(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057422
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】塗料用組成物、塗膜、及び積層体
(51)【国際特許分類】
C09D 175/06 20060101AFI20240417BHJP
C08G 18/44 20060101ALI20240417BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
C09D175/06
C08G18/44
B32B27/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164147
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】白井 一彰
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 功徳
【テーマコード(参考)】
4F100
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AK45A
4F100AK51A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100EH46A
4F100GB07
4F100GB31
4F100GB48
4F100JA07A
4F100JB01
4F100JC00
4F100JK02
4J034BA03
4J034BA08
4J034CA02
4J034CA04
4J034CA05
4J034CA15
4J034CA16
4J034CB03
4J034CB07
4J034CB08
4J034CC03
4J034CC08
4J034CC12
4J034CC62
4J034CC65
4J034CD04
4J034CD13
4J034DA01
4J034DA03
4J034DB04
4J034DB05
4J034DB07
4J034DB08
4J034DC02
4J034DC12
4J034DC25
4J034DC34
4J034DC35
4J034DC39
4J034DC40
4J034DC42
4J034DC43
4J034DC50
4J034DF02
4J034DF12
4J034DG01
4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034JA02
4J034JA12
4J034JA32
4J034JA42
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KD02
4J034KD21
4J034KE02
4J034QA03
4J034QA05
4J034QB14
4J034QB17
4J034RA02
4J034RA03
4J034RA05
4J034RA07
4J038DG121
4J038DG261
4J038MA14
4J038NA04
4J038NA27
4J038PB02
4J038PB06
4J038PB07
4J038PC02
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】得られる塗膜の抗菌性、機械的特及び耐薬品性に優れた塗料用組成物を提供する。
【解決手段】ポリウレタンを含む塗料用組成物であって、前記ポリウレタンが、ポリカーボネートポリオール(A)に由来する構造単位(A)及びイソシアネート基を少なくとも2つ有するイソシアネート(B)に由来する構造単位(B)を含み、前記塗料用組成物を用いて形成した厚さ50μmの塗膜が、JIS Z2801に規定される非繊維製品の抗菌性試験法に準拠して測定した、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性値が1.5以上である、塗料用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンを含む塗料用組成物であって、
前記ポリウレタンが、ポリカーボネートポリオール(A)に由来する構造単位(A)及びイソシアネート基を少なくとも2つ有するイソシアネート(B)に由来する構造単位(B)を含み、
前記塗料用組成物を用いて形成した厚さ50μmの塗膜が、JIS Z2801に規定される非繊維製品の抗菌性試験法に準拠して測定した、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性値が1.5以上である、塗料用組成物。
【請求項2】
前記構造単位(A)が、ジオール(I-1)に由来する構造単位(I-1)及び炭素数3~12の3価~6価の分岐アルコール(I-2)に由来する構造単位(I-2)を含む、請求項1に記載の塗料用組成物。
【請求項3】
前記構造単位(I-1)が、下記式(1)で表されるオキシアルキレングリコール(I-1-1)に由来する構造単位(I-1-1)を含む、請求項2に記載の塗料用組成物。
【化1】
(式(1)中、mは2~4の整数を表し、R
Aは炭素数2~5の分岐を含んでいてもよい炭素鎖を表す。式(1)に含まれるm個のR
Aは同一であってもよく異なるものであってもよい。)
【請求項4】
前記ポリカーボネートポリオール(A)の1分子に含まれる水酸基の平均官能基数が1.80以上2.50以下である、請求項1に記載の塗料用組成物。
【請求項5】
前記オキシアルキレングリコール(I-1-1)が、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項3に記載の塗料用組成物。
【請求項6】
前記構造単位(I-2)に対する前記構造単位(I-1)のモル比((I-1)/(I-2))が、95.00/5.00以上99.99/0.01以下の範囲内である、請求項2に記載の塗料用組成物。
【請求項7】
前記ポリカーボネートポリオール(A)の水酸基価から求めた数平均分子量が、250以上5,000以下である、請求項1に記載の塗料用組成物。
【請求項8】
前記構造単位(B)に対する前記構造単位(A)のモル比((A)/(B))が、1.0/5.0以上1.0/0.5以下の範囲内である、請求項1に記載の塗料用組成物。
【請求項9】
下記(A)成分及び(B)成分を含有する塗料用組成物であって、
前記塗料用組成物を用いて形成した厚さ50μmの塗膜が、JIS Z2801に規定される非繊維製品の抗菌性試験法に準拠して測定した、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性値が1.5以上である、塗料用組成物。
(A)成分:ジオール(I-1)に由来する構造単位(I-1)及び炭素数3~12の3価~6価の分岐アルコール(I-2)に由来する構造単位(I-2)を含むポリカーボネートポリオール(A)
(B)成分:イソシアネート基を少なくとも2つ有するイソシアネート(B)
【請求項10】
前記構造単位(I-1)が、下記式(1)で表されるオキシアルキレングリコール(I-1-1)に由来する構造単位(I-1-1)を含む、請求項9に記載の塗料用組成物。
【化2】
(式(1)中、mは2~4の整数を表し、R
Aは炭素数2~5の分岐を含んでいてもよい炭素鎖を表す。式(1)に含まれるm個のR
Aは同一であってもよく異なるものであってもよい。)
【請求項11】
前記ポリカーボネートポリオール(A)の1分子に含まれる水酸基の平均官能基数が1.80以上2.50以下である、請求項9に記載の塗料用組成物。
【請求項12】
前記オキシアルキレングリコール(I-1-1)が、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項10に記載の塗料用組成物。
【請求項13】
前記構造単位(I-2)に対する前記構造単位(I-1)のモル比((I-1)/(I-2))が、95.00/5.00以上99.99/0.01以下の範囲内である、請求項9に記載の塗料用組成物。
【請求項14】
前記ポリカーボネートポリオール(A)の水酸基価から求めた数平均分子量が、250以上5,000以下である、請求項9に記載の塗料用組成物。
【請求項15】
前記(B)成分に対する前記(A)成分のモル比((A)/(B))が、1.0/5.0以上1.0/0.5以下の範囲内である、請求項9に記載の塗料用組成物。
【請求項16】
ポリウレタンを含む塗料用組成物であって、
前記ポリウレタンが、ポリカーボネートポリオール(A)に由来する構造単位(A)及びイソシアネート基を少なくとも2つ有するイソシアネート(B)に由来する構造単位(B)を含み、
前記構造単位(A)が、ジオール(I-1)に由来する構造単位(I-1)及び炭素数3~12の3価~6価の分岐アルコール(I-2)に由来する構造単位(I-2)を含み、
前記構造単位(I-1)が、下記式(1)で表されるオキシアルキレングリコール(I-1-1)に由来する構造単位(I-1-1)を含む、塗料用組成物。
【化3】
(式(1)中、mは2~4の整数を表し、R
Aは炭素数2~5の分岐を含んでいてもよい炭素鎖を表す。式(1)に含まれるm個のR
Aは同一であってもよく異なるものであってもよい。)
【請求項17】
前記ポリカーボネートポリオール(A)の1分子に含まれる水酸基の平均官能基数が1.80以上、2.50以下である、請求項16に記載の塗料用組成物。
【請求項18】
前記オキシアルキレングリコール(I-1-1)が、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項16に記載の塗料用組成物。
【請求項19】
前記構造単位(I-2)に対する前記構造単位(I-1)のモル比((I-1)/(I-2))が、95.00/5.00以上99.99/0.01以下の範囲内である、請求項16に記載の塗料用組成物。
【請求項20】
前記ポリカーボネートポリオール(A)の水酸基価から求めた数平均分子量が、250以上5,000以下である、請求項16に記載の塗料用組成物。
【請求項21】
前記構造単位(B)に対する前記構造単位(A)のモル比((A)/(B))が、1.0/5.0以上1.0/0.5以下の範囲内である、請求項16に記載の塗料用組成物。
【請求項22】
下記(A)成分及び(B)成分を含有する塗料用組成物。
(A)成分:ジオール(I-1)に由来する構造単位(I-1)及び炭素数3~12の3価~6価の分岐アルコール(I-2)に由来する構造単位(I-2)を含み、前記構造単位(I-1)が、下記式(1)で表されるオキシアルキレングリコール(I-1-1)に由来する構造単位(I-1-1)を含む、ポリカーボネートポリオール(A)
(B)成分:イソシアネート基を少なくとも2つ有するイソシアネート(B)
【化4】
(式(1)中、mは2~4の整数を表し、R
Aは炭素数2~5の分岐を含んでいてもよい炭素鎖を表す。式(1)に含まれるm個のR
Aは同一であってもよく異なるものであってもよい。)
【請求項23】
前記ポリカーボネートポリオール(A)の1分子に含まれる水酸基の平均官能基数が1.80以上、2.50以下である、請求項22に記載の塗料用組成物。
【請求項24】
前記オキシアルキレングリコール(I-1-1)が、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項22に記載の塗料用組成物。
【請求項25】
前記構造単位(I-2)に対する前記構造単位(I-1)のモル比((I-1)/(I-2))が、95.00/5.00以上99.99/0.01以下の範囲内である、請求項22に記載の塗料用組成物。
