(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057856
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】通信管理装置、通信管理方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 41/0853 20220101AFI20240418BHJP
H04L 41/0677 20220101ALI20240418BHJP
H04L 45/122 20220101ALI20240418BHJP
【FI】
H04L41/0853
H04L41/0677
H04L45/122
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164814
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】有馬 康弘
【テーマコード(参考)】
5K030
【Fターム(参考)】
5K030HA08
5K030HD03
5K030LB05
5K030MB20
5K030MC07
(57)【要約】
【課題】ネットワーク内の接続状態を取得する際の通信量を抑制することを可能とする通信管理装置を提供すること。
【解決手段】通信管理装置は、複数のノード2が相互に接続されてなるネットワーク100に接続されている通信管理装置であって、ネットワーク100における各々のノード2への経路4について、各複数のノード2それぞれへの通信ホップ数に基づいて形成された経路表5を保持している記憶部18と、何れかのノード2において異常が検知された場合に、経路表5を参照し、異常の発生を通知してきたノード2が属する経路4において、異常の発生を通信してきたノード2及び当該ノード2よりも経路4上の下流側に位置しているノード2に対して状態取得のための通信を実行する制御部10と、を備えている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノードが相互に接続されてなるネットワークに接続されている通信管理装置であって、
前記ネットワークにおける各々の前記ノードへの経路について、前記複数のノードそれぞれへの通信ホップ数に基づいて形成された経路表を保持している記憶部と、
何れかの前記ノードにおいて異常が検知された場合に、前記経路表を参照し、前記異常の発生を通知してきた前記ノードが属する前記経路において、前記異常の発生を通知してきた前記ノード及び当該ノードよりも前記経路上の下流側に位置している前記ノードに対して状態取得のための通信を実行する制御部と、
を備えている通信管理装置。
【請求項2】
前記制御部が、何れの前記ノードが前記異常の発生を通知してきたかに基づいて、前記ネットワークにおける異常発生箇所を特定する、請求項1に記載の通信管理装置。
【請求項3】
前記制御部は、取得した前記異常発生箇所に基づいて、前記異常の発生後に作成された前記経路を取得する、
請求項2に記載の通信管理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記異常の発生を通知してきた前記ノード及び当該ノードより下流側にて接続されている前記ノードの前記経路表を取得する、
請求項1又は請求項2に記載の通信管理装置。
【請求項5】
複数のノードが相互に接続されてなるネットワークにおける通信管理方法であって、
前記ネットワークに接続されている通信管理装置が、
前記ネットワークにおける各々の前記ノードへの経路を、各前記複数のノードへの通信ホップ数に基づいて形成された経路表として保持しており、
何れかの前記ノードにおいて異常が検知された場合に、前記通信管理装置が、前記異常の発生を通知してきた前記ノードが属する前記経路において、前記異常の発生を通知してきた前記ノード及び当該ノードよりも前記経路上の下流側に位置している前記ノードに対して状態取得のための通信を実行する、通信管理方法。
【請求項6】
複数のノードが相互に接続されてなるネットワークに接続されている通信管理装置に、
前記ネットワークにおける各々の前記ノードへの経路を、各前記複数の前記ノードへの通信ホップ数に基づいて形成された経路表として保持させ、
何れかの前記ノードにおいて異常が検知された場合に、前記異常の発生を通知してきた前記ノードが属する前記経路において、前記異常の発生を通信してきた前記ノード及び当該ノードよりも前記経路上の下流側に位置している前記ノードに対して状態取得のための通信を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信管理装置、通信管理方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、マルチホップネットワークが通信システムとして採用されている。マルチホップネットワークは、例えば、複数のノード間をメッシュ接続することにより構成されている。マルチホップ通信では、各ノードへの通信経路として、最小の転送回数になる経路が選択され、転送回数が多くなる経路は選択されない。