(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057452
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】鉱石装入用シュートのダンパー構造
(51)【国際特許分類】
B07B 1/46 20060101AFI20240417BHJP
B07B 1/28 20060101ALI20240417BHJP
B01J 4/00 20060101ALI20240417BHJP
C22B 1/00 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
B07B1/46 K
B07B1/46 Z
B07B1/28 Z
B01J4/00 105A
C22B1/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164206
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 明彦
(72)【発明者】
【氏名】永元 良治
【テーマコード(参考)】
4D021
4G068
4K001
【Fターム(参考)】
4D021AA03
4D021CA07
4D021DA01
4D021EA05
4G068AA01
4G068AB22
4G068AC20
4G068AD01
4G068AF01
4G068AF22
4G068AF29
4K001BA01
4K001CA02
(57)【要約】
【課題】長期にわたって振動スクリーンへの鉱石接触による損傷を低減し、点検補修に要する期間を短縮することができる鉱石装入用シュートのダンパー構造を提供する
【解決手段】鉱石15の分級において、鉱石15を振動スクリーン10へ装入する時に通過させる鉱石装入用シュート20のダンパー構造30であって、鉱石装入用シュート20の排出口21の少なくとも一部を回動可能な状態で覆うダンパー本体31を備え、ダンパー本体31の内側にはライナープレート32が施され、ダンパー本体31の外側にはスティフィナー33が形成されるとともに、鉱石装入用シュート20とダンパー本体31とを接続するダンパー脱落防止チェーン34が設置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱石の分級において、該鉱石を振動スクリーンへ装入する時に通過させる鉱石装入用シュートのダンパー構造であって、
前記鉱石装入用シュートの排出口の少なくとも一部を回動可能な状態で覆うダンパー本体を備え、
前記ダンパー本体の内側にはライナープレートが施され、
前記ダンパー本体の外側にはスティフィナーが形成されるとともに、前記鉱石装入用シュートと前記ダンパー本体とを接続するダンパー脱落防止チェーンが設置されていることを特徴とする鉱石装入用シュートのダンパー構造。
【請求項2】
前記ダンパー本体が前記鉱石装入用シュートの排出口を覆った状態で、鉱石の通り道分の隙間を有していることを特徴とする請求項1に記載の鉱石装入用シュートのダンパー構造。
【請求項3】
前記隙間は、5~10cmであることを特徴とする請求項2に記載の鉱石装入用シュートのダンパー構造。
【請求項4】
前記ダンパー本体の外側には、さらにバランスウェイトが設置されていることを特徴とする請求項3に記載の鉱石装入用シュートのダンパー構造。
【請求項5】
前記ダンパー本体の内側下部には方向変更板が備えられていることを特徴とする請求項3に記載の鉱石装入用シュートのダンパー構造。
【請求項6】
前記ダンパー本体による前記鉱石の排出箇所付近に水を噴射するスプレーノズルが前記鉱石装入用シュートに設けられていることを特徴する請求項5に記載の鉱石装入用シュートのダンパー構造。
【請求項7】
前記ライナープレートが、耐摩耗性鋼板であることを特徴とする請求項6に記載の鉱石装入用シュートのダンパー構造。
【請求項8】
前記スティフィナーは、前記ダンパー本体の外側に間隔を隔てて形成された複数本のスティフィナーであることを特徴とする請求項7に記載の鉱石装入用シュートのダンパー構造。
【請求項9】
前記スティフィナーは、その厚みが3~15mm、高さが25~75mm、その相互間隔が100~160mmであることを特徴とする請求項8に記載の鉱石装入用シュートのダンパー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱石装入用シュートのダンパー構造に関し、より詳しくは、ニッケル酸化鉱石の分級のための振動スクリーンに鉱石を装入する鉱石装入用シュートのダンパー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
