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特開2024-57823腿肉引き剥がし装置及び腿肉引き剥がし方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057823
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】腿肉引き剥がし装置及び腿肉引き剥がし方法
(51)【国際特許分類】
   A22C 21/00 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
A22C21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164749
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】児玉 龍二
(72)【発明者】
【氏名】碓氷 弘之
(72)【発明者】
【氏名】羽根 慎二
(72)【発明者】
【氏名】梅田 勢一郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 修
【テーマコード(参考)】
4B011
【Fターム(参考)】
4B011FA04
4B011FA05
(57)【要約】
【課題】脱骨した食鳥腿肉の品質を向上できるとともに、脛骨からの肉部の引き剥がし歩留まりを向上でき、さらに処理スピードを向上できる腿肉引き剥がし装置及び腿肉引き剥がし方法を提供する。
【解決手段】腿肉引き剥がし装置1は、食鳥腿肉Mの足首Aを保持する足首保持部2と、足首A近傍の肉部Mpを押圧する肉押圧部3と、肉押圧部3によって押圧された肉部Mpと脛骨との間に差し込まれ、脛骨から肉部Mpを引き離す肉差し込み部5と、肉部Mpの足首A近傍を切断する肉切断部6と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食鳥屠体の大腿骨から切断された骨付きの食鳥腿肉における脛骨から肉部を引き剥がす腿肉引き剥がし装置であって、
前記食鳥腿肉の足首を保持する足首保持部と、
前記足首近傍の前記肉部を押圧する肉押圧部と、
前記肉押圧部によって押圧された肉部と前記脛骨との間に差し込まれ、前記脛骨から前記肉部を引き離す肉差し込み部と、
前記肉部の前記足首近傍を切断する肉切断部と、
を備える、
ことを特徴とする腿肉引き剥がし装置。
【請求項2】
前記食鳥腿肉は、前記足首から膝関節の手前に至る間に、骨に沿って筋入れが行われており、
前記肉押圧部は、前記食鳥腿肉の前記筋入れが行われた側から前記肉部における前記脛骨を挟んで膝蓋骨側及び前記膝蓋骨とは反対側を押圧し、
前記肉切断部は、外腿側から前記肉部を切断する、
ことを特徴とする請求項1に記載の腿肉引き剥がし装置。
【請求項3】
前記食鳥腿肉を挟んで前記肉押圧部とは反対側に設けられ、前記食鳥腿肉を前記肉押圧部とは反対側から押さえる肉押さえ部を備える、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の腿肉引き剥がし装置。
【請求項4】
前記肉押圧部は、互いに接近、離間可能に設けられ、前記肉部を押圧する押圧端面を有する2つの押圧ブロックと、
前記2つの押圧ブロックを互いに接近する方向に弾性的に付勢する付勢部と、
を備え、
前記肉押圧部は、前記2つの押圧ブロックの間に前記脛骨が介在するように、前記肉部を押圧する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の腿肉引き剥がし装置。
【請求項5】
各前記押圧端面には、前記2つの押圧ブロックの対向面側にそれぞれ押圧凸部が設けられており、
各前記押圧凸部には、前記2つの押圧ブロックの対向面側に、先端に向かうに従って漸次2つの前記押圧凸部の間隔が大きくなる押圧面取り部が形成されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の腿肉引き剥がし装置。
【請求項6】
前記肉押圧部は、前記押圧ブロックによる前記肉部への押圧量を規制する規制部を備える、
ことを特徴とする請求項4に記載の腿肉引き剥がし装置。
【請求項7】
食鳥屠体の大腿骨から切断された骨付きの食鳥腿肉における脛骨から肉部を引き剥がす腿肉引き剥がし方法であって、
前記食鳥腿肉の足首を保持した状態で、前記足首近傍の前記肉部を押圧する肉押圧工程と、
前記肉押圧工程によって押圧された肉部と前記脛骨との間に、先端が尖ってかつ板状の肉差し込み部を差し込んで前記脛骨から前記肉部を引き離す肉引き離し工程と、
前記肉部の前記足首近傍を切断する肉切断工程と、
を有する、
ことを特徴とする腿肉引き剥がし方法。
【請求項8】
前記肉切断工程では、前記肉引き離し工程によって前記脛骨から前記肉部を引き離した状態で、前記肉部の前記足首近傍を切断する、
ことを特徴とする請求項7記載の腿肉引き剥がし方法。
【請求項9】
前記食鳥腿肉には、前記足首から膝関節の手前に至る間に、骨に沿って筋入れが行われており、
前記肉押圧工程では、前記食鳥腿肉の前記筋入れが行われた側から前記肉部における前記脛骨を挟んで膝蓋骨側及び前記膝蓋骨とは反対側を押圧し、
前記肉切断工程では、外腿側から前記肉部を切断する、
ことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の腿肉引き剥がし方法。
【請求項10】
前記肉引き離し工程では、前記食鳥腿肉の膝蓋骨側から前記肉差し込み部を差し込む、
ことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の腿肉引き剥がし方法。
