(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057520
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】マレイミド樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/34 20060101AFI20240417BHJP
C08G 18/79 20060101ALI20240417BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
C08G18/34 010
C08G18/79 020
C08G73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164324
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 駿介
【テーマコード(参考)】
4J034
4J043
【Fターム(参考)】
4J034CA24
4J034CE01
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC35
4J034HC45
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC54
4J034HC61
4J034HC71
4J034HC73
4J034QB03
4J034QB14
4J034RA14
4J043PA04
4J043PB03
4J043QB58
4J043SA12
4J043SB01
4J043TA21
4J043XA13
4J043YA06
4J043YA07
4J043ZB47
(57)【要約】
【課題】高い耐熱性、低い弾性率および優れた塗膜外観を有する硬化物を形成可能なマレイミド樹脂の製造方法を提供すること。
【解決手段】化合物(M)、イソシアネート化合物、溶剤および水を準備する工程(1);溶剤および水の存在下、化合物(M)とイソシアネート化合物とを反応させてアミック酸を形成する工程(2);およびアミック酸を脱水してマレイミド樹脂を形成する工程(3)を含み、化合物(M)は、無水マレイン酸および無水マレイン酸の置換体からなる群より選択される1種以上であり、無水マレイン酸の置換体は、その水素の1以上が、独立して、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基またはハロゲンで置換されており、溶剤は、水とは異なり、工程(2)での水の量が、イソシアネート基1モルに対して、水1~10モルであり、マレイミド樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が、1.10~5.00である、マレイミド樹脂の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物(M)、イソシアネート化合物、溶剤および水を準備する工程(1);
前記溶剤および前記水の存在下、前記化合物(M)と前記イソシアネート化合物とを反応させてアミック酸を形成する工程(2);および
前記アミック酸を脱水してマレイミド樹脂を形成する工程(3)
を含み、
前記化合物(M)は、無水マレイン酸および無水マレイン酸の置換体からなる群より選択される1種以上であり、
前記無水マレイン酸の置換体は、無水マレイン酸の2位および3位の水素の1以上が、独立して、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基およびハロゲンからなる群より選択される1種で置換されており、
前記溶剤は、水とは異なり、
前記工程(2)での水の量が、イソシアネート基1モルに対して、水1~10モルであり、
前記マレイミド樹脂の分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が、1.10~5.00である、マレイミド樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記イソシアネート化合物が、イソシアヌレート構造を有する、請求項1に記載のマレイミド樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記イソシアネート化合物が、下記CAP1、CAP2およびCAP3からなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載のマレイミド樹脂の製造方法。
【化1】
【請求項4】
前記溶剤が、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチルおよび酢酸イソプロピルからなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載のマレイミド樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マレイミド樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SiC型パワー半導体の封止材用樹脂の分野では、高耐熱性と低弾性率を有する熱硬化性樹脂の要求が高まっている。
【0003】
マレイミド樹脂は、その硬化物特性として従来のエポキシ樹脂-フェノール樹脂硬化系と比較して優れた耐熱性(高ガラス転移温度及び高耐熱分解性)を発現することから、パワー半導体封止材用樹脂としての検討がなされている。しかし、市場で流通している4,4’-ジアミノジフェニルメタン(DDM)骨格を有するビスマレイミドは、高耐熱性を有するものの弾性率が高いためハンドリング性が悪く、材料としての適用範囲が限られる。
