(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057933
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】自動登録点検装置、自動登録点検システム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 17/16 20150101AFI20240418BHJP
H04B 17/17 20150101ALI20240418BHJP
【FI】
H04B17/16
H04B17/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164932
(22)【出願日】2022-10-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.森川 康平が、2022年5月2日付で、2022年度 中国地方放送技術報告会 予稿において公開。 2.森川 康平が、2022年5月17日付で、NHK 2022年度 中国地方放送技術報告会において公開。 3.森川 康平が、2022年6月7日付で、第75回 全国技術報告会 予稿集において公開。 4.森川 康平が、2022年6月16日付で、NHK 第75回全国技術報告会において公開。
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】森川 康平
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 秀亮
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ラジオ登録点検を自動で行うことが可能な自動登録点検装置、自動登録点検システム及びプログラムを提供する。
【解決手段】自動登録点検システム1において、自動登録点検装置10は、音声特性測定器20に対し、音声特性測定器20がラジオ放送機30に対して出力する信号の周波数及び振幅を制御する信号制御部と、ラジオ放送機30が出力するAM変調信号の波形を表示するオシロスコープ60の画像を解析し、AM変調信号の変調度を算出する変調度測定部と、音声特性測定器20が測定したAM変調信号の復調信号の振幅を取得して記録する測定結果記録部と、自動登録点検装置の動作に用いられる任意の情報を記憶する記憶部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声特性測定器に対し、該音声特性測定器がラジオ放送機に対して出力する信号の周波数及び振幅を制御する信号制御部と、
前記ラジオ放送機が出力するAM変調信号の波形を表示するオシロスコープの画像を解析し、前記AM変調信号の変調度を算出する変調度測定部と、
前記音声特性測定器により測定された、前記AM変調信号の復調信号の振幅を取得して記録する測定結果記録部と、
を備える、自動登録点検装置。
【請求項2】
前記信号制御部は、前記変調度が規定値に略一致するように前記振幅を制御する、請求項1に記載の自動登録点検装置。
【請求項3】
前記変調度測定部は、前記AM変調信号のエンベロープを、振幅方向と平行な方向に複数に分割し、分割された領域の最大面積及び最小面積から前記変調度を算出する、請求項1又は2に記載の自動登録点検装置。
【請求項4】
前記変調度測定部は、前記エンベロープの両端を除いて、前記最大面積及び前記最小面積を求める、請求項3に記載の自動登録点検装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の自動登録点検装置と、
前記音声特性測定器と、
前記ラジオ放送機と、
前記オシロスコープと、
前記オシロスコープの画像を撮影するカメラと、
を備える自動登録点検システム。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1又は2に記載の自動登録点検装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動登録点検装置、自動登録点検システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、AM変調信号等の特性を測定し、放送機の製作・保守点検等に使用される音声特性測定器が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
ラジオの登録点検では、音声特性測定器を用いてラジオ放送機に信号を入力し、入力信号の周波数及び振幅を調整することで、データ測定を行う。測定の際には、ラジオ放送機の出力信号の変調度を、オシロスコープを用いて目視で読み取りながら行う。変調度は、オシロスコープに表示された波形から算出する。波形の振幅は入力信号レベルに応じて変化する。変調度Mは、波形の最大振幅Aと波形の最小振幅Bを用いて、式(1)により求まる。
