(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057786
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】貴金属担持酸化チタンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C25B 11/067 20210101AFI20240418BHJP
C25B 11/054 20210101ALI20240418BHJP
C25B 11/081 20210101ALI20240418BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20240418BHJP
B01J 37/34 20060101ALI20240418BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20240418BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20240418BHJP
B01J 23/46 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
C25B11/067
C25B11/054
C25B11/081
B01J37/08
B01J37/34
B01J37/02 101D
B01J37/04 102
B01J23/46 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164683
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000174541
【氏名又は名称】堺化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】岸 美保
(72)【発明者】
【氏名】堤 裕司
(72)【発明者】
【氏名】吉川 裕亮
(72)【発明者】
【氏名】荻 崇
(72)【発明者】
【氏名】平野 知之
【テーマコード(参考)】
4G169
4K011
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA04A
4G169BA04B
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4G169FC02
4K011AA04
4K011AA21
4K011AA30
4K011BA01
4K011BA07
(57)【要約】
【課題】従来の貴金属担持担体よりも少量の貴金属の使用量で良好な導電性を発揮し、高電位耐久性にも優れる貴金属担持担体を製造する方法を提供する。
【解決手段】TiOx(xは1~2)粒子と貴金属塩とを含む液体、又は、TiOx(xは1~2)粒子を含む液体と貴金属塩を含む液体とを噴霧する工程と、噴霧された液体を火炎中で焼成する工程とを含むことを特徴とする貴金属担持酸化チタンの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TiOx(xは1~2)粒子と貴金属塩とを含む液体、又は、TiOx(xは1~2)粒子を含む液体と貴金属塩を含む液体とを噴霧する工程と
噴霧された液体を火炎中で焼成する工程とを含む
ことを特徴とする貴金属担持酸化チタンの製造方法。
【請求項2】
チタン源と貴金属塩との水溶液、又は、チタン源の水溶液と貴金属塩の水溶液とを噴霧する工程と
噴霧された水溶液を火炎中で焼成する工程を含む
ことを特徴とする貴金属担持酸化チタンの製造方法。
【請求項3】
前記噴霧する工程は、超音波を用いて行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の貴金属担持酸化チタンの製造方法。
【請求項4】
前記噴霧された液体又は水溶液を火炎中で焼成する工程は、噴霧された液体又は水溶液を拡散火炎中で焼成する工程であることを特徴とする請求項1又は2に記載の貴金属担持酸化チタンの製造方法。
【請求項5】
前記貴金属は、イリジウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の貴金属担持酸化チタンの製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の貴金属担持酸化チタンの製造方法で得られた貴金属担持酸化チタンに白金を担持させる工程を含むことを特徴とする導電性材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貴金属担持酸化チタンの製造方法に関する。より詳しくは、燃料電池等の電極材料として好適な貴金属担持酸化チタンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で電池の使用が広がりをみせており、求められる特性に応じた様々な電池が使用されている。現在利用が進められている電池のうち、燃料電池は発電効率が高く、発電によって水のみが排出されるクリーンな電池として注目されている。
