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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057172
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】圧力測定装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/40 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
E21D11/40 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163707
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000150110
【氏名又は名称】株式会社竹中土木
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174207
【弁理士】
【氏名又は名称】筬島 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】白井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】森 守正
(72)【発明者】
【氏名】董 佳文
(72)【発明者】
【氏名】風呂 千津子
(72)【発明者】
【氏名】金森 祐哉
(72)【発明者】
【氏名】平野 泰広
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA06
2D155BB02
2D155FB04
2D155KB11
2D155LA13
2D155LA17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】袋体等の押圧部材と鋼製支保工等の被押圧部材との間に介在させることにより、圧力(密着性)の判断指標(確認手段)を提供する。
【解決手段】押圧部材Pと被押圧部材Dとの間に介在される圧力測定装置であって、前記圧力測定装置は、圧力検知シート部材1であり、前記圧力検知シート部材1は、表面シートSと裏面シートBとが内部に収容空間2を有するように一体にシールされ、前記収容空間2は、被押圧空間部21と液体流入空間部22と両空間部21、22を仕切る仕切り部23とで形成され、前記被押圧空間部21には着色液Cが充填され、前記押圧部材Pから前記被押圧空間部21に設定値以上の圧力が作用すると前記仕切り部23が破断して前記被押圧空間部21内の前記着色液Cが前記液体流入空間部22へ流れ込む構成とされている。前記圧力測定装置は、圧力検知シート部材と圧力調整部材9とで構成される場合もある。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧部材と被押圧部材との間に介在される圧力測定装置であって、
前記圧力測定装置は、圧力検知シート部材であり、
前記圧力検知シート部材は、表面シートと裏面シートとが内部に収容空間を有するように一体にシールされ、前記収容空間は、被押圧空間部と液体流入空間部と両空間部を仕切る仕切り部とで形成され、前記被押圧空間部には着色液が充填され、前記押圧部材から前記被押圧空間部に設定値以上の圧力が作用すると前記仕切り部が破断して前記被押圧空間部内の前記着色液が前記液体流入空間部へ流れ込む構成とされていることを特徴とする、圧力測定装置。
【請求項2】
押圧部材と被押圧部材との間に介在される圧力測定装置であって、
前記圧力測定装置は、圧力検知シート部材と圧力調整部材とから成り、
前記圧力検知シート部材は、表面シートと裏面シートとが内部に収容空間を有するように一体にシールされ、前記収容空間は、被押圧空間部と液体流入空間部と両空間部を仕切る仕切り部とで形成され、前記被押圧空間部には着色液が充填され、前記被押圧空間部に設定値以上の圧力が作用すると前記仕切り部が破断して前記被押圧空間部内の前記着色液が前記液体流入空間部へ流れ込む構成とされていること、
前記圧力調整部材は、前記押圧部材から設定値以上の圧力が作用すると変形して前記被押圧空間部を押圧する構成とされていること、
をそれぞれ特徴とする、圧力測定装置。
【請求項3】
