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特開2024-57519樹脂組成物、絶縁材料、レジスト部材、硬化物および物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057519
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】樹脂組成物、絶縁材料、レジスト部材、硬化物および物品
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20240417BHJP
   G03F 7/032 20060101ALI20240417BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
C08F290/06
G03F7/032
H05K3/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164323
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 駿介
【テーマコード(参考)】
2H225
4J127
5E314
【Fターム(参考)】
2H225AC35
2H225AC54
2H225AC65
2H225AD02
2H225AE14P
2H225AM61P
2H225AN22P
2H225AN23P
2H225AN36P
2H225AN79P
2H225AN94P
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2H225BA22P
2H225CA13
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
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5E314AA27
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5E314GG24
(57)【要約】
【課題】高い光感度、優れたアルカリ現像性を有し、高い耐熱性、高い弾性率および優れた塗膜外観を有する硬化物を形成可能な樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】マレイミド樹脂(A)と、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)と、を含み、前記マレイミド樹脂(A)は、化合物(M)とイソシアネート化合物との反応生成物であり、前記化合物(M)は、無水マレイン酸および無水マレイン酸の置換体からなる群より選択される1種以上であり、前記無水マレイン酸の置換体は、無水マレイン酸の2位および3位の水素の1以上が、独立して、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基およびハロゲンからなる群より選択される1種で置換されており、前記マレイミド樹脂(A)の分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が、1.10~5.00である、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マレイミド樹脂(A)と、
酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)と、
を含み、
前記マレイミド樹脂(A)は、化合物(M)とイソシアネート化合物との反応生成物であり、
前記化合物(M)は、無水マレイン酸および無水マレイン酸の置換体からなる群より選択される1種以上であり、
前記無水マレイン酸の置換体は、無水マレイン酸の2位および3位の水素の1以上が、独立して、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基およびハロゲンからなる群より選択される1種で置換されており、
前記マレイミド樹脂(A)の分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が、1.10~5.00である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記イソシアネート化合物が、イソシアヌレート構造を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂(B)の固形分量に対する、前記マレイミド樹脂(A)の固形分量の割合が、1~100質量%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
光重合開始剤をさらに含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の樹脂組成物を含む、絶縁材料。
【請求項6】
請求項4に記載の樹脂組成物を含む、レジスト部材。
【請求項7】
請求項4に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項8】
塗膜を有し、
前記塗膜が、請求項7に記載の硬化物である、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、絶縁材料、レジスト部材、硬化物および物品に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板上に電子部品を実装してはんだ付けする際に、実装部以外の部分にはんだが付着するのを防止する材料として、あるいは、配線の酸化および腐食を半永久的に防止する被膜を形成する材料としてソルダーレジストが広く用いられている。このようなソルダーレジストのパターンを形成する技術として、微細なパターンを正確に形成できるフォトレジスト法があり、特に環境面の配慮から、アルカリ現像型の液状フォトレジスト法が主流となっている。
【0003】
また、プリント配線板は、高密度化実現のため微細化、多層化およびワンボード化の一途をたどっている。プリント配線板の実装方式も、表面実装技術(SMT)へと推移している。
【0004】
そのため、ソルダーレジスト膜を形成する材料には、高い光感度、優れたアルカリ現像性、高いガラス転移温度(高Tg)を有することならびに高い弾性率および優れた塗膜外観を有する硬化物を形成できることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-348375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マレイミド樹脂は、ソルダーレジスト膜の形成に用いられる。
【0007】
例えば、特許文献1では、無水マレイン酸とイソシアネート化合物を脱炭酸してなるマレイミド化合物の製造方法を開示している。
【0008】
しかし、特許文献1には無水マレイン酸とイソシアネート化合物の反応生成物として、比較的低分子量のマレイミド化合物のみが開示されており、無水マレイン酸とイソシアネート化合物の重合体、すなわちマレイミド樹脂については開示がない。
【0009】
また、本発明者が検討したところ、特許文献1の製造方法では、一部の生成物にゲル化が確認され、良好な塗膜外観を有する硬化物が得られなかった。
【0010】
そこで、本発明は、高い光感度、優れたアルカリ現像性を有し、高い耐熱性、高い弾性率および優れた塗膜外観を有する硬化物を形成可能な樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る樹脂組成物は、
マレイミド樹脂(A)と、
酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)と、
を含み、
前記マレイミド樹脂(A)は、化合物(M)とイソシアネート化合物との反応生成物であり、
前記化合物(M)は、無水マレイン酸および無水マレイン酸の置換体からなる群より選択される1種以上であり、
前記無水マレイン酸の置換体は、無水マレイン酸の2位および3位の水素の1以上が、独立して、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基およびハロゲンからなる群より選択される1種で置換されており、
前記マレイミド樹脂(A)の分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が、1.10~5.00である、樹脂組成物である。これにより、樹脂組成物は、高い光感度、優れたアルカリ現像性を有し、高い耐熱性、高い弾性率および優れた塗膜外観を有する硬化物を形成可能である。