固体高分子形燃料電池の電極には、従来からPt/Cが使用されている。比表面積が高く、導電性の高いカーボンは貴金属触媒の担体として従来から用いられているが、高電位で水と反応し、CO2として分解することが問題となっている。このためカーボンを担体とする電極を使用する場合には数百枚のセル1枚1枚に制御装置を付けることや高い電位がかけられない分余分なセルを搭載することが必要になり、コスト増の原因となっている。
また固体高分子形燃料電池ではアノードの反応(H2→2H++2e-)がカソードの反応(O2+4H++4e-→2H2O)よりも速く、反応に必要な触媒量はカソードよりも少ない。カソードにおいて発電時には常時0.6~1Vの電位がかかるが、一方でアノードは燃料欠乏状態になると2Vを超える高電位になることが知られている。両極共に高電位耐久性は必要であるが、このような理由により、アノードにはカソードよりも更に高い高電位耐久性が求められるため、カーボンを担体とする電極触媒をアノードに使用する場合には担体の分解がより大きな問題となる。
このため、カーボン以外の担体を用いた触媒が種々開発されており、無機酸化物と伝導性酸化物を含む無機多成分担体材料と触媒活性種を含む電気触媒を用いる技術(特許文献1参照)や、複数の結晶子が鎖状に融着結合されて構成された鎖状部を備える金属微粒子で構成される担体微粒子の集合体である担体粉末と、該担体粉末に所定の担持量で担持された金属微粒子とを備える担持金属触媒(特許文献2参照)、酸化イリジウムと所定の金属酸化物とを含み、前駆体混合物を火炎噴霧熱分解することで調製される触媒(特許文献3参照)が開示されている。
また、触媒活性種を担持した触媒と同様の不均一物質を製造する方法として、金属酸化物等の支持材料を形成する固体成分と金属塩の溶解された成分とを含有する分散液又は懸濁液をバーナー中で処理した後、更に加熱処理する粉末状の不均一物質の製造法が開示されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/092568号
【特許文献2】国際公開第2022/045004号
【特許文献3】国際公開第2016/038349号
【特許文献4】特許第4828674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のとおり、カーボンに代わる担体を用いた触媒が開示されているが、一般的な酸化物担体は導電性が不十分なものが多い。また特許文献1の触媒では貴金属により高比表面積な担体に導電性を付与しているが、導電性付与のための多量の貴金属を必要としている。
特許文献2では酸化物担体の導電性向上のために担体を気相中で合成し、鎖状構造をとることで粒界抵抗を低減する検討はなされているが、貴金属を気相合成にて担持し、その導電パスを活かす検討はなされていない。
特許文献3では担体原料として有機金属混合物と酸化イリジウム前駆体を噴霧火炎方式の気相合成に用いており、可燃性の溶媒と原料を使用する必要があるため、高額な原料が必要となる。また担体原料と酸化イリジウム原料が同時に分解合成されるため、高価なイリジウムが担体内部に取り込まれ、有効に活用されない。更に特許文献1の触媒と同様に多量の貴金属が必要である。
このように従来の触媒はいずれも改良の余地があるものであった。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑み、従来の貴金属担持担体よりも少量の貴金属の使用量で良好な導電性を発揮し、高電位耐久性にも優れる貴金属担持担体を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、従来の貴金属担持担体よりも少量の貴金属の使用量で良好な導電性を発揮し、高電位耐久性にも優れる貴金属担持担体を製造する方法について検討し、チタンの酸化物と貴金属塩とを含む液体又はチタンの酸化物を含む液体と貴金属塩を含む液体とを噴霧し、噴霧された液体を火炎中で焼成する方法、又は、チタン源と貴金属塩との水溶液又はチタン源の水溶液と貴金属塩の水溶液とを噴霧し、噴霧された液体を火炎中で焼成する方法により貴金属担持酸化チタンを製造すると、貴金属の使用量で良好な導電性を発揮し、高電位耐久性にも優れる貴金属担持担体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、以下のとおりである。
[1]TiOx(xは1~2)粒子と貴金属塩とを含む液体、又は、TiOx(xは1~2)粒子を含む液体と貴金属塩を含む液体とを噴霧する工程と、噴霧された液体を火炎中で焼成する工程とを含むことを特徴とする貴金属担持酸化チタンの製造方法。
【0008】
[2]チタン源と貴金属塩との水溶液、又は、チタン源の水溶液と貴金属塩の水溶液とを噴霧する工程と、噴霧された水溶液を火炎中で焼成する工程を含むことを特徴とする貴金属担持酸化チタンの製造方法。
【0009】