前記被押圧部材は、トンネルの中空断面に配設される鋼製支保工、及び/又は背面地山であり、前記押圧部材は、前記鋼製支保工の上面に配設され、モルタル等の充填材の充填量に応じて膨張する袋体であることを特徴とする、請求項1又は2に記載した圧力測定装置。
【請求項4】
前記被押圧部材は、土留め支保工に用いられる鋼矢板又は親杭であり、前記押圧部材は、H形鋼等の腹起し材であることを特徴とする、請求項1又は2に記載した圧力測定装置。
【請求項5】
前記圧力調整部材は、平面部と前記平面部から垂れ下がる側壁部とで立体的に形成され、前記圧力検知シート部材の被押圧空間部を収容可能な構成とされていることを特徴とする、請求項2に記載した圧力測定装置。
【請求項6】
前記圧力調整部材の平面部の中央部に前記被押圧空間部側へ突き出る突出部材が設けられ、前記被押圧空間部に、前記突出部材が挿入可能な貫通孔が形成されていることを特徴とする、請求項5に記載した圧力測定装置。
【請求項7】
前記圧力調整部材の平面部及び/又は側壁部に、前記圧力調整部材の変形を誘発するための切欠部、欠損部、薄肉部等の変形誘発部が形成されていることを特徴とする、請求項5に記載した圧力測定装置。
【請求項8】
前記圧力検知シート部材の前記液体流入空間部内に不織布が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載した圧力測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧力測定装置の技術分野に属し、さらに云えば、(トンネルの)プレロードシェル工法や山留め工法の施工の際、圧力(面圧力)が適正に作用しているか否かの判断指標として好適に用いられる圧力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル掘削施工において、通常、トンネルの中空断面に、岩盤が崩れないように支える仮設構造物であるアーチ状の鋼製支保工を設置する。支保工の一種であるプレロードシェル工法(例えば、特許文献1参照)は、トンネル掘削後に袋体(プレロードジャケット)をセットした支保工を設置し、前記袋体にモルタルなどの充填材を圧入することで支保工(鋼製支保工)と地山(背面地山)とを一体化させる工法である。支保工と地山との密着性は、支保工性能に関わる大きな要素であるが、現状において密着性の確認手段は確立されていない。
【0003】
一例として、支保工と地山との密着性の確認手段として(ニッタ製)感圧シートデバイスが挙げられる。この感圧シートデバイスは、有線式の精密な圧力測定デバイスを計測(計測)箇所毎に支保工に設置し、袋体にモルタルなどの充填材を圧入(注入)した際の圧力を読み込み機械で測定することで密着性を判断する手法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-231700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記感圧シートデバイスは、測定箇所がデバイス設置面の微小区間に限定されるので計測の正確性に問題があり、しかも5m程度の有線式デバイスのため計測毎に前記読み込み機械を移動させる必要があるので使い勝手がわるく、また、精密機械を用いるため取り扱い性、耐久性、又は経済性にも難がある等、解決すべき課題となっている。
したがって、本発明の目的は、上述した背景技術の課題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、袋体等の押圧部材と鋼製支保工等の被押圧部材との間に介在させることにより、圧力(密着性)の判断指標(確認手段)として、簡易に、しかも確実に測定することができる、施工性、経済性、取扱い性、及び確実性に優れた圧力測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記背景技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る圧力測定装置は、押圧部材と被押圧部材との間に介在される圧力測定装置であって、
前記圧力測定装置は、圧力検知シート部材であり、