【0004】
また、マレイミド樹脂は、UV硬化性を有するため、UV硬化の用途へも展開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1では、無水マレイン酸とイソシアネート化合物を脱炭酸してなるマレイミド化合物の製造方法を開示している。
【0007】
しかし、特許文献1には無水マレイン酸とイソシアネート化合物の反応生成物として、比較的低分子量のマレイミド化合物のみが開示されており、無水マレイン酸とイソシアネート化合物の重合体、すなわちマレイミド樹脂については開示がない。
【0008】
また、本発明者が検討したところ、特許文献1の製造方法では、一部の生成物にゲル化が確認され、良好な塗膜外観を有する硬化物が得られなかった。
【0009】
そこで、本発明は、高い耐熱性、低い弾性率および優れた塗膜外観を有する硬化物を形成可能なマレイミド樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るマレイミド樹脂の製造方法は、
化合物(M)、イソシアネート化合物、溶剤および水を準備する工程(1);
前記溶剤および前記水の存在下、前記化合物(M)と前記イソシアネート化合物とを反応させてアミック酸を形成する工程(2);および
前記アミック酸を脱水してマレイミド樹脂を形成する工程(3)
を含み、
前記化合物(M)は、無水マレイン酸および無水マレイン酸の置換体からなる群より選択される1種以上であり、
前記無水マレイン酸の置換体は、無水マレイン酸の2位および3位の水素の1以上が、独立して、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基およびハロゲンからなる群より選択される1種で置換されており、
前記溶剤は、水とは異なり、
前記工程(2)での水の量が、イソシアネート基1モルに対して、水1~10モルであり、
前記マレイミド樹脂の分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が、1.10~5.00である、マレイミド樹脂の製造方法である。これにより、高い耐熱性、低い弾性率および優れた塗膜外観を有する硬化物を形成可能なマレイミド樹脂を製造可能である。
【0011】
本発明に係るマレイミド樹脂の製造方法の一実施形態では、前記イソシアネート化合物が、イソシアヌレート構造を有する。
【0012】
本発明に係るマレイミド樹脂の製造方法の一実施形態では、前記イソシアネート化合物が、下記CAP1、CAP2およびCAP3からなる群より選択される1種以上である。
【化1】
【0013】
本発明に係るマレイミド樹脂の製造方法の一実施形態では、前記溶剤が、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチルおよび酢酸イソプロピルからなる群より選択される1種以上である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高い耐熱性、低い弾性率および優れた塗膜外観を有する硬化物を形成可能なマレイミド樹脂の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。これらの記載は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0016】
本発明において、マレイミド樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、実施例に記載の方法によって測定する。
【0017】
本発明において、2以上の実施形態を任意に組み合わせることができる。
【0018】
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよびメタクリレートからなる群より選択される1種以上を表す。
【0019】
本明細書に記載の材料、成分、化合物、触媒および溶剤は、別段の記載がない限り、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
本明細書において、数値範囲は、別段の記載がない限り、その範囲の上限値および下限値を含むことを意図している。例えば、1~10モルは、1モル以上10モル以下の範囲を意味する。
【0021】
本明細書において、第1、第2、工程(1)、工程(2)、工程(3)などの符号は、ある要素、材料、工程などを他の要素、材料、工程などと区別するために使用しており、その要素または材料の多少および工程の順序を限定することを意図するものではない。
【0022】
本発明において、マレイミド樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、実施例に記載の方法によって測定する。
【0023】
(マレイミド樹脂の製造方法)
本発明に係るマレイミド樹脂の製造方法は、
化合物(M)、イソシアネート化合物、溶剤および水を準備する工程(1);
前記溶剤および前記水の存在下、前記化合物(M)と前記イソシアネート化合物とを反応させてアミック酸を形成する工程(2);および
前記アミック酸を脱水してマレイミド樹脂を形成する工程(3)
を含み、
前記化合物(M)は、無水マレイン酸および無水マレイン酸の置換体からなる群より選択される1種以上であり、
前記無水マレイン酸の置換体は、無水マレイン酸の2位および3位の水素の1以上が、独立して、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基およびハロゲンからなる群より選択される1種で置換されており、
