検出された場合に、次のn+1回転目で傾きK1が検出されるかどうかを判定するものである。
【0085】
同様に、傾きK1と傾きK2を検出した後、所定の時間T2内に再度、傾きK2を検出したかどうかを判定し、傾きK2が再度検出された場合に、ロール紙の先端があると判断するようにしてもよい。このようにすることで、検出精度を更に向上させることができる。傾きK1が検出されにくい場合には、傾きK2を検出した後、所定の時間T2内に再度、傾きK2を検出したかどうかを判定することが好ましい。
【0086】
特に、傾きK1と傾きK2の検出を複数回繰り返した後、所定の時間T2内に再度、傾きK1又は傾きK2を検出したかどうかを判定することがより好ましい。この場合、検知精度を更に向上させることができる。
【0087】
なお、これらの例は、後述の図19のフローにおけるS21~S25、S28及びS29の処理を行うものである。
【0088】
設定マージン時間m2(s)は、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。上記m1と同様に、例えばロール紙の紙厚、センサの種類なども考慮して設定してもよい。ただしm2<T2である。
【0089】
n回転目で傾きK1が検出された場合に、次のn+1回転目でも同じように傾きK1が検出されるかどうかの判定について補足する。例えば、n回転目で傾きが検出された場合に、その傾きが所定の値以上であれば傾きK1が検出されたと判断してもよい。n+1回転目も同様に、傾きが検出された場合に、その傾きが所定の値以上であれば傾きK1が検出されたと判断してもよい。ここでいう所定の値としては、適宜選択することができるが、例えば検出された傾きの絶対値が4以上である場合、傾きK1が検出されたと判断することができる。傾きK1を検出した後、所定の時間T2内に再度、傾きK1を検出したといえる。傾きK2についても同様であり、検出された傾きの絶対値が所定の値以上であれば傾きK2が検出されたと判断してもよい。なお、傾きK2については、絶対値の判定を行う前に、傾きの符号を確認し、傾きK1とは異なることを判定しておく。
【0090】
傾きK1を検出した後、所定の時間T2内に再度、傾きK1を検出したかどうかの判定は、上記の他にも、傾きの比を検討する方法としてもよい。n回転目の傾きK1をK1(n)とし、n+1回転目の傾きK1をK1(n+1)としたとき、K1(n)とK1(n+1)は、厳密に一致していなくてもよい。両者の比が所定の範囲内であれば、傾きK1を検出した後、所定の時間T2内に再度、傾きK1を検出したといえる。一概にはいいにくいが、例えば、K1(n)≧K1(n+1)の場合、K1(n)/K1(n+1)が1.0以上1.2以下である場合、両者が一致しているといえる。K1(n)<K1(n+1)の場合、K1(n)/K1(n+1)が0.8以上1.0未満である場合、両者が一致しているといえる。傾きK2についても同様である。K2(n)≧K2(n+1)の場合、K2(n)/K2(n+1)が1.0以上1.2以下である場合、両者が一致しているといえる。K2(n)<K2(n+1)の場合、K2(n)/K2(n+1)が0.8以上1.0未満である場合、両者が一致しているといえる。
【0091】
本発明では、傾きK2のみを検出することでもロール紙の先端があるかどうかを判断することが可能である。この場合、ロール紙の先端がセンサ93を通過する際のセンサ信号の傾きK2を検出し、ロール紙又はスプールのn回転目で傾きK2が検出されたときに、n+1回転目で再度、傾きK2が検出されたどうかを判断し、所定の回転数、連続で傾きK2が検出された場合に、ロール紙の先端があると判断する。このようにすることで、傾きK1が検出されにくい場合であっても、ロール紙の先端を検知することができる。所定の回転数としては、適宜選択することができる。
【0092】
また例えば、図7のようにロール軸方向に2つ以上のコロ92を配置している場合、用紙先端が斜めにカットされた状態だと、傾きK1が検出されにくい場合がある。この場合、傾きK1と傾きK2の検出動作を所定回数繰り返した後に、傾きK2のみを検出することで検知精度を向上させることができる。
【0093】
次に、ロール紙をセットしてから用紙搬送動作を行うまでの一例について、フローチャートの例を用いて説明する。図18は、一実施形態の給紙装置において、ロール紙をセットする動作例を説明するフローチャートである。
【0094】
制御部110は、ロール紙Prが給紙装置(例えば、スプール検知センサの検知結果により検出する)にセットされたことを検出すると(S11)、モータ駆動回路部120を制御し、ロール紙駆動部130にロール紙Prを逆転させるように制御する。ロール紙回転モータ(ロール紙駆動部130)は、ロール紙Prを、逆転動作で巻き取る方向に回転させ(S12)、センサ93は、先端検知動作を行う(S13)。
【0095】
図中のAは、S13の先端検知動作で行う処理のことを意味する。S13の先端検知動作では、図19に示すAのフローを行う。Aのフローでは、ロール紙の先端が検知された場合(S14)と、Eのフローに移行する場合とに分かれる。Eのフローは図20に示されている。Eのフローでは、ロール紙の先端が検知された場合(S14)と、ロール紙の先端が検知されなかった場合(S18)とに分かれる。
【0096】
センサ93により先端が検知されると(S14)、制御部110の制御により、モータ駆動回路部120は、用紙先端停止位置でロール紙回転モータを停止させ(S15)、正転動作によってロール紙の用紙先端を搬送方向に送る(S16)。モータ駆動回路部140は、搬送部160を回転させ、用紙先端を装置内部へ搬送させる(S17)。
【0097】
Eのフローで、ロール紙の先端が検知されなかった場合(S18)、ロール紙回転モータを停止させる(S19)。その後、必要に応じて、表示部170に警告を表示する等の処理を行う。
【0098】
次に、図18のAの部分のフローチャートについて図19を用いて説明する。図19に示すAのフローチャートの例は、先端検知動作(S13)を行うものである。
まず、先端検出回数Nを0にする(S21)。
次いで、傾きK1が検出されたかどうかを判定する(S22)。傾きK1が検出された場合(S22がYESの場合)、T1以内に傾きK2が検出されたかどうかを判定する(S23)。傾きK1からT1以内に傾きK2が検出された場合(S23がYESの場合)、先端検出回数(N)を+1する(S24)。
【0099】
なお、T1以内に傾きK2が検出されたかどうかを判定することについては、例えば図16で説明した内容を用いることができる。また、S22においては、センサ変位出力(K1)が検出されたかどうかを判定するなどと称してもよい。
【0100】
次いで、先端検出回数が設定値a以上であるかどうかを判定する(S25)。設定値aは、何回で先端と判定するのかを設定する値である。設定値aは1以上の整数であり、検知動作の信頼性を上げたい場合、値を増やす。なお、図21に、フローチャートで使用している用語の説明を示している。
【0101】
