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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056278
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】小麦粉
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20240416BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20240416BHJP
   A23L 7/109 20160101ALI20240416BHJP
   A21D 2/36 20060101ALI20240416BHJP
   A21D 13/44 20170101ALI20240416BHJP
【FI】
A23L7/10 H
A21D13/00
A23L7/109 B
A21D2/36
A21D13/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163055
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 浩二
(72)【発明者】
【氏名】津田 恭征
(72)【発明者】
【氏名】塚本 一民
(72)【発明者】
【氏名】針谷 康平
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 衛二郎
(72)【発明者】
【氏名】菊池 洋介
(72)【発明者】
【氏名】大谷 彩夏
(72)【発明者】
【氏名】岡 千尋
(72)【発明者】
【氏名】井川 豪志
(72)【発明者】
【氏名】豊田 一希
【テーマコード(参考)】
4B023
4B032
4B046
【Fターム(参考)】
4B023LC05
4B023LE26
4B023LG06
4B023LP20
4B032DB02
4B032DB10
4B032DG02
4B032DK02
4B032DK12
4B032DK18
4B032DK42
4B032DK43
4B032DK47
4B032DK54
4B032DP12
4B032DP13
4B032DP17
4B032DP25
4B032DP33
4B032DP36
4B032DP40
4B046LA02
4B046LB04
4B046LC01
4B046LE05
4B046LG02
4B046LG29
4B046LP03
4B046LP10
4B046LP15
4B046LP41
4B046LP51
(57)【要約】
【課題】食品原料として優れた性質を有する高アミロース小麦粉。
【解決手段】コンカナバリンA法で分析された総澱粉中のアミロース含有量が40質量%以上であり、AACC法76-31によって測定される損傷澱粉量が4.0~5.5質量%である、小麦粉。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンカナバリンA法で分析された総澱粉中のアミロース含有量が40質量%以上であり、AACC法76-31によって測定される損傷澱粉量が4.0~5.5質量%である、小麦粉。
【請求項2】
SBEIIaの活性が低い改変小麦由来の小麦粉である、請求項1記載の小麦粉。
【請求項3】
平均粒径が20~110μmである、請求項1記載の小麦粉。
【請求項4】
ベーカリー用小麦粉である、請求項1~3のいずれか1項記載の小麦粉。
【請求項5】
麺類用小麦粉である、請求項1~3のいずれか1項記載の小麦粉。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項記載の小麦粉を含有するベーカリー。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項記載の小麦粉を含有する麺類。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1項記載の小麦粉を用いるベーカリーの製造方法。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか1項記載の小麦粉を用いる麺類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された性質を有する高アミロース小麦粉に関する。
【背景技術】
【0002】