マルチホップネットワークを構成するノードの何れかが通信不能になったときは、自律的な経路切り替えによって通信は維持される。マルチホップネットワークを構成するノードがリンクダウン、リンクアップ等の状態の変化を検出したときは、管理サーバに通知するしくみがある。例えば、ノード内部のポートやコネクタが別のノードと接続できず、通信ができない状態のときにリンクダウンの状態を検出する。例えば、ネットワークに新たにノードが追加されたときにリンクアップの状態を検出する。管理サーバは、マルチホップネットワークを監視し、故障個所を特定し、修理補修に活用される。例えば特許文献1には、通信不能のノードを検知したときの監視経路設定変更に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ネットワークを管理する管理サーバがメッシュネットワークのノードやリンクの障害を検出するためには各ノードの接続状態を取得する必要がある。しかしながら、メッシュ接続で構成されている全ノードを対象にして管理サーバが情報を取得することとすると、ネットワーク内のノード数が増えるにつれ取得時間と通信量が線形増加する。即ち、ノード数に対して、取得時間、通信量が線形に増加するため、ネットワーク内の通信を圧迫するという問題があった。
【0005】
本発明は、マルチホップネットワーク内の接続状態を取得する際の通信量を抑制することを可能とする通信管理装置、通信管理方法、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)通信管理装置は、複数のノードが相互に接続されてなるネットワークに接続されている通信管理装置であって、ネットワークにおける各々のノードへの経路について、複数のノードそれぞれへの通信ホップ数に基づいて形成された経路表を保持している記憶部と、何れかのノードにおいて異常が検知された場合に、経路表を参照し、異常の発生を通知してきたノードが属する経路において、異常の発生を通知してきたノード及び当該ノードよりも経路上の下流側に位置しているノードに対して状態取得のための通信を実行する制御部と、を備えている。
【0007】
(2)(1)の通信管理装置において、制御部が、何れのノードが異常の発生を通知してきたかに基づいて、ネットワークにおける異常発生個所を特定する。
【0008】
(3)(2)の通信管理装置において、制御部は、取得した異常発生箇所に基づいて、異常の発生後に作成された経路を取得する。
【0009】
(4)(1)から(3)の通信管理装置において、制御部は、異常の発生を通知してきたノード及び当該ノードより下流側にて接続されているノードの経路表を取得する。
【0010】
(5)通信管理方法は、複数のノードが相互に接続されてなるネットワークにおける通信管理方法であって、ネットワークに接続されている通信管理装置が、ネットワークにおける各々のノードへの経路を、各複数のノードへの通信ホップ数に基づいて形成された経路表として保持しており、何れかのノードにおいて異常が検知された場合に、通信管理装置が、異常の発生を通知してきたノードが属する経路において、異常の発生を通知してきたノード及び当該ノードより下流側にて接続されているノードに対して状態取得のための通信を実行する。
【0011】
(6)プログラムは、複数のノードが相互に接続されてなるネットワークに接続されている通信管理装置に、ネットワークにおける各々のノードへの経路を、各複数のノードへの通信ホップ数に基づいて形成された経路表として保持させ、何れかのノードにおいて異常が検知された場合に、異常の発生を通知してきたノードが属する経路において、異常の発生を通信してきたノード及び当該ノードより下流側にて接続されているノードに対して状態取得のための通信を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、管理サーバによりネットワーク内の接続状態を取得する際の通信量を抑制することを可能とする通信管理装置、通信管理方法、プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るマルチホップネットワークを示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る管理サーバのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る管理サーバの機能的構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るマルチホップネットワークの正常な初期状態を示す模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るマルチホップネットワークにて異常が発生した場合を示す模式図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るマルチホップネットワークにてリンクに異常が発生し、経路が変更された場合を示す模式図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るマルチホップネットワークの正常な初期状態における経路表と経路とを示す模式図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るマルチホップネットワークにてリンクに異常が発生し、経路が変更された場合における経路表と経路とを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係るマルチホップネットワーク通信管理方法について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付す。又、構成要素が同様の機能を有し特に区別する必要のない場合には符号として区別されない。構成要素が同様の機能を有するものの特に区別する必要のある場合には、符号に追加の小文字アルファベットを付与して構成要素は互いに区別される。
