(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000574
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法および半導体製造装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20231226BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20231226BHJP
C23C 16/24 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/302 101H
C23C16/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099303
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】500148422
【氏名又は名称】株式会社コーテック
(71)【出願人】
【識別番号】503446992
【氏名又は名称】誠南工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】後藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】原 史朗
(72)【発明者】
【氏名】石田 夕起
(72)【発明者】
【氏名】クンプアン ソマワン
(72)【発明者】
【氏名】池田 伸一
(72)【発明者】
【氏名】小林 誠治
(72)【発明者】
【氏名】タイ クオック クオン
(72)【発明者】
【氏名】亀井 龍一郎
(72)【発明者】
【氏名】薮田 勇気
【テーマコード(参考)】
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA06
4K030AA16
4K030BA30
4K030DA06
4K030DA09
4K030FA10
4K030JA01
4K030JA09
4K030JA10
4K030JA20
4K030LA15
5F004AA15
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5F004DB01
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5F045AC15
5F045AC16
5F045AC17
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5F045AD10
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5F045AE21
5F045AF03
5F045AF11
5F045BB08
5F045BB20
5F045DP03
5F045DQ05
5F045EB06
5F045EC01
5F045EE01
5F045EK06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高次シランを原料ガスとし、平坦なアモルファスシリコン膜を成膜することができる半導体装置の製造方法と、それに用いる半導体製造装置を提供すること。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、加熱領域の体積が100cm
3以下かつ内径1.5cm以上4cm以下である、筒状の処理容器内に配置されたウエハ表面に、全圧1.0Pa以上150Pa以下、トリシラン以上の高次シランの分圧1.0Pa以上100Pa以下、温度550℃以上650℃以下の条件下で熱CVDによりアモルファスシリコン膜を成膜する成膜工程を有するとする。また、装置は、処理部の上方に設けられ、クリーニングガスを励起する励起機構と、処理容器内に原料ガスを供給する原料ガス供給機構と、処理容器内にクリーニングガスを供給する機構と、処理容器内を排気する排気機構とを有し、処理容器のプラズマ励起領域から加熱領域にかけての内径が1.5cm以上4cm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱領域の体積が100cm3以下かつ内径1.5cm以上4cm以下である、筒状の処理容器内に配置されたウエハ表面に、