【0004】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本通信機株式会社、「音声メディア放送機特性測定装置 AM/FM/AUDIO ANALYZER 測定機能 MODEL 3818」、[online]、2021年2月、[2022年10月4日検索]、インターネット<URL: https://nitsuki.com/products/fm_radio/3818.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ラジオ登録点検の一例として、周波数特性測定では、まず周波数400Hzの信号をラジオ放送機へ入力し、その信号レベルを徐々に上げ、ラジオ放送機の出力信号の変調度が50%となった時の入力信号レベルを記録する。次に、周波数600Hzの信号を入力し、同様に変調度50%に調整して記録する。続けて周波数を変更していき、計9つの周波数で測定を繰り返す。登録点検データ測定では、このような変調度を確認しながら音声特性測定器の周波数及び信号レベルを調整する測定を200回程行う必要がある。また、測定は夜間放送休止中に実施することから、時間的制約がある。
【0007】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、ラジオの登録点検を自動で行うことが可能な自動登録点検装置、自動登録点検システム、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)一実施形態に係る自動登録点検装置は、音声特性測定器に対し、該音声特性測定器がラジオ放送機に対して出力する信号の周波数及び振幅を制御する信号制御部と、前記ラジオ放送機が出力するAM変調信号の波形を表示するオシロスコープの画像を解析し、前記AM変調信号の変調度を算出する変調度測定部と、前記音声特性測定器により測定された、前記AM変調信号の復調信号の振幅を取得して記録する測定結果記録部と、を備える。
【0009】
(2) (1)に記載の自動登録点検装置において、前記信号制御部は、前記変調度が規定値に略一致するように前記振幅を制御する。
【0010】
(3) (1)又は(2)に記載の自動登録点検装置において、前記変調度測定部は、前記AM変調信号のエンベロープを、振幅方向と平行な方向に複数に分割し、分割された領域の最大面積及び最小面積から前記変調度を算出する。
【0011】
(4) (3)に記載の自動登録点検装置において、前記変調度測定部は、前記エンベロープの両端を除いて、前記最大面積及び前記最小面積を求める。
【0012】
(5)一実施形態に係る自動登録点検システムは、(1)から(4)のいずれかに記載の自動登録点検装置と、前記音声特性測定器と、前記ラジオ放送機と、前記オシロスコープと、前記オシロスコープの画像を撮影するカメラと、を備える。
【0013】
(6)一実施形態係るプログラムは、コンピュータを、(1)から(4)のいずれかに記載の自動登録点検装置として機能させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ラジオ登録点検を自動で行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係る自動登録点検システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態に係る自動登録点検システムの処理手順例を示すフローチャートである。
【
図3】一実施形態に係る自動登録点検装置の構成例を示すブロック図である。
【
図4】一実施形態に係る自動登録点検装置が記録する記録結果の一例を示す図である。
【
図5】一実施形態に係る自動登録点検装置における変調度測定部の構成例を示すブロック図である。
【
図6】一実施形態に係る自動登録点検装置における変調度測定部が生成するグレースケール画像の一例を示す図である。
【
図7】一実施形態に係る自動登録点検装置における変調度測定部が生成する二値化画像の一例を示す図である。
【
図8】一実施形態に係る自動登録点検装置における変調度測定部が生成するノイズ除去画像の一例を示す図である。
【
図9】一実施形態に係る自動登録点検装置における変調度測定部が生成する縦線付加画像の一例を示す図である。
【
図10】一実施形態に係る自動登録点検装置における変調度算出部による処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、一実施形態に係る自動登録点検システムの構成例を示すブロック図である。
図1に示す自動登録点検システム1は、自動登録点検装置10と、音声特性測定器20と、ラジオ放送機30と、終端器40と、ラジオ検波器50と、オシロスコープ60と、カメラ70と、を備える。
【0018】
自動登録点検システム1は、自動でラジオ放送機30の登録点検を行う。登録点検項目は、無線設備規則に規定されている。例えば、無線設備規則の第33条の4第1項第2号には、モノホニツク放送を行う場合にあっては、100ヘルツから7,500ヘルツまでの変調周波数において、400ヘルツの変調周波数により50パーセントの振幅変調をした場合を基準として、その偏差が所定の範囲内にあること、と規定されている。
【0019】
自動登録点検装置10は、音声特性測定器20を制御するための制御情報を音声特性測定器20に出力し、所定の周波数及び振幅のベースバンド信号を出力するように指示する。すなわち、制御情報は、音声特性測定器20が出力するベースバンド信号の周波数及び振幅を指示する情報を含む。そして、自動登録点検装置10は、音声特性測定器20から測定データを入力する。また、自動登録点検装置10は、カメラ70からオシロスコープ画像を入力する。自動登録点検装置10の詳細については後述する。
【0020】
