(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056489
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】学習装置、腐食予測装置、学習方法、腐食予測方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20230101AFI20240416BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20240416BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163392
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100176728
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 陽
(72)【発明者】
【氏名】古川 愛子
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L010AA04
5L049AA04
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】地下設備が含まれる流域を考慮して地下設備の腐食率を予測する技術を改善する。
【解決手段】学習装置10は、地下設備の腐食率と、地下設備の建設年数と種類とを含む地下設備の特徴とを示す腐食率情報と、地下設備の少なくとも一部が含まれる流域の水質を含む、流域の特徴を示す流域情報とを取得するモデル生成用情報取得部114と、地下設備の特徴と流域の特徴とを説明変数とし、腐食率を目的変数とする機械学習を行うことにより学習モデルを生成するモデル生成部115とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下設備の腐食率と、前記地下設備の建設年数と種類とを含む前記地下設備の特徴とを示す腐食率情報と、前記地下設備の少なくとも一部が含まれる流域の水質を含む、前記流域の特徴を示す流域情報とを取得するモデル生成用情報取得部と、
前記地下設備の特徴と前記流域の特徴とを説明変数とし、前記腐食率を目的変数とする機械学習を行うことにより学習モデルを生成するモデル生成部と、
を備える学習装置。
【請求項2】
前記地下設備の位置と、前記地下設備の腐食の有無を点検した結果とを示す点検情報を取得する点検情報取得部と、
前記地下設備の位置に基づいて前記地下設備が含まれる流域毎に前記点検情報を分割する分割部と、
分割した前記点検情報に基づいて、前記腐食率情報を生成する腐食率情報生成部と、
をさらに備える請求項1に記載の学習装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の前記学習モデルを取得するモデル取得部と、
対象の地下設備の特徴と前記対象の地下設備が含まれる流域の特徴とを示す推定用情報を取得する推定用情報取得部と、
取得した前記推定用情報を、取得した前記学習モデルに適用し、前記対象の地下設備の腐食率を推定する推定部と、
を備える腐食予測装置。
【請求項4】
学習装置が実行する学習方法であって、
地下設備の腐食率と、前記地下設備の建設年数と種類とを含む前記地下設備の特徴とを示す腐食率情報と、前記地下設備の少なくとも一部が含まれる流域の水質を含む、前記流域の特徴を示す流域情報とを取得するモデル生成用情報取得ステップと、
前記地下設備の特徴と前記流域の特徴とを説明変数とし、前記腐食率を目的変数とする機械学習を行うことにより学習モデルを生成するモデル生成ステップと、
を含む学習方法。
【請求項5】
前記地下設備の位置と、前記地下設備の腐食の有無を点検した結果とを示す点検情報を取得する点検情報取得ステップと、
前記地下設備の位置に基づいて前記設備が含まれる流域毎に前記点検情報を分割する分割ステップと、
分割した前記点検情報に基づいて、前記腐食率情報を生成する腐食率情報生成ステップと、
をさらに含む請求項4に記載の学習方法。
【請求項6】
腐食予測装置が実行する腐食予測方法であって、
請求項4又は5に記載の前記学習モデルを取得するモデル取得ステップと、
対象の地下設備の特徴と前記対象の地下設備が含まれる流域の特徴とを示す推定用情報を取得する推定用情報取得ステップと、
取得した前記推定用情報を、取得した前記学習モデルに適用し、前記対象の地下設備の腐食率を推定する推定ステップと、
を含む腐食予測方法。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1又は2に記載の学習装置として機能させるためのプログラム。
【請求項8】
コンピュータを、請求項3に記載の腐食予測装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習装置、腐食予測装置、学習方法、腐食予測方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管路等の地下設備の金属の腐食予測に関する技術が開示されている。地下設備の腐食予測は、主に土壌の腐食性から検討されている。例えばANSI(American National Standards Institute:米国規格協会)の評価指標では比抵抗、pH値等から土壌の腐食性を予測している(例えば、非特許文献1参照)。地下設備が淡水に接触している場合、淡水腐食の予測式により、塩化物イオン濃度、硫酸イオン濃度、及び炭酸水素イオン濃度の三種類のイオンの比であるLarson Skold Indexを用いることで腐食速度が推定可能である(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】角田知己、外1名、「土壌の腐食性を評価するための視点」、防食技術、Vol.3、pp.168-177、1987年