先端検出回数が設定値a以上である場合(S25がYESの場合)、ロール紙の先端が検知されたと判断する、換言すると、ロール紙の先端があると判断する(S14)。次いで、図18に示す本フローへ移行する。なお、図19ではS14を表示しており、図18でもS14が表示されているため、両者で重複しているが、単に理解のしやすさの観点からそのように表示している。
【0102】
上記説明した内容を再度説明すると、例えば設定値aが1である場合、傾きK1を検出した後、T1以内に傾きK2が検出されたため、ロール紙の先端があると判断した例である(S21~S25、S14)。
【0103】
S25において、N<aの場合(先端検出回数N<設定値aの場合)、すなわち、S25がNOの場合、引き続き先端検出動作を行う(S28、S29)。このとき、本例では、図19に示すようにS28及びS29を行っている。S28では、傾きK1を検出した後、T2以内に再度、傾きK1が検出されたかどうかを判定している。これは、上記の図17で説明したように、T2以内に再度、傾きK1が検出されたかどうかを判定するものであり、検知精度を上げることができる。
【0104】
S28において、T2以内に再度、傾きK1が検出された場合(S28がYESの場合)、傾きK1を検出した後、T1以内に傾きK2が検出されたかどうかを判定する(S29)。S29がYESの場合、S24に戻り、先端検出回数(N)を+1する。再度、S25の判定を行い、YESの場合、先端ありと判断し、本フローへ戻る。このように、S25、S28及びS29を行うことにより、検知精度を更に向上させることができる。
【0105】
図19のS22において、傾きK1が検出されなかった場合(S22がNOの場合)、先端検知センサ(センサ93)の出力があるかどうかを判定する(S26)。センサの出力がない場合(S26がNOの場合)、先端検知センサが故障している(センサ異常)と判断する(S27)。
【0106】
S26の判定においては、例えば、所定の時間、先端検知センサの出力があるかどうかを判定する。所定の時間としては、例えばロール紙又はスプールが1回転する時間以上であることが好ましい。このようにすることで、誤検知を低減できる。
【0107】
S26の判定でYESの場合、すなわち、傾きK1が検出されず、先端検知センサの出力があった場合、ロール紙の回転数を判定する(S30)。ここでは、R回回転したかを判定している。Rは、図21にも記載しているように、先端検出まで、何回ロール紙を回転させるかを設定した値である。なお、ロール紙の回転数を判定しているが、スプールの回転数を判定するようにしてもよい。ロール紙の回転数がR回よりも少ない場合(S30の判定がNOの場合)、回転数をカウントアップして(S31)、再度、傾きK1が検出されたかどうかを判定する(S22)。
【0108】
S22、S26、S30の処理の流れでは、傾きK1が検出されていないが、先端検知センサの出力があるため、先端検知センサが故障していないことが想定される。何らかの理由により傾きK1が検出されていないため、ロール紙を繰り返し回転させて、傾きK1の検出を試みている。このような処理を複数回行うことにより、ロール紙の先端があるにも関わらず、ロール紙の先端の検出が漏れてしまうことを低減できる。
【0109】
ロール回転数がR回である場合(S30の判定でYESの場合)、図20に示すフローEへ移行する。また、S28とS29の判定でNOである場合、換言すると、傾きK1と傾きK2が検出されない場合も、S30の判定を行った後、図20に示すフローEへ移行する。フローEは、フローAにおいて、ロール紙の先端が検出されなかった場合に移行する流れである。
【0110】
図20は、フローEの一例を示すフローチャートである。
まず、先端検出回数Nを0にする(S41)。次いで、傾きK2が検出されたかどうかを判定する(S42)。S42においては、センサ変位出力(K2)が検出されたかどうかを判定するなどと称してもよい。
【0111】
傾きK2が検出された場合(S42がYESの場合)、先端検出回数(N)を+1する(S43)。次いで、先端検出回数が設定値a以上であるかどうかを判定する(S44)。設定値aは上記と同様であり、何回で先端と判定するのかを設定する値である。先端検出回数が設定値a以上である場合(S44がYESの場合)、ロール紙の先端が検知されたと判断する、換言すると、ロール紙の先端があると判断する(S14)。次いで、図18に示す本フローへ移行する。なお、図20ではS14を表示しており、図18でもS14が表示されているため、両者で重複しているが、単に理解のしやすさの観点からそのように表示している。
【0112】
S44においては、設定値aは2以上とすることが好ましく、S46の処理を少なくとも一回行うことが好ましい。すなわち、傾きK2が複数の回転において検出されたかどうかを判定することが好ましい。S44の判定においては、ロール紙又はスプールのn回転目で傾きK2が検出されたときに、n+1回転目で再度、傾きK2が検出されたどうかを判断し、所定の回転数、連続で傾きK2が検出された場合に、ロール紙の先端があると判断することが好ましい。この場合、ロール紙の先端をより精度良く検知することができる。例えば、ロール紙の先端ではない凹凸を傾きK2であると誤認定してしまうことを抑制できる。
【0113】
なお、S46では、傾きK2を検出後、T2以内に再度、傾きK2が検出されたかどうかを判定しているが、これは、n回転目で傾きK2が検出されたときに、n+1回転目で再度、傾きK2が検出されたどうかを判定することを意味する(図17参照)。
【0114】
S42の判定でNOの場合、すなわち、傾きK2が検出されなかった場合、ロール紙の回転数を判定する(S45)。ここでは、R回回転したかを判定している。Rは上記と同様である。ロール紙の回転数がR回よりも少ない場合(S45の判定がNOの場合)、回転数をカウントアップして(S31)、再度、傾きK2が検出されたかどうかを判定する(S42)。
【0115】
ロール回転数がR回以上である場合(S45の判定でYESの場合)、ロール紙の先端がないと判断し、ロール紙の回転モータをOFFにする(S18、S19)。なお、図20ではS18、S19を表示しており、図18でもS18、19が表示されているため、両者で重複しているが、単に理解のしやすさの観点からそのように表示している。
【0116】
また、S46の判定でNOである場合、換言すると、傾きK2が検出されない場合も、S45の判定を行った後、ロール紙の先端がないと判断し、ロール紙の回転モータをOFFにする(S18、S19)。
【0117】
S22、S26、S30の処理を行い、更にS42、S44、好ましくはS46の処理を行うことで、傾きK1を検出しない場合であっても、傾きK2のみでロール紙の先端の有無を検知することができる。また、S46の処理を行うことで、検知精度を向上させることができる。
【0118】
本実施形態では、スプールを給紙装置の保持部にセットするだけで、自動でロール紙の先端を精度良く検知することができる。また上記説明したように、本実施形態では、ロール紙の先端がコロ部を通過する際のセンサ信号の傾きK1と、ロール紙の先端が先端検知センサを通過する際のセンサ信号の傾きK2とを検出することにより、ロール紙の先端の有無を判断することができる。ロール紙の先端を検知した場合に、ロール紙がセットされていると判断することができるため、例えば反射式センサなどの部材を設ける必要がない。そのため、部品数を増やすことなく、ロール紙がセットされているかどうかを検知することができる。