穀粉の代わりに食物繊維素材を配合した麺類が提供されている。特許文献1~4には、穀粉とは別に難消化性澱粉や難消化性デキストリンを配合した低糖質な麺類が開示されている。特許文献5には、水不溶性食物繊維(IDF)と水溶性高分子食物繊維(HSDF)の総量が5質量%以下であり、水溶性低分子食物繊維(LSDF)の量が25質量%以上である加工澱粉からなる水溶性食物繊維強化剤、これをベーカリー食品や麺に使用すること、及び該食物繊維強化剤を添加した食品の食感が良好であることが記載されている。しかし、穀粉の代わりに難消化性澱粉や難消化性デキストリンを配合した麺類は、生地の作業性や保形性が悪く、食感も低下しがちである。
【0003】
穀物に含まれる澱粉にはアミロースとアミロペクチンが含まれる。アミロースは、消化酵素による消化性が悪く、そのため、ヒトの消化酵素で消化されない難消化性成分、すなわち食物繊維として機能し得、難消化性澱粉に分類される。高アミロース澱粉としては、高アミロース型トウモロコシ由来の高アミロースコーンスターチがよく知られている。また近年、澱粉合成に関連する酵素に変異を有することでアミロース含有量を増加させた高アミロース小麦が開発されている(非特許文献1、2)。特許文献6~9には、澱粉分枝酵素SBEIIaの遺伝子の点変異を有し、SBEIIaの活性が低下しており、穀粒に含まれる澱粉のアミロース含有量が高い高アミロース小麦が開示されている。しかし一方で、アミロースは食品がパサついたり硬くなったりする原因でもある。例えば、前述の非特許文献2には、高アミロース小麦から製造したパンが、通常の小麦を使用したものと比べて膨らみが悪く品質に劣っていたこと、一方で、高アミロース小麦粉の配合によりパスタのようなテクスチャーの中華麺が得られたことが記載されている。そのため、ベーカリーや麺類では、食品の食感をソフトで口当たりのよいものにしたい場合、アミロース含有量の低い穀粉が利用されることがある。
【0004】
特許文献10には、小麦粉中の損傷澱粉の割合が多いと、その小麦粉を用いて得られる麺類の食感(モチモチ感)が低下する傾向があること、小麦粉の粒径が小さくなるほど損傷澱粉の割合は多くなる傾向があることが記載され、また、アメリカ産のウエスタンホワイト、ソフトホワイト、ホワイトクラブ又はソフトレッドウインターなどの軟質小麦を原料とし、平均粒径35μm以下且つ損傷澱粉量5質量%以下である麺類用小麦粉により、良好なモチモチ感を有するうどんを製造することができることが記載されている。特許文献11には、オーストラリア産硬質小麦から得られた小麦粉を25質量%以下含有し、中位径が45~90μmであり、損傷澱粉量が4.0~9.0質量%であり、灰分が0.35~0.50質量%であるベーカリー製品用の小麦粉、及び小麦粉のグルテン形成には吸水が重要であり、吸水率が変化する要因の一つに損傷澱粉量があることが記載されている。非特許文献3には、ヨウ素比色法によるアミロース含有量が約71~84%であるSBEIIaの活性が低い改変小麦由来の高アミロース小麦粉における損傷澱粉量が3.6~2.0%であり、野生型小麦の小麦粉における損傷澱粉量が4.7%であったことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-2000号公報
【特許文献2】特開2017-23050号公報
【特許文献3】特開平10-313804号公報
【特許文献4】国際公開公報第2018/216706号
【特許文献5】特開2009-95316号公報
【特許文献6】特表2007-504803号公報
【特許文献7】特表2008-526690号公報
【特許文献8】特表2015-504301号公報
【特許文献9】特表2019-527054号公報
【特許文献10】特開2015-159759号公報
【特許文献11】特許第6831947号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J Jpn Assoc Dietary Fiber Res, 2003, 7(1):20-25
【非特許文献2】Trends in Food Science and Technology, 2006, 17:448-456
【非特許文献3】Carbohydrate Polymers, 2020, 245:116557
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高アミロース小麦粉は有望な食物繊維素材の1つである。本発明は、食品原料として優れた性質を有するように改良された高アミロース小麦粉に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態として、以下を提供する。
〔1〕コンカナバリンA法で分析された総澱粉中のアミロース含有量が40質量%以上であり、AACC法76-31によって測定される損傷澱粉量が4.0~5.5質量%である、小麦粉。
〔2〕SBEIIaの活性が低い改変小麦由来の小麦粉である、〔1〕記載の小麦粉。
〔3〕平均粒径が20~110μmである、〔1〕又は〔2〕記載の小麦粉。
