(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005774
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】保存安定性に優れた塩素化イソシアヌル酸組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 43/64 20060101AFI20240110BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240110BHJP
C11D 7/54 20060101ALI20240110BHJP
C11D 3/48 20060101ALI20240110BHJP
C11D 7/12 20060101ALI20240110BHJP
C11D 7/10 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A01N43/64 105
A01P3/00
C11D7/54
C11D3/48
C11D7/12
C11D7/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106141
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 成男
【テーマコード(参考)】
4H003
4H011
【Fターム(参考)】
4H003BA17
4H003CA20
4H003EA12
4H003EA16
4H003EB18
4H003EE09
4H003FA34
4H003FA44
4H011AA01
4H011AA03
4H011BB09
4H011BC06
4H011BC18
4H011DA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】保存安定性に優れた塩素化イソシアヌル酸組成物を提供すること。
【解決手段】塩素化イソシアヌル酸化合物に、硫酸マグネシウム及び炭酸アルカリ塩を配合したことを特徴とする塩素化イソシアヌル酸組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素化イソシアヌル酸化合物に、硫酸マグネシウム及び炭酸アルカリ塩を配合したことを特徴とする塩素化イソシアヌル酸組成物。
【請求項2】
前記炭酸アルカリ塩が、実質炭酸ナトリウムである請求項1記載の塩素化イソシアヌル酸組成物。
【請求項3】
さらに、非ハロゲン化環状尿素化合物を配合したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の塩素化イソシアヌル酸組成物。
【請求項4】
前記非ハロゲン化環状尿素化合物が実質シアヌル酸である請求項3記載の塩素化イソシアヌル酸組成物。
【請求項5】
前記塩素化イソシアヌル酸化合物が実質トリクロロイソシアヌル酸である請求項1又は請求項2記載の塩素化イソシアヌル酸組成物。
【請求項6】
前記塩素化イソシアヌル酸化合物100質量部に対し、前記硫酸マグネシウムの配合量が0.01~0.4質量部であり、且つ、前記炭酸アルカリ塩の配合量が0.1~1.0質量部である請求項1又は請求項2記載の塩素化イソシアヌル酸組成物。
【請求項7】
前記塩素化イソシアヌル酸化合物100質量部に対し、前記炭酸アルカリ塩の配合量が0.1~0.3質量部である請求項6記載の塩素化イソシアヌル酸組成物。
【請求項8】
前記塩素化イソシアヌル酸化合物100質量部に対し、前記非ハロゲン化環状尿素化合物の配合量が0.01~1.0質量部である請求項3記載の塩素化イソシアヌル酸組成物。
【請求項9】
前記塩素化イソシアヌル酸化合物100質量部に対し、前記非ハロゲン化環状尿素化合物の配合量が0.01~0.2質量部である請求項3記載の塩素化イソシアヌル酸組成物。
【請求項10】
塩素化イソシアヌル酸化合物に、硫酸マグネシウム及び炭酸アルカリ塩を配合した塩素化イソシアヌル酸組成物の加圧成形体である錠剤であって、