全圧150Pa以下、トリシラン以上の高次シランの分圧1.0Pa以上100Pa以下、温度550℃以上650℃以下の条件下で熱CVDによりアモルファスシリコン膜を成膜する成膜工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記アモルファスシリコン膜を、不活性ガス雰囲気下、580℃以上でアニールし、ポリシリコン膜とするアニール工程を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記高次シランがトリシランであることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記ウエハが、直径1インチ以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
筒状の処理容器と、
前記処理容器内に配置され、ウエハが保持されるステージと、
前記処理容器内の所定位置に保持されたウエハを加熱する加熱部と、
前記加熱部の上方に設けられ、クリーニングガスを励起する励起機構と、
前記処理容器内に原料ガスを供給する原料ガス供給機構と、
前記処理容器内にクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給機構と、
前記処理容器内を排気する排気機構と、
を少なくとも有し、
前記処理容器のプラズマ励起領域から加熱領域にかけての内径が1.5cm以上4cm以下であることを特徴とする半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アモルファスシリコン膜の成膜工程を有する半導体装置の製造方法と、その製造に使用する半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アモルファスシリコン膜、ポリシリコン膜の成膜方法の一つに熱CVD法が用いられている。熱CVD法によるこれらの成膜において、一般的には、原料ガスとして、シラン(SiH4)またはジシラン(Si2H6)が用いられている。しかし、シランおよびジシランは、極めて引火性・可燃性が高く危険性の高い気体である。両ガスともに常温・常圧での沸点が室温よりも低いため(沸点:シラン-111.8℃、ジシラン-14.5℃)、通常、高圧ガス状態でボンベに充填し、ボンベよりガスを引き出して利用される。このため、シラン及びジシランは、日本国において特定高圧ガスに指定され、これらガスを用いる場合、高度な安全対策が必要であり、排気も適切に処理する必要があるため、給気系統や排気系統等も含むシステム全体として大規模かつ高コストであり、また、仮にこれらのガスが漏れてしまった場合、環境への負荷も大きい。
【0003】
常温・常圧で液体であるトリシラン(Si3H8、沸点52.9℃)以上の高次シランを用いた熱CVD法も検討されている。トリシランは、引火性・可燃性がシラン及びジシランほど強くなく、かつ液体であるため高圧ボンベに充填する必要が無い点で、取り扱いはシラン及びジシランよりも容易である。しかし、高次シランを原料ガスとする熱CVD法は、半導体分野に要求されるレベルでの平滑さ、清浄さを達成することは困難であり、実用化には至っていない。例えば、非特許文献1には、8インチウェハ用のCVD装置を用いた熱CVDにおいて、圧力10.6Pa(キャリアガスなし)において、ジシラン(Si2H6)は成膜できたが、トリシランではアイランドが形成されたこと、圧力0.01Pa以下にするとトリシランでも成膜できたがデポジションレートが大幅に低下したことが開示されている。非特許文献2には、8インチウェハ用のCVD装置を用いた熱CVDにおいて、原料ガスとしてトリシランを用い、種々の条件で成膜を行ったがアイランドが形成されたこと、トリシラン(Si3H8)が、気相中でシランガス(SiH4)とSi原子に分解し、Si原子が気相中で衝突してクラスターのようになり、これが膜に付着してアイランドの原因となることが記載されている。
このように、高次シランを用いた場合、Si原子の衝突によりパーティクルやアイランドが発生するとの問題がある。
【0004】
なお、特許文献1には、処理容器を加熱するホットウォール型の反応装置では、デポジションレートは高いものの、不純物がシリコン膜中に取り込まれやすく膜質の向上が難しく、表面にシリコン粒子が堆積し(アイランドの形成)、表面が荒れてしまうことが記載されている。そして、これらを解決するためにトリシラン以上の高次シランを原料ガスとしたコールドウォール型の反応装置を用いたシリコン膜の製造方法が開示されている。しかし、特許文献1に記載のコールドウォール型の反応装置を用いた製造方法も、実際にはアイランドやパーティクルが生じているが、特許文献1の出願時(1986年)の半導体に要求されるレベルでは問題とならない大きさであっただけであり、現在の半導体の要求品質を満足できるものではない。
