(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057473
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 9/12 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
H04L9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164239
(22)【出願日】2022-10-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2022年3月17日に第5回QS研究発表会 予稿集にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 泰成
(72)【発明者】
【氏名】徳永 裕己
(72)【発明者】
【氏名】前田 雄也
(57)【要約】
【課題】蒸留された量子もつれ状態の生成を効率的に実現させる。
【解決手段】量子通信を中継する量子中継部から、量子もつれの生成に成功したか失敗したかを示す情報と、成功したベル測定の測定値を示す情報とを取得し、取得された前記情報に基づいて前記量子通信に使用される量子ビットの蒸留計画を決定する蒸留計画決定部と、決定された前記蒸留計画に基づいて、前記量子ビットを蒸留するように制御する量子制御部と、を備える制御装置である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子通信を中継する量子中継部から、量子もつれの生成に成功したか失敗したかを示す情報と、成功したベル測定の測定値を示す情報とを取得し、取得された前記情報に基づいて前記量子通信に使用される量子ビットの蒸留計画を決定する蒸留計画決定部と、
決定された前記蒸留計画に基づいて、前記量子ビットを蒸留するように制御する量子制御部と、を備える、
制御装置。
【請求項2】
前記蒸留計画は、前記ベル測定に成功した量子ビットの集合をグラフの頂点とした、全結合グラフを構築するステップと、前記全結合グラフに関する最小重み最大マッチング問題を解くステップと、前記全結合グラフにおいてペアリングされたノードを隣接するまで移動させるステップと、を含む、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
コンピュータが実行する制御方法であって、
量子通信を中継する量子中継部から、量子もつれの生成に成功したか失敗したかを示す情報と、成功したベル測定の測定値を示す情報とを取得し、取得された前記情報に基づいて前記量子通信に使用される量子ビットの蒸留計画を決定するステップと、
決定された前記蒸留計画に基づいて、前記量子ビットを蒸留するように制御するステップと、を備える、
制御方法。
【請求項4】
コンピュータを、請求項1または2に記載の制御装置における各部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
量子コンピュータは、量子力学の重ね合わせの原理を活用して計算を行う技術で、素因数分解、量子化学計算などの複雑な計算を要する問題を高速に解けることが期待されているため、その開発が世界で盛んに進められている。
【0003】
分散計算、量子通信等を実施するためには、複数の離れた場所で量子ビットの保持する情報をやりとりする量子通信が必要となる。量子通信を行う方法の一つとして、複数の離れた場所の間で量子もつれと呼ばれる状態にある量子ビットのペアを生成し、量子テレポーテーションと呼ばれる技術を用いて量子もつれを消費し、古典通信を行って量子ビットを転送する方法がある。
【0004】
非特許文献1には、複数の少ない誤りを持つ量子もつれ状態を利用して、誤りがさらに小さい量子もつれを生成できる「量子もつれ蒸留」という技術を用いれば、量子もつれの持つ誤りを小さくすることができることが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Bennett, C. H., Brassard, G., Popescu, S., Schumacher, B., Smolin, J. A., & Wootters, W. K. (1996). Purification of noisy entanglement and faithful teleportation via noisy channels. Physical review letters, 76(5), 722.
【非特許文献2】Ebadi, S., Wang, T. T., Levine, H., Keesling, A., Semeghini, G., Omran, A., ... & Lukin, M. D. (2021). Quantum phases of matter on a 256-atom programmable quantum simulator. Nature, 595(7866), 227-232.