【0012】
本発明に係る樹脂組成物の一実施形態では、前記イソシアネート化合物が、イソシアヌレート構造を有する。
【0013】
本発明に係る樹脂組成物の一実施形態では、前記樹脂(B)の固形分量に対する、前記マレイミド樹脂(A)の固形分量の割合が、1~100質量%である。
【0014】
本発明に係る樹脂組成物の一実施形態では、樹脂組成物が、光重合開始剤をさらに含む。
【0015】
本発明に係る絶縁材料は、光重合開始剤を含む樹脂組成物を含む。
【0016】
本発明に係るレジスト部材は、光重合開始剤を含む樹脂組成物を含む。
【0017】
本発明に係る硬化物は、光重合開始剤を含む樹脂組成物の硬化物である。
【0018】
本発明に係る物品は、塗膜を有し、前記塗膜が、上記硬化物である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高い光感度、優れたアルカリ現像性を有し、高い耐熱性、高い弾性率および優れた塗膜外観を有する硬化物を形成可能な樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。これらの記載は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0021】
本発明において、2以上の実施形態を任意に組み合わせることができる。
【0022】
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよびメタクリレートからなる群より選択される1種以上を表す。
【0023】
本明細書に記載の材料、成分、化合物、触媒および溶剤は、別段の記載がない限り、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本明細書において、数値範囲は、別段の記載がない限り、その範囲の上限値および下限値を含むことを意図している。例えば、1~100質量%は、1質量%以上100質量%以下の範囲を意味する。
【0025】
本明細書において、第1、第2、工程(1)、工程(2)、工程(3)などの符号は、ある要素、材料、工程などを他の要素、材料、工程などと区別するために使用しており、その要素または材料の多少および工程の順序を限定することを意図するものではない。
【0026】
本発明において、マレイミド樹脂(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、実施例に記載の方法によって測定する。
【0027】
本開示において、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)の酸価は、JIS 0070(1992)の中和滴定法で測定する。
【0028】
(樹脂組成物)
本発明に係る樹脂組成物は、
マレイミド樹脂(A)と、
酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)と、
を含み、
前記マレイミド樹脂(A)は、化合物(M)とイソシアネート化合物との反応生成物であり、
前記化合物(M)は、無水マレイン酸および無水マレイン酸の置換体からなる群より選択される1種以上であり、
前記無水マレイン酸の置換体は、無水マレイン酸の2位および3位の水素の1以上が、独立して、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基およびハロゲンからなる群より選択される1種で置換されており、
前記マレイミド樹脂(A)の分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が、1.10~5.00である、樹脂組成物である。
【0029】
以下、本発明の樹脂組成物が含む各成分について説明する。
【0030】
マレイミド樹脂(A)
マレイミド樹脂(A)は、樹脂組成物に高い光感度、優れたアルカリ現像性、高Tgを付与し、硬化物に優れた塗膜外観も付与する働きを有する。
【0031】
マレイミド樹脂(A)は、化合物(M)とイソシアネート化合物との反応生成物であり、分子量分布(Mw/Mn)は、1.10~5.00である。
【0032】
化合物(M)は、無水マレイン酸および無水マレイン酸の置換体からなる群より選択される1種以上であり、無水マレイン酸の置換体は、無水マレイン酸の2位および3位の水素の1以上が、独立して、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基およびハロゲンからなる群より選択される1種で置換されている。
【0033】
無水マレイン酸の置換体としては、例えば、無水マレイン酸の2位の水素が、炭素数1~6のアルキル基で置換された化合物、フェニル基で置換された化合物、ハロゲンで置換された化合物;無水マレイン酸の2位および3位の両方の水素が、独立して、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基またはハロゲンで置換された化合物が挙げられる。2位および3位の置換基は、同じでもよいし、異なっていてもよい。アルキル基は、直鎖でも分岐でもよい。ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素などが挙げられる。
【0034】
無水マレイン酸の置換体としては、例えば、メチル無水マレイン酸、2,3-ジメチル無水マレイン酸、エチル無水マレイン酸、2,3-ジエチル無水マレイン酸、プロピル無水マレイン酸、2,3-ジプロピル無水マレイン酸、フェニル無水マレイン酸、2,3-ジフェニル無水マレイン酸、フルオロ無水マレイン酸、2,3-ジフルオロ無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、2,3-ジクロロ無水マレイン酸、ブロモ無水マレイン酸、2,3-ジブロモ無水マレイン酸、ヨード無水マレイン酸、2,3-ジヨード無水マレイン酸などが挙げられる。
【0035】
一実施形態では、化合物(M)は、無水マレイン酸および無水マレイン酸の2位が炭素数1~6のアルキル基で置換された置換体からなる群より選択される1種以上である。別の実施形態では、化合物(M)は、無水マレイン酸を少なくとも含む。好適な実施形態では、化合物(M)は、無水マレイン酸およびメチル無水マレイン酸からなる群より選択される1種以上である。別の好適な実施形態では、化合物(M)は、無水マレイン酸である。
【0036】
イソシアネート化合物は、イソシアネート基(-NCO)を1個以上有する化合物である。イソシアネート化合物が有するイソシアネート基の数は、例えば、1~10個である。一実施形態では、イソシアネート化合物は、イソシアネート基を2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上または9個以上有する化合物を含む。別の実施形態では、イソシアネート化合物は、イソシアネート基を10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下または2個以下有する化合物を含む。さらに別の実施形態では、イソシアネート化合物は、イソシアネート基を2個、3個、4個または5個有する化合物を含む。
【0037】
イソシアネート化合物としては、公知のイソシアネート化合物を用いることができる。イソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環式ジイソシアネート化合物、芳香族ジイソシアネート化合物などが挙げられる。これらは、その構造の一部に、イソシアヌレート構造、ビウレット構造またはアロファネート構造を有する化合物であってもよい。
【0038】
本発明において、イソシアヌレート構造は、以下の構造I、構造IIおよび構造IIIからなる群より選択される1種以上を指す。構造式中、*は、それぞれ独立して、イソシアネート化合物の他の部分との連結部分または水素を表す。
【化1】
【0039】
本明細書において、ビウレット構造は、-N(CONH-)を指し、アロファネート構造は、-OC(O)NC(O)-NH-を指す。
【0040】
脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、一般式:OCN-R-NCOで表される化合物が挙げられる。式中、Rは、炭素数1,2、3、4、5、6、7、8、9または10の直鎖または分岐のアルキレン基である。脂肪族ジイソシアネート化合物の具体例としては、ブタンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0041】