前記溶剤は、水とは異なり、
前記工程(2)での水の量が、イソシアネート基1モルに対して、水1~10モルであり、
前記マレイミド樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が、1.10~5.00である、マレイミド樹脂の製造方法である。
【0024】
以下、マレイミド樹脂の製造方法の各工程について説明する。
【0025】
工程(1)
工程(1)では、化合物(M)、イソシアネート化合物、溶剤および水を準備する。
【0026】
化合物(M)は、無水マレイン酸および無水マレイン酸の置換体からなる群より選択される1種以上である。無水マレイン酸の置換体は、無水マレイン酸の2位および3位の水素の1以上が、独立して、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基およびハロゲンからなる群より選択される1種で置換されている。
【0027】
無水マレイン酸の置換体としては、例えば、無水マレイン酸の2位の水素が、炭素数1~6のアルキル基で置換された化合物、フェニル基で置換された化合物、ハロゲンで置換された化合物;無水マレイン酸の2位および3位の両方の水素が、独立して、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基またはハロゲンで置換された化合物が挙げられる。2位および3位の置換基は、同じでもよいし、異なっていてもよい。アルキル基は、直鎖でも分岐でもよい。ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素などが挙げられる。
【0028】
無水マレイン酸の置換体としては、例えば、メチル無水マレイン酸、2,3-ジメチル無水マレイン酸、エチル無水マレイン酸、2,3-ジエチル無水マレイン酸、プロピル無水マレイン酸、2,3-ジプロピル無水マレイン酸、フェニル無水マレイン酸、2,3-ジフェニル無水マレイン酸、フルオロ無水マレイン酸、2,3-ジフルオロ無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、2,3-ジクロロ無水マレイン酸、ブロモ無水マレイン酸、2,3-ジブロモ無水マレイン酸、ヨード無水マレイン酸、2,3-ジヨード無水マレイン酸などが挙げられる。
【0029】
一実施形態では、化合物(M)は、無水マレイン酸および無水マレイン酸の2位が炭素数1~6のアルキル基で置換された置換体からなる群より選択される1種以上である。別の実施形態では、化合物(M)は、無水マレイン酸を少なくとも含む。好適な実施形態では、化合物(M)は、無水マレイン酸およびメチル無水マレイン酸からなる群より選択される1種以上である。別の好適な実施形態では、化合物(M)は、無水マレイン酸である。
【0030】
イソシアネート化合物は、イソシアネート基(-NCO)を1個以上有する化合物である。イソシアネート化合物が有するイソシアネート基の数は、例えば、1~10個である。一実施形態では、イソシアネート化合物は、イソシアネート基を2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上または9個以上有する化合物を含む。別の実施形態では、イソシアネート化合物は、イソシアネート基を10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下または2個以下有する化合物を含む。さらに別の実施形態では、イソシアネート化合物は、イソシアネート基を2個、3個、4個または5個有する化合物を含む。
【0031】
イソシアネート化合物としては、公知のイソシアネート化合物を用いることができる。イソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環式ジイソシアネート化合物、芳香族ジイソシアネート化合物などが挙げられる。これらは、その構造の一部に、イソシアヌレート構造、ビウレット構造またはアロファネート構造を有する化合物であってもよい。
【0032】
本発明において、イソシアヌレート構造は、以下の構造I、構造IIおよび構造IIIからなる群より選択される1種以上を指す。構造式中、*は、それぞれ独立して、イソシアネート化合物の他の部分との連結部分または水素を表す。
【化2】
【0033】
本明細書において、ビウレット構造は、-N(CONH-)2を指し、アロファネート構造は、-OC(O)NC(O)-NH-を指す。
【0034】
脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、一般式:OCN-R-NCOで表される化合物が挙げられる。式中、Rは、炭素数1,2、3、4、5、6、7、8、9または10の直鎖または分岐のアルキレン基である。脂肪族ジイソシアネート化合物の具体例としては、ブタンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0035】
脂環式ジイソシアネート化合物としては、例えば、ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0036】
芳香族ジイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルビフェニル、о-トリジンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0037】