【非特許文献3】Arute, F., Arya, K., Babbush, R., Bacon, D., Bardin, J. C., Barends, R., ... & Martinis, J. M. (2019). Quantum supremacy using a programmable superconducting processor. Nature, 574(7779), 505-510.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
量子通信において従来提案されている量子もつれ蒸留のプロトコルを、実機の制約を考慮して効率的に実現できないという問題がある。
【0007】
開示の技術は、蒸留された量子もつれ状態の生成を効率的に実現させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の技術は、量子通信を中継する量子中継部から、量子もつれの生成に成功したか失敗したかを示す情報と、成功したベル測定の測定値を示す情報とを取得し、取得された前記情報に基づいて前記量子通信に使用される量子ビットの蒸留計画を決定する蒸留計画決定部と、決定された前記蒸留計画に基づいて、前記量子ビットを蒸留するように制御する量子制御部と、を備える制御装置である。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、蒸留された量子もつれ状態の生成を効率的に実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】従来の量子通信における操作の流れについて説明するための図である。
【
図2】量子通信における基本的な量子ビットの操作について説明するための第一の図である。
【
図3】量子通信における基本的な量子ビットの操作について説明するための第二の図である。
【
図4】量子通信における基本的な量子ビットの操作について説明するための第三の図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係るステップ1の流れの一例を示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係るステップ2における蒸留プロセスの計画の一例を示す図である。
【
図7】量子通信システムに含まれる各装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図8】量子状態蒸留処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】コンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(本実施の形態)を説明する。以下で説明する実施の形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施の形態は、以下の実施の形態に限られるわけではない。
【0012】
(従来の問題点)
まず、従来の問題点について説明する。古典コンピュータを構成する素子である(古典)ビットは、0または1の値をとる。他方、量子コンピュータを構成する素子である量子ビットは、0と1に加えて、0と1の連続的な重ね合わせ状態をとることができる。この重ね合わせ状態を用いると、ビットの値が0の場合と1の場合の計算を同時に実行することが可能となるが、量子ビットを観測するとその値は0または1に確定し、重ね合わせ状態が壊れてしまう。このため、量子的なデータは一般にコピーが出来ないという、コピー不可能性定理が知られている。
【0013】
分散計算、量子通信等を実施するためには、複数の離れた場所で量子ビットの保持する情報をやりとりする量子通信が必要となる。ここでは、AliceがBobに量子情報を伝送したい状況を考える。(以降では記法を簡単にするため、頭文字をとってノード名をA、Bと略記する)。量子通信を行う最も簡便な方法はAがBに量子ビットの情報を光などに乗せて伝送する手法である。しかし、この手法は伝送中に量子ビットが損失すると情報が失われてしまうという欠点を持つ。また、上記に述べたコピー不可能性定理から、通常の古典ビットの通信の場合と異なり、ひとたび損失してしまうと再度同じ情報を送付することが難しい。
【0014】
量子通信を行う別の方法のとして、複数の離れた場所の間で量子もつれと呼ばれる状態にある量子ビットのペアを生成し、量子テレポーテーションと呼ばれる技術を用いて量子もつれを消費し、古典通信を行って量子ビットを転送する方法がある。この量子もつれの生成は確率的にしか成功せず、しかも成功しても一定の誤りが生じている状態になることが殆どである。しかし、複数の少ない誤りを持つ量子もつれ状態を利用して、誤りがさらに小さい量子もつれを生成できる「量子もつれ蒸留」という技術を用いれば、量子もつれの持つ誤りを小さくすることができる(例えば非特許文献1)。
【0015】