【請求項26】
前記ポリカーボネートポリオール(A)の水酸基価から求めた数平均分子量が、250以上5,000以下である、請求項22に記載の塗料用組成物。
【請求項27】
前記(B)成分に対する前記(A)成分のモル比((A)/(B))が、1.0/5.0以上1.0/0.5以下の範囲内である、請求項22に記載の塗料用組成物。
【請求項28】
抗菌活性を有する添加剤を実質的に含有しない、請求項1~27のいずれか一項に記載の塗料用組成物。
【請求項29】
請求項1~27のいずれか一項に記載の塗料用組成物を用いて形成された、塗膜。
【請求項30】
基材と、前記基材の少なくとも一方の表面の少なくとも一部の面に積層された、請求項1~27のいずれか一項に記載の塗料用組成物を用いて形成された塗膜とを有する、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料用組成物、塗膜及び積層体に関する。
詳しくは、本発明は、特定構造のポリカーボネートポリオール由来の構造単位を含み、得られた塗膜の抗菌性、機械的特性及び耐薬品性に優れる塗料用組成物と、この塗料用組成物を用いて形成された塗膜、及び、この塗料用組成物を用いて形成された塗膜を有する積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
工業規模で生産されているポリウレタンとして、ソフトセグメント部の原料にポリカーボネートジオールを用いた、ポリカーボネートタイプのポリウレタンが提案されている(特許文献1)。さらには近年、このポリカーボネートタイプのポリウレタンを用いた、耐薬品性の高い塗料用組成物が提案されている(特許文献2)。
【0003】
ポリウレタンを用いた塗料やコーティング剤(以下、単に「コーティング剤」という。)は、ソファー等の外装材や保護カバー等の家具用部材;自動車等のシートカバーや内装材料等の車両用部材;革靴やジャンバー、ベルト等の衣料用部材;カバンやバック、腕時計のベルト、財布等の装飾用部材等の表面に塗布又はコーティングされて、コーティング層又は塗膜(以下、単に「塗膜」という。)を形成して、前記部材に所望の機能を付与するために利用されている。
【0004】
また近年、上記部材が用いられる製品には、清潔性維持が強く求められており、清潔性と関連のある細菌の繁殖については、細菌が感染症を起こす第一歩となることから、抗菌性を有するコーティング剤が要望されている。すなわち、塗膜に使用されるポリウレタンには、抗菌性を有することが要求されている。
【0005】
また、上記部材が用いられる製品は、人体の体重や外部抗力等の加重又は荷重が加わる状態で使用されるため、塗膜には機械的特性に優れていることが要望されている。すなわち、塗膜に使用されるポリウレタンには、引張強度のような機械的特性に優れていることが要求されている。
【0006】
さらに、上記部材が用いられる製品は、エタノールやイソプロパノールを用いて洗浄又は消毒するため、塗膜には耐薬品性に優れていることが要望されている。すなわち、塗膜に使用されるポリウレタンには、耐薬品性に優れていることが要求されている。
【0007】
なお、抗菌性を付与する方法として、抗菌活性を有する添加剤をポリウレタンに混練する方法がある。しかしながら、この方法では、使用中に添加剤が流出してしまうと抗菌活性値が低下し、さらに、添加剤がポリウレタン分子の凝集を妨げることで、機械的特性も低下するという問題があった。また、一般的に抗菌剤は高価であり、抗菌剤の配合が製品コストを引き上げる問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013-108196号公報
【特許文献2】特開2022-070792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
塗膜を形成するための塗料用組成物にあっては、その用途において、特に機械的特性と耐薬品性に優れ、さらに抗菌性にも優れることが望まれているが、特許文献1,2に開示されているポリウレタンは、抗菌性、機械的特性及び耐薬品性という3つの特性を並立することは困難であり、特に抗菌性が不十分であった。
【0010】
本発明は、上述した従来技術の問題を解決し、得られる塗膜の抗菌性、機械的特及び耐薬品性に優れた塗料用組成物と、前記塗料用組成物を用いた塗膜、及び前記塗膜を含む積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、原料として特定構造を有するポリカーボネートポリオールを用いて製造されたポリウレタンにより、上記課題を解決することができることを見出した。
【0012】
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0013】
[1] ポリウレタンを含む塗料用組成物であって、
前記ポリウレタンが、ポリカーボネートポリオール(A)に由来する構造単位(A)及びイソシアネート基を少なくとも2つ有するイソシアネート(B)に由来する構造単位(B)を含み、
前記塗料用組成物を用いて形成した厚さ50μmの塗膜が、JIS Z2801に規定される非繊維製品の抗菌性試験法に準拠して測定した、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性値が1.5以上である、塗料用組成物。
[2] 前記構造単位(A)が、ジオール(I-1)に由来する構造単位(I-1)及び炭素数3~12の3価~6価の分岐アルコール(I-2)に由来する構造単位(I-2)を含む、[1]に記載の塗料用組成物。
[3] 前記構造単位(I-1)が、下記式(1)で表されるオキシアルキレングリコール(I-1-1)に由来する構造単位(I-1-1)を含む、[2]に記載の塗料用組成物。
【0014】
【0015】
(式(1)中、mは2~4の整数を表し、RAは炭素数2~5の分岐を含んでいてもよい炭素鎖を表す。式(1)に含まれるm個のRAは同一であってもよく異なるものであってもよい。)
[4] 前記ポリカーボネートポリオール(A)の1分子に含まれる水酸基の平均官能基数が1.80以上2.50以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の塗料用組成物。
[5] 前記オキシアルキレングリコール(I-1-1)が、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種を含む、[3]又は[4]に記載の塗料用組成物。
[6] 前記構造単位(I-2)に対する前記構造単位(I-1)のモル比((I-1)/(I-2))が、95.00/5.00以上99.99/0.01以下の範囲内である、[2]~[5]のいずれかに記載の塗料用組成物。
[7] 前記ポリカーボネートポリオール(A)の水酸基価から求めた数平均分子量が、250以上5,000以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の塗料用組成物。
[8] 前記構造単位(B)に対する前記構造単位(A)のモル比((A)/(B))が、1.0/5.0以上1.0/0.5以下の範囲内である、[1]~[7]のいずれかに記載の塗料用組成物。
【0016】
[9] 下記(A)成分及び(B)成分を含有する塗料用組成物であって、
前記塗料用組成物を用いて形成した厚さ50μmの塗膜が、JIS Z2801に規定される非繊維製品の抗菌性試験法に準拠して測定した、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性値が1.5以上である、塗料用組成物。
(A)成分:ジオール(I-1)に由来する構造単位(I-1)及び炭素数3~12の3価~6価の分岐アルコール(I-2)に由来する構造単位(I-2)を含むポリカーボネートポリオール(A)
(B)成分:イソシアネート基を少なくとも2つ有するイソシアネート(B)
[10] 前記構造単位(I-1)が、下記式(1)で表されるオキシアルキレングリコール(I-1-1)に由来する構造単位(I-1-1)を含む、[9]に記載の塗料用組成物。
【0017】
【0018】
(式(1)中、mは2~4の整数を表し、RAは炭素数2~5の分岐を含んでいてもよい炭素鎖を表す。式(1)に含まれるm個のRAは同一であってもよく異なるものであってもよい。)
[11] 前記ポリカーボネートポリオール(A)の1分子に含まれる水酸基の平均官能基数が1.80以上2.50以下である、[9]又は[10]に記載の塗料用組成物。
[12] 前記オキシアルキレングリコール(I-1-1)が、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種を含む、[10]又は[11]に記載の塗料用組成物。
[13] 前記構造単位(I-2)に対する前記構造単位(I-1)のモル比((I-1)/(I-2))が、95.00/5.00以上99.99/0.01以下の範囲内である、[9]~[12]のいずれかに記載の塗料用組成物。
[14] 前記ポリカーボネートポリオール(A)の水酸基価から求めた数平均分子量が、250以上5,000以下である、[9]~[13]のいずれかに記載の塗料用組成物。
[15] 前記(B)成分に対する前記(A)成分のモル比((A)/(B))が、1.0/5.0以上1.0/0.5以下の範囲内である、[9]~[14]のいずれかに記載の塗料用組成物。
【0019】
[16] ポリウレタンを含む塗料用組成物であって、
前記ポリウレタンが、ポリカーボネートポリオール(A)に由来する構造単位(A)及びイソシアネート基を少なくとも2つ有するイソシアネート(B)に由来する構造単位(B)を含み、
前記構造単位(A)が、ジオール(I-1)に由来する構造単位(I-1)及び炭素数3~12の3価~6価の分岐アルコール(I-2)に由来する構造単位(I-2)を含み、
前記構造単位(I-1)が、下記式(1)で表されるオキシアルキレングリコール(I-1-1)に由来する構造単位(I-1-1)を含む、塗料用組成物。
【0020】
【0021】
(式(1)中、mは2~4の整数を表し、RAは炭素数2~5の分岐を含んでいてもよい炭素鎖を表す。式(1)に含まれるm個のRAは同一であってもよく異なるものであってもよい。)
[17] 前記ポリカーボネートポリオール(A)の1分子に含まれる水酸基の平均官能基数が1.80以上、2.50以下である、[16]に記載の塗料用組成物。
[18] 前記オキシアルキレングリコール(I-1-1)が、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種を含む、[16]又は[17]のいずれかに記載の塗料用組成物。
[19] 前記構造単位(I-2)に対する前記構造単位(I-1)のモル比((I-1)/(I-2))が、95.00/5.00以上99.99/0.01以下の範囲内である、[16]~[18]のいずれかに記載の塗料用組成物。
[20] 前記ポリカーボネートポリオール(A)の水酸基価から求めた数平均分子量が、250以上5,000以下である、[16]~[19]のいずれかに記載の塗料用組成物。
[21] 前記構造単位(B)に対する前記構造単位(A)のモル比((A)/(B))が、1.0/5.0以上1.0/0.5以下の範囲内である、[16]~[20]のいずれかに記載の塗料用組成物。
【0022】
