(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005782
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】基板処理システム、基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106151
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 一良
(72)【発明者】
【氏名】林原 秀元
(72)【発明者】
【氏名】屋敷 佳代子
(72)【発明者】
【氏名】喜多 恭平
(72)【発明者】
【氏名】浅井 一秀
(57)【要約】
【課題】基板処理装置が有する装置のデータを安定して取得することが可能な技術を提供する。
【解決手段】本開示の技術は、少なくとも1つのステップを有するレシピにより基板の処理を制御することが可能な制御部と、前記基板の処理中に報告される装置のデータを記憶することが可能な第1の記憶部と、を有する基板処理装置と、少なくとも1つの前記基板処理装置と接続し、前記データを取得する場合に、前記データがあらかじめ定義されたデータ取得可能な範囲に収まるように、取得する前記データに含まれる前記ステップの数を指定することが可能なデータ管理部と、を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのステップを有するレシピにより基板の処理を制御することが可能な制御部と、前記基板の処理中に報告される装置のデータを記憶することが可能な第1の記憶部と、を有する基板処理装置と、
少なくとも1つの前記基板処理装置と接続し、前記データを取得する場合に、前記データがあらかじめ定義されたデータ取得可能な範囲に収まるように、取得する前記データに含まれる前記ステップの数を指定することが可能なデータ管理部と、
を備える、基板処理システム。
【請求項2】
前記範囲は、前記基板処理装置に接続されるセンサの数により変更可能である、請求項1に記載の基板処理システム。
【請求項3】
前記ステップにはステップ実行時間が設定される、請求項1に記載の基板処理システム。
【請求項4】
前記範囲は、前記データ管理部において取得する前記データの取得開始から取得終了までの時間の範囲を示す、請求項3に記載の基板処理システム。
【請求項5】
前記データ管理部は、前記データの取得を行う場合、取得する前記データに含まれる一のステップに設定された前記ステップ実行時間が、前記範囲以下である場合は、取得する前記データに前記一のステップの次に続くステップを加え、加えられた複数のステップの各ステップ実行時間の合計が、前記範囲を超過する直前まで、前記ステップを加える動作を繰り返すことで、取得する前記データに含まれる前記ステップの数を指定することが可能である、請求項4に記載の基板処理システム。
【請求項6】
前記データ管理部は、取得した前記データをファイルとして保存する第2の記憶部を備える、請求項1に記載の基板処理システム。
【請求項7】
前記ファイルは、前記レシピ単位で前記第2の記憶部に保存され、同一の前記レシピに含まれるデータは、一の前記ファイルとして保存される、請求項6に記載の基板処理システム。
【請求項8】
前記データは、前記データ管理部に取得されたときのデータ形式とは異なるデータ形式で、前記第2の記憶部内に前記ファイルとして保存される、請求項6に記載の基板処理システム。
【請求項9】
前記ファイルの前記データ形式は予め指定することが可能である、請求項8に記載の基板処理システム。
【請求項10】
前記データ管理部は、前記ステップに設定された前記ステップ実行時間が前記範囲を超える場合は、前記ステップのデータを分割して取得する、請求項5に記載の基板処理システム。
【請求項11】
前記範囲で取得可能なデータサイズは、1.8GB以下である、請求項1又は請求項6に記載の基板処理システム。
【請求項12】
前記データ管理部は、前記第2の記憶部の容量を監視し、前記容量を超えて前記ファイルが保存される場合は、前記第2の記憶部内の古いファイルを削除する、請求項7に記載の基板処理システム。
【請求項13】
前記データ管理部は、前記古いファイルを削除した場合に、ファイルを削除した旨を履歴情報として報知する、請求項12に記載の基板処理システム。
【請求項14】
基板の処理中に報告される装置のデータを記憶することが可能な第1の記憶部と、
前記データの取得を行うデータ管理部に接続されることが可能な通信部と、
少なくとも1つのステップを有するレシピで前記基板の処理を制御することが可能であって、前記データ管理部より取得する前記データがあらかじめ定義されたデータ取得可能な範囲に収まるような前記データに含まれるステップの数が指定された場合に、前記ステップの数に対応したデータの収集を前記記憶部に指示することが可能な制御部と、
を備える、基板処理装置。
【請求項15】
少なくとも1つのステップを有するレシピにより基板の処理を実行する工程と、
前記基板の処理中に報告される装置のデータを記憶する工程と、
前記データ取得時、取得する前記データが予め定義されたデータ取得可能な範囲に収まるような、取得する前記データに含まれるステップの数を算出する工程と、
を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載された工程をコンピュータにより基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理システム、基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
Large Scale Integrated circuit(LSI)やDynamic Random Access Memory(DRAM)といった半導体装置(半導体デバイス)を製造する際には、一般に、シリコン(Si)ウェハ等の半導体基板(以下、単に「基板」あるいは「ウェハ」という)に各種処理を行う基板処理装置が用いられる。また、このような基板処理装置として、例えば下記特許文献1には、群管理装置に通信可能に接続され、基板処理装置の各種データを群管理装置にて管理するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された群管理装置のようなデータ管理部による1乃至複数の基板処理装置の管理に際しては、基板処理実行時に基板処理装置に搭載されたセンサ等が取得した各種のプロセスデータ(以下、これらを単に「データ」という)を取得することがある。そして、ここで取得されたデータを用いて、例えば管理対象としての基板処理装置の状態を知るために解析することがある。このようなデータを取得するために、データ管理部は、一の基板処理装置内に格納された種々のデータから対象となるデータを検索して抽出する。
【0005】
ここで、一の基板処理装置に設けられたセンサの数が多かったり、実施される基板処理の内容が複雑であったりすると、上述の一の基板処理装置において取得するデータの総データサイズが大きくなる。そのため、場合によっては当該データのデータサイズがデータ管理部のメモリで保持可能なサイズを超過してしまい、データの取得や取得後のデータ形式の変換といった処理が安定して行えなくなることがある。
【0006】
本開示は、上述の点を考慮し、基板処理装置が有するデータを安定して取得することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、