【0119】
また後述もしているが、本実施形態によれば、ロール紙がセットされていないにも関わらず、ロール紙がセットされている場合の処理を行うことを防止できる。従来では、スプールが保持部にセットされたことを検知して給紙画面を表示部170(操作部)に表示していた。ロール紙がセットされておらずスプールのみがセットされた場合、給紙を行うことができないため、給紙画面を閉じる等の手間が生じてしまう。もしこの場合、給紙画面で給紙開始のボタンが誤って押されてしまうと、装置が給紙失敗と判断するまで装置が動き続けてしまうことの他、カバーを開けて装置を停止させる必要が生じること、装置を復帰させるための対応が必要になることなど、オペレーター(ユーザーなどと称してもよい)の手間が増大する。
【0120】
本発明によれば、部品数が多くならずにロール紙がセットされていないことを自動的に精度良く検知できるとともに、ロール紙がセットされていないにも関わらず、ロール紙がセットされている場合の処理を行うことを防止できる。
【0121】
次に、本発明における空スプールの検知動作について説明する。
ロール紙から用紙を給紙する給紙装置では、例えば、スプールがセットされると、センサで検知されて、給紙画面が表示部170(操作部、表示パネルなどとも称する)に表示される。給紙画面には、用紙の種類などの確認画面(必要に応じて設定変更が可能)、給紙スタートや給紙キャンセルのボタンなどが表示される。給紙スタートボタンを押下した場合、自動給紙動作が行われる。自動給紙動作は、例えば、ロール紙の先端を検知し、ロール紙の先端を給紙部へ搬送する。
【0122】
このような給紙装置において、ロール紙が備えられていない状態のスプールを空スプールとも称する。また、空スプールの検知動作とは、セットされたスプールが空スプールであるかどうかを検知する動作(判断する動作と称してもよい)である。換言すると例えば、空スプールの検知動作とは、セットされたスプールにロール紙が備えられているかどうかを判断し、スプールにロール紙が備えられていない場合には、装置側が空スプールであると判断する動作である。
【0123】
一般的に、給紙は行わないが、空スプールをロール紙保持部に載置しておきたい場合がある。例えば、給紙は行わないが、スプールの置き場がなく、給紙装置に載置しておきたい場合などが挙げられる。従来技術では、ロール紙がセットされていないスプールを給紙装置にセットした場合に、ロール紙がセットされていないにも関わらず、ロール紙がセットされた場合の処理を行うことがあった。そのため、オペレーターは、まずその処理を取り止める必要が生じ、オペレーターに余計な手間や時間がかかってしまうという問題があった。この他にも、装置を停止させる対応や装置を復帰させる対応が必要になる等の問題がある。
【0124】
従来技術では、空スプールをロール紙保持部へ載置した場合でも、給紙画面が表示され、給紙スタートボタンが表示されてしまうため、給紙キャンセルボタンを押下するなどキャンセルする必要があった。空スプールがセットされた状態で万が一、給紙スタートボタンを押してしまった場合、装置側が給紙失敗と認識できるまで動作を継続してしまう等の不具合が生じる。また、給紙スタートボタンを押してしまった場合、ユーザー(オペレーター含む)がカバーを開けて装置の動作を停止させるなど、余計な手間や時間がかかってしまう。また、カバーを開けて装置の動作を停止させた場合、装置を復帰させる動作も必要になるため、更に手間や時間がかかってしまう。
【0125】
また従来技術では、ロール紙がセットされていないことを検知するために、部品数が多くなるといった問題や、検知精度を上げられないといった問題が生じていた。例えば、反射式センサによりロール紙の表面とスプール軸の表面の反射率の違いにより、ロール紙なのかスプール軸なのかを検知する方法も考えられる。しかしこの方法だと、センサの追加により部品点数が増えコスト増に繋がる問題の他、外光の影響により誤検知の発生があるなどの問題があった。
【0126】
また、スプール表面にセンサが接触しない位置にして、センサからの出力がない場合、スプールにロール紙がセットされていないと判断することも有効であるとされている。しかし、センサを支持しているガイド板の振動を検知してしまう場合があり、検知精度を向上させることが求められている。そのため、ロール紙がセットされていないことの検知精度を向上させることが求められている。
【0127】
これらの問題を解決するため、本発明では、給紙装置にセットされたスプールに対して空スプールの検知を行う。本発明における制御部は、先端検知センサのセンサ信号に基づいて、ロール紙の先端の有無を判断するとともに、ロール紙がスプールに備えられているかどうかを判断する。これにより、スプールに用紙が備えられていない場合に、誤って給紙動作を行うことを防止でき、ユーザーに余計な手間や時間がかかってしまうことを防止できる。
【0128】
また、本発明では後述のように、スプールに凹部又は凸部を設けており、これにより空スプールの検知精度を向上させることができる。本発明では、効率的に、ロール紙がスプールにセットされていないことを自動的に精度良く検知できる。また本発明では、部品数を増やすことなく、空スプールの検知を行うことができる。
【0129】
なお、給紙装置にセットされたスプールに対して空スプールの検知を行うタイミングとしては、適宜選択することが可能であるが、例えば、スプールがロール紙保持部に載置された場合が挙げられる。スプール検知センサがスプールを検知した場合に、空スプールの検知を行うことが好ましい。
【0130】
図22は、ロール紙の紙管99と、コロ92及びセンサ93とが接している状態を示す図である。例えばスプール98は紙管99の内側に勘合されている。紙管99に巻かれた用紙が使用されて用紙がなくなると、アーム91に設けられたコロ92が紙管99に当接し、センサ93も紙管99と接して紙管99を検知する状態となる。この場合、センサ93の出力としては、紙管99の表面の凹凸を検知し、出力している状態となる。紙管99の表面とセンサ93が接触した場合のセンサ信号は、例えば後述の図28のような出力になる。
【0131】
本発明におけるスプール98は、表面の一部に凹部96a又は凸部96bを有している。図22(A)は凹部96aを有する例であり、図22(B)は凸部96bを有する例である。スプール98が凹部96a又は凸部96bを有することにより、空スプールの検知精度を向上させることができる。凸部96bは紙管99と接触していてもよいし、接触していなくてもよい。
【0132】
図23は、ロール紙Prをスプール98にセットしないでスプール98をセットした場合の状態を示す図ある。すなわち、空スプールをセットした状態の一例を示す図である。スプール98は、例えばロール紙保持部に載置される。図示するように、センサ93はスプール98と接して、スプールを検知する状態となる。センサ93の出力としては、スプール98の表面を検知し、出力している状態となる。図23(A)は凹部96aを1つ有する例であり、図23(B)は凹部96aを2つ有する例である。