また、イソシアネート化合物としては、例えば、特開2021-102714号公報の構造式(11)で表される繰り返し構造を有するポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートも挙げられる。
【0038】
本発明に係る樹脂組成物の一実施形態では、前記イソシアネート化合物が、イソシアヌレート構造を有する。別の実施形態では、イソシアネート化合物は、構造Iまたは構造IIのイソシアヌレート構造を有する。さらに別の実施形態では、イソシアネート化合物は、構造I、IIまたはIIIを有する脂環式ジイソシアネートである。さらに別の実施形態では、イソシアネート化合物は、構造I、IIまたはIIIを有するイソホロンジイソシアネートである。さらに別の実施形態では、イソシアネート化合物は、下記CAP1、CAP2およびCAP3からなる群より選択される1種以上である。
【化3】
【0039】
CAP1、CAP2およびCAP3は、それぞれ、イソシアネート基を3個有する場合を例示したが、別の実施形態では、イソシアネート化合物は、CAP1、CAP2およびCAP3のイソシアヌレート構造は変わらずに、イソホロンジイソシアネート由来の部分において、イソシアネート基を合計4個または5個有していてもよい。
【0040】
イソシアネート化合物の市販品としては、例えば、エボニック社のVESTANAT(登録商標) IPDI、TMDI、H12MDI;VESTANAT(登録商標)T 1890 E、T 1890 L、T 1890 M、T 1890/100などのVESTANATシリーズ、三井化学社のタケネート(登録商標)D-127Nなどのタケネートシリーズが挙げられる。
【0041】
工程(1)で準備する溶剤は、水と異なること以外は特に限定されず、公知の有機溶剤から適宜選択することができる。工程(1)で準備する溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等のエステル系溶剤;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶剤等が挙げられる。一実施形態では、工程(1)で準備する溶剤は、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチルおよび酢酸イソプロピルからなる群より選択される1種以上である。
【0042】
工程(1)で準備する水は、特に限定されず、公知の水から適宜選択することができる。水としては、例えば、脱イオン水、蒸留水、精製水、水道水などが挙げられる。
【0043】
工程(2)
工程(2)では、溶剤および水の存在下、化合物(M)とイソシアネート化合物とを反応させてアミック酸を形成する。
【0044】
工程(2)での溶剤の量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。例えば、工程(2)での溶剤の量は、化合物(M)およびイソシアネート化合物などの不揮発分の割合が5~80質量%である量が挙げられる。
【0045】
工程(2)での水の量は、例えば、イソシアネート化合物のイソシアネート基1モルに対して水1~10モルである。一実施形態では、工程(2)での水のモル数は、イソシアネート化合物のイソシアネート基1モルに対して、1.0モル以上、1.5モル以上、2.0モル以上、2.5モル以上、3.0モル以上、3.5モル以上、4.0モル以上、4.5モル以上、5.0モル以上、5.5モル以上、6.0モル以上、6.5モル以上、7.0モル以上、7.5モル以上、8.0モル以上、8.5モル以上、9.0モル以上または9.5モル以上である。別の実施形態では、工程(2)での水のモル数は、イソシアネート化合物のイソシアネート基1モルに対して、10.0モル以下、9.5モル以下、9.0モル以下、8.5モル以下、8.0モル以下、7.5モル以下、7.0モル以下、6.5モル以下、6.0モル以下、5.5モル以下、5.0モル以下、4.5モル以下、4.0モル以下、3.5モル以下、3.0モル以下、2.5モル以下、2.0モル以下または1.5モル以下である。
【0046】
工程(2)での化合物(M)とイソシアネート化合物の量は、例えば、イソシアネート化合物のイソシアネート基1モルに対して、化合物(M)のモル数が0.90モル~2.00モルである。一実施形態では、工程(2)での化合物(M)モル数は、イソシアネート化合物のイソシアネート基1モルに対して、0.90モル以上、0.95モル以上、1.00モル以上、1.10モル以上、1.20モル以上、1.30モル以上、1.40モル以上、1.50モル以上、1.60モル以上、1.70モル以上、1.80モル以上または1.90モル以上である。別の実施形態では、工程(2)での化合物(M)モル数は、イソシアネート化合物のイソシアネート基1モルに対して、2.00モル以下、1.90モル以下、1.80モル以下、1.70モル以下、1.60モル以下、1.50モル以下、1.40モル以下、1.30モル以下、1.20モル以下、1.10モル以下、1.00モル以下または0.95モル以下である。好適な実施形態では、工程(2)での化合物(M)モル数は、イソシアネート化合物のイソシアネート基1モルに対して、0.95~1.50モルである。別の実施形態では、工程(2)での化合物(M)モル数は、イソシアネート化合物のイソシアネート基1モルに対して、1.00~1.30モルである。
【0047】
工程(2)での反応温度は、例えば、30~150℃であり、30~100℃が好ましい。
【0048】
工程(2)での反応時間は、例えば、1~30時間であり、5~20時間が好ましい。
【0049】