〔4〕ベーカリー用小麦粉である、〔1〕~〔3〕のいずれか1項記載の小麦粉。
〔5〕麺類用小麦粉である、〔1〕~〔3〕のいずれか1項記載の小麦粉。
〔6〕〔1〕~〔3〕のいずれか1項記載の小麦粉を含有するベーカリー。
〔7〕〔1〕~〔3〕のいずれか1項記載の小麦粉を含有する麺類。
〔8〕〔1〕~〔3〕のいずれか1項記載の小麦粉を用いるベーカリーの製造方法。
〔9〕〔1〕~〔3〕のいずれか1項記載の小麦粉を用いる麺類の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明で提供される高アミロース小麦粉を用いることで、従来の高アミロース小麦粉と比べて、より良好な食感を有する食品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、高アミロース小麦粉とは、アミロース含有量が、好ましくは40質量%以上、より好ましくは43質量%以上、さらに好ましくは48質量%以上の小麦粉をいう。小麦粉のアミロース含有量とは、該小麦粉に含まれる総澱粉中のアミロース含有量をいう。本明細書における小麦粉のアミロース含有量は、コンカナバリンA(ConA)法により分析された値として定義され、例えば、該小麦粉をMegazyme社のアミロース/アミロペクチン分析キット(AMYLOSE/AMYLOPECTIN ASSAY KIT)で分析することで測定することができる。従来一般的なアミロース含有量の分析方法としては、(1) アミロースのヨウ素に対する結合能の高さを利用した方法(ヨウ素親和力測定法;例えば電流滴定法、比色定量法、AACC61-03法など)、(2) アミロペクチンとConAが特異的に結合することを利用した方法(ConA法)が知られている。しかし(1)を利用した方法ではアミロース量がより高く算出される傾向がある。例えば、非特許文献1や非特許文献2に記載されるSGP-1遺伝子の機能欠失型変異(null変異)を有する高アミロース小麦粉のアミロース含有量は、ヨウ素親和力測定法では37質量%程度であるが、ConA法では31質量%程度である。なお、従来一般的な小麦粉のアミロース含有量は、ヨウ素親和力測定法では32質量%未満、ConA法では28質量%未満である。
【0011】
高アミロース小麦粉の原料小麦の例としては、澱粉分枝酵素SBEIIaの活性が低い改変小麦が挙げられる。そのような改変小麦の例としては、特許文献6~9に記載される、SBEIIaの遺伝子の変異を有し、SBEIIaの活性が低下している高アミロース小麦が挙げられる。より具体的な例としては、穀粒中のSBEIIaタンパク質の量又は活性が野生型小麦穀粒中の量又は活性の2%よりも低い高アミロース小麦、1つ以上、例えば1つ又は2つのSBEIIa遺伝子のnull変異を有する高アミロース小麦、などが挙げられる。
【0012】
穀粉の性質は、その原料小麦の種類や製粉工程などに依存し得る。穀粉の性質を表す指標の1つが損傷澱粉であり、穀粉に含まれる澱粉成分のアミラーゼ感受性を反映する。高アミロース小麦粉は、アミロース含有量が高い澱粉構造の影響によりアミラーゼの感受性が低いため、通常の製粉処理を行うと、一般的な小麦粉と比較すると損傷澱粉の低い小麦粉が得られる(非特許文献3参照)。
【0013】
前述の特許文献10~11に記載されているように、穀粉中の損傷澱粉は食品の食感に影響を及ぼし得ることが知られていた。しかし従来、食品の原料穀粉の損傷澱粉量を高くすることは必ずしも該食品の食感の向上に繋がっていない。また、原料穀粒の種類が異なれば同様の過程で製粉されても損傷澱粉量は異なり得るため、結果、食品原料として好適な損傷澱粉量は穀粒の種類ごとに異なる可能性がある。
【0014】
本発明は、食品原料として優れた性質を有する高アミロース小麦粉を提供する。本発明の高アミロース小麦粉は、従来の高アミロース小麦粉と比べて損傷澱粉量が増加していることを特徴とする。本発明の高アミロース小麦粉は、好ましくは、損傷澱粉量が4.0~5.5質量%、より好ましくは4.0~5.0質量%である。本発明の高アミロース小麦粉における損傷澱粉量の増加は、該高アミロース小麦粉から製造された食品の食感の向上をもたらす。
【0015】
本明細書における小麦粉の損傷澱粉量は、AACC Method 76-31に従って測定された値である、すなわち、試料中に含まれている損傷澱粉をカビ由来α-アミラーゼでマルトサッカライドと限界デキストリンに分解し、次いでアミログルコシダーゼでグルコースにまで分解し、生成されたグルコースを定量することにより測定された値であり、アミラーゼ感受性の澱粉量を表す。AACC Method 76-31による損傷澱粉量の測定には、市販のキット(例えばMegaZyme製,Starch Damage Assay Kit)を用いることができる。
【0016】