[22] 下記(A)成分及び(B)成分を含有する塗料用組成物。
(A)成分:ジオール(I-1)に由来する構造単位(I-1)及び炭素数3~12の3価~6価の分岐アルコール(I-2)に由来する構造単位(I-2)を含み、前記構造単位(I-1)が、下記式(1)で表されるオキシアルキレングリコール(I-1-1)に由来する構造単位(I-1-1)を含む、ポリカーボネートポリオール(A)
(B)成分:イソシアネート基を少なくとも2つ有するイソシアネート(B)
【0023】
【0024】
(式(1)中、mは2~4の整数を表し、RAは炭素数2~5の分岐を含んでいてもよい炭素鎖を表す。式(1)に含まれるm個のRAは同一であってもよく異なるものであってもよい。)
[23] 前記ポリカーボネートポリオール(A)の1分子に含まれる水酸基の平均官能基数が1.80以上、2.50以下である、[22]に記載の塗料用組成物。
[24] 前記オキシアルキレングリコール(I-1-1)が、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種を含む、[22]又は[23]に記載の塗料用組成物。
[25] 前記構造単位(I-2)に対する前記構造単位(I-1)のモル比((I-1)/(I-2))が、95.00/5.00以上99.99/0.01以下の範囲内である、[22]~[24]のいずれかに記載の塗料用組成物。
[26] 前記ポリカーボネートポリオール(A)の水酸基価から求めた数平均分子量が、250以上5,000以下である、[22]~[25]のいずれかに記載の塗料用組成物。
[27] 前記(B)成分に対する前記(A)成分のモル比((A)/(B))が、1.0/5.0以上1.0/0.5以下の範囲内である、[22]~[26]のいずれかに記載の塗料用組成物。
[28] 抗菌活性を有する添加剤を実質的に含有しない、[1]~[27]のいずれに記載の塗料用組成物。
【0025】
[29] [1]~[27]のいずれかに記載の塗料用組成物を用いて形成された塗膜。
[30] 基材と、前記基材の少なくとも一方の表面の少なくとも一部の面に積層された、[1]~[27]のいずれかに記載の塗料用組成物を用いて形成された塗膜とを有する、積層体。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、原料に特定の構造のポリカーボネートポリオールを用いて製造されたポリウレタンを用いることで、抗菌性、機械的特、及び耐薬品性が優れた塗膜を形成し得る塗料用組成物と、この塗料用組成物を用いた塗膜、及び積層体を提供することができる。
さらに、本発明によれば、高価な抗菌剤を用いることなく塗膜及び前記塗膜を含む積層体に、優れた抗菌性を付与することできるので、抗菌剤を配合することによる機械的特性の低下の問題もなく、また、製品コストの削減においても効果的である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
【0028】
本明細書において、「構造単位」とは、ポリウレタンの製造に用いた原料化合物が重合することにより形成された、前記原料化合物に由来する単位であって、得られた重合体において任意の連結基に挟まれた部分構造を示すものであり、重合体の末端部分で一方が連結基で、もう一方が重合反応性基である部分構造も含む。構造単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、得られた重合体を処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換されたものであってもよい。
本明細書において、「繰り返し単位」とは、「構造単位」と同義である。
【0029】
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、特に断らない限り、「~」の前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味し、「A~B」は、A以上B以下であることを意味する。
【0030】
本明細書において、「質量%」は全体量100質量%中に含まれる所定の成分の含有割合を示す。
本明細書において“質量%”と“重量%”、“質量ppm”と“重量ppm”、及び“質量部”と“重量部”とは、それぞれ同義である。また、単に“ppm”と記載した場合は、“重量ppm”のことを示す。
【0031】
〔塗料用組成物〕
本発明の第1の実施形態の塗料用組成物は、ポリウレタンを含む塗料用組成物であって、
前記ポリウレタンが、ポリカーボネートポリオール(A)に由来する構造単位(A)及びイソシアネート基を少なくとも2つ有するイソシアネート(B)に由来する構造単位(B)を含み、
前記塗料用組成物を用いて形成した厚さ50μmの塗膜が、JIS Z2801に規定される非繊維製品の抗菌性試験法に準拠して測定した、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性値が1.5以上である、塗料用組成物である。
【0032】
本発明の第2の実施形態の塗料用組成物は、下記(A)成分及び(B)成分を含有する塗料用組成物であって、
前記塗料用組成物を用いて形成した厚さ50μmの塗膜が、JIS Z2801に規定される非繊維製品の抗菌性試験法に準拠して測定した、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性値が1.5以上である、塗料用組成物である。
(A)成分:ジオール(I-1)に由来する構造単位(I-1)及び炭素数3~12の3価~6価の分岐アルコール(I-2)に由来する構造単位(I-2)を含むポリカーボネートポリオール(A)
(B)成分:イソシアネート基を少なくとも2つ有するイソシアネート(B)
【0033】
本発明の第3の実施形態の塗料用組成物は、ポリウレタンを含む塗料用組成物であって、
前記ポリウレタンが、ポリカーボネートポリオール(A)に由来する構造単位(A)及びイソシアネート基を少なくとも2つ有するイソシアネート(B)に由来する構造単位(B)を含み、
前記構造単位(A)が、ジオール(I-1)に由来する構造単位(I-1)及び炭素数3~12の3価~6価の分岐アルコール(I-2)に由来する構造単位(I-2)を含み、
前記構造単位(I-1)が、下記式(1)で表されるオキシアルキレングリコール(I-1-1)に由来する構造単位(I-1-1)を含む、塗料用組成物である。
【0034】
本発明の第4の実施形態の塗料用組成物は、下記(A)成分及び(B)成分を含有する塗料用組成物である。
(A)成分:ジオール(I-1)に由来する構造単位(I-1)及び炭素数3~12の3価~6価の分岐アルコール(I-2)に由来する構造単位(I-2)を含み、前記構造単位(I-1)が、下記式(1)で表されるオキシアルキレングリコール(I-1-1)に由来する構造単位(I-1-1)を含む、ポリカーボネートポリオール(A)
(B)成分:イソシアネート基を少なくとも2つ有するイソシアネート(B)
【0035】
【0036】
(式(1)中、mは2~4の整数を表し、RAは炭素数2~5の分岐を含んでいてもよい炭素鎖を表す。式(1)に含まれるm個のRAは同一であってもよく異なるものであってもよい。)
【0037】
前記第2の実施形態及び第4の実施形態の塗料用組成物においては、(A)成分と(B)成分との反応でポリウレタンが生成する。
【0038】
以下において、本発明の第1の実施形態の塗料用組成物、本発明の第2の実施形態の塗料用組成物、本発明の第3の実施形態の塗料用組成物、及び本発明の第4の実施形態の塗料用組成物を「本発明の塗料用組成物」と総称する。
また、本発明の第1の実施形態及び本発明の第3の実施形態の塗料用組成物に含まれるポリウレタン、及び本発明の第2の実施形態及び本発明の第4の実施形態の塗料用組成物に含まれる(A)成分と(B)成分との反応で生成するポリウレタンを「本発明におけるポリウレタン」と称す場合がある。
【0039】
[抗菌性のメカニズム]
本発明の塗料用組成物を用いて形成された塗膜が抗菌性が優れたものとなる理由は定かでないが、本発明におけるポリウレタン中のジオール(I-1)に由来する構造単位(I-1)が親水性を示すため、塗膜表面に水分子の層を形成し細菌を付着しづらくさせる、または、付着しても水洗い等で表面から容易に剥離しやすくなるため、塗膜表面に細菌が付着し難くなることによると推察される。
【0040】
このようなメカニズムにより、本発明の塗料用組成物は、該塗料用組成物を用いて形成した厚さ50μmの塗膜について、JIS Z2801に規定される非繊維製品の抗菌性試験法に準拠して測定した、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性値が1.5以上というような、優れた抗菌性を示すものとなる。
【0041】
[抗菌活性を有する添加剤]
本発明の塗料用組成物は、抗菌活性を有する公知の添加剤を含有する組成物であってよいが、本発明におけるポリウレタン自体が抗菌活性を発現し、且つ、当該組成物のコストダウンや、当該組成物に要求される機械的特及び耐薬品性を良好に維持する観点から、抗菌活性を有する添加剤を実質的に含有しない組成物であってもよい。
なお、「実質的に含有しない」とは、「意図して含有させない」という意味であり、不可避的に含まれる場合は許容する意味である。
【0042】
[ポリウレタン]
本発明におけるポリウレタンは、本発明の第1の実施形態及び第3の実施形態の塗料用組成物の構成成分であり、本発明の第2の実施形態及び第4の実施形態の塗料用組成物中の(A)成分と(B)成分との反応で生成するものである。
本発明におけるポリウレタンは、後述するポリカーボネートポリオール(A)に由来する構造単位(A)、及び、後述するイソシアネート(B)に由来する構造単位(B)を含む。
【0043】
<構造単位(B)に対する構造単位(A)のモル比((A)/(B))>
本発明におけるポリウレタンにおいて、後述するイソシアネート(B)に由来する構造単位(B)に対する後述するポリカーボネートポリオール(A)に由来する構造単位(A)のモル比((A)/(B))の下限は、特に限定されるものではないが、得られる塗膜の硬度や、細菌低付着性の観点から1.0/5.0以上であることが好ましく、1.0/4.5以上であることがより好ましく、1.0/4.0以上であることがさらに好ましい。一方、前記モル比((A)/(B))の上限は、特に限定されるものではないが、得られる塗膜の強度の観点から1.0/0.5以下であることが好ましく、1.0/1.0以下であることがより好ましく、1.0/1.5以下であることがさらに好ましい。
上記の上限と下限は任意に組み合わせることができる。即ち、前記構造単位(B)に対する前記構造単位(A)のモル比((A)/(B))は、特に限定されるものではないが、1.0/5.0以上1.0/0.5以下が好ましく、1.0/4.5以上1.0/1.0以下がより好ましく、1.0/4.0以上1.0/1.5以下がさらに好ましい。
なお、前記構造単位(B)に対する前記構造単位(A)のモル比((A)/(B)))の値は、本発明におけるポリウレタンを製造する際のポリカーボネートポリオール(A)及びイソシアネート(B)の配合比から計算することができる。前記配合比が、最終的に得られたポリウレタンにおける前記構造単位(A)及び前記構造単位(B)の構成比と実質的に同一になるためである。
【0044】
<(B)成分に対する(A)成分のモル比((A)/(B))>