[3]前記噴霧する工程は、超音波を用いて行われることを特徴とする[1]又は[2]に記載の貴金属担持酸化チタンの製造方法。
【0010】
[4]前記噴霧された液体又は水溶液を火炎中で焼成する工程は、噴霧された液体又は水溶液を拡散火炎中で焼成する工程であることを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の貴金属担持酸化チタンの製造方法。
【0011】
[5]前記貴金属は、イリジウムであることを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載の貴金属担持酸化チタンの製造方法。
【0012】
[6][1]~[5]のいずれかに記載の貴金属担持酸化チタンの製造方法で得られた貴金属担持酸化チタンに白金を担持させる工程を含むことを特徴とする導電性材料の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の貴金属担持酸化チタンの製造方法は、従来の貴金属担持担体よりも少量の貴金属の使用量で良好な導電性を発揮する貴金属担持担体を製造することができる製造方法であり、得られる貴金属担持酸化チタンは非炭素系の触媒であって、カーボンを使用しないため、高電位耐久性に優れる。
従って、本発明の製造方法で得られる貴金属担持酸化チタンは、固体高分子形燃料電池等の燃料電池や、水電解セル、太陽電池、トランジスタ、液晶等の表示装置等の電極の材料の他、帯電防止材、熱線遮蔽材等に使用する導電性の材料として極めて有用である。中でも特に、固体高分子形燃料電池、固体高分子型水電解装置の電極の材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1~4のIrO
2担持TiO
2の調製に使用した装置の概略を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0016】
1.貴金属担持酸化チタンの製造方法
本発明の貴金属担持酸化チタンの製造方法は、TiOx(xは1~2)粒子と貴金属塩とを含む液体、又は、TiOx(xは1~2)粒子を含む液体と貴金属塩を含む液体とを噴霧する工程(以下、第1工程とも記載する)と、噴霧された液体を火炎中で焼成する工程(以下、第2工程とも記載する)とを含む製造方法(以下、第1の本発明の製造方法とも記載する)であるか、又は、
チタン源と貴金属塩との水溶液、又は、チタン源の水溶液と貴金属塩の水溶液とを噴霧する工程(以下、第1工程とも記載する)と、噴霧された水溶液を火炎中で焼成する工程(以下、第2工程とも記載する)とを含む製造方法(以下、第2の本発明の製造方法とも記載する)である。
第1の本発明の製造方法は、気相合成に一般的に用いられる溶解したチタン化合物を用いずに、安価な酸化チタン粒子を用いることを特徴の1つとし、酸化チタン粒子と貴金属塩とをともに液体の状態で噴霧して火炎中に導入し、焼成する。このようにすることで、酸化チタンの内部に貴金属が取り込まれることなく、気相合成の特徴である瞬間的に高熱をかけて合成することで、粒子が細かいまま連結することにより少量の貴金属で酸化チタン粒子上に導通パスを形成して導電性を得ることができる。
第2の本発明の製造方法は、チタン源と貴金属塩とを共に水溶液として噴霧して火炎中に導入し、焼成する。このような方法によっても、少量の貴金属で酸化チタン粒子上に導通パスを形成して導電性を得ることができる。
以下においては、第1の本発明の製造方法と第2の本発明の製造方法をまとめて本発明の製造方法と記載する。
【0017】
<第1の本発明の製造方法の第1工程>
第1の本発明の製造方法において、貴金属担持酸化チタンの製造方法に原料として用いる酸化チタン粒子は、TiOx(xは1~2)で表されるものであればよいが、xは1.5~2であることが好ましい。より好ましくは、1.75~2である。
【0018】
第1の本発明の貴金属担持酸化チタンの製造方法に用いる貴金属塩としては、イリジウム、白金、ルテニウム、パラジウム、ロジウムのいずれかの塩が挙げられる。これらの中でも、イリジウム、白金、ルテニウムのいずれかの塩が好ましい。より好ましくは、イリジウムの塩である。
【0019】
第1の本発明の貴金属担持酸化チタンの製造方法の第1工程に用いる貴金属塩としては、特に制限されず、塩化物、硫化物、塩酸塩、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩等を用いることができる。これらの中でも硝酸塩、塩化物塩、炭酸塩が好ましい。より好ましくは、硝酸塩である。
【0020】
第1の本発明の貴金属担持酸化チタンの製造方法において、TiOx(xは1~2)粒子と貴金属塩とを含む液体中におけるTiOx(xは1~2)粒子の割合は、液体100質量%に対して、0.1~5質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.1~1質量%であり、更に好ましくは、0.1~0.5質量%である。