【0015】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係るマルチホップネットワーク100を示す図である。通信管理装置としての管理サーバ1がマルチホップネットワーク100に上位のノードを介して接続されており、このネットワークにおける通信を管理する。マルチホップネットワーク100は、中継機能を有する中継機器であるノード2と、ノード2の間を結ぶリンク3と、を有するメッシュネットワークである。
図1では、ノード2を円形の記号で、ノード2間を通信接続するリンク3を、ノード2間を結ぶ線分として示している。メッシュネットワークとは、通信ネットワークの構成の一つで、複数のノード2が互いに対等な関係で網の目(mesh)状の伝送経路を形成し、データを転送する方式である。メッシュネットワークは、隣接するノード2同士の接続によって、任意の形状のネットワークを形作っている。本実施形態では、ノード2は光通信ユニット或いは無線通信ユニット等の通信ユニットであり、ノード2の間は光信号あるいは無線電波信号で通信を行う。
図1においては、ノード2cとノード2dとは例えば光信号或いは無線電波信号で通信を行う。
図1では、この信号の通信が可能なリンク3を「3c」で示している。又、
図1においては、ノード2g、2lとノード2hとは例えば光信号或いは無線電波信号で通信を行う。
図1では、この例えば光信号或いは無線電波信号の通信が可能なリンク3を「3j」、「3n」で示している。又、
図1においては、ノード2dとノード2hとは例えば光信号或いは無線電波信号で通信を行う。
図1では、この例えば光信号或いは無線電波信号の通信が可能なリンク3を「3g」で示している。
【0016】
図1に示す例では、管理サーバ1からノード2pへ向けて出力されるデータ又はノード2pから管理サーバ1に入力されるデータは、太線で示される経路4(ノード2a、2e、2i、2m、2n、2o、2p)によって転送される。この経路4は、マルチホップネットワーク100において、各ノード2が他のノード2との通信状態等に基づいて自律的に構成したものである。管理サーバ1は、各ノード2から受信する情報に基づいて、マルチホップネットワーク100内でのデータ転送経路を取得し、管理する。これにより、本実施形態に係る管理サーバ1は、ノード2或いはリンク3に不具合或いは異常が発生した場合において、マルチホップネットワーク100の状態を効率的に把握することが可能である。以下、管理サーバ1が実行する通信管理方法について、
図2から
図7を参照して説明する。
【0017】
図2は、管理サーバ1のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2に示すように、管理サーバ1は、制御部10と、入出力部16と、通信手段17と、記憶部18と、を備える。制御部10は、プロセッサ11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、バス14と、入出力インタフェース15とを有する。管理サーバ1は、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な汎用のパーソナルコンピュータであってもよいし、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。
【0018】
プロセッサ11は、各種演算及び処理を行う。プロセッサ11は、例えば、CPU(central processing unit)、MPU(micro processing unit)、SoC(system on a chip)、DSP(digital signal processor)、GPU(graphics processing unit)、ASIC(application specific integrated circuit)、PLD(programmable logic device)又はFPGA(field-programmable gate array)等である。或いは、プロセッサ11は、これらのうちの複数を組み合わせたものである。又、プロセッサ11は、これらにハードウェアアクセラレーター等を組み合わせたものであってもよい。
【0019】