【非特許文献2】小澤正義、外1名、「海水及び淡水中の炭素鋼の均一腐食進展予測モデルの構築」、材料と環境、Vol.66、No.3、pp.99-106、2017年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、土壌の成分、水質等で金属の腐食性が評価されるが、土壌又は水質自体の調査が必要であった。個別の点検データが公的データとしてある場合でも、流域毎に地下設備の腐食率を判定可能なデータベースが整備されていないため、特定の河川又は水系等の流域における管路の腐食性を推定するのは難しいという問題があった。このように、地下設備が含まれる流域を考慮して地下設備の腐食率を予測する技術を改善することが望まれていた。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、地下設備が含まれる流域を考慮して地下設備の腐食率を予測する技術を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明に係る学習装置は、地下設備の腐食率と、前記地下設備の建設年数と種類とを含む前記地下設備の特徴とを示す腐食率情報と、前記地下設備の少なくとも一部が含まれる流域の水質を含む、前記流域の特徴を示す流域情報とを取得するモデル生成用情報取得部と、前記地下設備の特徴と前記流域の特徴とを説明変数とし、前記腐食率を目的変数とする機械学習を行うことにより学習モデルを生成するモデル生成部と、を備える。
【0007】
また、本発明に係る腐食予測装置は、本発明に係る前記学習モデルを取得するモデル取得部と、対象の地下設備の特徴と前記対象の地下設備が含まれる流域の特徴とを示す推定用情報を取得する推定用情報取得部と、取得した前記推定用情報を、取得した前記学習モデルに適用し、前記対象の地下設備の腐食率を推定する推定部と、を備える。
【0008】
また、本発明に係る学習方法は、学習装置が実行する学習方法であって、地下設備の腐食率と、前記地下設備の建設年数と種類とを含む前記地下設備の特徴とを示す腐食率情報と、前記地下設備の少なくとも一部が含まれる流域の水質を含む、前記流域の特徴を示す流域情報とを取得するモデル生成用情報取得ステップと、前記地下設備の特徴と前記流域の特徴とを説明変数とし、前記腐食率を目的変数とする機械学習を行うことにより学習モデルを生成するモデル生成ステップと、を含む。
【0009】
また、本発明に係る腐食予測方法は、腐食予測装置が実行する腐食予測方法であって、本発明に係る前記学習モデルを取得するモデル取得ステップと、対象の地下設備の特徴と前記対象の地下設備が含まれる流域の特徴とを示す推定用情報を取得する推定用情報取得ステップと、取得した前記推定用情報を、取得した前記学習モデルに適用し、前記対象の地下設備の腐食率を推定する推定ステップと、を含む。
【0010】
また、本発明に係るプログラムは、コンピュータを、本発明に係る学習装置として機能させる。
【0011】
また、本発明に係るプログラムは、コンピュータを、本発明に係る腐食予測装置として機能させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、地下設備が含まれる流域を考慮して地下設備の腐食率を予測する技術を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る腐食予測システムの概略構成を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る点検情報の例を示す図である。
【
図3A】本実施形態に係る、分割された点検情報の例を示す図である。
【
図3B】本実施形態に係る、分割された点検情報の例を示す図である。
【
図4A】本実施形態に係る、流域毎腐食率データベースの例を示す図である。
【
図4B】本実施形態に係る、流域毎腐食率データベースの例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る、データベース検索用情報の例を示す図である。
【
図6A】本実施形態に係る、流域毎腐食率・特徴データベースの例を示す図である。
【
図6B】本実施形態に係る、流域毎腐食率・特徴データベースの例を示す図である。
【
図7A】本実施形態に係る腐食予測システムの動作を示す図である。
【
図7B】本実施形態に係る腐食予測システムの動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について適宜図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。
【0015】
<腐食予測システム1の概略構成>
図1は、本実施形態に係る腐食予測システム1の構成を示す図である。
図1に示すように、腐食予測システム1は、学習装置10と、腐食予測装置20とを備える。学習装置10と腐食予測装置20とは、例えばインターネット及び移動体通信網等を含むネットワーク30と有線又は無線により通信可能に接続される。各装置間で情報を送受信するための通信方法は、特に限定されない。学習装置10と腐食予測装置20とは、一体化されていてもよい。
【0016】
学習装置10及び腐食予測装置20は、クラウドコンピューティングシステム又はその他のコンピューティングシステムに属するサーバ等のコンピュータである。
【0017】
ネットワーク30は、インターネット、少なくとも1つWAN(Wide Area Network)、少なくとも1つのMAN(Metropolitan Area Network)、又はこれらの任意の組合せを含む。ネットワーク30は、少なくとも1つの無線ネットワーク、少なくとも1つの光ネットワーク、又はこれらの任意の組合せを含んでもよい。無線ネットワークは、例えば、アドホックネットワーク、セルラーネットワーク、無線LAN(local area network)、衛星通信ネットワーク、又は地上マイクロ波ネットワークである。
