(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057935
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】レベル測定装置付ホッパー
(51)【国際特許分類】
F27D 17/00 20060101AFI20240418BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20240418BHJP
G01F 23/00 20220101ALI20240418BHJP
【FI】
F27D17/00 105A
F27D21/00 A
G01F23/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164938
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】村山 幸司
【テーマコード(参考)】
2F014
4K056
【Fターム(参考)】
2F014AA08
2F014AB01
2F014AC07
4K056AA02
4K056CA02
4K056DB22
4K056DB23
4K056FA11
(57)【要約】
【課題】 受け入れる粉粒体等の影響により著しい発塵が生じたり、高温雰囲気になったりするホッパー内であっても安定的にその内部の粉粒体のレベルを測定可能なレベル計付ホッパーを提供する。
【解決手段】 製錬炉で処理された発塵性の高温の粉粒体を一時的に貯留するレベル測定装置付ホッパー10であって、記ホッパー10内の含塵ガスを環境集塵設備に向けて排出するダクト14が接続されている天井板12の上に、遮熱板15を介してサウンジング式レベル計16が設けられており、更に好適にはサウンジング式レベル計16に向けて送風する扇風機18が設けられており、好適には遮熱板15は、その平面視形状が直径600mm以上の円形、短径600mm以上の楕円形、又は短辺長600mm以上の四角形である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製錬炉で処理された発塵性の高温の粉粒体を一時的に貯留するレベル測定装置付ホッパーであって、前記ホッパー内の含塵ガスを環境集塵設備に向けて排出するダクトが接続されている天井板の上に、遮熱板を介してサウンジング式レベル計が設けられていることを特徴とするレベル測定装置付ホッパー。
【請求項2】
前記天井板の上に、前記サウンジング式レベル計に向けて送風する扇風機が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のレベル測定装置付ホッパー
【請求項3】
前記遮熱板は、その平面視形状が直径600mm以上の円形、短径600mm以上の楕円形、又は短辺長600mm以上の四角形であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のレベル測定装置付ホッパー。
【請求項4】
前記サウンジング式レベル計は、前記天井板に対して700mm以上1300mm以下離間していることを特徴とする、請求項1又は2に記載のレベル測定装置付ホッパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発塵性の高温の粉粒体を一時的に貯留するレベル測定装置付ホッパーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属製錬、製鉄、セメント、化学などの様々な産業分野において、粉粒状の原料や中間製品を一時的に貯留するため、排出口に向かって傾斜する側壁を下部に有する円筒状又は角筒状の貯槽であるホッパー、サイロ、ビン(以下、これらをまとめてホッパーと称する)が多用されている。例えば非鉄金属製錬では、ロータリーキルン式の製錬炉に脱水ケーキ状の原料を装入して熱処理を施すことで中間製品として粉粒状の焼成物を生成しており、これを出荷する前、又は後段の処理装置で処理する前に一時的にホッパーに貯留している。このようなホッパーによる粉粒体の貯留では、生産管理等のためホッパー内の粉粒体の貯留量を把握する必要があり、そのためホッパーにはレベル計が設けられている。
【0003】