【0133】
図24は、図23と同様に、ロール紙Prをスプール98にセットしないでスプール98をセットした場合の状態を示す図ある。すなわち、空スプールをセットした状態の一例を示す図である。図24(A)は凸部96bを1つ有する例であり、図24(B)は凸部96bを2つ有する例である。
【0134】
スプール98が有する凹部96a、凸部96bの配置、個数、形状等は、適宜変更することができ、図示されるものに限られない。また、図22図24では回動中心911を省略しているが、上述のように、アーム91は、コロ92とセンサ93がスプール98の軸中心に向くように回動可能である。
【0135】
図25及び図26は、スプール98が有する凹部96a又は凸部96bと、コロ92及びセンサ93との位置関係の一例を模式的に説明するための図である。なお、図中の符号96は、凹部96a又は凸部96bを意味しており、凹部96aと凸部96bを区別なく説明する際には、凹凸部96などとも称する。また、スプール98の表面には、意図的に設けたものではない凹凸形状が存在し得るが、このような凹凸形状は、上記の凹凸部96と区別して、単に凹凸などと称することがある。図中の符号4はフランジを示しているが、図示する例に限られない。
【0136】
図25(A)は、凹凸部96を2つ有する例であり、アーム91がコロ92を2つ有する例である。スプール98が空スプールの状態で回転したときに、凹凸部96がコロ92と接触する位置となるように、スプール98に凹凸部96が設けられている。スプール98が回転したときに、一方の凹凸部96が一方のコロ92と接触し、他方の凹凸部96が他方のコロ92と接触する。図中の紙面上下方向の破線は、凹凸部96の移動方向を模式的に示している。なお、図中のOの破線は、スプール98の回転軸を模式的に示している。
【0137】
スプール98が空スプールの状態で回転したときに、凹凸部96(例えば凹部96a)がコロ92と接触することになり、例えば図13(a)~(d)に示す事象が生じる。これにより、例えば図12の(1)から(2)へ向かうような傾きのセンサ信号が出力される。また凹部96aには、凹部の底へ向かう領域と、凹部の底から脱する領域とがあり、凹部の底へ向かう領域では、例えば図13(a)~(d)に示す順の事象が生じるのに対し、凹部の底から脱する領域では、例えば図13(a)~(d)を逆にたどる事象が生じる。凹部の底から脱する領域では、例えば図12の(2)から(3)へ向かうような傾きのセンサ信号が検知される。このため、コロ92が凹部96aを通過したとき、出力されるセンサ信号は、例えば図12のようなセンサ信号であって、(2)における底の部分がない、もしくは小さいセンサ信号が出力される。
【0138】
凸部96bにおいても凹部96aと同様に考えることができ、凹部96aと傾きが逆のセンサ信号が出力される。なお、凹凸部96がコロ92と接触するとあるのは、凹凸部96がコロ92を通過すると表記してもよい。スプール98が凹凸部96を有する場合のセンサ信号の一例については、例えば後述の図29図32でも説明している。
【0139】
図25(A)に示す例では、コロ92と凹凸部96とが接触する際、2つの凹凸部96と2つのコロ92とが同一線上で接触する位置関係になっている。2つの凹凸部96を設け、このような位置関係にすることにより、誤検知を抑制できる。
【0140】
図25(B)は、凹凸部96を1つ有する例であり、スプール98が空スプールの状態で回転したときに、凹凸部96がセンサ93と接触する位置となるように、スプール98に凹凸部96が設けられた例である。
【0141】
図25(B)においても図25(A)と同様に考えることができる。図25(B)では、凹凸部96がセンサ93と接触する(を通過する)ため、例えば図15(e)~(h)に示す事象が生じる。凹部96aの場合、凹部の底へ向かう領域では、例えば図15(e)~(h)に示す順の事象が生じるのに対し、凹部の底から脱する領域では、例えば図15(e)~(h)を逆にたどる事象が生じる。凸部96bにおいても凹部96aと同様に考えることができ、凹部96aと傾きが逆のセンサ信号が出力される。
【0142】
図25(C)は、凹凸部96を1つ有する例であり、スプール98が空スプールの状態で回転したときに、凹凸部96がコロ92及びセンサ93と接触する位置となるように、スプール98に凹凸部96が設けられた例である。また、図25(C)に示す例において、凹凸部96は上記の例に比べて幅が大きくなっている。換言すると、スプール98の回転軸方向の長さが大きくなっている。
【0143】
図25(C)に示す例では、例えば、凹凸部96がセンサ93と接触した後に、凹凸部96がコロ92と接触する。つまり、凹凸部96がセンサ93と接触するタイミングと、凹凸部96がコロ92と接触するタイミングとが異なっている。このため、凹凸部96がセンサ93を通過する際と、凹凸部96がコロ92を通過する際とで、凹凸部96の出力が検出される。これにより、1つの凹凸部96で、2つのセンサ信号の出力が検出されるため、誤検知を抑制できる。
【0144】
図26(D)、(E)は、更に変形例を示す図であり、凹凸部96の配置や個数を変更した場合の例を示す図である。図26(D)のように、図26(C)の凹凸部96を分離させてもよい。また、図26(E)のように、凹凸部96の個数を増やしてもよいが、製造の手間が増える。
【0145】
図27(A)~(D)は、凹部96aと凸部96bの一例を示す図である。適宜選択することができるが、例えば図27(A)、(C)のように、不連続的に高さが変化する形状であってもよいし、図27(B)、(D)のように、連続的に高さが変化する形状であってもよい。コロ92又はセンサ93に対する引っ掛かりを考慮すると、(B)、(D)が好ましい。また、凹部96aの深さと凸部96bの高さは、特に制限されるものではないが、例えば、凹凸部96を通過する際のセンサ信号の傾きが、使用可能な最大紙厚の先端を検知するときのセンサ信号の傾きK1max以上、及び/又は、K2max以上となる形状であることが好ましい。
【0146】
次に、センサ信号の出力例、特にセンサ信号における傾きの例について例を挙げて説明する。
図28は、図22に示す例の出力例であり、紙管99の表面のセンサ信号の出力例である。図22に示すように、ロール紙の紙管99と、コロ92及びセンサ93とが接している状態でスプール98が回転した場合の出力例である。
【0147】
図28に示すように、紙管99の表面は、凹凸やうねりがあるため、信号としては一定ではなく、ある程度の幅を持ってばらついている。ばらつきの幅としては、用紙の段差分の出力強度よりは小さくなる。なお、センサ信号における縦軸方向の大きさを出力強度とも称する。ばらつきの幅を出力強度のばらつきと称してもよい。
【0148】
図29は、コロ92が凹部96aを通過する際のコロ92及びアーム91の動きを模式的に説明するための図である。図中の上段の図は、図23(A)と同様の図であり、コロ92等の配置と凹部96aを模式的に示している。図中の下段の図は、コロ92が凹部96aを通過する際の動きを時系列に沿って模式的に示した図である。図中の白矢印は、時系列を表す。