【0018】
まず、本実施形態の概要について説明し、詳細については後述する。学習装置10は、地下設備の腐食率と、地下設備の建設年数と種類とを含む地下設備の特徴とを示す腐食率情報と、地下設備の少なくとも一部が含まれる流域の水質を含む、流域の特徴を示す流域情報とを取得する。学習装置10は、地下設備の特徴と流域の特徴とを説明変数とし、腐食率を目的変数とする機械学習を行うことにより学習モデルを生成する。学習装置10は、生成した学習モデルを腐食予測装置20に出力する。
【0019】
地下設備とは、地下に埋設された管路、マンホール、とう道等を含む。管路は例えば通信ケーブルを保護する通信用管路であって、地下に埋設されるものを含む。管路は水道用管路、ガス用管路、電力用管路等であってもよい。地下設備の種類とは、一定の地下設備の材質を含む。例えば地下設備が管路である場合、地下設備の種類として鋼管、ビニル管等が含まれてよい。これに限られず、地下設備の種類は、管路、マンホール、とう道等の地下設備自体の種類を含んでよい。
【0020】
腐食予測装置20は、学習装置10が生成した学習モデルを取得する。腐食予測装置20は、対象の地下設備の特徴と対象の地下設備が含まれる流域の特徴とを示す推定用情報を取得する。腐食予測装置20は、取得した推定用情報を、取得した学習モデルに適用し、対象の地下設備の腐食率を推定する。
【0021】
本実施形態によれば、過去の地下設備の点検結果を用いて、当該地下設備の腐食率を推定する学習モデルを生成できる。地下設備の特徴だけでなく、地下設備が含まれる流域の特徴を学習モデルに自動的に適用することで、より精度よく地下設備の腐食率を推定できる。よって、地下設備が含まれる流域を考慮して地下設備の腐食率を予測する技術を改善することができる。
【0022】
<学習装置10の構成>
図1に示すように、学習装置10は、制御部11と、記憶部12と、通信部13と、入力部14と、出力部15とを備える。
【0023】
記憶部12は、1つ以上のメモリを含み、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、光メモリ等を含んでもよい。記憶部12に含まれる各メモリは、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部12は、学習装置10の動作に用いられる任意の情報を記憶する。記憶部12は、必ずしも学習装置10が内部に備える必要はなく、学習装置10の外部に備える構成としてもよい。
【0024】
通信部13は、ネットワーク30に接続する1つ以上の通信用インターフェースを含む。当該通信用インターフェースは、例えば移動通信規格、有線LAN規格、又は無線LAN規格に対応するが、これらに限られず、任意の通信規格に対応してもよい。通信部13は、学習装置10の動作に用いられる情報を受信し、また学習装置10の動作によって得られる情報を送信する。
【0025】
入力部14には、少なくとも1つの入力用インターフェースが含まれる。入力用インターフェースは、例えば、物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、ディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、又はマイクである。入力部14は、学習装置10の動作に用いられる情報を入力する操作を受け付ける。入力部14は、学習装置10に備えられる代わりに、外部の入力機器として学習装置10に接続されてもよい。接続方式としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の任意の方式を用いることができる。
【0026】
出力部15には、少なくとも1つの出力用インターフェースが含まれる。出力用インターフェースは、例えば、ディスプレイ又はスピーカである。ディスプレイは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイである。出力部15は、学習装置10の動作によって得られる情報を出力する。出力部15は、学習装置10に備えられる代わりに、外部の出力機器として学習装置10に接続されてもよい。接続方式としては、例えば、USB、HDMI(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の任意の方式を用いることができる。
【0027】
制御部11は、制御演算回路(コントローラ)により実現される。該制御演算回路は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の専用のハードウェアによって構成されてもよいし、プロセッサによって構成されてもよいし、双方を含んで構成されてもよい。制御部11は、学習装置10の各部を制御しながら、学習装置10の動作に関わる処理を実行する。制御部11は、外部装置との情報の送受信を、通信部13及びネットワーク30を介して行うことができる。
【0028】
制御部11は、点検情報取得部111と、分割部112と、腐食率情報生成部113と、モデル生成用情報取得部114と、モデル生成部115とを備える。
【0029】
点検情報取得部111は、地下設備の位置と、地下設備の腐食の有無を点検した結果とを示す点検情報を取得する。点検情報取得部111は、点検情報を記憶部12から読み出すことで取得してもよいし、点検作業者が使用する端末装置と通信し、当該端末装置から点検結果を示す情報を点検情報として受信することで取得してもよい。これに限られず、点検情報取得部111は、ユーザによって入力された点検情報を、入力部14を介して受け付けることで取得してもよい。点検情報取得部111は、取得した点検情報を分割部112に出力する。