【請求項11】
前記肉押圧工程を行う際に、前記食鳥腿肉を前記肉押圧工程による押圧方向とは反対側に向けて押さえる肉押さえ工程を有する、
ことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の腿肉引き剥がし方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腿肉引き剥がし装置及び腿肉引き剥がし方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食鳥屠体の大腿骨から切断された骨付きの食鳥腿肉(以下、単に食鳥腿肉と称する)を、自動で脱骨する装置が知られている。このものは、装置に食鳥腿肉をセットした後、複数の作業ステーションと称する工程を段階的に実施する。複数の作業ステーションとしては、順に食鳥腿肉への筋入れ、食鳥腿肉の足首周りの肉部を切断、脛骨の膝関節近傍まで肉部を引き剥がし、関節筋、膝軟骨を切断する作業がある。また、この後のステーションとして、大腿骨から肉部を引き剥がして脱骨し、残った骨を排出する作業がある。
【0003】
ここで、食鳥腿肉への筋入れ、食鳥腿肉の足首周りの肉部を切断した後、脛骨の膝関節近傍まで肉部を引き剥がすには、まずミートセパレータで肉部に切断した箇所を上から押さえる。この状態で食鳥腿肉を引き上げると、ミートセパレータによって脛骨から肉部が削がれるようにして膝関節近傍まで引き剥がされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5331244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、脛骨の膝関節近傍まで肉部を引き剥がす際にミートセパレータによって肉部が押し潰されてしまう。このため、脱骨した食鳥腿肉の品質(形態)が悪化してしまう可能性があった。
また、食鳥腿肉の足首周りの肉部を切断する際、カッターによって脛骨の足首近傍を深く切り込んでしまうことが考えられる。このため、食鳥腿肉を引き上げる際に脛骨が破断してしまう可能性があった。この結果、脛骨からの肉部の引き剥がしを正常に行えずにこの引き剥がし作業の歩留まりが悪化する可能性があった。
【0006】
さらに、食鳥腿肉の引き上げ方向は、各作業ステーションへの移動方向と直交する方向である。このため、一旦、各作業ステーションへの移動を停止した状態で食鳥腿肉を引き上げることになる。この結果、食鳥腿肉の処理スピードの向上に限界があった。
【0007】
そこで、本発明は、脱骨した食鳥腿肉の品質を向上できるとともに、脛骨からの肉部の引き剥がし歩留まりを向上でき、さらに処理スピードを向上できる腿肉引き剥がし装置及び腿肉引き剥がし方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る腿肉引き剥がし装置は、食鳥屠体の大腿骨から切断された骨付きの食鳥腿肉における脛骨から肉部を引き剥がす腿肉引き剥がし装置であって、前記食鳥腿肉の足首を保持する足首保持部と、前記足首近傍の前記肉部を押圧する肉押圧部と、前記肉押圧部によって押圧された肉部と前記脛骨との間に差し込まれ、前記脛骨から前記肉部を引き離す肉差し込み部と、前記肉部の前記足首近傍を切断する肉切断部と、を備える、ことを特徴とする。
【0009】
このように構成することで、脛骨から肉部を引き剥がす際に、肉部が押し潰されてしまうことを防止できる。このため、脱骨した食鳥腿肉の品質を向上できる。
また、脛骨から肉部を引き剥がす際に、予め食鳥腿肉の足首周りの肉部を切断する必要がない。このため、脛骨が足首周りで破断してしまうようなことを防止でき、脛骨からの肉部の引き剥がし歩留まりを向上できる。
さらに、脛骨から肉部を引き剥がす際に、食鳥腿肉を引き上げる作業を削減できるので、食鳥腿肉の処理スピードを向上できる。
【0010】
上記構成において、前記食鳥腿肉は、前記足首から膝関節の手前に至る間に、骨に沿って筋入れが行われており、前記肉押圧部は、前記食鳥腿肉の前記筋入れが行われた側から前記肉部における前記脛骨を挟んで膝蓋骨側及び前記膝蓋骨とは反対側を押圧し、前記肉切断部は、外腿側から前記肉部を切断してもよい。
【0011】
このように構成することで、確実に脛骨から肉部を引き剥がすことができ、引き剥がした肉部の形態を良好に維持できる。また、脛骨から歩留まりよく肉部を引き剥がすことができる。
【0012】
上記構成において、前記食鳥腿肉を挟んで前記肉押圧部とは反対側に設けられ、前記食鳥腿肉を前記肉押圧部とは反対側から押さえる肉押さえ部を備えてもよい。
【0013】
このように構成することで、肉押圧部によって足首近傍の肉部を確実に押圧できる。この結果、肉押圧部によって脛骨から肉部が確実に押し出され、脛骨と肉部との間に確実に肉差し込み部を差し込むことができる。
【0014】
上記構成において、前記肉押圧部は、互いに接近、離間可能に設けられ、前記肉部を押圧する押圧端面を有する2つの押圧ブロックと、前記2つの押圧ブロックを互いに接近する方向に弾性的に付勢する付勢部と、を備え、前記肉押圧部は、前記2つの押圧ブロックの間に前記脛骨が介在するように、前記肉部を押圧してもよい。
【0015】
このように構成することで、2つの押圧ブロックをできる限り脛骨に沿わせながら肉部を押圧できる。このため、足首近傍の肉部をできる限り脛骨から押し出すことができる。この結果、肉部に肉差し込み部を差し込んだ際に、脛骨側に残る肉部の量をできる限り減少することができる。よって、脛骨からの肉部の引き剥がし歩留まりをさらに向上できる。