本発明におけるポリウレタンにおけると同様の理由から、本発明の第2の実施形態及び第4の実施形態の塗料用組成物における前記(B)成分に対する前記(A)成分のモル比((A)/(B))の下限は、特に限定されるものではないが、1.0/5.0以上であることが好ましく、1.0/4.5以上であることがより好ましく、1.0/4.0以上であることがさらに好ましい。一方、前記モル比((A)/(B))の上限は、特に限定されるものではないが、1.0/0.5以下であることが好ましく、1.0/1.0以下であることがより好ましく、1.0/1.5以下であることがさらに好ましい。
上記の上限と下限は任意に組み合わせることができる。即ち、前記(B)成分に対する前記(A)成分のモル比((A)/(B))は、特に限定されるものではないが、1.0/5.0以上1.0/0.5以下が好ましく、1.0/4.5以上1.0/1.0以下がより好ましく、1.0/4.0以上1.0/1.5以下がさらに好ましい。
【0045】
<ポリカーボネートポリオール(A)>
本明細書において、「ポリカーボネートポリオール」とは具体的には、分子内に2個以上の水酸基を有するポリカーボネートである。ポリカーボネートポリオールは、具体的には、分子内に異なる数の水酸基を有する2種以上のポリカーボネートの混合物であってもよいし、或いは、分子内に特定数の水酸基を有する1種のポリカーボネートの単独物であってもよい。中でも、前記ポリカーボネートポリオールとしては、分子内に2個以上の末端水酸基を有するポリカーボネートジオール、又は、分子内に2個の末端水酸基を有するポリカーボネートジオールと分子内に3個の末端水酸基を有するポリカーボネートポリオールの混合物が好ましい。
【0046】
本発明におけるポリカーボネートポリオールは、後述するジオールを含む多価アルコールと炭酸エステルを原料として、エステル交換触媒の存在下にエステル交換、重縮合を行うことにより製造することができる。
炭酸エステルとしては、例えば、アルキルカーボネート、アリールカーボネート、アルキレンカーボネートが挙げられ、より具体的には、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0047】
本発明の第1の実施形態及び第3の実施形態の塗料用組成物において、ポリカーボネートポリオール(A)は、本発明におけるポリウレタンを構成する構造単位(A)を形成するためのポリカーボネートポリオールである。即ち、本発明の第1の実施形態及び第3の実施形態の塗料用組成物において、本発明におけるポリウレタンは、ポリカーボネートポリオール(A)に由来する構造単位(A)を含む。
【0048】
本発明の第2の実施形態及び第4の実施形態の塗料用組成物において、ポリカーボネートポリオール(A)は、前記塗料用組成物を構成する(A)成分であり、ジオール(I-1)に由来する構造単位(I-1)及び炭素数3~12の3価~6価の分岐アルコール(I-2)に由来する構造単位(I-2)を含むポリカーボネートポリオールである。即ち、本発明の第2の実施形態及び第4の実施形態の塗料用組成物において、該塗料用組成物は、ジオール(I-1)に由来する構造単位(I-1)及び炭素数3~12の3価~6価の分岐アルコール(I-2)に由来する構造単位(I-2)を含むポリカーボネートポリオール(A)を(A)成分として含む。
【0049】
(ジオール(I-1))
本発明におけるジオール(I-1)は、前記構造単位(A)に含まれる構造単位(I-1)を形成するジオールである。
【0050】
本発明の第1の実施形態及び第3の実施形態の塗料用組成物において、この構造単位(I-1)は、得られた塗膜が抗菌性、耐薬品性、及び機械的特性に優れる観点から、下記式(1)で表されるオキシアルキレングリコール(I-1-1)に由来する構造単位(I-1-1)を含むことが好ましい。
【0051】
また、本発明の第2の実施形態及び第4の実施形態の塗料用組成物において、この構造単位(I-1)は、得られた塗膜が抗菌性、耐薬品性、及び機械的特性に優れる観点から、下記式(1)で表されるオキシアルキレングリコール(I-1-1)に由来する構造単位(I-1-1)を含む。
【0052】
【0053】
(式(1)中、mは2~4の整数を表し、RAは炭素数2~5の分岐を含んでいてもよい炭素鎖を表す。式(1)に含まれるm個のRAは同一であってもよく異なるものであってもよい。)
【0054】
本発明におけるポリカーボネートポリオール(A)において、ジオール(I-1)に由来する構造単位(I-1)中に含まれる前記構造単位(I-1-1)の含有割合の下限は、特に限定されるものではないが、得られた塗膜の抗菌性、耐薬品性、及び機械的特性の観点から、該構造単位(I-1)100質量%に対して、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。一方、前記構造単位(I-1-1)の含有割合の上限については、特に制限はなく100質量%であってもよい。
【0055】
オキシアルキレングリコール(I-1-1)としては、前記式(1)で表されるものであればよく、特に制限はないが、柔軟性、耐溶剤性の観点から、式(1)におけるRAの炭素数は2又は3であることが好ましく、2であることがより好ましい。なお、RAの炭素数2~5の分岐を含んでいてもよい炭素鎖としては、具体的には、炭素数2~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。
【0056】
オキシアルキレングリコール(I-1-1)としては、具体的には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコールが好ましいものとして挙げられる。これらのオキシアルキレングリコール(I-1-1)は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0057】
オキシアルキレングリコール(I-1-1)としては、特にジエチレングリコール及び/又はトリエチレングリコールを用いることが好ましく、ポリカーボネートポリオール(A)中のジオール(I-1)に由来する構造単位(I-1)の合計に占めるジエチレングリコールに由来する構造単位及びトリエチレングリコールに由来する構造単位の合計の含有割合は60質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に80質量%以上、とりわけ90質量%以上であることが、抗菌性及び耐薬品性の観点から好ましい。また、この含有割合の上限については、特に制限はなく100質量%であってもよい。
【0058】
特にオキシアルキレングリコール(I-1-1)としてジエチレングリコールとトリエチレングリコールを併用して用いることは、ポリカーボネートポリオール(A)鎖中の構造単位の規則性を乱すことで水素結合による凝集を防ぎ、得られた塗膜の柔軟性を高めることができるため、本発明に好ましい態様であり、その場合、ポリカーボネートポリオール(A)中のジエチレングリコールに由来する構造単位とトリエチレングリコールに由来する構造単位との割合は、質量比でジエチレングリコールに由来する構造単位:トリエチレングリコールに由来する構造単位=10:90~90:10、特に20:80~80:20であることが好ましく、30:70~70:30であることがより好ましく、40:60~60:40であることが特に好ましい。
【0059】
ポリカーボネートポリオール(A)は、本発明の塗料用組成物の使途や目的に応じて、所望の性能を損なわない範囲で、ジオール(I-1)に由来する構造単位(I-1)として、オキシアルキレングリコール(I-1-1)に由来する構造単位(I-1-1)の他、その他のジオールに由来する構造単位を含むものであってもよい。この場合、他のジオールとしては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の炭素数2~20の直鎖ジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール等の炭素数4~20の分岐ジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、4,4-ジシクロヘキシルジメチルメタンジオール、2,2’-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、4,4’-イソプロピリデンジシクロヘキサノール、ノルボルナン-2,3-ジメタノール等の炭素数6~20の環状ジオール、その他、イソソルビド、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(cas番号:1455-42-1)、2-(5-エチル-5-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキサン-2-イル)-2-メチルプロパン-1-オール(cas番号:59802-10-7)等のヘテロ原子を環内に有する環状ジオールなどが挙げられる。
【0060】
これらの他のジオールは、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよいが、前述の通り、オキシアルキレングリコール(I-1-1)に由来する構造単位(I-1-1)を含むことによる、得られた塗膜の抗菌性や耐薬品性を損なわない範囲で用いることができる。具体的には、ポリカーボネートポリオール(A)中の構造単位(I-1)の合計100質量%に占める他のジオールに由来する構造単位の含有割合は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0061】
(分岐アルコール(I-2))
本発明におけるポリカーボネートポリオール(A)は、前記構造単位(I-1)と共に、炭素数3~12の3価~6価の分岐アルコール(I-2)に由来する構造単位(I-2)を含むことが好ましく、構造単位(I-2)を含むことで、ポリカーボネートポリオール(A)に架橋構造を導入して、形成される塗膜の機械的特性を向上させることができる。
【0062】
この場合、ポリカーボネートポリオール(A)に含まれる構造単位(I-2)に対する構造単位(I-1)のモル比(I-1)/(I-2)の下限は、特に限定されるものではないが、ポリウレタン合成時の安定性の観点から、95.00/5.00以上であることが好ましく、96.00/4.00以上であることがより好ましい。一方、このモル比(I-1)/(I-2)の上限は、特に限定されるものではないが、架橋構造の導入による強度や耐久性の観点から99.99/0.01以下であることが好ましく、99.98/0.02以下であることがより好ましい。
上記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。即ち、本発明におけるポリカーボネートポリオール(A)において、前記構造単位(I-2)に対する前記構造単位(I-1)のモル比((I-1)/(I-2))は、特に限定されるものではないが、95.00/5.00以上99.99/0.01以下が好ましく、96.00/4.00以上99.98/0.02以下がさらに好ましい。
なお、前記構造単位(I-2)に対する前記構造単位(I-1)のモル比((I-1)/(I-2))の具体的な測定方法は、後述の実施例の項において詳細に説明する。
【0063】