前記塩素化イソシアヌル酸化合物の質量に基づいて、前記硫酸マグネシウムの配合量が0.01~0.4質量%であり、かつ、炭酸アルカリ塩の配合量が0.1~0.3質量%であり、
該錠剤の全質量に基いて、前記塩素化イソシアヌル酸化合物の配合量が95質量%以上であり、かつ、前記塩素化イソシアヌル酸化合物、前記硫酸マグネシウム及び前記炭酸アルカリ塩の配合量の合計が100質量%以下である、
錠剤。
【請求項11】
さらに前記錠剤は非ハロゲン化環状尿素化合物が配合されてなり、
前記塩素化イソシアヌル酸化合物の質量に基づいて、非ハロゲン化環状尿素化合物の配合量が0.01~0.2質量%であり、
該錠剤の全質量に基いて、前記塩素化イソシアヌル酸化合物、前記硫酸マグネシウム、前記炭酸アルカリ塩及び非ハロゲン化環状尿素化合物の配合量の合計が100質量%以下である、請求項10記載の錠剤。
【請求項12】
前記炭酸アルカリ塩が実質炭酸ナトリウムである請求項10又は請求項11記載の錠剤
。
【請求項13】
前記塩素化イソシアヌル酸化合物が実質トリクロロイソシアヌル酸である、請求項10又は請求項11記載の錠剤。
【請求項14】
非ハロゲン化環状尿素化合物が実質シアヌル酸である、請求項11記載の錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性に優れた塩素化イソシアヌル酸組成物及びその加圧成形体である錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
プール水、浄化槽水、下水、放流水、工業用水、クーリングタワーの冷却水等の殺菌消毒方法として、塩素化イソシアヌル酸化合物が使用されている。例えば、プール水の殺菌消毒方法としては、プール水槽中に直接塩素化イソシアヌル酸化合物を含む錠剤を投入したり、塩素化イソシアヌル酸化合物を入れた薬剤溶液内にプール循環水を流入させて薬剤の一部を溶解させたりするなど方法により、プール水中に活性塩素を徐々に放出させて、プール水中の残留塩素濃度を一定に維持する方法が行われている。
【0003】
トリクロロイソシアヌル酸は、水との反応性が高く、その保管時において、空気中に含まれる微量の水分と反応し、トリクロロイソシアヌル酸の分解生成物である塩素ガスや塩化窒素ガスを発生し、トリクロロイソシアヌル酸に含まれる活性塩素量の低下、塩素臭の発生、及びトリクロロイソシアヌル酸と接触する包装材料を劣化させる等の難点を有している。そのため、長期間に渡って安定的な保存ができるように、塩素や塩化窒素の分解ガスの発生を抑える添加剤が望まれている。
【0004】
このような問題点を解決するために、塩素化イソシアヌル酸化合物に硫酸マグネシウムを配合した塩素化イソシアヌル酸組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
塩素化イソシアヌル酸組成物としては、溶解時間の調製、投入した水の塩素濃度の管理及び取扱いが容易なように、錠剤の形状で使用されることが多い。
しかし、無水硫酸マグネシウムは吸水すると2以上に膨張するため、塩素化イソシアヌル酸化合物に硫酸マグネシウムを配合した塩素化イソシアヌル酸組成物の錠剤は、保存時に空気中の水分を吸収した硫酸化マグネシウムが膨張し、錠剤が崩壊してしまうという問題があった。また、錠剤が崩壊しないように硫酸マグネシウムの配合量を少なくした場合、保存時に塩素化イソシアヌル酸化合物が分解して、人体に有害な塩素ガスが発生してしまうという問題があった。
【0007】
上記の事情に鑑み、本発明は保存安定性に優れた塩素化イソシアヌル酸組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記の目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、塩素化イソシアヌル酸化合物に、硫酸マグネシウム及び炭酸アルカリ塩を組み合わせて配合することにより、硫酸マグネシウムの配合量を少なくしても、保管時に塩素化イソシアヌル酸化合物の分解により生じる塩素ガスの発生を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は第1観点として、塩素化イソシアヌル酸化合物に、硫酸マグネシウ