【0016】
上記構成において、各前記押圧端面には、前記2つの押圧ブロックの対向面側にそれぞれ押圧凸部が設けられており、各前記押圧凸部には、前記2つの押圧ブロックの対向面側に、先端に向かうに従って漸次2つの前記押圧凸部の間隔が大きくなる押圧面取り部が形成されてもよい。
【0017】
このように構成することで、2つの押圧ブロックによって肉部を押圧する際の面圧を高めることができる。この結果、肉部に各押圧凸部が食い込み、これら押圧凸部によって脛骨から肉部をスムーズに押し出すことができる。
また、脛骨に押圧凸部が突き当たると、脛骨に沿うように押圧面取り部がスムーズに移動され、2つの押圧凸部がスムーズに押し広げられる。このため、2つの押圧ブロックをより確実に脛骨に沿わせながら肉部を押圧できる。
【0018】
上記構成において、前記肉押圧部は、前記押圧ブロックによる前記肉部への押圧量を規制する規制部を備えてもよい。
【0019】
このように構成することで、肉押圧部による肉部の押圧量が少なすぎたり多すぎたりしてしまうことを防止できる。このため、肉押圧部による肉部の押圧量を適正に維持することができ、脛骨と肉部との間に、精度よく肉差し込み部を差し込むことができる。
【0020】
本発明に係る腿肉引き剥がし方法は、食鳥屠体の大腿骨から切断された骨付きの食鳥腿肉における脛骨から肉部を引き剥がす腿肉引き剥がし方法であって、前記食鳥腿肉の足首を保持した状態で、前記足首近傍の前記肉部を押圧する肉押圧工程と、前記肉押圧工程によって押圧された肉部と前記脛骨との間に、先端が尖ってかつ板状の肉差し込み部を差し込んで前記脛骨から前記肉部を引き離す肉引き離し工程と、前記肉部の前記足首近傍を切断する肉切断工程と、を有する、ことを特徴とする。
【0021】
このような方法とすることで、脛骨から肉部を引き剥がす際に、肉部が押し潰されてしまうことを防止できる。このため、脱骨した食鳥腿肉の品質を向上できる。
また、脛骨から肉部を引き剥がす際に、予め食鳥腿肉の足首周りの肉部を切断する必要がない。このため、脛骨が足首周りで破断してしまうようなことを防止でき、脛骨からの肉部の引き剥がし歩留まりを向上できる。
さらに、脛骨から肉部を引き剥がす際に、食鳥腿肉を引き上げる作業を削減できるので、食鳥腿肉の処理スピードを向上できる。
【0022】
上記方法において、前記肉切断工程では、前記肉引き離し工程によって前記脛骨から前記肉部を引き離した状態で、前記肉部の前記足首近傍を切断してもよい。
【0023】
このような方法とすることで、肉部の足首近傍を容易に切断できる。
【0024】
上記方法において、前記食鳥腿肉には、前記足首から膝関節の手前に至る間に、骨に沿って筋入れが行われており、前記肉押圧工程では、前記食鳥腿肉の前記筋入れが行われた側から前記肉部における前記脛骨を挟んで膝蓋骨側及び前記膝蓋骨とは反対側を押圧し、前記肉切断工程では、外腿側から前記肉部を切断してもよい。
【0025】
このような方法とすることで、確実に脛骨から肉部を引き剥がすことができ、引き剥がした肉部の形態を良好に維持できる。また、脛骨から歩留まりよく肉部を引き剥がすことができる。
【0026】
上記方法において、前記肉引き離し工程では、前記食鳥腿肉の膝蓋骨側から前記肉差し込み部を差し込んでもよい。
【0027】
このような方法とすることで、肉部に適正に肉差し込み部を差し込むことができる。
【0028】
上記方法において、前記肉押圧工程を行う際に、前記食鳥腿肉を前記肉押圧工程による押圧方向とは反対側に向けて押さえる肉押さえ工程を有してもよい。
【0029】
このような方法とすることで、肉押圧部によって足首近傍の肉部を確実に押圧できる。この結果、肉押圧部によって脛骨から肉部が確実に押し出され、脛骨と肉部との間に確実に肉差し込み部を差し込むことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、脱骨した食鳥腿肉の品質を向上できるとともに、脛骨からの肉部の引き剥がし歩留まりを向上でき、さらに処理スピードを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態における腿肉引き剥がし装置の概略構成図である。
図2】本発明の実施形態における足首保持部に保持された食鳥腿肉の側面図である。
図3】本発明の実施形態における肉押圧部及び肉押さえ部を上方からみた概略構成図である。
図4】本発明の実施形態における肉押圧部及び肉押さえ部の動作説明図であり、食鳥腿肉に向かって各押圧ブロックを押し出した状態を示す。
図5】本発明の実施形態における肉差し込み部の動作説明図であり、肉部に初期差し込み部が差し込まれた状態を示す。
図6】本発明の実施形態における肉差し込み部の動作説明図であり、肉部に引き離し部が差し込まれた状態を示す。
図7】本発明の実施形態における肉切断部の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0033】
<腿肉引き剥がし装置>
図1は、腿肉引き剥がし装置1の概略構成図である。図2は、足首保持部2に保持された食鳥腿肉Mの側面図である。
腿肉引き剥がし装置1は、食鳥腿肉Mの足首Aから膝関節Kの手前に至る間の肉部Mpを、脛骨Sから引き剥がす装置である。以下、図示しないフロア上に腿肉引き剥がし装置1を載置した状態での上下方向、水平方向を、それぞれ単に上下方向、水平方向と称する。
【0034】