前記炭素数3~12の3価~6価の分岐アルコール(I-2)としては、グリセロール、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ヘキサントリオール、1,2,4-ヘキサントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミン、トリス(ヒドロキシエチル)アミン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミン、ペンタエリトリトール、ジグリセロール、トリグリセロール、ポリグリセロール、ビス(トリメチロールプロパン)、トリス(ヒドロキシメチル)イソシアヌレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グルコースなどの糖類、ソルビトールなどの糖誘導体といったものが挙げられる。
本発明におけるポリカーボネートポリオール(A)には、これらの分岐アルコール(I-2)に由来する構造単位の1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
即ち、本発明におけるポリカーボネートポリオール(A)の原料多価アルコールとして用いる分岐アルコール(I-2)は1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0064】
(水酸基の平均官能基数)
本発明におけるポリカーボネートポリオール(A)の1分子中に含まれる水酸基の平均官能基数の下限は、特に限定されるものではないが、ポリウレタン化時の分子量が十分なものとなり、強度などの物性が良好となる観点から、1.80以上が好ましく、1.85以上がより好ましく、1.90以上がさらに好ましい。一方で、前記水酸基の平均官能基数の上限は、特に限定されるものではないが、ポリウレタン化時の架橋反応を抑止し、ハンドリング性を良好に維持する観点から、2.50以下が好ましく、2.20以下がより好ましく、2.05以下がさらに好ましい。
上記の上限下限は任意に組み合わせることができる。即ち、ポリカーボネートポリオール(A)の1分子中に含まれる水酸基の平均官能基数は、特に限定されるものではないが、1.80~2.50の範囲内にあることが好ましく、1.85~2.20の範囲内にあることがより好ましく、1.90~2.05の範囲内にあることがさらに好ましい。
ポリカーボネートポリオールの1分子中に含まれる水酸基の平均官能基数は、通常400MHz以上のNMR(核磁気共鳴スペクトル)装置による測定で確認することができる。
水酸基の平均官能基数の具体的な測定方法は、後述の実施例の項において詳細に説明する。
【0065】
(水酸基価)
本発明におけるポリカーボネートポリオール(A)の水酸基価の下限は、特に限定されるものではないが、ポリカーボネートポリオール(A)の粘度が高くなりすぎず、取扱い性に優れる観点から、22mgKOH/g以上が好ましく、28mgKOH/g以上がより好ましく、32mgKOH/g以上がさらに好ましい。一方、前記水酸基価の上限は、特に限定されるものではないが、最終的に得られるポリウレタンの柔軟性や低温特性などの物性を良好に維持できる観点から、450mgKOH/g以下が好ましく、225mgKOH/g以下がより好ましく、140mgKOH/g以下がさらに好ましい。
上記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。即ち、本発明におけるポリカーボネートポリオール(A)の水酸基価は、特に限定されるものではないが、22mgKOH/g以上450mgKOH/g以下が好ましく、28mgKOH/g以上225mgKOH/g以下がより好ましく、32mgKOH/g以上140mgKOH/g以下がさらに好ましい。
【0066】
(数平均分子量)
本発明におけるポリカーボネートポリオール(A)の水酸基価から求めた数平均分子量の下限は、特に限定されるものではないが、得られる塗膜の強度及び細菌低付着性の観点から250以上5,000以下が好ましく、500以上4,000以下がより好ましく、800以上3,500以下がさらに好ましい。
【0067】
なお、前記水酸基価及び数平均分子量の、後述の実施例の項において詳細に説明する。後掲の実施例の項に記載される通りである。
【0068】
本発明の第1の実施形態及び第3の実施形態の塗料用組成物におけるポリウレタンは、製造原料としてのポリカーボネートポリオール(A)の1種のみを用いたものであってもよく、繰り返し単位やそのモル比、物性等の異なるものを2種以上用いたものであってもよい。
また、本発明の第2の実施形態及び第4の実施形態の塗料用組成物は、(A)成分としてのポリカーボネートポリオール(A)を1種のみ含むものであってもよく、繰り返し単位やそのモル比、物性等の異なるものを2種以上含むものであってもよい。
【0069】
<イソシアネート(B)>
本発明の第1の実施形態及び第3の実施形態の塗料用組成物において、イソシアネート(B)は、本発明におけるポリウレタンを構成する構造単位(B)を形成するために使用される、イソシアネート基を少なくとも2つ有するイソシアネート系化合物である。即ち、発明の第1の実施形態及び第3の実施形態の塗料用組成物において、本発明におけるポリウレタンはイソシアネート(B)に由来する構造単位(B)を含む。
【0070】
本発明の第2の実施形態及び第4の実施形態の塗料用組成物において、イソシアネート(B)は、前記塗料用組成物を構成する(B)成分であり、且つ、イソシアネート基を少なくとも2つ有するイソシアネートである。即ち、本発明の第2の実施形態及び第4の実施形態の塗料用組成物において、前記塗料用組成物は、イソシアネート基を少なくとも2つ有するイソシアネート(B)を、(B)成分として含む。
【0071】
イソシアネート(B)は、イソシアネート基を2以上有するものであればよく、芳香族又は脂肪族、脂環族の各種公知のイソシアネート系化合物が挙げられる。
【0072】
例えば、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、トルエンジイソシアネート(2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート)、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、フェニレンジイソシアネート及びm-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート化合物;テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート及びダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1-メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1-メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及び1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。これらは適宜イソシアヌレート体となっていてもよい。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
これらの中でも得られるポリウレタンの物性のバランスに優れ、工業的に安価に多量に入手可能な観点から、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、トルエンジイソシアネート(2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート)が好ましく、中でも4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。或いはまた、得られるポリウレタンの耐候性に優れる観点から、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートが挙げられる。なおこれらはイソシアヌレート体であってもよい。
【0074】
<ポリカーボネートポリオール(A)以外のポリオール>
本発明の第1の実施形態及び第3の実施形態の塗料用組成物におけるポリウレタンを製造する際のポリウレタン形成反応においては、本発明におけるポリカーボネートポリオール(A)以外のポリオールを、物性に影響の無い範囲で併用してもよい。
また、本発明の第2の実施形態及び第4の実施形態の塗料用組成物は、その物性に影響の無い範囲で、(A)成分としてのポリカーボネートポリオール(A)以外のポリオールを含んでいてもよい。
【0075】
ここで、本発明におけるポリカーボネートポリオール(A)以外のポリオールとは、通常のポリウレタン製造の際に用いるものであれば特に限定されず、例えばポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリアルキレンエーテルグリコール、ポリカーボネートポリオール(A)以外のポリカーボネートポリオールが挙げられる。
本発明の第1の実施形態及び第3の実施形態の塗料用組成物において、本発明におけるポリウレタンの製造に当たり、ポリオール成分として、ポリカーボネートポリオール(A)以外のポリオールを用いる場合、全ポリオール成分中のポリカーボネートポリオール(A)の質量割合は、ポリカーボネートポリオール(A)を用いることによる効果を有効に得る観点から、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは98%以上である。
また、本発明の第2の実施形態及び第4の実施形態の塗料用組成物における全ポリオール成分中のポリカーボネートポリオール(A)の質量割合は、ポリカーボネートポリオール(A)を用いることによる効果を有効に得る観点から、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは98%以上である。
【0076】
<鎖延長剤>
本発明の第1の実施形態及び第3の実施形態の塗料用組成物におけるポリウレタンを製造する際のポリウレタン形成反応においては、鎖延長剤を用いてもよい。
また、本発明の第2の実施形態及び第4の実施形態の塗料用組成物は、ポリウレタン形成反応のための鎖延長剤を含んでいてもよい。
【0077】
鎖延長剤は、イソシアネート基と反応する活性水素を少なくとも2個有する低分子量化合物であり、ポリオール及びポリアミンからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物から選ばれる。
【0078】
その具体例としては、ポリオールとしては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の直鎖ジオール類;2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,4-ヘプタンジオール、1,4-ジメチロールヘキサン、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ダイマージオール等の分岐鎖を有するジオール類;ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のエーテル基を有するジオール類;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ジヒドロキシエチルシクロヘキサン等の脂環構造を有するジオール類、キシリレングリコール、1,4-ジヒドロキシエチルベンゼン、4,4’-メチレンビス(ヒドロキシエチルベンゼン)等の芳香族基を有するジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール類;等が挙げられる。