【0005】
また、原料ガスとしてジクロロシラン(SiH2Cl2)、トリクロロシラン(SiHCl3)等のクロロシラン化合物を用いることにより、粒子の発生を抑制できることが知られている。これらのガスに含まれているハロゲン原子である塩素(Cl)の反応性が高く、SiCl4等の揮発性の高いシリコン塩化物が形成されるためである。しかし、ジクロロシランとトリクロロシランは、日本国において特殊材料ガスに指定されている危険性の高い気体である。さらに、クロロシラン化合物は、水と接触して腐食性の塩化水素ガスが発生するため、配管が腐食して錆が発生しやすく、腐食箇所からの異物の混入を防ぐために、短い間隔で配管を交換する必要があり、高コストである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Dae-Seop Byeon, et al, "Epitaxial Growth of Si and SiGe Using High-Order Silanes without a Carrier Gas at Low Temperatures via UHVCVDand LPCVD", Coatings, 2021, 11(5), 568
【非特許文献2】B.Vincent, et al, "Low temperature Si homo-epitaxy by reduced pressure chemical vapor deposition using dichlorosilane, silane and trisilane", J Crystal Growth 312 (2010) 2671-2676
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
高次シランを原料ガスとしながらも、平坦なアモルファスシリコン膜を成膜することができる半導体装置の製造方法と、その製造に用いる半導体製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題を解決するための手段は、以下の通りである。
1.加熱領域の体積が100cm3以下かつ内径1.5cm以上4cm以下である、筒状の処理容器内に配置されたウエハ表面に、
全圧150Pa以下、トリシラン以上の高次シランの分圧1.0Pa以上100Pa以下、温度550℃以上650℃以下の条件下で熱CVDによりアモルファスシリコン膜を成膜する成膜工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
2.前記アモルファスシリコン膜を、不活性ガス雰囲気下、580℃以上でアニールし、ポリシリコン膜とするアニール工程を有することを特徴とする1.に記載の半導体装置の製造方法。
3.前記高次シランがトリシランであることを特徴とする1.または2.に記載の半導体装置の製造方法。
4.前記ウエハが、直径1インチ以下であることを特徴とする1.または2.に記載の半導体装置の製造方法。
5.筒状の処理容器と、
前記処理容器内に配置され、ウエハが保持されるステージと、
前記処理容器内の所定位置に保持されたウエハを加熱する加熱部と、
前記加熱部の上方に設けられ、クリーニングガスを励起する励起機構と、
前記処理容器内に原料ガスを供給する原料ガス供給機構と、
前記処理容器内にクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給機構と、
前記処理容器内を排気する排気機構と、
を少なくとも有し、
前記処理容器のプラズマ励起領域から加熱領域にかけての内径が1.5cm以上4cm以下であることを特徴とする半導体製造装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の半導体装置の製造方法は、従来の大型の処理容器を用いた方法と比較して、処理容器の容量が小さく気相反応領域が相対的に短いため、高次シランを原料としながらも、表面が平坦で清浄なアモルファスシリコン膜を成膜することができる。また、得られたアモルファスシリコン膜をアニールすることにより、表面が平坦で清浄なポリシリコン膜を得ることができる。
本発明の半導体装置の製造方法は、処理容器が小型であるため、昇温/降温にかかる時間が短く高スループットであり、また、電気代等のランニングコストを削減することができる。