低品位なニッケル酸化鉱からのニッケルの回収方法として、硫酸を用いた高圧酸浸出(HPAL:High Pressure Acid Leaching)法がある。この方法は、乾燥及び焙焼工程等の乾式処理工程を含まず、一貫した湿式工程からなるので、エネルギー的及びコスト的に有利であるとともに、ニッケル品位を50重量%程度まで向上させたニッケル・コバルト混合硫化物を得ることができるという利点を有している。
【0003】
低品位ニッケル鉱を利用するHPALプラントにおいては、原料であるニッケル原料鉱石が鉱山から運搬、供給される。この中には大粒径鉱石が含まれており、ポンプ等で流送する際に障害となる。また、大粒径鉱石はニッケル品位が低く、中心部からニッケルを溶かしだすことも難しいため、除去する必要がある。その為、HPALプラントではニッケル原料鉱石を調合するニッケル原料調整工程で、洗浄、および篩別をして原鉱石に混入している夾雑物や大粒径鉱石を除去している。
【0004】
このような篩分けを行う装置として、振動スクリーンを有する振動篩装置がある。例えば、特許文献1には、ケースと、該ケース内に設けられたスクリーンと、前記ケースを振動させる振動手段と、を備えた振動篩装置が記載されている。振動篩装置は、例えば、粒径25mm以下の鉱石を上部シュートより受け入れた後に、スプレーにて洗浄するとともに、メッシュを用いて粒径1.4mm以下の有用な鉱石を分離、回収する。
【0005】
振動篩装置においては、振動スクリーン前段に設置されている設備の状態によって、質量の大きな設計与件以上(粒径25mm以上)の鉱石が上部シュートより振動スクリーンに投入されることがあり、その落下の衝撃力により、振動スクリーンのサイドプレートといった主要構造部に損傷を与え、設備停止トラブルを発生させる原因となっている。
【0006】
このような問題に対して、例えば特許文献2では、篩分けされた回収物が排出される排出端と反対側に位置する供給端に、スクリーンの上面を覆うように保護プレートを設けることで、スクリーンの損傷を防止する方法が提案されている。
【0007】
しかしながら、保護プレートには鉱石が落下するため継続して使用していると損傷し、定期的に保護プレートを交換する必要が発生するため、交換のための時間と工数が発生する問題があった。
【0008】
また、特許文献3には、銅製錬反射炉への鉱石装入において、各鉱石装入ホッパーのダンパー開閉装置にタイマーを付設し、各ホッパーの当該炉内箇所における温度分布による熔解量に応じた鉱石装入に必要なダンパー開閉作動時間を指示する指令発信装置を設けて前記ダンパー開閉装置のタイマーに連接し、各ホッパー毎に適量の鉱石を自動的に装入するように構成してなる銅製錬反射炉への鉱石の自動装入方法について、記載されている。
【0009】
しかしながら、特許文献3に記載のダンパーは反射炉へ鉱石を適量投入することが主目的であり、後述する振動篩装置の設備保護や、ダンパーの鉱石接触による摩耗、変形、脱落の対策及び鉱石装入用シュートとダンパー間における鉱石詰まり防止策については何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2017-159269号公報
【特許文献2】特開2017-148687号公報
【特許文献3】特開昭57-210931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような状況を解決するためになされたものであり、長期にわたって振動スクリーンへの鉱石接触による損傷を低減し、点検補修に要する期間を短縮することができる鉱石装入用シュートのダンパー構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、鉱石の分級において、鉱石を振動スクリーンへ装入する時に通過させる鉱石装入用シュートのダンパー構造であって、鉱石装入用シュートの排出口の少なくとも一部を回動可能な状態で覆うダンパー本体を備え、ダンパー本体の内側にはライナープレートが施され、ダンパー本体の外側にはスティフィナーが形成されるとともに、鉱石装入用シュートとダンパー本体とを接続するダンパー脱落防止チェーンが設置されている。
【0013】