図1は、従来の量子通信における操作の流れについて説明するための図である。従来、量子通信において操作は、「1.誤りを持つ量子もつれの生成」、「2.誤りを持つたくさんの量子もつれを、誤りが小さい量子もつれに蒸留する」および「3.誤りの小さい量子もつれを消費して、量子ビットの情報を転送する」の3段階で行われることが一般的である。
【0016】
従来の量子通信の理論の多くは、A/Bのノード間の通信量に焦点を置いており、それぞれのノード内部での計算は十分高速に、かつ、エラーなしに出来るという仮定を置いている。この場合、通信路の帯域さえ決まればAとBの間でどのような速度で量子もつれが共有できるのかも定まる。一方、量子計算機の開発が進むにつれ、ノード内部で行う計算でもエラーが小さく高速に出来るものと、そうでないものの違いがあることが明らかになっている。従って、効率的な量子通信を行うには、上述した1,2,3のプロセスの中でも、特にノード内部での計算を伴う1および2のプロセスを効率的に行うことが重要となる。ところが、これまでの研究では量子通信を行う上でノード内部での演算を効率化するための研究は行われていなかった。
【0017】
したがって、従来の問題点は、量子通信において現在提案されている実機の制約を考慮した量子もつれ蒸留のプロトコル1、2を実施する提案が無いことから、具体的に実装可能で効率的な量子通信ができないことにある。
【0018】
(本実施の形態の概要)
そこで、本実施の形態では、上述した従来の問題点を解決するため、時間的に短く、かつ、少ない通信量で低ノイズの量子もつれを効率的に蒸留するプロトコルを実現させる例について説明する。
【0019】
本実施の形態では、2次元に集積化された量子ビットを用いて、蒸留された量子もつれ状態を生成する手法について説明する。具体的な実施内容は、「ステップ1:誤りのある量子もつれを多重化し高速に生成するプロセス」と「ステップ2:誤りある量子もつれを集めて誤りの小さい量子もつれを生成するプロセス」とを含む。
【0020】
ステップ1の誤りのある量子もつれを多重化し高速に生成するプロセスでは、A(伝送元)およびB(伝送先)は、それぞれ二次元的に集積化された量子デバイスと、それぞれに接続された多重化された通信モジュールと、を利用する。集積化された量子デバイスとしては、例えば、二次元集積化された原子(非特許文献2)、超伝導量子ビットのチップ(非特許文献3)などであってもよいが、二次元に集積化されたデバイスであれば他でもよい。
【0021】
図2は、量子通信における基本的な量子ビットの操作について説明するための第一の図である。各量子ビットは、二次元平面で隣接している他の量子ビットと相互作用することによって、演算が実行される。
【0022】
図3は、量子通信における基本的な量子ビットの操作について説明するための第二の図である。各量子ビットは、当該量子ビットと量子もつれ状態にある光パルスを生成し、通信モジュールを介して外部に伝送する機能を持つ。
【0023】
伝送路は、量子ビットの数だけ多重化されており、AとBからつながる伝送路は中間にある中継ノードに繋がる。中継ノードではAおよびBから同時に光パルスが到着したときベル測定と呼ばれる測定を行うことができる。二つのノードから到着した光パルスがベル測定されると、光パルスを放出した二つの量子ビットは量子もつれ状態となる。
【0024】
図4は、量子通信における基本的な量子ビットの操作について説明するための第三の図である。ステップ2では、誤りある量子もつれを集めて誤りの小さい量子もつれを生成する。ステップ2は蒸留と呼ばれるプロセスである。ステップ2の詳細については後述する。
【0025】
図5は、本発明の実施の形態に係るステップ1の流れの一例を示す図である。ステップ1では、それぞれの量子ビットが、量子ビットと量子もつれ状態にある光子を、通信モジュールを用いて、中継ノードに向けて同期して送付する。中継ノードでは同時に到着した光子をベル測定と呼ばれる方法で測定し、測定が成功したかどうかと、成功した場合はその測定値とを、AとBに通知する。Aは通知された測定値に応じて、所持している量子ビットを操作する。これにより、ベル測定が成功した同じ座標にある量子ビットについては、AとBとの間で誤りのある量子もつれが共有される。
【0026】
この量子もつれ生成の成功確率および成功した際の誤りの量は、中継ノードまでの距離、ベル測定に利用される装置の特性などに応じて定まる。これらの値が選択可能な場合は、最終的なベル状態の生成が最も効率的になるように最適化される。
【0027】
ステップ2の開始地点では、二次元平面上にランダムに配置された量子もつれ生成に成功した量子ビットが配置されている。この量子もつれ生成が成功した量子ビットの位置は、AとBで共通である。ステップ2は、この量子もつれ生成に成功した座標の集合に対して、蒸留を行うスケジュールを決定し、実行するステップである。
【0028】
図6は、本発明の実施の形態に係るステップ2における蒸留プロセスの計画の一例を示す図である。ステップ2は、例えば、
図6に示されるステップ2-1、ステップ2-2およびステップ2-3という3段階の蒸留プロセスとして計画される。
【0029】
ステップ2-1は、ベル測定に成功した量子ビットの集合をグラフの頂点とした、全結合グラフを構築するステップである。グラフの2点間の距離は、グラフの座標のマンハッタン距離である。