プロセッサ11、ROM12及びRAM13は、バス14を介して相互に接続されている。プロセッサ11は、ROM12に記録されているプログラム又はRAM13にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。プログラムの一部又は全部は、プロセッサ11の回路内に組み込まれていてもよい。
【0020】
バス14は入出力インタフェース15にも接続される。入出力インタフェース15には、入出力部16と、通信手段17と、記憶部18とが接続されている。
【0021】
入出力部16は、有線又は無線により電気的に入出力インタフェース15に接続される。入出力部16は例えばキーボード及びマウス等の入力部と撮影画像を表示するディスプレイ及び音声を拡声するスピーカ等の出力部とによって構成される。なお、入出力部16はタッチパネルのように表示機能と入力機能が一体的な構成であってもよい。
【0022】
通信手段17は、プロセッサ11が、マルチホップネットワーク100を介して他の装置、特に各ノード2との間で通信を行うための装置である。記憶部18は、後述するノード情報及びリンク情報等を記憶する例えばハードディスクドライブ(HDD)、半導体ドライブ(SSD)等の記憶装置である。
【0023】
図2に関して示したハードウェア構成は、あくまで一例であり、特にこの構成に限定されるわけではない。シングルプロセッサ、マルチプロセッサ及びマルチコアプロセッサ等の各種処理装置単体によって構成されるものの他、これら各種処理装置と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)及びFPGA(Field‐Programmable Gate Array)等の処理回路とが組み合わせられたものを、プロセッサとしての機能的構成を実現するものとして採用してもよい。管理サーバ1が記憶部18を有するのではなく、記憶部18が別途設けられる構成が採用されてもよい。
【0024】
又、例えば通信手段17に基づいて管理サーバ1がマルチホップネットワーク100を通して
図1には示されない装置により遠隔制御されてもよい。
【0025】
図3は、本実施形態に係る管理サーバ1の機能的構成を示すブロック図である。
図3に示すように、管理サーバ1は、
図2に示すプロセッサ11等により実現されるノード状態取得手段101、経路取得手段102、状態変化取得手段103を機能的構成として有する。ノード状態取得手段101は、各ノード2の状態を取得する。具体的には、ノード状態取得手段101は、各ノード2からデータ転送に関する他のノード2との接続関係を示す情報である経路表5等を、通信手段17を介して受信する。各ノード2において作成される経路表5の構成例については後述する。経路取得手段102は、ノード状態取得手段101により受信された経路表5から、管理サーバ1と各ノード2との間での通信経路を示す、ツリー状に構成されている経路を取得する。状態変化取得手段103は、各ノード2から受信する情報に基づいて、ノード2における通信状態の変化を取得する。詳細は後述するが、状態変化取得手段103は、ネットワーク100上に異常が生じていると判断した場合、その異常が発生している箇所を特定する機能を有している。管理サーバ1では、状態変化取得手段103により得られたノード2に関する状態変化に基づいて、状態の変化したノード2を含む経路4において、管理サーバ1からみて状態の変化したノード2(例えば、
図1に示す例では、ノード2iにおいて異常が検知されたとする)より経路4上で下流に位置するノード2(例えば、
図1に示す例では、ノード2m)の状態を、ノード状態取得手段101が取得する。何れかのノード2において異常が検知された場合に、管理サーバ1が、異常の発生を通知してきたノード2が属する経路4において、異常の発生を通知してきたノード2(例えば、
図1に示す例では、ノード2i)及び当該ノード2よりも下流側に位置しているすべてのノード2(例えば、
図1に示す例では、ノード2m、2n、2o、2p)に対して状態取得のための通信を実行する。
【0026】
以下、
図4から
図8に示すマルチホップネットワーク100の例に基づいて詳細を説明する。
【0027】
図4は、
図1に示したマルチホップネットワーク100をより模式的に示した図である。ノード2として、ノード2aからノード2pが備えられている。これらをリンク3が結んでいる。
図4は、正常状態を示す。
【0028】
マルチホップネットワーク100に接続されている管理サーバ1が、マルチホップネットワーク100における各ノード2への経路4を、各複数のノード2への通信ホップ数に基づいて形成された複数の枝を有するツリー構造の経路4として保持している。マルチホップネットワーク100の経路4は最小ホップ数で決定するので最短の経路4である。そして、根本のノード2から各ノード2への経路4はツリー構造になる。
図4の例においては、経路4は太線で表されており、ノード2aをルートノードとして、ノード2a、2e、2i、2m、2n、2o、2pをつなぐ経路4a、ノード2a、2b、2f、2jをつなぐ経路4b、ノード2a、2b、2c、2g、2kを繋ぐ経路4c、ノード2a、2b、2c、2d、2h、2lを繋ぐ経路4dが形成されている。これらの経路4aから4dは、複数の枝を構成して、ツリー構造を成している。これらの経路4は、管理サーバ1に繋がっている。これにより、ツリー上の何れかのリンク或いはノード2で生じた変化は、その枝の先に繋がるノード2の状態と経路4に影響する。