脂環式ジイソシアネート化合物としては、例えば、ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0042】
芳香族ジイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルビフェニル、о-トリジンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0043】
また、イソシアネート化合物としては、例えば、特開2021-102714号公報の構造式(11)で表される繰り返し構造を有するポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートも挙げられる。
【0044】
本発明に係る樹脂組成物の一実施形態では、前記イソシアネート化合物が、イソシアヌレート構造を有する。別の実施形態では、イソシアネート化合物は、構造Iまたは構造IIのイソシアヌレート構造を有する。さらに別の実施形態では、イソシアネート化合物は、構造I、IIまたはIIIを有する脂環式ジイソシアネートである。さらに別の実施形態では、イソシアネート化合物は、構造I、IIまたはIIIを有するイソホロンジイソシアネートである。さらに別の実施形態では、イソシアネート化合物は、下記CAP1、CAP2およびCAP3からなる群より選択される1種以上である。
【化2】
【0045】
CAP1、CAP2およびCAP3は、それぞれ、イソシアネート基を3個有する場合を例示したが、別の実施形態では、イソシアネート化合物は、CAP1、CAP2およびCAP3のイソシアヌレート構造は変わらずに、イソホロンジイソシアネート由来の部分において、イソシアネート基を合計4個または5個有していてもよい。
【0046】
イソシアネート化合物の市販品としては、例えば、エボニック社のVESTANAT(登録商標) IPDI、TMDI、H12MDI;VESTANAT(登録商標)T 1890 E、T 1890 L、T 1890 M、T 1890/100などのVESTANATシリーズ、三井化学社のタケネート(登録商標)D-127Nなどのタケネートシリーズが挙げられる。
【0047】
マレイミド樹脂(A)は、化合物(M)とイソシアネート化合物の反応生成物である。化合物(M)由来の環状酸無水物基(例えば、無水マレイン酸)とイソシアネート化合物由来のイソシアネート基とが反応して、2,5-ジオキソ-1-ピロリル基が形成され、イソシアネート基が結合していたイソシアネート化合物の部分に、2,5-ジオキソ-1-ピロリル基の窒素原子で結合する。マレイミド樹脂(A)では、2,5-ジオキソ-1-ピロリル基の二重結合は重合していてもよい。
【0048】
マレイミド樹脂(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、1.10~5.00であり、好ましくは、1.20~3.00である。一実施形態では、マレイミド樹脂の分子量分布は、1.10以上、1.15以上、1.20以上、1.25以上、1.30以上、1.35以上、1.40以上、1.45以上、1.50以上、1.55以上、1.60以上、1.65以上、1.70以上、1.75以上、1.80以上、1.85以上、1.90以上、1.95以上、2.00以上、2.10以上、2.20以上、2.30以上、2.40以上、2.50以上、2.60以上、2.70以上、2.80以上、2.90以上、3.00以上、3.10以上、3.20以上、3.30以上、3.40以上、3.50以上、3.60以上、3.70以上、3.80以上、3.90以上、4.00以上、4.10以上、4.20以上、4.30以上、4.40以上、4.50以上、4.60以上、4.70以上、4.80以上または4.90以上である。別の実施形態では、マレイミド樹脂の分子量分布は、5.00以下、4.90以下、4.80以下、4.70以下、4.60以下、4.50以下、4.40以下、4.30以下、4.20以下、4.10以下、4.00以下、3.90以下、3.80以下、3.70以下、3.60以下、3.50以下、3.40以下、3.30以下、3.20以下、3.10以下、3.00以下、2.90以下、2.80以下、2.70以下、2.60以下、2.50以下、2.40以下、2.30以下、2.20以下、2.10以下、2.00以下、1.95以下、1.90以下、1.85以下、1.80以下、1.75以下、1.70以下、1.65以下、1.60以下、1.55以下、1.50以下、1.45以下、1.40以下、1.35以下、1.30以下、1.25以下、1.20以下または1.15以下である。
【0049】
マレイミド樹脂(A)のMwとMnは、Mw/Mnが1.10~5.00を満たせば特に限定されない。例えば、マレイミド樹脂のMwは、800~10000である。一実施形態では、マレイミド樹脂(A)のMwは、800以上、1000以上、2000以上、3000以上、4000以上、5000以上、6000以上、7000以上、8000以上または9000以上である。別の実施形態では、マレイミド樹脂(A)のMwは、10000以下、9000以下、8000以下、7000以下、6000以下、5000以下、4000以下、3000以下、2000以下または1000以下である。
【0050】
また、例えば、マレイミド樹脂(A)のMnは、500~9500である。一実施形態では、マレイミド樹脂(A)のMnは、500以上、1000以上、2000以上、3000以上、4000以上、5000以上、6000以上、7000以上、8000以上または9000以上である。別の実施形態では、マレイミド樹脂(A)のMnは、9500以下、9000以下、8000以下、7000以下、6000以下、5000以下、4000以下、3000以下、2000以下または1000以下である。
【0051】
樹脂組成物中のマレイミド樹脂(A)の割合は、特に限定されず、適宜調節すればよい。樹脂組成物中のマレイミド樹脂(A)の割合は、例えば、組成物の全固形分質量に対して、1~90質量%である。一実施形態では、樹脂組成物中のマレイミド樹脂(A)の割合は、樹脂組成物の全固形分質量に対して、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上または80質量%以上である。別の実施形態では、樹脂組成物中のマレイミド樹脂(A)の割合は、樹脂組成物の全固形分質量に対して、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下または5質量%以下である。
【0052】
本発明に係る樹脂組成物の一実施形態では、後述する樹脂(B)の固形分量に対する、マレイミド樹脂(A)の固形分量の割合は、1~100質量%である。一実施形態では、樹脂(B)の固形分量に対する、マレイミド樹脂(A)の固形分量の割合は、1質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上または90質量%以上である。別の実施形態では、樹脂(B)の固形分量に対する、マレイミド樹脂(A)の固形分量の割合は、100質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下または10質量%以下である。
【0053】
マレイミド樹脂(A)の合成方法としては、特に限定されず、公知の合成方法を選択して用いることができる。
【0054】
一実施形態では、マレイミド樹脂(A)は、
化合物(M)、イソシアネート化合物、溶剤および水を準備する工程(1);
溶剤および水の存在下、化合物(M)とイソシアネート化合物とを反応させてアミック酸を形成する工程(2);および
アミック酸を脱水してマレイミド樹脂(A)を形成する工程(3)によって、合成することができる。
【0055】
工程(1)で準備する溶剤としては、水と異なること以外は特に限定されず、公知の有機溶剤から適宜選択することができる。工程(1)で準備する溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等のエステル系溶剤;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶剤等が挙げられる。
【0056】
一実施形態では、工程(1)で準備する溶剤は、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチルおよび酢酸イソプロピルからなる群より選択される1種以上である。
【0057】
工程(1)で準備する水は、特に限定されず、公知の水から適宜選択することができる。水としては、例えば、脱イオン水、蒸留水、精製水、水道水などが挙げられる。
【0058】
工程(2)での溶剤の量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0059】