【0149】
図中の下段では、時系列に沿って(a)~(c)としている。(a)は、コロ92が凹部96aを通過する前の時点を示している。(b)は、コロ92が凹部96aの底に向かうときの図である。図中の黒矢印は、コロ92とアーム91の動きを模式的に示している。コロ92が凹部96aの底に向かうため、アーム91がスプール98に近づくこととなる。(c)は、コロ92が凹部96aの底から出るときの図である。コロ92が凹部96aの底から出るため、アーム91がスプール98から離れることとなる。
【0150】
図30は、図29に示す例における、センサ信号の出力例と、センサ信号の傾きの例を説明するための図である。まず、図30(A)に、コロ92の当接例を示す。コロ92の側面もしくは断面は円形状であるため、凹部96aを通過するときの単位時間当たりのセンサ信号の値の変化の度合いは、凹部96aの底に向かうにつれて大きくなり、凹部96aの底から出るにつれて小さくなる。
【0151】
そのため、コロ92が凹部96aを通過するときのセンサ信号の出力例としては、図30(B)に示すように、曲線的な谷形状になる。このときのセンサ信号の傾きをプロットすると、図30(C)に示すような変化になる。なお、図30(B)及び(C)における(a)~(c)は、図29における(a)~(c)と対応させている。また、図30(B)の縦軸は、センサ信号の出力であり、出力強度yとしており、図30(C)の縦軸は、センサ信号の傾きkとしている。また、図30(B)及び(C)では、便宜的に時間軸を左から右にしてプロットしているが、これに限られず、時間軸を右から左にしてプロットしてもよい。
【0152】
図30(C)では、KS、K1max、K2maxを図示しており、これらは設定値である。検出した傾きと、設定値とを比較することにより、凹部96aを検知することができる。K1maxは、使用可能な最大紙厚の先端をコロ92が通過する際のセンサ信号の傾きであり、K2maxは、使用可能な最大紙厚の先端をセンサ93が通過する際のセンサ信号の傾きである。K1maxとK2maxはあらかじめ求めておく。KSは、K1maxにマージンmを加えた設定値である。マージンmを加える理由は、センサバラツキなどを考慮するためである。
【0153】
また図30(C)において、KSはK2maxにマージンmを加えたものであるとして図示されている。KSは、1つの値を設定することを想定しているが、K1max側とK2max側とで値を分けてもよい。しかし、K1maxとK2maxは、絶対値の値が近いことが想定されるため、K1max又はK2maxに、ある程度のマージンmを加えた値とすれば、KSとして1つの値を設定して差し支えない。この他にも、K1maxの絶対値に所定のマージンmを加えた値と、K2maxの絶対値に所定のマージンmを加えた値とのうち大きい方をKSにしてもよい。
【0154】
図30(C)において、傾きkが負の領域でも「KS」と表記している。これは便宜的に表記しているものであり、符号を考慮して「-KS」と表記してもよい。検出された傾きが、KSよりも大きいかどうかを判定するには、例えば、絶対値で両者を比較すればよい。なお、以下の説明では、絶対値で比較することを前提にして説明することがある。例えば、図30(C)に示すセンサ信号の傾きの例において、KSはK1maxよりも大きくなっており、これは絶対値で比較しているため、KSはK1maxよりも大きいといえる。
【0155】
上記の例では、凹部96aの例について説明したが、凸部96bについても適用できる。凸部96bの場合は、凸部96bがコロ92を通過する際、センサの出力が凹部96aに対して正負逆になる。
【0156】
また、凹部96aがセンサ93を通過する際のセンサの出力は、コロ92を通過する際のセンサの出力と符号が逆になる。すなわち、図30(B)の出力例において、上側(正側)に凸となる波形になる。
【0157】
図31は、凹部96aを検出する場合のセンサ信号の他の出力例であり、図23(A)及び図25(A)に示す例の出力例である。図25(A)に示す例では、センサ93がスプール98の表面に接した状態でスプール98が回転するため、スプール98上の凹凸やうねりによって、図31に示すようなばらつきの幅が出力される。
【0158】
図31に示すように、空スプールの状態でスプール98を回転させると、スプール98に設けられた凹部96aがコロ92を通過する際、ピークp1が出力される。このピークp1が凹部96aに相当するピークである。制御部110は、センサ93のセンサ信号に基づいて凹部96aを検知することができ、凹部96aを検知した場合に、空スプールであると判断する。
【0159】
例えば、図31に示す例において、K1Kの領域の傾きがKS(例えば図30(C)の(b))よりも大きい場合、凹部96aがあると判断でき、空スプールであると判断できる。なお、上述のように、両者の比較は、絶対値で行うことが好ましい。また例えば、図31に示す例において、K2Kの領域の傾きがKS(例えば図30(C)の(c))よりも大きい場合、凹部96aがあると判断でき、空スプールであると判断できる。
【0160】
凹部96aがあると判断する際には、K1Kの領域の傾きがKSよりも大きいという条件を満たすか、K2Kの領域の傾きがKSよりも大きいという条件を満たすか、両方の条件を満たすかについて、適宜選択することができる。K1Kの領域又はK2Kの領域のどちらか一方を満たすという条件にすれば、検知漏れを減らすことができ、K1Kの領域及びK2Kの領域の両方を満たすという条件にすれば、誤検知を減らすことができる。
【0161】
図31に示す例は、凹部96aがコロ92を通過する場合の例としているが、凹部96aがセンサ93を通過する場合は、コロ92を通過する際のセンサ出力と符合が逆になる。
【0162】
また、図31に示す例では、空スプールの検知を行う時間を、ロール紙一周分以上の時間(一回転分以上の時間)としている。空スプールの検知を行う時間をこのようにロール紙の一回転分以上の時間にすることで、確実に空スプールを検知することができる。
【0163】
なお、空スプールの検知とロール紙の先端の検知は、同時に行うことができるため、本実施形態では、ロール紙の一回転分以上の時間、判断対象のスプール98を回転させ、ロール紙の先端の有無を判断するとともに、ロール紙がスプール98に備えられているかどうかを判断することが可能であり、好ましい。
【0164】
図32は、図23(B)に示す例の出力例である。ここで示す例では、ロール紙の一回転分の検知を行ったときに、2つの凹部96aが検知される例であり、例えば、図25(C)や図26(E)に示す例に対して検知を行ったときの出力例である。
【0165】
図32では、ピークp1とピークp2が出力されている。ここでは、2つの凹部96aの形状を同一(又は略同一)としているため、ピークp1とピークp2が同じ(又は略同じ)形状となっている。凹部96aが複数である場合、どこか1つの傾きがKSよりも大きければ、凹部96aを検知したと判断してもよいし、複数の傾きがKSよりも大きければ、凹部96aを検知したと判断してもよい。
【0166】