本発明の半導体装置の製造方法は、常温で液体の高次シランを用いるため、従来用いられていたシランおよびジシランと比較して、取り扱い性に優れ、作業員等が原料ガスに曝露するリスクを大幅に削減することができる。高次シランは、常温で液体であるため、常温で気体であるシラン、ジシランを使用する場合のガスボンベと比較して、収容するためのスペースを大幅に削減することができ、装置の小型化、低コスト化を実現することができる。高次シランは、腐食性を有さないため、配管が錆びにくく、また、排気の処理も容易である。
【0011】
本発明の半導体製造装置は、筒状の処理容器の下方に加熱部、上方にクリーニングプラズマを励起するプラズマ励起機構を有する。この構成により、本発明の半導体製造装置は、プラズマ励起部の径と処理容器の径とが略同一であるため、クリーニングプラズマにより処理容器の内面を効率的に清浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】実験1において得られたアモルファスシリコン膜の光学顕微鏡画像と電子間力顕微鏡画像。
【
図3】実験1におけるクリーニング前後の反応容器の外観を示す画像。
【
図4】実験2におけるアニール温度と結晶化率との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の半導体の製造方法(以下、製造方法ともいう)は、
加熱領域の体積が100cm3以下かつ内径1.5cm以上4cm以下である、筒状の処理容器内に配置されたウエハ表面に、
全圧150Pa以下、トリシラン以上の高次シランの分圧1.0Pa以上100Pa以下、温度550℃以上650℃以下の条件下で熱CVDによりアモルファスシリコン膜を成膜する成膜工程を有する。
【0014】
以下、本発明の半導体装置の製造方法を、本発明の半導体製造装置の一実施態様であるミニマルファブ装置を用いて説明する。ミニマルファブ装置とは、直径0.5インチ(12.5mm)のウエハを用いる局所クリーン化した超小型デバイス生産システム(ミニマルファブ:特許第5361002号公報、特許第5780531号公報等参照)を構成する装置である。
【0015】
ミニマルファブ装置は、直径が0.5インチ(12.5mm)のウエハを取り扱うものであるが、本発明の製造方法が使用するウエハの直径は0.5インチに限定されず、本発明で使用する処理容器に収容可能なウエハを使用することができる。ただし、ウエハの直径は1インチ以下であることが好ましい。ウエハの直径が小さくなると、ウエハを収容する処理容器の体積を小さくすることができるため、高温に加熱されるCVD装置の昇温と降温、特に降温に要する時間を短くすることができ、サイクルタイムを短くすることができる。
なお、本発明の半導体装置の製造方法は、本発明の半導体製造装置により好適に実施することができるが、他の半導体製造装置でも実施することができる。また、本発明の半導体製造装置は、本発明の半導体装置の製造方法に好適に用いることができるが、他の半導体装置の製造方法にも用いることができる。
【0016】
図1に、本発明の半導体製造装置の一実施態様であるミニマルファブ装置である半導体製造装置100の概略図を示す。
半導体製造装置100は、筒状の処理容器1と、処理容器1内の所定位置で0.5インチサイズのウエハWが保持されるステージ2と、処理容器1の周囲に設けられた加熱部3と、加熱部3の上方に設けられたプラズマ励起機構4と、処理容器1内に、原料ガス、クリーニングガス、不活性ガスをそれぞれ供給する原料ガス供給機構5、クリーニングガス供給機構6、不活性ガス供給機構7と、処理容器1内を排気する排気機構Pとを有する。
処理容器1のうち加熱部3の発熱体の上端と下端に挟まれた領域が加熱領域13、プラズマ励起機構4のコイル41の上端と下端に挟まれた領域がプラズマ励起領域14である。すなわち、処理容器1は、上方にプラズマ励起領域14、その下方に加熱領域13を備えている。
【0017】
処理容器1の形状は、筒状であればよく、円筒、楕円筒、多角筒等とすることができる。ただし、半導体製造に使用するウエハWは通常円形であるため、円筒、または頂点の数が6以上の正多角筒であることが好ましく、円筒であることが最も好ましい。なお、処理容器1の内径とは、処理容器1内面の径方向断面積と同一面積の円の直径を意味する。すなわち、径方向断面積がSで表される場合、内径dは、d=2×(S/π)1/2で表される。
【0018】
処理容器1は、そのプラズマ励起領域14から加熱領域13にかけての内径が1.5cm以上4cm以下である(以下、プラズマ励起領域14から加熱領域13にかけての部分を、処理領域ともいう)。処理容器1は、処理領域の内径が1.5cm以上4cm以下であればよく、それ以外の部分、すなわち、プラズマ励起領域14より上方と加熱領域13より下方の内径は特に制限されない。処理容器1の処理領域の内径は1.5~4cmの範囲内であればよく、一定の値であってもよく、1.5~4cmの範囲内であれば変動してもよい。