【0029】
マルチホップネットワーク100はメッシュ構造を有しているが、各ノード間の通信接続は、前記のようにツリー構造の形態をとっている。
図4の例においては、メッシュが構成されているが、経路4に組み込まれていないリンク3として、例えば、リンク3h、3i、3j、3o、3p、3q、3s、3t、3uが挙げられる。これらのリンク3は物理的に接続しているが、経路4として選択されておらず、通信には使われない。メッシュ構造があることにより、経路4に冗長性が付与されている。
【0030】
リンク3を構成する回線は、マルチホップネットワーク100の動作中は必ず通信可能な状態に接続されている。ノード2の間の回線はメッシュ状で複雑だが、経路4が決められた場合、1つのノード2から管理サーバ1への経路4はそれぞれ1つに決まる。経路4は、ノード2から管理サーバ1までの最短ホップ数に基づいて決定される。同じホップ数の経路4が複数ある場合、先に成立した経路4が採用され、複数の経路4が1つのノード2に採用されることはない。各ノード2が有する経路表5は、管理サーバ1から経路4が互いに交差することなく特定の一経路で形成されるように設定される。経路4はツリー状となる。
【0031】
図5は、マルチホップネットワーク100に不具合の生じた例を示す。マルチホップネットワーク100では、接続が途切れることがある。例えば、光断線、光ポート故障、天候や障害物の出現により電波状態の悪化することが原因である。
図5に示す例では、ノード2eとノード2iを結ぶリンク3kに不具合が生じている。この時、不具合の生じたリンク3kを経路4a上に有するノード2(例えば
図5に示す例では、ノード2i、2m、2n、2o、2p)は、管理サーバ1との経路4が絶たれた形となる。ここで、
図5においては、ノード2eは、経路表5に記載されているノード2iからの信号が絶たれており、異常な状態となる。そして、異常の発生したリンク3に起因して異常の発生したノード2(例えば
図5に示す例では、ノード2i、2m、2n、2o、2p)が属するツリー構造の枝である経路4(例えば
図5に示す例では、
図4にて示されていた経路4a)において、管理サーバ1から見て異常の発生したリンク3kより遠くにある、言い換えると、経路4aにおいて下流に接続されているノード2は管理サーバ1と経路4を通じて通信することができない状態となる。すなわち、
図5の例においては、ノード2i、2m、2n、2o、2pが管理サーバ1と経路4を通じて通信することができないこととなる。
【0032】
図6は、リンク3kに異常が発生した後、ノード2が新たに経路4を構築した後の状態を示す。新しい経路4の設定は、管理サーバ1により行われる訳ではない。管理サーバ1はマルチホップネットワーク100の状態をモニタしているのみである。管理サーバ1への経路4は、ノード2によって策定される。
図4に関して説明したように、ノード2は自ら最小ホップ数に基づく経路4を見出だす。
図6の例においては、経路4aにより管理サーバ1と通信することができなくなったノード2i、2m、2n、2o、2pについて、新たに、ノード2iに対してリンク3a、3e、3l、3oを経由する経路4、ノード2mに対してリンク3a、3e、3l、3s、3vを経由する経路4、ノード2nに対してリンク3a、3e、3l、3sを経由する経路4、ノード2oに対してリンク3a、3e、3l、3sを経由する経路4、ノード2pに対してリンク3a、3e、3l、3s、3wを経由する経路4が構築される。ノード2b、2c、2f、2g、2j、2k、2d、2h、2lについては、経路4に変更はない。
【0033】
図6に例示しているリンク3kがダウンした状況において、接続状況の変わったノード2は、管理サーバ1に、リンクダウン検出を示すリンクダウン信号を送信する。リンクダウン信号は、リンク3の接続が遮断されたことを検知したノード2(例えば、
図5に示す例では、ノード2e、2i)によって送信される。
【0034】
ノード2eの動作について詳述する。ノード2eは、リンク3kのリンクダウンを検出する。ノード2eは、経路4aにおける下流側へのリンク3が無効になったので、下流側(2i、2m、2n、2o、2p)の経路異常を有効な隣接するノード2(2a、2f)に送る。ノード2eにおいては、管理サーバ1への選択経路が有効であるので、ノード2a経由で管理サーバ1へリンクダウン信号を発信する。
【0035】
次に、ノード2iの動作について詳述する。ノード2iがリンク3kのリンクダウンを検出する。ノード2iは、経路4aに於ける上流側への経路4が無効になったので、上流側(2a、2e)の経路異常を有効な隣接するノード2(2m、2j)に送る。ノード2iは次に管理サーバ1への経路要求を有効な隣接するノード2(2m、2j)に送る。ここでは例えば、ノード2j経由で管理サーバ1に向けてリンクダウン信号が発信される。
【0036】
管理サーバ1は、ノード2e及びノード2iから、リンク3kでリンクダウンが発生した通知であるリンクダウン信号を受信する。
【0037】
図7と
図8とを参照して、異常発生前(
図7参照)と異常発生後(