ム及び炭酸アルカリ塩を配合したことを特徴とする塩素化イソシアヌル酸組成物に関する。
第2観点として、前記炭酸アルカリ塩が、実質炭酸ナトリウムである第1観点記載の塩素化イソシアヌル酸組成物に関する。
第3観点として、さらに、非ハロゲン化環状尿素化合物を配合したことを特徴とする第1観点又は第2観点記載の塩素化イソシアヌル酸組成物。
第4観点として、前記非ハロゲン化環状尿素化合物が実質シアヌル酸である第3観点記載の塩素化イソシアヌル酸組成物に関する。
第5観点として、前記塩素化イソシアヌル酸化合物が実質トリクロロイソシアヌル酸である第1観点又は第2観点記載の塩素化イソシアヌル酸組成物に関する。
第6観点として、前記塩素化イソシアヌル酸化合物100質量部に対し、前記硫酸マグネシウムの配合量が0.01~0.4質量部であり、且つ、前記炭酸アルカリ塩の配合量が0.1~1.0質量部である第1観点又は第2観点記載の塩素化イソシアヌル酸組成物に関する。
第7観点として、前記塩素化イソシアヌル酸化合物100質量部に対し、前記炭酸アルカリ塩の配合量が0.1~0.3質量部である第6観点記載の塩素化イソシアヌル酸組成物に関する。
第8観点として、前記塩素化イソシアヌル酸化合物100質量部に対し、前記非ハロゲン化環状尿素化合物の配合量が0.01~1.0質量部である第3観点記載の塩素化イソシアヌル酸組成物に関する。
第9観点として、前記塩素化イソシアヌル酸化合物100質量部に対し、前記非ハロゲン化環状尿素化合物の配合量が0.01~0.2質量部である第3観点記載の塩素化イソシアヌル酸組成物に関する。
第10観点として、塩素化イソシアヌル酸化合物に、硫酸マグネシウム及び炭酸アルカリ塩を配合した塩素化イソシアヌル酸組成物の加圧成形体である錠剤であって、前記塩素化イソシアヌル酸化合物の質量に基いて、前記硫酸マグネシウムの配合量が0.01~0.4質量%であり、かつ、炭酸アルカリ塩の配合量が0.1~0.3質量%であり、該錠剤の全質量に基いて、前記塩素化イソシアヌル酸化合物の配合量が95質量%以上であり、かつ、前記塩素化イソシアヌル酸化合物、前記硫酸マグネシウム及び前記炭酸アルカリ塩の配合量の合計が100質量%以下である、錠剤に関する。
第11観点として、さらに前記錠剤は非ハロゲン化環状尿素化合物が配合されてなり、前記塩素化イソシアヌル酸化合物の質量に基いて、非ハロゲン化環状尿素化合物の配合量が0.01~0.2質量%であり、該錠剤の全質量に基いて、前記塩素化イソシアヌル酸化合物、前記硫酸マグネシウム、前記炭酸アルカリ塩及び非ハロゲン化環状尿素化合物の配合量の合計が100質量%以下である、第10観点記載の錠剤に関する。
第12観点として、前記炭酸アルカリ塩が実質炭酸ナトリウムである第10観点又は第11観点記載の錠剤に関する。
第13観点として、前記塩素化イソシアヌル酸化合物が実質トリクロロイソシアヌル酸である、第10観点又は第11観点記載の錠剤に関する。
第14観点として、非ハロゲン化環状尿素化合物が実質シアヌル酸である、第11観点記載の錠剤に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保存・保管期間において、塩素化イソシアヌル酸化合物の分解による塩素ガスの発生を抑制できる塩素化イソシアヌル酸組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、保存・保管期間において、塩素化イソシアヌル酸化合物の分解による塩素ガスの発生を抑制でき、且つ、形状崩壊しない塩素化イソシアヌル酸組成物の錠剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施例の錠剤崩壊性試験の試験方法を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の塩素化イソシアヌル酸組成物は、塩素化イソシアヌル酸化合物に、硫酸マグネシウム及び炭酸アルカリ塩を配合してなる。