工程(2)では、触媒としてのアミン(例えば、第三級アミン)を使用してもよいし、使用しなくてもよい。一実施形態では、工程(2)では、触媒としてのアミンを使用しない。
【0050】
工程(2)ではアミック酸が形成される。本発明では、アミック酸は、カルボキシル基およびアミド基(-C(O)NH-)を有する化合物を指す。アミック酸は、カルボキシル基およびアミド基をそれぞれ、1個以上有する。アミック酸は、例えば、カルボキシル基およびアミド基をそれぞれ独立して、1~10個有する。
【0051】
一実施形態では、工程(2)では、無水マレイン酸とCAP1とから、以下のAA1で表されるアミック酸が形成される。別の実施形態では、工程(2)では、無水マレイン酸とCAP2とから、以下のAA2で表されるアミック酸が形成される。さらに別の実施形態では、工程(2)では、無水マレイン酸とCAP3とから、以下のAA3で表されるアミック酸が形成される。
【化4】
【0052】
また、上述したように、CAP1のイソシアヌレート構造は変わらずに、イソホロンジイソシアネート由来の部分において、イソシアネート基を合計4個または5個有するイソシアネート化合物と無水マレイン酸とを反応させた場合は、AA1において、-NHC(O)CH=CHC(O)OH基の数が4個または5個となり得る。CAP2およびCAP3においても同様である。
【0053】
反応原料である化合物(M)とイソシアネート化合物から形成されたアミック酸(以下、「第1アミック酸」ということがある。)は、無水マレイン酸由来の炭素炭素二重結合によって重合し得る。第1アミック酸は、重合して高分子量化、すなわち樹脂化してもよい。本明細書では、複数の第1アミック酸の重合によって形成されたアミック酸を第2アミック酸ということがある。
【0054】
一実施形態では、工程(2)では第2アミック酸が形成される。
【0055】
工程(3)
工程(3)では、アミック酸を脱水してマレイミド樹脂を形成する。すなわち、アミック酸分子から水分子を除去して、マレイミド樹脂を形成する。
【0056】
工程(3)でのアミック酸を脱水する方法としては、例えば、無水酢酸を用いて脱水する方法が挙げられる。この方法では、具体的には、例えば、アミック酸を含む反応液に、酢酸ナトリウムと無水酢酸を添加し、30~160℃で1~40時間撹拌することでアミック酸を脱水することが可能である。アミック酸分子から水分子が脱離し、アミド酸部分が環化してイミド環が形成されてマレイミド樹脂が得られる。
【0057】
工程(3)でのアミック酸を脱水する別の方法としては、例えば、p-トルエンスルホン酸などの強酸を使用して、トルエンなどの疎水溶剤で脱水する方法などが挙げられる。この方法では、具体的には、例えば、アミック酸を含む反応液を加熱して還流下で共沸する水およびトルエンを冷却し、分離する。次いで、トルエンだけを系内に戻すことでアミック酸を脱水することが可能である。
【0058】
以下のスキーム1は、本発明の製造方法の一例を示した反応スキームである。このスキーム1では、化合物(M)およびイソシアネート化合物として、それぞれ、無水マレイン酸およびCAP1を用いている。CAP1と無水マレイン酸が反応し、アミック酸であるAA1が中間体として形成し、AA1から水分子が脱離し、イミド環が形成されてマレイミド樹脂であるMR1が生成する。
【化5】
【0059】
一例では、アミック酸AA1からマレイミド樹脂である以下のMR1が形成される。別の一例では、アミック酸AA2からマレイミド樹脂である以下のMR2が形成される。さらに別の一例では、アミック酸AA3からマレイミド樹脂である以下のMR3が形成される。
【化6】
【0060】
マレイミド樹脂
マレイミド樹脂は、化合物(M)とイソシアネート化合物の反応生成物である。化合物(M)由来の環状酸無水物基(例えば、無水マレイン酸)とイソシアネート化合物由来のイソシアネート基とが反応して、2,5-ジオキソ-1-ピロリル基が形成され、イソシアネート基が結合していたイソシアネート化合物の部分に、2,5-ジオキソ-1-ピロリル基の窒素原子で結合する。マレイミド樹脂では、2,5-ジオキソ-1-ピロリル基の二重結合は重合していてもよい。
【0061】
マレイミド樹脂は、複数のマレイミド樹脂(例えば、MR1)がその分子中の2,5-ジオキソ-1-ピロリル基の二重結合によって重合してさらに高分子量化してもよい。
【0062】
マレイミド樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、1.10~5.00であり、好ましくは、1.20~3.00である。一実施形態では、マレイミド樹脂の分子量分布は、1.10以上、1.15以上、1.20以上、1.25以上、1.30以上、1.35以上、1.40以上、1.45以上、1.50以上、1.55以上、1.60以上、1.65以上、1.70以上、1.75以上、1.80以上、1.85以上、1.90以上、1.95以上、2.00以上、2.10以上、2.20以上、2.30以上、2.40以上、2.50以上、2.60以上、2.70以上、2.80以上、2.90以上、3.00以上、3.10以上、3.20以上、3.30以上、3.40以上、3.50以上、3.60以上、3.70以上、3.80以上、3.90以上、4.00以上、4.10以上、4.20以上、4.30以上、4.40以上、4.50以上、4.60以上、4.70以上、4.80以上または4.90以上である。別の実施形態では、マレイミド樹脂の分子量分布は、5.00以下、4.90以下、4.80以下、4.70以下、4.60以下、4.50以下、4.40以下、4.30以下、4.20以下、4.10以下、4.00以下、3.90以下、3.80以下、3.70以下、3.60以下、3.50以下、3.40以下、3.30以下、3.20以下、3.10以下、3.00以下、2.90以下、2.80以下、2.70以下、2.60以下、2.50以下、2.40以下、2.30以下、2.20以下、2.10以下、2.00以下、1.95以下、1.90以下、1.85以下、1.80以下、1.75以下、1.70以下、1.65以下、1.60以下、1.55以下、1.50以下、1.45以下、1.40以下、1.35以下、1.30以下、1.25以下、1.20以下または1.15以下である。