図1図2に示すように、腿肉引き剥がし装置1は、食鳥腿肉Mの足首Aを保持する足首保持部2と、足首保持部2の直下に設けられた肉押圧部3と、足首保持部2に保持された食鳥腿肉Mを挟んで肉押圧部3とは反対側に設けられた肉押さえ部4と、肉押圧部3と肉押さえ部4との間で、かつ足首保持部2に保持された食鳥腿肉Mと水平方向で対向する位置に設けられた板状の肉差し込み部5と、肉差し込み部5の近傍に設けられた肉切断部6と、を備える。
【0035】
<足首保持部>
足首保持部2は、上下方向に長いハンガー7と、ハンガー7に対して開閉可能に設けられたフック8と、を備える。ハンガー7の下端には、水平方向に屈曲延出する二又状の爪部7aが形成されている。これら爪部7aの間に、食鳥腿肉Mの足首Aが引っ掛かり、ハンガー7に食鳥腿肉Mが懸吊される。この状態では、食鳥腿肉Mは、ハンガー7とは反対方向(爪部7aの突出方向)に膝蓋骨Pが向いている。
【0036】
以下の説明では、足首保持部2に食鳥腿肉Mの足首Aが保持されているものとし、食鳥腿肉Mを基準にして説明する場合がある。また、ハンガー7に食鳥腿肉Mが懸吊された姿勢で、膝蓋骨P側を前方、膝蓋骨Pとは反対側を後方と称する場合がある。さらに、ハンガー7に食鳥腿肉Mが懸吊された姿勢で、食鳥腿肉Mの内腿Ti及び外腿Toの方向、つまり、水平方向に沿い、前後方向と直交する方向を幅方向と称する場合がある。食鳥腿肉Mの内腿Ti方向を内方向、食鳥腿肉Mの外腿To方向を外方向と称する場合がある。
【0037】
フック8は、閉状態で爪部7aに懸吊された食鳥腿肉Mの足首Aを前方(膝蓋骨P側)から押さえる。これにより、食鳥腿肉Mの足首Aは、ハンガー7とフック8とに挟持されて保持される。
フック8の閉状態は、例えば図示しないスプリングによって維持される。スプリングは、フック8を閉方向に弾性的に付勢する。スプリングの弾性力に抗してフック8を開放した状態でハンガー7の爪部7aに足首Aを引掛け、この後にフック8を閉じる。
【0038】
<肉押圧部>
図3は、肉押圧部3及び肉押さえ部4を上方からみた概略構成図である。
図1から図3に示すように、肉押圧部3は、足首保持部2の直下で、かつ食鳥腿肉Mの内腿Ti側よりも内方向に配置されている。肉押圧部3は、足首A近傍の肉部Mpを内腿Ti側から押圧する。
肉押圧部3は、枠体11と、枠体11内に設けられた2つの押圧ブロック12a,12b(前押圧ブロック12a、後押圧ブロック12b)と、各押圧ブロック12a,12bに弾性力を付勢するコイルスプリング(請求項における付勢部の一例)13と、を備える。
【0039】
枠体11は、上下方向からみて幅方向に長い額縁状に形成されている。すなわち、枠体11は、前後方向に配置されて幅方向に長い2つの側壁14と、2つの側壁14の食鳥腿肉M側端(足首保持部2側端)に跨る規制バー15と、を備える。枠体11は、幅方向にスライド移動可能に設けられている。換言すれば、枠体11は、食鳥腿肉Mに対して接近、離間可能に設けられている。枠体11は、例えば図示しないエアシリンダによりスライド移動する。規制バー15の食鳥腿肉M側の端面は、食鳥腿肉Mの内腿Tiに当接して肉押圧部3に対する食鳥腿肉Mの位置決めを行う基準面15aとして機能する(詳細は後述する)。
【0040】
2つの押圧ブロック12a,12bは、僅かに間隔をあけて前後方向に並んで配置されている。2つの押圧ブロック12a,12bは、上下及び幅方向に沿う平面を中心に面対称に形成されている。このため、2つの押圧ブロック12a,12bのうち、前方に配置された前押圧ブロック12aのみについて説明する。2つの押圧ブロック12a,12bのうち、後方に配置された後押圧ブロック12bについては、基本的には前押圧ブロック12aと同一符号を付して説明を省略し、必要に応じて説明する。
【0041】
前押圧ブロック12aは、枠体11内に配置されて幅方向に長い直方体状のベースブロック25と、ベースブロック25の上面に配置された上押圧プレート26と、ベースブロック25の下面に配置された下押圧プレート27と、を備える。
ベースブロック25の上下方向の厚さは、規制バー15の上下方向の厚さよりも若干厚い。ベースブロック25の食鳥腿肉M側の端面25cは、規制バー15と平行である。
【0042】
ベースブロック25は、枠体11に対して幅方向にスライド移動可能に設けられている。換言すれば、ベースブロック25は、枠体11に対して食鳥腿肉Mに接近、離間可能に設けられている。ベースブロック25は、例えば図示しないエアシリンダによってスライド移動する。このようなベースブロック25は、規制バー15と協働して各押圧ブロック12a,12bの食鳥腿肉Mへの押圧量を規制する規制部20として機能する(詳細は後述する)。
【0043】
上押圧プレート26と下押圧プレート27とは、前後方向及び幅方向に沿う平面を中心に面対称に形成されている。このため、上押圧プレート26のみについて説明する。下押圧プレート27については、基本的には上押圧プレート26と同一符号を付して説明を省略し、必要に応じて説明する。
【0044】
上押圧プレート26は、幅方向に長く、かつ板厚方向が上下方向と一致する板状の部材である。上押圧プレート26の前後方向の幅は、ベースブロック25の前後方向の幅とほぼ同一である。上押圧プレート26は、ベースブロック25から鳥腿肉Mに向かって突出している。より詳しくは、上押圧プレート26は、枠体11に対してベースブロック25が食鳥腿肉Mから最も離間した状態で、規制バー15から僅かに突出している。ベースブロック25の上下方向の厚さは、規制バー15の上下方向の厚さよりも若干厚いので、上押圧プレート26と下押圧プレート27との間に、規制バー15が介在された状態になる。
【0045】