少なくとも1つのステップを有するレシピにより基板の処理を制御することが可能な制御部と、前記基板の処理中に報告される装置のデータを記憶することが可能な第1の記憶部と、を有する基板処理装置と、
少なくとも1つの前記基板処理装置と接続し、前記データを取得する場合に、前記データがあらかじめ定義されたデータ取得可能な範囲に収まるように、取得する前記データに含まれる前記ステップの数を指定することが可能なデータ管理部と、
を含む技術が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、基板処理装置が有するデータを安定して取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施の形態に係る基板処理システムの一例を示す概略構成図である。
【
図2】本開示の一実施の形態に係る基板処理装置の一例を示す概略構成図である。
【
図3】
図2に示すA-A線で切断した断面図である。
【
図4】本開示の一実施の形態に係る基板処理システムのハードウェア構成の一例を模式的に示す概略説明図である。
【
図5】本開示の一実施の形態に係る基板処理システムの各機能の一例を示す機能ブロック図である。
【
図6】データ管理部が取得する一のレシピに対応するデータの模式図である。
【
図7】基板処理装置のセンサ数とデータ取得可能な範囲との関係を示したグラフである。
【
図8】本開示の一実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示を実施するための一の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。さらに、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0011】
<基板処理システムの概略構成>
図1は、本開示の一実施の形態に係る基板処理システムの一例を示す概略構成図である。本実施の形態に係る基板処理システム1は、
図1に示すように、1乃至複数(
図1においては3つ)の基板処理装置10-1、10-2、10-3と、これらの基板処理装置10-1、10-2、10-3と通信可能に接続されたデータ管理部20とを含むものである。
【0012】
基板処理装置10-1、10-2、10-3は、半導体デバイスを構成するウェハ200に各種の処理を行う装置であればよい。また、データ管理部20は、これら1乃至複数の基板処理装置10-1、10-2、10-3を管理するための装置であってよい。
【0013】
以下に、上述した基板処理装置10-1、10-2、10-3の一例とデータ管理部20の一例とを順に説明する。なお、以下の説明では、複数個の基板処理装置10-1、10-2、10-3の一例として、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置10を採用した場合を説明する。しかし、本開示における基板処理装置は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚又は数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置とすることもできる。同様に、以下には、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置10を採用した場合を説明する。しかし、本開示における基板処理装置は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置とすることもできる。
【0014】
<基板処理装置の概略構成>
図2は、本開示の一実施の形態に係る基板処理装置の一例を示す概略構成図である。
図2においては、一の基板処理装置10に含まれる縦型処理炉を縦断面図で図示している。また、
図3は、
図2に示すA-A線で切断した断面図である。
【0015】
本実施の形態に係る基板処理装置10は、
図2及び
図3に示すように、主にヒータ207が設けられた処理炉202を含むものとすることができる。ヒータ207は、例えば円筒形状とすることができ、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられていてよい。また、このヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能し得る。
【0016】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されていてよい。この反応管203は、例えば石英(SiO2)又は炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成することができ、その上端が閉塞し且つその下端が開口した円筒形状に形成されたものであってよい。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されていてよい。このマニホールド209は、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属材料により構成することができ、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されていてよい。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合し、反応管203を支持するように構成され得る。
【0017】
マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられていてよい。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられ得る。そして、主に上述した反応管203とマニホールド209とにより、処理容器(反応容器)が構成され得る。処理容器の筒中空部には処理室201が形成されていてよい。処理室201は、基板としてのウェハ200を収容可能に構成されていてよい。この処理室201内でウェハ200に対する各種の処理が行われ得る。
【0018】
処理室201内には、第1~第3供給部としてのノズル249a~249cが、マニホールド209の側壁を貫通するようにそれぞれ設けられていてよい。以下では、これらのノズル249a~249cをそれぞれ第1~第3ノズルとも称する。ノズル249a~249cは、例えば石英又はSiC等の耐熱性材料により構成されていてよい。また、ノズル249a~249cには、ガス供給管232a~232cがそれぞれ接続されていてよい。これら3つのノズル249a~249cはそれぞれ異なるノズルであり、ノズル249a、249cのそれぞれは、ノズル249bに隣接して設けられていてよい。なお、本明細書における「第1~第3供給部」のような範囲の表記は、最小値及び最大値がその範囲に含まれることを意味する。
【0019】
ガス供給管232a~232cには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(以下、「MFC」ともいう)241a~241cと、開閉弁であるバルブ243a~243cがそれぞれ設けられていてよい。また、ガス供給管232a、232bのバルブ243a、243bよりも下流側には、ガス供給管232d、232eがそれぞれ接続されていてよい。さらに、ガス供給管232cのバルブ243cよりも下流側には、ガス供給管232f、232gがそれぞれ接続されていてよい。ガス供給管232d~232gには、ガス流の上流側から順に、MFC241d~241g及びバルブ243d~243gがそれぞれ設けられていてよい。ガス供給管232a~232gは、例えば,SUS等の金属材料により構成され得る。