音声特性測定器20は、自動登録点検装置10から入力した制御情報に従って、所定の周波数及び振幅のベースバンド信号を生成する。そして、音声特性測定器20は、生成したベースバンド信号をラジオ放送機30に出力する。なお、音声特性測定器20は既存の装置である。自動登録点検装置10と音声特性測定器20との間のインターフェースは、例えばGPIB(General Purpose Interface Bus)である。
【0021】
また、音声特性測定器20は、ラジオ検波器50から入力した復調信号を測定し、測定データを生成する。測定データは、復調信号の振幅を示すデータを含む。そして、音声特性測定器20は、生成した測定データを自動登録点検装置10に出力する。
【0022】
ラジオ放送機30は、音声特性測定器20から入力したベースバンド信号を振幅変調してAM変調信号を生成する。そして、ラジオ放送機30は、生成したAM変調信号を終端器40、ラジオ検波器50、及びオシロスコープ60に出力する。
【0023】
終端器40は、ターミネータ、ダミーロードなどとも称され、アンテナの代わりに接続して疑似的に負荷を与え、電気エネルギーを熱エネルギーに変換して消費する。
【0024】
ラジオ検波器50は、ラジオ放送機30から入力したAM変調信号を復調して復調信号を生成する。そして、ラジオ検波器50は、生成した復調信号を音声特性測定器20に出力する。
【0025】
オシロスコープ60は、ラジオ放送機30から入力したAM変調信号の波形を画面に表示する。
【0026】
カメラ70は、オシロスコープ60の画面を撮影する。そして、カメラ70は、撮影したオシロスコープ60の画面の画像(オシロスコープ画像)を自動登録点検装置10に出力する。カメラ70は、汎用的なWebカメラであってもよい。オシロスコープ画像を自動登録点検装置10に出力することにより、自動登録点検装置10は、オシロスコープ60に表示されたAM変調信号の波形を自動で画像解析することが可能となる。
【0027】
図2は、自動登録点検システム1の処理手順例を示すフローチャートである。自動登録点検装置10は、音声特性測定器20とのGPIB通信を確立した後、ユーザが各測定項目を選択し、自動登録点検装置10の測定開始ボタンを押下することで測定を開始する。
【0028】
ステップS101において、自動登録点検装置10の制御により、音声特性測定器20はベースバンド信号を出力する。自動登録点検装置10は、ラジオ放送機30の保護のため、過入力とならないように音声特性測定器20の出力をレベル制限してもよい。
【0029】
ステップS102において、ラジオ放送機30は、ベースバンド信号を入力し、AM変調信号を出力する。
【0030】
ステップS103において、オシロスコープ60は、ラジオ放送機30が出力したAM変調信号の波形を画面に表示する。
【0031】
ステップS104において、カメラ70は、オシロスコープ60の画面を撮影する。
【0032】
ステップS105において、自動登録点検装置10は、オシロスコープ画像を解析して、AM変調信号の変調度を算出する。
【0033】
ステップS106において、自動登録点検装置10は、AM変調信号の変調度が規定値と一致するか否かを判定する。例えば、自動登録点検装置10は、変調度と規定値の差が閾値以下の場合には変調度が規定値と一致すると判定し、変調度と規定値の差が閾値を超えた場合には変調度が規定値と一致しないと判定する。一致しない場合には処理をステップS107に進め、一致する場合には処理をステップS108に進める。
【0034】
ステップS107において、自動登録点検装置10は、AM変調信号の変調度が規定値と略一致するまで、制御情報を変更する。
【0035】
ステップS108において、音声特性測定器20は、復調信号の振幅を測定する。
【0036】
ステップS109において、自動登録点検装置10は、音声特性測定器20から測定データを取得して記録する。
【0037】
(自動登録点検装置)
次に、自動登録点検装置の詳細について説明する。
【0038】
図3は、自動登録点検装置10の構成例を示すブロック図である。
図3に示す自動登録点検装置10は、変調度測定部11と、信号制御部12と、測定結果記録部13と、記憶部14と、を備える。変調度測定部11と、信号制御部12と、測定結果記録部13により、制御演算回路(コントローラ)を構成する。該制御演算回路は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの専用のハードウェアによって構成されてもよいし、プロセッサによって構成されてもよいし、双方を含んで構成されてもよい。
【0039】
変調度測定部11は、カメラ70により撮影されたオシロスコープ画像を解析し、AM変調信号の変調度を算出する。そして、変調度測定部11は、算出した変調度(測定変調度)を信号制御部12に出力する。
【0040】
信号制御部12は、変調度測定部11から入力した測定変調度が規定値(目標変調度)に略一致するように、音声特性測定器20が出力するベースバンド信号の振幅を制御する。また、信号制御部12は、ベースバンド信号の周波数が規定値に略一致するように、該周波数を制御する。すなわち、信号制御部12は、制御情報を随時更新する。制御情報を変更するとベースバンド信号が変化するので、それに伴い、AM変調信号、復調信号、及び測定データも変化する。
【0041】