上押圧プレート26の食鳥腿肉M側の端面は、食鳥腿肉Mを押圧する押圧端面26aとなる。押圧端面26aには、各押圧ブロック12a,12bの対向面側に、押圧凸部18が食鳥腿肉M側に向かって突出形成されている。押圧凸部18には、各押圧ブロック12a,12bの対向面側に、面取り部(請求項における押圧面取り部の一例)18aが形成されている。面取り部18aは、先端(食鳥腿肉M)に向かうに従って漸次2つの押圧凸部18の間隔が大きくなるように弧状に形成されている。
【0046】
このような2つの押圧ブロック12a,12bは、枠体11内で前後方向にスライド移動可能に設けられている。換言すれば、2つの押圧ブロック12a,12bは、枠体11内で互いに接近、離間可能に設けられている。2つの押圧ブロック12a,12bが最も接近した状態の間隔は、2つの押圧ブロック12a,12bの間を食鳥腿肉Mの脛骨Sが通過不能な程度の間隔である。
コイルスプリング13は、各押圧ブロック12a,12bを互いに接近する方向に弾性的に付勢する。
【0047】
<肉押さえ部>
図1に示すように、肉押さえ部4は、食鳥腿肉Mの外腿To側よりも外方向で、かつ肉押圧部3よりも若干下方に配置されている。肉押さえ部4は、食鳥腿肉Mの外腿Toを押さえる。
肉押さえ部4は、アクチュエータ21と、アクチュエータ21に設けられた押さえバー22と、を備える。
【0048】
アクチュエータ21としては、例えばエアシリンダが用いられる。すなわち、アクチュエータ21は、シリンダチューブ21aとシリンダチューブ21aに対してスライド移動可能に設けられたピストンロッド21bと、を備える。アクチュエータ21は、ピストンロッド21bのスライド方向が幅方向で、かつピストンロッド21bの先端を食鳥腿肉M側に向けて配置されている。
【0049】
ピストンロッド21bの先端に、押さえバー22が設けられている。押さえバー22は、前後方向に延在されている。アクチュエータ21を駆動することにより、押さえバー22が食鳥腿肉Mに対して接近したり離間したりする。食鳥腿肉Mに押さえバー22が接近した状態では、この押さえバー22は、膝関節Kよりもやや上方を外腿To側から押さえる。
【0050】
<肉切断部>
肉切断部6は、肉差し込み部5の近傍で、かつ食鳥腿肉Mの外腿Toよりも外方向に設けられている。肉切断部6は、食鳥腿肉Mに肉差し込み部5が差し込まれた状態で足首A近傍の肉部Mpを外側から切断する。
肉切断部6は、丸刃カッター41と、丸刃カッター41を回転駆動する駆動部42と、を備える。
【0051】
丸刃カッター41の回転軸線Cは、上下方向と一致している。丸刃カッター41は、食鳥腿肉Mの足首A近傍で、かつ肉押さえ部4の上押圧プレート26とほぼ同一高さに配置されている。
駆動部42は、例えば電動モータである。しかしながらこれに限られるものではなく、丸刃カッター41を回転駆動できればよい。例えば電動モータに代わってエアモータ等を使用することも可能である。
【0052】
このような肉切断部6は、食鳥腿肉Mに対して水平方向に接近、離間可能に設けられている。食鳥腿肉Mに接近すると、丸刃カッター41によって足首A近傍の肉部Mpが切断され、最終的に脛骨Sから肉部Mpが引き剥がされる。以下、腿肉引き剥がし装置1の動作について詳述する。
【0053】
<腿肉引き剥がし装置の動作>
次に、腿肉引き剥がし装置1の動作について説明する。
図2に示すように、腿肉引き剥がし装置1にセットされる食鳥腿肉Mは、足首保持部2によって足首Aが保持され、懸吊されている。食鳥腿肉Mには、予め食鳥腿肉Mの足首Aから膝関節Kの手前に至る間に、脛骨Sに沿って筋入れが行われている。この状態で、食鳥腿肉Mの内腿Tiと肉押圧部3とが幅方向で対向している。
【0054】
より詳しくは、肉押圧部3における各押圧ブロック12a,12bの間の中心と、食鳥腿肉Mの足首A近傍の脛骨Sとが、各押圧ブロック12a,12bの幅方向のスライド方向上で対向している。この状態から、食鳥腿肉Mの内腿Tiに向けて肉押圧部3を押圧する(肉押圧工程)。
【0055】
また、足首保持部2に食鳥腿肉Mが懸吊されている状態で、食鳥腿肉Mの外腿Toと肉押さえ部4とが幅方向で対向している。この状態から、肉押さえ部4の押さえバー22によって、食鳥腿肉Mの外腿Toを押さえる(肉押さえ工程)。以下、肉押圧工程、及び肉押さえ工程について具体的に説明する。
【0056】
まず、肉押さえ工程について具体的に説明する。
図3に示すように、押さえバー22は、アクチュエータ21によって食鳥腿肉M側に押し出される。アクチュエータ21として、例えばエアシリンダである場合、空気圧によって食鳥腿肉Mの外腿Toを押さえバー22が弾性的に押さえる事になる。このため、食鳥腿肉Mの大きさによっては、食鳥腿肉Mの抵抗によって押さえバー22が押し返される。このように、肉押さえ部4は、食鳥腿肉Mの大きさによって適正に食鳥腿肉Mの外腿Toを押さえる。アクチュエータ21によって食鳥腿肉Mを必要以上に押さえてしまうことが防止される。
【0057】
次に、肉押圧工程について具体的に説明する。
食鳥腿肉Mの内腿Tiに向けて肉押圧部3を押圧する際、まず、肉押圧部3は、枠体11とともに、この枠体11と一体となって各押圧ブロック12a,12bが食鳥腿肉Mに向かって押し出される(図3における矢印Y1参照)。すると、食鳥腿肉Mの内腿Tiに、規制バー15の基準面15aが突き当たる。これにより、肉押圧部3に対する食鳥腿肉Mの位置決めが行われる。
【0058】
このとき、各押圧ブロック12a,12b(ベースブロック25)は、枠体11に対して食鳥腿肉Mから最も離間した状態である。この状態では、基準面15a(規制バー15)から各押圧プレート26,27の押圧端面26aが僅かに突出されている。このため、各押圧プレート26,27の押圧端面26aは、食鳥腿肉Mの内腿Tiを僅かに押圧する。