上記の例では、凹部96aの場合を例にして説明したが、上記で説明した事項は、凸部96bについてもあてはまる。凸部96bには、凸部の頂部へ上る領域と、凸部の頂部から下がる領域とがあるため、凸部96bは、凹部96aのセンサ出力と逆になる。
【0167】
スプール98に凹凸部96を複数設ける場合、円周方向に一定の間隔(等間隔)で設けられていることが好ましい。図30に示す例は、凹部96aを円周方向に一定の間隔で設けた場合の例である。このようにすることで、より特徴的な出力が得られ、空スプールの検知精度を向上させることができる。
【0168】
図33(A)は、凹部96aが1つの場合のスプール98に対して検知を行った出力例(実線の波形S1)と、使用可能な最大紙厚のロール紙に対して検知を行った出力例(破線の波形S2)とを並べて示した図である。なお、波形S1は、図31と同じものである。図33(B)は、図33(A)について、K1maxとK2maxがどの部分の傾きであるかを説明するための図である。
【0169】
凹部96aと凸部96bの形状は、適宜選択することが可能であるが、センサ93のセンサ信号において、使用可能な最大紙厚の先端を検知するときのセンサ信号の傾きよりも大きい傾きになるように定められた形状であることが好ましい。この場合、センサ信号において、凹部96aと凸部96bを検出しやすくなり、凹部96aと凸部96bを判別しやすくなり、誤検知を防ぐことができる。
【0170】
凹部96aと凸部96bの形状をこのように設定した場合、制御部110は、使用可能な最大紙厚の先端を検知するときのセンサ信号の傾きよりも大きい傾きを検出した場合、空スプールである(ロール紙がスプール98に備えられていない)と判断する。例えば、図33のピークp1におけるK1Kの領域の傾きは、図30(C)のようになり、K1maxよりも大きいため、凹部96aを検出したと判断することができる。
【0171】
上記の例について再度説明する。センサ93のセンサ信号において、使用可能な最大紙厚の先端がコロ92を通過する際のセンサ信号の傾きをK1maxとし、使用可能な最大紙厚の先端がセンサ93を通過する際のセンサ信号の傾きをK2maxとしたとき、あらかじめK1maxとK2maxを求めておく。そして、制御部110は、判断対象のスプール98を回転させて得られたセンサ信号において、K1maxと同じ符号の傾きとなる傾きのうち、絶対値がK1maxよりも大きい傾きを検出した場合、及び/又は、K2maxと同じ符号の傾きとなる傾きのうち、絶対値がK2maxよりも大きい傾きを検出した場合、ロール紙がスプール98に備えられていない(空スプールである)と判断することが好ましい。このようにすることで、精度良く空スプールを検知することができる。
【0172】
上記の例について好ましい例を再度説明する。前記K1maxの絶対値に所定の許容値を加えた値と、前記K2maxの絶対値に所定の許容値を加えた値とのうち大きい方をKSとしたとき、制御部110は、判断対象のスプール98を回転させて得られたセンサ信号において、絶対値が前記KSよりも大きくなる傾きを検出した場合、ロール紙がスプール98に備えられていない(空スプールである)と判断することが好ましい。このようにすることで、センサばらつき等も考慮され、更に精度良く空スプールを検知することができる。
【0173】
所定の許容値は、上記のマージンmに相当する。所定の許容値を所定値、許容量、所定量などと称してもよい。許容値(所定値)は、使用するセンサの仕様により適宜調整する。例えば、紙厚0.1mmに対して20パルス出力されるセンサを用いる場合は、例えば0.05mm相当のバラツキを想定すると、10パルス分、即ちK1maxの絶対値の50%分を許容値(所定値)とすることができる。
【0174】
また、図33に示す例は、センサ93のセンサ信号において、使用可能な最大紙厚の先端を検知するときのセンサ信号の出力強度よりも大きい出力強度になるように凹部96aと凸部96bの形状が定められた場合の例である。ここでは、凹凸部96が凹部96aである場合の例として説明する。
【0175】
本実施形態において、凹部96a又は凸部96bの形状は、センサ93のセンサ信号において、使用可能な最大紙厚の先端を検知するときのセンサ信号の出力強度よりも大きい出力強度になるように定められた形状であることが好ましい。この場合、制御部110は、使用可能な最大紙厚の先端を検知するときのセンサ信号の出力強度よりも大きい出力強度を検出した場合、ロール紙がスプール98に備えられていないと判断することが好ましい。このようにすることで、誤検知を防ぐことができる。
【0176】
図中、使用可能な最大紙厚の先端を検知するときのセンサ信号の出力強度をbとし、凹部96aがコロ92を通過するときのセンサ信号の出力強度をcとしている。図示するように、出力強度cは、出力強度bよりも大きくなっている。このような出力強度cを検出した場合、つまり、出力強度bよりも大きい出力強度を検出した場合、制御部110は、凹部96aを検出したと判断でき、空スプールであると判断できる。
【0177】
凹凸部96が凹部96aである場合には、図に示すように、出力強度bと出力強度cがベース(図中の0)から負の方向へ値が大きくなっている。このため、特に制限されるものではないが、出力強度bと出力強度cを比べる際には絶対値で比較するようにしてもよい。この他にも、センサ信号の出力強度の正負を逆にして、正の値で比較できるようにして両者を比較するようにしてもよい。また、凹凸部96が凸部96bである場合には、出力強度bと出力強度cの正負が逆になるため、出力強度bと出力強度cを比べる際には絶対値で比較する。
【0178】
なお、図中のaは、紙管99の表面を検知したときのばらつきの幅(出力強度のばらつき)を示している。図中のaは、図28と同様のばらつきの幅である。凹部96aと凸部96bの形状を設定する際には、ばらつきの幅、例えばセンサ感度のばらつきも考慮することが好ましい。また、凹部96aと凸部96bの形状を設定する際には、用紙の紙厚も考慮することが好ましい。例えば、出力強度bと出力強度cがどの程度の違いになるようにするかを考慮して、凹部96aと凸部96bの形状を設定することが好ましい。
【0179】
また、図示する出力例では、用紙の先端のピークと、凹部96aのピークp1とが同じ位置になるようにしているが、本発明はこれに限られない。換言すると、横軸方向において、用紙の先端のピークと、凹部96aのピークp1とが同じ位置になるようにしているが、これに限られない。ピークの位置はずれていてもよい。
【0180】
図34は、補足説明のための図であり、ロール紙先端を検知する信号波形の例である。ロール紙先端がコロ92を抜けた時の波形の変化と、ロール紙先端がセンサ93を抜けた時の波形の変化とが図示されている。センサ信号の傾きに基づいて、ロール紙先端を検知することができる。図示する例において、縦軸はセンサ信号の出力強度yであり、横軸は時間tとしている。
【0181】
空スプールであると判断した場合、以降の処理は適宜選択することができる。例えば、空スプールである場合、給紙画面を表示しないようにすることが好ましい。このように給紙画面を表示しないことにより、給紙キャンセルボタンを押下するなどのキャンセルする手間を防止できる。また、誤って給紙スタートボタンを押してしまうことを防止でき、装置側が給紙失敗と認識できるまで動作を継続してしまう等の不具合を防止でき、ユーザーがカバーを開けて装置の動作を停止させるなどの余計な手間や時間を省くことができる。