また、TiOx(xは1~2)粒子と貴金属塩とを含む液体中における貴金属塩の割合は、液体100質量%に対して、0.001~15質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.3~7.5質量%であり、更に好ましくは、0.5~6質量%である。
【0021】
第1の本発明の貴金属担持酸化チタンの製造方法において、TiOx(xは1~2)粒子と貴金属塩とを含む液体中におけるTiOx(xは1~2)粒子と貴金属塩との割合は、TiOx(xは1~2)粒子100質量%に対して、貴金属塩が1~30質量%となる割合であることが好ましい。本発明の製造方法で貴金属担持酸化チタンを製造することで、このように貴金属塩の割合が少ない場合であっても良好な電極触媒活性を発揮する貴金属担持酸化チタンを得ることができる。より好ましくは、TiOx(xは1~2)粒子100質量%に対して、貴金属塩が3~25質量%となる割合であり、更に好ましくは、TiOx(xは1~2)粒子100質量%に対して、貴金属塩が5~20質量%となる割合である。
【0022】
第1の本発明の貴金属担持酸化チタンの製造方法において、TiOx(xは1~2)の比表面積は50m2/g未満であることが好ましい。本発明の製造方法で、このようなTiOxの比表面積とすることで貴金属塩の割合が少ない場合であっても良好な導電性を有する貴金属担持酸化チタンを得ることができる。より好ましくは、40m2/g~5m2/gであり、更に好ましくは、30m2/g~15m2/gである。
TiOx(xは1~2)の比表面積は後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0023】
第1の本発明の貴金属担持酸化チタンの製造方法において、TiOx(xは1~2)粒子を含む液体と、貴金属塩を含む液体とを別々に調製して用いる場合、TiOx(xは1~2)粒子を含む液体中におけるTiOx(xは1~2)粒子の割合は、上記TiOx(xは1~2)粒子と貴金属塩とを含む液体中におけるTiOx(xは1~2)粒子の割合と同様であることが好ましく、貴金属塩を含む液体中における貴金属塩の割合は、上記TiOx(xは1~2)粒子と貴金属塩とを含む液体中における貴金属塩の割合と同様であることが好ましい。
また、TiOx(xは1~2)粒子を含む液体と、貴金属塩を含む液体とを別々に調製してそれぞれを噴霧して用いる場合、噴霧された液中におけるTiOx(xは1~2)粒子と貴金属塩との割合が上記TiOx(xは1~2)粒子と貴金属塩とを含む液体中におけるTiOx(xは1~2)粒子と貴金属塩との割合と同様になるように噴霧されることが好ましい。
【0024】
第1の本発明の製造方法の第1工程では、TiOx(xは1~2)粒子と貴金属塩の両方を含む液体を用いてもよく、TiOx(xは1~2)粒子を含む液体と貴金属塩を含む液体とを別々に用意して用いてもよいが、TiOx(xは1~2)粒子と貴金属塩の両方を含む液体を用いることが好ましい。両方を用いる液体を用いることで、組成の均一な貴金属担持酸化チタンが得られやすくなる。
【0025】
第1の本発明の製造方法の第1工程において、TiOx(xは1~2)粒子と貴金属塩とを含む液体、又は、TiOx(xは1~2)粒子を含む液体と貴金属塩を含む液体の噴霧は、気相中に行ってもよく、物体の表面に対して噴霧してもよいが、気相中に噴霧することが好ましい。気相中に噴霧することで、第2工程において噴霧された材料全体をより十分に焼成することができ、貴金属担持酸化チタンをより効率的に製造することができる。
【0026】
第1の本発明の製造方法の第1工程における液体の噴霧は、液体が噴霧されることになる限りその方法は特に制限されないが、超音波を用いて行われることが好ましい。超音波を用いて液体を霧化することで、液体をより小さい霧状粒子にして噴霧することができ、得られる貴金属担持酸化チタンをより比表面積の大きいものとすることができる。
【0027】
第1の本発明の製造方法において、上記TiOx(xは1~2)粒子を含む液体や、貴金属塩を含む液体を調製するために用いる溶媒は、第2工程において火炎中で焼成する際に煤を発生させないものであれば特に制限されず、例えば、水;メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール;テトラヒドロフラン、キシレン、ベンゼン、酢酸、ジエチルヘキサン酸、アセトニトリル、トルエン等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0028】
第1の本発明の貴金属担持酸化チタンの製造方法において、液体を噴霧する際にはガスを用いて噴霧するが、液体を噴霧する際に使用するガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスが好ましい。
液体を噴霧する際に流通させるガスの量は、噴霧する液体の量等に応じて適宜設定すればよいが、0.1~10L/分であることが好ましい。より好ましくは、1~3L/分である。
【0029】