本発明の一態様によれば、鉱石装入用シュートにダンパー本体を設置し、内側にライナープレートを施すことで、鉱石落下による衝撃力を吸収できるとともに、ダンパー本体の外側にスティフィナーやダンパー脱落防止チェーンを設置することで、ダンパー本体の強度を向上させて脱落等も防止することができる。このため、長期にわたって振動スクリーンへの鉱石接触による損傷を低減し、点検補修に要する期間を短縮することができる。
【0014】
このとき、本発明の一態様では、ダンパー本体が鉱石装入用シュートの排出口を覆った状態で、鉱石の通り道分の隙間を有しているとしてもよい。
【0015】
このようにすることで、鉱石装入用シュートの排出口に鉱石が詰まらないようにするとともに、ダンパー本体で鉱石落下による衝撃力を吸収することができる。
【0016】
また、本発明の一態様では、隙間は、5~10cm(本明細書中において「~」は、下限以上、上限以下を意味するものとする。以下同じ)とすることができる。
【0017】
鉱石装入用シュートには、主に粒径が25mm以下の鉱石が流れてくるため、ダンパー本体と鉱石装入用シュートとの隙間を上記範囲とすることで鉱石が詰まらないようにできるとともに、鉱石落下の衝撃を吸収しながら振動スクリーンへと送ることができる。
【0018】
また、本発明の一態様では、ダンパー本体の外側に、さらにバランスウェイトが設置されていてもよい。
【0019】
バランスウェイトを設置することで、鉱石が衝突してダンパー本体が回動した際に、すぐに元の位置に復帰させることが可能となる。
【0020】
また、本発明の一態様では、ダンパー本体の内側下部には方向変更板が備えられているとしてもよい。
【0021】
このようにすることで、鉱石装入用シュートを流れてきた鉱石の進む方向を変えることができ、鉱石が直接振動スクリーンへと落下するのを防止することができる。
【0022】
また、本発明の一態様では、ダンパー本体による鉱石の排出箇所付近に水を噴射するスプレーノズルが鉱石装入用シュートに設けられているとしてもよい。
【0023】
このように、鉱石が詰まる可能性のある箇所に水を噴射することで、鉱石装入用シュートの排出口付近での鉱石の詰まりを防止することができる。
【0024】
また、本発明の一態様では、ライナープレートが、耐摩耗性鋼板であるとしてもよい。
【0025】
耐摩耗性鋼板を用いることで、鉱石の衝突による摩耗を低減することができる。
【0026】
また、本発明の一態様では、スティフィナーは、ダンパー本体の外側に間隔を隔てて形成された複数本のスティフィナーであるとしてもよい。
【0027】
このようにすることで、ダンパー本体の強度を向上させ、鉱石の衝突による変形等を低減することができる。
【0028】
また、本発明の一態様では、スティフィナーは、その厚みが3~15mm、高さが25~75mm、その相互間隔が100~160mmであるとしてもよい。
【0029】
上記条件とすることで、最適な強度を実現することができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように本発明によれば、長期にわたって振動スクリーンへの鉱石接触による損傷を低減し、点検補修に要する期間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】振動篩装置(振動スクリーン)による鉱石の分級を説明するための一部透過概略図である。
【
図2】鉱石装入用シュートに本発明の一実施形態に係るダンパー構造を設置した状態を示す概略斜視図である。
【
図3】
図3(A)は、本発明の一実施形態に係る鉱石装入用シュートのダンパー構造の正面図であり、
図3(B)は、本発明の一実施形態に係る鉱石装入用シュートのダンパー構造の側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る鉱石装入用シュートのダンパー構造として、スプレーノズルが設置されている状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の好適な実施の形態について、以下の順序で図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.鉱石の分級工程
2.鉱石装入用シュートのダンパー構造
【0033】
<1.鉱石の分級工程>