また、前押圧ブロック12aにおける上押圧プレート26及び下押圧プレート27の各押圧凸部18と、後押圧ブロック12bにおける上押圧プレート26及び下押圧プレート27の各押圧凸部18と、の間に、僅かに脛骨Sが入り込む。
【0059】
ここで、押圧凸部18は、押圧端面26aの一部(押圧端面26aのうち各押圧ブロック12a,12bの対向面側)にのみ形成されている。このため、内腿Tiへの押圧凸部18の面圧が高まり、内腿Tiに押圧凸部18が食い込みやすい。この結果、前押圧ブロック12aの押圧凸部18と後押圧ブロック12bの押圧凸部18との間に、脛骨Sが入り込みやすくなる。
【0060】
また、2つの押圧ブロック12a,12bは、コイルスプリング13によって最も接近した状態になっている。このときの2つの押圧ブロック12a,12bの間隔は、これら押圧ブロック12a,12bの間を食鳥腿肉Mの脛骨Sが通過不能な程度の間隔である。このため、2つの押圧ブロック12a,12の間に脛骨Sが入り込もうとすると、コイルスプリング13のばね力に抗し、脛骨Sによって2つの押圧ブロック12a,12bの各押圧凸部18が押し広げられる(図5における矢印Y2参照)。このとき、各押圧凸部18には面取り部18aが形成されているので、各押圧凸部18が脛骨Sに沿いながらスムーズに押し広げられる。
【0061】
図4は、肉押圧部3及び肉押さえ部4の動作説明図である。
続いて、図4に示すように、枠体11に対して各押圧ブロック12a,12bが食鳥腿肉Mに向かってスライド移動する(図4における矢印Y3参照)。すると、脛骨Sをその場に残しつつ、各押圧ブロック12a,12bによって脛骨Sの前後の肉部Mpがさらに外側に捲れるように押し出される。
【0062】
2つの押圧ブロック12a,12bは、枠体11の規制バー15にベースブロック25の端面25cが突き当たるまでスライド移動する。2つの押圧ブロック12a,12bは、スライド移動した分だけ脛骨Sの前後の肉部Mpを押圧し、この肉部Mpを外側へ押し出す。食鳥腿肉Mは、規制バー15の基準面15aに当接されているので、食鳥腿肉Mに対する各押圧ブロック12a,12bの押圧量は常に一定になる。すなわち、規制バー15及びベースブロック25は、各押圧ブロック12a,12bの食鳥腿肉Mへの押圧量を規制する規制部20として機能する。
【0063】
図5図6は、肉差し込み部5の動作説明図である。
続いて、肉押圧部3によって押圧された肉部Mpと脛骨Sとの間に、肉差し込み部5を差し込む(肉引き離し工程)。
具体的には、図5に示すように、肉押圧部3によって肉部Mpを押圧した状態を維持しながら肉差し込み部5に向かって足首保持部2及び肉押圧部3を前方に移動する(図5における矢印Y4参照)。すなわち、食鳥腿肉Mの膝蓋骨Pを肉差し込み部5側に向けた状態で、肉差し込み部5に向かって(前方に向かって)食鳥腿肉Mを移動する。
【0064】
すると、肉差し込み部5が膝蓋骨P側から肉部Mpに差し込まれる。そして、各押圧ブロック12a,12bの上押圧プレート26と下押圧プレート27との間に肉差し込み部5が通過される。この後、足首A近傍の肉押圧部3によって押圧された肉部Mpに、確実に肉差し込み部5が差し込まれる。
【0065】
肉差し込み部5の先端の位置は、上下方向からみて脛骨Sの中心よりも若干外側に位置している。このため、前方に向かって食鳥腿肉Mを移動していくと、脛骨Sに肉差し込み部5が突き当たる。すると、脛骨Sを乗り上げるように(脛骨Sから離間するように)肉差し込み部5が変位される(図5における矢印Y5参照)。肉差し込み部5は、先端が脛骨Sを通過すると元の位置に戻る。このように、肉差し込み部5の先端は、幅方向の厚さをできる限り薄くしつつ、確実に脛骨Sに沿うように差し込まれる。
【0066】
この後、図6に示すように、前方に向かってさらに食鳥腿肉Mを移動していくと(図6における矢印Y6参照)、肉差し込み部5によって足首A近傍の肉部Mpが外側に押し出される。そして、脛骨Sから肉部Mpがさらに引き離される。このとき、肉差し込み部5によって、脛骨Sから肉部Mpが徐々に、かつスムーズに引き離される。このため、肉部Mpが損傷してしまうことを防止できる。
【0067】
この後、前方に向かってさらに食鳥腿肉Mを移動していくと、脛骨Sに沿って肉差し込み部5が差し込まれる。すると、肉差し込み部5によって脛骨Sの首A近傍から膝関節Kの手前に至るまで肉部Mpが引き離される。このとき、肉差し込み部5によって、脛骨Sから肉部Mpが徐々に、かつスムーズに引き離される。このため、肉部Mpが損傷してしまうことを防止できる。
【0068】
図7は、肉切断部6の動作説明図である。
続いて、肉切断部6によって肉部Mpの足首A近傍を切断する(肉切断工程)。
具体的には、図7に示すように、肉切断部6の丸刃カッター41を水平移動させながら肉部Mpの足首A近傍に丸刃カッター41を接近させる。そして、丸刃カッター41によって、外側から肉部Mpを切断する。
【0069】
ここで、丸刃カッター41は、肉押さえ部4の上押圧プレート26とほぼ同一高さに配置されている。しかも、肉部Mpの足首A近傍は、肉差し込み部5によって、脛骨Sから外側に押し出されるように引き離されている。このため、丸刃カッター41が通過する箇所の肉部Mpには適度な張力がかかっている。よって、丸刃カッター41によって、肉部Mpが確実に切断される。
【0070】
肉切断工程の前工程となる肉引き離し工程では、脛骨Sの首A近傍から膝関節K(図2参照)Kの手前に至るまで肉部Mpが引き離されている。このため、肉切断工程によって肉部Mpの足首A近傍を切断することにより、脛骨Sから完全に肉部Mpが引き剥がされる。これにより、腿肉引き剥がし装置1の動作が完了する。