前記圧力検知シート部材は、表面シートと裏面シートとが内部に収容空間を有するように一体にシールされ、前記収容空間は、被押圧空間部と液体流入空間部と両空間部を仕切る仕切り部とで形成され、前記被押圧空間部には着色液が充填され、前記押圧部材から前記被押圧空間部に設定値以上の圧力が作用すると前記仕切り部が破断して前記被押圧空間部内の前記着色液が前記液体流入空間部へ流れ込む構成とされていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載した発明に係る圧力測定装置は、押圧部材と被押圧部材との間に介在される圧力測定装置であって、
前記圧力測定装置は、圧力検知シート部材と圧力調整部材とから成り、
前記圧力検知シート部材は、表面シートと裏面シートとが内部に収容空間を有するように一体にシールされ、前記収容空間は、被押圧空間部と液体流入空間部と両空間部を仕切る仕切り部とで形成され、前記被押圧空間部には着色液が充填され、前記被押圧空間部に設定値以上の圧力が作用すると前記仕切り部が破断して前記被押圧空間部内の前記着色液が前記液体流入空間部へ流れ込む構成とされていること、
前記圧力調整部材は、前記押圧部材から設定値以上の圧力が作用すると変形して前記被押圧空間部を押圧する構成とされていること、
をそれぞれ特徴とする。
【0008】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載した圧力測定装置において、前記被押圧部材は、トンネルの中空断面に配設される鋼製支保工、及び/又は背面地山であり、前記押圧部材は、前記鋼製支保工の上面に配設され、モルタル等の充填材の充填量に応じて膨張する袋体であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載した発明は、請求項1又は2に記載した圧力測定装置において、前記被押圧部材は、土留め支保工に用いられる鋼矢板又は親杭であり、前記押圧部材は、H形鋼等の腹起し材であることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載した発明は、請求項2に記載した圧力測定装置において、前記圧力調整部材は、平面部と前記平面部から垂れ下がる側壁部とで立体的に形成され、前記圧力検知シート部材の被押圧空間部を収容可能な構成とされていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載した発明は、請求項5に記載した圧力測定装置において、前記圧力調整部材の平面部の中央部に前記被押圧空間部側へ突き出る突出部材が設けられ、前記被押圧空間部に、前記突出部材が挿入可能な貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載した発明は、請求項5に記載した圧力測定装置において、前記圧力調整部材の平面部及び/又は側壁部に、前記圧力調整部材の変形を誘発するための切欠部、欠損部、薄肉部等の変形誘発部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載した発明は、請求項1に記載した圧力測定装置において、前記圧力検知シート部材の前記液体流入空間部内に不織布が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る圧力測定装置は、以下の効果を奏する。
1)前記した有線式の精密な圧力測定デバイス(感圧シートデバイス)に代えて、樹脂製フィルムを素材とする圧力測定装置(圧力検知シート部材)を用いるので、防塵性、防水性、耐久性、取扱い性、及び経済性に優れた圧力測定装置を実現することができる。
2)圧力測定装置の圧力調整部材の材質又は形態を適宜設計変更することで、設定値(目標値)の圧力を自在に調整して被押圧部材(例えば、鋼製支保工、背面地山、鋼矢板、又は親杭)に作用させることができるので、自在性、柔軟性に優れた圧力測定装置を実現できる。
3)所定の圧力を受けた際に仕切り部が破断して被押圧空間部内の着色液が液体流入空間部へ流れ込む構成なので、設定値の圧力の作用を、当該液体流入空間部内の着色液の有無により視覚的に簡易に測定(判別)できるので、迅速性、正確性に優れた圧力測定装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明(請求項1、2)に係る圧力測定装置の圧力検知シート部材を示した表面図である。ちなみに、この圧力検知シート部材は平面的なシート状に形成されており、裏面図も略同一に表れる。
図2図1の前記圧力検知シート部材について、被押圧空間部に所定の圧力が作用して仕切り部が破断した状態を示した表面図である。