ポリアミンとしては、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン等のヒドロキシアミン類;エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、メチレンビス(o-クロロアニリン)、キシリレンジアミン、ジフェニルジアミン、トリレンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン、N,N’-ジアミノピペラジン等のポリアミン類;等が挙げられる。
【0079】
これらの鎖延長剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
これらの中でも得られるポリウレタンのソフトセグメントとハードセグメントの相分離性に優れることによる柔軟性と応力緩和性に優れ、工業的に安価に多量に入手可能な観点から、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の直鎖ジオールが好ましい。側鎖を有するジオールを用いるとポリウレタンのハードセグメントの凝集力が低下して機械物性等の諸物性が低下することもある。これらの直鎖ジオールの中では物性のバランスに優れる観点から1,4-ブタンジオールが最も好ましい。
【0081】
<鎖停止剤>
本発明の第1の実施形態及び第3の実施形態の塗料用組成物におけるポリウレタンを製造する際のポリウレタン形成反応においては、得られるポリウレタンの分子量を制御する目的で、必要に応じて1個の活性水素基を持つ鎖停止剤を少量添加使用することもできる。
また、本発明の第2の実施形態及び第4の実施形態の塗料用組成物は、同様の目的で、鎖停止剤を含んでいてもよい。
【0082】
鎖停止剤としては、一個の水酸基を有するメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族モノオール類が例示される。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
<触媒>
本発明の第1の実施形態及び第3の実施形態の塗料用組成物におけるポリウレタンを製造する際のポリウレタン形成反応においては、ウレタン化反応のためにウレタン化反応触媒を使用してもよい。
また、本発明の第2の実施形態及び第4の実施形態の塗料用組成物は、ポリウレタン形成反応のためにウレタン化反応触媒を含んでいてもよい。
【0084】
ウレタン化反応触媒としては、例えば、有機スズ系化合物、有機亜鉛系化合物、有機ビスマス系化合物、有機チタン系化合物、有機ジルコニウム系化合物、アミン系化合物等を挙げることができる。ウレタン化反応触媒は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ウレタン化反応触媒を使用する場合、該触媒の配合量は、特定に限定されるものではないが、通常は、製造されるポリウレタンの質量に対して、0.1~100質量ppmの範囲内でその使用量を調整することができる。
【0085】
前記ウレタン化反応触媒の中でも、有機スズ系化合物が好ましい。有機スズ系化合物としては、例えば、スズ含有アシレート化合物、スズ含有メルカプトカルボン酸塩等が挙げられ、具体的には、オクチル酸スズ、モノメチルスズメルカプト酢酸塩、モノブチルスズトリアセテート、モノブチルスズモノオクチレート、モノブチルスズモノアセテート、モノブチルスズマレイン酸塩等の、国際公開第2020/218507号に開示されている化合物が挙げられる。
【0086】
脂肪族イソシアネート化合物及び/又は脂環族イソシアネート化合物をイソシアネート化合物原料として使用する場合は、芳香族イソシアネート化合物より反応性が低いため、スズ系等の触媒を使用するのが好ましく、特に反応性の低い4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを用いる場合は触媒を使用することがさらに好ましい。
【0087】
特に反応性の低い4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを用いる場合は触媒を使用した場合でも、重合後の硬化発現が遅いので、20~120℃の温度で10時間以上熟成させるのが好ましく、100~120℃で10時間以上熟成させるのがさらに好ましい。熟成を十分に実施しないとポリウレタンの重合度が十分に上がらず、諸物性が悪化することがある。
【0088】
<本発明におけるポリウレタンの製造方法>
本発明の第1の実施形態及び第3の実施形態の塗料用組成物におけるポリウレタンを製造する方法としては、一般的に実験ないし工業的に用いられる製造方法が使用でき、具体的には、後述する一段法又は後述する二段法が挙げられる。
【0089】
本発明におけるポリウレタンの製造に当たり、溶媒を用いてもよいし、用いなくてもよい。しかしながら、成形時に溶媒を除去する工程が必要となるため、溶媒を用いることは工業的に有利ではない。また溶媒は環境への負荷が大きいため、反応は無溶媒(溶媒の不存在下)で行うことがより好ましい。
【0090】
ポリウレタンの製造方法の一例として、例えば国際公開公報第2018/088575号に開示されるように、ポリカーボネートポリオール(A)を含むポリオール成分と、イソシアネート(B)とをワンショット法で連続的に反応(一段法)させることにより、本発明におけるポリウレタンを効率よく製造することができる。
また、製造方法の別の一例として、例えば国際公開公報第2018/088575号に開示されるように、ポリカーボネートポリオール(A)を含むポリオール成分と、過剰のイソシアネート(B)とをまず反応させて末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを製造し、さらに鎖延長剤と反応させて(二段法)重合度を上げて、本発明におけるポリウレタンを製造することもできる。
【0091】
(一段法)
本発明におけるポリウレタンの製造における一段法は、ワンショット法ともよばれ、工業的な製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば単軸又は多軸スクリュー型押出機、あるいはスタティックミキサーに、ポリウレタン原料として、ポリカーボネートポリオール(A)及びイソシアネート(B)、並びに必要に応じて他の成分を、同時又はほぼ同時に連続的に供給して40~300℃の範囲内、好ましくは80~220℃の範囲内で連続溶融重合させて、ポリウレタンを製造する方法が挙げられる。
【0092】
本発明におけるポリウレタンを製造する際にポリカーボネートポリオール(A)とイソシアネート(B)を溶媒系で急速攪拌して十分に混合した後、前記の単軸又は多軸スクリュー型押出機、あるいはスタティックミキサーに連続的に供給してポリウレタンを連続的に製造する方法は、反応性の低い脂肪族イソシアネート化合物及び/又は脂環族イソシアネート化合物の場合は有効である。
【0093】
前記一段法は、押出機に反応成分のすべてを同時又はほぼ同時に供給するだけで、極めて簡単に目的とするポリウレタンを連続して製造することができるので好ましい。
【0094】
(二段法)
本発明におけるポリウレタンの製造における二段法は、プレポリマー法ともよばれ、工業的な製造方法としては、特に限定されるものではないが、以下の方法が挙げられる。
(a) ポリウレタン原料として、予めポリカーボネートポリオール(A)と、過剰のイソシアネート(B)とを、イソシアネート(B)/ポリカーボネートポリオール(A)の反応当量比が1を超える量から10.0以下で反応させて、分子鎖末端がイソシアネート基であるプレポリマーを製造し、次いでこれに、後述する公知の鎖延長剤を加えることによりポリウレタンを製造する方法。
(b) ポリウレタン原料として、予めイソシアネート(B)と、過剰のポリカーボネートポリオール(A)とを、イソシアネート(B)/ポリカーボネートポリオール(A)の反応当量比が0.1以上から1.0未満で反応させて分子鎖末端が水酸基であるプレポリマーを製造し、次いでこれに鎖延長剤として、末端がイソシアネート基のイソシアネート(B)を反応させてポリウレタンを製造する方法。
【0095】
二段法は無溶媒でも溶媒共存下でも実施することができる。
二段法によるポリウレタンのより具体的な製造方法としては、以下に記載の(1)~(3)のいずれかの方法を用いることができる。
方法(1):溶媒を使用せず、まず直接イソシアネート(B)とポリカーボネートポリオール(A)とを反応させてプレポリマーを合成し、そのまま鎖延長反応を行い、ポリウレタンを得る。
方法(2):(1)の方法で合成したプレポリマーを溶媒に溶解し、次いで鎖延長反応を行い、ポリウレタンを得る。
方法(3):溶媒存在下でイソシアネート(B)とポリカーボネートポリオール(A)とを反応させ、プレポリマーを合成し、その後、溶媒存在下で鎖延長反応を行い、ポリウレタンを得る。
【0096】
二段法による場合は、上述した方法(2)及び(3)は、鎖延長反応を行うにあたり、後述する公知の鎖延長剤を溶媒に溶かしたり、溶媒に同時にプレポリマー及び鎖延長剤を溶解したりするなどの方法により、ポリウレタンを溶媒と共存する形で得ることができるので、本発明の塗料用組成物の製造に好適である。
【0097】
二段法による場合は、上述した方法(1)は、溶融成形性及び力学的特性に優れるポリウレタンを製造する観点から、実質的に溶媒の不存在下で溶融重合するものであり、多軸スクリュー型押出機を用いる連続溶融重合法がより好ましい。連続溶融重合法で得られたポリウレタンは、一般に、重合温度40~300℃の範囲内で、固相重合で得られたポリウレタンに比べて、強度の点において優れている。方法(1)で得られたポリウレタンを、溶媒に溶解して、本発明の塗料用組成物として用いることができる。
【0098】
(反応モル比)
上述した一段法及び二段法のいずれにおいても、本発明におけるポリウレタンを製造する際のウレタン化反応には、イソシアネート(B)に由来する構造単位(B)に対するポリカーボネートポリオール(A)に由来する構造単位(A)のモル比((A)/(B))が前述の好適範囲となるようにした上で、ポリカーボネートポリオール(A)とイソシアネート(B)のモル比が、得られたポリウレタンのポリカーボネートポリオール(A):イソシアネート(B):鎖延長剤としてのジオール=1:2~6:1~5のモル比となるように反応させる。この際、原料のモル比は生成物のモル比に反映される。
【0099】
原料のモル比において、ポリカーボネートポリオール(A)のモル量(Ma)と鎖延長剤としてジオールのモル量(Mb)の和(Ma+Mb)に対する前記イソシアネート(B)のモル量(Mc)の比、(Mc)/(Ma+Mb)が0.95~1.10の範囲となるようにこれらを用いることが好ましい。
(Mc)/(Ma+Mb)モル比が前記下限以上であれば得られるポリウレタンの強度が十分なものとなり、前記上限以下であれば得られるポリウレタンの柔軟性が十分なものとなり、好ましい。
【0100】