【0019】
ステージ2は、処理容器1内に配置され、その上面でウエハWを保持するものである。
ステージ2は、下方から伸び、処理容器1内を上下に移動することにより、ウエハWを所定の加熱位置で保持する。ステージ2の内部には温度センサ(図示せず)が接続されており、この温度センサからの信号に応じて加熱部3を制御することにより、ウエハを所定の温度で加熱することができる。
処理容器1とステージ2を形成する材料は、本発明の製造方法に耐えうる耐熱性を有し、ウエハW等を汚染しないものであればよく、例えば、石英、ガラス、アルミナ等の絶縁体、ステンレス等の金属を用いることができる。処理容器1とステージ2は、同一、または異なる材料を使用することができる。
【0020】
加熱部3は、処理容器1を取り囲むように配置される。加熱部3は、熱CVD処理を行う所定温度まで加熱できるものであればよく、抵抗加熱方式や赤外線加熱方式等の公知のものを用いることができる。
ウエハWは、ステージ2により加熱領域13内に保持されるが、加熱領域13の軸方向中央付近に保持されることが、温度制御の点から好ましい。具体的には、加熱領域13の軸方向の上端位置を0%、全長を100%と表した場合、ウエハWを30~70%部分に保持することが好ましく、35~65%部分に保持することがより好ましく、40~60%部分に保持することがさらに好ましい。
【0021】
上記したように、本発明の製造方法は、加熱領域13の体積が100cm3以下かつ内径1.5cm以上4cm以下である、筒状の処理容器1を用いる。本発明の製造方法は、加熱領域13の体積が小さく原子の移動が制限されているため、加熱領域13内での原子の移動距離が短い。本発明の製造方法は、加熱領域13における原子の移動距離と平均自由行程との比率(移動距離/平均自由行程)が小さいため、原子の衝突頻度が低く、原料ガスに由来する原子の衝突によりパーティクルやアイランドが発生することを抑制することができ、特に原料ガスとしてトリシラン以上の高次シランを用いた場合に有用である。そのため、加熱領域13の体積は、80cm3以下であることが好ましく、60cm3以下であることがより好ましく、40cm3以下であることがさらに好ましく、35cm3以下であることがよりさらに好ましい。また、加熱領域13の内径は、3.5cm以下であることが好ましく、3.0cm以下であることがより好ましく、2.5cm以下であることがよりさらに好ましい。なお、加熱領域13にはウエハが保持されるため、加熱領域13の内径はウエハWの直径の1.2倍以上であることが好ましく、1.4倍以上であることがより好ましく、1.6倍以上であることがよりさらに好ましい。
【0022】
加熱領域の温度は、原料ガスの種類に応じて適宜選択することができ、例えば、トリシランを用いる場合は、550℃以上650℃以下である。温度が高くなるほどデポジションレートは早くなるが、得られる膜の表面が荒れやすくなる。そのため、加熱領域の温度は、成膜スピードと得られる膜の平滑性等に応じて調整することができる。550℃以下では成膜レートが遅く、実用上プロセス時間が長くなるという欠点がある。
【0023】
プラズマ励起機構4は、加熱領域13の上方に、コイル41が処理容器1の外周を取り囲むように配置され、クリーニングガスが励起されるプラズマ励起領域14を形成している。プラズマ励起機構4は、クリーニングガスを励起できるものであればよく、公知のものを用いることができる。本実施例では、励起機構として誘導結合プラズマを励起するためのコイル41を有している。
熱CVDでは、ウエハW表面のみならず、加熱領域13内面にも、原料ガスに由来する原子が堆積して薄膜が形成されてしまう。プラズマ励起機構4によりクリーニングガスを励起してクリーニングプラズマを発生させ、プラズマ励起領域14で生じたクリーニングプラズマを下方の加熱領域13に照射することにより、加熱領域13の内面に堆積した薄膜を取り除くことができ、熱CVD時に、加熱領域13内面から薄膜が剥がれて微細片が生じ、これによりウエハW表面が汚染されることを防ぐことができる。
【0024】