【0182】
上記のようにするには、給紙装置は、前記スプールがスプール軸受台に備えられたことを検知するスプール検知センサと、給紙画面を表示可能な表示部と、を備え、前記制御部は、前記スプール検知センサにより前記スプールが備えられたことを検知した場合、前記給紙画面を表示部に表示する前に、前記スプールを回転させて前記ロール紙が前記スプールに備えられているかどうかを判断し、前記ロール紙が前記スプールに備えられていないと判断した場合、前記給紙画面を表示部に表示しないようにする。
【0183】
また、制御部は、ロール紙がスプールに備えられていないと判断した場合、表示部170に警告を表示するようにしてもよい。このように警告を表示することで、ユーザーに知らせることができる。これにより、誤って給紙動作を行ってしまうことを防止できる。
【0184】
上述したように、凹凸部96の配置、個数等は、適宜変更することができる。好ましい例としては、例えば、凹凸部96がコロ92に接触する位置と、センサ93に接触する位置との両方に設けられていることが好ましい。これにより、ロール紙の表面上に大きなキズがあった場合でも、ロール紙がセットされているにも関わらず、空スプールであると誤検知してしまう事態を防止できる。
【0185】
すなわち以下のようにすることが好ましい。前記凹部又は前記凸部は、前記スプールに前記用紙及び前記紙管がない状態で前記スプールが当該給紙装置に備えられて回転したときに、前記先端検知センサに接触する位置と、前記コロ部に接触する位置との両方に設けられている。そして、前記制御部は、前記スプールが回転したときに、前記コロ部が前記凹部又は前記凸部を通過する際のセンサ信号の傾きと、前記先端検知センサが前記凹部又は前記凸部を通過する際のセンサ信号の傾きとの両方を検出することにより、前記ロール紙が前記スプールに備えられていないと判断することが好ましい。
【0186】
次に、上記を考慮したフローについて一例を説明する。
図35は、図18のAの部分のフローチャートの一例である。本実施形態では、ロール紙の先端検知と空スプールの検知を同時に行うことができる。
【0187】
本例では、図35に示すように、まずセンサ信号から傾きが検出されたか判定を行う(S61)。自動給紙でのロール紙回転動作時にセンサ信号において、傾きが検出されず、一定時間内にセンサ出力が一定の場合、先端検知センサの異常と判断し動作を停止する。これは、フローのS61でNO、かつ、S71でNOの場合の処理である。また、動作の停止は、S73のように、駆動系を停止し、警告画面を表示することが好ましい。なお、S30とS31は図19と同様であるため、説明を省略する。
【0188】
なお、S61の判定において、傾きが検出されたかどうかの判定は、特に制限されるものではないが、例えば、検出された傾きが所定の値よりも大きいかどうかを判定することにより行うことができる。ここでいう所定の値は、センサのばらつき等を考慮して適宜選択することができる。
【0189】
自動給紙でのロール紙回転動作時にセンサ信号において、傾きが検出された場合(S61でYESの場合)、検出された傾きとKSとの比較を行う(S62)。検出された傾きとKSとの比較は、上記で説明したように行うことができる。ここではいくつか例を挙げる。例えば、検出された傾きの絶対値がKSよりも大きくなる傾きを検出したかどうかを判定する。この他にも例えば、KSではなく、K1maxやK2maxと比較してもよい(後述の図36も参照)。検出された傾きについて、K1maxと同じ符号の傾きとなる測定値のうち、絶対値がK1maxよりも大きいかどうかを判定してもよいし、K2maxと同じ符号の傾きとなる測定値のうち、絶対値がK2maxよりも大きいかどうかを判定してもよい。
【0190】
検出された傾きがKSよりも大きい場合、空スプールであると判断し、動作を停止する(S63、S64)。動作の停止は、S64のように、駆動系を停止し、警告画面を表示することが好ましい。また、空スプールの場合(S62でYESの場合)、図18のフローに戻り、S18、S19を行う。ただし、S19とS64は同じ処理である。この場合の遷移を図18では破線で表示している。空スプールであると判断した場合、Eのフローは実行する必要はない。
【0191】
S61及びS62の判定において、傾きが検出されたどうかの判定や、検出された傾きとKSとの比較は、ロール紙の一回転分以上の時間行うことが好ましい。この場合、空スプールであるかどのかの判断を確実に行うことができる。
【0192】
検出された傾きがKS以下である場合(S62でNOの場合)、空スプールではないと判断し、傾きK1が検出されたかどうかの判定(S22)を行い、S22でYESの場合、傾きK2が検出されたかどうかの判定(S23)を行う。これらについては、例えば図19と同様にすることができるため、説明を省略する。
【0193】
図36は、図18のAの部分のフローチャートの他の例である。図35では、検出された傾きとKSとを比較したが、本例では、検出された傾きとK1max及びK2maxとの比較を行う。なお、ここでは主に、上記と異なる事項のみ説明し、上記と同様の事項については説明を省略する。
【0194】
まず上記と同様に、センサ信号から傾きが検出されたか判定を行う(S61)。自動給紙でのロール紙回転動作時にセンサ信号において、傾きが検出された場合(S61でYESの場合)、検出された傾きとK1maxとの比較を行う(S65)。S65では、検出された傾きが、K1maxと同じ符号の傾きとなるか判定するとともに、検出された傾きの絶対値がK1maxよりも大きいかどうかを判定する。これらの条件を満たす場合(S65でYESの場合)、フラグを設定する(S66)。
【0195】
S65の判定がYESであってもNOであっても、次に、検出された傾きとK2maxとの比較を行う(S67)。S67では、検出された傾きが、K2maxと同じ符号の傾きとなるか判定するとともに、検出された傾きの絶対値がK2maxよりも大きいかどうかを判定する。これらの条件を満たす場合(S67でYESの場合)、フラグの判定を行う(S68)。S68でYESの場合、すなわち、K1maxよりも大きい傾きが検出され、かつ、K2maxよりも大きい傾きが検出された場合、空スプールであると判断し、動作を停止する(S63、S64)。
【0196】
このように、図36では、K1maxよりも大きい傾きが検出され、かつ、K2maxよりも大きい傾きが検出された場合、空スプールであると判断しているため、より確実に空スプールを検知することができる。
【0197】
以上のようにして、ロール紙の先端検知動作と空スプールの検知動作を行うことができる。上記のフローの例は、傾きを用いて判断する例としたが、出力強度を用いて判断する場合、適宜変更すればよい。例えば、図35において、S61の判定を所定の出力強度を検出したかどうかを判定するように変更し、S62の判定を検出した出力強度が出力強度bよりも大きいか否かを判定するように変更する。出力強度bは、使用可能な最大紙厚時のロール紙先端の出力強度である。