本発明の高アミロース小麦粉は、好ましくは平均粒径が20~110μm、より好ましくは60~100μmである。本明細書における平均粒径とは、レーザー回折・散乱法により算出された粒子の体積平均径(MV)をいい、市販のレーザー回折・散乱式粒度分布計測装置(例えば、マイクロトラックMT3000II;マイクロトラックベル株式会社)を用いて測定することができる。
【0017】
本発明で使用される高アミロース小麦粉は、該高アミロース小麦の穀粒の胚乳画分のみを実質的に含む小麦粉であってもよく、又は、該高アミロース小麦の穀粒の胚乳画分に加えてさらに胚芽やふすま画分を含む小麦粉(例えば全粒粉)であってもよい。
【0018】
本発明の高アミロース小麦粉は、前述した高アミロース小麦の穀粒を通常の方法に従って、ただし小麦粉の損傷澱粉量が増加するように条件を調整して、製粉することによって製造することができる。小麦粉の損傷澱粉量を調整する方法は当該分野で公知である。通常、製粉過程で穀粉に機械力や熱などが加わることで澱粉が物理的に破壊されると、穀粉の損傷澱粉量は高くなる。例えば、原料小麦の粉砕工程(粗粉砕工程)又はその粉砕物の粉砕工程(リダクション工程)において、粉砕に用いる滑面ロール(smooth roller)のロール間隔を狭めて粉砕すると、澱粉が損傷を受けやすくなり、損傷澱粉量が増加する。また、適宜粉砕工程の条件や回数を調整したり、粉砕物を分級したりすることによって、所望の粒径の小麦粉を得ることができる。
【0019】
本発明の高アミロース小麦粉は、食品原料として好適である。本発明の高アミロース小麦粉を用いて製造される食品は、小麦粉を使用して製造することができる食品であればよく、特に限定されない。例えば、本発明の高アミロース小麦粉は、パン、ケーキ、クッキー等を含むベーカリー、天ぷら、フライ、からあげ等の揚げ物の衣、麺類、ルーやソースなどの原料粉として、ハンバーグや練り物用のつなぎ材として、ベーカリー生地や麺類生地用の打ち粉として、又は料理のとろみ付け材として、使用することができる。
【0020】
一実施形態において、本発明の高アミロース小麦粉はベーカリー用小麦粉である。本発明で提供されるベーカリーは、原料粉に高アミロース小麦粉を配合する以外は、通常の手順に従って製造することができる。製造されるベーカリーの種類としては、パン、ケーキ、クッキー、パンケーキ、クレープ、ワッフル、マフィン、ドーナツ、中華まん、お好み焼き、たこ焼き、大判焼、たい焼きなどが挙げられ、特に限定されない。製造方法の一例においては、本発明の高アミロース小麦粉を含有する原料粉と、水分、油脂などとを混合して生地を調製する。原料粉には、本発明の高アミロース小麦粉以外に、ベーカリー原料として使用可能なその他の成分、例えば他の穀粉、澱粉、卵粉、紛乳、食塩、糖類、油脂、蛋白質、膨張剤などが含まれていてもよい。水分としては、水、乳、液卵などを使用することができる。油脂としてはバター、サラダ油、ショートニングなどが挙げられる。原料の配合は、製造するベーカリーの種類に合わせて適宜調整することができる。必要に応じて、調製した生地を発酵させてもよい。得られた生地を、必要に応じて分割又は成形し、加熱(例えば、焼成、蒸し、揚げ等)してベーカリーを製造することができる。本発明の高アミロース小麦粉を用いて製造されたベーカリーは、歯切れがよく、食感が向上している。
【0021】
好ましくは、本発明で提供されるベーカリーは、発酵ベーカリーである。発酵ベーカリーとしては、パン、中華まん、及びワッフル、イーストドーナツ等の発酵菓子類が挙げられる。好ましくは、本発明の発酵ベーカリーは、調製された生地を、一次発酵、成形、及び二次発酵させ、次いで焼成することで製造される。本発明による発酵ベーカリーの製造は、ストレート法、中種法、速成法、液種法、冷凍生地法等の各種常法に従って行うことができる。必要に応じて、調製した生地を、そのまま、又は発酵もしくは成形した状態で冷蔵又は冷凍保存し、必要に応じて解凍した後、該生地を加熱して本発明のベーカリーを製造してもよい。
【0022】
別の一実施形態において、本発明の高アミロース小麦粉は麺類用小麦粉である。本発明で提供される麺類は、原料粉として高アミロース小麦粉を用いる以外は、通常の手順に従って製造することができる。製造方法の一例においては、本発明の高アミロース小麦粉を含有する原料粉と練水とを混捏して生地を調製する。原料粉には、本発明の高アミロース小麦粉以外に、麺類の原料として使用可能なその他の成分、例えば他の穀粉、澱粉、蛋白質などが含まれていてもよい。練水としては、水、塩水、かん水、ガス含有水(炭酸水等)などを使用することができる。原料粉や練水の配合は、製造する麺類の種類に合わせて適宜調整することができる。次いで、調製した生地を成形して生麺を製造する。麺生地の成形の方法は、圧延、複合や切出し等の工程を含むロール製麺、押出し製麺、それらの組み合わせなど、特に限定されない。得られた生麺に対して、さらに常法に従って、乾燥、調理、凍結、冷蔵、それらの組み合わせなどの処理を施してもよい。製造される麺類の種類としては、うどん、そば、そうめん、ひやむぎ、中華麺、パスタ、麺皮などが挙げられ、特に限定されない。本発明の高アミロース小麦粉を用いて製造された麺類は、ソフトでかつ歯切れがよいため歯ざわりに優れ、食感が向上している。