工程(2)での水の量は、例えば、イソシアネート化合物のイソシアネート基1モルに対して水1~10モルである。
【0060】
化合物(M)とイソシアネート化合物から形成されたアミック酸(以下、「第1アミック酸」ということがある。)は、無水マレイン酸由来の炭素炭素二重結合によって重合し得る。第1アミック酸は、重合して高分子量化、すなわち樹脂化してもよい。
【0061】
一実施形態では、工程(2)では、無水マレイン酸とCAP1とから、以下のAA1で表されるアミック酸が形成される。別の実施形態では、工程(2)では、無水マレイン酸とCAP2とから、以下のAA2で表されるアミック酸が形成される。さらに別の実施形態では、工程(2)では、無水マレイン酸とCAP3とから、以下のAA3で表されるアミック酸が形成される。
【化3】
【0062】
また、上述したように、CAP1のイソシアヌレート構造は変わらずに、イソホロンジイソシアネート由来の部分において、イソシアネート基を合計4個または5個有するイソシアネート化合物と無水マレイン酸とを反応させた場合は、AA1において、-NHC(O)CH=CHC(O)OH基の数が4個または5個となり得る。CAP2およびCAP3においても同様である。
【0063】
工程(2)での化合物(M)とイソシアネート化合物の量は、例えば、イソシアネート化合物のイソシアネート基1モルに対して、化合物(M)のモル数が0.90モル~2.00モルである。好適な実施形態では、工程(2)での化合物(M)モル数は、イソシアネート化合物のイソシアネート基1モルに対して、0.95~1.50モルである。別の実施形態では、工程(2)での化合物(M)モル数は、イソシアネート化合物のイソシアネート基1モルに対して、1.00~1.30モルである。
【0064】
工程(2)での反応温度は、例えば、30~150℃であり、30~100℃が好ましい。
【0065】
工程(2)での反応時間は、例えば、1~30時間であり、5~20時間が好ましい。
【0066】
工程(2)では、触媒としてのアミン(例えば、第三級アミン)を使用してもよいし、使用しなくてもよい。
【0067】
工程(2)ではアミック酸が形成される。本明細書では、アミック酸は、カルボキシル基およびアミド基(-C(O)NH-)を有する化合物を指す。アミック酸は、カルボキシル基およびアミド基をそれぞれ、1個以上有する。アミック酸は、例えば、カルボキシル基およびアミド基をそれぞれ独立して、1~10個有する。
【0068】
工程(3)でのアミック酸を脱水する方法としては、例えば、無水酢酸を用いて脱水する方法が挙げられる。この方法では、具体的には、例えば、アミック酸を含む反応液に、酢酸ナトリウムと無水酢酸を添加し、30~160℃で1~40時間撹拌することでアミック酸を脱水することが可能である。アミック酸分子から水分子が脱離し、アミド酸部分が環化してイミド環が形成されてマレイミド樹脂(A)が得られる。
【0069】
工程(3)でのアミック酸を脱水する別の方法としては、例えば、p-トルエンスルホン酸などの強酸を使用して、トルエンなどの疎水溶剤で脱水する方法などが挙げられる。この方法では、具体的には、例えば、アミック酸を含む反応液を加熱して還流下で共沸する水およびトルエンを冷却し、分離する。次いで、トルエンだけを系内に戻すことでアミック酸を脱水することが可能である。
【0070】
一例では、アミック酸AA1からマレイミド樹脂(A)である以下のMR1が形成される。別の一例では、アミック酸AA2からマレイミド樹脂(A)である以下のMR2が形成される。さらに別の一例では、アミック酸AA3からマレイミド樹脂(A)である以下のMR3が形成される。
【化4】
【0071】
また、マレイミド樹脂(A)は、その分子中の2,5-ジオキソ-1-ピロリル基の二重結合によって重合してさらに高分子量化してもよい。
【0072】
マレイミド樹脂(A)の合成方法は、工程(1)~(3)に加えて、他の工程を含んでいてもよい。他の工程としては、例えば、工程(2)で無水酢酸を使用してアミック酸を脱水した場合に、工程(3)で生成する酢酸などの副生成物を除去する工程(4);および工程(3)で得られたマレイミド樹脂を含む溶液ないし分散体の不揮発分または粘度を調整する工程(5)などが挙げられる。
【0073】
酸基および重合性不飽和基を有する樹脂(B)
酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)(以下、単に「樹脂(B)」ということがある。)は、樹脂組成物に高い光感度、優れたアルカリ現像性および高い弾性率を付与する働きを有する。
【0074】
樹脂(B)が有する酸基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられる。優れたアルカリ現像性を発現する観点から、酸基としてはカルボキシル基が好ましい。
【0075】
樹脂(B)が有する重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基(CH=CH-)、アクリロイル基(CH=CHC(O)-)、メタクリロイル基(CH=C(CH)C(O)-)、アリル基(CH=CHCH-)、イソプロペニル基(CH=C(CH)-)、1-プロペニル基(CHCH=CH-)、スチリル基(Ph-CH=CH-)、スチリルメチル基、マレイミド基、ビニルエーテル基などが挙げられる。
【0076】
重合性不飽和基において、ある重合性不飽和基が別の重合性不飽和基を包含する場合、そのある重合性不飽和基はその別の重合性不飽和基を除いた基を指す。例えば、ビニル基がアクリロイル基を包含する場合、ビニル基は、アクリロイル基を除いた基をいう。
【0077】
樹脂(B)としては、例えば、以下の樹脂(B1)~(B6)などが挙げられる。
酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)
酸基及び重合性不飽和基を有するウレタン樹脂(B2)
酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(B3)
酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)
酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)
酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂(B6)
【0078】
エポキシ樹脂(B1)からエステル樹脂(B6)について以下順に説明する。
【0079】
エポキシ樹脂(B1)
エポキシ樹脂(B1)としては、例えば、酸基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂、酸基及びウレタン結合を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂などが挙げられる。
【0080】
酸基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、例えば、エポキシ樹脂(b1-1)、不飽和一塩基酸(b1-2)、及び多塩基酸無水物(b1-3)の反応から得ることができる。
【0081】
酸基及びウレタン結合を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、例えば、エポキシ樹脂(b1-1)、不飽和一塩基酸(b1-2)、多塩基酸無水物(b1-3)、ポリイソシアネート化合物(b1-4)、及び水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(b1-5)の反応から得ることができる。
【0082】
エポキシ樹脂(b1-1)としては、複数のエポキシ基を有しているものであれば、その構造は特に限定されない。エポキシ樹脂(b1-1)としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、水添ビフェノール型エポキシ樹脂、フェニレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、トリヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、オキサゾリドン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0083】
エポキシ樹脂(b1-1)としては、例えば、特開2022-098702号公報に記載のエポキシ樹脂を用いることができる。
【0084】
ビスフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、水添ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、特開2022-098702号公報に記載のものを用いることができる。
【0085】
不飽和一塩基酸(b1-2)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、α-シアノ桂皮酸、β-スチリルアクリル酸、β-フルフリルアクリル酸等が挙げられる。この他、例えば、特開2022-098702号公報に記載の不飽和一塩基酸を用いることができる。
【0086】
多塩基酸無水物(b1-3)としては、例えば、脂肪族多塩基酸無水物、脂環式多塩基酸無水物、芳香族多塩基酸無水物およびこれらの酸ハロゲン化物等が挙げられる。
【0087】
脂肪族多塩基酸無水物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸の酸無水物等が挙げられる。
【0088】
脂肪族多塩基酸無水物の脂肪族炭化水素基は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。また、脂肪族多塩基酸無水物の脂肪族炭化水素基は、不飽和結合を有してもよい。
【0089】
本明細書では、脂環式多塩基酸無水物は、酸無水物基が脂環構造に結合しているものを指し、それ以外の構造部位における芳香環の有無は問わない。
【0090】
脂環式多塩基酸無水物としては、例えば、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサントリカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸の酸無水物等が挙げられる。
【0091】
芳香族多塩基酸無水物としては、例えば、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸の酸無水物等が挙げられる。
【0092】
一実施形態では、多塩基酸無水物(b1-3)は、テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸およびシクロヘキサンジカルボン酸無水物からなる群より選択される1種以上である。
【0093】
ポリイソシアネート化合物(b1-4)としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環式ジイソシアネート化合物、芳香族ジイソシアネート化合物、これらのイソシアヌレート変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体等が挙げられる。これらは上記マレイミド樹脂(A)で説明したイソシアネート化合物が挙げられる。この他、例えば、特開2022-098702号公報に記載の構造式(4)で表される繰り返し構造を有するポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを用いることができる。
【0094】
水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(b1-5)としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。この他、例えば、特開2022-098702号公報に記載の(ポリ)オキシアルキレン変性体、ラクトン変性体を用いることができる。
【0095】
一実施形態では、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(b1-5)の分子量は、1,000以下である。
【0096】
樹脂(B1)の製造方法としては、特に限定されず、例えば、反応原料の全てを一括で反応させる方法によりエポキシ樹脂(B1)を製造してもよいし、あるいは反応原料を順次反応させる方法で製造してもよい。中でも、反応の制御が容易であることから、先にエポキシ樹脂(b1-1)と不飽和一塩基酸(b1-2)とを反応させ、次いで、多塩基酸無水物(b1-3)を反応させる方法が好ましい。この反応は、例えば、エポキシ樹脂(b1-1)と不飽和一塩基酸(b1-2)とを塩基性触媒の存在下、100~150℃の温度範囲で反応させた後、反応系中に多塩基酸無水物(b1-3)を加え、80~140℃の温度範囲で反応させる方法等により行うことができる。
【0097】
エポキシ樹脂(b1-1)と不飽和一塩基酸(b1-2)との量は、例えば、エポキシ樹脂(b1-1)中のエポキシ基1モルに対し、不飽和一塩基酸(b1-2)が0.9~1.1モルの範囲である。また、多塩基酸無水物(b1-3)の量は、例えば、エポキシ樹脂(b1-1)中のエポキシ基1モルに対し、多塩基酸無水物(b1-3)が0.2~1.0モルの範囲である。
【0098】
反応では有機溶剤を用いてよい。有機溶剤としては、例えば、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等のグリコールエーテル溶剤等が挙げられる。ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテートとしては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。この他、例えば、特開2022-098701号公報、特開2022-098702号公報に記載のケトン溶剤、環状エーテル溶剤、エステル溶剤、芳香族溶剤、脂環族溶剤、アルコール溶剤;、グリコールエーテル溶剤などを用いてもよい。
【0099】
有機溶剤の使用量は、例えば、反応原料の合計質量に対し、0.1~5倍程度の範囲で用いることが好ましい。
【0100】
反応では塩基性触媒を用いてよい。塩基性触媒としては、例えば、トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィンが挙げられる。この他、例えば、特開2022-098701号公報、特開2022-098702号公報に記載のアミン化合物、四級アンモニウム塩類、ホスホニウム塩、有機錫化合物、有機金属化合物、無機錫化合物、無機金属化合物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属水酸化物などが挙げられる。
【0101】
塩基性触媒の添加量は、例えば、反応原料の合計100質量部に対して0.001~5質量部の範囲である。
【0102】
この他、酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)の製造方法としては、例えば、特開2022-098702号公報に記載の製造方法を用いてもよい。
【0103】
エポキシ樹脂(B1)の酸価は、例えば、30~150mgKOH/gの範囲であり、40~120mgKOH/gの範囲が好ましい。
【0104】
ウレタン樹脂(B2)
ウレタン樹脂(B2)としては、例えば、ポリイソシアネート化合物(b1-4)、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(b1-5)、カルボキシル基含有ポリオール化合物(b2-1)、及び必要に応じて多塩基酸無水物(b1-3)、必要に応じてカルボキシル基含有ポリオール化合物(b2-1)以外のポリオール化合物(b2-2)とを反応させて得られた樹脂;ポリイソシアネート化合物(b1-4)と、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(b1-5)と、多塩基酸無水物(b1-3)と、及びポリオール化合物(b2-2)と、を反応させて得られた樹脂等が挙げられる。
【0105】
カルボキシル基含有ポリオール化合物(b2-1)としては、例えば、特開2022-098702号公報に記載のものが挙げられる。
【0106】
ポリオール化合物(b2-2)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の脂肪族ポリオール化合物;ビフェノール、ビスフェノール等の芳香族ポリオール化合物などが挙げられる。この他、特開2022-098702号公報に記載の(ポリ)オキシアルキレン変性体、ラクトン変性体等を用いることができる。
【0107】
ウレタン樹脂(B2)の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0108】
反応では有機溶剤および塩基性触媒を用いてよい。有機溶剤および塩基性触媒は、それぞれ、エポキシ樹脂(B1)で説明した有機溶剤、塩基性触媒と同様である。
【0109】
アクリル樹脂(B3)