図3】Aは、本発明(請求項2)に係る圧力測定装置の圧力調整部材を平面方向から見た斜視図であり、Bは、同底面方向から見た斜視図である。
図4】Aは、本発明(請求項2)に係る圧力測定装置(前記圧力検知シート部材と前記圧力調整部材との組み合わせ)を示した写真であり、Bは、前記圧力調整部材が押し潰されて前記圧力検知シート部材の被押圧空間部に所定の圧力が作用して仕切り部が破断した状態を示した写真である。
図5図1の圧力検知シート部材のバリエーションを示した表面図である。ちなみに、この圧力検知シート部材も平面的なシート状に形成されており、裏面図も略同一に表れる。
図6図1の圧力検知シート部材のバリエーションを示した表面図である。ちなみに、この圧力検知シート部材も平面的なシート状に形成されており、裏面図も略同一に表れる
図7図6の前記圧力検知シート部材について、被押圧空間部に所定の圧力が作用して仕切り部が破断した状態を示した表面図である。
図8】Aは、図3の圧力調整部材のバリエーションを平面方向から見た斜視図であり、Bは、同底面方向から見た斜視図である。
図9】本出願人が行った実験結果の一例を示したグラフである。
図10】本発明に係る圧力測定装置(圧力検知シート部材)の適用例を概略的に示したトンネル中空断面図である。
図11図10の要部を示した詳細図である。なお、図中の点線は、袋体の膨張状態を概略的に表した仮想線である。
図12】Aは、本発明に係る圧力測定装置(圧力検知シート部材)の適用例(図10参照)を鋼製支保工の周方向から見た詳細図であり、Bは、Aに示した袋体が膨張した結果、前記圧力検知シート部材の被押圧空間部に所定の圧力が作用して仕切り部が破断した状態を示した説明図である。なお、前記圧力検知シート部材は少し誇張して図示している。
図13】A、Bは、図12A、Bの適用例のバリエーション図である。
図14】Aは、本発明に係る圧力測定装置(圧力検知シート部材と圧力調整部材との組み合わせ)の適用例を概略的に示した土留め支保工の施工図であり、Bは、Aの要部を示した説明図である。
図15】A、Bは、図14A、Bに係る土留め支保工のバリエーション図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る圧力測定装置は、圧力(面圧力)が適正に作用しているか否かの判断指標として用いられるものであり、図1に示したような、圧力検知シート部材1で実施する場合と、前記圧力検知シート部材1に、図3に示した圧力調整部材9を加え、図4に示したような構成で実施する場合とがある。
前記図1に係る圧力検知シート部材1は、比較的低い圧力を測定する場合に好適に用いられ、前記図4に係る圧力検知シート部材1と圧力調整部材9との併用は、前記圧力検知シート部材1単体では測定できないような、比較的高い圧力を測定する場合に好適に用いられる。
より具体的に、前者は、例えば図10図13に示したような、プレロードシェル工法における鋼製支保工11と背面地山13との間に設けられる袋体(プレロードジャケット)12の圧力測定に用いられ、後者は、例えば図14図15に示したような、山留め工法における鋼矢板16又は親杭17を押圧するH形鋼等の腹起し材15の圧力測定に用いられる。もっとも、前記プレロードシェル工法における袋体12の測定(加圧測定)に、後者の圧力検知シート部材1と圧力調整部材9との併用タイプ(図4参照)を用いて実施することもできる。
【0017】
以上を踏まえ、次に、本発明に係る圧力測定装置の実施例を図面に基づいて説明する。 ちなみに、実施例1では、図1に係る圧力検知シート部材1を用いて計測する場合について説明し、実施例2では、前記圧力検知シート部材1と前記圧力調整部材9とを用いて計測する場合について説明する。
【実施例0018】
実施例1に係る圧力測定装置は、押圧部材Pと被押圧部材Dとの間に介在される圧力測定装置であって、図1に示したような、圧力検知シート部材1である。
前記圧力検知シート部材1は、樹脂製の表面シートSと樹脂製の裏面シートBとが内部に収容空間2を有するように一体にシールされ、前記収容空間2は、被押圧空間部21と液体流入空間部22と両空間部21、22を仕切る仕切り部23とで形成され、前記被押圧空間部21には着色液(例えば、ピンク色液)Cが充填され、前記押圧部材Pから前記被押圧空間部21に設定値以上の圧力が作用すると前記仕切り部23が破断し、図2に示したように、前記被押圧空間部21内の前記着色液Cが前記液体流入空間部22へ流れ込む構成とされている。