先ず、鉱石装入用シュートのダンパー構造の具体的な説明に先立ち、本発明に係る鉱石装入用シュートのダンパー構造が適用されるニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法における鉱石の分級工程について簡単に説明する。なお、本発明の一実施形態にかかる鉱石装入用シュートのダンパー構造は、必ずしも後述する例のみに限定されるわけでは無く、一般的な鉱石あるいは粒状の物質を移送するシュートのダンパー構造として適用することも可能である。
【0034】
上述したように、低品位ニッケル酸化鉱石からニッケルを回収する高圧硫酸浸出(HPAL)に基づく湿式製錬方法プロセスでは、原料であるニッケル原料鉱石が鉱山から運搬、供給されるが、その中の大粒径鉱石は酸による浸出率も低いため除去する必要がある。その為、HPALプラントにニッケル原料鉱石を調整するニッケル原料調整工程では大粒径鉱石を除去するため、洗浄、および篩別装置が設置されている。
【0035】
洗浄および篩別装置としては、大粒径鉱石を除去するドラムとトロンメルから構成されるドラムウォッシャーが使用される。ドラムは、ニッケル酸化鉱石を解砕し、レパルプし(解きほぐし)て鉱石スラリーとする機能を有する。ドラムのトロンメルとの連結側には、回収羽根が設けられ、鉱石スラリーに含まれる鉱石をドラム内から掻き揚げ、トロンメルの側へと送る。そして、トロンメルは、鉱石スラリーに含まれる鉱石を篩別する機能を有する。
【0036】
このように、ドラムウォッシャーでは、ドラムの入口側(上流側)に設けられた投入口から水およびニッケル酸化鉱石を供給し、ドラム内において大粒径鉱石から必要なニッケル原料鉱石を水でスラリー状にして、大型分級装置であるトロンメルに送り、このトロンメルのスクリーンで鉱石スラリーに含まれる粒径25mm以上の鉱石を除去する。
【0037】
ドラムウォッシャーで粒径25mm以上の鉱石は除去され、分級された粒径25mm以下の鉱石は、鉱石装入用シュートを通って、振動篩装置(振動スクリーン)へと送られる。
図1は、振動篩装置(振動スクリーン)による鉱石の分級を説明するための一部透過概略図である。
【0038】
振動篩装置10は、底面にスクリーン11が備えられ、両側面に外壁(サイドプレート)12を有している。振動篩装置10には、一端の上方から鉱石装入用シュート20を介して鉱石15が装入(供給)され、スクリーン11の傾斜と振動篩装置10に設けられた振動手段により、鉱石15は他端側へと送られていく(
図1の右側から左側方向)。
【0039】
スクリーン11は、網等の表裏を貫通する孔が設けられたシート状や板状の部材で構成され、その上面に鉱石15が供給されると、所定の大きさよりも小さい鉱石はスクリーン11の孔を通過して下方に落下し、下部シュート13を介して次工程へと送られる。一方で、所定の大きさよりも大きい鉱石はスクリーン11上に残留し、他端側に設けられたオーバーサイズ排出コンベア14へと送られる。ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法では、一例として、振動スクリーンのメッシュサイズは1.4mmである。したがって、振動篩装置10を介することで粒径1.4mm以下の鉱石が次工程へと送られる。
【0040】
上述した通り、振動篩装置10には主に粒径25mm以下の鉱石が鉱石装入用シュート20を通って送られてくるが、前工程に設置されている設備(ドラムウォッシャー)のスクリーンの状態によっては、粒径が25mmを超える鉱石が入り込むことがある。その場合は、当然ながら粒径25mmを超える重たい鉱石が落下し振動スクリーン10へと入り込むため、振動スクリーン10の設計強度を超える衝撃力がスクリーン11へと直接加わることとなり、振動スクリーン10の主要構造部や外壁(サイドプレート)12に変形や亀裂等の破損を発生させる要因となってしまう。本発明に係る鉱石装入用シュートのダンパー構造30は、このような状況を解決するために見出されたものである。
【0041】
<2.鉱石装入用シュートのダンパー構造>
次に、本発明に係る鉱石装入用シュートのダンパー構造について説明する。
図2は、鉱石装入用シュートに本発明の一実施形態に係るダンパー構造を設置した状態を示す概略斜視図であり、
図3(A)は、本発明の一実施形態に係る鉱石装入用シュートのダンパー構造の正面図であり、
図3(B)は、本発明の一実施形態に係る鉱石装入用シュートのダンパー構造の側面図である。また、
図4は、本発明の一実施形態に係る鉱石装入用シュートのダンパー構造として、スプレーノズルが設置されている状態を示す概略図である。
【0042】