アクリル樹脂(B3)としては、例えば、特開2022-098702号公報に記載の酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂が挙げられる。
【0110】
アクリル樹脂(B3)の酸価は、例えば、30~150mgKOH/gの範囲であり、40~120mgKOH/gの範囲が好ましい。
【0111】
アミドイミド樹脂(B4)
アミドイミド樹脂(B4)としては、例えば、特開2022-098702号公報に記載の酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂、国際公開第2019/244868号に記載の酸基及び(メタ)アクリロイル基を有するアミドイミド樹脂などが挙げられる。一実施形態では、アミドイミド樹脂(B4)は、ポリイソシアネート化合物(b1-4)と、多塩基酸無水物(b1-3)とを反応原料として得られるものである。
【0112】
アミドイミド樹脂(B4)の製造方法としては、例えば、酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(b4-1)と、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(b1-5)及びエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(b4-2)の一方または両方とを含む反応原料の全てを一括で反応させる方法で製造してもよいし、反応原料を順次反応させる方法で製造してもよい。その生成物に酸無水物(b1-3)をさらに反応させてもよい。また、例えば、アミドイミド樹脂(b4-1)と水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(b1-5)との反応は、適当な塩基性触媒の存在下、80~140℃程度の温度条件下で加熱撹拌して行うことができる。アミドイミド樹脂(B4)の製造は、有機溶剤中で行ってもよく、また、塩基性触媒又は酸性触媒を用いてもよい。
【0113】
アミドイミド樹脂(b4-1)としては、例えば、ポリイソシアネート化合物(b1-4)と、多塩基酸無水物(b1-3)とを反応原料として得られるものが挙げられる。
【0114】
エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(b4-2)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、エポキシシクロへキシルメチル(メタ)アクリレート等のグリシジル基を有する(メタ)アクリレートモノマー;ジヒドロキシベンゼンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル化合物のモノ(メタ)アクリレート化物等が挙げられる。
【0115】
アミドイミド樹脂(B4)の酸価は、例えば、30~150mgKOH/gの範囲であり、40~120mgKOH/gの範囲が好ましい。
【0116】
アクリルアミド樹脂(B5)
アクリルアミド樹脂(B5)としては、例えば、特開2022-098702号公報に記載の酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂、国際公開第2019/244868号に記載の酸基及び(メタ)アクリロイル基を有するアクリルアミド樹脂などが挙げられる。
【0117】
アクリルアミド樹脂(B5)の酸価は、例えば、30~150mgKOH/gの範囲であり、40~120mgKOH/gの範囲が好ましい。
【0118】
エステル樹脂(B6)
エステル樹脂(B6)としては、例えば、特開2022-098702号公報に記載の酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂などが挙げられる。
【0119】
任意添加成分
樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば、重合性不飽和基を有する化合物、光重合開始剤、硬化剤、硬化促進剤、他の樹脂、有機溶剤、重合禁止剤、酸化防止剤、難燃剤、充填剤、顔料、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、紫外線安定剤、保存安定化剤等の成分を含んでいてもよい。
【0120】
重合性不飽和基を有する化合物
樹脂組成物は、マレイミド樹脂(A)及び樹脂(B)に加えて、重合性不飽和基を有する化合物を更に含有してもよい。重合性不飽和基を有する化合物は、酸基を有さない化合物である。
【0121】
重合性不飽和基を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、特開2022-098702号公報、国際公開第2019/244868号に記載の(メタ)アクリレートモノマーなどが挙げられる。
【0122】
光重合開始剤
一実施形態では、樹脂組成物は、光重合開始剤を含む。光重合開始剤を含有する樹脂組成物は、即ち、硬化性樹脂組成物である。光重合開始剤としては、例えば、特開2022-098702号公報に記載の光重合開始剤などが挙げられる。別の実施形態では、光重合開始剤は、光ラジカル開始剤、光アニオン開始剤または光カチオン開始剤である。
【0123】
光重合開始剤を用いる場合、光重合開始剤の含有量は、マレイミド樹脂(A)と酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)との合計100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましい。
【0124】
硬化剤
硬化剤としては、例えば、エポキシ樹脂(B1)以外のエポキシ樹脂アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノール樹脂硬化剤等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ樹脂が好ましい。
【0125】
硬化剤としてのエポキシ樹脂としては、例えば、特開2022-001612号公報に記載のエポキシ樹脂などが挙げられる。一実施形態では、硬化剤のエポキシ樹脂は、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂である。別の実施形態では、硬化剤のエポキシ樹脂は、ノボラック型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂である。
【0126】
アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノール樹脂硬化剤としては、それぞれ、例えば、特開2022-001612号公報に記載のアミン硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノール樹脂硬化剤などが挙げられる。
【0127】
硬化剤を用いる場合、硬化剤の含有量は、マレイミド樹脂(A)及び樹脂(B)の合計量100質量部に対して、10~40質量部であることが好ましい。
【0128】
硬化促進剤
硬化促進剤としては、特に制限されないが、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、尿素系硬化促進剤等が挙げられる。硬化促進剤としては、例えば、特開2022-001612号公報に記載の硬化促進剤を用いることができる。
【0129】
一実施形態では、硬化促進剤は、2-エチル-4-メチルイミダゾール、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)である。
【0130】
硬化促進剤を用いる場合、硬化促進剤の含有量は、マレイミド樹脂(A)及び樹脂(B)の合計量100質量部に対して、0.01~5質量部であることが好ましい。
【0131】
他の樹脂
他の樹脂としては、例えば、特開2022-001612号公報に記載のものを用いることができる。
【0132】
他の樹脂を用いる場合、他の樹脂の含有量は、樹脂組成物全体の50質量%以下であることが好ましい。
【0133】
有機溶剤
有機溶剤は、樹脂組成物の粘度を調整する機能を有することができる。有機溶剤の具体例としては、特に制限されないが、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等のエステル系溶剤;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶剤等が挙げられる。
【0134】
有機溶剤を用いる場合、有機溶剤の含有量は、樹脂組成物の総量に対して、90質量%以下であることが好ましく、10~90質量%であることがより好ましく、20~80質量%であることが更に好ましい。