測定結果記録部13は、変調度測定部11から入力した変調度、及び音声特性測定器20から入力した測定データを含む測定結果を記録し、記憶部14に出力する。
【0042】
記憶部14は、1つ以上のメモリを含み、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、光メモリなどを含んでもよい。記憶部14に含まれる各メモリは、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部14は、自動登録点検装置10の動作に用いられる任意の情報を記憶する。記憶部14は、必ずしも自動登録点検装置10の内部に備えられる必要はなく、自動登録点検装置10の外部に備えられてもよい。
【0043】
図4は、測定結果記録部13が記録する記録結果の一例を示す図である。この例では、周波数及び目標変調度はあらかじめ入力済みであり、測定時には変調度測定部11により測定された測定変調度と、音声特性測定器20により測定された測定データ(測定器出力)とが随時書き込まれていく。また、測定結果記録部13は、周波数が400[Hz]の時の測定器出力を基準とした偏差を計算して記録する。周波数x[Hz]の偏差[dB]をf(x)、周波数x[Hz]の測定器出力[dBm]をg(x)とすると、f(x)=g(400)-g(x)となる。測定結果の記録にはExcel(登録商標)シートを用いてもよい。
【0044】
(変調度測定部)
次に、変調度測定部11の詳細について説明する。
【0045】
図5は、変調度測定部11の構成例を示すブロック図である。
図5に示す変調度測定部11は、グレースケール化部111と、二値化部112と、ノイズ除去部113と、等間隔線付加部114と、変調度算出部115と、を備える。
【0046】
グレースケール化部111は、オシロスコープ画像をグレースケールに変換して、グレースケール画像を生成する。そして、グレースケール化部111は、生成したグレースケール画像を二値化部112に出力する。
【0047】
図6は、グレースケール画像の一例を示す図である。カメラ70のダイナミックレンジが低い場合には、
図6に示すようにAM変調信号のエンベロープ(包絡線)の谷が白飛びするが、このような場合でも変調度測定部11は変調度を正確に測定することができる。
【0048】
二値化部112は、グレースケール化部111から入力したグレースケール画像を閾値判定により二値化して、二値化画像を生成する。そして、二値化部112は、生成した二値化画像をノイズ除去部113に出力する。
【0049】
図7は、二値化画像の一例を示す図である。オシロスコープ60の波形表示画面は、一般的に背景が暗く、波形は背景よりも明るい。そのため、AM変調信号のエンベロープの外部は黒判定されて黒色となる。また、AM変調信号のエンベロープの輪郭は
図6に示すように明度が高いため白判定されて白色となるが、エンベロープの内部は二値化の閾値によっては
図7に示すように黒判定される部分もある。
【0050】
ノイズ除去部113は、二値化部112から入力した二値化画像に対し、AM変調信号のエンベロープの内部を白色で塗りつぶし、ノイズ除去画像を生成する。そして、ノイズ除去部113は、生成したノイズ除去画像を等間隔線付加部114に出力する。
【0051】
【0052】
等間隔線付加部114は、ノイズ除去部113から入力したノイズ除去画像に対して縦線(波形の振幅方向に平行な線)を付加した縦線付加画像を生成する。縦線は等間隔であることが好適である。左右両端の2か所は縦線を付加しないで白塗りのままとしてもよい。そして、等間隔線付加部114は、生成した縦線付加画像を変調度算出部115に出力する。
【0053】
図9は、縦線付加画像の一例を示す図である。
図9に示す縦線付加画像には縦線が付加されているが、左端Lと右端Rには縦線が付加されていない。
【0054】
変調度算出部115は、等間隔線付加部114から入力した縦線付加画像について、左右の縦線と上下のエンベロープで囲まれた分割領域の面積をそれぞれ計算し、その中から最大面積及び最小面積を検出する。縦線間隔が狭い場合には、分割領域は長方形と近似できるので、(分割領域の最大面積)÷(該分割領域の縦線間隔)≒(AM変調信号波形の最大振幅)となる。同様に、(分割領域の最小面積)÷(該分割領域の縦線間隔)≒(AM変調信号波形の最小振幅)となる。縦線間隔が等しい場合には、割り算を省略して、分割領域の最大面積を最大振幅とみなし、分割領域の最小面積を最小振幅とみなして、式(1)により変調度を算出することができる。
【0055】
図10は、変調度算出部115による処理を説明する図である。縦線間隔は狭いほうがよいが、縦線間隔を1ピクセルとするとノイズの影響を受けやすいため、2ピクセル以上とすることが望ましい。だだし、その場合には波形両端の長さが縦線間隔のピクセル数では割りきれない可能性があることに留意する必要がある。縦線間隔を例えば3ピクセルとすると、波形両端の長さが3で割り切れない場合、両端の縦線間隔が1又は2ピクセルとなるため、分割領域の面積が極端に小さくなる可能性がある。そうなると、最小振幅が誤検知となるので、それを避けるために等間隔線付加部114は解析上必要のない両端(図中のL及びR)を一定の間隔で白塗り、該両端を除くAM変調信号波形の長さCが縦線間隔の整数倍になるようにしている。ただし、白塗り領域の面積は大きくなるため、変調度算出部115は最大面積閾値を設けて、面積が最大面積閾値以上となる範囲を解析から除外する。さらに、微小なノイズを分割領域と誤検知することを防止するために、最小面積閾値を設けて、面積が最小面積閾値以下となる範囲を解析から除外してもよい。このようにして、変調度算出部115は、図中の斜線を付した分割領域Aを最大面積と検出し、斜線を付した分割領域Bを最小面積と検出する。