処理容器1は、そのプラズマ励起領域14から加熱領域13にかけての内径が1.5cm以上4cm以下である。本発明の半導体製造装置100は、処理容器1のプラズマ励起領域14から加熱領域13にかけての内径が小径であるため、プラズマ励起領域14で励起したクリーニングプラズマと加熱領域13の処理容器1内面との距離が短い。そのため、クリーニングプラズマを処理容器1の内面に効率的に照射することができ、加熱領域13内面に堆積した膜を短時間で取り除くことができる。この際、クリーニングプラズマを加熱領域13の内面の全面に効率的に照射するために、機能領域の内径は、同径であるか、下方ほど小径となることが好ましく、同径であることがより好ましい。なお、下方に行くほど大径とすることもできるが、その場合、加熱領域13内面の軸方向断面形状は、平坦(傾きが一定)であることが好ましい。このように構成することにより、上方から覗いたときに影となる部分が生じないため、下方に流れるクリーニングプラズマが照射されにくい部分が生じず、効率的にクリーニングをすることができる。
【0025】
原料ガス供給機構5、クリーニングガス供給機構6、不活性ガス供給機構7は、各ガスを供給するものであり、その上流に図示せぬ流量計を備え、各ガスを、任意の量で供給することができ、また、その比率により複数のガスをその比率を調整しながら供給することできる。また、
図1では、各ガスは上流で合流して一つの給気口から供給されているが、別々の給気口から供給することもできる。
処理容器1には、圧力測定センサ(図示せず)が接続されており、この圧力測定センサからの信号に応じて排気機構Pを制御することにより、処理容器1内の圧力を制御することができる。
【0026】
原料ガスとしては、熱CVDにより成膜できるものを特に制限することなく使用することができ、例えば、シラン、ジシラン、トリシラン、テトラシラン(Si4H10)、シクロヘキサシラン(Si6H12)、TEOS(テトラエトキシオルソシリケート)、WF6を用いることができる。これらの中で、パーティクルやアイランドが発生しやすい、トリシラン以上の高次シランを用いることが好ましく、高次シランの中で最も沸点が低いため供給制御が容易なトリシランを用いることがより好ましい。
クリーニングガスは、加熱領域13内面に堆積した膜をプラズマにより取り除けるものであれば特に制限することなく使用することができる。例えば、加熱領域13内面にアモルファスシリコン膜またはポリシリコン膜がする場合はH2、SF6、CF4、NF3等を用いることができ、シリコン窒化膜やタングステン膜が堆積する場合においても、これらのガス用いることができる。
不活性ガスは、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等を使用することができる。
【0027】
原料ガスとして高次シランを用いる場合は、高次シラン分圧1.0Pa以上100Pa以下である。ここで、原料ガスの平均自由行程(λ)は、下記式で表される。
λ=kT/(21/2pρ)
k:ボルツマン係数
T:温度 (K)
p:圧力 (Pa)
ρ:衝突断面積(m2)
上記式が示すように、平均自由行程は、高圧になるほど短くなる。高次シランの分圧が100Paを超えると、平均自由工程が短くなるため、原料ガス原子の移動距離と平均自由行程との比率(移動距離/平均自由行程)が大きくなり、パーティクルやアイランドが発生しやすくなる。一方、高次シランの分圧が1.0Pa未満ではデポジションレートが遅くなりすぎて成膜に要する時間が長くなりすぎる。高次シランの分圧は、アモルファスシリコン膜に求める平坦性が担保されるものであれば特に制限されないが、5Pa以上であることが好ましく、10Pa以上であることがより好ましく、15Pa以上であることがよりさらに好ましく、また、80Pa以下であることが好ましく、60Pa以下であることがより好ましい。
高次シランの流量は、全圧、分圧等に応じて調整することができ、例えば、0.1sccm以上2sccm以下程度である。
【0028】
原料ガスとして高次シランを用いる場合、その全圧は150Pa以下である。全圧は、原料ガスである高次シランの給気量または原料ガスと不活性ガスとの合計の給気量と、排気量とにより、調整することができる。
【0029】
本発明の製造方法は、体積が小さく小径である処理容器を用いることにより、原料ガスである高次シランに由来するSi原子の移動距離と平均自由行程との比率(移動距離/平均自由行程)が小さい。本発明の製造方法は、これにより、Si原子同士が気相中で衝突する頻度が低く、パーティクルやアイランドの発生を抑制することができるため、原料ガスとして高次シランを用いながらも平坦で清浄なアモルファスシリコン膜を形成することができる。本発明の製造方法により得られるアモルファスシリコン膜は、その算術平均高さ(Ra)が3nm以下であることが好ましく、2nm以下であることがより好ましく、1nm以下であることがよりさらに好ましい。なお、本明細書において算術平均高さ(Ra)とは、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;AFM)により3μm角の領域を走査して得た輪郭曲線から算出した値である。すなわち、下記式(1)で表される。