【0030】
図2は点検情報の一例を示す図である。
図2では、点検情報をテーブル形式で表すが、点検情報の形式はこれに限られない。
図2に示すように、点検情報は、地下設備毎にレコード番号、当該地下設備の種類、建設年数、位置、点検の結果としての当該地下設備の腐食の有無を含む。
【0031】
地下設備の位置は、緯度及び経度で表される。これに限られず、地下設備の位置には地表からの地下設備の深度等が含まれてもよい。
【0032】
点検情報には、例えば地下設備の大きさ又は長さ、地下設備の修理履歴等の情報がさらに含まれてもよい。例えば地下設備が管路である場合、当該管路の亘長、継ぎ手部の材質、管径等が点検情報として含まれてもよい。例えば地下設備がマンホールである場合、当該マンホールに接続された管路の本数等が点検情報に含まれてもよい。
【0033】
本実施形態では、点検情報が含む腐食の有無は二値で表されるが、これに限られず、腐食の程度を段階的に示す離散値又は連続値であってもよい。
【0034】
図2を参照すると、タイトル行の下の管路についての点検情報を示す行では、レコード番号1の地下設備の種類は「I」であり、建設年数は「5年」であり、位置は緯度が「35.680986」、経度が「139.686182」である。点検の結果、腐食の有無は「有り」であったことがわかる。次の行のレコード番号2の地下設備の種類は「S」であり、建設年数は「12年」であり、位置は緯度が「35.611572」、経度が「139.626586」である。腐食の有無は「無し」であったことがわかる。
【0035】
点検情報取得部111は、点検情報のうち、値が入っていない項目については任意の値を取得して入力できてよい。例えば点検情報取得部111は、ある地下設備から所定の距離以内にある他の地下設備を特定し、当該他の地下設備の点検情報が含む値と同様の値を、当該ある地下設備の点検情報として入力できてもよい。
【0036】
分割部112は、点検情報取得部111から点検情報を取得する。分割部112は、点検情報が示す地下設備の位置に基づいて地下設備が含まれる流域を判定し、当該流域毎に点検情報を分割する。流域の判定には任意の手法が採用されてよい。例えば分割部112は、流域を管理する省庁等の外部装置と通信して当該地下設備の位置を示す情報を送信し、当該外部装置が備えるデータベースにおいて検索された、当該位置が含まれる流域を受信することで、地下設備の属する流域を判定してよい。流域は河川又は水系等であってよいが、以下で説明する、データベース検索用情報又は推定用情報が含む流域と一致していることが望ましい。
【0037】
当該外部装置が備えるデータベースは、例えば以下のようなものであってよい。
文献1:国土交通省“国土数値情報ダウンロードサービス”、[online]、[令和4年9月15日検索]、インターネット〈URL:https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/gml/datalist/KsjTmplt-W07.html〉
【0038】
図3Aと
図3Bとは、
図2の点検情報を分割部112が分割した結果の例を示す。
図3A及び
図3Bを参照すると、点検情報が流域Aと流域Bとに分割されていることがわかる。分割部112は、分割した点検情報を腐食率情報生成部113へ出力する。
【0039】
腐食率情報生成部113は、分割部112から取得した分割された点検情報を地下設備の経過年数と種類とでクロス集計を行い、腐食率を算出して腐食率情報を生成する。腐食率の算出には任意の手法が採用されてよい。例えば腐食率情報生成部113は、点検情報が示す腐食があると判断された地下設備の数を、当該地下設備が含まれる流域と、地下設備の建設年数と、種類とが同一の管路の全数で除した値を腐食率として算出してよい。例えば点検情報が、流域Aに含まれる地下設備としての管路であって、建設年数が0から20年、種類がSである当該管路の全数が50本であり、そのうち腐食があると判断された管路の数が10本であるとする。この場合、腐食率情報生成部113は腐食率を20パーセントと算出する。これに限られず、点検が全ての地下設備ではなくサンプルとして選択された地下設備について行われていた場合に、腐食率情報生成部113は、腐食があると判断されたサンプル数を全体のサンプル数で除して算出された腐食率を腐食率情報に反映させてもよい。
【0040】
腐食率情報生成部113は、生成した腐食率情報をモデル生成用情報取得部114へ出力する。
【0041】
モデル生成用情報取得部114は、地下設備の腐食率と、地下設備の建設年数と種類とを含む、地下設備の特徴とを示す腐食率情報と、地下設備が含まれる流域の水質を含む、流域の特徴を示す流域情報とを取得する。モデル生成用情報取得部114は、腐食率情報に流域情報を付加し、モデル生成部115に出力する。流域情報を付加するタイミングはこれに限られず、例えば分割部112が流域を判定するときに流域の特徴を併せて付加してもよい。
【0042】
モデル生成用情報取得部114は、流域の特徴を示す流域情報を任意の手法により取得できる。例えばモデル生成用情報取得部114は、流域を点検又は管理する省庁等の外部装置と通信し、当該外部装置が備えるデータベースにおいて検索された流域の特徴を受信することで流域情報を取得できてよい。当該データベースは、例えば上述の文献1に記載のものと同様のものであってもよい。
【0043】