【0063】
マレイミド樹脂のMwとMnは、Mw/Mnが1.10~5.00を満たせば特に限定されない。例えば、マレイミド樹脂のMwは、800~10000である。一実施形態では、マレイミド樹脂のMwは、800以上、1000以上、2000以上、3000以上、4000以上、5000以上、6000以上、7000以上、8000以上または9000以上である。別の実施形態では、マレイミド樹脂のMwは、10000以下、9000以下、8000以下、7000以下、6000以下、5000以下、4000以下、3000以下、2000以下または1000以下である。
【0064】
また、例えば、マレイミド樹脂のMnは、500~9500である。一実施形態では、マレイミド樹脂のMnは、500以上、1000以上、2000以上、3000以上、4000以上、5000以上、6000以上、7000以上、8000以上または9000以上である。別の実施形態では、マレイミド樹脂のMnは、9500以下、9000以下、8000以下、7000以下、6000以下、5000以下、4000以下、3000以下、2000以下または1000以下である。
【0065】
本発明のマレイミド樹脂の製造方法は、工程(1)~(3)に加えて、他の工程を含んでいてもよい。他の工程としては、例えば、工程(2)で無水酢酸を使用してアミック酸を脱水した場合に、工程(3)で生成する酢酸などの副生成物を除去する工程(4);および工程(3)で得られたマレイミド樹脂を含む溶液ないし分散体の不揮発分または粘度を調整する工程(5)などが挙げられる。
【0066】
マレイミド樹脂の用途
マレイミド樹脂の用途としては、特に限定されず、例えば、特開2021-102714号公報に記載の用途が挙げられる。また、半導体封止材料、回路基板用樹脂材料、回路基板向け絶縁フィルム用材料、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)用マトリックス樹脂にも適用することができる。
【0067】
マレイミド樹脂を例えば、特開2021-102714号公報に記載の(メタ)アクリロイル基を有する化合物または特開2022-098702号公報に記載の酸基および重合性不飽和基を有する樹脂などと組み合わせて樹脂組成物を調製する場合、樹脂組成物中のマレイミド樹脂の割合は、特に限定されず、適宜調節すればよい。マレイミド樹脂の割合は、例えば、樹脂組成物の全固形分質量に対して、1~90質量%である。一実施形態では、マレイミド樹脂の割合は、樹脂組成物の全固形分質量に対して、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上または80質量%以上である。別の実施形態では、マレイミド樹脂の割合は、樹脂組成物の全固形分質量に対して、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下または5質量%以下である。
【0068】
任意成分
マレイミド樹脂を含む樹脂組成物は、用途に応じて適宜任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、例えば、(メタ)アクリレートモノマー、光重合開始剤、硬化剤、硬化促進剤、他の樹脂、有機溶剤、重合禁止剤、酸化防止剤、難燃剤、充填剤、顔料、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、紫外線安定剤、保存安定化剤等の成分を含んでいてもよい。
【0069】
(メタ)アクリレートモノマー
(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、特開2022-098702号公報、国際公開第2019/244868号に記載の(メタ)アクリレートモノマーなどが挙げられる。
【0070】
光重合開始剤
一実施形態では、樹脂組成物は、光重合開始剤を含む。光重合開始剤としては、特に限定されず、公知の光重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤を含有する樹脂組成物は、即ち、硬化性樹脂組成物である。光重合開始剤としては、例えば、特開2022-098702号公報に記載の光重合開始剤などが挙げられる。別の実施形態では、光重合開始剤は、光ラジカル開始剤、光アニオン開始剤または光カチオン開始剤である。
【0071】
硬化剤
硬化剤としては、特に限定されず、公知の硬化剤を用いることができる。硬化剤としては、例えば、エポキシ樹脂、アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノール樹脂硬化剤等が挙げられる。
【0072】
硬化促進剤
硬化促進剤としては、特に限定されず、公知の硬化促進剤を用いることができる。硬化促進剤としては、例えば、特開2022-001612号公報に記載の硬化促進剤などが挙げられる。
【0073】
他の樹脂
他の樹脂としては、例えば、特開2022-001612号公報に記載のものを用いることができる。
【0074】
他の樹脂を用いる場合、他の樹脂の含有量は、樹脂組成物全体の50質量%以下であることが好ましい。