【0030】
ステップ2-2は、上述した全結合グラフに関する、最小重み最大マッチング問題を解くステップである。問題が解かれると、グラフ上のノードができるだけ近い距離でペアリングされた状態となる。ノードの数が奇数である場合は、余ってしまうノードが一つあるが、これは利用せずに破棄すればよい。なお、最小重み最大マッチング問題は、いわゆるエドモンドの花アルゴリズムにより多項式時間で解くことができる。
【0031】
ステップ2-3は、ペアリングされたノードを隣接するまで移動させるステップである。移動させるステップは、例えば東西南北に適当な優先順位をつけて移動することで行うことで実現できるが、この方法に限定されない。ノードの移動は、隣接した二つの量子ビットに対するSWAPゲートで実行される。
【0032】
次に、上述した各ステップを実行する量子通信システムの構成について説明する。
【0033】
図7は、量子通信システムに含まれる各装置の機能構成の一例を示す図である。量子通信システム1は、量子計算機10と、複数の制御装置20と、を備える。
図7では、一例として、量子通信システム1が2つの制御装置20を備える例を示したが、3か所以上の間の量子通信であれば、3つ以上の制御装置20を備えてもよい。量子計算機10および複数の制御装置20は、それぞれ古典ビットを通信可能に接続されている。
【0034】
量子計算機10は、第一量子ビット部11と、第二量子ビット部12と、量子中継部13と、を備える。ここで、第一量子ビット部11と第二量子ビット部12とは、それぞれ通信ノードとして機能し、各通信ノードの間における量子通信が実現される。量子中継部13は、上述した各ステップにおける中継ノードとして機能する。
【0035】
第一量子ビット部11および第二量子ビット部12は、それぞれ二次元的に集積化された量子ビットのアレイを有する。当該アレイは、指示を受けて各通信ノードの量子ビットと量子もつれ状態にある光子を送出する。送信された光子は、量子中継部13に送付される。2点間の通信の場合、それぞれの通信ノードに含まれる第一量子ビット部11および第二量子ビット部12は、互いに同様の構成を有する量子ビットのアレイを有する。各量子ビット部(第一量子ビット部11および第二量子ビット部12)には、入力として、構成したい量子もつれの数、必要なノイズレベル等を示す情報が与えられてもよい。
【0036】
量子中継部13は、各量子ビット部(第一量子ビット部11および第二量子ビット部12)から送付された光子に対してベル測定を行う。量子中継部13は、測定後に量子もつれの生成に成功したか失敗したかを示す情報と、成功したベル測定の測定値を示す情報と、を含む古典ビットの信号を、各制御装置20に送信する。
【0037】
各制御装置20は、蒸留計画決定部21と、量子制御部22と、を備える。各制御装置20は、例えば、各通信ノードにそれぞれ設置される。
【0038】
蒸留計画決定部21は、測定後に量子もつれの生成に成功したか失敗したかを示す情報と、成功したベル測定の測定値を示す情報と、を含む情報を量子中継部13から取得する。そして、蒸留計画決定部21は、成功したベル測定の位置情報に基づき、ステップ2の蒸留のプロセスをどのようなスケジュールで行うかを示す蒸留計画を決定する。
【0039】
スケジューリングの具体的な方法としては、例えば最小重み最大マッチングによるものであってもよいが、他でもよい。すなわち、スケジューリングの具体的な符号、アルゴリズム等は限定されない。各制御装置20が備える蒸留計画決定部21は、それぞれ同様のアルゴリズムに沿って処理を実行するため、互いに同一の蒸留計画を決定する。
【0040】
量子制御部22は、得られた蒸留計画に基づき、電磁波などを用いた量子ビットの情報の移動と蒸留のための操作を行うための制御信号を、各通信ノードに属する量子ビット部(第一量子ビット部11および第二量子ビット部12)に送信する。ここで、各量子制御部22は、蒸留の途中で量子もつれが失われるなど、他方の通信ノードに通知すべき内容があれば、他の通信ノードに属する量子ビット部に通知してもよいし、他の制御装置20に通知してもよい。最後まで操作が終わった段階で、所望のレベルまで誤りが小さくなった量子もつれのペアが得られる。
【0041】
次に、量子通信システム1の動作について説明する。
【0042】
図8は、量子状態蒸留処理の流れの一例を示すフローチャートである。量子状態蒸留処理は、各制御装置20がプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0043】
蒸留計画決定部21は、成功したベル測定の位置情報を取得する(ステップS101)。具体的には、蒸留計画決定部21は、測定後に量子もつれの生成に成功したか失敗したかを示す情報と、成功したベル測定の測定値を示す情報と、を含む情報を量子中継部13から取得する。
【0044】
次に、蒸留計画決定部21は、成功したベル測定の位置情報に基づいて、蒸留プロセスの計画(蒸留計画)を決定する(ステップS102)。
【0045】
量子制御部22は、決定された蒸留計画に基づいて、量子ビットを制御する(ステップS103)。