流域情報は、流域の特徴として、流域の水質、気候等を含む。水質は具体的には、pH値、塩化物イオン量、硫酸イオン量等であってよい。気候は具体的には、流域内の年間平均雨量、年間総雨量、平均気温、平均湿度、平均日照時間、平均日射量、平均風速、飛来塩分量等を含んでよい。流域情報は例えば、流域が少なくとも一部含まれる土地の土壌の種類を含んでよい。土壌の種類は、流域が複数の土地に含まれる場合、最も流域と接する面積の大きい土地の土壌の種類であってもよい。土壌の種類は具体的には砂土、壌土、埴土等を含んでよい。これに限られず、土壌中の成分、地中温度、含水量、pH値等が流域情報に含まれてもよい。
【0044】
モデル生成用情報取得部114は、取得した情報の少なくとも1つに基づいてデータベースを作成し、記憶部12に格納してよい。
図4Aと
図4Bとは、腐食率情報に基づいてモデル生成用情報取得部114が作成する、流域毎腐食率データベースの例である。当該データベースにおいては建設年数が0年以上20年未満、20年以上40年未満、40年以上60年未満と分けて登録されているが、建設年数の区分はこれに限られない。
【0045】
例えば制御部11は、ユーザから対象の地下設備に関する情報を取得し、記憶部12に格納された流域毎腐食率データベースを検索し、当該対象の地下設備の腐食率を抽出してよい。
図5は、流域毎腐食率データベースを用いて腐食率を検索するための、対象の地下設備に関する情報を示すデータベース検索用情報の一例である。データベース検索用情報の取得には任意の手法が採用されてよい。例えば制御部11はユーザの端末装置からデータベース検索用情報を受信することで取得してもよい。
【0046】
図5では、データベース検索用情報をテーブル形式で表すが、データベース検索用情報の形式はこれに限られない。
図5に示すように、データベース検索用情報は一番左の列から順に、レコード番号、地下設備の種類、建設年数、及び当該地下設備の位置を示す。本実施形態では、対象の地下設備の位置は緯度と経度とにより表される。
【0047】
制御部11は、データベース検索用情報を取得すると、データベース検索用情報が示す位置に基づき、対象の地下設備が含まれる流域を判定する。制御部11は、上述の分割部112と同様の手法により流域を判定してよい。具体的には、制御部11は、流域を管理する省庁等の外部装置と通信して当該対象の地下設備の位置を示す情報を送信し、当該外部装置から返された、当該位置が含まれる流域を示す情報を受信することで、対象の地下設備の属する流域を判定してよい。制御部11は、このようにして判定した流域と、地下設備の建設年数及び種類とによって流域毎腐食率データベースを検索し、腐食率を抽出する。判定した流域が流域毎腐食率データベースに登録されていない場合、制御部11は、データベース検索用情報が含む条件と同様の条件の地下設備のうち、点検済みの地下設備の平均腐食率を算出してユーザに対し出力できてもよい。
【0048】
制御部11は、流域毎腐食率データベースを検索して抽出した腐食率を、出力部15を介してユーザに対し通知する。当該通知には任意の手法が採用されてよい。例えば制御部11は、出力部15を介して、地図上に抽出した腐食率を表示してもよい。
【0049】
例えば制御部11が、
図5のデータベース検索用情報のレコード番号1の地下設備について腐食率を抽出するとする。レコード番号1の地下設備の位置は、緯度が「35.686972」、経度が「139.708932」である。制御部11は、当該位置を示す情報を、流域を管理する省庁等の外部装置に送信する。制御部11は、当該外部装置から返された流域を示す情報を取得することで、レコード番号1の地下設備の属する流域を判定する。当該流域が流域Aであるとする。制御部11は、
図4Aの流域毎腐食率データベースを検索し、流域A、建設年数20年から40年、種類Iの腐食率Pdを抽出し、出力部15を介して腐食率Pdを表示する。
【0050】
モデル生成用情報取得部114が生成するデータベースは
図4A及び
図4Bの流域毎腐食率データベースに限られない。例えばモデル生成用情報取得部114は、腐食率情報と流域情報とに基づいて、
図6A及び
図6Bに示すような流域毎腐食率・特徴データベースを作成し、記憶部12に格納してもよい。
図6A及び
図6Bの流域毎腐食率・特徴データベースにおいては、異なる設備種類毎にそれぞれデータベースが作成されているが、データベースの形式はこれに限られない。制御部11は、流域毎腐食率データベースの場合と同様に、当該流域毎腐食率・特徴データベースの検索に必要な情報を取得して、当該流域毎腐食率・特徴データベースから対象の地下設備の腐食率を抽出できてよい。
【0051】
モデル生成用情報取得部114は、取得した腐食率情報が示す腐食率が不明なレコードの数が所定値以上であるかに基づいて、モデル生成部115に流域情報を付加した腐食率情報を出力することを決定してもよい。具体的には、モデル生成用情報取得部114は、腐食率が不明なレコードの数が所定値以上ある場合に、モデル生成部115に流域情報を付加した腐食率情報を出力することを決定し、所定値未満である場合には、モデル生成部115に腐食率情報を出力せず、上述の流域毎腐食率データベース又は流域毎腐食率・特徴データベースを作成することを決定してよい。これにより、腐食率情報が示す腐食率が所定の程度判明している場合はデータベースを検索することで腐食率を抽出し、一方、腐食率が不明な場合には、自動的に以下で説明する学習モデルを生成し、腐食率を推定することが可能となる。
【0052】
モデル生成部115は、モデル生成用情報取得部114から出力された、流域情報が付加された腐食率情報を取得する。モデル生成部115は、地下設備の特徴と流域の特徴とを説明変数とし、腐食率を目的変数とする機械学習を行うことにより学習モデルを生成する。当該機械学習の手法は、決定木の勾配ブースティング、ランダムフォレスト等の教師あり学習の手法であって良い。機械学習の手法はこれらに限られず、ニューラルネットワーク、分類、回帰木等を含んでよい。モデル生成部115は、生成した学習モデルを記憶部12に格納する。
【0053】