【0135】
重合禁止剤
重合禁止剤としては、例えば、特開2022-098702号公報に記載の重合禁止剤などが挙げられる。
【0136】
酸化防止剤
酸化防止剤としては、例えば、重合禁止剤で例示した化合物と同様のものを用いることができる。
【0137】
難燃剤
難燃剤としては、例えば、特開2022-001612号公報に記載の難燃剤を用いることができる。
【0138】
難燃剤を用いる場合、難燃剤の使用量は、マレイミド樹脂(A)及び樹脂(B)の合計量100質量部に対して、0.1~50質量部であることが好ましい。
【0139】
充填剤
充填剤としては、例えば、特開2022-001612号公報に記載の充填剤を用いることができる。
【0140】
充填剤を用いる場合、充填剤の使用量は、マレイミド樹脂(A)及び樹脂(B)の合計量100質量部に対して、0.5~95質量部であることが好ましい。
【0141】
本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、特に制限されず、必須成分および任意成分を、ロール等の混練機を用いて混練することで製造することができる。
【0142】
(硬化物)
本発明の硬化物は、上記樹脂組成物の硬化物である。換言すると、本発明の硬化物は、樹脂組成物に、活性エネルギー線を照射して硬化させることで得られるものである。かかる本実施形態の硬化物は、少なくとも耐熱性及び塗膜外観に優れた絶縁材料として機能し得る。
【0143】
活性エネルギー線、紫外線発生源、活性エネルギー線の積算光量としては、例えば、それぞれ、特開2022-098702号公報に記載の活性エネルギー線、紫外線発生源、活性エネルギー線の積算光量が挙げられる。
【0144】
また、硬化性樹脂組成物を硬化反応させて硬化物を得る他の方法としては、例えば、加熱硬化が挙げられる。加熱硬化する際の加熱温度は、特に制限されないが、100~300℃であり、加熱時間としては、1~24時間であることが好ましい。
【0145】
本発明の硬化性樹脂組成物又は硬化物が用いられる用途としては、例えば、特開2022-001612号公報に記載の用途が挙げられる。硬化物が優れた耐熱性及び塗膜外観を有するといった特性を生かし、本発明の硬化性樹脂組成物又は硬化物は、絶縁材料、半導体封止材料、半導体装置、プリプレグ、フレキシルブル配線基板、回路基板、及び、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、多層プリント配線板、繊維強化複合材料、前記複合材料を硬化させてなる成形品に好適に適用することができる。
【0146】
(絶縁材料)
本発明の絶縁材料は、上記樹脂組成物からなる。好適に、絶縁材料は、樹脂組成物の硬化物であり、樹脂組成物を、活性エネルギー線の照射によって硬化させて得られるものである。本発明の絶縁材料は、耐熱性及び塗膜外観に優れ、また、低誘電特性及び伸度などにも優れる。
【0147】
絶縁材料としては、ビルドアップ基板用層間絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム等の回路基板用絶縁材料、回路基板用絶縁材料及び電子部品内蔵用基板用の絶縁材料などが挙げられる。
【0148】
樹脂組成物からビルドアップ基板を製造する方法としては、例えば、特開2022-001612号公報に記載のビルドアップ基板の製造方法が挙げられる。
【0149】
(レジスト部材)
本発明のレジスト部材は、上記樹脂組成物からなる、または樹脂組成物を含む。本発明のレジスト部材は、耐熱性及び塗膜外観に優れ、また、低誘電特性及び伸度などにも優れる。
【0150】
レジスト部材は、例えば、樹脂組成物を基材上に塗布し、60~100℃程度の温度範囲で乾燥させた後、所望のパターンが形成されたフォトマスクを通して活性エネルギー線にて露光させ、アルカリ水溶液にて未露光部を現像し、更に140~180℃程度の温度範囲で加熱硬化させて得ることができる。基材としては、例えば、銅、アルミニウム等の金属張積層板などが挙げられる。
【0151】
(物品)
本発明の物品は、塗膜を有し、前記塗膜が、上記硬化物である。
【実施例0152】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0153】
実施例での表中の配合量の単位は、別段の記載のない限り、質量部である。
【0154】
マレイミド樹脂の合成で用いた材料は以下のとおりである。
化合物(M):無水マレイン酸
イソシアネート化合物1:イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体、EVONIK社製、商品名「VESTANAT(登録商標)T-1890/100」、NCO%=17.2%
イソシアネート化合物2:水添キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体、三井化学社製、商品名「タケネート(登録商標)D-127N」、NCO%=13.8%、不揮発分75.5質量%
有機溶剤:メチルエチルケトン(MEK)
【0155】
樹脂(B)の合成で用いた材料は以下のとおりである。
エポキシ樹脂(b1-1):オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、DIC社製、商品名「EPICLON(登録商標) N-680」、軟化点86℃、エポキシ当量:214g/eq
不飽和一塩基酸(b1-2):アクリル酸
多塩基酸無水物(b1-3):テトラヒドロ無水フタル酸
多塩基酸無水物(b1-3):無水トリメリット酸
多塩基酸無水物(b1-3):無水コハク酸
ポリイソシアネート化合物(b1-4):イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体、EVONIK社製、商品名「VESTANAT(登録商標)T-1890/100」
水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(b1-5):ペンタエリスリトールポリアクリレート混合物、東亜合成社製、商品名「アロニックス(登録商標)M-306」、水酸基価:159.7mgKOH/g
エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(b4-2):グリシジルメタクリレート
有機溶剤:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
酸化防止剤:ジブチルヒドロキシトルエン
熱重合禁止剤:メトキノン
塩基性触媒:トリフェニルホスフィン
【0156】
樹脂組成物の調製に用いた材料は以下のとおりである。
硬化剤:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、DIC社製、商品名「EPICLON(登録商標) N-680」
有機溶剤:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
光重合開始剤:2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、IGM Resins社製、商品名「Omnirad 907」
エステル化反応触媒:2-エチル-4-メチルイミダゾール
その他のアクリレートモノマー:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
有機顔料:フタロシアニングリーン
【0157】
比較マレイミド化合物:4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、大和化成工業社製、商品名「BMI-1000」
【0158】
使用した装置および器具は以下のとおりである。
紫外線源:メタルハライドランプ
銅箔:古河産業社製、電解銅箔「F2-WS」、箔厚18μm
粘弾性測定装置:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置、商品名「RSAII」
引張試験機:島津製作所社製、精密万能試験機オートグラフ、商品名「AG-IS」
PETフィルム:東洋紡社製、商品名「コスモシャイン()A4300」、膜厚125μm
【0159】
分子量分布測定
マレイミド樹脂(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、以下の測定条件で、GPCによって測定した。
測定装置:東ソー社製、商品名「HLC(登録商標)-8420 GPC」