【0075】
有機溶剤
有機溶剤は、樹脂組成物の粘度を調整することができる。有機溶剤としては、特に制限されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等のエステル系溶剤;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶剤等が挙げられる。
【0076】
有機溶剤を用いる場合、有機溶剤の含有量は、適宜調節すればよい。有機溶剤の含有量は、例えば、樹脂組成物の総質量に対して、90質量%以下であることが好ましく、10~90質量%であることがより好ましく、20~80質量%であることが更に好ましい。
【0077】
重合禁止剤
重合禁止剤としては、特に限定されず、公知の重合禁止剤を用いることができる。重合禁止剤としては、例えば、特開2022-098702号公報に記載の重合禁止剤などが挙げられる。
【0078】
難燃剤
難燃剤としては、特に限定されず、公知の難燃剤を用いることができる。難燃剤としては、例えば、特開2022-001612号公報に記載の難燃剤を用いることができる。
【0079】
充填剤
充填剤としては、特に限定されず、公知の充填剤を用いることができる。充填剤としては、例えば、特開2022-001612号公報に記載の充填剤を用いることができる。
【0080】
樹脂組成物の調製方法は、特に制限されず、公知の調製を用いることができる。必須成分および任意成分を、ロール等の混練機を用いて混練することで調製することができる。
【0081】
硬化物
一実施形態では、樹脂組成物に、活性エネルギー線を照射してまたは加熱して、樹脂組成物を硬化させて硬化物を形成することができる。
【0082】
活性エネルギー線、紫外線発生源、活性エネルギー線の積算光量としては、例えば、それぞれ、特開2022-098702号公報に記載の活性エネルギー線、紫外線発生源、活性エネルギー線の積算光量が挙げられる。
【0083】
樹脂組成物を加熱硬化する場合の加熱温度は、特に制限されず、例えば、100~300℃である。樹脂組成物を加熱硬化する場合の加熱時間は、特に制限されず、例えば、1~24時間である。
【0084】
本発明の硬化性樹脂組成物又は硬化物の用途としては、特に限定されず、例えば、特開2021-102714号公報に記載の用途が挙げられる。また、半導体封止材料、回路基板用樹脂材料、回路基板向け絶縁フィルム用材料、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)用マトリックス樹脂にも適用することができる。
【実施例0085】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0086】
実施例での表中の配合量の単位は、別段の記載のない限り、質量部である。
【0087】
マレイミド樹脂の合成で用いた材料は以下のとおりである。
化合物(M):無水マレイン酸
イソシアネート化合物1:イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体、EVONIK社製、商品名「VESTANAT(登録商標)T-1890/100」、NCO%=17.2%
イソシアネート化合物2:水添キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体、三井化学社製、商品名「タケネート(登録商標)D-127N」、NCO%=13.8%、不揮発分75.5質量%
有機溶剤:メチルエチルケトン
【0088】
比較イソシアネート化合物:2-イソシアネートエチル-2,6-ジイソシアネートカプロエート
【0089】
樹脂組成物の調製に用いた材料は以下のとおりである。
アクリレートモノマー:ビスフェノールA EO変性ジアクリレート、MIWON社製、Miramer(登録商標)M-240
有機溶剤:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
光重合開始剤:2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、IGM Resins社製、商品名「Omnirad 907」
【0090】
使用した装置および器具は以下のとおりである。
紫外線源:メタルハライドランプ
銅箔:古河産業社製、電解銅箔「F2-WS」、箔厚18μm
粘弾性測定装置:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置、商品名「RSAII」
引張試験機:島津製作所社製、精密万能試験機オートグラフ、商品名「AG-IS」
PETフィルム:東洋紡社製、商品名「コスモシャイン(登録商標)A4300」、膜厚125μm
【0091】
分子量分布測定
マレイミド樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、以下の測定条件で、GPCによって測定した。
測定装置:東ソー社製、商品名「HLC(登録商標)-8420 GPC」
カラム:「HXL-L」、「TSKGEL(登録商標)G2000HXL」、「TSKGEL(登録商標)G2000HXL」、「TSKGEL(登録商標)G3000HXL」、「TSKGEL(登録商標)G4000HXL」、全て東ソー社製の商品名
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー社製、商品名「GPCワークステーション EcoSEC(登録商標)-WorkStation」
測定条件:カラム温度 40℃展開溶媒:テトラヒドロフラン流速:1.0ml/分