【実施例0023】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0024】
1)高アミロース小麦粉の調製
高アミロース小麦(SBEIIa変異遺伝子を有するSBEIIaの発現量の低い小麦)を調質後、製粉した。製粉の際にブレーキング工程、グレーディング工程、ピュリフィケーション工程、及びリダクション工程を調整することにより、表1に記載の性質を有する高アミロース小麦粉(HAW No.1~7)を製造した。小麦粉のアミロース含有量はアミロース/アミロペクチン分析キット(Megazyme社)により測定した。損傷澱粉量はStarch Damage Assay Kit(MegaZyme製)により測定した。平均粒径は、マイクロトラックMT3000II(マイクロトラックベル株式会社)により体積平均径(MV)を測定した。なお、上記のアミロース/アミロペクチン分析キット(ConA法)によるアミロース含有量の測定値は、ヨウ素親和力測定法での測定値よりも高くなる。例えば、HAW No.4のアミロース含有量は、ヨウ素親和力測定法(比色定量法)で測定した場合、約68%であった。
【0025】
【表1】
【0026】
試験例1 うどん
中力粉50質量部と表1記載のHAW50質量部からなる原料粉100質量部に対し、食塩3質量部を添加した水35~42質量部を加え、ミキシングして麺生地を調製した。該生地を製麺ロールで圧延して麺帯を作製し、切り刃(#10角)で切り出してうどんの生麺線を製造した(麺厚2.8mm)。得られた麺線を歩留(対粉)約300%となるように茹で、水洗冷却して茹でうどんを製造した。得られた茹でうどんの食感を訓練されたパネラー10人により下記評価基準に従って評価し、10名の評価の平均点を求めた。評価結果を表2に示す。
<評価基準>
5点:対照に比べ、非常に歯ざわりのよい食感である
4点:対照に比べ、歯ざわりのよい食感である
3点:対照に比べ、やや歯ざわりのよい食感である
2点:対照と同等の食感である
1点:対照に比べ、歯ざわりに劣る
【0027】
【表2】
【0028】
試験例2 パンケーキ
薄力粉80質量部と表1記載のHAW20質量部からなる原料粉(HAW20)、及び表1記載のHAWからなる原料粉(HAW100)を調製した。ボウルに該原料粉100質量部、ベーキングパウダー5質量部を投入して混合し、次いで全卵液25質量部、牛乳75質量部、適量の水を加え、ホイッパーを用いて120回/分の回転数で撹拌して品温25℃でのB型粘度計による粘度が8~12Pa・sの範囲にある生地を調製した。水の添加量は、生地の粘度が前記範囲になるように調整した。得られた生地を10分間寝かした後、加熱温度180℃に設定したグリドル上に該生地を55g流し込み、片面を3分間焼成した後、該生地を上下反転させて反対側の面を3分間焼成し、パンケーキを製造した。得られたパンケーキの食感を訓練されたパネラー10人により下記評価基準に従って評価し、10名の評価の平均点を求めた。評価結果を表3に示す。
<評価基準>
5点:対照に比べ、歯切れが非常に良好
4点:対照に比べ、歯切れが良好
3点:対照に比べ、やや歯切れがある
2点:対照と同等の歯切れである
1点:対照に比べ、歯切れが悪い
【0029】
【表3】
【0030】
試験例3 パン
強力粉70質量部と表1記載のHAW30質量部からなる原料粉を調製した。該原料粉を用いてストレート法により食パンを製造した。パン生地の配合、及び製造工程は下記のとおりとした。
〔生地配合:質量部〕
原料粉(強力粉70、HAW30) 100
イースト 3
食塩 2
上白糖 6
脱脂粉乳 2
油脂(ショートニング) 5
水 78~90
〔工程〕
ミキシング 低速7分→中高速10分
捏上温度 27.5℃
フロアタイム(27℃・75%) 60分
分割重量 450g
ベンチタイム 20分
ホイロ(38℃・85%) 60分
焼成(200℃/230℃) 25分
【0031】
製造したパンを室温で24時間保管した後、その食感を訓練されたパネラー10人により下記評価基準に従って評価し、10名の評価の平均点を求めた。評価結果を表4に示す。
<評価基準>
5点:対照に比べ、歯切れが非常に良好
4点:対照に比べ、歯切れが良好
3点:対照に比べ、やや歯切れがある
2点:対照と同等の歯切れである
1点:対照に比べ、歯切れが悪い
【0032】
【表4】