本発明の一態様は、鉱石15の分級において、鉱石15を振動スクリーン10へ装入する時に通過させる鉱石装入用シュート20のダンパー構造30であって、鉱石装入用シュート20の排出口21の少なくとも一部を回動可能な状態で覆うダンパー本体31を備え、ダンパー本体31の内側にはライナープレート32が施され、ダンパー本体31の外側にはスティフィナー33が形成されるとともに、鉱石装入用シュート20とダンパー本体31とを接続するダンパー脱落防止チェーン34が設置されている。
【0043】
なお、
図2は、鉱石装入用シュート20を地面に水平に載置した状態でのダンパー構造30について示した図であり、実際に使用する際には、
図3(B)や
図4に示すように鉱石装入用シュート20は傾斜した状態となるため、ダンパー本体31は略垂直の状態となる。
【0044】
また、
図2においては、ダンパー構造30は、鉱石装入用シュート20の排出口21の一部分のみを覆っているが、実際には同様のダンパー構造30が連続して複数設置されている(例えば、鉱石装入用シュート20の横幅が1700mmで、ダンパー構造30の横幅が425mmであれば、4つのダンパー構造30が連続して設置されている。)。1つのダンパー構造で鉱石装入用シュート20の排出口21の全体を覆うようにしても良いが、複数のダンパー構造30とすることにより、持ち運びや設置が容易になるとともに、摩耗や破損等があった場合にも該当するダンパー構造30のみを補修すればよいため、メンテナンスが容易となる。
【0045】
一例として、ダンパー本体31は、取付ボルトナット25により鉱石装入用シュート20の端部に取付けられ、回動可能な状態となっている。さらに、本発明では、ダンパー本体31と鉱石装入用シュート20とは、ダンパー脱落防止チェーン34により繋がれている。これにより、仮にダンパー本体31が繰り返し回動して、取付ボルトナット25が摩耗により折損した場合においてもダンパー本体31が振動スクリーン10側に脱落して、振動スクリーン10が破損するのを防止することができる。
【0046】
本発明の一態様では、ダンパー本体31が閉の状態(鉱石装入用シュート20の排出口21を覆った状態)で、鉱石の通り道分の隙間を有していることが好ましい。すなわち、
図3(B)において、閉の状態(ダンパー構造30Aの状態)において、ダンパー本体31と鉱石装入用シュート20の端部との間に隙間d1及び隙間d2が生じていることが好ましい。このようにすることで、鉱石装入用シュート20の排出口21に鉱石が詰まらないようにするとともに、大塊(粒径25mm以上の鉱石)が投入されるとダンパー構造30Aに衝突することによって、鉱石の落下スピードを一度吸収することが可能となる。この時、ダンパー本体31は回動することによって、開の状態(ダンパー構造30Bの状態)となる。
【0047】
上記隙間d1、d2は5~10cmであることが好ましい。隙間が5cm未満では、通常のサイズの鉱石(粒径25mm以下の鉱石)もダンパーに衝突してしまい、投入量が絞られてしまう。また、10cmを超える場合、大塊(粒径25mm以上の鉱石)が投入されるとダンパーに衝突せずに、直接スクリーン本体のウェッジスクリーンへ衝突して損傷を与え、設備停止トラブルを発生させる原因となってしまう。
【0048】
本発明の一態様では、ダンパー本体31の外側に、バランスウェイト35が設置されていることが好ましい。バランスウェイト35を設置することで、大塊の鉱石が衝突してダンパー本体31が回動して開の状態(
図3(B)のダンパー構造30Bの状態)となった場合でも、バランスウェイト35による自重により速やかに閉の状態(
図3(B)のダンパー構造30Aの状態)に復帰させることが可能となる。ダンパー構造30の開閉状態を調整できるよう、バランスウェイト35の枚数を調整できる機構にすることが好ましい。
【0049】
また、本発明の一態様では、ダンパー本体31の内側下部には方向変更板36が備えられているとしてもよい。方向変更板36を設置することにより、ダンパー本体31の内側は略L字型を形成することになる。このようにすることで、鉱石装入用シュート20を流れてきた鉱石15の進む方向を変えることができ、特に大塊が投入された時に、直接スクリーン11本体のウェッジスクリーンへの衝突を防ぐことが出来る。
【0050】
本発明の一態様では、