【0020】
ノズル249a~249cは、
図3に示すように、反応管203の内壁とウェハ200との間の平面視で円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウェハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられていてよい。すなわち、ノズル249a~249cは、ウェハ200が配列されるウェハ配列領域の側方の、ウェハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウェハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられていてよい。
【0021】
ノズル249bは、平面視において、処理室201内に搬入されるウェハ200の中心を挟んで後述する排気口231aと一直線上に対向するように配置されていてよい。また、ノズル249a、249cは、ノズル249bと排気口231aの中心とを通る直線Lを、反応管203の内壁(すなわち、ウェハ200の外周部)に沿って両側から挟み込むように配置されていてよい。直線Lは、ノズル249bとウェハ200の中心とを通る直線でもある。すなわち、ノズル249cは、直線Lを挟んでノズル249aと反対側に設けられているということもできる。ノズル249a、249cは、直線Lを対称軸として線対称に配置されていてよい。
【0022】
ノズル249a~249cの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a~250cがそれぞれ設けられていてよい。ガス供給孔250a~250cは、それぞれが、平面視において排気口231aと対向(対面)するように開口しており、ウェハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a~250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられているとよい。
【0023】
ガス供給管232aからは、原料ガスとして、例えばウェハ200上に形成される膜を構成する主元素としてのシリコン(Si)を含むガス、すなわち、Si含有ガスの1つであるハロシラン系ガスが供給されるものとすることができる。このハロシラン系ガスは、MFC241a、バルブ243a及びノズル249aを介して処理室201内へ供給できる。ハロシランとは、Siとハロゲン元素とを含むシランのことである。ハロシラン系ガスは、成膜ガス、すなわち、Siソースとして作用し得る。ハロゲン元素には、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)及びヨウ素(I)等が含まれる。ハロシラン系ガスとしては、例えば、Si及びClを含むクロロシラン系ガスを用いることができる。
【0024】
ガス供給管232bからは、例えばフッ素(F)含有ガスが供給されるものとすることができる。このF含有ガスは、MFC241b、バルブ243b及びノズル249bを介して処理室201内へ供給できる。F含有ガスは、改質ガスあるいはエッチングガスとして作用し得る。
【0025】
ガス供給管232cからは、反応ガスとして、例えば窒素(N)含有ガスである窒化水素系ガスが、MFC241c、バルブ243c、ノズル249cを介して処理室201内へ供給されるものとすることができる。窒化水素系ガスは、成膜ガス、すなわちNソース(窒化ガス)として作用し得る。
【0026】
ガス供給管232gからは、例えばSi含有ガスとして、Siとアミノ基とを含むガスであるアミノシラン系ガス(以下、「ASガス」ともいう)が供給されるものとすることができる。このASガスは、MFC241g、バルブ243g、ガス供給管232c及びノズル249cを介して処理室201内へ供給できる。Si含有ガスは、改質ガスとして作用し得る。
【0027】
ガス供給管232d~232fからは、例えば不活性ガスが、それぞれMFC241d~241f、バルブ243d~243f、ガス供給管232a~232c、ノズル249a~249cを介して処理室201内へ供給されるものとすることができる。不活性ガスは、パージガス、キャリアガスあるいは希釈ガス等として作用し得る。
【0028】
主に、ガス供給管232a、232c、MFC241a、241c及びバルブ243a、243cにより、成膜ガス供給系(原料ガス供給系、反応ガス供給系)が構成できる。また、主に、ガス供給管232g、MFC241g及びバルブ243gにより、Si含有ガス供給系(換言すると、ASガス供給系)が構成できる。さらに、主に、ガス供給管232b、MFC241b及びバルブ243bにより、F含有ガス供給系が構成できる。さらにまた、主に、ガス供給管232d~232f、MFC241d~241f及びバルブ243d~243fにより、不活性ガス供給系が構成できる。Si含有ガス供給系とF含有ガス供給系とを改質ガス供給系と称することもできる。
【0029】
上述の各種供給系のうちのいずれか、あるいは全ての供給系は、バルブ243a~243gやMFC241a~241g等が集積されてなる集積型供給システム248として構成されていてもよい。この集積型供給システム248は、ガス供給管232a~232gのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a~232g内への各種ガスの供給動作(すなわち、バルブ243a~243gの開閉動作やMFC241a~241gによる流量調整動作等)が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成できる。集積型供給システム248は、一体型、あるいは分割型の集積ユニットとして構成することができ、ガス供給管232a~232g等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができるものであってよい。これにより、集積型供給システム248のメンテナンス、交換及び増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能となる。
【0030】
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口231aが設けられていてよい。この排気口231aは、
図2に示すように、平面視において、ウェハ200を挟んでノズル249a~249c(より詳細には、ガス供給孔250a~250c)と対向(対面)する位置に設けられているとよい。排気口231aは、反応管203の側壁の下部より上部に沿って、すなわち、ウェハ配列領域に沿って設けられていてもよい。排気口231aには排気管231が接続されていてよく。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器としての圧力センサ245及び圧力調整器としてのAuto Pressure Controller(APC)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続され得る。