第1の本発明の貴金属担持酸化チタンの製造方法において、第1工程で噴霧した液体が第2工程において火炎中で焼成されることになる限り、液体を噴霧する位置や方向は特に制限されないが、火炎の下側から火炎に向かって噴霧することが好ましい。このようにすることで、ガスの浮力を利用した粒子の輸送と回収が可能である。
【0030】
<第2の本発明の製造方法の第1工程>
第2の本発明の製造方法において用いるチタン源としては、塩化チタン、硫酸チタン、硝酸チタン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、硝酸チタン、塩化チタンが好ましい。より好ましくは、塩化チタンである。
【0031】
第2の本発明の貴金属担持酸化チタンの製造方法に用いる貴金属塩としては、第1の本発明の製造方法に用いるものと同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
【0032】
第2の本発明の貴金属担持酸化チタンの製造方法において、チタン源と貴金属塩との水溶液中におけるチタン源の割合は、水溶液100質量%に対して、0.01~5mol%であることが好ましい。より好ましくは、0.01~3mol%であり、更に好ましくは、0.01~1mol%である。
また、チタン源と貴金属塩との水溶液中における貴金属塩の割合は、水溶液100質量%に対して、5質量ppm~15質量%であることが好ましい。より好ましくは、5質量ppm~10質量%であり、更に好ましくは、5質量ppm~3質量%である。
【0033】
第2の本発明の貴金属担持酸化チタンの製造方法において、チタン源と貴金属塩との水溶液中におけるチタン源と貴金属塩との割合は、チタン源100質量%に対して、貴金属塩が1~30質量%となる割合であることが好ましい。本発明の製造方法で貴金属担持酸化チタンを製造することで、このように貴金属塩の割合が少ない場合であっても良好な電極触媒活性を発揮する貴金属担持酸化チタンを得ることができる。より好ましくは、チタン源100質量%に対して、貴金属塩が3~25質量%となる割合であり、更に好ましくは、チタン源100質量%に対して、貴金属塩が5~20質量%となる割合である。
【0034】
第2の本発明の貴金属担持酸化チタンの製造方法において、チタン源の水溶液と、貴金属塩の水溶液とを別々に調製して用いる場合、チタン源の水溶液中におけるチタン源の割合は、上記チタン源と貴金属塩との水溶液中におけるチタン源の割合と同様であることが好ましく、貴金属塩の水溶液中における貴金属塩の割合は、上記チタン源と貴金属塩との水溶液中における貴金属塩の割合と同様であることが好ましい。
また、チタン源の水溶液と、貴金属塩の水溶液とを別々に調製してそれぞれを噴霧して用いる場合、噴霧された液中におけるチタン源と貴金属塩との割合が上記チタン源と貴金属塩との水溶液中におけるチタン源と貴金属塩との割合と同様になるように噴霧されることが好ましい。
【0035】
第2の本発明の製造方法の第1工程では、チタン源と貴金属塩との水溶液を用いてもよく、チタン源の水溶液と貴金属塩の水溶液とを別々に用意して用いてもよいが、チタン源と貴金属塩との水溶液を用いることが好ましい。両方を含む水溶液を用いることで、組成の均一な貴金属担持酸化チタンが得られやすくなる。
【0036】
第2の本発明の製造方法の第1工程においても、チタン源と貴金属塩との水溶液、又は、チタン源の水溶液と貴金属塩の水溶液の噴霧は、気相中に行ってもよく、物体の表面に対して噴霧してもよいが、第1の本発明の製造方法の第1工程と同様の理由で気相中に噴霧することが好ましい。
【0037】
第2の本発明の製造方法の第1工程においても水溶液の噴霧を行う方法は特に制限されないが、第1の本発明の製造方法の第1工程と同様の理由で超音波を用いて行われることが好ましい。
【0038】
第2の本発明の製造方法の第1工程において、チタン源の水溶液や貴金属塩の水溶液を調製するために用いる溶媒としては、第1の本発明の製造方法の第1工程においてTiOx(xは1~2)粒子を含む液体や、貴金属塩を含む液体を調製するために用いる溶媒と同様のものを用いることができる。
第2の本発明の製造方法の第1工程において水溶液を噴霧する際に使用するガスの種類及び流通させるガスの量は、第1の本発明の製造方法の第1工程において液体を噴霧する際に使用するガスの種類及び流通させるガスの量と同様である。
また、第2の本発明の製造方法の第1工程において水溶液を噴霧する位置や方向も、第1の本発明の製造方法の第1工程において液体を噴霧する位置や方向と同様であることが好ましい。
【0039】
<本発明の製造方法の第2工程>
本発明の製造方法の第2工程は、第1工程で噴霧された液体を火炎中で焼成する工程である。
第2工程は、噴霧された液体が火炎中で焼成されることになる限り、その方法は特に制限されないが、拡散火炎中で焼成する工程であることが好ましい。このようにすることで、酸化剤に純酸素を用いた燃焼による高温ガス領域を利用できるため,より十分に液体を焼成することができる。