図4に示すように、ダンパー本体31による鉱石15の排出箇所付近に水を噴射するスプレーノズル37が鉱石装入用シュート20に設けられている事が好ましい。水の噴射位置は、ダンパー構造30の下部で、特に、投入鉱石が溜まる(詰まる)可能性がある位置とすることが好ましい。スプレーノズル37は、一例として、スプレーヘッダー38を介して、鉱石装入用シュート20の幅方向に複数設置することができる。スプレーノズル37を設置し、必要な都度、投入鉱石をスクリーン側へ洗い流せるようにすることで、ダンパー本体31の排出部付近での鉱石の詰まりを防止することができる。
【0051】
ダンパー本体31の内側にはダンパー内側の摩耗を防ぎ、耐久性を高めるため、ライナープレート32が施されている。本発明の一態様では、ライナープレート32の材質は、耐摩耗性鋼板を使用することが好ましい。例えば、耐摩耗性鋼板は、SSAB社製Hardox(登録商標) 500等を使用することができる。耐摩耗性鋼板は、降伏強度1000MPa(好ましくは1300MPa)、硬度Brinell HBW500、シャルピーV 衝撃値25J(好ましくは27J)以上(試験温度0℃)、又はこれらを上回る物性値を有する素材を用いることが望ましい。
【0052】
また、ダンパー本体31の外側にはスティフィナー33が形成されている。本発明の一態様に係る鉱石装入用シュートのダンパー構造30では、内側に大塊(粒径25mm以上の鉱石)が何度も衝突するため、ダンパー本体31の強度を向上し、変形を防止するために設けられる。
【0053】
本発明の一態様では、スティフィナー33は、ダンパー本体31の外側に間隔を隔てて複数本形成されることが好ましい。また、この場合、スティフィナーの厚みは、3~15mm程度、スティフィナーの高さは、25~75mm程度、スティフィナーの相互間隔L(
図3(A)参照)については、30~150mm程度とするのが好ましい。一例として、ダンパー本体の横幅が425mm、縦幅が353mmの場合に、高さ50mm、厚み6mm、長さ312mmの3本のスティフィナー33a,33b,33cを130mm間隔でダンパー本体31の縦方向に配置し、高さ50mm、厚み6mm、長さ405mmの1本のスティフィナー33dを横方向に配置する。(
図3(A)参照)
【0054】
以上説明したように、本発明に係る鉱石装入用シュートのダンパー構造を適用することで、長期にわたって振動スクリーンへの鉱石接触による損傷を低減し、点検補修に要する期間を短縮することができる。
【実施例0055】
以下、本発明について、実施例および比較例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0056】
ダンパー構造を有さない従来の鉱石装入用シュート(インレットシュート)により操業した場合(比較例)と、本発明の一態様にかかるダンパー構造を鉱石装入用シュート(インレットシュート)に設置して操業した場合(実施例)とでの効果の違いを検討した。
【0057】
従来の操業(比較例)では、振動スクリーン稼働後約5年で主要構造部である側板に亀裂が発生する事態となり、それ以降は割れ箇所に対する補強板の設置及び交換作業等により新たに約6日/年の設備点検補修時間が必要であった。これは、ニッケルの生産量として-650t-Niの減産要因となっていた。一方で、本発明にかかるダンパー構造を設置することにより、今後長期にわたって、振動スクリーンの主要構造部の保護を可能とし、点検補修時間の短縮(6日/年→0日/年)による減産回避が期待できる。
【0058】
なお、上記のように本発明の一実施形態および各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0059】
例えば、明細書または図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書または図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、鉱石装入用シュートのダンパー構造の構成も本発明の一実施形態および各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
10 振動篩装置(振動スクリーン)、11 スクリーン、12 外壁(サイドプレート)、13 下部シュート、14 オーバーサイズ排出コンベア、15 鉱石、20 鉱石装入用シュート、21 排出口、25 取付ボルトナット、30,30A,30B ダンパー構造、31 ダンパー本体、32 ライナープレート、33,33a,33b,33c,33d スティフィナー、34 ダンパー脱落防止チェーン、35 バランスウェイト、36 方向変更板、37 スプレーノズル、38 スプレーヘッダー