図8参照)のマルチホップネットワーク100における経路表5の変化について説明する。
図7及び
図8は、
図4の左上の破線で囲った部分のネットワークを抜き出して、向きを左に90度回転したものである。管理サーバ1は、
図7に示す各ノード2の有する経路表5を記憶部18に記憶している。経路取得手段102は、経路表5に基づいて経路4を導出し取得する。
図7に示す例においては、
図4においても示された経路4aと経路4bとが記載されている。
【0038】
図7に記載されているように、各ノード2は経路表5を有する。ノード2aの経路表5を5a、ノード2bの経路表5を5bのように対応付けて符号が付与されている。各ノード2が有する経路表5は、各径路表5を有するノード2に付与されたアドレスによって識別されている。例えば、ノード2eに対応する経路表5eによれば、ノード2eのアドレスは192.168.0.2である。ただし、
図7、
図8に記載されているアドレスは、本実施形態の説明を目的として例示したものであり、本発明、本実施形態に特に限定を加えることを意図したものではない。経路表5には、最終的な宛先と、次に転送する先のノード2とを指定する。ノード2iの経路表5iを参照すると、最終的な宛先である管理サーバ1のアドレス10.0.0.5が登録されており、その管理サーバ1へ到達するための転送先は、ルートノード2aのアドレスである192.168.0.1となっている。このアドレス192.168.0.1は、ノード2iから直接転送できるノード2の中には存在しない。このため、経路表5iでは、更に宛先としてアドレス192.168.0.1が登録されており、そのルートノード2aに到達するための転送先として、ノード2iから直接転送できる宛先であるノード2eのアドレス192.168.0.2が記載されている。
【0039】
図8は、
図5と同様にノード2eとノード2iとを結ぶリンク3kが切断されるという異常が発生した状態を示している。このとき、マルチホップネットワーク100において、ノード2は、自律的に管理サーバ1への経路構築を行う。
図8に示すように、例えば、ノード2iは、ノード2jを経由して管理サーバ1に接続されるように経路4が変更される。ノード2iの経路表5iがこの変更を反映するように書き換えられている。図中書き換えられた箇所を破線で囲んで示している。管理サーバ1の宛先10.0.0.5に対応する転送先は、ルートノード2aのアドレス192.168.0.1で変わらないが、宛先であるルートノード2aのアドレス192.168.0.1に対応する転送先が、ノード2jのアドレス192.168.0.4に更新されている。これにより、ノード2iの情報は、ノード2jを経由して、管理サーバ1に送られるようになる。
【0040】
以上説明したマルチホップネットワーク100内における経路構築の動作は、ノード2により自律的に実行される。この状況を把握する管理サーバ1の動作について説明する。管理サーバ1のノード状態取得手段101はノード2から適宜経路表5を取得し、記憶部18に記憶する。経路取得手段102は経路表5の一覧に基づいてツリー構造の経路4を導出し、取得する。ノード状態取得手段101は、状態変化取得手段103がノード2やリンク3の変化の通知(例えば、リンクアップ/リンクダウン/バイパス発生と解消による通知など)を取得した場合、経路表の再取得を実行する。つまり、ノード2やリンク3の変化の通知が経路表の再取得のトリガーとなる。
【0041】
状態変化取得手段103は、異常を検知しているノード2から固有のアドレスの通知を受け、この固有アドレスに基づいて、マルチホップネットワーク100上の場所を特定する。より具体的には、以下の通りである。管理サーバ1が各々のノード2の経路表5を記憶部18に保持している。各ノード2は、管理サーバ1に情報を通知するときに自身のアドレスも同時に通知する。管理サーバ1の状態変化取得手段103は、この固有アドレスにより、情報を通知してきたノード2がマルチホップネットワーク100上のどこに存在するかを特定する。状態変化取得手段103は、隣接する2つのノード2が異常の発生を示すリンクダウン信号を発したことを検知した場合、異常が生じていると判断し、異常発生箇所をそれらのノード2の間にあるリンク3を接続状態の変化したリンク3として特定する。例えば、
図8では、ノード2eとノード2iとがリンクダウン信号を発信している場合を示している。ノード2iにおいては、前記の接続状態の変化に基づいて経路表5が変更されている。ノード2eとノード2iとの間であり、ノード2iの属する経路4においてノード2iに連結されており上流に位置するリンク3kが接続状態の変化したリンク3として特定される。管理サーバ1の経路取得手段102は、変更されたノード2iの経路表5に基づいて、変更点を反映するように経路4を更新する。
【0042】
通知を受け取った管理サーバ1は、通知をしたノード2及び、このノード2より遠方、言い換えれば下流のノード2から状態と経路表5の情報取得を行う。別の表現をすると、管理サーバ1は、取得した経路表5に基づいて、経路4が更新される。このとき、管理サーバ1は、取得した状態情報に基づいて障害診断を行うようにしてもよい。管理サーバ1では、接続に基づくツリー構造情報が保持され、リンクダウン信号を発信したノード2、及び、変化通知を発信した当該ノード2より遠方、言い換えれば下流のノード2の情報と経路表5とが再取得対象とされる。