なお、前記液体流入空間部22へ流れ込む着色液Cは、図示の便宜上、前記液体流入空間部22内に充満しているように見えるが、実際は、容積がその分増えるだけなので分散し、充満することはない。そこで後述するように、前記液体流入空間部22内に着色液Cの定着性を高めるための不織布25を貼着する等の工夫が適宜施される。
【0019】
図中の符号3は、前記収容空間2の両側に平行に形成されたシール部を示し、符号4は、前記表面シートSと裏面シートBとを適宜貼り合わせた両面シート重合部を示し、符号Cは、前記被押圧空間部21内に収容された着色液を示している。ちなみに、前記両面シート重合部4は、圧力検知シート部材1を取り扱う際に作業員の把持部として利用される等、圧力検知シート部材1の収容空間2の損傷を防止する利点がある。
【0020】
前記押圧部材Pおよび前記被押圧部材Dについて、本実施例では、図10図11のような、トンネルのプレロードシェル工法へ適用した例を示しており、よって、前記袋体12が前記押圧部材Pに相当し、前記鋼製支保工11又は前記背面地山13が被押圧部材Dに相当する。なお、図11中の符号14は、袋体の位置ずれを防止するための拘束部材を示している。
【0021】
本実施例では、一例として、鋼製支保工11をアーチ状に組み立てる前の準備段階で、予め、上記構成の圧力検知シート部材1を、前記袋体12(押圧部材P)と前記鋼製支保工11(被押圧部材D)との間、即ち前記鋼製支保工11の上面に設ける。
具体的には、図12Aに例示したように、前記圧力検知シート部材1の被押圧空間部21の略全面が前記鋼製支保工(H形鋼の上フランジ)11の上面に載るように両面テープ等の貼着材を用いて位置決めし、前記液体流入空間部22を鋼製支保工11(の手前側)から垂下させる構成で実施している。
【0022】
前記圧力検知シート部材1の大きさは、構造設計に応じて自在に設計変更可能であるが、前記鋼製支保工(H形鋼の上フランジ)11の幅寸が20cmの場合、被押圧空間部21の長さを20cm程度に合わせる等、被押圧部材D(又は押圧部材P)の形態に応じて設計変更される場合が多い。ちなみに、図12Aに係る圧力検知シート部材1の大きさは、一例として、前記被押圧空間部21の長さが20cm程度、前記液体流入空間部22の長さが60cm程度、前記収容空間2の幅寸が10cm程度で実施されている。
【0023】
本実施例では、一例として図9に示したように、前記仕切り部23が、0.31kNの検知圧力で破断する圧力検知シート部材1が採用されている。前記仕切り部23が破断する数値はもちろんこれに限定されず、構造設計に応じて適宜設計変更可能である。例えば、0.1kN程度で破断する構成の圧力検知シート部材1でも、プレロードシェル工法において、圧力(面圧力)が適正に作用している判断指標となる。
要するに、プレロードシェル工法に適用される圧力検知シート部材1は、被押圧空間部21に作用する単位面積あたりの圧力が、前記袋体12に充填されるモルタルなどの充填材の重量では前記仕切り部23が破断せず、前記袋体12が漸次膨張し、図12Bに示したように、前記背面地山13に十分に密着した結果生じる反力(圧力)が前記被押圧空間部21に作用(加算)して初めて前記仕切り部23が破断する構造で実施すればよい。
なお、図示例のように、前記仕切り部23を良好に破断させるべく、前記液体流入空間部22へ向かって先細りのV字状に形成する等の工夫は適宜行われるところである。
【0024】
前記圧力検知シート部材1の設置部位、設置数量に特に決まりはないが、アーチ状に組んだ鋼製支保工11の天端の左右近傍位置に2カ所(図10の符号A、B参照)、両肩部に2カ所(同符号C、D参照)の計4カ所程度にバランスよく設置するのが経済的、合理的で好ましい。
また、圧力検知シート部材1の設置部位を、図12A、Bに示したような、前記袋体12と前記鋼製支保工11との間ではなく、図13A、Bに示したような、前記袋体12と前記背面地山13との間に設けて実施しても良いし、必要に応じて両方、即ち前記袋体12と前記鋼製支保工11及び前記背面地山との間に設けて実施しても良い。
【0025】