【0046】
各制御装置20は、古典コンピュータによって実現される。各制御装置20は、例えば、
図9に示すコンピュータ500のハードウェア構成により実現される。
図9に示すコンピュータ500は、入力装置501と、表示装置502と、外部I/F503と、通信I/F504と、プロセッサ505と、メモリ装置506とを有する。これらの各ハードウェアは、それぞれがバス507により通信可能に接続される。
【0047】
入力装置501は、例えば、キーボードやマウス、タッチパネル等である。表示装置502は、例えば、ディスプレイ等である。なお、コンピュータ500は、入力装置501及び表示装置502のうちの少なくとも一方を有していなくてもよい。
【0048】
外部I/F503は、記録媒体503a等の外部装置とのインタフェースである。なお、記録媒体503aとしては、例えば、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disk)、SDメモリカード(Secure Digital memory card)、USB(Universal Serial Bus)メモリカード等が挙げられる。
【0049】
通信I/F504は、他の装置や機器、システム等との間でデータ通信を行うためのインタフェースである。プロセッサ505は、例えば、CPU等の各種演算装置である。メモリ装置506は、例えば、HDDやSSD、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の各種記憶装置である。
【0050】
各制御装置20は、
図9に示すコンピュータ500のハードウェア構成を有することにより、上述した各種処理を実現することができる。なお、
図9に示すコンピュータ500のハードウェア構成は一例であって、コンピュータ500は、他のハードウェア構成を有していてもよい。例えば、コンピュータ500は、複数のプロセッサ505を有していてもよいし、複数のメモリ装置506を有していてもよい。
【0051】
本実施の形態により、量子もつれの生成と蒸留を高速に行うことができるようになる。なお、ステップ3の量子テレポーテーションの最適な実施例は、量子通信を適用する応用に依存するため、本実施の形態では説明を割愛する。従って、本実施の形態は、量子暗号、量子通信、分散された計算、センシングなど、量子もつれを使った非局所な量子情報処理の幅広いプロトコルにおいて活用することができる。
【0052】
本実施の形態のポイントは、近年技術的に実現が可能となった二次元集積化された量子デバイスに焦点を定め、これに適したプロトコルをハードウェアとソフトウェアの協調設計で構築したことにある。従来のプロトコルは、送受信者が単一の光源、受信機等を持つシンプルな仮定か、あるいはローカルな操作は量子デバイスの結合性を気にすることなく可能であるという前提に立っているものが殆どであった。
【0053】
本実施の形態では、原子アレイ、超伝導量子ビットなどといった物質の量子ビットが隣接する物質にしか相互作用できないという制約を適切に抽象化し、高速な量子もつれの生成と蒸留方法について提案されている。
【0054】
(付記)
以上の実施形態に関し、更に以下の付記項を開示する。
(付記項1)
メモリと、
前記メモリに接続された少なくとも1つのプロセッサと、を含む制御装置であって、
前記プロセッサは、
量子通信を中継する量子中継部から、量子もつれの生成に成功したか失敗したかを示す情報と、成功したベル測定の測定値を示す情報とを取得し、取得された前記情報に基づいて前記量子通信に使用される量子ビットの蒸留計画を決定し、
決定された前記蒸留計画に基づいて、前記量子ビットを蒸留するように制御する、
制御装置。
(付記項2)
前記蒸留計画は、前記ベル測定に成功した量子ビットの集合をグラフの頂点とした、全結合グラフを構築するステップと、前記全結合グラフに関する最小重み最大マッチング問題を解くステップと、前記全結合グラフにおいてペアリングされたノードを隣接するまで移動させるステップと、を含む、
付記項1に記載の制御装置。
(付記項3)
コンピュータが実行する制御方法であって、
量子通信を中継する量子中継部から、量子もつれの生成に成功したか失敗したかを示す情報と、成功したベル測定の測定値を示す情報とを取得し、取得された前記情報に基づいて前記量子通信に使用される量子ビットの蒸留計画を決定し、
決定された前記蒸留計画に基づいて、前記量子ビットを蒸留するように制御する、
制御方法。
(付記項4)
コンピュータを、付記項1または2に記載の制御装置における各部として機能させるためのプログラムを記憶した非一時的記憶媒体。
【0055】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 量子通信システム
10 量子計算機
11 第一量子ビット部
12 第二量子ビット部
13 量子中継部
20 制御装置
21 蒸留計画決定部
22 量子制御部
500 コンピュータ
501 入力装置
502 表示装置
503 外部I/F
503a 記録媒体
504 通信I/F
505 プロセッサ
506 メモリ装置
507 バス