【0031】
APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気及び真空排気停止を行うことができるものであってよい。また、このAPCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成され得る。主に、排気管231、APCバルブ244及び圧力センサ245により、排気系が構成できる。この排気系には、真空ポンプ246を含めても良い。
【0032】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられていてよい。このシールキャップ219は、例えばSUS等の金属材料により構成され、略円盤状に形成することができる。また、シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられていてよい。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置され得る。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されていてよい。回転機構267は、ボート217を回転させることでウェハ200を回転させるように構成することができる。
【0033】
シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されていてよい。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウェハ200を処理室201内外に搬入及び搬出する搬送装置として機能し得る。
【0034】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば2枚以上250枚以下のウェハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で鉛直方向に整列させて多段に、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されたものであってよい。このボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成され得る。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に支持されていてよい。
【0035】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されていてよい。温度センサ263により検出された温度情報に基づいてヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布とすることができる。この温度センサ263は、例えば反応管203の内壁に沿って設けられていてよい。
【0036】
図4は、本開示の一実施の形態に係る基板処理システムのハードウェア構成の一例を模式的に示す概略説明図である。なお、
図4においては、理解を容易にするために、基板処理装置10とデータ管理部20をそれぞれ1つずつ示している。
【0037】
基板処理装置10は、基板としてのウェハ200の一連の処理を制御する、後述する制御部11として機能し得るコントローラ121を含む。このコントローラ121は、
図4に示すように、プロセッサの一例としてのCentral Processing Unit(CPU)121a、メモリの一例としてのRandom Access Memory(RAM)121b、ストレージの一例としての記憶装置121c、そして、入出力(I/O)ポート121dを少なくとも含むコンピュータで構成することができる。RAM121b、記憶装置121c及びI/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能となっていてよい。
【0038】
記憶装置121cは、例えばRead Only Memory(ROM)、フラッシュメモリ、Hard Disk Drive(HDD)又はSolid State Drive(SSD)といった、非一時的なコンピュータ読取可能な記録媒体で構成することができる。記憶装置121c内には、基板処理装置10の各動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能な状態で格納されているとよい。
【0039】
上述したプロセスレシピ(以下、単に「レシピ」ともいう。)は、基板処理を実施するための種々の情報を構成するものであって、基板処理のための少なくとも1つのステップで構成されたものである。このレシピは、例えば一連の基板処理を構成する複数のステップと、各ステップを実行する際の各種構成要素の制御情報とが含まれたものであってよい。また、このレシピは、基板処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであってよく、一プログラムとして機能し得る。これに関連して、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、又はそれらの両方を含む場合がある。
【0040】
RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域として機能するものであってよい。
【0041】
I/Oポート121dは、上述した基板処理装置10の各種構成要素に接続するためのポートであってよい。このI/Oポート121dには、例えばMFC241a~241g、バルブ243a~243g、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267及びボートエレベータ115等が接続されていてよい。なお、I/Oポート121dに接続される構成要素は上述したものに限定されない。
【0042】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、後述する入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成することができる。このCPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241gによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a~243gの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作及び圧力調整動作、真空ポンプ246の起動及び停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転及び回転速度調節動作、及び、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御することができる。
【0043】
上述した構成を含むコントローラ121は、入出力装置122と、外部記憶装置123と、通信インタフェース(I/F)124とに接続されていてよい。このうち、入出力装置122は、キーボード、マウス、タッチパネル、ポインティングデバイス等の入力装置や、モニタ等の表示装置等を単独であるいは組み合わせて構成されるユーザインタフェースであってよい。
【0044】