【0013】
本発明で使用する塩素化イソシアヌル酸化合物としては、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸、及びモノクロロイソシアヌル酸が挙げられ、好ましくはトリクロロイソシアヌル酸が挙げられる。
塩素化イソシアヌル酸化合物の配合量は、特に限定されるものではないが、水に溶かした時の残留塩素濃度及びその持続時間の観点から、塩素化イソシアヌル酸組成物中、95質量%以上であることが好ましい。
【0014】
本発明で使用する硫酸マグネシウムとしては、無水塩であっても、水和物であってもよいが、好ましくは無水硫酸マグネシウムである。
塩素化イソシアヌル酸組成物に含まれる硫酸マグネシウムの配合量は、塩素化イソシアヌル酸化合物100質量部に対し、0.01~0.4質量部、好ましくは0.01~0.2質量部である。
硫酸マグネシウムの配合量が0.01質量部未満であると、保存・保管時に塩素化イソシアヌル酸組成物と大気中の水分とが反応して分解し塩素ガスが発生してしまうおそれがある。また硫酸マグネシウムの配合量が0.4質量部を超えると、錠剤にしたときに硫酸マグネシウムの吸水吸湿時の体積増加により、形状崩壊するおそれが生じる。
【0015】
本発明で使用する炭酸アルカリ塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの無水物及び水和物を挙げることができる。1種単独で用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。このうち、実質炭酸ナトリウムが好ましい。実質炭酸ナトリウムとは、炭酸ナトリウムの無水物に、実質的に添加していない炭酸水素アルカリ塩や水和物が含まれてもよいことを意味する。
本発明では炭酸アルカリ塩を配合することにより、硫酸マグネシウムにより水分が吸収しきれなくなった場合でも、塩素化イソシアヌル酸化合物から生じた塩素ガスと炭酸アルカリ塩とが反応して塩化ナトリウムを生成できるため、塩素ガスの発生を抑制できる。これにより、保存・保管時に塩素臭の発生を抑制することができる。
【0016】
塩素化イソシアヌル酸組成物に含まれる炭酸アルカリ塩の配合量は、塩素化イソシアヌル酸化合物100質量部に対し、0.1質量部以上、例えば0.1~1.0質量部、好ましくは0.1~0.5質量部であり、より好ましくは0.1~0.3質量部である。
炭酸アルカリ塩の配合量が0.1質量部未満であると、塩素化イソシアヌル酸化合物から生じた塩素ガスと十分に反応できず、保存・保管時に塩素化イソシアヌル酸組成物から塩素臭が生じる場合がある。なお、炭酸アルカリ塩の配合量を増加させると、塩素化イソシアヌル酸組成物中の塩素化イソシアヌル酸化合物の配合割合が減少するため、1.0質量部を超えて配合する利点は少ない。
【0017】
本発明の塩素化イソシアヌル酸組成物は、本発明の目的が達成される限り、非ハロゲン化環状尿素化合物、滑沢剤、賦形剤、溶解調整剤及び結合剤などの成分を含むことができる。
【0018】
塩素化イソシアヌル酸は水と反応して次亜塩素酸を発生させるものであるが、非ハロゲン化環状尿素化合物を含む場合、非ハロゲン化環状尿素化合物は塩素化イソシアヌル酸から生じた次亜塩素酸と反応して、塩素化環状尿素化合物を形成できるため、塩素化イソシアヌル酸組成物の保存安定性を高めることができる。
【0019】
上記非ハロゲン化環状尿素化合物としては、エチレン尿素、プロピレン尿素、ヒダントイン、シアヌル酸及びビオルル酸などが挙げられ、好ましくはヒダントイン及びシアヌル酸が挙げられる。
非ハロゲン化環状尿素化合物の配合量は、塩素化イソシアヌル酸化合物100質量部に対し、0.01質量部以上、例えば0.01質量部乃至1.0質量部、好ましくは0.01質量部乃至0.2質量部である。