よって、上記実施例1に係る圧力測定装置(特には図1図2図10図13参照)は、押圧部材P(例えば袋体12)と被押圧部材D(例えば鋼製支保工11及び/又は背面地山13)との間に設置された圧力検知シート部材1(の特には被押圧空間部21)が、所望の圧力が適正に作用すると、その仕切り部23が破断し、図2図12B、又は図13Bに示したように、前記被押圧空間部21内の前記着色液Cが前記液体流入空間部22へ流れ込む。そうすると、トンネル工事等の作業者は、前記着色液Cが、前記鋼製支保工11から垂下した液体流入空間部22の下端部に溜まっている状態を目視で確認することで、前記鋼製支保工11と前記背面地山13との間に設置された前記袋体12が、充填材の圧入により膨張し、適正な圧力が前記鋼製支保工11及び前記背面地山13に作用していることを容易に確認できる。
【0026】
なお、前記液体流入空間部22内に、一定の長さの不織布25(図5参照)を貼着して設けておくことにより、前記不織布25の毛細管現象により液体流入空間部22内に流入した着色液Cの定着性、視覚良好性を高める等の工夫は適宜行われるところである。
【0027】
したがって、上記実施例1に係る圧力測定装置によれば、上述した有線式の精密な圧力測定デバイス(感圧シートデバイス)に代えて、樹脂製フィルムを素材とする圧力測定装置(圧力検知シート部材1)を用いるので、防塵性、防水性、耐久性、取扱い性、及び経済性に優れた圧力測定装置を実現することができる。
また、所定の圧力を受けた際に仕切り部23が破断して被押圧空間部21内の着色液Cが液体流入空間部22へ流れ込む構成なので、設定値の圧力の作用を、当該液体流入空間部22内の着色液Cの有無により視覚的に簡易に測定(判別)できるので、迅速性、正確性に優れた圧力測定装置を実現できる。
【実施例0028】
実施例2に係る圧力測定装置は、押圧部材Pと被押圧部材Dとの間に介在される圧力測定装置であって、図1に示したような、前記圧力検知シート部材1に、図3に示した圧力調整部材9を加え、図4に示したような構成で実施している。よって、前記圧力検知シート部材1に関する説明は、上記実施例1と重複する場合が多いので適宜省略する。
なお、図4に係る前記圧力検知シート部材1は、その収容空間2の上面及び/又は下面に両面シート重合部4を載置した三つ折り状態として用いられている
【0029】
前記圧力検知シート部材1は、上記実施例1で説明した通りであり、樹脂製の表面シートSと樹脂製の裏面シートBとが内部に収容空間2を有するように一体にシールされ、前記収容空間2は、被押圧空間部21と液体流入空間部22と両空間部21、22を仕切る仕切り部23とで形成され、前記被押圧空間部21には着色液(例えば、ピンク色液)Cが充填されている。そして、前記押圧部材Pから前記被押圧空間部21に設定値以上の圧力が作用すると前記仕切り部23が破断し、図2に示したように、前記被押圧空間部21内の前記着色液Cが前記液体流入空間部22へ流れ込む構成とされている。
前記圧力調整部材9は、前記押圧部材Pから設定値以上の圧力が作用すると変形して前記被押圧空間部21を押圧する構成とされている。
【0030】
前記押圧部材Pおよび前記被押圧部材Dについて、本実施例では、図14図15のような、山留め工法へ適用した例を示しており、よって、前記H形鋼等の腹起し材15が前記押圧部材Pに相当し、前記鋼矢板16又は親杭(H形鋼等)17が被押圧部材Dに相当する。なお、図中の符号18は、地山を示し、符号19は、横矢板を示している。
【0031】
前記圧力調整部材9は、プラスチック製で、図3に例示したように、平面部91と前記平面部91から垂れ下がる側壁部92とで一体的かつ立体的に形成され、図4に例示したように、前記圧力検知シート部材1の被押圧空間部21を収容可能な構成で実施されている。ちなみに、図中の符号94は、前記圧力調整部材9の変形を誘発するための切欠部(変形誘発部)を示している。この切欠部(変形誘発部)94は、前記被押圧空間部21を収容する開口部を兼ねている。前記変形誘発部94には、切欠部のほか、図示は省略するが、欠損部(穿設部)や、部分的な薄肉部に形成する場合も含む。
【0032】
本実施例では、一例として図9に示したように、1.83kNの検知圧力で前記圧力調整部材9が変形して前記圧力検知シート部材1の被押圧空間部21を押圧することにより前記仕切り部23が破断する圧力測定装置が採用されている。