拡散火炎とは、燃焼に必要な酸素が可燃性気体とは別に、外から拡散によって入ってくる状態で燃焼している火炎のことである。
【0040】
本発明の製造方法の第2工程で、火炎を維持するために供給する可燃性気体は特に制限されず、メタン、プロパン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0041】
本発明の製造方法の第2工程で、火炎を維持するために供給する可燃性気体の量は火炎の大きさ等により適宜設定すればよいが、0.25~10L/分であることが好ましい。より好ましくは、2~5L/分である。
火炎を維持するために供給する酸素の量は火炎の大きさ等により適宜設定すればよいが、0.5~25L/分であることが好ましい。より好ましくは、5~13L/分である。
【0042】
本発明の製造方法の第2工程で、火炎の温度は特には限定されないが、おおよそ1000~2500℃であることが好ましい。より好ましくは、2000~2500℃である。焼成温度が低いと溶媒が水の場合は乾燥が不十分となることが懸念される。また貴金属塩の分解や焼成が不十分となり、塩が残存したり、貴金属による導電パスの形成が不十分となり満足な導電性が得られないおそれがある。
【0043】
本発明の製造方法では、第2工程で得られた焼成物に対して必要に応じて気相中で、又は取り出し後に電気炉等で追加の熱処理を行うこともできるが、追加の熱処理により貴金属担持酸化チタンの凝集や、貴金属の凝集が起こる懸念がある。したがって、本発明の製造方法では、第2工程で得られた焼成物に対して熱処理を行う工程を含まないことが好ましい。
【0044】
2.導電性材料の製造方法
上述した本発明の貴金属担持酸化チタンの製造方法で得られた貴金属担持酸化チタンは、電極触媒の担体として好適に使用できるものであり、貴金属担持酸化チタンに白金を担持させることで良好な電極触媒活性を発揮するとともに、高電位耐久性にも優れた導電性材料を得ることができる。
このような、本発明の貴金属担持酸化チタンの製造方法で得られた貴金属担持酸化チタンに白金を担持させる工程を含む導電性材料の製造方法もまた、本発明の1つであり、このようにして製造される導電性材料もまた、本発明の1つである。
【0045】
上記貴金属担持酸化チタンに白金を担持させる工程において白金を担持させる方法は特に制限されないが、貴金属担持酸化チタンのスラリーに白金化合物の溶液を添加し、混合した後、溶媒を除去して導電性材料を得る方法が好ましい。このようにスラリーを用いることで、白金を貴金属担持酸化チタンに高分散に担持することができる。
【0046】
上記貴金属担持酸化チタンのスラリーを調製するために使用する溶媒は特に限定されず、例えば、水、酸性溶媒、有機溶媒及びこれらの混合物が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、アルコール、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられ、中でもアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等の1価の水溶性アルコール;エチレングリコール、グリセリン等の2価以上の水溶性アルコール;等が挙げられる。溶媒として好ましくは水であり、より好ましくはイオン交換水である。
【0047】
上記白金化合物としては特に制限されないが、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、リン酸塩等の無機塩;酢酸塩、シュウ酸塩等の有機塩等;ジニトロジアンミン硝酸塩等の錯塩;塩化白金酸、ビス(アセチルアセトナト)白金(II)等の錯体等を用いることができる。
【0048】
上記貴金属担持酸化チタンのスラリーに白金化合物溶液を添加する際の白金化合物溶液の添加量は、スラリー中の貴金属担持酸化チタン100質量%に対して、白金化合物溶液中の白金の割合が3~30質量%となる量であることが好ましい。このような割合で添加することで、得られる導電性材料が、少量の白金の使用でも優れた電極触媒活性を発揮するものとなる。より好ましくは、スラリー中の貴金属担持酸化チタン100質量%に対して、白金化合物溶液中の白金の質量が5~25質量%となる量であり、更に好ましくは、10~20質量%となる量である。
【0049】
上記貴金属担持酸化チタンのスラリーに白金化合物溶液を添加した後の混合は、攪拌して行うことが好ましい。
また混合は60~120℃に加熱保持しながら行うことが好ましい。
混合する時間は、30~180分であることが好ましい。
【0050】
上記貴金属担持酸化チタンのスラリーに白金化合物溶液を添加、混合した後、溶媒を除去する方法は特に制限されないが、スラリーを濾過した後、濾別した固形分を乾燥する方法が好ましい。これにより効率的に溶媒を除去することができる。
またスラリーを濾過した後に濾別した固形分を水洗することが好ましい。これにより不純物を除去することができる。
【実施例0051】