カラム:「HXL-L」、「TSKGEL(登録商標)G2000HXL」、「TSKGEL(登録商標)G2000HXL」、「TSKGEL(登録商標)G3000HXL」、「TSKGEL(登録商標)G4000HXL」、全て東ソー社製の商品名
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー社製、商品名「GPCワークステーション EcoSEC(登録商標)-WorkStation」
測定条件:カラム温度 40℃展開溶媒:テトラヒドロフラン流速:1.0ml/分
標準物質:分子量既知の単分散ポリスチレン
試料:合成例で得られたマレイミド樹脂の固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したろ液(50μl)。
【0160】
合成例1:マレイミド樹脂(A1)の合成
温度計、撹拌器及び還流冷却器を備えたフラスコに、メチルエチルケトン303質量部を入れ、イソシアネート化合物1を244質量部及び無水マレイン酸103質量部を溶解し、50℃に昇温した。その混合物に蒸留水27質量部を分割して添加し、50℃で15時間反応させた。13C NMRによってアミック酸が生成していることを確認した。次いで、そのフラスコに酢酸ナトリウム16質量部、無水酢酸306質量部を添加し、70℃で20時間撹拌した。次いで、メチルエチルケトンと蒸留水を添加し、水酸化ナトリウム水溶液を徐々に添加し、水層のpHが7になるまで水洗した。減圧して水を除去した後、不揮発分50質量%となるようにメチルエチルケトンを添加し、マレイミド樹脂(A1)を得た。マレイミド樹脂(A1)の固形分酸価は、2mgKOH/gであった。マレイミド樹脂(A1)の分子量分布(Mw/Mn)は、1.41であった。
【0161】
合成例2:マレイミド樹脂(A2)の合成
合成例1において、244質量部のイソシアネート化合物1から304質量部のイソシアネート化合物2に変えたこと、50℃での反応時間を18時間に変えたことおよび70℃での反応時間を23時間に変えたこと以外は、合成例1と同様に各工程を行い、マレイミド樹脂(A2)を含む溶液を得た。マレイミド樹脂(A2)の固形分酸価は、1.5mgKOH/gであった。マレイミド樹脂(A2)の分子量分布(Mw/Mn)は、1.53であった。
【0162】
エポキシ樹脂(B1)の合成
温度計、撹拌器及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート123質量部を入れ、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(b1-1)214質量部を溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン0.9質量部、メトキノン0.2質量部加えた後、アクリル酸(b1-2)72質量部、トリフェニルホスフィン1.4質量部を添加し、空気を吹き込みながら120℃で10時間反応を行なった。次いで、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート72質量部、テトラヒドロ無水フタル酸(b1-3)76質量部を加え110℃で3時間反応し、酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)を得た。エポキシ樹脂(B1)の不揮発分は65質量%であり、固形分酸価は80mgKOH/gであった。
【0163】
アミドイミド樹脂(B4)の合成
温度計、撹拌器及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート499.7質量部を入れ、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(b1-4)244.3質量部及び無水トリメリット酸(b1-3)192.0質量部を溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン1.0質量部を添加した。窒素雰囲気下で160℃、6時間反応させ、NCO%が0.1以下となっていることを確認した。次いで、メトキノン0.4質量部を加えた後、ペンタエリスリトールポリアクリレート混合物(b1-5)147.6質量部及びトリフェニルホスフィン3.5質量部を添加し、空気を吹き込みながら110℃で5時間反応を行なった。その後、グリシジルメタクリレート(b4-2)165.0質量部を添加し、110℃で6時間反応させた。次に、無水コハク酸(b1-3)110.4質量部を加え110℃で5時間反応させて、酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)を得た。アミドイミド樹脂(B4)の固形分酸価は、80mgKOH/gであった。
【0164】
実施例1
表1に示す配合でマレイミド樹脂(A1)、エポキシ樹脂(B1)、硬化剤、有機溶剤、光重合開始剤、エステル化反応触媒、アクリレートモノマーおよび有機顔料を配合し、ロールミルで混練して樹脂組成物を得た。
【0165】
実施例2~5
実施例1において、配合を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を得た。
【0166】
比較例1
実施例1において、マレイミド樹脂(A1)を比較マレイミド化合物に変えたこと以外は、実施例1と同様に比較樹脂組成物を得た。
【0167】
【表1】
【0168】
光感度の評価
実施例1~5及び比較例1で得られた樹脂組成物および比較樹脂組成物を、それぞれ、アプリケーターを用いてガラス基材上に膜厚50μmとなるように塗布した後、80℃で30分間乾燥させた。次いで、コダック社製のステップタブレットNo.2を介して10kJ/mの紫外線を照射した。これを1質量%炭酸ナトリウム水溶液(アルカリ水溶液)で180秒現像し、残存した段数で評価した。評価結果を表1に合わせて示す。残存段数が多いほど、光感度が高いことを示す。
【0169】
アルカリ現像性の評価
実施例1~5及び比較例1で得られた樹脂組成物および比較樹脂組成物を、それぞれ、アプリケーターを用いてガラス基材上に膜厚50μmとなるように塗布した後、80℃で50分間、60分間、70分間、80分間、90分間それぞれ乾燥させ、乾燥時間が異なるサンプルを作製した。これらを1質量%炭酸ナトリウム水溶液(アルカリ水溶液)で30℃で180秒間現像し、基材上に残渣が残らなかったサンプルの80℃での乾燥時間を乾燥管理幅(分)として評価した。評価結果を表1に合わせて示す。乾燥管理幅(分)が長いほど、アルカリ現像性が高いことを示す。
【0170】
実施例6~10
表2に示す配合で各成分を配合し、ロールミルで混練して樹脂組成物を得た。
【0171】
比較例2
実施例6において、マレイミド樹脂(A1)を比較マレイミド化合物に変えたこと以外は、実施例6と同様に比較樹脂組成物を得た。
【0172】
【表2】
【0173】
耐熱性の評価
実施例6~10及び比較例2で得られた樹脂組成物および比較樹脂組成物を、それぞれ、アプリケーターを用いて銅箔上に膜厚50μmとなるように塗布し、80℃で30分乾燥させた。次いで、10kJ/mの紫外線を照射した後、160℃で1時間加熱して、硬化塗膜を得た。次いで、硬化塗膜を銅箔から剥離して硬化物を得た。この硬化物から6mm×35mmの試験片1を切り出し、粘弾性測定装置を用いて引張り法(周波数1Hz、昇温速度3℃/分)によって、弾性率変化が最大となる温度をガラス転移温度(℃)として評価した。評価結果を表2に合わせて示す。ガラス転移温度が高いほど、耐熱性に優れることを示す。
【0174】
弾性率の測定方法
上記耐熱性の評価と同様に、実施例5~8及び比較例2の樹脂組成物から硬化物を得た。その硬化物から10mm×80mmの試験片2を切り出した。その試験片2について、精密万能試験機を用いて、以下の測定条件で引張試験を行った。試験片2が破断するまでの弾性率(MPa)を測定した。評価結果を表2に合わせて示す。
測定条件
温度:23℃
湿度:50%
標線間距離:20mm
支点間距離:20mm
引張速度:10mm/分
【0175】
塗膜外観
実施例6~10及び比較例2で得られた樹脂組成物および比較樹脂組成物を、それぞれ、バーコーター(#12)でPETフィルムに塗布し、80℃で5分乾燥させた。次いで、5kJ/mの紫外線を照射して硬化させ、膜厚10μmの塗膜を得た。この塗膜の外観について、白濁の有無を評価した。評価結果を表2に合わせて示す。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明によれば、高い光感度、優れたアルカリ現像性を有し、高い耐熱性、高い弾性率および優れた塗膜外観を有する硬化物を形成可能な樹脂組成物を提供することができる。