【0020】
塩素化イソシアヌル酸組成物を加圧成形して錠剤にする場合、成形性及び金型からの離型性の観点から滑沢剤を添加することができる。錠剤の製造時や運搬時に、錠剤の欠けや割れを防止することができる。
滑沢剤としては、固形粒子の流動性、充填性、付着性を改善する機能を有するものであれば特に限定されないが、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、オルトほう酸、タルク等が挙げられ、好ましくはステアリン酸マグネシウムが挙げられる。
滑沢剤を添加する場合、錠剤(塩素化イソシアヌル酸組成物)の質量に基づいて0.1乃至1.0質量%程度を含有させることができる。
【0021】
賦形剤としては、公知の賦形剤を使用でき、例えば硫酸ナトリウム、食塩の他、アルカリ金属の珪酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、燐酸塩、硫酸塩等が挙げられる。
溶解調整剤としては、公知の溶解調整剤を使用でき、例えばコハク酸、フマル酸、フタル酸、硫酸カリウム及び安息香酸等が挙げられる。
結合剤としては、固形粒子を結合する機能を有し、好ましくは水溶性のものであれば特に限定されないが、例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール、リグニンスルホン酸塩、アラビアゴム、デンプン類、ショ糖などが挙げられる。
【0022】
また、本発明の塩素化イソシアヌル酸組成物は、用途に応じて粉末状、顆粒状、錠剤等、適宜形状を選択して使用することができる。特に錠剤が好ましい。粉末状又は顆粒状は表面積が大きいので吸湿しやく、粉立ちによる刺激臭の発生なども生じるので使用時に注意する必要がある。
塩素化イソシアヌル酸化合物に、硫酸マグネシウム及び炭酸アルカリ塩、所望により非ハロゲン化環状尿素化合物、並びにその他の成分を配合する方法は特に限定されず、これら粉末同士を均一に混合することができればよい。
【0023】
錠剤は、公知の方法で製造でき、例えば粉末状または顆粒状の塩素化イソシアヌル酸組成物を金型の中に充填し加圧する方法(以下、「打錠」ともいう。)によって製造する方法が挙げられる。工業的に製造する際には、金型(臼杵)および加圧装置から構成される公知の加圧式打錠機が好ましく使用される。
錠剤の形状は特に限定されず、打錠しやすさ、取り扱い・使用しやすさの観点から適宜形状を決定でき、例えば、円柱形、立方体、直方体、球状、ドーナツ形状等があげられる。
【0024】
錠剤中の塩素化イソシアヌル酸化合物の配合量は、錠剤の全質量に基づいて95%以上が好ましい。
また、塩素化イソシアヌル酸化合物を錠剤として成形する場合、硫酸マグネシウムの配合量は塩素化イソシアヌル酸化合物100質量に基づいて0.01乃至0.4質量%であり、炭酸アルカリ塩の配合量は0.1~0.3質量%が好ましい。
硫酸マグネシウム及び炭酸アルカリ塩の配合量が上記範囲にある場合、保蔵・保管期間
に錠剤が崩壊せず、塩素ガスの発生を抑制できる。
炭酸アルカリ塩の配合量が0.3質量%を超えると、錠剤が高湿度条件下に置かれたときに吸湿し炭酸ガスを発生して錠剤が崩壊する恐れがある。
【0025】
錠剤のサイズは、使用する用途によって適宜調節することができる。例えば、直径1~8cm、厚さ0.5~5cm程度の錠剤が挙げられるが、これに限定されるものではない。
錠剤の密度は1.70乃至1.95g/cm3が好ましい。密度が1.70g/cm3よりも低い場合、錠剤を取り扱う際又は輸送中に形状が崩れやすく、1.95g/cm3を超える場合、成形するのに高い打錠圧が必要となるため過剰なエネルギーが必要となる。
【実施例0026】
以下に本発明の塩素化イソシアヌル酸組成物及びその成形体である錠剤をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0027】