本発明を詳細に説明するために以下に具体例を挙げるが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「%」及び「wt%」とは「重量%(質量%)」を意味する。なお、各物性の測定方法は以下の通りである。
【0052】
<BET比表面積>
JIS Z8830(2013年)の規定に準じ、試料を窒素雰囲気中、200℃で60分間熱処理した後、比表面積測定装置(マウンテック社製、商品名「Macsorb HM-1220」)を用いて、BET比表面積を測定した。
<体積抵抗値>
体積抵抗の測定には、株式会社三菱化学アナリテック製、粉体抵抗測定システム MCP-PD51型を用いた。粉体抵抗測定システムは、油圧による粉体プレス部と四探針プローブ、高抵抗測定装置(同社製、ロレスターGX MCP-T700)から構成される。
以下の手順に従い、体積抵抗(Ω・cm)の値を求めた。
1)四探針プローブを底面に備えたプレス冶具(直径20mm)にサンプル粉末を投入し、粉体抵抗測定システムの加圧部にセットした。
2)粉体プレス部を20kNまで加圧した後、粉体厚みをデジタルノギスで測定、抵抗値を高抵抗測定装置で測定した。
3)粉体の厚み、抵抗値から、下記数式に基づき体積抵抗率(Ω・cm)を求めた。
(体積抵抗率)=(抵抗値)×(抵抗率補正係数)×(厚み)
【0053】
<Ir、Pt担持量>
走査型蛍光X線分析装置ZSX PrimusII(株式会社リガク社製)を用いて白金並びにイリジウム含有量を測定した。
<電気化学的有効比表面積(ECSA:Electrochemical Surface Area)>
(1)作用極の作製
測定対象のサンプルに、5重量%パーフルオロスルホン酸樹脂溶液(アルドリッチ社製)、イソプロピルアルコール(和光純薬工業社製)及びイオン交換水を加え、超音波により分散させてペーストを調製した。ペーストを回転グラッシーカーボンディスク電極に塗布し、充分に乾燥した。乾燥後の回転電極を作用極とした。
(2)サイクリックボルタンメトリー測定
Automatic Polarization System(北斗電工社製、商品名「HZ-5000」)に、回転電極装置(北斗電工社製、商品名「HR-301」)を接続し、作用極に、上記で得た測定サンプル付き電極を用い、対極と参照極には、それぞれ白金電極と可逆水素電極(RHE)電極を用いた。
測定サンプル付き電極のクリーニングのため、25℃で、電解液(0.1mol/lの過塩素酸水溶液)にアルゴンガスをバブリングしながら1.2Vから0.05Vまでサイクリックボルタンメトリーに供した。その後、25℃で、アルゴンガスを飽和させた電解液(0.1mol/l過塩素酸水溶液)で1.2Vから0.05Vまで掃引速度50mV/secでサイクリックボルタンメトリーを行った。
その後、掃引時に得られる水素吸着波の面積(水素吸着時の電荷量:QH(μC))から、下記数式(i)を用いて電気化学的有効比表面積を算出し、電気化学特性の指標とした。なお、数式(i)中、「210(μCcm2)」は、白金(Pt)の単位活性面積あたりの吸着電化量である。
【0054】
【0055】
<初期電圧>
実施例・比較例粉末を用いた触媒層側をアノード側、白金目付け0.2mgPt/cm2 白金担持カーボン触媒層側をカソード側にして、膜電極接合体を単セル(ミックラボ社製、電極面積1cm×1cm、Au10μmめっきCuセパレータ ストレート流路仕様)に組み込み、PEFC単セル評価装置(東陽テクニカ社製)を用いて、セル温80℃、アノード側を75℃加湿100%H2 500ml/min、カソード側を75℃加湿100%O2 500ml/minに設定し、開放電圧から0.2Vまで掃引し、0.5Aと1.0A/cm2時点の電圧とセル抵抗を測定した。
<高電位保持試験>
初期発電試験を実施後に、単セルを反転させ、セル温80℃、アノード側を75℃加湿100%H2 500ml/min、カソード側を75℃加湿100%N2 500ml/minに設定し、1.7Vを20分印加した後、単セルを反転させ、再度発電試験を行い、1A/cm2時点の電圧を測定した。高電位保持試験後の電圧値を試験前の電圧値で除して維持率(%)を求めた。
【0056】
実施例1
(1)IrO
2担持TiO
2の調製
酸化チタン(日本アエロジル社製 製品名『AEROXIDE P25』、BET比表面積50m
2/g)と硝酸イリジウム(田中貴金属社製)を用い、酸化チタン濃度が0.5wt%、イリジウム濃度が0.0263wt%となるようにスラリー液(プリカーサー)を調整した。
メタン2.0L/分、酸素5.0L/分の流量となるように
図1の各ガス管より流通させて拡散火炎を合成した。調整したスラリーを超音波霧化機で液滴化し、窒素5.0L/分を流通させて拡散火炎中に噴霧し、IrO
2担持TiO
2の粉末を得た。
(2)Pt、IrO
2担持TiO
2粉末の調製
得られたIrO
2担持TiO
2粉末を3.0gと、イオン交換水を960mL、エタノール240mLを四つ口フラスコに計量して撹拌混合し、IrO
2担持TiO
2スラリーを得た。
IrO
2担持TiO