標準物質:分子量既知の単分散ポリスチレン
試料:合成例で得られたマレイミド樹脂の固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したろ液(50μl)。
【0092】
合成例1:マレイミド樹脂1の合成
工程(2)として、温度計、撹拌器及び還流冷却器を備えたフラスコに、メチルエチルケトン298質量部を入れ、イソシアネート化合物1を244質量部及び無水マレイン酸98質量部を溶解し、50℃に昇温した。その混合物に蒸留水27質量部を分割して添加し、50℃で15時間反応させた。13C NMRによってアミック酸が生成していることを確認した。次いで、工程(3)として、そのフラスコに酢酸ナトリウム16質量部、無水酢酸306質量部を添加し、70℃で20時間撹拌した。次いで、工程(4)として、メチルエチルケトンと蒸留水を添加し、水酸化ナトリウム水溶液を徐々に添加し、水層のpHが7になるまで水洗した。次いで、工程(5)として、減圧して水を除去した後、不揮発分50質量%となるようにメチルエチルケトンを添加し、マレイミド樹脂1を含む溶液を得た。マレイミド樹脂1の固形分酸価は、2mgKOH/gであった。マレイミド樹脂1の分子量分布(Mw/Mn)は、1.41であった。
【0093】
合成例2:マレイミド樹脂2の合成
合成例1において、工程(1)で準備するイソシアネート化合物を244質量部のイソシアネート化合物1から304質量部のイソシアネート化合物2に変えたこと、工程(2)で50℃での反応時間を18時間に変えたことおよび工程(3)で70℃での反応時間を23時間に変えたこと以外は、合成例1と同様に工程(1)~工程(5)を行い、マレイミド樹脂2を含む溶液を得た。マレイミド樹脂2の固形分酸価は、1.5mgKOH/gであった。マレイミド樹脂2の分子量分布(Mw/Mn)は、1.53であった。
【0094】
比較合成例1:比較マレイミド化合物1の合成
合成例1において、工程(2)で水の量を14.4質量部に変えたこと以外は、合成例1と同様に工程(1)~工程(5)を行い、比較マレイミド化合物1を含む溶液を得た。比較マレイミド化合物1の固形分酸価は、5mgKOH/gであった。比較マレイミド化合物1の分子量分布(Mw/Mn)は、10.32であった。
【0095】
比較合成例2:比較マレイミド化合物2の合成
合成例1において、工程(2)で水の量を270質量部に変えたこと以外は、合成例1と同様に工程(1)~工程(5)を行い、ゲル化した比較マレイミド化合物2を得た。
【0096】
比較合成例3:比較マレイミド化合物3の合成
比較イソシアネート化合物266質量部、無水マレイン酸300質量部、トルエン300質量部、2,6-tert-ブチル-p-クレゾール0.4質量部及びトリブチルアミン10.7質量部を仕込んだ。その混合物を90℃で撹拌しながら脱炭酸反応を行ない、ゲル化した比較マレイミド化合物3を得た。
【0097】
各合成例および比較合成例における、イソシアネート基1モルに対する水の量、アミック酸の経由および得られたマレイミド樹脂または比較マレイミド化合物の分子量分布についてまとめた結果を表1に示す。比較合成例3では、工程(2)がないため、使用した比較イソシアネート化合物のイソシアネート基1モルに対する水のモル数(0モル)を示している。
【0098】
【0099】
実施例1~3
表2に示す配合でマレイミド樹脂1または2、アクリレートモノマーおよび光重合開始剤を配合し、ロールミルで混練して樹脂組成物1~3を得た。
【0100】
比較例1~3
表2に示す配合で比較マレイミド化合物1~3、アクリレートモノマーおよび光重合開始剤を配合し、ロールミルで混練して比較樹脂組成物1~3を得た。
【0101】
【0102】
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を用いた硬化物について、以下の耐熱性および弾性率を評価した。また、樹脂組成物を用いた塗膜について、以下の塗膜外観を評価した。それらの結果を表2に合わせて示す。
【0103】
耐熱性の評価
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を、アプリケーターを用いて銅箔上に膜厚50μmとなるように塗布し、80℃で30分乾燥させた。次いで、10kJ/m2の紫外線を照射した後、160℃で1時間加熱して、硬化塗膜を得た。次いで、硬化塗膜を銅箔から剥離して硬化物を得た。この硬化物から6mm×35mmの試験片1を切り出し、粘弾性測定装置を用いて引張り法(周波数1Hz、昇温速度3℃/分)によって、弾性率変化が最大となる温度をガラス転移温度(℃)として評価した。ガラス転移温度が高いほど、耐熱性に優れることを示す。
【0104】
弾性率の測定
上記耐熱性の評価と同様に、各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物から硬化物を得た。その硬化物から10mm×80mmの試験片2を切り出した。その試験片2について、精密万能試験機を用いて、以下の測定条件で引張試験を行った。試験片2が破断するまでの弾性率(MPa)を測定した。評価結果を表2に合わせて示す。
測定条件
温度:23℃
湿度:50%
標線間距離:20mm
支点間距離:20mm
引張速度:10mm/分
【0105】
塗膜外観
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を、バーコーター(#12)でPETフィルムに塗布し、80℃で5分乾燥させた。次いで、5kJ/m2の紫外線を照射して硬化させ、膜厚10μmの塗膜を得た。この塗膜の外観について、白濁の有無を評価した。