外部記憶装置123は、例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ、SSD等の半導体メモリ等の非一時的なコンピュータ読取可能な記録媒体で構成することができる。この外部記憶装置123及び上述した記憶装置121cの少なくとも一方が、後述する第1の記憶部12として機能し得る。
【0045】
通信インタフェース124は、基板処理装置10とデータ管理部20との間で各種信号の送受信をするための、有線あるいは無線通信を可能とするインタフェースであってよい。この通信インタフェース124が、後述する通信部13として機能し得る。
【0046】
図5は、本開示の一実施の形態に係る基板処理システムの各機能の一例を示す機能ブロック図である。
図5においても、
図4と同様に、その理解を容易にする目的で、基板処理装置10とデータ管理部20をそれぞれ1つずつ示している。基板処理装置10は、
図5に示すように、制御部11と、第1の記憶部12と、基板処理装置側の通信部13とを含むものとすることができる。
【0047】
制御部11は、主に上述したコントローラ121によって実現することができる。この制御部11は、レシピに基づいて基板処理装置10の各種構成要素を制御して、基板の処理を実現するものであってよい。また、この制御部11は、レシピに基づいて基板処理を実行した際にその処理中に報告されるデータを収集するデータ収集部14を含んでいてよい。
【0048】
第1の記憶部12は、主に上述した記憶装置121cや外部記憶装置123によって実現することができる。この第1の記憶部12は、データ収集部14が収集したデータを記憶することが可能なものとすることができる。第1の記憶部12内に記憶されるデータは、実行したレシピ、より好ましくはレシピ内の各ステップに関連付けて格納されていると好ましい。
【0049】
基板処理装置側の通信部13は、主に上述した通信インタフェース124によって実現することができる。この基板処理装置側の通信部13は、データ管理部20との間のデータ通信を行うためのものであってよい。
【0050】
<データ管理部の概略構成>
データ管理部20は、少なくとも1つの基板処理装置10と接続したものである。具体的には、本実施の形態に係るデータ管理部20は、複数の基板処理装置10-1、10-2、10-3を管理することが可能な装置、例えば群管理装置やファイルサーバ等であってよい。このデータ管理部20は、インターネット等を介してデータ管理サーバ2に接続可能であってよい。また、このデータ管理サーバ2は、データ管理部20から受信したファイルを解析することが可能なサーバ、例えばFault Detection and Classification(FDC)解析サーバとすることができる。
【0051】
データ管理部20は、
図4に示すように、プロセッサの一例としてのCPU301、メモリの一例としてのRAM302、ストレージの一例としての記憶装置303、及び基板処理装置10-1、10-2、10-3との間でデータ通信を実現する通信インタフェース304を少なくとも含むコンピュータで構成することができる。また、このデータ管理部20は、ユーザ(具体的には、装置オペレータ、装置管理者、装置エンジニア、保守員あるいは作業者等)による入力動作がなされる操作部305を含んでいてもよい。
【0052】
記憶装置303は、例えばROM、フラッシュメモリ、HDD又はSSDといった、非一時的なコンピュータ読取可能な記録媒体で構成することができる。記憶装置303内には、各基板処理装置10-1、10-2、10-3の管理情報や、各基板処理装置10-1、10-2、10-3から取得したデータ、あるいはデータを所定のデータ形式に変換したデータファイル等が、読み出し可能な状態で格納されていてよい。
【0053】
CPU301は、データ管理部20における種々の動作を制御するために用いられ得る。データ管理部20における種々の動作としては、例えば各基板処理装置10-1、10-2、10-3からデータを取得すること、及び取得したデータのデータ形式を変更すること等を挙げることができる。
【0054】
RAM302は、CPU301によって実行される各種動作に関連するデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(言い換えれば、ワークエリア)として機能するものであってよい。
【0055】
通信インタフェース304は、データ管理部20と各基板処理装置10-1、10-2、10-3との間で各種信号の送受信をするための、有線あるいは無線通信を可能とするインタフェースであってよい。この通信インタフェース304で用いられる通信規格については、基板処理装置10側の通信インタフェース124の規格に準じたものとするとよい。
【0056】
操作部305は、ユーザからの操作コマンドの入力を受け付けることが可能なものであってよい。具体的には、この操作部305は、基板処理装置10の入出力装置122と同様に、入力装置や表示装置等を単独で又は組み合わせて構成されるユーザインタフェースで構成することができる。
【0057】
上述したハードウェア構成を含むデータ管理部20は、主に以下に示す機能を奏することができる。すなわち、本実施の形態に係るデータ管理部20は、
図5に示すように、データ取得部21と、ファイル生成部22と、第2の記憶部23と、データ管理部側の通信部24と、を含むものとすることができる。上述した構成のうち、データ取得部21とファイル生成部22とは、主にCPU301によって実現することができる。同様に、第2の記憶部23は、主に記憶装置303によって実現することができ、通信部24は、主に通信インタフェース304によって実現することができる。
【0058】
データ取得部21は、ユーザによる操作コマンドの入力等に基づいて、特定の基板処理装置10で実行された特定のレシピに関連するデータを取得するためのものであってよい。ここで、本実施の形態に係るデータ取得部21にて取得されるデータは、レシピ単位ではなく、ステップ単位で取得されるものであることは、特に留意すべき事項である。このように、取得されるデータをステップ単位で取得すると、レシピ単位で取得する場合に比べて取得するデータのデータサイズを小さく抑えることができる。これにより、取得するデータのデータサイズがデータ管理部20のメモリの容量を超過してしまうことを防止できる。
【0059】
ファイル生成部22は、データ取得部21が取得したデータを、レシピ単位でファイル化するためのものであってよい。ファイル生成部22は、センサ出力の時系列データ(例えば各種センサの生の波形データ)で構成されるデータを、異なるデータ形式のファイルに変換するものであってよい。より具体的には、ファイル生成部22は、取得したデータを、データ管理サーバ2等で解析しやすいデータ形式、例えばJSON形式のファイルに変換することが可能なものであってよい。また、例えばCSV形式や、XML形式ファイルのファイルに変換することが可能なものであってもよい。このようなデータ変換を行うことで、データの解析を円滑に実施することができる。また、ファイルのデータ形式は予め指定することができると好ましく、データ形式が指定できることで、ファイルの利用用途に合わせたデータを準備することができる。
【0060】