学習モデルは、地下設備の腐食率を学習する。学習モデルは、腐食率を、連続値、腐食の有無を表す0及び1の二値、任意の離散値又はカテゴリ値等で示してよい。モデル生成部115は、記憶部12から生成した学習モデルを読み出し、腐食予測装置20に出力する。
【0054】
<腐食予測装置20の構成>
再び
図1を参照すると、腐食予測装置20は、制御部21と、記憶部22と、通信部23と、入力部24と、出力部25とを備える。
【0055】
記憶部22は、1つ以上のメモリを含み、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、光メモリ等を含んでもよい。記憶部22に含まれる各メモリは、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部22は、腐食予測装置20の動作に用いられる任意の情報を記憶する。記憶部22は、必ずしも腐食予測装置20が内部に備える必要はなく、腐食予測装置20の外部に備える構成としてもよい。
【0056】
通信部23は、ネットワーク30に接続する1つ以上の通信用インターフェースを含む。当該通信用インターフェースは、例えば移動通信規格、有線LAN規格、又は無線LAN規格に対応するが、これらに限られず、任意の通信規格に対応してもよい。通信部23は、腐食予測装置20の動作に用いられる情報を受信し、また腐食予測装置20の動作によって得られる情報を送信する。
【0057】
入力部24には、少なくとも1つの入力用インターフェースが含まれる。入力用インターフェースは、例えば、物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、ディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、又はマイクである。入力部24は、腐食予測装置20の動作に用いられる情報を入力する操作を受け付ける。入力部24は、腐食予測装置20に備えられる代わりに、外部の入力機器として腐食予測装置20に接続されてもよい。接続方式としては、例えば、USB、HDMI(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の任意の方式を用いることができる。
【0058】
出力部25には、少なくとも1つの出力用インターフェースが含まれる。出力用インターフェースは、例えば、ディスプレイ又はスピーカである。ディスプレイは、例えば、LCD又は有機ELディスプレイである。出力部25は、腐食予測装置20の動作によって得られる情報を出力する。出力部25は、腐食予測装置20に備えられる代わりに、外部の出力機器として腐食予測装置20に接続されてもよい。接続方式としては、例えば、USB、HDMI(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の任意の方式を用いることができる。
【0059】
制御部21は、制御演算回路(コントローラ)により実現される。該制御演算回路は、ASIC、FPGA等の専用のハードウェアによって構成されてもよいし、プロセッサによって構成されてもよいし、双方を含んで構成されてもよい。制御部21は、腐食予測装置20の各部を制御しながら、腐食予測装置20の動作に関わる処理を実行する。制御部21は、外部装置との情報の送受信を、通信部23及びネットワーク30を介して行うことができる。
【0060】
制御部21は、モデル取得部211、推定用情報取得部212、及び推定部213を備える。
【0061】
モデル取得部211は、腐食率を推定するための学習モデルを取得する。本実施形態では、モデル取得部211は、学習装置10が生成した学習モデルを学習装置10から受信することで取得する。モデル取得部211は取得した学習モデルを推定部213に出力する。
【0062】
推定用情報取得部212は、対象の地下設備の特徴と対象の地下設備が含まれる流域の特徴とを示す推定用情報を取得する。推定用情報の取得には任意の手法が採用されてよい。
【0063】
例えば、推定用情報取得部212はまず、ユーザから対象の地下設備の建設年数、種類、及び対象の地下設備の位置の入力を促す表示を、出力部25を介して行い、ユーザが入力部24を介して入力した値を受け付ける。
【0064】
次に推定用情報取得部212は、入力された対象の地下設備の位置に基づき、対象の地下設備が含まれる流域を判定する。推定用情報取得部212は、上述の分割部112と同様の手法により流域を判定してよい。具体的には、推定用情報取得部212は、流域を管理する省庁等の外部装置と通信して当該対象の地下設備の位置を示す情報を送信し、当該外部装置から返された、当該位置が含まれる流域を示す情報を受信することで、対象の地下設備の属する流域を判定してよい。
【0065】
次に推定用情報取得部212は、このようにして判定した流域に基づいて流域の特徴を示す流域情報を任意の手法によりさらに取得する。推定用情報取得部212は、上述のモデル生成用情報取得部114と同様の手法により流域情報を取得してよい。具体的には、推定用情報取得部212は、流域を点検又は管理する省庁等の外部装置と通信し、当該外部装置が備えるデータベースにおいて検索された流域の特徴を受信することで流域情報を取得できてよい。
【0066】
推定用情報取得部212は、このようにして対象の地下設備の特徴と流域情報が含む流域の特徴とを推定用情報として取得する。推定用情報取得部212は、取得した推定用情報を推定部213に出力する。
【0067】
推定部213は、取得した推定用情報を、モデル取得部211から取得した学習モデルに適用し、対象の地下設備の腐食率を推定する。具体的には、推定部213は、推定用情報が含む対象の地下設備の特徴と対象の地下設備が含まれる流域の特徴とをそれぞれ数値化して、取得した学習モデルに入力する。推定部213は、学習モデルが算出した腐食率を取得する。このようにして推定部213は対象の地下設備の腐食率を推定する。