しかしながら、レベル計を設置するホッパー内の環境は、装入した粉粒体の著しい発塵や放熱により粉塵を含んだ高温雰囲気になっている場合があり、適切な機種のレベル計を選定しなければ故障が頻発することがあった。例えば特許文献1には、コークス炉の上方に位置する装炭車の給炭ホッパーにマイクロ波を利用した非接触式レベル計を設置する技術が開示されている。具体的には、この特許文献1の技術は、石炭の給炭ホッパーの上部にガラス等からなる保護板を好ましくは傾斜させて設け、この保護板の上方に射出角度収束用のアンテナを備えたマイクロ波レベル計を取り付けるものである。これにより、狭角度に収束させたマイクロ波を給炭ホッパーの内部から該コークス炉の装炭口内に射出して該コークス炉内の石炭表面に反射させることでレベルを検出するので、コークス炉内の石炭のレベルを約±10mmの精度で正確に検知できるうえ、保護板の上方にレベル計が設置されているため、コークス炉内の約1200℃の高温や腐食性ガス、炭塵による損傷を受けることがないと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1に開示されているようなマイクロ波レベル計を用いることで、粉塵を含んだ高温雰囲気となる苛酷なホッパー内の環境からレベル計を保護することが可能になると考えられる。しかしながら、特許文献1のマイクロ波レベル計は、使用しているうちに粉粒体から発塵した微粉が保護板に付着してレベル計の精度を低下させることが考えられる。本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、装入した粉粒体からの発塵や放熱により粉塵を含んだ高温雰囲気になるホッパーであっても、その内部の粉粒体のレベルを安定的に測定可能なレベル測定装置付ホッパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るレベル測定装置付ホッパーは、製錬炉で処理された発塵性の高温の粉粒体を一時的に貯留するレベル測定装置付ホッパーであって、前記ホッパー内の含塵ガスを環境集塵設備に向けて排出するダクトが接続されている天井板の上に、遮熱板を介してサウンジング式レベル計が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、著しい発塵が生じたり、高温雰囲気になったりするホッパー内であっても、安定的にホッパー内の粉粒体のレベルを測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態のレベル測定装置付ホッパーの斜視図である。
【
図2】
図1のレベル測定装置付ホッパーが有するサウンジング式レベル計及び遮熱板からなるレベル測定装置正面図である。
【
図3】
図2のレベル測定装置が有する遮熱板の斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態のレベル測定装置付ホッパーに使用される遮熱板の他の具体例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態のレベル測定装置付ホッパーについて図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態のレベル測定装置付ホッパー10は、図示しない前段の製錬炉で処理された発塵性の高温の粉粒体を一時的に貯留する略四角筒状のホッパーである。このホッパー10は、その下部において互いに対向する側壁の間隔が徐々に狭くなるように傾斜しており、その最下部に粉粒体の排出口となるダンパー11が設けられている。また、ホッパー10の最上部に位置する天井板12には、粉粒体を搬送するバケットコンベアー等の搬送手段13の端部が接続している。なお、本発明で粉粒体とは、粉体、粒体、又はこれらの混合物をいう。
【0010】
上記の搬送手段13を介してホッパー10の頂部から投入される粉粒体は、例えば脱水ケーキ状の粉粒体を800~1200℃程度の高温雰囲気で熱処理した焼成物からなる。このため、ホッパー10からは焼成物から発塵した微粉を含む高温の含塵ガスが排出される。このホッパー10から排出する微粉を含んだ高温の含塵ガスを図示しない環境集塵設備に向けて搬送するため、ホッパー10の天井板12にはダクト14が接続されている。このホッパー10の天井板12の上に、遮熱板15を介してサウンジング式(重錘式)レベル計16設けられている。かかる構成により、粉塵を含んだ高温雰囲気にあるホッパー10内の粉粒体のレベルを安定的に測定することが可能になる。