また、データ取得部21が取得するデータはステップ単位で取得されたものであるため、一のデータをデータ変換するだけではファイル生成部22によるレシピ単位のファイル生成が完了しない場合がある。そこで、データ取得部21で取得されるデータのうち、同一の前記レシピに含まれるデータは、一の前記ファイルとしてまとめて保存されるようにすると好ましい。これにより、第2の記憶部23内に保存されるデータファイルは全てレシピ単位で生成されたファイルとすることができ、以降の解析等の処理での利用が容易となる。なお、一のファイルにまとめて保存する方法としては、一のレシピを構成するすべてのデータが取得できた段階でファイルを一括で生成してもよい。あるいは、取得したデータをファイルに変換するタイミングで同一のレシピを構成するデータのファイルが既に作成されているかどうかを確認し、同一のレシピを構成するデータのファイルが既に作成されている場合には、当該ファイルに直近で取得したデータを書き込んで一のファイルを更新するようにしてもよい。
【0061】
第2の記憶部23は、データ管理部20が取得したデータをファイルとして保存するものであってよい。より詳しく言えば、データ取得部21で取得されたデータがファイル生成部22でレシピ単位のファイルに変換されることで生成された、データファイルを記憶するものであってよい。第2の記憶部23内には、各基板処理装置10-1、10-2、10-3から取得されファイルとして生成された複数のデータファイルが記憶されていてよい。
【0062】
この第2の記憶部23には、そのデータ容量を監視する図示しない容量監視部を含んでいてもよい。当該容量監視部では、第2の記憶部23のデータ容量、特に残存データ容量を監視し、新たなファイルを保存する際に、残存データ容量を超えてファイルが保存される場合には、第2の記憶部23内の古いファイルを削除するものとすると好ましい。このように、第2の記憶部23の残存データ容量を監視し、新たなファイルのデータ容量が、残存データ容量を超える場合は古いファイルを削除することで、ファイルの格納エラーをなくすることができる。
【0063】
加えて、上述した古いファイルを削除した場合に、ファイルを削除した旨を履歴情報として報知すると好ましい。当該報知は、例えばデータ管理部20の操作部305を介して実施することができる。このような報知を行うことにより、ユーザに古いファイルが削除された旨を知らせることができ、第2の記憶部23内のデータの整理等を促す効果が期待できる。
【0064】
データ管理部側の通信部24は、各基板処理装置10-1、10-2、10-3との間のデータ通信を行うためのものであってよい。加えて、このデータ管理部側の通信部24は、例えばデータ管理サーバ2のような外部の装置との間のデータ通信を行うことも可能である。
【0065】
ところで、データ取得部21では、データをステップ単位で取得することは上述した通りである。しかし、一度に取得するデータのデータサイズを小さくするために、例えばデータを1ステップ(あるいは数ステップ)毎に取得することとすると、取得するデータのデータサイズは小さくなるものの、1つのレシピに関連するデータを取得するのに長い時間を要する場合がある。
【0066】
詳しく説明すると、基板処理時に報告されるデータは、上述した通り、基板処理装置10内の第1の記憶部12内に保存されるものである。そのため、データ管理部20において特定のデータを取得する場合は、第1の記憶部12内を検索して該当するデータを取得する。他方、レシピに含まれるステップは、その実行に要する時間(以下、この時間を「ステップ実行時間」という)はステップ毎に異なるのが通常であり、短い場合は1秒程度のものも含まれ得る。また、1つのレシピを構成するステップの数は、100ステップを超える場合も想定される。そうすると、データ取得部21において、例えば比較的短時間のステップを多く含み且つ総ステップ数の比較的多いレシピのデータを取得しようとするとき、上述のように1ステップ毎にデータの検索・取得を行うと、ステップ実行時間よりもデータの検索に要する時間の方が長くなることがある。また、通常はデータを検索する毎にオーバーヘッド時間が発生するため、検索数に比例してデータ取得に要する時間が長くなる。このような事情から、単にステップ単位でデータを取得するだけではファイル作成に要する時間に長時間を要する事象が生じ得る。
【0067】
本実施の形態に係るデータ取得部21では、上述の点を考慮して、データをステップ単位で取得することに加えて、一度に取得可能なデータに対応するステップの数を算出するステップ数算出部25を含む構成を採用している。
【0068】
図6は、データ管理部が取得する一のレシピ情報とそれに対応するデータの模式図である。データ管理部20、特にデータ取得部21において取得される、一のレシピを構成するデータは、
図6に示すように、各ステップに関する情報に関連付けられた、レシピの実行中に報告される基板処理装置10内のセンサの時系列のモニタデータを含み得る。また、レシピ情報は、例えば
図6に示すように、時系列で並んだ例えばm個(mは1以上の整数)のステップ情報を含むものとすることができる。各ステップ情報にはステップ実行時間が含まれ得る。
【0069】
本実施の形態に係るデータとしては、
図6に示すように、処理炉202内の温度のモニタデータと、ガス供給管232a~232gから供給される各種ガスの供給量のモニタデータと、処理炉202内圧力のモニタデータと、APCバルブ244(もしくはバルブ243a~243g)の開閉状態のモニタデータと、を含むものとすることができる。なお、上述した各モニタデータのうち、処理炉202内の温度は温度センサ263の出力信号を、ガスの供給量はMFC241a~241gの出力信号を、処理炉202内圧力は圧力センサ245の出力信号をそれぞれ参照することで特定することができる。
【0070】
本実施の形態に係るデータ取得部21は、例えば
図6に示すようなm個のステップを含む一のレシピを構成するデータを取得する際、当該データを、ステップ単位で複数回に分けて取得するものである。そしてその際、一度に取得するデータに含まれるステップの数を、ステップ数算出部25において算出している。
【0071】
ステップ数算出部25は、特定のレシピのデータを取得する際に、一度に取得可能なデータを構成するステップの数を算出することができるものであってよい。このステップ数算出部25は、取得するデータを構成するステップの数を算出するために、データ取得可能な範囲(または単に「範囲」ともいう)が予め定義される。
【0072】
データ取得可能な範囲は、メモリの容量を考慮して設定される値であって、例えば、データ管理部20において取得するデータの取得開始から取得終了までの時間を示すものとすることができる。これに関連して、レシピを構成する各ステップには、ステップ実行時間が設定されているとよい。そして、ステップ数算出部25は、データ取得可能な範囲に収まるステップの数を、各ステップに設定されたステップ実行時間を利用して算出するものであってよい。このように、データ取得可能な範囲から、取得するデータのステップ実行時間を参照して調整することで、比較的簡単に、一度に取得するデータのデータサイズを最適なサイズに調整することができる。
【0073】
上述したデータ取得可能な範囲は、基板処理装置10が基板処理時に収集可能なデータを検出可能な手段の数を考慮して設定されるとよい。換言すると、データ取得可能な範囲は、基板処理装置10に接続されるセンサの数により変更可能とするとよい。具体的には、基板処理装置10のセンサの数が相対的に多ければデータ取得可能な範囲は相対的に短くし、基板処理装置10のセンサの数が相対的に少なければデータ取得可能な範囲は相対的に長くすると、基板処理装置10の機能等に関わらず、取得するデータのデータサイズを安定させることができる。そこで、本実施の形態に係るデータ取得可能な範囲Tは、以下の式(1)で特定するものとする。