【0043】
図4から
図8を参照して、管理サーバ1の実行するマルチホップネットワーク経路把握方法についてより詳細に説明する。
【0044】
図4に示すように、マルチホップネットワーク100は、ノード2とリンク3とを有し、各ノード2の情報は、ツリー構造をなす経路4を通じて管理サーバ1に転送されている。管理サーバ1は、各ノード2の有する経路表5に基づいて経路4を把握し、記憶部18に記憶する。
図5に示すようにリンク3kがリンクダウン或いは断線した場合について説明する。リンクダウン状態となったノード2e及びノード2iは、リンクダウン信号を管理サーバ1に送信する。管理サーバ1では、このリンクダウン信号を状態変化取得手段103が受信し、ノード状態取得手段101が該当ノード2から経路表5を取得するする動作のトリガーとなる。ここで、ノード2iはリンクダウンを検出しているが、リンク3kが使えないので、この時点で経路4aを通じてリンクダウン信号を管理サーバ1へ送信することはできない。
【0045】
図6に示すように、ノード2は自律的に管理サーバ1までの経路4を構築する。この時点でノード2iから管理サーバ1までの経路4も再構築されており、ノード2e、2iからのリンクダウン信号を、管理サーバ1の状態変化取得手段103が受信する。状態変化取得手段103は、受信したリンクダウン信号に基づいて、異常が発生したと判断した場合、その異常が発生している箇所をリンク3kだと特定する。リンクダウン信号は、リンクの断線を意味しているので、ここでは、管理サーバ1は、リンク3kが断線していると把握できる。
【0046】
ノード状態取得手段101は、リンク3kの属する経路4aにおいて、リンクダウン信号を発したノード2及びリンク3kよりも管理サーバ1から見て下流に存在するノード2の状態を取得する。
図5においては、ノード状態取得手段101は、ノード2e、2i、2m、2n、2o、2pの状態を、具体的にはこれらのノード2が有する経路表5を取得する。これら状態の取得されるノード2は、
図5では破線で囲まれている。管理サーバ1の経路取得手段102は、これらのノード2e、2i、2m、2n、2o、2pの経路表5に基づいて、
図6に示す新たな経路4を取得する。
【0047】
図7と
図8とは、上記の異常発生前と異常発生後についての
図4の破線で示した領域について、経路4と経路表5との変化を表している。管理サーバ1の経路取得手段102は、
図7に示した経路表5に基づいて経路4aと経路4bとを把握している。リンク3kに異常が発生すると、
図8に示すように経路表5が変化する。ノード状態取得手段101は、経路4a上に有り、不具合になったリンク3kよりも管理サーバ1から下流に存在するノード2iの経路表5i、及び、リンクダウンとなったノード2eの経路表5eを取得する。ノード2iの経路表5iに基づいて、経路取得手段102は、
図8に示す新規な経路4が構築されていることを把握する。
【0048】
図5に戻る。管理サーバ1のノード状態取得手段101は、
図8に示した経路表5と同様の経路表5を、
図5に示した破線に囲まれた領域の各ノード2(例えば、ノード2e、2i、2m、2n、2o、2p)から取得する。そして、経路取得手段102は、新規に得られた経路表5に基づいて経路4を取得する。そして、経路取得手段102は、
図6に示した新しく構築された経路4の全体を把握する。管理サーバ1は、
図6に示された全16のノード2の内、
図5に示される点線内の6個のノード2(ノード2e、2i、2m、2n、2o、2p)の状態或いは経路表5を取得するだけで、マルチホップネットワーク100全体について経路4を把握することができる。
【0049】
(変形例1)
以上の説明では、リンク3に問題が生じた場合を示している。ノード2が応答できなくなっている場合にも同様である。問題の生じているノード2を迂回するバイパスモードが採用される。問題の生じているノード2は故障しているので故障していることを管理サーバ1に通知できない。問題の生じたノード2に対し経路4において前後のノード2及び隣接するノード2が、隣接するノード2が変わったことを管理サーバ1に通知する。当該ノード2に問題の生じていることが管理サーバ1に通知される。管理サーバ1の状態変化取得手段103は、(1)何か起きているようだと判断し、(2)前後を含めてチェックを行い、(3)障害が発生していると判断する。
【0050】
(変形例2)
本開示においては、メッシュネットワークに絞って説明した。本開示に係る通信管理方法は、数珠つなぎのネットワークにおいてもバイパス接続を行う場合には適用できる。バイパス接続とは、数珠繋ぎになっているノード2或いはリンク3の1つが故障した場合に、故障個所を飛ばして、即ち、バイパスしてノード2を接続するものである。この場合、故障個所に隣接するノード2及び故障個所より遠い、或いは言い換えれば数珠繋ぎの下流の位置のノード2の状態が取得される。
【0051】
(変形例3)