従って、本発明の第1の実施形態及び第3の実施形態の塗料用組成物は、ポリカーボネートポリオール(A)、イソシアネート(B)、及び鎖延長剤を上記のようなモル比で含有することが好ましい。
【0101】
<分子量>
本発明におけるポリウレタンの分子量については、特に制限はないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)として5万~50万であることが好ましく、10万~30万であることがより好ましい。重量平均分子量(Mw)が前記下限よりも小さいと十分な強度や硬度が得られない場合があり、前記上限よりも大きいと加工性などハンドリング性を損なう傾向がある。
【0102】
[有機溶剤]
本発明の塗料用組成物には、本発明の塗料用組成物を望ましい粘度に調整するために、必要に応じて有機溶剤を配合することができる。
【0103】
有機溶剤の例として、例えば以下の化合物が挙げられる。
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸メトキシエチル等のエステル系化合物;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系化合物;トルエン、キシレン等の芳香族化合物;ペンタン、ヘキサン、石油ナフサ等の脂肪族化合物;イソプロピルアルコール、イソブタノール、n-ブタノール等のアルコール系化合物;1-メトキシプロパノール、1-メトキシプロパノールアセテート等のプロピレングリコール系化合物等。
これらの有機溶剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0104】
有機溶剤の使用量は特に制限はないが、通常、有機溶剤は、塗料用組成物中の固形分濃度が5~100質量%程度となるように用いられる。ここで、塗料用組成物中の固形分濃度とは、塗料用組成物中の有機溶剤以外の成分の合計の濃度である。
【0105】
[添加剤]
本発明の塗料用組成物には、レベリング剤、消泡剤、沈降防止剤、潤滑剤、研磨剤、防錆剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤などの添加剤を加えてもよい。
【0106】
〔塗膜〕
本発明の塗膜は、本発明の塗料用組成物を用いて形成された、優れた抗菌性、機械的特及び耐薬品性を有する塗膜である。
【0107】
本発明の塗料用組成物により塗膜が形成される成形品としては、特に限定されず、例えば、ポリプロピレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、PET系樹脂、PBT系樹脂等のポリエステル系樹脂;ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂、AES(アクリロニトリルエチレンプロピレンジエンスチレン)樹脂、ナイロン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エポキシ系樹脂等の公知の熱可塑性樹脂又は公知の熱硬化性樹脂;PBT(ポリブチレンレテフタレート)/PET(ポリエチレンテレフタレート)等の公知のアロイ樹脂;鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn-Al、Zn-Ni、Zn-Fe等)メッキ鋼等の金属材料:ガラス等などを基材として含む各種成形品が挙げられる。その他の基材として、モルタル、コンクリート、木材、窯業系材料等を基材として含む成形品であってもよい。
【0108】
これらの成形品に本発明の塗料用組成物を用いて塗膜を形成するには、本発明の塗料用組成物を成形品(基材)の表面に塗付し、加熱により乾燥ないしは硬化(加熱硬化)させる方法を用いることができる。
即ち、本発明の第1の実施形態及び第3の実施形態の塗料用組成物においては、加熱により乾燥させ、塗膜を形成することができる。また、本発明の第2の実施形態及び第4の実施形態の塗料用組成物においては、加熱硬化させ、塗膜を形成することができる。
【0109】
塗膜の膜厚は、硬化後の塗膜の厚さで3~500μmの範囲であることが好ましい。
塗料用組成物の塗布方法としては、ハケ塗り、スプレーコート、ディップコート、スピンコート、フローコート等の方法が用いられる。
【0110】
加熱は、公知の加熱手段により行うことができる。加熱手段としては、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を使用できる。
【0111】
本発明の第2の実施形態及び第4の実施形態の塗料用組成物において、加熱硬化を行う場合の加熱温度は、特に制限されるものではないが、50~180℃程度が好ましい。加熱時間は、特に制限されるものではないが、1~60分間程度が好ましい。
【0112】
本発明の第2の実施形態及び第4の実施形態の塗料用組成物の塗装後、加熱硬化を行う前に、塗膜欠陥の発生を防止するために、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件で、予備加熱、エアブロー等を行ってもよい。
予備加熱の温度は、30~100℃程度が好ましい。予備加熱の時間は、30秒~15分間程度が好ましい。
エアブローは、通常、塗装面に30~100℃程度の温度に加熱された空気を30秒~15分間程度吹き付けることにより行うことができる。
【0113】
本発明の第1の実施形態及び第3の実施形態の塗料用組成物においては、塗装後、真空条件下及び/又は大気圧下で、30~100℃で1分~20時間時間程度、加熱乾燥することで塗膜を形成することができる。
【0114】
塗膜を乾燥又は加熱硬化させた後、塗膜の硬度を高めるために、養生(保管)を行うことができる。養生条件は、例えば0~60℃で1~10日間程度とすることができる。
【0115】
〔積層体〕
本発明の積層体は、基材と、該基材の少なくとも一方の面の少なくとも一部に積層された本発明の塗料用組成物を用いて形成された塗膜とを有する積層体である。
【0116】
本発明の積層体を得る方法としては、特に限定されないが、例えば、基材の一方又は双方の表面の少なくとも一部に、前述の本発明の塗料用組成物を、公知の方法を用いて塗布した後、さらに公知の方法を用いて硬化することにより、塗膜を形成する方法(製造方法1)が挙げられる。
或いは又、本発明の積層体を得る他の方法としては、基材の一方又は双方の表面の少なくとも一部に、前述の本発明の塗料用組成物を用いて製造されたポリウレタンを含む塗料又はコーティング剤を公知の方法を用いて塗布した後、さらに公知の方法を用いて硬化又は乾燥することにより、塗膜を形成する方法(製造方法2)が挙げられる。
或いは又、本発明の積層体を得る他の方法としては、基材の一方又は双方の表面の少なくとも一部に、前述の本発明の塗料用組成物を用いて製造されたポリウレタンよりなるフィルム又はシートを、公知の方法を用いて接着する方法(製造方法3)が挙げられる。
上述した方法の中でも、積層体の層間の密着性を高める観点から、製造方法1が好ましい。
【0117】
本発明の積層体は、前記基材上に本発明の塗料用組成物を用いて製造された塗膜が形成されたものであれば特に制限されないが、前記基材以外の層及び/又は前記塗膜以外の層を、前記基材と前記塗膜との間に有していてもよいし、その外側に有していてもよい。また、本発明の積層体は、基材や前記塗膜を複数層有していてもよい。
【0118】
本発明の積層体に用いることができる基材としては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、PET系樹脂、PBT系樹脂等のポリエステル系樹脂;ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂、AES(アクリロニトリルエチレンプロピレンジエンスチレン)樹脂、ナイロン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エポキシ系樹脂等の公知の熱可塑性樹脂又は公知の熱硬化性樹脂;PBT(ポリブチレンレテフタレート)/PET(ポリエチレンテレフタレート)等の公知のアロイ樹脂;鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn-Al、Zn-Ni、Zn-Fe等)メッキ鋼等の金属材料:ガラス等が挙げられる。これらの中でも、公知の熱可塑性樹脂、公知の熱硬化性樹脂、又は公知のアロイ樹脂が好ましい。また、これらの基材の形状は、特に限定されるものではなく、フィルム状、シート状等の平坦なものであってもよく、種々の形状に成形されたものであってもよい。
【0119】
本発明の積層体に用いることができる基材の厚さは、特に限定されないが、10μm以上5mm以下が好ましく、20μm以上1mm以下がより好ましく、30μm以上500μm以下がさらに好ましく、50μm以上100μm以下が特に好ましい。基材の厚さが薄過ぎると、積層体の強度や加工性が不足する。基材の厚さが厚過ぎると射出成形時の金型への追従性が劣ることになる。
【0120】
本発明の積層体において、本発明の塗料用組成物を用いて形成された塗膜の厚さは、特に限定されないが、10μm以上1000μm以下が好ましく、20μm以上500μm以下がより好ましく、30μm以上100μm以下がさらに好ましい。この塗膜の厚さが厚すぎると、積層体が屈曲されるような使用条件下において塗膜が基材から剥離しやすくなる傾向があり、また、薄過ぎると、塗膜自体の強度が不足したり、塗膜が本来有している機能を積層体に十分に付与できないおそれがある。
【実施例0121】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
【0122】
[評価方法]
以下の実施例及び比較例においては、下記の方法により各種物性を測定した。
【0123】
<ポリカーボネートポリオール中の構造単位(II)に対する構構造単位(I)のモル比:(I)/(II)>
実施例及び比較例で使用したポリカーボネートポリオールをCDCl3に溶解して、核磁気共鳴スペクトル測定装置(装置名:ECZ-400、日本電子株式会社製、共鳴周波数:400MHz)を用い、測定温度30℃、積算回数64回の条件で、1H-NMR測定を行った。
得られた1H-NMR測定結果から、3.8ppm付近に存在する構造単位(I)中の4Hプロトンと、構造単位(II)中の4Hプロトンのピークの積分値(I1)と、3.6ppm付近に存在する、構造単位(II)中の4Hプロトンのピークの積分値(I2)から、下記式を用いて、構造単位(II)に対する構造単位(I)のモル比((I)/(II))を求めた。
モル比((I)/(II))=(I1-I2)/I2
【0124】
<構造単位(B)に対する構造単位(A)のモル比:(A)/(B)>
構造単位(B)に対する構造単位(A)のモル比((A)/(B))は、ポリウレタンの製造に供したポリカーボネートポリオール(A)及びイソシアネート(B)の組成比(モル比)から計算した。
【0125】
<ポリカーボネートポリオールの数平均分子量(Mn)>
実施例及び比較例で使用したポリカーボネートポリオールをCDCl3に溶解して、核磁気共鳴スペクトル測定装置(装置名:ECZ-400、日本電子株式会社製、共鳴周波数:400MHz)を用い、測定温度30℃、積算回数64回の条件で、1H-NMR測定を行った。得られた磁気共鳴スペクトルの積分値から、ポリカーボネートポリオールの数平均分子量(Mn)を算出した。
【0126】
<ポリカーボネートポリオールの水酸基価>