【数1】
ここで、Sは基板処理装置10のセンサ数であり、Fは許容可能な最大のデータサイズであり、αは1秒当たりのセンサデータの出力ファイルサイズである。データサイズFは、使用可能なメモリの許容量に少なくとも10%のマージンを設けたものであり、使用可能なメモリの許容量を超えてデータを取得しないための閾値である。
【0074】
図7は、基板処理装置のセンサ数とデータ取得可能な範囲との関係を示したグラフである。この
図7には、上記式(1)により特定された基板処理装置10のセンサ数とデータ取得可能な範囲との関係が例示的に示されている。この
図7に示されたグラフでは、例えば一度に取得するデータの許容可能な最大のデータサイズFを1.8ギガバイト(GB)とし、1秒当たりのセンサデータの出力ファイルサイズαを600バイト/秒(Byte/sec)としている。
【0075】
この
図7に示す例によれば、例えば基板処理装置10に搭載されたセンサの数が3000個である場合には、データ取得可能な範囲(すなわち、一の取得するデータの取得開始から取得終了までの時間)を1000秒に設定するとよい。なお、ここでいう「センサの数」には、温度センサ263や圧力センサ245の数だけでなく、MFC241a~241gやAPCバルブ244といったモニタデータの生成に関連するアクチュエータの数が含まれていてよい。この場合は、アクチュエータの制御信号がモニタデータの生成に利用できる。
【0076】
上述したデータ取得可能な範囲が定義されたステップ数算出部25においては、ステップ数の算出を以下の方法で行うことができる。すなわち、特定の一のレシピのデータの取得を行う場合においては、先ず、一度に取得するデータに含まれる一のステップに設定されたステップ実行時間が、予め定義されたデータ取得可能な範囲以下であるかどうかを確認する。ここで、一のステップのステップ実行時間がデータ取得可能な範囲以下の場合は、この一のステップのステップ実行時間をデータ取得時間に加えた上で、取得するデータに一のステップの次に続くステップを加える。そして、前記データ取得可能な範囲を超過する直前まで前述したステップを加える動作を繰り返すと、取得するデータのデータ取得時間がデータ取得可能な範囲と同じあるいは僅かに短いステップ数を特定することができる。したがって、取得するデータに含まれるステップの数を算出することができる。
【0077】
上述の方法で算出されたステップの数は、データ取得部21により取得するデータに含まれるステップの数を指定する際に用いられ、ここで指定されたステップの数に対応するデータが、データ取得部21によって基板処理装置10から取得される。上述したステップの数の算出及びデータの取得は、一のレシピに含まれる全てのデータの取得が完了するまで順次実施すればよい。
【0078】
上述の方法でデータを取得することにより、取得するデータのデータサイズを小さくすることができ、データ管理部20のメモリ(すなわちRAM302)で保持可能なデータサイズを超えることを実質的になくすことができる。また、1ステップ単位でデータを取得する場合のように、データの検索時間が長くなることに伴うデータ取得に要する時間の長時間化も抑制することができる。以上のことから、本実施の形態に係る基板処理システム、基板処理装置においては、基板処理装置10が有するデータを安定して取得することができる。
【0079】
<半導体装置の製造方法>
次に、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。なお、以下に説明する半導体装置の製造方法は、上述した基板処理システム1を用いて実現されたものを例示するが、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、基板処理システム1以外の基板処理システムでも実施可能である。また、以下には、半導体装置の製造方法としての一連の製造プロセスのうち、一の基板処理装置10で実施された任意のレシピ(例えば
図6に示すようなレシピ)に対応するデータを、一のデータ管理部20において取得し、ファイルを生成するまでのプロセスを中心に説明する。なお、基板処理装置10及びデータ管理部20の具体的な構造等については、上述した説明を流用するものとし、ここではその詳細な説明を省略する。
【0080】
図8は、本開示の一実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示すシーケンス図である。本実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、先ず、基板処理装置10において、少なくとも1つのステップを有するレシピにより基板の処理を実行する(工程S11)。また、この基板の処理中に報告されるデータをデータ収集部14で収集し、レシピ内の各ステップに関連付けられた状態で、第1の記憶部12に記憶する(工程S12)。上述した工程S11及びS12は、以降の工程に関わらず実施されるものであってよく、以降の工程に並行して実施され得るものである。
【0081】
例えば、ユーザによる操作コマンドの入力等により、特定のレシピのデータの取得が要求されると、データ管理部20は、当該データを取得するためのプロセスを実行する。具体的には、先ず、データの取得対象となる基板処理装置10の装置情報を取得する(工程S13)。ここで取得される装置情報とは、少なくとも基板処理装置10が有するセンサの数の情報を含むものであってよい。また、工程S13は、データを取得するためのプロセスを実施する前に、予めデータ管理部20内に格納しておいてもよい。
【0082】
データ管理部20は、基板処理装置10の装置情報を取得すると、次に当該装置情報に基づいてステップ数算出部25で用いられるデータ取得可能な範囲の特定を行う(工程S14)。本実施の形態においては、データ取得可能な範囲を任意の時間として特定する。
【0083】
データ管理部20は、次に、基板処理装置10から取得したいデータのレシピ情報を取得する(工程S15)。レシピ情報は少なくとも1つのステップを含むものとする。また、このステップにはステップ実行時間が含まれていてよい。そして、レシピ情報を取得したデータ管理部20は、取得対象のレシピに含まれる総ステップ数n(nは1以上の整数)を特定する(工程S16)。このとき、総ステップ数に加えて、各ステップのステップ実行時間を合わせて特定しておくと良い。
【0084】
レシピのステップ数が特定されると、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、次に、データを取得するに際し、取得するデータがデータ取得可能な範囲に収まるように、取得するデータに含まれるステップの数を算出する(工程S17~S19)。以下の説明では、具体例として
図6に示すレシピのデータを取得する場合の説明を行う。
【0085】
取得するデータに含まれるステップの数の算出は、はじめに、レシピに含まれる複数のステップのうちの一のステップ、例えば
図6に示すレシピにおいて最も早く実行されるステップ1のステップ実行時間を取得する(工程S17)。次に、工程S17で取得したステップ1のステップ実行時間をデータ取得時間に加算する(工程S18)。ここで、データ取得時間とは、一度に取得するデータに含まれ得るステップのステップ実行時間を加算することで得られる時間である。
【0086】