【0068】
推定部213は、学習モデルが算出した腐食率を、出力部25を介してユーザに対し通知してもよいし、通信部23を介してユーザの保持する端末装置に送信することでユーザに対し通知してもよい。例えば推定部213は、出力部25に表示された地図上に、推定した腐食率を表示してもよい。
【0069】
<プログラム>
上述した学習装置10又は腐食予測装置20として機能させるために、プログラム命令を実行可能なコンピュータを用いることも可能である。ここで、コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、ワークステーション、PC(Personal Computer)、電子ノートパッド等であってもよい。プログラム命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード、コードセグメント等であってもよい。
【0070】
コンピュータは、プロセッサと、記憶部と、入力部と、出力部と、通信インターフェースとを備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、SoC(System on a Chip)等であり、同種又は異種の複数のプロセッサにより構成されてもよい。プロセッサは、記憶部からプログラムを読み出して実行することで、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。なお、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェアで実現することとしてもよい。入力部は、ユーザの入力操作を受け付けてユーザの操作に基づく情報を取得する入力インターフェースであり、ポインティングデバイス、キーボード、マウス等である。出力部は、情報を出力する出力インターフェースであり、ディスプレイ、スピーカ等である。通信インターフェースは、外部の装置と通信するためのインターフェースである。
【0071】
プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。このような記録媒体を用いれば、プログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録された記録媒体は、非一過性(non-transitory)の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、USBメモリ等であってもよい。また、このプログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0072】
<腐食予測システム1の動作>
次に、
図7A及び
図7Bを参照して、本実施形態に係る学習装置10及び腐食予測装置20を含む腐食予測システム1の動作について説明する。腐食予測システム1の動作のうち、学習装置10の動作は、本実施形態に係る学習方法に相当し、腐食予測装置20の動作は、本実施形態に係る腐食予測方法に相当する。
【0073】
図7AのステップS1において、学習装置10の点検情報取得部111は、地下設備の位置と、地下設備の腐食の有無を点検した結果とを示す点検情報を取得する。点検情報の取得には任意の手法が採用されてよい。点検情報取得部111は、取得した点検情報を分割部112に出力する。
【0074】
ステップS2において、分割部112は、地下設備の位置に基づいて地下設備が含まれる流域毎に点検情報を分割する。分割部112は、点検情報が示す地下設備の位置に基づき、点検された各地下設備がどの流域に所属するかを判定する。流域の判定には任意の手法が採用されてよい。例えば分割部112は、流域を管理する省庁等の外部装置と通信して当該地下設備の位置を示す情報を送信し、当該外部装置が備えるデータベースにおいて検索された、当該位置が含まれる流域を受信することで、地下設備の属する流域を判定してよい。分割部112は、分割した点検情報を腐食率情報生成部113へ出力する。
【0075】
ステップS3において、腐食率情報生成部113は、分割部112から取得した分割された点検情報を地下設備の経過年数と種類とでクロス集計を行い、腐食率を算出して腐食率情報を生成する。腐食率の算出には任意の手法が採用されてよい。腐食率情報生成部113は、生成した腐食率情報をモデル生成用情報取得部114へ出力する。
【0076】
ステップS4において、モデル生成用情報取得部114は、地下設備の腐食率と、地下設備の建設年数と種類とを含む地下設備の特徴とを示す腐食率情報と、地下設備が含まれる流域の水質を含む、流域の特徴を示す流域情報とを取得する。本実施形態では、モデル生成用情報取得部114は、腐食率情報を腐食率情報生成部113から取得し、流域情報を、流域を点検又は管理する省庁等の外部装置から取得する。モデル生成用情報取得部114は、取得した腐食率情報に取得した流域情報を付加し、モデル生成部115に出力する。
【0077】
モデル生成用情報取得部114は、取得した情報の少なくとも1つに基づいてデータベースを作成し、記憶部12に格納してよい。モデル生成用情報取得部114は、
図4A及び
図4Bに示すような流域毎腐食率データベース、又は
図6A及び
図6Bに示すような流域毎腐食率・特徴データベースを作成してよい。この場合、制御部11は、ユーザから対象の地下設備の情報を取得し、記憶部12に格納された流域毎腐食率データベース又は流域毎腐食率・特徴データベースを検索して、当該対象の地下設備の腐食率を抽出してよい。制御部11は、データベースから抽出した腐食率をユーザに対し通知してよい。
【0078】