【0011】
すなわち、上記のサウンジング式レベル計16は、ワイヤーロープの先端に取り付けたウエイト(測定錘)をモーターで定期的に下降及び上昇させ、降下中のウエイトが粉粒体の表面に接触するとワイヤーロープの張力が減少するのでこれを検知し、そのときのワイヤーロープの繰り出し長さから粉粒体のレベルを求めるものであり、機械的にレベルを測定するので、粉塵、ミスト、高温ガスなどの影響を受けにくく、また、例えば金属酸化物などの比誘電率が比較的低い物質でも安定してレベル測定を行うことができる。
【0012】
しかしながら、上記の測定錘を昇降させるため、ホッパー10の天井板12に上記のワイヤーロープの挿通用の開口部12aを設ける必要があり、そこから噴き出してくる例えば200℃程度の熱風や、ホッパー10内の高温の粉粒体からの輻射熱によってサウンジング式レベル計16が悪影響を受けるおそれがある。そこで、
図2に示すように、本発明の実施形態のレベル測定装置付ホッパー10においては、ホッパー10の天井板12よりも高く且つサウンジング式レベル計16よりも低い位置に遮熱板15を設けており、これにより上記の熱風や輻射熱の悪影響を防ぐことができる。なお、本発明においては、サウンジング式レベル計16及び遮熱板15をまとめてレベル測定装置と称する。
【0013】
上記の遮熱板15は、天井板12の開口部12aから噴き出してくる熱風や輻射熱の悪影響をより確実に受けないようにするため、サウンジング式レベル計16の下側に当接させるか、あるいはできるだけ近接させた状態で設けることが好ましい。一般的なサウンジング式レベル計16は、その最下部にワイヤーロープの延出開口部を備えたフランジ16aが設けられており、ホッパー10の天井板12から立設するH型鋼、C型鋼、I型鋼等の支持脚17に対して該フランジ16aをボルト・ナットで固定することで取り付けられるので、
図3に示すように中央部に貫通孔15aを備えた長方形の金属板からなる遮熱板を用意し、この遮熱板15の貫通孔15a中心点をサウンジング式レベル計16の上記延出開口部の中心点に一致させた状態で該貫通孔15aの周縁部をフランジ16aと支持脚17の最上部とで挟み込めばよい。これにより、水平状態の遮熱板15を簡易且つ確実に固定することが可能になる。
【0014】
なお、遮熱板15は、その平面視した4辺のうち長手方向に延在する1対の側部側において、端から端まで下方に屈曲する帯状の屈曲部15bを設けることが好ましい。これにより、
図4に示すように、天井板12の開口部12aから噴き出してくる熱風を、遮熱板15の下面側においてその長手方向に沿って流れるようにガイドして白矢印で示すように該長手方向の両端部から上方に放出させることができるので、該熱風がサウンジング式レベル計に悪影響を及ぼすのをより効率的に防ぐことができる。上記の帯状の屈曲部15bは、その幅が5mm以上であるのが好ましく、これにより上記の効果をより確実に奏させることができる。
【0015】
上記のように、遮熱板15の平面視形状が長方形の場合、その短辺の長さW
1は600mm以上であるのが好ましい。これにより、レベル測定装置を真上から見たとき、遮熱板15の輪郭線の内側にサウンジング式レベル計16が収まるように配置できるので、上記の熱風や輻射熱からより確実にサウンジング式レベル計16を保護することができる。なお、遮熱板の形状は、上記したようにその輪郭線の内側にサウンジング式レベル計16が収まるのであれば上記の長方形などの矩形形状に限定されるものではなく、
図5(a)に示すように中央部に貫通孔25aを有する楕円形の遮熱板25でもよいし、
図5(b)に示すように、中央部に貫通孔35aを有する円形の遮熱板35でもよい。楕円形の遮熱板25の場合は、その短径W
2の長さが600mm以上であることが好ましい。一方、円形の遮熱板35の場合は、その直径W
3が600mm以上であることが好ましい。なお、
図5(a)に示す楕円形の遮熱板25の場合は、
図3に示す長方形の場合と同様に、長手方向に延在する1対の側部側において下方に屈曲する帯状の屈曲部25bが設けられていることが好ましい。
【0016】
再度