工程S18で更新されたデータ取得時間と工程S14で特定したデータ取得可能な範囲とを比較し、データ取得時間がデータ取得可能な範囲を超えたか否かを特定する(工程S19)。データ取得時間がデータ取得可能な範囲以下である場合(工程S19でNo)には、工程S17に戻り、一のステップの次に実行するステップ、例えば
図6におけるステップ2について、工程S17~S19を実行する。
【0087】
上述の工程S17~S19は、データ取得時間がデータ取得可能な範囲を超えるまで繰り返される。そして、データ取得時間がデータ取得可能な範囲を超過した場合(工程S19でYes)には、これまでにデータ取得時間に加算されたステップ実行時間に対応するステップを、一度に取得するデータのステップの数として特定する。ただし、当該ステップの数には直近にデータ取得時間に加算されたステップ実行時間に対応するステップは含まれない。具体的に言えば、例えばステップ4のステップ実行時間をデータ取得時間に加算した結果、データ取得時間がデータ取得可能な範囲を超過した場合には、このステップ4のステップ実行時間が加算される直前までに加算されたステップ実行時間に対応するステップ、すなわちステップ1~3が、一度に取得するデータに含まれるステップの数として特定される。
【0088】
一度に取得するデータに含まれるステップの数が特定されると、データ管理部20は、基板処理装置10に対して、特定されたステップの数に対応するデータを、通信部24を介して要求する(工程S20)。基板処理装置10は、上述した要求を受信すると、第1の記憶部12内を検索して該当するデータを収集し(工程S21)、収集したデータを、通信部13を介してデータ管理部20へ送信する。なお、ステップの数が特定されたことに合わせて、工程S16で特定されたステップ数から、工程S20で要求されたデータに含まれるステップの数を減じておくと、後に説明する工程S23にて取得すべき残りのステップ数が容易に特定でき好ましい。
【0089】
要求したデータを基板処理装置10から受信すると、データ管理部20は、取得したデータをファイル生成部22にて予め指定されたデータ形式に変換することでファイルの作成を行う(工程S22)。このとき、同一のレシピに関するデータのファイルが既に作成されている場合には、既に作成されているファイルに今回受信したデータを変換したものを書き込むことで、一のファイルとするとよい。
【0090】
工程S22においてファイル生成が完了すると、データ管理部20は、同一のレシピにおいて未だ取得していないステップの有無を確認する。具体的には、工程S16で特定され、工程S20に合わせて更新された残りステップ数が、ゼロであるか否かを特定する(工程S23)。残りステップ数がゼロでない場合(工程S23でNo)は、取得すべきデータが残っているため、工程S17に戻って一連の工程を繰り返す。具体的には、直近の工程S20においてステップ1~3に対応するデータを取得している場合にはステップ4以降に対応するデータを取得するために、工程S17以降の工程を再度実行する。このとき、直近の算出工程で更新されたデータ取得時間はリセットしておくとよい。
【0091】
工程S23において、残りステップ数がゼロであると特定された場合(工程S23でYes)には、データ管理部20は、特定のレシピのデータを全て取得したと判断して、データを取得するための一連のプロセスを完了する。このとき、工程S22にて生成されたファイルは、レシピ単位で生成されたデータファイルとして、第2の記憶部23内に保存されるとよい。
【0092】
なお、上述した工程S17以降の工程を繰り返すと、データ取得時間がデータ取得可能な範囲に到達する前に、残りステップ数がゼロになる場合がある。その際は、工程S19をスキップし、それまでにデータ取得時間に加算されたステップ実行時間に対応するステップの数を一度に取得するデータに含まれるステップの数と特定して、工程S20以降を実行すればよい。
【0093】
また、一般に、一のステップのステップ実行時間は比較的短い(例えば数秒から数分程度)ことがほとんどである。しかし、場合によっては一のステップのステップ実行時間が長く、当該一のステップのステップ実行時間のみで、データ取得可能な範囲を超える場合も想定される。そのような場合には、当該一のステップを2つ以上の分割ステップに分割し、各分割ステップを一のステップとして取り扱うようにするとよい。このような対応を採用すれば、ステップ実行時間の長いステップを含むレシピのデータを取得する場合であっても、一度に取得するデータのデータサイズを最適なサイズに調整することができる。
【0094】
上述した本実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、基板処理装置10のコントローラ121及びデータ管理部20のCPU301が、各構成要素を動作させることで実現することができる。したがって、上述した半導体装置の製造方法は、上述したコントローラ121及びCPU301に所定の処理を実行させる、任意の記録装置等に格納されたプログラムの形態で提供され得る。また、このプログラムは、ネットワーク上に配された図示しないサーバ装置や、クラウドベースのデータ処理プラットフォームが提供するアプリケーションの形式で、又は非一時的なコンピュータ読取可能な記録媒体に格納された形態で提供され得る。
【0095】
以上説明した通り、本実施の形態に係る基板処理システム1、基板処理装置10及び半導体装置の製造方法によれば、基板処理装置が有するデータの取得を安定して行うことができるようになる。
【0096】
オプションとして、上述した基板処理システム1、基板処理装置10及び半導体装置の製造方法においては、データ取得可能な範囲を、データの取得開始から取得完了までの時間としたものを例示したが、本開示はこれに限定されない。具体的には、データ取得可能な範囲を、データ管理部20のメモリの容量に関連付けられたデータ容量とすることができる。この場合のデータ取得可能な範囲は、例えば1.8GB以下とすることができる。このように、データ取得可能な範囲をデータ容量とすることによっても、上述した時間とした場合と同様に、一度に取得するデータのデータサイズを最適なサイズに調整することができる。
【0097】
他の形態として、データ管理部20は基板処理装置10に含めても良く、基板処理装置10内でデータファイルを生成しても良い。この場合、通信インタフェース124はインターネット等を介してデータ管理サーバ2と接続しても良く、生成したデータファイルをデータ管理サーバ2に渡しても良い。本形態においても、上述の形態と同様の効果が得られる。また、本形態においては、さらに基板処理装置単体でデータファイルの生成及び管理を行うため、データのネットワーク上での通信負荷を軽減することができる。
【0098】
上述した実施の形態は一例を示したものに過ぎず、以って本開示は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本開示の技術思想に含まれるものである。また、本開示において、各構成要素は、矛盾が生じない限りは1つのみ存在しても2つ以上存在してもよい。さらに、上述した種々の態様や変形は、適宜組み合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0099】
1 基板処理システム
10、10-1、10-2、10-3 基板処理装置
20 データ管理部
11 制御部
12 第1の記憶部
200 ウェハ(基板の一例)