2スラリーを攪拌しながら、オイルバス中で加熱し、還流管を設置して、還流下で30分加熱した。これに塩化白金酸液(田中貴金属工業社製)を希釈して2.2wt%に調整したPt液を15.15g添加し、還流下で加熱保持しながら1時間撹拌混合した。常法に従い、濾過、水洗、乾燥して水分を全て蒸発させPt、IrO
2担持TiO
2粉末を得た。
(3)膜電極接合体の作製
得られたPt、IrO
2担持TiO
2粉末を0.2gと、20重量%Nafion(登録商標)溶液(シグマアルドリッチ社製)168μL、t-ブチルアルコール(富士フイルム和光純薬社製)120μL、イオン交換水24μL、2mmφZrO
2ビーズ1.4gをスクリュー管に入れ、超音波洗浄機を用いて、150分間分散し、Pt、IrO
2担持TiO
2インクを得た。
得られたPt、IrO
2担持TiO
2インクをテフロン(登録商標)シートに40μL滴下し、バーコーターを用いて塗工後、自然乾燥させ、Pt使用量のPt、IrO
2担持TiO
2シート(Pt使用量0.05mgPt/cm
2)を得た。
市販の50重量%Pt担持カーボン(エヌイーケムキャット社製)を0.02gと、20重量%Nafion溶液(シグマアルドリッチ社製)61μL、t-ブチルアルコール(和光純薬社製)179μL、イオン交換水89μL、2mmφZrO2ビーズ1.6gをスクリュー管に入れ、超音波洗浄機を用いて、150分間分散し、Pt担持カーボンインクを得た。
得られたPt担持カーボンインクをテフロン(登録商標)シートに40μL滴下し、バーコーターを用いて塗工後、自然乾燥させ、Pt担持カーボンシート1(Pt使用量0.2mgPt/cm
2)を得た。
電解質膜(デュポン社製、製品名NR-212)を3cm×3cmに切り抜いた後Pt、IrO
2担持TiO
2シートと、Pt担持カーボンシートをそれぞれ1cm×1cmに切り抜き、Pt、IrO
2担持TiO
2シート、電解質膜、Pt担持カーボンシートの順に重ね合わせ、加熱式油圧プレス機(東洋精機製作所製、製品名 ミニテストプレスMP-WNH)を用いて1MPaの設定圧力で、140℃で6分間ホットプレスした。
その後、Pt、IrO
2担持TiO
2シート、Pt担持カーボンシートからテフロン(登録商標)シートを剥がし、膜電極接合体を得た。
【0057】
実施例2
硝酸イリジウム(田中貴金属社製)を用いて、イリジウム濃度が0.0556wt%となるようにスラリー液を調整したこと以外は実施例1と同様にしてIrO2担持TiO2の調製を行った。
(2)Pt、IrO2担持TiO2粉末の調製、(3)膜電極接合体の作製は実施例1と同様に行った。
【0058】
実施例3
実施例2のIrO2担持酸化チタンの調製後に電気炉にて大気下500℃1時間焼成を行った以外は実施例2と同様にしてIrO2担持TiO2の調製を行った。
(2)Pt、IrO2担持TiO2粉末の調製、(3)膜電極接合体の作製は実施例1と同様に行った。
【0059】
実施例4
硝酸イリジウム(田中貴金属社製)を用い、イリジウム濃度が0.125wt%となるようにスラリー液を調整した以外は実施例1と同様にしてIrO2担持TiO2の調製を行った。
(2)Pt、IrO2担持TiO2粉末の調製、(3)膜電極接合体の作製は実施例1と同様に行った。
【0060】
比較例1
実施例1のIrO2担持TiO2の調製において、Irを添加せずにAEROXIDE P25のみを含むスラリーを拡散火炎に供してTiO2を調製した。
調製したTiO2を2.7gと硝酸イリジウム(田中貴金属社製)を1.0wt%に調製したものを30g蒸発皿に入れ、マグネチックスターラーで撹拌させながら、100℃で蒸発乾固させた。得られた粉体を電気炉にて大気下450℃で4時間焼成を行い、IrO2担持TiO2粉末を得た。
(2)Pt、IrO2担持TiO2粉末の調製、(3)膜電極接合体の作製は実施例1と同様に行った。
【0061】
比較例2
実施例1の(3)膜電極接合体作製におけるPt担持カーボンシート1のPt使用量を0.05mgPt/cm2)に変更してPt担持カーボンシート2を得た。更に、実施例1と同様に電解質膜、Pt担持カーボンシート1の順に重ね合わせ、膜電極接合体を作製した。
【0062】
実施例1~4、比較例1で得られたIrO2担持TiO2のIr担持量を測定し、実施例1、2、4、比較例1得られたIrO2担持TiO2のBET比表面積を測定した。また、Pt、IrO2担持TiO2粉末におけるPt担持量、体積抵抗値、ECSAを測定した。
更に実施例1~4、比較例1~2の膜電極接合体の初期電圧を測定した。さらに、実施例1、2、4、比較例2の膜電極接合体の高電位試験を実施し、試験後の1.0A/cm2における電圧の保持率を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0063】
【0064】
実施例、比較例の結果から、本発明の貴金属担持酸化チタンの製造方法により、少量の貴金属の使用量で良好な導電性を発揮し、高電位耐久性にも優れる貴金属担持酸化チタンが得られることが確認された。