図2に戻ると、本発明の実施形態のレベル測定装置付ホッパー10は、ホッパー10の天井板12に対してサウンジング式レベル計16が700mm以上1300mm以下離間していることが好ましい。上記の熱風や輻射熱からの悪影響を考慮すると、サウンジング式レベル計16の設置位置は、ホッパー10の天井板12からできるだけ遠ざけるのが好ましいが、この離間距離が1300mmよりも長くなると、作業員がホッパー10の天井板12の上に立ってサウンジング式レベル計16の保守点検等の作業を行う際の作業性が悪化するので好ましくない。逆にこの離間距離が700mm未満の場合、サウンジング式レベル計16が上記の熱風や輻射熱の悪影響を受けやすくなるので好ましくない。
【0017】
更に、本発明の実施形態のレベル測定装置付ホッパー10においては、サウンジング式レベル計16に向けて送風する扇風機18がホッパー10の天井板12の上に設けられていることが好ましい。これにより、上記した熱風や輻射熱によるトラブルをより確実に回避することができる。すなわち、金属製錬で使用する製錬炉などの加熱炉は通常は24時間体制で休みなく稼働させるため、上記の熱風や輻射熱により、サウンジング式レベル計16の周辺の雰囲気温度が50℃を超えることがある。特に、夏場や加熱炉の熱処理条件にばらつきが生じたときは、通常よりもサウンジング式レベル計16の周辺の雰囲気温度が高温になることがあり、この場合でもサウンジング式レベル計16に直ちにトラブルが生じないように遮熱板15が設けられてはいるものの、サウンジング式レベル計16の本体の温度が蓄熱により徐々に昇温して問題になる温度に到るおそれがある。このような場合であっても、上記の扇風機18を稼働させることで、該サウンジング式レベル計16の本体の蓄熱分を取り除くことが可能になる。なお、扇風機18は常時稼働してもよいが、サウンジング式レベル計16の本体やその周辺に温度計を設け、この温度計の指示値が例えば閾値50℃を超えたときに自動的に稼働するように制御してもよい。
【0018】
上記したように、ホッパー10の天井板12の開口部12aから噴き出してくる熱風やホッパー10内からの輻射熱の悪影響をできるだけ受けないようにするため、ホッパー10内に貯留する粉粒体のレベルはホッパーの全容量の50%以下で管理することが好ましく、34%以下で管理することがより好ましい。上記のように、粉粒体のレベルを50%以下に抑えることで、発塵が生じる高温の粉粒体をホッパー10に受け入れる場合であっても、安定的にレベル測定を行うことが可能になる。
【実施例0019】
原料の鉄鋼ダストに対してウエルツキルン法により還元焙焼することで粗酸化亜鉛を得た後、湿式精製工程を経て、乾燥加熱キルンで脱水ケーキ状の該粗酸化亜鉛を加熱処理することで酸化亜鉛焼鉱を得た。この酸化亜鉛焼鉱の一時的な貯留に本発明の実施例のレベル測定装置付ホッパーを採用した。
【0020】
具体的には、この本発明の実施例のレベル測定装置付ホッパーは、幅6m×奥行き6m×高さ5mの略四角筒状体からなり、その下部は角錐状になっており底部にダンパーが設けられている。このホッパーの天井板から1000mm上方に離間した位置に東和制電工業株式会社製のサウンジング式レベル計TLX-120AP1を設けると共に、このレベル計に向けて送風するようにモーター容量115Wの扇風機を天井板の上に設けた。なお、ホッパーの天井板には含塵ガスを環境集塵設備に移送するダクトが接続している。
【0021】
上記のレベル計の下端部のフランジと、このレベル計を支持するC型鋼からなる支持脚との間に、中央部に貫通孔を有する長さ1000mm×幅610mmの鉄製の矩形の遮熱板を挟み込んだ。なお、この遮熱板の長手方向に延在する1対の側部側には、端から端まで下方に屈曲する幅5mmの帯状の屈曲部を設けた。ホッパーの天井板に設けられている縦100mm×横140mmの矩形の開口部にサウンジング式レベル計のワイヤーロープを挿通させて、その先端に設けた金属製チェーンからなる測定錘が昇降可能となるようにした。
【0022】
上記構成のレベル測定装置付ホッパーに、脱水ケーキ状の粗酸化亜鉛を160~180t/日の処理量でロータリーキルンで乾燥加熱処理することで得た900~1100℃の粒状の金属酸化物からなる焼成物である酸化亜鉛焼鉱をホッパー内のレベルの変動がホッパーの全容量の20%以上30%以下の範囲内に収まるように払い出す操業を4か月間行った。その結果、レベル計の故障は全く発生しなかった。
【0023】
比較のため、上記した遮熱板を取り外した以外は上記の実施例と同様の条件で4か月間操業した。その結果、レベル計の故障が1回/週の頻度で発生した。