前記仕切り部23が破断する数値はもちろんこれに限定されず、構造設計に応じて適宜設計変更可能である。例えば、山留め工法の施工に用いる場合は、1.83kN以上(例えば、10kN程度)の検知圧力で破断する構造を実現するべく、例えば、前記圧力調整部材9の平面部91及び/又は側壁部92を肉厚に形成したり、前記側壁部92の高さを低くしたり、素材を金属製にしたり、平面部91の中央部に前記被押圧空間部21側へ突き出る突出部材93を設けたり(図8参照)、また当該突出部材93の高さや径を調整したり、前記切欠部(変形誘発部)の大きさを小さくしたりして、前記圧力調整部材9の強度および剛性を高めることで適宜調整する。
なお、前記図8Bに係る突出部材93を設けた圧力調整部材9で実施する場合、図6に示したように、前記圧力検知シート部材1の被押圧空間部21に、前記突出部材93が挿入可能な貫通孔24を設け、不当な圧力が被押圧空間部21に作用しないような工夫を施している。ちなみに、図7は、図6に係る仕切り部23が破断し、前記被押圧空間部21内の着色液Cが前記液体流入空間部22へ流れ込んだ状態を示している。
【0033】
本実施例に係る山留め工法では、一例として、腹起し材15を前記鋼矢板16又は親杭17に当接させる前の準備段階で、予め、両面テープ等で一体とした前記圧力検知シート部材1および前記圧力調整部材9(図4A参照)を、前記腹起し材(H形鋼の前フランジ)の前面に、さらに両面テープ等で取り付ける(図14B図15B参照)。前記圧力測定装置(圧力検知シート部材1および前記圧力調整部材9)を設置する向きは縦向きでも横向きでもよいが、液体流入空間部22に流入する着色液Cを作業員が視認しやすい部位に設置することが好ましい。ちなみに、図示例に係る圧力測定装置は横向きに設けて実施している。
【0034】
よって、上記実施例2に係る圧力測定装置は、押圧部材P(例えば腹起し材15)と被押圧部材D(例えば鋼矢板16又は親杭17)との間に設置された圧力検知シート部材1(の特には被押圧空間部21)および圧力調整部材9(図4A参照)が、所望の圧力が適正に作用すると、圧力調整部材9が変形して被押圧空間部21を押圧する結果、前記仕切り部23が破断し、図4Bに示したように、前記被押圧空間部21内の前記着色液Cが前記液体流入空間部22へ流れ込む。そうすると、山留め工事等の作業者は、前記着色液Cが、前記腹起し材15から横方向(又は縦方向)にはみ出した液体流入空間部22の下端部等に溜まっている状態を目視で確認することで、前記腹起し材15に押圧される前記鋼矢板16又は親杭17に適正な圧力が作用していることを容易に確認できる。
なお、前記液体流入空間部22内に、一定の長さの不織布25(図5参照)を貼着して設けておくことにより、前記不織布25の毛細管現象により液体流入空間部22内に流入した着色液Cの定着性、視覚良好性を高める等の工夫は適宜行われるところである。
【0035】
したがって、上記実施例2に係る圧力測定装置によれば、上述した有線式の精密な圧力測定デバイス(感圧シートデバイス)に代えて、樹脂製フィルムを素材とする圧力測定装置(圧力検知シート部材1)を用いるので、防塵性、防水性、耐久性、取扱い性、及び経済性に優れた圧力測定装置を実現することができる。
また、圧力測定装置を構成する圧力調整部材9の材質又は形態を適宜設計変更することで、設定値(目標値)の圧力を自在に調整して被押圧部材D(例えば、鋼矢板16又は親杭17)に作用させることができるので、自在性、柔軟性に優れた圧力測定装置を実現できる。
さらに、所定の圧力を受けた際に仕切り部23が破断して被押圧空間部21内の着色液Cが液体流入空間部22へ流れ込む構成なので、設定値の圧力の作用を、当該液体流入空間部21内の着色液Cの有無により視覚的に簡易に測定(判別)できるので、迅速性、正確性に優れた圧力測定装置を実現できる。
【0036】
以上、実施形態を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
【符号の説明】
【0037】
1 圧力検知シート部材(圧力測定装置)
2 収容空間
21 被押圧空間部
22 液体流入空間部
23 仕切り部
24 貫通孔
25 不織布
3 シール部
4 両面シート重合部
9 圧力調整部材(圧力測定装置)
91 平面部
92 側壁部
93 突出部材
94 変形誘発部
11 鋼製支保工(H形鋼)
12 袋体(プレロードジャケット)
13 背面地山
14 拘束部材
15 腹起し材
16 鋼矢板
17 親杭
18 地山
19 横矢板
P 押圧部材
D 被押圧部材
S 表面シート
B 裏面シート
C 着色液
X トンネル延長方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図15