【0071】
このように、上述の腿肉引き剥がし装置1は、食鳥腿肉Mの足首Aを保持する足首保持部2と、足首A近傍の肉部Mpを押圧する肉押圧部3と、肉部Mpと脛骨Sとの間に差し込んで脛骨Sから肉部Mpを引き離す肉差し込み部5と、肉部Mpの足首A近傍を切断する肉切断部6と、を備える。このため、脛骨Sから肉部Mpを引き剥がす際に、従来のように肉部Mpが押し潰されてしまうことを防止できる。よって、脱骨した食鳥腿肉Mの品質を向上できる。
【0072】
また、脛骨Sから肉部Mpを引き剥がす際に、従来のように、予め食鳥腿肉Mの足首A周りの肉部Mpを切断する必要がない。このため、脛骨Sが足首A周りで破断してしまうようなことを防止でき、脛骨Sからの肉部Mpの引き剥がし歩留まりを向上できる。
さらに、脛骨Sから肉部Mpを引き剥がす際に、従来のように、食鳥腿肉Mを引き上げる作業を削減できる。このため、食鳥腿肉Mの処理スピードを向上できる。
【0073】
脛骨Sから肉部Mpを引き剥がすにあたって、食鳥腿肉Mの内腿Tiに筋入れを行っている。そして、肉押圧部3によって、食鳥腿肉Mの内腿Tiから外腿Toに向けて肉部を押圧している。このとき、脛骨Sの前後両側の肉部Mpを押圧している。また、肉切断部6によって外側から肉部Mpを切断している。このため、確実に脛骨Sから肉部Mpを引き剥がすことができる。この結果、引き剥がした肉部Mpの形態を良好に維持できる。また、脛骨Sから歩留まりよく肉部Mpを引き剥がすことができる。
【0074】
腿肉引き剥がし装置1は、食鳥腿肉Mを肉押圧部3とは反対側(外側)から押さえる肉押さえ部4を備える。このため、肉押圧部3によって足首A近傍の肉部Mpを確実に押圧できる。この結果、肉押圧部3によって脛骨Sから肉部Mpが確実に押し出され、脛骨Sと肉部Mpとの間に確実に肉差し込み部5を差し込むことができる。
【0075】
肉押圧部3は、2つの押圧ブロック12a,12bと、2つの押圧ブロック12a,12bを互いに接近する方向に弾性的に付勢するコイルスプリング13と、を備える。このため、2つの押圧ブロック12a,12bをできる限り脛骨Sに沿わせながら肉部Mpを押圧できる。この結果、足首A近傍の肉部Mpをできる限り脛骨Sから押し出すことができる。したがって、肉部Mpに肉差し込み部5を差し込んだ際に、脛骨S側に残る肉部Mpの量をできる限り減少することができる。よって、脛骨Sからの肉部Mpの引き剥がし歩留まりをさらに向上できる。
【0076】
各押圧ブロック12a,12bの各押圧プレート26,27には、押圧端面26aに押圧凸部18が形成されている。また、押圧凸部18には、面取り部18aが形成されている。このため、2つの押圧ブロック12a,12bによって肉部Mpを押圧する際の面圧を高めることができる。この結果、肉部Mpに各押圧凸部18が食い込み、これら押圧凸部18によって脛骨Sから肉部Mpをスムーズに押し出すことができる。
また、脛骨Sに押圧凸部18が突き当たると、脛骨Sに沿うように面取り部18aがスムーズに移動され、2つの押圧凸部18がスムーズに押し広げられる。このため、2つの押圧ブロック12a,12bをより確実に脛骨Sに沿わせながら肉部Mpを押圧できる。
【0077】
肉押圧部3は、押圧ブロック12a,12bによる肉部Mpへの押圧量を規制する規制部20として、規制バー15及びベースブロック25を備える。このため、肉押圧部3による肉部Mpの押圧量が少なすぎたり多すぎたりしてしまうことを防止できる。この結果、肉押圧部3による肉部Mpの押圧量を適正に維持することができる。よって、脛骨Sと肉部Mpとの間に、精度よく肉差し込み部5を差し込むことができる。
【0078】
食鳥腿肉Mの脛骨Sから肉部Mpを引き剥がす方法として、肉押圧工程と、肉引き離し工程と、肉切断工程と、を有する。このような方法とすることで、脛骨Sから肉部Mpを引き剥がす際に、従来のように肉部Mpが押し潰されてしまうことを防止できる。このため、脱骨した食鳥腿肉Mの品質を向上できる。また、脛骨Sが足首A周りで破断してしまうようなことを防止でき、脛骨Sからの肉部Mpの引き剥がし歩留まりを向上できる。さらに、食鳥腿肉Mの処理スピードを向上できる。
【0079】
肉切断工程では、肉引き離し工程によって脛骨Sから肉部Mpを引き離した状態で、肉部Mpの足首A近傍を切断している。このため、肉切断部6の丸刃カッター41によって肉部Mpを切り込む際、肉部Mpが丸刃カッター41に押されて逃げてしまうようなことを防止できる。よって、肉切断部6によって肉部Mpの足首A近傍を容易に切断できる。
【0080】
食鳥腿肉Mに肉差し込み部5を差し込む際、膝蓋骨P側から肉差し込み部5を差し込んでいる。このため、膝蓋骨Pとは反対側から肉差し込み部5を差し込む場合と比較して、肉部Mpに適正に肉差し込み部5を差し込むことができる。
【0081】
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【0082】
例えば、上述の実施形態では、足首保持部2によって食鳥腿肉Mを懸吊する場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、足首保持部2は、食鳥腿肉Mの足首Aを保持すればよい。例えば図示しない作業台の上に食鳥腿肉Mを寝かせるように載置してもよい。そして、この載置された食鳥腿肉Mの足首Aを保持するように構成してもよい。この場合、食鳥腿肉Mの姿勢に応じて足首保持部2を例えば水平方向に移動ように構成すればよい。また、このような場合、作業台が肉押さえ部4として機能するので、肉押さえ部4を削除できる。
【0083】