上記の説明においては、主に、マルチホップネットワーク通信管理方法について説明した。マルチホップネットワーク通信管理に用いられる通信管理装置及び通信管理装置の機能をコンピュータに実行させるプログラムにより実現することも可能である。
【0052】
本開示は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。又、上述した実施形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。即ち、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0053】
以上説明した実施形態に係るマルチホップネットワーク通信管理方法によれば以下のような効果が奏される。
【0054】
(1)通信管理装置は、複数のノード2が相互に接続されてなるネットワーク100に接続されている通信管理装置であって、ネットワーク100における各々のノード2への経路4について、各複数のノード2それぞれへの通信ホップ数に基づいて形成された経路表5を保持している記憶部18と、何れかのノード2において異常が検知された場合に、経路表5を参照し、異常の発生を通知してきたノード2が属する経路4において、異常の発生を通信してきたノード2及び当該ノード2よりも経路4上の下流側に位置しているノード2に対して状態取得のための通信を実行する制御部10と、を備えている。
【0055】
これにより、通信管理装置である管理サーバ1は、全部のノード2について情報を取り直さなくても良い。メッシュネットワークの最新状態を更新するために状態取得する対象のノード2を減らすことで、所要時間と通信量とは小さく抑えられる。管理サーバ1によりネットワーク内の接続状態を取得する際の通信量を抑制することが可能となる。
【0056】
(2)(1)の通信管理装置において、制御部10が、何れのノード2が異常の発生を通知してきたかに基づいて、ネットワーク100における異常発生個所を特定する。
【0057】
これにより、異常の発生の通知をトリガーにして管理サーバ1が動作する。異常発生を通知するノード2の把握に基づいて、ネットワーク全体の状態を把握することができる。
【0058】
(3)(2)の通信管理装置において、制御部10は、取得した異常発生箇所に基づいて、異常の発生後に作成された経路4を取得する。
【0059】
これにより、管理サーバ1は、次の異常の発生時に、異常の発生したリンク3の属する経路4を把握することができる。
【0060】
(4)(1)から(3)の通信管理装置において、制御部10は、異常の発生を通知してきたノード2及び当該ノード2より下流側にて接続されているノード2の経路表5を取得する。
【0061】
これにより、管理サーバ1は、取得した経路表5に基づいて、ノード2の間の接続状態が把握でき、ネットワーク100全体を把握することができる。
【0062】
(5)通信管理方法は、複数のノード2が相互に接続されてなるネットワーク100における通信管理方法であって、ネットワークに接続されている通信管理装置が、ネットワーク100における各々のノード2への経路4を、各複数のノード2への通信ホップ数に基づいて形成された経路表5として保持しており、何れかのノード2において異常が検知された場合に、異常の発生を通知してきたノード2が属する経路4において、異常の発生を通知してきたノード2及び当該ノード2よりも前記経路上の下流側に位置しているノード2に対して状態取得のための通信を実行する。
【0063】
これにより、通信管理装置である管理サーバ1は、全部のノード2について情報を取り直さなくても良い。メッシュネットワークの最新状態を更新するために状態取得する対象のノード2を減らすことで、所要時間と通信量とは小さく抑えられる。管理サーバ1によりネットワーク内の接続状態を取得する際の通信量を抑制することが可能となる。
【0064】
(6)プログラムは、複数のノード2が相互に接続されてなるネットワークに接続されている通信管理装置に、ネットワークにおける各ノード2への経路4を、各複数のノード2への通信ホップ数に基づいて形成された経路表5として保持させ、何れかのノード2において異常が検知された場合に、異常の発生を通知してきたノード2が属する経路4において、異常の発生を通信してきたノード2及び当該ノード2よりも前記経路上の下流側に位置しているノード2に対して状態取得のための通信を実行させる。
【0065】
これにより、通信管理装置である管理サーバ1は、全部のノード2について情報を取り直さなくても良い。メッシュネットワークの最新状態を更新するために状態取得する対象のノード2を減らすことで、所要時間と通信量とは小さく抑えられる。管理サーバ1によりネットワーク内の接続状態を取得する際の通信量を抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0066】
1 管理サーバ
2 ノード
3 リンク
4 経路
5 経路表
10 制御部
11 プロセッサ
12 ROM
13 RAM
14 バス
15 入出力インタフェース
16 入出力部
17 通信手段
18 記憶部
100 マルチホップネットワーク
101 ノード状態取得手段
102 経路取得手段
103 状態変化取得手段