JIS K1557-1に準拠して、アセチル化試薬を用いた方法にてポリカーボネートポリオールの水酸基価を測定した。
【0127】
<ポリカーボネートポリオールの1分子中の水酸基の平均官能基数>
上述した方法で測定したポリカーボネートポリオールの数平均分子量(Mn)及び水酸基価から、下記式を用いて、ポリカーボネートポリオールの1分子中の水酸基の平均官能基数を算出した。
ポリカーボネートポリオールの1分子中の水酸基の平均官能基数=[数平均分子量(Mn)×水酸基価]/[1000×(KOHの分子量)]
【0128】
<ポリウレタンの重量平均分子量(Mw)>
実施例及び比較例で得られたポリウレタンを、臭化リチウムを含むジメチルアセトアミドに濃度が0.14質量%になるように溶解して、これをGPC測定用試料とした。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定装置(装置名:HPLC-8220GPC、東ソー(株)製)を用いて、下記GPC測定条件により、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を測定した。
(GPC測定条件)
カラム :TSKgel GMHxL-L
(7.8mmID×300mmL×2本(直列接続))
試料チャージ量:100μL
溶離液 :THF(テトラヒドロフラン)
流速 :0.8mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI(示差屈折計)
【0129】
<機械的特性試験>
塗膜の機械的特性の指標として、下記の方法を用いて、ポリウレタンの試験片の引張破断強度を測定した。
実施例及び比較例で得られたポリウレタンの溶液を、クリアランスが500μmのアプリケーターを用いて、厚さ0.1mmのフッ素樹脂シート(商品名:フッ素テープ「ニトフロン900」、日東電工株式会社製)上に塗布し、温度80℃で5時間乾燥して溶剤(DMF)を乾燥除去させた後、更に23℃、55%RHの恒温恒湿下で12時間以上静置して、フッ素樹脂シートの表面にポリウレタン塗膜が形成された積層フィルムを得た。乾燥後のポリウレタン塗膜の厚みは50μmであった。
得られた積層フィルムからポリウレタン塗膜を剥離した後、短冊状のポリウレタンフィルム(長さ70mm、幅10mm、厚さ50μm)を切り出し、これを引張試験用の試料片とした。
【0130】
この試験片について、JIS K6301(2010)に準じ、万能卓上試験機(株式会社島津製作所製、製品名「万能卓上試験機 AGX-1kNX」)を用いて、チャック間距離30mm、引張速度200mm/分にて、温度23℃(相対湿度55%)の条件下で引張試験を実施した。試験片が破断した時点の応力(引張破断強度)を測定し、以下の基準に従い判定した。
(判定基準)
◎:15MPa以上
〇:10MPa以上、15MPa未満
×:10MPa未満
【0131】
<耐薬品性試験>
塗膜の耐薬品性の指標として、下記の方法を用いて、ポリウレタンの試験片をオレイン酸又はエタノールに浸漬したときの質量変化率を測定した。
実施例及び比較例で得られたポリウレタンの溶液を、クリアランスが500μmのアプリケーターを用いて、厚さ0.1mmのフッ素樹脂シート(商品名:フッ素テープ「ニトフロン900」、日東電工株式会社製)上に塗布し、温度80℃で5時間乾燥して溶剤(DMF)を乾燥除去することにより、フッ素樹脂シートの表面にポリウレタン塗膜が形成された積層フィルムを得た。乾燥後のポリウレタン塗膜の厚みは50μmであった。
得られた積層フィルムからポリウレタン塗膜を剥離した後、正方形状のポリウレタンフィルム(縦3cm、横3cm、厚さ50μm)を切り出し、これを耐薬品性試験用の試験片とした。
【0132】
(耐オレイン酸性試験)
精密天秤を用いて耐薬品性試験用試験片の質量を測定した後、試験溶媒としてオレイン酸50mLを入れた容量250mLのガラス瓶に該試験片を浸漬して、窒素雰囲気下の恒温槽にて温度80℃で16時間静置した。試験後、試験片を取り出して表裏を紙製ワイパーで軽く拭いた後、精密天秤で質量測定を行い、試験前後の試験片の質量変化から質量変化率(増加率)を算出し、以下の基準に従って判定した。
(判定基準)
◎:質量変化率が2.5%未満
〇:質量変化率が2.5%以上10%未満
×:質量変化率が10%以上
【0133】
(耐エタノール性試験)
精密天秤を用いて耐薬品性試験用試験片の重量を測定した後、試験溶媒としてエタノール50mLを入れた内径10cmφのガラス製シャーレに投入して約23℃の室温にて1時間浸漬した。試験後、試験片を取り出して表裏を紙製ワイパーで軽く拭いた後、精密天秤で質量測定を行い、試験前後の試験片の質量変化から質量変化率(増加率)を算出し、以下の基準に従って判定した。
(判定基準)
◎:質量変化率が2.5%未満
〇:質量変化率が2.5%以上10%未満
×:質量変化率が10%以上
【0134】
<抗菌性試験>
塗膜の抗菌性の指標として、下記の方法に従い、抗菌性試験用の試料片を作成した。
実施例及び比較例で得られたポリウレタンの溶液を、クリアランスが500μmのアプリケーターを用いて、厚さ0.1mmのフッ素樹脂シート(商品名:フッ素テープ「ニトフロン900」、日東電工株式会社製)上に塗布し、温度80℃で5時間乾燥して溶剤(DMF)を乾燥除去することにより、フッ素樹脂シートの表面にポリウレタン塗膜が形成された積層フィルムを得た。乾燥後のポリウレタン塗膜の厚みは50μmであった。
得られた積層フィルムからウレタン塗膜を剥離した後、正方形状のウレタンフィルム(縦10cm、横10cm、厚さ50μm)を切り出し、これを抗菌性試験用の試料片とした。
【0135】
(耐黄色ブドウ球菌抗菌性試験)
JIS Z2801に準じて、下記の手順で、耐黄色ブドウ球菌の抗菌性試験を行った。
抗菌性試験用試料片に黄色ブドウ球菌の試験液0.4mlを接種した後、被覆フィルムを被せた。次いで、菌接種後の前記樹脂試料片を、温度35±1℃、湿度90%RH以上の環境下で24時間静置(接触)させた。24時間後に、前記試料片から菌体を回収し、プラーク法にて抗菌活性値を測定し、以下の基準に従って判定した。
なお、本抗菌性試験のコントロールサンプル(標準サンプル)には、市販のポリエチレンフィルムを用いた。
(判定基準)
×:抗菌活性値が1.0未満
〇:抗菌活性値が1.0以上1.5未満
◎:抗菌活性値が1.5以上
【0136】
(耐大腸菌抗菌性試験)
抗菌性試験用の試料片を用いてJIS Z2801に準じて、下記の手順で、大腸菌の抗菌性試験を行った。
抗菌性試験用試料片に大腸菌の試験液0.4mlを接種した後、被覆フィルムを被せた。次いで、菌接種後の前記樹脂試料片を、温度35±1℃、湿度90%RH以上の環境下で24時間静置(接触)させた。24時間後に、前記試料片から菌体を回収し、プラーク法にて抗菌活性値を測定し、以下の基準に従って判定した。
なお、本抗菌性試験のコントロールサンプル(標準サンプル)には、市販のポリエチレンフィルムを用いた。
(判定基準)
×:抗菌活性値が0.1未満
〇:抗菌活性値が0.1以上0.2未満
◎:抗菌活性値が0.2以上
【0137】
[原材料]
実施例及び比較例で使用した化合物の略号は以下の通りである。
PCD1:ジエチレングリコール単位とトリエチレングリコール単位とトリメチロールプロパン単位とを含む共重合ポリカーボネートポリオール(数平均分子量3,005、水酸基価37.3mgKOH/g、1分子中の水酸基の平均官能基数2.003、ジエチレングリコール単位/トリエチレングリコール単位=80/20[モル比])(商品名:DT3020L:、三菱ケミカル株式会社製)
PCD2:ヘキサメチレンカーボネートジオール(数平均分子量2,026)(商品名:T6002、東ソー株式会社製)
PEP1:ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量2,002)(商品名:PTMG2000、三菱ケミカル株式会社製)
MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(東ソー株式会社製)
1,4BG:1,4-ブタンジオール(三菱ケミカル株式会社製)
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド(超脱水グレード)(富士フイルム和光純薬株式会社製)
U-830:ジオクチル錫モノデカネート(商品名:ネオスタンU-830、日東化成(株)製)
【0138】
[実施例1]
(ポリウレタン溶液(U-1)の製造と評価)
60℃のオイルバス上に、熱電対、冷却管及び撹拌装置を具備したセパラブルフラスコ(反応容器)を設置し、予め80℃に加温したPCD1を85.5g、1,4BGを5.1g、反応溶媒としてDMF258.7gを入れ、次いで、反応容器内部を窒素置換した後、MDIを19.5g添加し、反応容器内を窒素雰囲気下に維持したまま、60rpmで撹拌しながら1時間程度で反応容器内の液温が70℃になるように昇温した。70℃に到達した後、ウレタン化反応触媒としてU-830を0.015g添加し、液温70℃を維持しながらさらに2時間程度撹拌した。その後、MDIを少量ずつ添加して、反応容器内に生成した重合物(ポリウレタン)の分子量を調整した。この時、添加したMDIの量は3.7gであった。MDIの添加後、さらに70℃で1時間撹拌し、重量平均分子量153,500のポリウレタンの溶液を得て、これをポリウレタン溶液「U-1」とした。このポリウレタン溶液「U-1」を用いて前述の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0139】
[比較例1及び2]
(ポリウレタン溶液(U-2、U-3)の製造と評価)
実施例1におけるポリカーボネートポリオール(A)の種類と配合量、及び、他の原料の配合量を表1に記載のとおりに変更した以外は実施例1と同様の条件を用いて、ポリウレタンの溶液を得、それぞれポリウレタン溶液「U-2」及び「U-3」とした。得られたポリウレタン溶液「U-2」及び「U-3」を用いて前述の評価を行った。物性評価結果を表1に示す。
【0140】
【0141】
表1より次のことが分かる。
実施例1のポリウレタン塗膜は、機械的特性と耐薬品性に優れ、さらに抗菌活性を有する添加剤を使用せずに高い抗菌活性値を示している。
即ち、本発明の塗料用組成物は、機械的特性、耐薬品性、及び抗菌性が要求されるコーティング用途において好適に用いることができる。
【0142】
一方、比較例1のポリウレタン塗膜は、ポリカーボネートポリオール(A)において構造単位(A)が、構造単位(I-1)を含まないため、抗菌性が低位であり、また耐薬品性(オレイン酸)が不十分であり、コーティング剤としての適性が十分とはいえなかった。
また、比較例2のポリウレタン塗膜は、ポリカーボネートポリオール(A)において構造単位(A)が、構造単位(I-1)を含まないため、抗菌性が低位であり、また機械的特性と耐薬品性が不十分であり、コーティング剤としての適性が十分とはいえなかった。
本発明の塗料用組成物、前記塗料用組成物を用いた塗膜、及び前記塗膜を含む積層体は、上述したように、得られた塗膜が抗菌性、機械的特性及び耐薬品性に優れることから、例えば、自動車内装用部材、自動車外装用部材、パソコンや携帯電話等の筐体や表示窓等の各種部品、家具用外装材、内装建材、外装建材、家屋の内装面化粧材等、各種用途に好適に使用することができる。その中でも、特に自動車内装用部材に好適である。