上述の実施形態では、足首保持部2のフック8は、例えば図示しないスプリングによって閉状態が維持される場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、フック8は、ハンガー7に対して開閉可能で、かつ閉状態を維持可能に構成されていればよい。例えば、トグル機構を用いてハンガー7に対してフック8を開閉可能に設けてもよい。さらに、フック8を設けずにハンガー7のみで食鳥腿肉Mを懸吊してもよい。
【0084】
上述の実施形態では、肉押圧部3は、2つの押圧ブロック12a,12bと、2つの押圧ブロック12a,12bを互いに接近する方向に弾性的に付勢するコイルスプリング13と、を備える場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、肉押圧部3は、足首A近傍の肉部Mpを筋入れ側から押圧できる構成であればよい。例えば、2つの押圧ブロック12a,12bのうちの1つでもよいし、3つ以上の押圧ブロックを用いてもよい。また、コイルスプリング13に代えてゴム等の弾性部材を用いてもよい。この他、2つの押圧ブロック12a,12bを互いに接近する方向に弾性的に付勢できる部材であればよい。
【0085】
上述の実施形態では、2つの押圧ブロック12a,12bは、ベースブロック25上で前後方向にスライド移動可能に設けられている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、2つの押圧ブロック12a,12bは、ベースブロック25上で互いに接近、離間可能に設けられていればよい。例えば、ベースブロック25上で2つの押圧ブロック12a,12bの基端側が回動可能に支持されてもよい。このように構成することで、2つの押圧ブロック12a,12bの押圧凸部18側が互いに接近、離間する。
【0086】
上述の実施形態では、肉押圧部3の枠体11や各押圧ブロック12a,12bは、例えばエアシリンダによりスライド移動する場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、枠体11や各押圧ブロック12a,12bをスライド移動させるために、さまざまなアクチュエータを用いることができる。
【0087】
上述の実施形態では、各押圧ブロック12a,12bの食鳥腿肉Mへの押圧量を規制するために規制部20を設けた場合について説明した。規制バー15及びベースブロック25を規制部20として機能させる場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、規制部20を設けなくてもよい。例えば、各押圧ブロック12a,12bをスライド移動させるエアシリンダ等のアクチュエータによって、各押圧ブロック12a,12bの食鳥腿肉Mへの押圧量を規制するように構成してもよい。
【0088】
上述の実施形態では、肉引き離し工程では、肉差し込み部5に向かって食鳥腿肉Mを移動させることにより、肉部Mpに肉差し込み部5を差し込む場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、食鳥腿肉Mに向かって肉差し込み部5を移動させることにより、肉部Mpに肉差し込み部5を差し込んでもよい。
【0089】
上述の実施形態では、肉切断部6の丸刃カッター41を水平移動させながら肉部Mpの足首A近傍に丸刃カッター41を接近させ、肉部Mpの足首A近傍を切断する場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、肉切断部6を固定し、丸刃カッター41を通過するように食鳥腿肉M(足首保持部2)を水平移動させてもよい。
【0090】
上述の実施形態では、肉切断部6によって外側から肉部Mpを切断する場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、肉切断部6は、肉差し込み部5が差し込まれた肉部Mpの足首A近傍を切断できればよい。例えば、肉切断部6としてナイフを用いてもよい。ナイフを脛骨Sと肉部Mpとの間に差し込み、肉部Mpの内側から肉部Mpの足首A近傍を切断してもよい。
【0091】
上述の実施形態では、肉切断工程において、肉部Mpに肉差し込み部5を差し込んだ状態で肉部Mpの足首A近傍を切断する場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、各工程の前後に関わらず、肉切断部6よって肉部Mpの足首A近傍を切断してよい。例えば、肉部Mpから肉差し込み部5を引き抜いた後、肉切断部6よって肉部Mpの足首A近傍を切断してもよい。また、例えば、予め肉切断部6よって肉部Mpの足首A近傍を切断した後、脛骨Sに沿わせるように肉部Mpに肉差し込み部5を差し込むようにしてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1…腿肉引き剥がし装置
2…足首保持部
3…肉押圧部
4…肉押さえ部
5…肉差し込み部
6…肉切断部
12a…前押圧ブロック(押圧ブロック)
12b…後押圧ブロック(押圧ブロック)
13…コイルスプリング(付勢部)
15…規制バー(規制部)
15a…基準面
18…押圧凸部
18a…面取り部(押圧面取り部)
20…規制部
25…ベースブロック(規制部)
26…上押圧プレート
26a…押圧端面
27…下押圧プレート
A…足首
F…大腿骨
K…膝関節
M…食鳥腿肉
Mp…肉部
P…膝蓋骨
S…脛骨
Ti…内腿
To…外腿
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7