【0056】
変調度算出部115の処理を要約すると、AM変調信号のエンベロープを、振幅方向と平行な方向に複数に分割し、分割された領域の最大面積及び最小面積から変調度を算出する。その際に、エンベロープの両端を除いて、最大面積及び最小面積を求める。
【0057】
解析時のカメラ環境によっては、波形が瞬いて見える影響で、オシロスコープ画像の波形がまれに乱れることがある。そのため、変調度測定部11は、波形を重ね合わせて処理を行ってもよい。例えば、変調度測定部11は、波形の取り込み及び解析を0.1秒に1回行い、1秒間で10枚の画像を重ね合わせて処理を行ってもよい。
【0058】
以上説明したように、自動登録点検装置10はオシロスコープ画像を解析してAM変調信号の変調度を算出することで、オシロスコープ画像の目視読み取りが不要となり、ラジオの登録点検を自動で行うことが可能となる。また、測定ミス、ラジオ放送機30への過入力などの人為ミスを防止することが可能となる。
【0059】
さらに、自動登録点検装置10は、算出した変調度が規定値に略一致するように、ラジオ放送機30に対して出力する信号の振幅を制御することで、ラジオの登録点検を短時間で行うことが可能となる。
【0060】
また、音声特性測定器20は既存のものをそのまま使用でき、カメラ70は高性能である必要はないため、自動登録点検システム1を安価に構築することが可能である。
【0061】
(プログラム)
上述した自動登録点検装置10として機能させるために、プログラム命令を実行可能なコンピュータを用いることも可能である。ここで、コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、ワークステーション、PC(Personal Computer)、電子ノートパッドなどであってもよい。プログラム命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード、コードセグメントなどであってもよい。
【0062】
コンピュータは、プロセッサと、記憶部と、入力部と、出力部と、通信インターフェースとを備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、SoC(System on a Chip)などであり、同種又は異種の複数のプロセッサにより構成されてもよい。プロセッサは、記憶部からプログラムを読み出して実行することで、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。なお、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェアで実現することとしてもよい。入力部は、ユーザの入力操作を受け付けてユーザの操作に基づく情報を取得する入力インターフェースであり、ポインティングデバイス、キーボード、マイクなどである。出力部は、情報を出力する出力インターフェースであり、ディスプレイ、スピーカなどである。通信インターフェースは、外部の装置と通信するためのインターフェースである。
【0063】
プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。このような記録媒体を用いれば、プログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録された記録媒体は、非一過性(non-transitory)の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリなどであってもよい。また、このプログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0064】
例えば、自動登録点検装置10として機能させるためのプログラムは、音声特性測定器20に対し、音声特性測定器20がラジオ放送機30に対して出力する信号の周波数及び振幅を制御するステップと、ラジオ放送機30が出力するAM変調信号の波形を表示するオシロスコープ60の画像を解析し、AM変調信号の変調度を算出するステップと、音声特性測定器20により測定された、AM変調信号の復調信号の振幅を取得して記録するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0065】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを統合したり、1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 自動登録点検システム
10 自動登録点検装置
11 変調度測定部
12 信号制御部
13 測定結果記録部
14 記憶部
20 音声特性測定器
30 ラジオ放送機
40 終端器
50 ラジオ検波器
60 オシロスコープ
70 カメラ
111 グレースケール化部
112 二値化部
113 ノイズ除去部
114 等間隔線付加部
115 変調度算出部