【式1】
【0030】
(ここでnは3μm角領域内の測定位置の数(本実施例では131072点)、z
iは、測定位置での輪郭曲面と実際の高さのデータとの差分である。)
【0031】
本発明の製造方法は、アモルファスシリコン膜を、不活性ガス雰囲気下、580℃以上でアニールし、ポリシリコン膜とするアニール工程を有することができる。
このアニール工程により、得られたアモルファスシリコン膜を結晶化してポリシリコン膜とすることができる。アニール温度とその時間は、結晶化が進行すればよく、特に制限されないが、アニール温度が高いほど短い時間で結晶化することができる。また、アモルファスシリコン膜の成膜温度が高いほど、結晶化が進行しやすい。成膜温度が高いほど、成膜中の原子の熱エネルギーによるマイグレーションが促進され、結晶化までは至らずアモルファスではあるが、各シリコン原子が結晶格子の所定位置に近い位置まで移動していると考えられる。
【実施例0032】
「実験1」
図1と同様の構成を有するミニマルファブ装置である半導体製造装置を用い、原料ガスとしてトリシラン(Si
3H
8)、不活性ガスとしてアルゴンを用い、トリシラン/アルゴン=0.4/2sccm、600℃として、全圧とトリシラン分圧を変更しながら熱CVDにより厚さ約160nmのアモルファスシリコン膜の成膜を行った。用いた半導体製造装置の処理容器は、内径2.1cmの石英製の円筒であり、加熱領域の体積は34.7cm
3(加熱領域の長さ10cm)であり、その軸方向中央部にウエハが保持される。
【0033】
得られたアモルファスシリコン膜表面を光学顕微鏡で観察し、アイランドの有無を調査した。また、実施例3~5、7、比較例1、2で得られたアモルファスシリコン膜について、電子間力顕微鏡を用いて表面を観察しその算術平均高さ(Ra)を算出した。
製造条件と結果を表1に示す。また、実施例7、比較例1、2の光学顕微鏡画像(20倍)と原子間力顕微鏡画像を
図2に示す。原子間力顕微鏡画像の縦軸の最大値は300nmである。
【0034】
【0035】
本発明である実施例1~7の製造方法により、アイランドのない平坦で清浄なアモルファスシリコン膜を得ることができた。
それに対し、比較例1、2の製造方法は、得られたアモルファスシリコン膜にアイランドが形成されていた。
【0036】
上記実験1において、異なる条件で成膜するごとに、クリーニングガスとしてSF
6を3sccmで流し、圧力を10Paとし、誘導結合型プラズマ励起用のコイルに周波数13.56MHzの高周波電力を30W導入し、SF
6クリーニングプラズマを励起し、10分間のクリーニングを行った。クリーニング前後の反応容器の外観を
図3に示す。
クリーニングプラズマによるクリーニングにより、加熱領域の内面に付着したアモルファスシリコン膜を取り除くことができた。
【0037】
「実験2」
実験1と同一の半導体製造装置を用い、トリシラン/アルゴン=0.4/2sccm、全圧80Pa、トリシラン分圧13.3Paにて、成膜温度を異ならせて、厚さ約200nmのアモルファスシリコン膜を成膜した。
得られたアモルファスシリコン膜の結晶化率を測定した後、窒素雰囲気下で580℃24時間のアニール処理を行い、アニール処理後の結晶化率を測定した。結果を表2に示す。
【表2】
【0038】
本発明の製造方法により、結晶化率0%の完全アモルファス膜を得ることができた。
この完全アモルファス膜をアニール処理することにより、シリコン膜を得ることができた。また、成膜温度が高いほど結晶化が進行しやすいことが確認できた。
【0039】
「実験3」
実験1と同一の半導体製造装置を用い、トリシラン/アルゴン=0.4/2sccm、全圧40Pa、トリシラン分圧6.7Pa、580~640℃の範囲内において20℃間隔の温度で成膜を行い、厚さ約150nmのアモルファスシリコン膜を得た。
その後、トリシランの供給を切りアルゴンのみ供給し、5分程度かけて所定のアニール温度まで昇温して10分間アニール処理を行い、アニール処理後の結晶化率を求めた。
結果を
図4に示す。
【0040】
アモルファスシリコン膜の成膜後、続けてアニール処理を行うことにより、短い時間で結晶化することができた。アニール処理温度が高いほど結晶化は進行しやすく、また、成膜温度が高いほど結晶化が進行しやすいことが確認できた。