ステップS5において、モデル生成部115は、モデル生成用情報取得部114から出力された、流域情報が付加された腐食率情報を取得する。モデル生成部115は、地下設備の特徴と流域の特徴とを説明変数とし、腐食率を目的変数とする機械学習を行うことにより学習モデルを生成する。当該機械学習の手法は,決定木の勾配ブースティング、ランダムフォレスト等の教師あり学習の手法であってよい。モデル生成部115は、生成した学習モデルを記憶部12に格納する。
【0079】
ステップS6において、制御部11は、記憶部12からモデル生成部115が生成した学習モデルを読み出し、通信部13を介して腐食予測装置20へ送信する。
【0080】
ステップS7において、腐食予測装置20のモデル取得部211は、学習装置10から送信された学習モデルを、通信部23を介して受信することで取得する。モデル取得部211は、取得した学習モデルを推定部213に出力する。
【0081】
ステップS8において、推定用情報取得部212は、対象の地下設備の特徴と対象の地下設備が含まれる流域の特徴とを示す推定用情報を取得する。推定用情報の取得には任意の手法が採用されてよい。
【0082】
例えば推定用情報取得部212はまず、ユーザから対象の地下設備の建設年数、種類、及び地下設備が含まれる位置の入力を促す表示を、出力部25を介して行い、ユーザが入力部24を介して入力した値を受け付けて取得する。次に推定用情報取得部212は、入力された対象の地下設備の位置を示す情報に基づいて流域を判定する。流域の判定には任意の手法が採用されてよい。例えば推定用情報取得部212は、ステップS2と同様の手法により流域を判定してよい。推定用情報取得部212は、判定した流域に基づいて流域の特徴を示す流域情報を任意の手法によりさらに取得する。流域情報の取得には任意の手法が採用されてよい。例えば推定用情報取得部212は、ステップS4と同様の手法により流域情報を取得してよい。
【0083】
推定用情報取得部212は、取得した推定用情報を推定部213に出力する。
【0084】
図7BのステップS9において、推定部213は、取得した推定用情報を、モデル取得部211から取得した学習モデルに適用し、学習モデルが算出した腐食率を取得する。このようにして推定部213は対象の地下設備の腐食率を推定する。
【0085】
ステップS10において、推定部213は、推定した腐食率を、ユーザに対し通知する。通知には任意の手法が採用されてよい。その後、腐食予測システム1の動作は終了する。
【0086】
上述の通り、本実施形態の学習装置10は、地下設備の腐食率と、地下設備の建設年数と種類とを含む地下設備の特徴とを示す腐食率情報と、地下設備の少なくとも一部が含まれる流域の水質を含む、流域の特徴を示す流域情報とを取得するモデル生成用情報取得部114と、地下設備の特徴と流域の特徴とを説明変数とし、腐食率を目的変数とする機械学習を行うことにより学習モデルを生成するモデル生成部115とを備える。
【0087】
本実施形態の学習装置10によれば、地下設備が含まれる流域の特徴と地下設備の特徴とに基づいて、地下設備の腐食率を推定する学習モデルを生成できる。当該学習モデルにより、流域の腐食率が不明な箇所が多い場合であっても、腐食率を、機械学習を用いて予測することが可能となる。地下設備の腐食に影響を及ぼす流域の特徴を加味して、地下設備の腐食率を精度よく推定できるようになるため、点検コストを削減できる。よって、地下設備が含まれる流域を考慮して地下設備の腐食率を予測する技術を改善することが可能となる。
【0088】
上述の通り、本実施形態の学習装置10は、地下設備の位置と、地下設備の腐食の有無を点検した結果とを示す点検情報を取得する点検情報取得部111と、地下設備の位置に基づいて地下設備が含まれる流域毎に点検情報を分割する分割部112と、分割した点検情報に基づいて、腐食率情報を生成する腐食率情報生成部113と、をさらに備える。
【0089】
本実施形態の学習装置10によれば、流域毎に点検情報が自動的に分割され、学習モデルの生成に必要な流域毎の腐食率を示す腐食率情報を効率よく生成できる。流域毎の腐食率を表す流域毎腐食率データベース及び流域毎腐食率・特徴データベースが生成できるため、当該データベースを検索して腐食率の抽出も可能になる。よって、地下設備が含まれる流域を考慮して地下設備の腐食率を予測する技術を改善することが可能となる。
【0090】
上述の通り、本実施形態の腐食予測装置20は、学習モデルを取得するモデル取得部211と、対象の地下設備の特徴と対象の地下設備が含まれる流域の特徴とを示す推定用情報を取得する推定用情報取得部212と、取得した推定用情報を、取得した学習モデルに適用し、対象の地下設備の腐食率を推定する推定部213と、を備える。
【0091】
本実施形態の腐食予測装置20によれば、対象の地下設備が含まれる流域の特徴を自動的に取得し、対象の地下設備の腐食率を精度よく予測できる。点検するまで不明であった地下設備の腐食状況を容易に予測できるようになるため、点検および維持管理の効率化が可能となる。よって、地下設備が含まれる流域を考慮して地下設備の腐食率を予測する技術を改善することが可能となる。
【0092】
本発明を諸図面や実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本発明に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。
【符号の説明】
【0093】
1 腐食予測システム
10 学習装置
11 制御部
12 記憶部
13 通信部
14 入力部
15 出力部
20 腐食予測装置
21 制御部
22 記憶部
23 通信部
24 入力部
25 出力部
30 ネットワーク
111 点検情報取得部
112 分割部
113 腐食率情報生成部
114 モデル生成用情報取得部
115 モデル生成部
211 モデル取得部
212 推定用情報取得部
213 推定部