【0198】
また、本発明では、コロ92とセンサ93がオフセットの位置に配置されている。すなわち、ロール紙の円周方向においてコロ92とセンサ93は、互いに異なる位置に配置されている。そのため、ロール紙の表面に部分的なキズ等があっても、ロール紙の先端を検知することができる。また、オフセットの位置に配置されていることにより、空スプールの検知動作においても、誤検知を低減することができる。
【0199】
なお、上記の説明では、検出と検知の用語を用いて説明しているが、本発明はこれらの用語の表記によって制限されるものではない。例えば検知は、空スプールの検知、用紙先端の検知、凹凸部の検知などのようにして使用しており、検出は、センサ信号において傾きを検出、出力強度を検出などのように使用している。本発明では、これらの用語を適宜変更してもよく、例えば検出と検知を入れ替えてもよいし、別の用語、例えば判定、判別、識別、認定などを用いて表現してもよい。
【0200】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1>長尺の用紙が巻かれたロール紙から前記用紙を供給する給紙装置であって、
先端検知センサとコロ部とを配置し、前記先端検知センサと前記コロ部とが前記ロール紙の表面に当接するように支持する支持部材と、
前記先端検知センサのセンサ信号を取得する制御部と、を備え、
前記ロール紙は、内側に紙管を有し、該紙管の内側にスプールが挿通されて当該給紙装置に備えられ、前記スプールの回転と連動して回転し、
前記先端検知センサと前記コロ部とは、前記スプールの軸中心に向かって配置され、
前記コロ部は、前記ロール紙の円周方向において前記先端検知センサと異なる位置に配置され、
前記先端検知センサは、前記ロール紙の先端の段差を検知可能であり、
前記スプールは、表面の一部に凹部又は凸部を有しており、
前記凹部又は前記凸部は、前記スプールに前記用紙及び前記紙管がない状態で前記スプールが当該給紙装置に備えられて回転したときに、前記先端検知センサ又は前記コロ部と接触する位置に設けられており、
前記制御部は、前記先端検知センサのセンサ信号に基づいて、前記ロール紙の先端の有無を判断するとともに、前記ロール紙が前記スプールに備えられているかどうかを判断する
ことを特徴とする給紙装置。
<2>前記制御部は、時間に対する、前記ロール紙の先端が前記コロ部を通過する際のセンサ信号の出力強度の変化量を表すグラフの傾きK1と、時間に対する、前記ロール紙の先端が前記先端検知センサを通過する際のセンサ信号の出力強度の変化量を表すグラフの傾きK2とを検出することにより、前記ロール紙の先端の有無を判断する
ことを特徴とする<1>に記載の給紙装置。
<3>前記凹部又は前記凸部の形状は、前記先端検知センサのセンサ信号において、使用可能な最大紙厚の先端を検知するときのセンサ信号の出力強度よりも大きい出力強度になるように定められた形状であり、
前記制御部は、使用可能な最大紙厚の先端を検知するときのセンサ信号の出力強度よりも大きい出力強度を検出した場合、前記ロール紙が前記スプールに備えられていないと判断する
ことを特徴とする<2>に記載の給紙装置。
<4>前記先端検知センサのセンサ信号において、使用可能な最大紙厚の先端が前記コロ部を通過する際のセンサ信号の傾きをK1maxとし、使用可能な最大紙厚の先端が前記先端検知センサを通過する際のセンサ信号の傾きをK2maxとしたとき、あらかじめK1maxとK2maxを求めておき、
前記制御部は、判断対象の前記スプールを回転させて得られたセンサ信号において、K1maxと同じ符号の傾きとなる傾きのうち、絶対値がK1maxよりも大きい傾きを検出した場合、及び/又は、K2maxと同じ符号の傾きとなる傾きのうち、絶対値がK2maxよりも大きい傾きを検出した場合、前記ロール紙が前記スプールに備えられていないと判断する
ことを特徴とする<1>から<3>のいずれかに記載の給紙装置。
<5>前記K1maxの絶対値に所定の許容値を加えた値と、前記K2maxの絶対値に所定の許容値を加えた値とのうち大きい方をKSとしたとき、
前記制御部は、判断対象の前記スプールを回転させて得られたセンサ信号において、絶対値が前記KSよりも大きくなる傾きを検出した場合、前記ロール紙が前記スプールに備えられていないと判断する
ことを特徴とする<4>に記載の給紙装置。
<6>前記凹部又は前記凸部は、前記スプールの表面に2以上設けられている
ことを特徴とする<1>から<5>のいずれかに記載の給紙装置。
<7>前記制御部は、前記ロール紙の一回転分以上の時間、判断対象の前記スプールを回転させ、前記ロール紙の先端の有無を判断するとともに、前記ロール紙が前記スプールに備えられているかどうかを判断する
ことを特徴とする<1>から<6>のいずれかに記載の給紙装置。
<8>前記スプールがスプール軸受台に備えられたことを検知するスプール検知センサと、
給紙画面を表示可能な表示部と、を備え、
前記制御部は、前記スプール検知センサにより前記スプールが備えられたことを検知した場合、前記給紙画面を表示部に表示する前に、前記スプールを回転させて前記ロール紙が前記スプールに備えられているかどうかを判断し、前記ロール紙が前記スプールに備えられていないと判断した場合、前記給紙画面を表示部に表示しない
ことを特徴とする<1>から<7>のいずれかに記載の給紙装置。
<9>前記制御部は、前記ロール紙が前記スプールに備えられていないと判断した場合、前記表示部に警告を表示する
ことを特徴とする<8>に記載の給紙装置。
<10>前記凹部又は前記凸部は、前記スプールに前記用紙及び前記紙管がない状態で前記スプールが当該給紙装置に備えられて回転したときに、前記先端検知センサに接触する位置と、前記コロ部に接触する位置との両方に設けられており、
前記制御部は、前記スプールが回転したときに、前記コロ部が前記凹部又は前記凸部を通過する際のセンサ信号の傾きと、前記先端検知センサが前記凹部又は前記凸部を通過する際のセンサ信号の傾きとの両方を検出することにより、前記ロール紙が前記スプールに備えられていないと判断する
ことを特徴とする<1>から<9>のいずれかに記載の給紙装置。
<11><1>から<10>のいずれかに記載の給紙装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【符号の説明】
【0201】
6 搬送ローラ対
90、90A 給紙装置
91、91A アーム
92 コロ
93 センサ
95 入口ガイド板
96 凹凸部
96a 凹部
96b 凸部
97 支持部材
98 スプール
99 紙管
100、110制御部
120、140 モータ駆動回路部
130 ロール紙駆動部
150 搬送駆動部
160 搬送部
170 表示部
911 回動中心
931 アクチュエータ
932 スリット
933 側板
934 軸
【先行技術文献】
【特許文献】
【0202】
【特許文献1】特開2018-150107号公報
【特許文献2】特開2021-113118号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36