(実施例1)
トリクロロイソシアヌル酸(日産化学(株)製)100.00g、ステアリン酸マグネシウム(日油(株)製)0.18g、無水硫酸マグネシウム(富田製薬(株)製)0.10g、炭酸ナトリウム(高杉製薬(株)製)0.50gを混合して粉末状のトリクロロイソシアヌル酸組成物を得た。
得られたトリクロロイソシアヌル酸組成物30gを、プレス機(NPaシステム(株)製、型番TB-200H-V11)の金型(内径35mm)に充填し、高さ18mmになるように加圧圧縮して円柱形の錠剤を得た。錠剤を製造する際のプレス圧は420~530kg/cm2であった。
【0028】
(実施例2乃至10、比較例1乃至6)
トリクロロイソシアヌル酸(TCCA)、ステアリン酸マグネシウム(MgSt)、無水硫酸マグネシウム(MgSO4)、乾燥炭酸ナトリウム(Na2CO3)及びシアヌル酸(CA:日産化学(株)製)の配合量を下記表1及び表2に記載の量に変えた以外は実施例1と同様にして錠剤を作製した。
【0029】
(保存安定性試験)
水分及び塩素ガスを透過するポリプロピレン製の袋に実施例1の錠剤を入れてヒートシールにより封をした。900mLのガラス瓶に錠剤を封入したポリプリピレン製袋を入れ、30℃75%RH環境下でガラス瓶の蓋を閉じ、30℃75%RHの恒温恒湿槽内に静置した。
静置後1日、3日、5日、7日、14日、21日、28日、35日、42日及び49日後に、ガラス瓶内の塩素ガス濃度を(株)ガステック製の塩素検知管(No.8H)を用いて測定した。測定した結果を下記表1に示す。
実施例2乃至10及び比較例1乃至6の錠剤についても、同様に塩素ガス濃度を測定した。塩素ガス濃度が、7日後に5ppm以下、14日後に50ppm以下、且つ28日後でも1000ppm以下であるものを安定性が良好とし、それを超えるものを安定性が不良と評価した。測定した塩素ガス濃度及び評価結果を下記表1及び表2に示す。
【0030】
【0031】
表1と表2より、トリクロロイソシアヌル酸に、無水硫酸マグネシウム及び炭酸ナトリウムを配合したトリクロロイソシアヌル酸組成物から加圧成形した実施例1乃至6の錠剤は、トリクロロイソシアヌル酸から加圧成形した比較例1の錠剤、及びトリクロロイソシアヌル酸に、無水硫酸マグネシウム、炭酸ナトリウム若しくはシアヌル酸を配合したトリクロロイソシアヌル酸組成物から加圧成形した比較例2乃至6の錠剤と比して、トリクロロイソシアヌル酸の分解生成物である塩素系ガスの発生が抑えられており、保存安定性が向上していることが確認された。
【0032】
(実施例11乃至14)
トリクロロイソシアヌル酸、ステアリン酸マグネシウム、無水硫酸マグネシウム、乾燥炭酸ナトリウム及びシアヌル酸の配合量を下記表3に記載の量に変えた以外は実施例1と同様にして、錠剤を作製した。
作製した錠剤を、上記保存安定性試験と同様に試験して発生した塩素ガス濃度を測定し、安定性を評価した。測定結果を表3に示す。
【0033】
(錠剤崩壊性試験)
錠剤崩壊性試験方法を
図1に基づいて説明する。
内径40mm、長さ20cmの塩化ビニル製の円筒2を準備し、1方の端部に4箇所の約長さ25mm×幅10mmの切れ込み部3を設けた。円筒2に錠剤1を10錠積み重ねて入れて、筒の両端に蓋をした。
水深2cm、40℃の温水4が流れる水槽に、切れ込み部3が下になるように円筒管を立てて固定し、7日間(168時間)静置した。
7日(168時間)後、円筒2から錠剤を取り出して錠剤の形状を目視で観察した。
10個とも錠剤にクラッキングや崩壊が生じていないものを崩壊無、1個でも錠剤にクラッキングや崩壊が生じているものを崩壊有とした。評価結果を表3に示す。
【0034】
【0035】
表3より、トリクロロイソシアヌル酸に、無水硫酸マグネシウム及び炭酸ナトリウムを配合したトリクロロイソシアヌル酸組成物から加圧成形した実施例11乃至13の錠剤は、上記比較例1乃至6の錠剤と比して、塩素ガスの発生が抑制できることが示された。また、高温高湿度条件下であっても錠剤が崩壊しないことが確認できた。